1 00:00:01,950 --> 00:00:07,960 ♪〜 2 00:01:25,410 --> 00:01:31,420 〜♪ 3 00:01:56,110 --> 00:01:57,440 (幸田(こうだ)柾近(まさちか))はぁ〜 4 00:02:01,200 --> 00:02:02,490 負けました 5 00:02:09,120 --> 00:02:11,500 (桐山(きりやま) 零(れい)) その人は父の友人だった 6 00:02:12,500 --> 00:02:16,550 う〜ん どうして 竜を取らなかったの? 7 00:02:17,050 --> 00:02:22,220 (幼い零)あ… 竜を取っていると 詰まされそうな気がしたから 8 00:02:27,350 --> 00:02:28,350 それに— 9 00:02:28,430 --> 00:02:30,690 一目 詰みそうに見えたから 10 00:02:35,650 --> 00:02:38,570 竜に飛びつくと思ったのになぁ 11 00:02:38,900 --> 00:02:40,820 子供らしくないなぁ 君 12 00:02:41,780 --> 00:02:43,700 詰ましに きやがった 13 00:02:46,910 --> 00:02:50,290 (零)父の友達なのに その人が来ると— 14 00:02:50,410 --> 00:02:53,040 僕は なぜか そわそわ うれしくなった 15 00:02:55,670 --> 00:02:59,380 (零の父) 幸田 遅くなってすまん 急患が入っちまって 16 00:02:59,670 --> 00:03:01,050 (幸田)ああ お疲れ 17 00:03:01,300 --> 00:03:03,050 (零の父) 待たせちまって 悪かったな 18 00:03:03,140 --> 00:03:06,560 (幸田)いやあ 大丈夫 零君が相手してくれてたから 19 00:03:06,640 --> 00:03:07,850 (零の父) へえ で どうだった? 20 00:03:07,930 --> 00:03:09,100 (幸田) ハハッ 負けちゃったよ 21 00:03:09,180 --> 00:03:10,270 そうか 22 00:03:10,600 --> 00:03:15,560 (零)父とその人は ずっと前 奨励会で一緒だったらしい 23 00:03:18,570 --> 00:03:21,280 零君 さっき 面白い手を指してきたよ 24 00:03:22,240 --> 00:03:24,990 昔のお前と 指してるみたいな気になった 25 00:03:26,580 --> 00:03:28,540 かなり 勉強してるみたいだな 26 00:03:28,870 --> 00:03:30,870 (零)将棋は苦手だったけれど 27 00:03:31,080 --> 00:03:34,370 忙しい父と一緒に過ごせる 大事な時間だから 28 00:03:35,540 --> 00:03:37,380 一生懸命 頑張ってた 29 00:03:38,090 --> 00:03:41,340 俺としては もうちょっと 外で遊んでほしいんだけど 30 00:03:42,090 --> 00:03:45,720 そういう所も似ちゃったかな 俺に 31 00:03:46,140 --> 00:03:49,140 (ボールを蹴る音) 32 00:03:50,600 --> 00:03:53,480 (零)僕は近所でも学校でも いじめられっ子で 33 00:03:53,890 --> 00:03:56,230 どうしても友達が作れなかった 34 00:03:57,060 --> 00:04:00,360 クラスの子たちの話す言葉は 目まぐるしくって 35 00:04:01,360 --> 00:04:06,950 何を話してるのか追いつけなくて 異国の言葉のように聞こえた 36 00:04:08,700 --> 00:04:12,330 なのに 盤を挟んでの その人の言葉は— 37 00:04:12,830 --> 00:04:15,460 ちゃんといつも 僕の中に しみてきた 38 00:04:17,330 --> 00:04:18,170 はっ 39 00:04:19,540 --> 00:04:20,380 (駒音) 40 00:04:20,710 --> 00:04:24,720 (零)大人なのに ちゃんと僕に 語りかけてくれてるって 41 00:04:25,680 --> 00:04:27,050 それが分かった 42 00:04:28,050 --> 00:04:31,970 そんな人 家族以外では ただ一人だった 43 00:04:52,580 --> 00:04:53,700 (電話の着信音) 44 00:04:53,700 --> 00:04:54,540 (電話の着信音) あっ 45 00:04:54,540 --> 00:04:57,330 (電話の着信音) 46 00:04:59,880 --> 00:05:02,920 (零)え? モモちゃんを保育園に迎えに? 47 00:05:03,380 --> 00:05:05,590 (川本(かわもと)あかり) そうなの 伯母がね 48 00:05:06,300 --> 00:05:08,340 そう 会ったことあるでしょ? 49 00:05:08,510 --> 00:05:10,350 うちの店 「美咲」のママ 50 00:05:11,680 --> 00:05:14,390 階段 踏み外して 足 打撲しちゃって— 51 00:05:14,470 --> 00:05:15,730 今 病院なの 52 00:05:15,890 --> 00:05:17,270 (美咲(みさき))はぁー 53 00:05:17,600 --> 00:05:21,940 ヒナは 部活で 連絡取れなくて おじいちゃんは お店だし 54 00:05:24,280 --> 00:05:26,950 ごめんね 頼まれてくれる? 55 00:05:46,010 --> 00:05:48,470 (保育士) モモちゃーん お迎えよ 56 00:05:48,550 --> 00:05:49,840 (川本(かわもと)モモ)はーい 57 00:05:53,010 --> 00:05:55,470 あーっ! 零ちゃんだ 58 00:05:56,520 --> 00:05:57,350 どうも 59 00:06:05,610 --> 00:06:09,400 ♪るんた るんた ブロー ブロー 60 00:06:09,570 --> 00:06:11,240 (零)楽しそうだな 61 00:06:11,490 --> 00:06:13,080 ♪ブロー ブロー 62 00:06:13,160 --> 00:06:15,910 モモちゃん それ 何の歌だい? 63 00:06:16,120 --> 00:06:21,080 うーんとねー「ねこのうた」 知ってる? フフフ… 64 00:06:21,250 --> 00:06:25,050 ううん 初めて聞くな 65 00:06:27,340 --> 00:06:28,920 はっ… あーっ! 66 00:06:29,010 --> 00:06:30,760 (零)あっ ちょっ… あーっ! 67 00:06:30,840 --> 00:06:32,970 (モモ)モモの お帽子がー! 68 00:06:34,720 --> 00:06:37,600 (零)あっ! あー よかった 69 00:06:37,680 --> 00:06:39,980 もうちょっとで 川に落ちるとこだった 70 00:06:40,060 --> 00:06:41,270 (女性)ああっ! (零)はっ 71 00:06:41,350 --> 00:06:42,480 (犬)ワンワンワン 72 00:06:42,560 --> 00:06:44,400 ワン ワォーン! 73 00:06:44,480 --> 00:06:45,400 (モモ)キャーッ! 74 00:06:45,480 --> 00:06:47,070 (犬)ワンワン 75 00:06:47,150 --> 00:06:50,200 (犬) わぁー! かわいい女の子だ あーそびーましょー! 76 00:06:50,280 --> 00:06:52,530 (女性)駄目よ シロ! (モモ)ワァーン 77 00:06:52,610 --> 00:06:54,490 (犬)ハフハフ 好き好き! (モモ)わぁー! 78 00:06:54,570 --> 00:06:56,580 モモちゃん! モモちゃん! 79 00:06:57,580 --> 00:07:00,660 (犬) キャー! ハフハフ! ねえねえねえ 小さい人 遊ぼう! 80 00:07:00,750 --> 00:07:03,500 ねえねえねえ 遊ぼうよ ハフハフ ハフ! 81 00:07:03,580 --> 00:07:05,630 ハァハァハァ… 82 00:07:05,710 --> 00:07:06,550 あっ! 83 00:07:07,460 --> 00:07:08,710 (犬の鳴き声) 84 00:07:08,800 --> 00:07:11,050 うっ… うっ… 85 00:07:14,010 --> 00:07:15,220 わぁーん! 86 00:07:15,300 --> 00:07:16,260 (犬)えっ? 87 00:07:17,220 --> 00:07:18,640 (零)モモちゃん 大丈夫? 88 00:07:18,720 --> 00:07:20,270 おでこは? ぶつけてない? 89 00:07:20,350 --> 00:07:22,230 (女性) すいません! すいません! 90 00:07:22,310 --> 00:07:25,150 (犬) あ… 泣かせてしまいました 91 00:07:25,230 --> 00:07:26,610 ごめんなさい 92 00:07:34,320 --> 00:07:40,500 (モモ)うっ… ううっ… 93 00:07:44,170 --> 00:07:45,920 (戸を開ける音) 94 00:07:46,130 --> 00:07:47,840 (零)ほら 着いたよ モモちゃん 95 00:07:48,090 --> 00:07:49,670 (零)手当てしないとね (モモ)ううっ… うっ… 96 00:07:50,710 --> 00:07:51,550 (零)っしょ… 97 00:07:52,510 --> 00:07:55,140 モモちゃん お薬箱 どこか分かる? 98 00:07:55,220 --> 00:07:59,140 (モモ)ヒッ…うっ… うん 99 00:08:03,640 --> 00:08:04,770 よく見せて 100 00:08:04,940 --> 00:08:06,730 (モモ)うん… 101 00:08:07,360 --> 00:08:10,530 あぁ… 傷口に砂が入っちゃってるな 102 00:08:16,530 --> 00:08:18,950 (零)はい おてて ジャーっとして 103 00:08:19,700 --> 00:08:21,410 (モモ)零ちゃん 痛い 104 00:08:21,500 --> 00:08:23,660 (零) ごめんね ちょっと我慢して 105 00:08:31,630 --> 00:08:35,590 (零) あ… えーっと まず… 消毒 106 00:08:35,880 --> 00:08:38,680 それと ガーゼと 107 00:08:42,520 --> 00:08:43,390 (モモ)うぅ… 108 00:08:47,480 --> 00:08:49,900 (零)はっ (モモ)う… いっ… 109 00:09:07,370 --> 00:09:09,130 (ちひろ)お兄ちゃん 110 00:09:11,340 --> 00:09:15,380 (零)うっ… うっ… 111 00:09:15,760 --> 00:09:16,930 (モモ)零ちゃん? 112 00:09:20,510 --> 00:09:22,600 (零)今日は 本当に すいませんでした 113 00:09:22,930 --> 00:09:25,140 (あかり)零君… ああもう… 114 00:09:25,230 --> 00:09:27,690 子供が転ぶなんて しょっちゅうある事なんだから 115 00:09:27,770 --> 00:09:29,230 そんなに気にしないで 116 00:09:29,310 --> 00:09:31,360 モモ もう痛くないよ 117 00:09:36,650 --> 00:09:38,660 (クロちゃん)うーん まぶしい 118 00:09:39,110 --> 00:09:41,240 (シロちゃん) あのー 喉が渇いたので— 119 00:09:41,320 --> 00:09:43,950 牛乳か何か いただけまてんか? 120 00:09:44,040 --> 00:09:46,410 (川本(かわもと)ひなた) 零ちゃん すっごく気にしてたね 121 00:09:46,750 --> 00:09:49,210 ご飯も ちょっとしか 食べなかったし 122 00:09:49,830 --> 00:09:52,540 モモ いっぱい泣いて 困らせたんでしょう? 123 00:09:52,630 --> 00:09:54,250 モモ 泣かなかったもん 124 00:09:54,340 --> 00:09:57,050 (ミケちゃん)まだ 晩ごはん もらってないですニャー 125 00:10:00,970 --> 00:10:03,640 でもね 零ちゃんは 泣いてた 126 00:10:03,720 --> 00:10:07,980 涙が ぽーろ ぽーろ してた モモ 見たもん 127 00:10:14,650 --> 00:10:17,030 (ひなた)えーっ? 何で? 128 00:10:17,190 --> 00:10:19,030 何で零君が泣くの? 129 00:10:19,740 --> 00:10:22,700 (あかり) ああ それはね きっと… 130 00:10:29,120 --> 00:10:31,040 思い出しちゃったんだね 131 00:10:31,920 --> 00:10:32,750 ん? 132 00:10:36,840 --> 00:10:38,260 (あかり)零ちゃんにもね— 133 00:10:40,510 --> 00:10:42,140 妹がいたんだよ 134 00:10:49,640 --> 00:10:51,140 (零)僕の日常は— 135 00:10:51,520 --> 00:10:53,560 ある日 いきなり 引きちぎられるように— 136 00:10:53,650 --> 00:10:55,020 唐突に終わった 137 00:10:58,780 --> 00:11:00,280 遠足から戻ると 138 00:11:00,530 --> 00:11:04,200 僕の大切な 父と母と小さな妹は 139 00:11:06,080 --> 00:11:10,210 冷たくて固い まだらの塊になっていた 140 00:11:18,880 --> 00:11:21,800 (親戚A)飲酒運転の トラックの巻き添えですって 141 00:11:21,930 --> 00:11:24,260 (親戚B) 三人とも即死だったらしいな 142 00:11:24,430 --> 00:11:26,430 (親戚C) 息子さんはどうなるのかしら 143 00:11:26,510 --> 00:11:29,270 (親戚D)妹の貴和子さんが 引き取るんじゃないの? 144 00:11:29,350 --> 00:11:30,180 (親戚E)まさか— 145 00:11:30,270 --> 00:11:32,810 あの女が そんな役 買って出るわけないだろう 146 00:11:32,890 --> 00:11:35,190 (親戚F) おじいさまも もうお年だしね 147 00:11:35,270 --> 00:11:36,940 (零の祖父)このばか者! 148 00:11:37,570 --> 00:11:39,780 病院はどうするつもりだ! 149 00:11:40,320 --> 00:11:44,320 せっかく お前が 将棋をやめて 継いでくれて 150 00:11:44,610 --> 00:11:46,030 これからは 全部うまくいくと… 151 00:11:46,120 --> 00:11:48,200 (貴和子の夫) お義父さん 大丈夫ですよ 152 00:11:48,280 --> 00:11:50,870 僕がいますよ 僕に任せてください 153 00:11:50,950 --> 00:11:53,620 (貴和子)そうよ 最初から そう言ってたのに— 154 00:11:53,710 --> 00:11:55,540 父さんは 兄さんばっかり 155 00:11:56,960 --> 00:11:58,340 かわいそうに 156 00:11:59,420 --> 00:12:03,260 零君には ちゃんと私が いい施設を探しますからね 157 00:12:05,640 --> 00:12:09,720 (零)施設という所が どんな場所かは分からなかった 158 00:12:10,850 --> 00:12:15,350 でも 今までは 学校で どんなにつらくても 159 00:12:15,810 --> 00:12:18,520 夕方には あたたかい自分の部屋で 160 00:12:18,610 --> 00:12:21,530 一人になって ほっと落ち着くことができた 161 00:12:22,570 --> 00:12:24,740 でも そこに入ったら 162 00:12:25,070 --> 00:12:29,450 帰っても 誰かが ずっといて 眠るときも 誰かがいて 163 00:12:30,290 --> 00:12:32,910 もう ほっとできる時間は— 164 00:12:33,000 --> 00:12:38,750 365日の中で 一瞬も無くなるのだ ということだけは分かった 165 00:12:40,300 --> 00:12:42,920 そして その人は やって来た 166 00:12:45,510 --> 00:12:50,390 葬儀には 血のつながった親戚が たくさん集まっていたけれど 167 00:12:51,430 --> 00:12:54,390 その時 部屋に入ってきた その人だけが— 168 00:12:56,850 --> 00:12:59,900 叫び出したいほど 懐かしかった 169 00:13:02,480 --> 00:13:05,320 ですから 桐山医院は 主人が継ぎます 170 00:13:05,450 --> 00:13:07,110 口出しは ご無用ですわ 171 00:13:08,110 --> 00:13:10,530 (親戚G)まったく 貴和子さんの態度ったら… 172 00:13:10,780 --> 00:13:12,910 (親戚H)あの子は 昔から ああだったわ 173 00:13:13,040 --> 00:13:15,410 (親戚I) しっ! お前 ご霊前だぞ 174 00:13:15,500 --> 00:13:16,580 だって… 175 00:13:24,380 --> 00:13:28,470 (幸田)君は 将棋 好きか? 176 00:13:30,090 --> 00:13:32,310 (零)これが 契約の瞬間だった 177 00:13:33,060 --> 00:13:37,560 将棋の神様と僕の 醜いうそで固めた… 178 00:13:41,190 --> 00:13:42,070 (幼い零)はい 179 00:13:44,440 --> 00:13:45,530 (零)うそだった 180 00:13:46,360 --> 00:13:49,280 人生で初めての 生きるための— 181 00:13:50,820 --> 00:13:53,490 そして 決して戻れない… 182 00:13:54,830 --> 00:13:58,670 そうして 幕は どうしようもなく 切って落とされ— 183 00:14:00,670 --> 00:14:03,750 僕は 将棋の家の子になった 184 00:14:16,890 --> 00:14:17,770 (零)あっ 185 00:14:20,100 --> 00:14:21,270 ほつれてる 186 00:14:21,690 --> 00:14:22,940 あぁ 駄目だ 187 00:14:23,020 --> 00:14:24,520 引っ張ったら余計… 188 00:14:25,820 --> 00:14:28,360 こういうのって どうしたらいいんだ? 189 00:14:29,820 --> 00:14:30,660 (零)うっ 190 00:14:46,670 --> 00:14:48,210 (ドアチャイム) 191 00:14:49,920 --> 00:14:52,300 (零)あった これか? 192 00:15:04,230 --> 00:15:06,980 (零)将棋の家で 僕を待っていたのは— 193 00:15:07,690 --> 00:15:11,910 同じく 棋士を目指す その家の 本当の子供たち 194 00:15:12,280 --> 00:15:14,910 (幸田(こうだ)香子(きょうこ)) いい気になんないで! ゼロのくせに 195 00:15:18,370 --> 00:15:24,250 (零)四つ上の姉の香子と 同じ年で 弟の小3の歩(あゆむ)だった 196 00:15:32,470 --> 00:15:33,550 (香子)フン 197 00:15:38,470 --> 00:15:41,730 (幸田の妻)お父さん どうか もう この辺で許してやって 198 00:15:41,810 --> 00:15:42,730 駄目だ 199 00:15:42,810 --> 00:15:44,480 (幸田の妻) 香子は 女の子なのよ 200 00:15:44,560 --> 00:15:46,860 将棋うんぬん以前の問題だ 201 00:15:46,940 --> 00:15:48,650 負けて 相手を殴るなんて! 202 00:15:48,730 --> 00:15:49,730 (幸田の妻)でも… 203 00:15:50,360 --> 00:15:52,570 (零)父は 香子には厳しかった 204 00:15:53,950 --> 00:15:58,530 たぶん 彼女の強さが 余計に 父にそうさせたのだと思う 205 00:15:59,240 --> 00:16:03,580 全ての面において 彼女は 嵐のように激しかった 206 00:16:04,210 --> 00:16:08,380 棋風も 気性も その美しさも 207 00:16:09,590 --> 00:16:12,760 ちょっと 何じろじろ見てんのよ チビ 208 00:16:13,510 --> 00:16:14,380 (幼い零)ハッ! 209 00:16:17,850 --> 00:16:19,350 (幼い零)ウッ! (幸田)コラッ! 香子! 210 00:16:19,430 --> 00:16:20,350 (香子)ハッ 211 00:16:21,470 --> 00:16:23,140 (幼い零)あの… お父さん 212 00:16:23,350 --> 00:16:25,230 (幸田)ん? (幼い零)お代わりを 213 00:16:25,940 --> 00:16:27,360 ああ 頼む 214 00:16:27,980 --> 00:16:28,820 (香子)はっ? 215 00:16:30,190 --> 00:16:32,030 ちょっと 何? 今の 216 00:16:32,650 --> 00:16:34,150 お父さんって 何それ 217 00:16:34,240 --> 00:16:37,490 はっ あの… ごめんなさい 218 00:16:37,570 --> 00:16:40,450 変か? 私が そう呼べって言ったんだよ 219 00:16:40,540 --> 00:16:42,950 何で? その子 内弟子でしょ 220 00:16:43,410 --> 00:16:45,960 養子でもないのに 何でお父さんなのよ 221 00:16:46,170 --> 00:16:49,000 うちの中で 師匠と 呼ばれるのも落ち着かん 222 00:16:49,540 --> 00:16:52,460 将棋のお父さんだからじゃ 駄目なのか? 223 00:16:52,880 --> 00:16:55,840 あっ そういえば 道場の井上さんに聞いたぞ 224 00:16:55,930 --> 00:16:59,640 零 お前 アマ名人の 橋本さんに勝ったんだってな 225 00:16:59,720 --> 00:17:01,220 すごいじゃないか 226 00:17:11,730 --> 00:17:13,900 (零)父は将棋を愛していた 227 00:17:14,690 --> 00:17:18,360 良くも悪くも 全てが将棋中心だった 228 00:17:20,910 --> 00:17:25,330 だから 彼を愛する者は 強くなるしかなかった 229 00:17:28,790 --> 00:17:31,540 彼の視界に入り続けるために 230 00:17:35,880 --> 00:17:41,100 そして 最初におかしくなったのは 歩だった 231 00:17:41,720 --> 00:17:44,640 (教師)歩君 最近 学校でもふさぎがちです 232 00:17:44,930 --> 00:17:46,680 成績も落ちています 233 00:17:46,850 --> 00:17:49,100 ご家庭で 何か あったのでしょうか? 234 00:17:49,350 --> 00:17:52,570 (幸田の妻)あの… 今 引き取ってる内弟子の子に— 235 00:17:52,690 --> 00:17:55,280 将棋で抜かれてしまって それで… 236 00:17:58,950 --> 00:18:01,200 (幸田(こうだ) 歩(あゆむ))僕 もう 将棋やめる 237 00:18:01,320 --> 00:18:02,780 (幼い零)ハァ ハァ 238 00:18:03,410 --> 00:18:04,450 (幸田)無理だよ 239 00:18:04,620 --> 00:18:08,040 他人が説得しなけりゃ 続かないようなら 駄目なんだ 240 00:18:08,120 --> 00:18:08,960 (幼い零)でも… 241 00:18:09,040 --> 00:18:12,790 (幸田)自分で自分を説得しながら 進んでいける人間でなければ— 242 00:18:12,880 --> 00:18:14,000 駄目なんだ 243 00:18:16,260 --> 00:18:18,550 プロになるのが ゴールなんじゃない 244 00:18:19,090 --> 00:18:22,550 なってからの方が 気が遠くなるほど長いんだ 245 00:18:23,050 --> 00:18:27,890 進めば進むほど 道は険しく 周りに 人はいなくなる 246 00:18:28,520 --> 00:18:31,480 自分で自分を メンテナンスできる人間しか— 247 00:18:31,940 --> 00:18:34,400 どのみち 先へは 進めなくなるんだよ 248 00:19:07,560 --> 00:19:08,470 (香子)ウッ… 249 00:19:15,230 --> 00:19:16,070 (香子)何で? 250 00:19:16,150 --> 00:19:18,940 何で 私が 奨励会を やめなきゃなんないの? 251 00:19:19,190 --> 00:19:20,030 (幼い零)あっ… 252 00:19:20,150 --> 00:19:22,700 (幸田)零に勝てないのなら これ以上は無理だ 253 00:19:22,860 --> 00:19:25,950 初段まで行けば これ以上が ゴロゴロいるんだぞ 254 00:19:26,370 --> 00:19:27,910 (香子)くっ… うっ… 255 00:19:27,990 --> 00:19:29,750 (幸田)分かってるだろう 香子 256 00:19:32,040 --> 00:19:35,210 (将棋関係者A)結局 残ったのは 他人の子供だけか 257 00:19:35,380 --> 00:19:37,380 (将棋関係者B) あの子 桐山の子だろう? 258 00:19:37,460 --> 00:19:39,460 ライバルの子を わざわざ育てて— 259 00:19:39,550 --> 00:19:41,880 自分の子が 食われちまったってわけか 260 00:19:41,970 --> 00:19:43,430 (将棋関係者A)皮肉なもんだな 261 00:19:44,090 --> 00:19:44,930 (零)うっ! 262 00:19:56,360 --> 00:19:59,940 (零)その後 香子は 街で遊びまわるようになり 263 00:20:00,280 --> 00:20:03,110 歩は 部屋に籠もって ゲームに のみ込まれ 264 00:20:03,490 --> 00:20:05,910 三人で過ごすことは なくなった 265 00:20:06,490 --> 00:20:10,750 居たたまれない僕は ますます 将棋の勉強にのめり込み 266 00:20:11,000 --> 00:20:12,330 そして 267 00:20:13,750 --> 00:20:17,290 僕は 中二の終わりに プロの一歩手前— 268 00:20:17,590 --> 00:20:19,840 三段リーグにまで 到達した 269 00:20:22,510 --> 00:20:27,260 (テレビの音声) 鳥には 自分で子育てをせず たく卵をする種があります 270 00:20:27,800 --> 00:20:31,720 カッコウは モズやホオジロの巣に 卵を産み付け— 271 00:20:32,480 --> 00:20:35,390 かえったひなは もともとの子供たちを— 272 00:20:35,480 --> 00:20:41,690 卵のうちに全て外へ落とし 巣を占領します 273 00:20:42,280 --> 00:20:44,400 何も知らない育ての親は— 274 00:20:44,490 --> 00:20:49,780 自分の子を殺した他人の子に せっせと餌を運び 育て続けます 275 00:20:49,870 --> 00:20:51,790 (零)ああ 僕だ 276 00:20:52,200 --> 00:20:53,500 (テレビの音声) たとえ カッコウのひなが— 277 00:20:53,660 --> 00:20:56,000 自分より 大きくなってしまっても— 278 00:20:56,290 --> 00:20:59,090 いつまでも 餌を運び続けるのです 279 00:21:00,210 --> 00:21:01,960 (零)この鳥は僕だ 280 00:21:02,960 --> 00:21:05,590 (零の担任)本当に 高校には 行かないのかね? 281 00:21:06,050 --> 00:21:06,880 (零)はい 282 00:21:07,340 --> 00:21:09,050 (零の担任) 本当にそれでいいのかい? 283 00:21:09,680 --> 00:21:11,010 (零)学校というのは— 284 00:21:11,100 --> 00:21:14,680 将来の道を 選ぶために 通う所だと思います 285 00:21:15,560 --> 00:21:18,480 だから もう 僕には 必要ありません 286 00:21:19,560 --> 00:21:22,860 このまま行けば 今年中… 今年は無理でも— 287 00:21:23,110 --> 00:21:27,200 来年には 三段リーグを抜け 僕は プロになります 288 00:21:28,160 --> 00:21:30,200 将棋に集中したいんです 289 00:21:30,700 --> 00:21:34,700 プロになって 頑張って 少しでも成績を上げて 290 00:21:34,790 --> 00:21:36,080 (零)家を出よう 291 00:21:36,540 --> 00:21:39,330 勝ち星をつかんで お金を稼いで 292 00:21:39,420 --> 00:21:41,540 (零)一刻も早く出なければ 293 00:21:41,790 --> 00:21:43,960 そして自立したいんです 294 00:21:47,510 --> 00:21:52,640 僕があの家の人たちを… 父さんを食い尽くす前に 295 00:21:54,100 --> 00:21:55,100 (零)出来た 296 00:21:57,770 --> 00:21:59,900 ちょっとギザギザに なっちゃったけど 297 00:22:01,230 --> 00:22:04,780 大丈夫 これでもう これ以上 ほつれない 298 00:22:06,820 --> 00:22:09,820 よかった まだ着ていられる 299 00:22:11,240 --> 00:22:13,080 (幸田)何だ 零 寒いのか? 300 00:22:14,330 --> 00:22:15,790 (零)僕は カッコウだ 301 00:22:16,200 --> 00:22:18,960 そうだ とりあえず これを着てなさい 302 00:22:19,210 --> 00:22:20,500 私ので悪いが 303 00:22:21,750 --> 00:22:24,000 (零)押しのけた命の上に立ち 304 00:22:24,090 --> 00:22:26,550 (幸田)ハッハッハ ちょっと でかすぎるな 305 00:22:26,630 --> 00:22:29,380 だ… 大丈夫です うれしいです 306 00:22:30,010 --> 00:22:31,890 すごくあったかいです 307 00:22:33,180 --> 00:22:35,680 (零)春をうたえと呼ぶ声を聞く 308 00:22:38,390 --> 00:22:40,900 ありがとう お父さん 309 00:22:42,520 --> 00:22:43,730 そして思う 310 00:22:44,150 --> 00:22:46,320 いっそ本当に鳥だったらと 311 00:22:47,190 --> 00:22:48,490 そうしたら 312 00:22:50,320 --> 00:22:54,620 こんな激しい痛み 知らずに済んだのにと 313 00:23:00,920 --> 00:23:06,920 ♪〜 314 00:24:24,420 --> 00:24:30,420 〜♪ 315 00:24:33,170 --> 00:24:34,470 (零) どこか行きたい 316 00:24:34,550 --> 00:24:36,220 (ひなた) 中華街! 横浜の 317 00:24:36,300 --> 00:24:39,050 肉まんとか エビチリとか 318 00:24:39,140 --> 00:24:40,390 (あかり) 海がきれいで— 319 00:24:40,470 --> 00:24:42,770 のんびりできる所かな 320 00:24:42,850 --> 00:24:43,730 (モモ)芋ほり! 321 00:24:43,810 --> 00:24:46,270 あとね おしょうゆ工場 322 00:24:46,350 --> 00:24:47,650 (零) 包みましょうよ— 323 00:24:47,730 --> 00:24:49,230 もっと こう オブラートに 324 00:24:49,320 --> 00:24:51,030 ストレートすぎますよ 325 00:24:51,900 --> 00:24:52,990 (モモ)3… 326 00:24:53,190 --> 00:24:54,950 3月のライオン 327 00:24:55,030 --> 00:24:57,280 モモは ライオンさんより 328 00:24:57,360 --> 00:24:59,030 ボドロが好きです