1 00:00:02,002 --> 00:00:13,013 ♬~ 2 00:01:48,041 --> 00:01:51,044 (阿良川ぐりこ)《一体 何をやってんだ…》 3 00:01:51,044 --> 00:01:55,048 《これから爆売れする落語家 阿良川ぐりこともあろう者が→ 4 00:01:55,048 --> 00:01:58,051 てめえの師匠をつけるなんて…》 5 00:01:59,052 --> 00:02:03,056 《すみません 師匠 それもこれも 昨日の現場で…》 6 00:02:03,991 --> 00:02:05,993 (ぐりこ)「はなから しまいまで 釣りの手ほどきしてくれる?」。 7 00:02:05,993 --> 00:02:11,999 「んなこた どうでもいいよ。 ほんのコツだけ教えてくれや」。 8 00:02:11,999 --> 00:02:14,001 (拍手) 9 00:02:14,001 --> 00:02:16,003 (利一の声)ぐりこ ちょっといい? 10 00:02:16,003 --> 00:02:18,005 おう 利一。 どうした? 11 00:02:18,005 --> 00:02:21,008 (利一)ぐりこって 志ぐま師匠の弟子だよね? 12 00:02:21,008 --> 00:02:26,013 おうよ! 阿良川志ぐま最後の弟子たあ 俺のことよ! 13 00:02:26,013 --> 00:02:29,016 ナッハッハッハッ…! (利一)言いにくいんだけどさ…。 14 00:02:29,016 --> 00:02:34,021 志ぐま師匠が 若いギャルと付き合ってるってガチ? 15 00:02:34,021 --> 00:02:36,023 はあっ!? んだ それ!? 16 00:02:36,023 --> 00:02:40,027 (利一)並んで歩いてるのを見たって人が 何人もいてさ…。 17 00:02:40,027 --> 00:02:42,029 (ぐりこ)ああ…。 18 00:02:42,029 --> 00:02:44,031 ガチ…。 ええっ…! 19 00:02:44,031 --> 00:02:47,034 なわけねえだろ! ハハハハハハ…! 20 00:02:49,036 --> 00:02:53,040 (ぐりこ)《あっ 入った! カラオケ…?》 21 00:02:56,043 --> 00:02:58,045 《あそこか…!》 22 00:03:00,981 --> 00:03:02,983 (ぐりこ)《はっ…!》 23 00:03:04,985 --> 00:03:07,988 《いや これ…》 24 00:03:08,989 --> 00:03:10,991 《ガチじゃん…!》 25 00:03:13,994 --> 00:03:16,997 (ぐりこ)《えっ… 何してんの? この2人》 26 00:03:16,997 --> 00:03:18,999 《落語!? そういう戯れ?》 27 00:03:18,999 --> 00:03:21,001 《でも 師匠の顔は…→ 28 00:03:21,001 --> 00:03:24,004 真剣そのもの!》 29 00:03:24,004 --> 00:03:26,006 (店員)あのー お客様…。 30 00:03:26,006 --> 00:03:28,008 えっ? (店員)どうかなさいましたか? 31 00:03:28,008 --> 00:03:32,012 (ぐりこ)えっ! え~ あの… いや 違くて その…。 32 00:03:32,012 --> 00:03:35,015 (ひねる音) (ぐりこ)ごっ…! ああ~…! 33 00:03:35,015 --> 00:03:39,019 (店員)お客様~! お客様~! お客様~…! 34 00:03:39,019 --> 00:03:41,021 (ぐりこ)ああっ…! うっ!? 35 00:03:43,023 --> 00:03:45,025 (阿良川志ぐま)馬鹿野郎!! 36 00:03:45,025 --> 00:03:49,029 つまらんうわさに乗せられて 俺をつけてただと!? 37 00:03:49,029 --> 00:03:53,033 (志ぐま)トンチキなことしやがって… 恥を知れ!! 38 00:03:54,034 --> 00:03:58,038 (桜咲朱音)そもそも コソコソするから→ 39 00:03:58,038 --> 00:03:59,973 駄目なんじゃん? 40 00:03:59,973 --> 00:04:02,976 ああっ!? てめえ 誰にナマこいてんだ この野郎! 41 00:04:02,976 --> 00:04:05,979 師匠 なんなんですか このガキは!? 42 00:04:05,979 --> 00:04:09,983 (志ぐま)こいつは桜咲朱音。 志ん太の娘だ。 えっ!? 43 00:04:10,984 --> 00:04:12,986 よろしく! 44 00:04:12,986 --> 00:04:14,988 (ぐりこ)えっ? 45 00:04:14,988 --> 00:04:16,990 《こ… こいつが…→ 46 00:04:16,990 --> 00:04:20,994 6年前に破門になった 志ん太兄さんの…》 47 00:04:20,994 --> 00:04:24,998 そんなことより…→ 48 00:04:24,998 --> 00:04:28,001 どうでした? 私の落語は。 49 00:04:29,002 --> 00:04:33,006 あの日から 稽古をつけていただくようになって6年…。 50 00:04:33,006 --> 00:04:37,010 まだ 人前で落語をやる許可は もらえていませんが→ 51 00:04:37,010 --> 00:04:41,014 私も今年で17 高校3年生になりました。 52 00:04:41,014 --> 00:04:45,018 (志ぐま)…思いは変わらずか。 はい。 53 00:04:46,019 --> 00:04:50,023 阿良川一門の真打になる。 54 00:04:50,023 --> 00:04:55,028 真打になって おっ父の芸は すごかったってことを→ 55 00:04:55,028 --> 00:04:59,032 みんなに… あの男に…→ 56 00:04:59,032 --> 00:05:01,034 私が証明する! 57 00:05:01,968 --> 00:05:03,970 弟子入りを認めてください! 58 00:05:04,971 --> 00:05:07,974 時がたつのは早えなあ…。 59 00:05:14,981 --> 00:05:21,988 弟子にしろって… 朱音 おまえ まだ小学生だろ? 60 00:05:21,988 --> 00:05:25,992 なぜ 落語家になりたい? 61 00:05:25,992 --> 00:05:28,995 一体 何があったんだ? 62 00:05:32,999 --> 00:05:38,004 おっ父は コンクリートを売る会社に入った。 63 00:05:39,005 --> 00:05:42,008 (朱音の声)いつまでも 落ち込んだままじゃいられないって→ 64 00:05:42,008 --> 00:05:48,014 働き出して… 毎日 忙しそうで…。 65 00:05:48,014 --> 00:05:50,016 でも そのおかげで→ 66 00:05:50,016 --> 00:05:57,023 落語してた時より お金がもらえて お外でご飯を食べられるようになって…。 67 00:05:59,025 --> 00:06:02,963 (志ぐま)…なら よかったじゃないか。 68 00:06:02,963 --> 00:06:07,968 みんなからも言われる よかったねって。 69 00:06:07,968 --> 00:06:11,972 おっ父が… 落語をやめて…→ 70 00:06:11,972 --> 00:06:14,975 やめさせられて よかったね… って。 71 00:06:14,975 --> 00:06:18,979 (朱音の声) 朱音は おっ父の落語が好きだった! 72 00:06:18,979 --> 00:06:24,985 一人でしゃべってるだけなのに いろんな人や景色が見えて 魔法みたいで…。 73 00:06:24,985 --> 00:06:29,990 だから もう おっ父の落語が見れなくなるのが 悲しくて…。 74 00:06:29,990 --> 00:06:33,994 でも みんなは おっ父が落語をやめた時→ 75 00:06:33,994 --> 00:06:37,998 真面目になったって みんな ニコニコ笑ってて…。 76 00:06:37,998 --> 00:06:39,100 (朱音がはなをすする音) 77 00:06:39,100 --> 00:06:43,003 悲しんでるのは朱音だけで→ 78 00:06:43,003 --> 00:06:46,006 よかったねって言われるたびに…→ 79 00:06:46,006 --> 00:06:52,012 おっ父の落語が駄目だって言われてるみたいで 嫌で… 悔しくて…。 80 00:06:52,012 --> 00:06:54,014 だから 決めたの!! 81 00:06:54,014 --> 00:06:59,019 朱音が真打になって おっ父の落語は すごいって証明するって! 82 00:06:59,019 --> 00:07:05,959 ♬~ 83 00:07:05,959 --> 00:07:09,963 (志ぐま)《大きくなった… ホントに…》 84 00:07:11,965 --> 00:07:16,970 《高卒で入門… 今どき珍しいが 全くない話ではない…》 85 00:07:16,970 --> 00:07:21,975 《問題があるとするならば… 俺のほうだ》 86 00:07:21,975 --> 00:07:24,978 《俺に弟子をとる資格なんてない…》 87 00:07:24,978 --> 00:07:26,980 《だが しかし…》 88 00:07:26,980 --> 00:07:28,982 (携帯電話の振動音) 89 00:07:28,982 --> 00:07:30,984 (志ぐま)すまんな 朱音。 90 00:07:30,984 --> 00:07:34,988 …もしもし。 ああ ご無沙汰してます! 91 00:07:34,988 --> 00:07:38,992 ええ。 ああ それは大変だ! 92 00:07:38,992 --> 00:07:41,995 こちらで探してみましょう。 では のちほど…。 93 00:07:42,996 --> 00:07:45,999 (ぐりこ)師匠 何かあったんですか? 94 00:07:45,999 --> 00:07:51,004 (志ぐま)らくご喫茶の吉乃さんだ。 今日 寄席に出られる演者を探してるらしい。 95 00:07:51,004 --> 00:07:53,006 急ですね。 96 00:07:53,006 --> 00:07:56,009 (志ぐま) 独演会の演者の入りが遅れるらしくてな…。 97 00:07:56,009 --> 00:07:58,011 そうですか…。 98 00:07:58,011 --> 00:08:00,947 分かりました! じゃあ 俺が…。 (志ぐま)ああ。 99 00:08:00,947 --> 00:08:02,949 朱音 おめえ 行ってこい。 100 00:08:02,949 --> 00:08:04,951 えっ いいの!? (ぐりこ)ええっ!? 101 00:08:04,951 --> 00:08:09,956 朱音… 弟子入りするってことは まさしく プロの落語家になるってことだ。 102 00:08:09,956 --> 00:08:12,959 一度 プロの世界を見てこい! 103 00:08:13,960 --> 00:08:18,965 分かりました。 爆笑とって鼻明かしてやりますから→ 104 00:08:18,965 --> 00:08:20,967 楽しみに待っててくださいよ! 105 00:08:22,969 --> 00:08:25,972 (吉乃紗季)あら ぐりちゃん! 今日は よろしくね。 106 00:08:25,972 --> 00:08:30,977 いやあ そのー… 今日 上がるのは俺じゃなくって…。 107 00:08:31,978 --> 00:08:33,980 こいつです。 108 00:08:33,980 --> 00:08:36,983 (紗季)《えっ? この子が…!?》 109 00:08:36,983 --> 00:08:40,987 あっ! 吉乃さんでいらっしゃいますか! (紗季)えっ… あっ はい。 110 00:08:40,987 --> 00:08:44,991 このたび 阿良川志ぐまより 代役の任を仰せつかりました! 111 00:08:44,991 --> 00:08:46,993 桜咲朱音と申します! 112 00:08:46,993 --> 00:08:51,998 またとない この機会 誠心誠意 努めてまいります! 113 00:08:51,998 --> 00:08:54,000 よろしくお願いします! 114 00:08:54,000 --> 00:08:56,002 《何? この子…》 115 00:08:57,003 --> 00:08:59,005 《いい子じゃないのよ~!》 116 00:08:59,005 --> 00:09:01,007 こちらこそ よろしくね。 117 00:09:02,942 --> 00:09:04,944 (女性客)あかねって誰? 118 00:09:04,944 --> 00:09:08,948 (男性客)名前だけって珍しいな。 どこの一門の人なんだろう? 119 00:09:10,950 --> 00:09:14,954 えっ 弟子じゃない? しかも 初高座!? 120 00:09:14,954 --> 00:09:17,957 最悪 俺がケツ拭くんで 上げてやってください! 121 00:09:17,957 --> 00:09:20,960 (紗季)《ぐりちゃんは ああ言ってたけど…》 122 00:09:22,962 --> 00:09:25,965 出囃子が鳴ったら出番だかんな。 123 00:09:26,966 --> 00:09:28,968 …って聞いてる? 124 00:09:28,968 --> 00:09:31,971 えっ!? えっ あっ… いや 確かに! 125 00:09:31,971 --> 00:09:35,975 師匠から借りた この着物 サイズぴったりで…。 126 00:09:35,975 --> 00:09:37,977 (ぐりこ)おまえ 緊張してんだろ。 127 00:09:37,977 --> 00:09:39,979 えっ? はあっ!? してないし! 128 00:09:39,979 --> 00:09:42,982 (ぐりこ)まあ 聞け。 いいか? 129 00:09:42,982 --> 00:09:45,985 利き手に「人」って字を書いて飲むんだ。 130 00:09:45,985 --> 00:09:48,988 「利き手」は「聴き手」。 131 00:09:48,988 --> 00:09:52,992 落語家は 聴き手の人をのむんだよ。 132 00:09:52,992 --> 00:09:56,996 師匠も大舞台の時は たまにやってんぞ。 師匠が!? 133 00:09:58,998 --> 00:10:01,000 (ぐりこ)やっぱ 緊張してんじゃねえか。 134 00:10:01,000 --> 00:10:03,002 うるさい! 135 00:10:03,002 --> 00:10:05,004 …まあ 気負わずやれよ。 136 00:10:07,006 --> 00:10:10,009 🔊♬~(出囃子) あんた… もしかして いい人? 137 00:10:10,009 --> 00:10:14,013 (ぐりこ)もしかしてって なんだよ! ごめん ウソ ウソ。 138 00:10:15,014 --> 00:10:17,016 …ありがとね。 139 00:10:20,019 --> 00:10:23,022 ちょっと楽んなった。 140 00:10:23,022 --> 00:10:26,025 (深呼吸) 141 00:10:29,028 --> 00:10:32,031 んじゃ…→ 142 00:10:32,031 --> 00:10:34,033 いってくる! 143 00:10:34,033 --> 00:10:40,039 🔊♬~(出囃子) 144 00:10:45,044 --> 00:10:49,048 (深呼吸) 145 00:10:51,050 --> 00:10:54,053 《うわっ 多っ…》 146 00:10:54,053 --> 00:10:58,057 《いや 知ってたけど… 分かってたけど》 147 00:11:01,995 --> 00:11:08,001 《ここから見ると… 圧やばっ…》 148 00:11:10,003 --> 00:11:13,006 《それに なんというか すごく…→ 149 00:11:13,006 --> 00:11:15,008 一人だ…》 150 00:11:16,009 --> 00:11:21,014 《でも… 私は 自分の意志で ここに来た》 151 00:11:24,017 --> 00:11:28,021 《折れるな。 逃げるな》 152 00:11:28,021 --> 00:11:30,023 《出し切れ…》 153 00:11:30,023 --> 00:11:33,026 《積み重ねてきたものを…》 154 00:11:35,028 --> 00:11:39,032 《私の中にあるものを…→ 155 00:11:39,032 --> 00:11:42,035 今日 ここで… 全部!》 156 00:11:43,036 --> 00:11:47,040 「えー 好き嫌いなどというものは どなたにもあるものですが…」。 157 00:11:47,040 --> 00:11:49,042 (ぐりこ)《よかった 話し始めた…》 158 00:11:49,042 --> 00:11:53,046 《声も出てるし 所作も堂々としてる》 159 00:11:53,046 --> 00:11:56,049 「とうっ! はっ はっ はあ…!」。 160 00:11:56,049 --> 00:11:58,051 「ああ 驚いた! いや 驚いた!」。 161 00:11:58,051 --> 00:11:59,986 (ぐりこ)〈落語は会話劇〉 162 00:11:59,986 --> 00:12:04,991 〈それぞれの登場人物を一人で演じて そのやりとりで笑いをとる〉 163 00:12:04,991 --> 00:12:06,993 「かまっ首ひゅいと持ち上げてね→ 164 00:12:06,993 --> 00:12:08,995 口をぱっくり 舌をペロペロペローって→ 165 00:12:08,995 --> 00:12:11,998 蛇がいるんだよ 蛇が! つあ~! 驚いた」。 166 00:12:11,998 --> 00:12:13,100 「へえ ホントかよ おい」。 167 00:12:13,100 --> 00:12:16,002 「ええ どうだい? そっちはよ なんかあるのかい?」。 168 00:12:16,002 --> 00:12:18,004 (紗季)《『まんじゅうこわい』》 169 00:12:18,004 --> 00:12:23,009 《町内の若い衆が 怖いものを言い合う中で起こる騒動を描いた→ 170 00:12:23,009 --> 00:12:25,011 おなじみの古典落語》 171 00:12:25,011 --> 00:12:27,013 《だけど…》 172 00:12:27,013 --> 00:12:30,016 「怖いもんあった…」 「ほ~れ 見ろ」。 173 00:12:30,016 --> 00:12:33,019 (紗季)《やだやだ… 何 これ…》 174 00:12:33,019 --> 00:12:38,024 《弟子入り前の… しかも 今日 初高座の子がやれるレベルじゃない》 175 00:12:41,027 --> 00:12:43,029 「まんじゅう…」。 176 00:12:43,029 --> 00:12:46,032 「ああん? まんじゅう? なんだい? ええ?」。 177 00:12:46,032 --> 00:12:50,036 「まんじゅう? なんだい おい。 まんじゅうって虫 いるかい?」。 178 00:12:50,036 --> 00:12:53,039 (観客の笑い声) 《でも なんだろう? この懐かしさは》 179 00:12:53,039 --> 00:12:55,041 「あの野郎 まんじゅうが怖いんだってよ」。 180 00:12:55,041 --> 00:12:59,045 「おっ! まんじゅう見て死ぬんだから “アン殺”ってんじゃない?」。 181 00:12:59,045 --> 00:13:01,047 《はっ… 志んちゃん?》 182 00:13:02,982 --> 00:13:04,984 「だっ はっ はっ はっ!」。 183 00:13:04,984 --> 00:13:06,986 「ほっ ほっ ほっ ほお~!」。 184 00:13:06,986 --> 00:13:08,988 「まんじゅう~!?」。 (観客の笑い声) 185 00:13:08,988 --> 00:13:11,991 「おい! 俺が まんじゅう怖え怖え って言うから→ 186 00:13:11,991 --> 00:13:15,995 みんなで まんじゅう買ってきて 俺のこと殺そうとしてんだ!」。 187 00:13:15,995 --> 00:13:18,998 「まんじゅう 怖~い…」。 188 00:13:18,998 --> 00:13:23,002 「まんじゅう~ 怖え… 怖えよお…」。 189 00:13:23,002 --> 00:13:27,006 「まんじゅう… ああ 怖え… まんじゅう 怖えよお…」。 190 00:13:27,006 --> 00:13:30,009 「怖え… まんじゅう…」。 191 00:13:30,009 --> 00:13:33,012 (つばをのみ込む音) 「ええ~ なんだい? これ。 おい…」。 192 00:13:33,012 --> 00:13:35,014 「つぶしあんじゃねえか」。 193 00:13:38,017 --> 00:13:41,020 「うん… うんうん」。 194 00:13:43,022 --> 00:13:45,024 「なんだい? これ おい」。 195 00:13:45,024 --> 00:13:48,027 「そばまんじゅうじゃねえか。 これよお~ ええ?」。 196 00:13:48,027 --> 00:13:51,030 「おい 怖えよ! おめえ まったく… ふざけ…」。 197 00:13:51,030 --> 00:13:55,034 (ぐりこ)《おいおい さっきの緊張は どこに行ったんだよ》 198 00:13:55,034 --> 00:13:58,037 《初高座でも物おじしない舞台度胸…》 199 00:13:58,037 --> 00:14:00,973 《クソッ… 何が まんじゅう怖いだ》 200 00:14:00,973 --> 00:14:03,976 《おめえが一番怖えよ》 201 00:14:05,978 --> 00:14:08,981 (阿良川魁生)はあ~ 最悪! 202 00:14:08,981 --> 00:14:12,985 せっかく念願かなって らくご喫茶で独演会ができるってのに…。 203 00:14:12,985 --> 00:14:18,991 事故渋滞のせいで 3時間半も高速バスに拘束されちゃうなんて→ 204 00:14:18,991 --> 00:14:20,993 笑えないよ…。 205 00:14:20,993 --> 00:14:22,995 すっかり お客さんを待たせちゃったなあ…。 206 00:14:22,995 --> 00:14:24,997 気が重いなあ…。 207 00:14:25,998 --> 00:14:28,000 ⚞(観客の笑い声) (魁生)ん? 208 00:14:28,000 --> 00:14:30,002 (魁生)ん…? 209 00:14:32,004 --> 00:14:34,006 「う~ん!」。 210 00:14:37,009 --> 00:14:39,011 「まんじゅう 怖~い」。 (観客の笑い声) 211 00:14:39,011 --> 00:14:41,013 (紗季)《ひどいわ 志ぐま師匠》 212 00:14:41,013 --> 00:14:44,016 《なんの情報も教えないで こんな子よこして→ 213 00:14:44,016 --> 00:14:47,019 感想 教えろだなんて…》 214 00:14:47,019 --> 00:14:52,024 《こんなの… すごかったとしか 言いようがないじゃないの》 215 00:14:52,024 --> 00:14:54,026 「えい! この野郎!」→ 216 00:14:54,026 --> 00:14:57,029 「おめえ まんじゅう怖え怖えって言いながら 食ったりしまったりしや→ 217 00:14:57,029 --> 00:14:59,031 おめえ 一体 ホントは何が怖えんだい?」。 218 00:14:59,031 --> 00:15:02,969 「いや~ あとは渋~いお茶が怖い」。 219 00:15:02,969 --> 00:15:12,979 (拍手と歓声) 220 00:15:12,979 --> 00:15:17,984 ハアハア ハアハア…。 221 00:15:17,984 --> 00:15:23,990 ハアハア ハアハア…。 222 00:15:23,990 --> 00:15:25,992 お疲れさん。 223 00:15:25,992 --> 00:15:27,994 あっ… ありがとう。 224 00:15:27,994 --> 00:15:30,997 どうだったよ? 初高座の感想は。 225 00:15:30,997 --> 00:15:32,999 ぷはあっ! 226 00:15:32,999 --> 00:15:35,001 意外と疲れた。 227 00:15:35,001 --> 00:15:38,004 (ぐりこ)20分以上 しゃべりっぱなしだからな。 228 00:15:38,004 --> 00:15:41,007 でも こういう疲れは大歓迎! 229 00:15:41,007 --> 00:15:43,009 フフッ…。 230 00:15:44,010 --> 00:15:46,012 ぶっはあ~! 231 00:15:46,012 --> 00:15:48,014 もう一度やらせてくんないかな! 232 00:15:48,014 --> 00:15:51,017 調子乗んな 馬鹿! おまえ…。 233 00:15:51,017 --> 00:15:55,021 (魁生)すご~~~い! えっ? 234 00:15:55,021 --> 00:15:57,023 (ぐりこ)ああっ…。 235 00:15:57,023 --> 00:15:59,959 すごい すごい! すごーい! 236 00:15:59,959 --> 00:16:02,962 もしかして 10代!? 年下だよね? いや びっくりだよ! 237 00:16:02,962 --> 00:16:05,965 長屋のわちゃわちゃ感が すっごくよく出てた! 238 00:16:05,965 --> 00:16:09,969 しゃべりのトーンやテンポが 志ぐま師匠っぽいけど ちょっと違う! 239 00:16:09,969 --> 00:16:11,971 ねえ 普段は どんな所に出てるの!? 240 00:16:11,971 --> 00:16:14,974 あっ! おまえ…。 (魁生)ねえ! ねえ ねえ ねえ ねえ! 241 00:16:14,974 --> 00:16:17,977 (頭突きする音) 気持ちは めっちゃ分かるけど…→ 242 00:16:17,977 --> 00:16:19,979 そいつ 次 出番…。 はあ? そこ!? 243 00:16:19,979 --> 00:16:22,982 関係ない! イッテテ…。 244 00:16:22,982 --> 00:16:24,984 ごめん ごめん。 245 00:16:24,984 --> 00:16:27,987 いい落語家に会うと 自分でも抑えられなくて つい…。 246 00:16:27,987 --> 00:16:29,989 でも ホント いい『まんじゅうこわい』だったよ! 247 00:16:29,989 --> 00:16:31,991 特に まんじゅうを頬張るしぐさ! 248 00:16:31,991 --> 00:16:34,994 栗まんじゅうとくずまんじゅうで 少し食べ方 変えてるとことか→ 249 00:16:34,994 --> 00:16:36,996 それそれ~! みたいな。 250 00:16:36,996 --> 00:16:38,998 🔊♬~(出囃子) 251 00:16:38,998 --> 00:16:41,000 (魁生)よし 出番だ。 252 00:16:41,000 --> 00:16:47,006 待てよ… 僕のために高座に上がって つないでくれたわけだし…。 253 00:16:47,006 --> 00:16:51,010 うん! 特別に タダで僕の独演会を見せてあげよう。 254 00:16:51,010 --> 00:16:53,012 はあ? 255 00:16:54,013 --> 00:16:56,015 袖で勉強していくといい。 256 00:16:56,015 --> 00:16:59,018 ♬~(出囃子) 257 00:16:59,018 --> 00:17:00,953 (拍手) 258 00:17:00,953 --> 00:17:03,956 偉そうに! 誰が見るもんか! 259 00:17:03,956 --> 00:17:06,959 (ぐりこ)いいじゃねえか。 勉強させてもらおうや。 260 00:17:06,959 --> 00:17:11,964 入門して2年 19歳で二ツ目になった うわさの落語家さまだ。 261 00:17:11,964 --> 00:17:13,966 おまえも見て損はねえよ。 262 00:17:13,966 --> 00:17:16,969 むかつくけど あいつの落語には…。 263 00:17:16,969 --> 00:17:21,974 🔊♬~(出囃子) 264 00:17:21,974 --> 00:17:23,976 (ぐりこ)色がある。 265 00:17:23,976 --> 00:17:27,980 ええ~ 本日は 大変長らくお待たせいたしました。 266 00:17:27,980 --> 00:17:30,983 でも 皆さん ラッキーでしたね。 267 00:17:30,983 --> 00:17:34,987 前方の女の子 かわいいのに腕もある! 268 00:17:34,987 --> 00:17:38,991 誰に落語を習ってるんですかね? いやあ 素晴らしい! 269 00:17:38,991 --> 00:17:41,994 落語に限らず 習い事は いろいろあるでしょうが→ 270 00:17:41,994 --> 00:17:45,998 それを修めるのは 並大抵のことじゃございません。 271 00:17:45,998 --> 00:17:48,000 「ちわ~! ご隠居さん こんちわ!」。 272 00:17:48,000 --> 00:17:51,003 「あいあい。 おお~ はっつぁん どうかしたのかい?」。 273 00:17:51,003 --> 00:17:54,006 「ああ よかったよかった 居つくれて」。 274 00:17:54,006 --> 00:17:58,010 「あっしはね モテてえんですよ モテたい! どうしたらいいんすかね?」。 275 00:17:58,010 --> 00:18:01,013 「私に聞かれても困るけどなあ」。 276 00:18:02,949 --> 00:18:07,954 (ぐりこ)〈顔は悪い お金もない。 そんな男が女にモテようと→ 277 00:18:07,954 --> 00:18:12,959 稽古屋に歌を習いに行った顛末を語る 音曲噺〉 278 00:18:13,960 --> 00:18:16,963 「あっ じゃあ 小唄なんか いかがですか?」。 279 00:18:16,963 --> 00:18:18,965 「あっ 小唄 よがんす よがんす」。 280 00:18:18,965 --> 00:18:20,967 「ああ そうですか じゃあ…→ 281 00:18:20,967 --> 00:18:23,970 小唄でもってね 『びんのほつれ』ってのがありますから」。 282 00:18:23,970 --> 00:18:28,975 「はい? ああ 鬢のほつれ。 ああ あの高速バスで よく起きてますね」。 283 00:18:28,975 --> 00:18:31,978 「それは便の遅れですね」。 (観客の笑い声) 284 00:18:31,978 --> 00:18:33,980 《はっ…!》 285 00:18:33,980 --> 00:18:37,984 《さっきまでと全然違う。 すごく色っぽい》 286 00:18:37,984 --> 00:18:40,987 《女の人を こんなに艶っぽく演じられるなんて…》 287 00:18:40,987 --> 00:18:43,990 (魁生)「じゃあ あたしが いっぺん歌ってご覧にいれますからね→ 288 00:18:43,990 --> 00:18:46,993 それ聴いて 覚えてくださいまし」。 289 00:18:46,993 --> 00:18:48,995 「じゃ お願いします」。 290 00:18:48,995 --> 00:18:53,100 ♬~(三味線) 291 00:18:53,100 --> 00:18:59,939 ♬~「もしも あたしが」 292 00:18:59,939 --> 00:19:02,942 《いや 歌うまっ!》 293 00:19:02,942 --> 00:19:09,949 ♬~「鶯ならば」 294 00:19:09,949 --> 00:19:13,953 ♬~「主のお庭の」 295 00:19:13,953 --> 00:19:15,955 《こんなこともできるの!?》 296 00:19:15,955 --> 00:19:17,957 「…と こういう調子ですね」。 297 00:19:17,957 --> 00:19:19,959 「ああ これ あっしが あっ やるんですか?」。 298 00:19:19,959 --> 00:19:22,962 「じゃあ お願いしますね」。 299 00:19:22,962 --> 00:19:24,964 ♬~「ちんとん おい」 ♬~(三味線) 300 00:19:24,964 --> 00:19:31,971 ♬~「もーしーもー あーたーしーがー うーぐーいーすーなーらーばー」 301 00:19:31,971 --> 00:19:34,974 (観客の笑い声) (魁生)「ハアハアハア…」。 302 00:19:34,974 --> 00:19:36,976 「息継ぎをしてください」。 303 00:19:36,976 --> 00:19:38,978 《うっ…!》 304 00:19:38,978 --> 00:19:40,980 できすぎて むかつくだろ。 305 00:19:40,980 --> 00:19:43,983 あいつの芸の本質は 色気だ。 306 00:19:43,983 --> 00:19:48,988 色気のある人物を演じられるからこそ まぬけな人物の言動が際立って→ 307 00:19:48,988 --> 00:19:50,990 波打つような笑いにつながる。 308 00:19:50,990 --> 00:19:53,993 何者なの? あいつ。 309 00:19:53,993 --> 00:19:56,996 (ぐりこ)阿良川魁生。 310 00:19:56,996 --> 00:19:59,999 6年前の真打昇進試験以降→ 311 00:19:59,999 --> 00:20:05,004 阿良川一生が二ツ目に上げた 唯一の男だ。 312 00:20:13,012 --> 00:20:16,015 《どの感想も あいつのことばっか…》 313 00:20:16,015 --> 00:20:19,018 《われながら 結構いい感じにできたと思ってた…》 314 00:20:19,018 --> 00:20:21,020 《でも…》 315 00:20:21,020 --> 00:20:25,024 (魁生)へえ~ なかなか うれしいこと書いてくれてるね。 316 00:20:25,024 --> 00:20:29,028 んなっ! (魁生)驚きすぎでしょ。 傷つくなあ。 317 00:20:29,028 --> 00:20:32,031 でも 随分 熱心に読んでたね。 318 00:20:32,031 --> 00:20:34,033 もしかして 俺のこと気になっちゃった? 319 00:20:34,033 --> 00:20:37,036 違えすよ。 (魁生)あっ それはそうと→ 320 00:20:37,036 --> 00:20:40,039 朱音ちゃんって 志ぐま師匠のとこに入門してるの? 321 00:20:40,039 --> 00:20:42,041 いや まだっすけど…。 322 00:20:42,041 --> 00:20:44,043 (魁生)そうなんだ じゃあ…→ 323 00:20:44,043 --> 00:20:48,047 朱音ちゃんも うちの師匠の弟子になんない? 324 00:20:48,047 --> 00:20:51,050 なんない。 (魁生)即答~。 悲しいなあ。 325 00:20:51,050 --> 00:20:54,053 結構 本気で言ったのにさ。 326 00:20:54,053 --> 00:20:59,058 うちの師匠は 今の年功序列の落語界に革命を起こすために→ 327 00:20:59,058 --> 00:21:01,994 若い才能を集めてるんだ。 328 00:21:01,994 --> 00:21:04,997 芸の腕だけを評価してくれる。 329 00:21:04,997 --> 00:21:08,000 僕らにとって最高の環境だ。 330 00:21:08,000 --> 00:21:10,002 朱音ちゃんも こっちにおいでよ。 331 00:21:11,003 --> 00:21:14,006 そっか… じゃあ…→ 332 00:21:14,006 --> 00:21:17,009 ちょっくら 志ぐま師匠に弟子入りしてきます! 333 00:21:17,009 --> 00:21:19,011 (魁生)ん…? あざっした。 んじゃ! 334 00:21:19,011 --> 00:21:22,014 (魁生)えっ? ちょっと どういうこと!? 335 00:21:23,015 --> 00:21:27,019 だって 言ったじゃないすか。 「腕さえあれば評価する」って。 336 00:21:27,019 --> 00:21:29,021 (魁生)あっ…。 337 00:21:29,021 --> 00:21:32,024 あっ そうだ。 阿良川魁生… さん。 338 00:21:32,024 --> 00:21:34,026 今日は負けたけど→ 339 00:21:34,026 --> 00:21:36,028 すぐに追いついてやりますから! 340 00:21:36,028 --> 00:21:38,030 覚悟してくださいね! 341 00:21:39,031 --> 00:21:41,033 ふ~ん…。 342 00:21:41,033 --> 00:21:44,036 (紗季)朱音ちゃーん! ほらほら ほらほらほら! 343 00:21:44,036 --> 00:21:48,040 こ~んなに たくさん あなたへの感想 書かれてたわよ。 344 00:21:48,040 --> 00:21:50,042 まとめてコピーしてたら 遅くなっちゃった。 345 00:21:50,042 --> 00:21:54,046 あら? 朱音ちゃん? (ぐりこ)おい 帰るぞ。 346 00:21:54,046 --> 00:21:57,049 あ… あれ? (紗季)もう帰っちゃったのかしらね…。 347 00:21:57,049 --> 00:21:59,051 (ぐりこ)おいおい おいおいおい…! 348 00:22:01,987 --> 00:22:04,990 ハアハア ハアハア…。 349 00:22:04,990 --> 00:22:09,995 ハアハア ハアハア…。 350 00:22:09,995 --> 00:22:15,000 ♬~