1 00:00:01,351 --> 00:00:03,353 (高良木ひかる)この気配… 近い…! 2 00:00:05,322 --> 00:00:07,341 あっ…! くっ…! 3 00:00:07,341 --> 00:00:13,347 (魔物役声優)キ~ッヒヒヒヒヒ…! まんまと罠にかかったな サルエル! 4 00:00:13,347 --> 00:00:17,351 お仲間たちは 今頃 時の牢獄の中。 5 00:00:17,351 --> 00:00:22,339 二度と会えぬまま おまえは ここで俺の餌になるんだ! 6 00:00:22,339 --> 00:00:27,361 ノヴァの輝きがある限り 彼女たちが悪に屈することはないでしょう。 7 00:00:27,361 --> 00:00:29,313 それは この私も同じこと…! 8 00:00:29,313 --> 00:00:31,398 ほざけ! 小娘が! 9 00:00:31,398 --> 00:00:35,335 〓(魔物役声優) 頭から丸かじりにしてくれるわ~! 10 00:00:35,335 --> 00:00:39,339 エデンの定めに従い 私が あなたを滅します…! 11 00:00:39,339 --> 00:00:42,442 シャイニーブレード!! 12 00:00:42,442 --> 00:00:45,445 〓(魔物役声優)ぐわあああ~! 13 00:00:48,332 --> 00:00:51,335 お疲れさまでした。 (スタッフたち)お疲れさまでした。 14 00:01:02,362 --> 00:01:07,367 (円)雑誌インタビューは16時からなので この間に昼食を取っておきましょう。 15 00:01:07,367 --> 00:01:12,339 いえ… 食事は要りません。 事務所へ戻ってください。 16 00:01:12,339 --> 00:01:14,374 30分だけでも稽古がしたいので。 17 00:01:14,374 --> 00:01:16,376 (円)…分かりました。 18 00:01:18,328 --> 00:01:23,400 ♬~(出囃子) 19 00:01:23,400 --> 00:01:29,706 ♬~ 20 00:01:33,343 --> 00:01:39,650 ♬~ 21 00:03:12,309 --> 00:03:15,345 (女性客)さっきの人の落語 すごかったね! 22 00:03:15,345 --> 00:03:17,347 (女性客)さすが前回の優勝者って感じ。 23 00:03:17,347 --> 00:03:19,332 (女性客)ねえ! 24 00:03:19,332 --> 00:03:22,335 (古味沙恵)はあ~ 次は いよいよ…! 25 00:03:22,335 --> 00:03:26,339 いやあ 本日もサルエルさまの清らかなお声を 拝聴させていただけるなんて→ 26 00:03:26,339 --> 00:03:28,341 恐悦至極ですよねー。 27 00:03:28,341 --> 00:03:30,343 ああ 課金した~い! 28 00:03:31,328 --> 00:03:34,314 先輩? どうしました? 29 00:03:34,314 --> 00:03:36,316 何? あれ。 30 00:03:36,316 --> 00:03:39,319 アニメファンじゃない? 次 出るの 声優らしいし。 31 00:03:39,319 --> 00:03:41,321 声優!? 32 00:03:41,321 --> 00:03:44,341 (男性客)今年の可楽杯は よっぽど不作だったんだな…。 33 00:03:44,341 --> 00:03:47,310 落語やってない奴が 決勝に残るなんて…。 34 00:03:47,310 --> 00:03:49,312 ♬~(出囃子) 35 00:03:49,312 --> 00:03:52,332 (阿良川魁生) それでは 次の出演者に参りましょう。 36 00:03:52,332 --> 00:03:54,334 高良木ひかるです! 37 00:03:54,334 --> 00:03:57,337 (観客のどよめき) (拍手) 38 00:03:57,337 --> 00:04:00,323 (女性客)頑張ってー! (男性客)高良木! 39 00:04:00,323 --> 00:04:03,326 (女性客)応援してるよ~! (拍手) 40 00:04:03,326 --> 00:04:06,313 (阿良川一剣)《華があるのも考えようだね》 41 00:04:06,313 --> 00:04:11,318 《この空気… 観客は噺を聞くどころじゃない》 42 00:04:11,318 --> 00:04:16,323 《高座を成立させるには 観客の集中力が不可欠》 43 00:04:16,323 --> 00:04:19,326 《素人には難しいかな》 44 00:04:21,311 --> 00:04:25,332 「ちょいと おまえさん! おまえさん 起きとくれよ」。 45 00:04:25,332 --> 00:04:27,334 「おまえさん! 起きとくれ!」。 46 00:04:27,334 --> 00:04:33,340 「なんなんだよ? ええ? 邪険な起こし方するねぃ。 なんだい?」。 47 00:04:33,340 --> 00:04:38,295 「やだよ ねえ。 おまえさんね もう二十日も商い休んでるんじゃないかさ」。 48 00:04:38,295 --> 00:04:43,350 (一剣)《演目のせりふを利用して 客の意識を噺に向けた…》 49 00:04:43,350 --> 00:04:46,353 「あたしゃ ないおあし工面して 飲ましたんじゃないか。 ええ?」。 50 00:04:46,353 --> 00:04:50,357 「それを行かないってんなら 男らしくないよ? どうすんだい」。 51 00:04:50,357 --> 00:04:56,329 (一剣)《今年は 学生兼業の役者や声優も 多くエントリーしたらしいが…》 52 00:04:56,329 --> 00:05:01,334 「おまえさんね あたしゃ 昨日今日 魚屋の女房になったんじゃないんだよ」。 53 00:05:01,334 --> 00:05:03,336 「もう 糸底へ水がきちんと…」。 54 00:05:03,336 --> 00:05:07,340 (一剣)《なるほど。 大した度胸だよ》 55 00:05:07,340 --> 00:05:11,478 《この噺を選んだことも含めてね》 56 00:05:11,478 --> 00:05:14,648 〓(扇子でたたく音) 〓「おい おっ母! 俺だよ!」。 57 00:05:14,648 --> 00:05:16,416 〓(扇子でたたく音) 〓「開けちくれ! おっ母!」。 58 00:05:16,416 --> 00:05:21,421 〓「はいはい おまえさんかい。 ちょいと待っとくれ。 今ね…」。 59 00:05:21,421 --> 00:05:23,356 〓「はっ! どうしたんだい? おまえさん」。 60 00:05:23,356 --> 00:05:26,359 「いいから! いいから おめえ 後閉めろってんだよ!」。 61 00:05:26,359 --> 00:05:29,362 「おい 誰もついて来ちゃいねえか?」。 62 00:05:30,330 --> 00:05:34,317 (阿良川こぐま) 《『芝浜』は 最も有名な人情噺》 63 00:05:34,317 --> 00:05:37,337 《この選択は 多分 偶然…》 64 00:05:37,337 --> 00:05:40,340 《あの日 志ん太兄さんが破門になったのだって→ 65 00:05:40,340 --> 00:05:43,360 ネタ選びが理由とも考えにくい…》 66 00:05:43,360 --> 00:05:45,345 《とはいえ…》 67 00:05:45,345 --> 00:05:48,365 (雨の音) (門下生の声)えっ これ 本当なんですか!? 68 00:05:48,365 --> 00:05:50,350 (門下生)志ん太…。 69 00:05:50,350 --> 00:05:52,352 兄さん! どういうことですか!? 70 00:05:52,352 --> 00:05:56,356 (門下生)ギャグですよね? ねえ? ギャグですよね? 兄さん! 71 00:06:01,328 --> 00:06:05,315 (こぐま)《よりにもよって この状況で…》 72 00:06:05,315 --> 00:06:07,317 「そうじゃなくてね→ 73 00:06:07,317 --> 00:06:11,321 ちょいと おまえさんに 見てもらいたいんだよ」。 74 00:06:11,321 --> 00:06:13,323 「ただ いいかい?」。 75 00:06:13,323 --> 00:06:18,328 「おまえさん あたしの話が済むまで 怒らないで聞いてくれる?」。 76 00:06:19,346 --> 00:06:25,352 「おまえさんに見てもらいたいってのはねえ これなんだよ」。 77 00:06:25,352 --> 00:06:30,357 「おまえさんがね このおあし拾ってきた時 あたしは うれしかったよ」。 78 00:06:30,357 --> 00:06:33,326 「だって 貧乏のさなかだったもの」。 79 00:06:33,326 --> 00:06:39,332 「ああ これで明日から楽に暮らせる。 方々に借りが返せるって うれしかった」。 80 00:06:39,332 --> 00:06:46,339 「そしたらね 大家さんに叱られちゃった。 おめえたち夫婦は 何を考えてるんだって」。 81 00:06:46,339 --> 00:06:48,341 「じゃあ 野郎の酔いのさめねえうちに→ 82 00:06:48,341 --> 00:06:51,344 夢でもなんでもいいから おまえがウソでつき通せ→ 83 00:06:51,344 --> 00:06:53,313 っていうふうに言われて→ 84 00:06:53,313 --> 00:06:58,368 あたしが夢だって言ったら おまえさん 信じてくれたよ」。 85 00:06:58,368 --> 00:07:02,322 「でも 大家さん あたしだって つらいよ。 あの人は 一生懸命 頑張って…」。 86 00:07:02,322 --> 00:07:05,308 「おめえだって つらい思いをしたっていいんだ」。 87 00:07:05,308 --> 00:07:10,330 「おまえさんが 一生懸命 大好きなお酒を断って頑張ってる」。 88 00:07:10,330 --> 00:07:15,335 「だったら 連れ合いのあたしだって つらい思いをしたってバチは当たらないって→ 89 00:07:15,335 --> 00:07:18,338 大家さんに言われてさ」。 90 00:07:18,338 --> 00:07:22,325 「おまえさんが荷を担いで出かけていく 後ろ姿に→ 91 00:07:22,325 --> 00:07:26,313 あたしゃ 何度お辞儀したか分からないよ」。 92 00:07:26,313 --> 00:07:30,317 「長い間 あたしに ずっとウソをつかれて→ 93 00:07:30,317 --> 00:07:33,320 さぞ腹も立つかもしれないけど→ 94 00:07:33,320 --> 00:07:35,322 これが話の全てです」。 95 00:07:35,322 --> 00:07:38,308 「ぶつなり蹴るなり 好きにしておくれ」。 96 00:07:39,326 --> 00:07:43,313 (魁生)《高い演技力と感情のこもった声》 97 00:07:45,332 --> 00:07:48,335 (魁生)《そして 妻の描写を意図的に増やし→ 98 00:07:48,335 --> 00:07:53,340 心情を丁寧に表現することで 観客の共感を誘う…》 99 00:07:55,342 --> 00:07:57,360 (魁生)《言うなれば これは→ 100 00:07:57,360 --> 00:08:01,348 演劇的なアプローチで演じる 劇場型落語…》 101 00:08:02,349 --> 00:08:05,352 《人情噺を選ぶわけだ》 102 00:08:05,352 --> 00:08:09,356 「じゃあ おまえさん いいの? 許してくれるのかい?」。 103 00:08:11,358 --> 00:08:15,362 《最初は… 順調って思っとった》 104 00:08:15,362 --> 00:08:19,366 アクトプロデュースの高良木ひかるです! よろしくお願いします! 105 00:08:21,384 --> 00:08:23,336 〓エデンの定めに従い…。 106 00:08:23,336 --> 00:08:25,338 (電話) 107 00:08:25,338 --> 00:08:27,340 (円)『エデンスノヴァ』のサルエル役 決まりました。 108 00:08:27,340 --> 00:08:30,343 本当ですか!? メインキャストの一角です。 109 00:08:30,343 --> 00:08:33,313 これは大きいですよ。 頑張りましょう! 110 00:08:33,313 --> 00:08:35,348 はい! 111 00:08:35,348 --> 00:08:39,335 《少しずつ仕事も増えて 役の幅も広がって…》 112 00:08:39,335 --> 00:08:44,340 《これで 「声優 高良木ひかるです」って 胸ば張れるって…》 113 00:08:45,425 --> 00:08:47,360 お疲れさまでした! 〓(スタッフたち)お疲れさまでした! 114 00:08:47,360 --> 00:08:49,329 《けど…》 115 00:08:49,329 --> 00:08:51,398 (女性声優) また駄目だったー オーディション。 116 00:08:51,398 --> 00:08:53,333 私も連敗続いてる…。 117 00:08:53,333 --> 00:08:57,370 はあ~ ひかるちゃんみたいな ルックスだったらなー。 118 00:08:57,370 --> 00:09:02,375 (女性声優)言えてる。 絶対有利だよね。 ビジュアルいいほうがファンも喜ぶし。 119 00:09:02,375 --> 00:09:06,362 サルエル役で あのルックスだったら そりゃ人気も出るよね。 120 00:09:06,362 --> 00:09:13,319 ♬~ 121 00:09:13,319 --> 00:09:16,322 《けど 私は…》 122 00:09:17,357 --> 00:09:23,329 「そうじゃないよ 明日は正月だろ? お酒 買ってあるんだよ」。 123 00:09:23,329 --> 00:09:26,332 「どうだい? 一杯飲む?」。 124 00:09:27,333 --> 00:09:31,337 (円)…といったような理由で やはり 落語は難しいと思うんですが→ 125 00:09:31,337 --> 00:09:33,339 高良木さん ご理解いただけ…。 126 00:09:33,339 --> 00:09:36,342 それでも 可楽杯に出場します。 127 00:09:36,342 --> 00:09:38,328 (円)で… ですが…→ 128 00:09:38,328 --> 00:09:42,315 『エデンスノヴァ』という代表作を得たのに 何も今…。 129 00:09:42,315 --> 00:09:47,320 それは 作品が評価されたのであって 私が評価されたわけじゃありません。 130 00:09:47,320 --> 00:09:49,305 円さん。 131 00:09:49,305 --> 00:09:54,310 私は 演者 高良木ひかるとして 自分の力を試したいんです。 132 00:09:56,329 --> 00:09:58,331 (マウスのクリック音) 133 00:09:58,331 --> 00:10:01,367 (円)《彼女の演技力は 私も認めている》 134 00:10:01,367 --> 00:10:06,339 《だが 今ある仕事も人気も 容姿を評価されてのもの…》 135 00:10:06,339 --> 00:10:09,325 《芸能界の大御所に認められることで→ 136 00:10:09,325 --> 00:10:14,314 実力派へ転身を図りたい気持ちは 分かるが…》 137 00:10:14,314 --> 00:10:17,317 《落語は 物語を全て一人でしゃべる話芸》 138 00:10:17,317 --> 00:10:21,321 《一人のキャラを演じるのとは全く別物》 139 00:10:21,321 --> 00:10:26,426 《今のままでも 十分 仕事はあるのに なんで こんなことを…》 140 00:10:26,426 --> 00:10:29,345 〓「四十二両! かあ~っ!」。 141 00:10:29,345 --> 00:10:32,415 「油断も隙もあったもんじゃねえや ためこんで!」。 142 00:10:32,415 --> 00:10:34,384 〓「だから あたしのじゃ…」。 143 00:10:34,384 --> 00:10:36,386 〓ああっ もう できん!! むずい!! 144 00:10:38,421 --> 00:10:44,344 〓冷静にならんね ひかる! 私は東京の女。 かんしゃく 駄目 絶対。 145 00:10:44,344 --> 00:10:49,332 雑にせんと! 大丈夫 できる! 余裕! 146 00:10:50,300 --> 00:10:53,303 私は こんなもんじゃなかろうが…! 147 00:10:57,357 --> 00:10:59,359 (円)《私には見えていなかった》 148 00:10:59,359 --> 00:11:04,347 《彼女の武器は 容姿でも演技力でもない…》 149 00:11:05,315 --> 00:11:10,320 (円)《目標のために なりふり構わず突き進む がむしゃらさ…》 150 00:11:11,321 --> 00:11:13,323 「たまんねえや」。 151 00:11:15,341 --> 00:11:18,344 「あ~ いい香りだ…」。 152 00:11:19,362 --> 00:11:21,347 「おっ母…」。 153 00:11:21,347 --> 00:11:24,417 (円)《今は胸を張って言えます》 154 00:11:24,417 --> 00:11:28,454 《優勝するのは… 高良木ひかるです!》 155 00:11:28,454 --> 00:11:33,359 「そうじゃねえや また夢になるといけねえ」。 156 00:11:33,359 --> 00:11:46,406 (拍手と歓声) 157 00:11:46,406 --> 00:11:49,342 〓(拍手と歓声) 158 00:11:49,342 --> 00:11:53,346 (樫尾公久)《やべえなあ。 今日一の歓声…》 159 00:11:53,346 --> 00:11:57,350 《『芝浜』… そして 阿良川一生…》 160 00:12:01,354 --> 00:12:05,358 (樫尾)《6年前に取材した 真打昇進試験と同じだ》 161 00:12:06,359 --> 00:12:10,363 (樫尾)《あの時は この雰囲気の中 例の騒動が起きた》 162 00:12:10,363 --> 00:12:12,315 (魁生)ありがとうございました。 163 00:12:12,315 --> 00:12:15,335 高良木ひかるさんで 『芝浜』でした。 164 00:12:15,335 --> 00:12:17,337 (拍手と歓声) 165 00:12:17,337 --> 00:12:19,339 《今回も何か起きるんじゃ…》 166 00:12:20,340 --> 00:12:23,343 一生師匠 ご覧になっていかがでしたか? 167 00:12:28,314 --> 00:12:30,316 (阿良川一生)私は→ 168 00:12:30,316 --> 00:12:35,321 学生が『芝浜』を演じるべきではないと 考えています。 169 00:12:36,322 --> 00:12:40,310 (一生)この噺の主題は 夫婦の愛。 170 00:12:40,310 --> 00:12:44,330 また 登場人物の感情の機微を 伝えられるだけの技量がないと→ 171 00:12:44,330 --> 00:12:46,332 面白く聞けない。 172 00:12:46,332 --> 00:12:50,336 学生が演じるには 非常に難しい噺だ。 173 00:12:51,337 --> 00:12:53,323 (一生)だからこそ→ 174 00:12:53,323 --> 00:12:59,345 妻の心情を描き切ってみせた あなたの表現者としての能力の高さに→ 175 00:12:59,345 --> 00:13:01,297 大変驚かされました。 176 00:13:01,297 --> 00:13:05,318 少々劇的ではありましたが 素晴らしい一席でした。 177 00:13:05,318 --> 00:13:07,320 (拍手) 178 00:13:07,320 --> 00:13:10,323 (魁生)一生師匠 ありがとうございました。 179 00:13:10,323 --> 00:13:12,308 龍若師匠 いかがでしたか? 180 00:13:14,360 --> 00:13:16,329 (スタッフ)お疲れさまでした! 181 00:13:16,329 --> 00:13:18,331 ありがとうございました。 182 00:13:21,334 --> 00:13:23,336 《終わった…》 183 00:13:23,336 --> 00:13:26,339 《もっとうまくできたな…》 184 00:13:26,339 --> 00:13:30,343 《最初のほう 少し 声 上ずっとったし》 185 00:13:30,343 --> 00:13:33,313 《しゃべるテンポも速かったっちゃない》 186 00:13:33,313 --> 00:13:37,300 《あの場面 もう少し 間を取るべきやったな…》 187 00:13:38,301 --> 00:13:41,304 《やばい… 駄目なところ挙げ出したら止まらん…》 188 00:13:42,388 --> 00:13:47,377 それは 作品が評価されたのであって 私が評価されたわけじゃありません。 189 00:13:48,311 --> 00:13:51,331 (拍手と歓声) 190 00:13:51,331 --> 00:13:54,333 (一生の声) あなたの表現者としての能力の高さに→ 191 00:13:54,333 --> 00:13:57,337 大変驚かされました。 192 00:14:02,392 --> 00:14:05,345 (練磨家からしの声)強いねえ 声優ちゃん。 193 00:14:05,345 --> 00:14:08,364 まあ でも 俺に次いで2位なら 大健闘でしょ。 194 00:14:08,364 --> 00:14:12,385 ホント 大したもんだよ。 (昇平)まだ終わってないから! 195 00:14:12,385 --> 00:14:15,371 はあ? もう終わったようなもんだろ。 なっ…! 196 00:14:15,371 --> 00:14:17,356 (昇平)また そんな失礼なことを! 197 00:14:17,356 --> 00:14:21,361 それに この後は あの『寿限無』の子だろ? あの子だって…。 198 00:14:21,361 --> 00:14:23,396 無理だよ。 見てみ? 199 00:14:23,396 --> 00:14:27,366 客 あからさまに緩んでるだろ? 200 00:14:27,366 --> 00:14:33,339 俺の改作と声優ちゃんの人情噺で 客は もう満足しちまった。 201 00:14:33,339 --> 00:14:36,409 こうなると あとは消化試合。 202 00:14:36,409 --> 00:14:39,362 しかも 次の演目は『寿限無』ときた。 203 00:14:39,362 --> 00:14:43,349 客の興味は 俺か声優ちゃん どっちが優勝するかだ。 204 00:14:43,349 --> 00:14:45,351 分かったろ? 205 00:14:45,351 --> 00:14:49,338 今年の可楽杯 もう終わってんだよ。 206 00:14:51,324 --> 00:14:53,342 (男性客)優勝は 2人のどっちかでしょ。 207 00:14:53,342 --> 00:14:56,329 (女性客)次 女子高生? かわいそう~。 208 00:14:56,329 --> 00:14:58,347 (男性客)トイレ行っとくわ。 209 00:14:58,347 --> 00:15:01,317 (阿良川ぐりこ) この空気… やばいっすね 兄さ…。 210 00:15:01,317 --> 00:15:03,352 兄さん!? 211 00:15:03,352 --> 00:15:05,354 あれ!? 先生も! 212 00:15:06,322 --> 00:15:08,324 (スタッフ)引率の先生と生徒さんですね。 213 00:15:08,324 --> 00:15:11,310 どうぞ。 楽屋は この先ですから。 214 00:15:11,310 --> 00:15:13,312 (岩清水真智子)ありがとうございます。 215 00:15:14,330 --> 00:15:16,332 (こぐま)僕を高校生扱い…。 216 00:15:16,332 --> 00:15:19,335 しかも それがまかり通るなんて まったく…。 217 00:15:19,335 --> 00:15:23,339 (岩清水)こぐまさんが控室に行きたいって 言ったんじゃないですか。 218 00:15:23,339 --> 00:15:25,341 少しは我慢してくださいよ。 219 00:15:26,342 --> 00:15:29,345 (岩清水)でも どうして このタイミングで? 220 00:15:31,347 --> 00:15:33,349 (こぐま)あの子は負けるよ。 221 00:15:33,349 --> 00:15:36,319 学生のレベルが想像以上に高かった。 222 00:15:36,319 --> 00:15:39,322 (岩清水)でも 桜咲さんだって…。 223 00:15:39,322 --> 00:15:43,326 父親の破門が割り切れなくて 落語家を目指す。 224 00:15:43,326 --> 00:15:47,313 そんな子が因縁の相手を前に 力を出し切れると思う? 225 00:15:49,332 --> 00:15:52,335 (こぐま)思いが強いほど 感情は抑制できない。 226 00:15:52,335 --> 00:15:54,337 それに あの空気だ。 227 00:15:54,337 --> 00:15:56,339 むちゃして けがしないよう 言ったほうが…。 228 00:16:02,345 --> 00:16:05,314 (桜咲朱音)こぐま兄さん… 先生も。 229 00:16:05,314 --> 00:16:09,318 《一見 いつもと変わらないけど…》 230 00:16:09,318 --> 00:16:13,306 (こぐま)へっちゃらって感じだけど 大丈夫なの? 231 00:16:13,306 --> 00:16:16,325 阿良川一生は見るのも嫌な相手でしょ。 232 00:16:16,325 --> 00:16:19,312 そんな男を前に 平常心でやれるの? 233 00:16:22,281 --> 00:16:27,286 兄さん 私 見たことあるんです。 阿良川一生の落語。 234 00:16:28,304 --> 00:16:31,290 師匠に入門をお願いする前に。 235 00:16:34,310 --> 00:16:37,330 ホント 変な感じなんですよ。 236 00:16:37,330 --> 00:16:40,316 おっ父にしたことは許せない。 237 00:16:40,316 --> 00:16:42,351 でも 高座を見て→ 238 00:16:42,351 --> 00:16:46,355 落語家を目指すのに あれを認められないのは ダサいよなって思っちゃった。 239 00:16:47,306 --> 00:16:49,325 感情ぐちゃぐちゃ。 240 00:16:49,325 --> 00:16:55,281 だから なんで おっ父を破門にしたのか その理由を知って→ 241 00:16:55,281 --> 00:16:57,283 ちゃんと前に進みたいんです。 242 00:16:59,302 --> 00:17:01,337 …そう。 243 00:17:01,337 --> 00:17:03,306 じゃあ 優勝できなきゃ前へ進めないね。 244 00:17:03,306 --> 00:17:05,308 ううっ…! 245 00:17:05,308 --> 00:17:08,311 もう そんな 出番前に重圧かけるようなこと…。 246 00:17:08,311 --> 00:17:10,313 大丈夫でしょ。 247 00:17:10,313 --> 00:17:12,315 うちの妹弟子は負けないよ。 248 00:17:15,318 --> 00:17:17,320 こぐま兄さん…。 249 00:17:18,321 --> 00:17:23,326 ♬~(出囃子) 250 00:17:23,326 --> 00:17:25,328 (こぐまの声)あの男に…。 251 00:17:28,347 --> 00:17:31,317 (こぐまの声)見せておいで。 252 00:17:31,317 --> 00:17:34,303 朱音の落語を。 253 00:17:34,303 --> 00:17:36,305 ♬~(出囃子) (拍手) 254 00:17:36,305 --> 00:17:40,309 (魁生)それでは 続いての出場者は あかねさんです! 255 00:17:40,309 --> 00:17:44,297 ♬~(出囃子) (拍手) 256 00:17:44,297 --> 00:17:46,315 《よし!》 257 00:17:46,315 --> 00:17:49,318 《一生師匠を前にして 気負ってる様子はねえな》 258 00:17:49,318 --> 00:17:51,320 ♬~(出囃子) 259 00:17:51,320 --> 00:17:54,307 《でも まだ 戦う準備ができたってだけ》 260 00:17:54,307 --> 00:17:57,310 《本番は ここからだ》 261 00:17:58,327 --> 00:18:01,297 (ぐりこ)《観客は 前2人の高座を見て→ 262 00:18:01,297 --> 00:18:04,300 この大会のピークは過ぎたと思ってる》 263 00:18:04,300 --> 00:18:07,303 《盛り上がり切って 空気が凪いじまった》 264 00:18:07,303 --> 00:18:11,357 《このアウェーの中 どうやるのか…》 265 00:18:11,357 --> 00:18:14,310 えー かくばかり偽り多き世の中に→ 266 00:18:14,310 --> 00:18:18,314 子のかわいさは誠なりけり なんてなことを申しまして。 267 00:18:18,314 --> 00:18:22,318 子供のかわいさなんてのは 持ってみないと分からないんだそうで。 268 00:18:22,318 --> 00:18:24,303 昔は 子供が生まれるってえと→ 269 00:18:24,303 --> 00:18:29,308 物知りのご隠居さんや お寺の和尚さんに 名付け親になってもらう。 270 00:18:29,308 --> 00:18:33,329 そんなことが 随分とあったんだそうでございます。 271 00:18:33,329 --> 00:18:38,351 「ねえ おまえさん どうするんだい? もう 子供が生まれて7日がたつんだよ」。 272 00:18:38,351 --> 00:18:40,353 「ああ… 初七日か」。 273 00:18:40,353 --> 00:18:43,339 「馬鹿だねえ。 お七夜っていうんだよ」。 274 00:18:43,339 --> 00:18:46,342 「お七夜? へえ~ 知らなかったねえ」。 275 00:18:46,342 --> 00:18:51,280 「これから お世話になるっつって 質屋の番頭にでも 顔見せに行くのかい?」。 276 00:18:51,280 --> 00:18:53,316 「そういうこと言ってんじゃないよ」。 277 00:18:53,316 --> 00:18:56,319 「いいかげん あの子に名前をつけてあげないと」。 278 00:18:56,319 --> 00:18:59,372 「いつまでも名無しの権兵衛ってわけにも いかないだろ?」。 279 00:18:59,372 --> 00:19:02,425 「う~ん… まあ そうだけどよ」。 280 00:19:02,425 --> 00:19:07,430 〓「そうだ! お寺さん行ってさ 名前をつけてもらってきておくれよ」。 281 00:19:07,430 --> 00:19:10,349 〓「寺? おお… 馬鹿言ってんじゃねえよ」。 282 00:19:10,349 --> 00:19:12,335 なんつうか…→ 283 00:19:12,335 --> 00:19:14,337 パッとしねえな。 284 00:19:14,337 --> 00:19:16,339 からし~! 285 00:19:16,339 --> 00:19:19,342 いや 言いたくもなんだろ。 286 00:19:19,342 --> 00:19:22,361 テンポ良く ヌルヌルしゃべってるとは思う。 287 00:19:22,361 --> 00:19:27,316 でも 昨日の予選は 言い立てじゃないとこでも うめえって観客がざわついてたのに→ 288 00:19:27,316 --> 00:19:30,302 今日は 全然 そんなことねえだろ? 289 00:19:30,302 --> 00:19:34,323 会場の空気見て 勝てないと分かったんだろ。 290 00:19:34,323 --> 00:19:38,377 にしても こんなに手ぇ抜くかねえ。 冷めるわ マジで。 291 00:19:38,377 --> 00:19:40,413 〓「もうけやがって。 ええ?」。 292 00:19:40,413 --> 00:19:42,331 〓「あの欲張り坊主…」。 293 00:19:42,331 --> 00:19:46,318 《予選と比べて おとなしすぎるとは思う。 やけど…》 294 00:19:46,318 --> 00:19:49,321 明日は 師匠の名に恥じない落語をしないと。 295 00:19:50,339 --> 00:19:52,341 《あげん言いよったとに→ 296 00:19:52,341 --> 00:19:55,344 簡単に勝負ば投げるやろか?》 297 00:19:55,344 --> 00:20:00,299 「和尚さんは物知りなんだから きっと いい名前を考えてくれるよ」。 298 00:20:00,299 --> 00:20:02,318 「う~ん… そうか?」。 299 00:20:02,318 --> 00:20:06,322 「まあ おめえが そう言うんなら ちょっと行ってくらあ」。 300 00:20:06,322 --> 00:20:08,340 「ちわ~! 和尚… 和尚いますか?」。 301 00:20:08,340 --> 00:20:12,311 「あっ これは熊五郎さん。 どうなさいましたか?」。 302 00:20:12,311 --> 00:20:15,281 「いやね 和尚 実は うちにガキが生まれましてね」。 303 00:20:15,281 --> 00:20:18,300 《今日は 随分 あっさりやるな…》 304 00:20:18,300 --> 00:20:20,302 (古味)フフッ…。 305 00:20:20,302 --> 00:20:23,322 フッ… フフッ…。 (樫尾)随分 楽しそうだな。 306 00:20:23,322 --> 00:20:26,308 えっ? そう見えます? 307 00:20:26,308 --> 00:20:29,311 ああ。 こういうのが好きなのか? 308 00:20:29,311 --> 00:20:32,314 う~ん 好きっていうか…→ 309 00:20:32,314 --> 00:20:37,319 作業中に流して見るアニメとかラジオの あの感じに近いんですよね。 310 00:20:37,319 --> 00:20:41,307 流し聞きで楽しめるんで 見てて楽というか…。 311 00:20:41,307 --> 00:20:43,309 なるほどね…。 312 00:20:43,309 --> 00:20:47,296 確かに 周りもリラックスして聞いてるな。 313 00:20:47,296 --> 00:20:49,348 (観客の笑い声) 「えー でな…」。 314 00:20:49,348 --> 00:20:51,333 《うん 悪くねえ》 315 00:20:51,333 --> 00:20:54,303 《高座で大事なのは お客さんを引きつけること》 316 00:20:54,303 --> 00:20:57,289 《ただ押せばいいってもんじゃねえ》 317 00:20:57,289 --> 00:21:00,409 《肝心なのは 相手に合わせたアプローチ》 318 00:21:00,409 --> 00:21:02,311 〓「あっ そういう話ですか」。 319 00:21:02,311 --> 00:21:08,350 (こぐま)《それにしても この空気 大会というよりは まるで…→ 320 00:21:08,350 --> 00:21:10,319 寄席みたいだな》 321 00:21:10,319 --> 00:21:15,307 なんで 昨日みたいに 熱演って感じでやらないのかしら? 322 00:21:15,307 --> 00:21:17,309 逆効果だからだよ。 323 00:21:18,410 --> 00:21:23,299 (こぐま)この大会特有の緊張感や 熱に当てられた観客には→ 324 00:21:23,299 --> 00:21:26,318 あれぐらいの少し冷めてるトーンが心地いい。 325 00:21:26,318 --> 00:21:30,339 熱くやればいいってもんじゃないんだよね 落語って。 326 00:21:30,339 --> 00:21:34,326 (岩清水)臨機応変…。 すごいですね 桜咲さん。 327 00:21:34,326 --> 00:21:38,330 別に。 お客さんのニーズに応えただけ。 328 00:21:40,316 --> 00:21:44,353 (こぐま)相手の喜ぶことを考え 気を回して動く。 329 00:21:44,353 --> 00:21:46,355 ただの「気働き」さ。 330 00:21:47,339 --> 00:21:50,326 《目の前のお客さんを喜ばせる》 331 00:21:50,326 --> 00:21:53,329 《あくまで落語家として挑むってわけだ》 332 00:21:53,329 --> 00:21:56,332 《吉と出るか 凶と出るか…》 333 00:21:57,333 --> 00:21:59,335 (こぐま)舞台は整った。 334 00:21:59,335 --> 00:22:01,387 お手並み拝見だね。 335 00:22:01,387 --> 00:22:03,389 〓「ありがとう」。 336 00:22:04,323 --> 00:22:08,327 「それで どのような名前をお望みかな?」。 337 00:22:10,296 --> 00:22:15,301 ♬~