1 00:00:02,769 --> 00:00:05,756 (桜咲朱音)最近 分かってきたんですよ。 2 00:00:05,756 --> 00:00:09,743 『寿限無』のキモは 早口でしゃべることじゃない。 3 00:00:09,743 --> 00:00:11,745 江戸時代→ 4 00:00:11,745 --> 00:00:18,769 「7歳までは神のうち」なんて言葉があるほど 子供の死亡率が高かった。 5 00:00:18,769 --> 00:00:24,741 だから 当時は 親が子の長寿を願って 名前をつけることは珍しくなかった。 6 00:00:24,741 --> 00:00:27,761 『寿限無』のキモは言い立てじゃなくて→ 7 00:00:27,761 --> 00:00:32,766 親が子につけた長すぎる名前を 繰り返すことで笑わせる噺。 8 00:00:32,766 --> 00:00:39,056 そんな長い名前をつけてしまう 子を思うがゆえにあふれた親心。 9 00:00:40,757 --> 00:00:47,064 ♬~ 10 00:02:19,740 --> 00:02:22,743 「んん… それで どのような名前をお望みかな?」。 11 00:02:22,743 --> 00:02:25,746 「そりゃあ もう 丈夫に育って→ 12 00:02:25,746 --> 00:02:29,783 いつまでも長生きするような名前を お願いしてえんで」。 13 00:02:29,783 --> 00:02:32,769 「ん~ 長生きをな。 そうだねえ」。 14 00:02:32,769 --> 00:02:38,742 「では つるという字を使って つる吉 つる太郎なんてのは どうかな?」。 15 00:02:38,742 --> 00:02:42,763 「つるは1000年のよわいを保つ なんてなことをいわれている」。 16 00:02:42,763 --> 00:02:45,782 「ん~ 1000年ぐらいじゃあねえ」。 17 00:02:45,782 --> 00:02:47,718 「あんまり長くないねえ」。 (観客の笑い声) 18 00:02:47,718 --> 00:02:49,736 「では かめなんてのは どうだ」。 19 00:02:49,736 --> 00:02:52,723 「かめは万年生きる なんてなことをいわれているよ」。 20 00:02:52,723 --> 00:02:54,775 「たったの1万年でしょ」。 21 00:02:54,775 --> 00:02:57,794 「ああ もっと こう… ずっと死なねえような」。 22 00:02:57,794 --> 00:02:59,780 〓「永久に生きるような名前は…」。 23 00:02:59,780 --> 00:03:03,734 (高良木ひかる) 《変えとるのは 声色じゃなく しゃべり方》 24 00:03:03,734 --> 00:03:08,755 《表情の変化も必要最低限で 私とは真逆の演じ方》 25 00:03:08,755 --> 00:03:13,760 《こんなにも抑えたアプローチ 思い付きもせんかった》 26 00:03:13,760 --> 00:03:16,747 「ああ~ それでは 当山に伝わる経文の中に→ 27 00:03:16,747 --> 00:03:19,800 おめでたい言葉がたくさんあるから→ 28 00:03:19,800 --> 00:03:21,768 そこから取るというのは いかがかな?」。 29 00:03:21,768 --> 00:03:24,771 「経文の中に? 長生きしそうなやつがありますか?」。 30 00:03:24,771 --> 00:03:28,775 「んん… ああ~ では こんな名前はどうかな?」。 31 00:03:28,775 --> 00:03:30,777 「寿限無」。 32 00:03:30,777 --> 00:03:33,780 「『無量寿経』という経文にある一節でな」。 33 00:03:33,780 --> 00:03:38,752 「寿限り無し めでたいことが止めどなく続く という意味だな」。 34 00:03:38,752 --> 00:03:43,757 「はえ~ 寿限無ね。 変わってていいじゃないですか。 うんうん」。 35 00:03:43,757 --> 00:03:45,759 「でも 他 なんかありますか?」。 36 00:03:45,759 --> 00:03:47,761 「五劫のすり切れず」。 37 00:03:47,761 --> 00:03:50,764 「3000年に一度 天女が天下りして→ 38 00:03:50,764 --> 00:03:53,750 大地の岩を衣の袖でなでる」。 39 00:03:53,750 --> 00:03:56,770 「また3000年たつと なでる」。 40 00:03:56,770 --> 00:03:59,739 「なでられた岩が すり切れてなくなるのが一劫」。 41 00:03:59,739 --> 00:04:04,744 「つまり 五劫とは 気が知れないほど長い時ということだな」。 42 00:04:04,744 --> 00:04:07,731 「はえ~ 随分 気の長え奴がいたもんですね」。 43 00:04:07,731 --> 00:04:09,733 「ああ 他にありますか?」。 44 00:04:09,733 --> 00:04:11,735 「海砂利水魚」。 45 00:04:11,735 --> 00:04:16,740 「海の砂利 水の魚。 いくら取っても取り尽くせない」。 46 00:04:16,740 --> 00:04:19,760 「ああ これもいいねえ。 他には?」。 47 00:04:19,760 --> 00:04:22,762 「水行末 雲行末 風来末」。 48 00:04:22,762 --> 00:04:25,799 「水 雲 風の行く末は分からない」。 49 00:04:25,799 --> 00:04:29,769 「この末が分からないというのも また めでたいな」。 50 00:04:29,769 --> 00:04:32,739 「はあ なるほどねえ。 他 どうです?」。 51 00:04:32,739 --> 00:04:34,741 「食う寝るところに住むところ」。 52 00:04:34,741 --> 00:04:38,745 「人の暮らしに欠かせぬものが そろっているというのは めでたいことだ」。 53 00:04:38,745 --> 00:04:41,781 「ああ 欠かせねえんじゃ頂きましょう。 ええ ええ」。 54 00:04:41,781 --> 00:04:43,750 「まだありますか?」。 55 00:04:43,750 --> 00:04:46,736 「んん~ じゃあ…」。 56 00:04:46,736 --> 00:04:48,738 「やぶら小路のぶら小路」。 57 00:04:48,738 --> 00:04:52,759 「春に若葉を生じ 夏に花を咲かし→ 58 00:04:52,759 --> 00:04:55,762 秋に赤き実をつけ 冬には霜をも しのぐという→ 59 00:04:55,762 --> 00:04:58,765 おめでたい木の名前だな」。 60 00:04:58,765 --> 00:05:01,735 「他には?」。 「んん~…」。 61 00:05:01,735 --> 00:05:05,772 「パイポパイポパイポのシューリンガン シューリンガンのグーリンダイ→ 62 00:05:05,772 --> 00:05:08,742 グーリンダイのポンポコナーのポンポコピー」。 63 00:05:08,742 --> 00:05:13,797 「万年にわたり栄えた唐土にある パイポという国の王と后」。 64 00:05:13,797 --> 00:05:16,750 「その間に生まれた2人の子の名前だな」。 65 00:05:16,750 --> 00:05:19,736 「はあ~ 知らなかったねえ。 あとは?」。 66 00:05:19,736 --> 00:05:22,756 「おまえさん あとばっかりで 名前つける気あるのかい?」。 67 00:05:22,756 --> 00:05:25,759 (観客の笑い声) 「ああ そう… はあ」。 68 00:05:26,793 --> 00:05:33,767 「長く久しい命と書いて 長久命。 それを長く助けるで 長助」。 69 00:05:33,767 --> 00:05:37,771 「これは 私に男の子ができたら つけようと思っていた名だな」。 70 00:05:40,774 --> 00:05:42,776 ねえ おっ母。 71 00:05:43,743 --> 00:05:45,779 なんで 私の名前って 「朱音」なの? 72 00:05:45,779 --> 00:05:47,764 (桜咲真幸)えっ? 73 00:05:47,764 --> 00:05:51,735 何? 何? その質問。 大会前でおセンチなの? 74 00:05:51,735 --> 00:05:55,789 いいから教えてよ! フフッ…。 75 00:05:55,789 --> 00:05:59,743 あんたの名前はね 徹が決めたの。 76 00:05:59,743 --> 00:06:01,761 おっ父が? 77 00:06:01,761 --> 00:06:04,798 朱音は 予定日より早く生まれたの。 78 00:06:04,798 --> 00:06:07,751 徹は 地方で仕事でさ。 79 00:06:07,751 --> 00:06:12,772 病院に着いたのは あんたが生まれた次の日の夕方かな。 80 00:06:12,772 --> 00:06:14,774 (阿良川志ん太)おおっ… おっとと…。 81 00:06:16,776 --> 00:06:18,778 フッ…。 82 00:06:18,778 --> 00:06:21,765 そう。 右腕で頭を支えるの。 83 00:06:21,765 --> 00:06:24,768 (志ん太)よーし よしよし…。 84 00:06:28,755 --> 00:06:34,761 (寝息) 85 00:06:37,764 --> 00:06:42,769 (風の音) 86 00:06:47,774 --> 00:06:51,761 (志ん太)なあ 真幸。 ん? 87 00:06:53,780 --> 00:06:58,768 (志ん太)この子の名前 「朱音」ってどうかな? 88 00:07:04,758 --> 00:07:08,745 朱に染まる空を見て思い付いたって。 89 00:07:08,745 --> 00:07:13,733 あと 朱色は 魔よけとか長寿の意味もあるんだって。 90 00:07:13,733 --> 00:07:15,719 それを込めてさ。 91 00:07:15,719 --> 00:07:17,721 いろいろ考えてんだね。 92 00:07:18,738 --> 00:07:20,740 んっ… ちょっ…。 93 00:07:20,740 --> 00:07:22,742 なんだよ! 94 00:07:22,742 --> 00:07:28,748 当たり前でしょ! 適当に子供の名前つける親なんていないよ。 95 00:07:32,752 --> 00:07:35,739 「おっ母よ~ 和尚から聞いた名前→ 96 00:07:35,739 --> 00:07:37,741 全部そっくりつけちまおう」。 97 00:07:37,741 --> 00:07:39,726 「全部?」。 98 00:07:40,777 --> 00:07:42,762 「ちょいと長すぎやしないかい?」。 99 00:07:42,762 --> 00:07:45,765 「馬鹿野郎! 一つ選んでぽっくり死んでみろ」。 100 00:07:45,765 --> 00:07:50,737 「ああ… あっちの名前をつけておけば良かった って思うだろ」。 101 00:07:50,737 --> 00:07:52,756 あ~ なんていうんで→ 102 00:07:52,756 --> 00:07:56,793 こうして 和尚からもらった名前を そっくりつけてしまった。 103 00:07:56,793 --> 00:08:00,764 あ~ これだけ名前が長いと あやすのも大変で。 104 00:08:00,764 --> 00:08:03,733 「おぎゃあ! おぎゃあ!」。 105 00:08:03,733 --> 00:08:06,770 「ああ ああ ああ もう… 泣かないの」。 106 00:08:06,770 --> 00:08:08,788 「ほら こっち見るんだよ」。 107 00:08:08,788 --> 00:08:12,759 「寿限無 寿限無 五劫のすり切れず→ 108 00:08:12,759 --> 00:08:16,830 海砂利水魚の水行末 雲行末 風来末→ 109 00:08:16,830 --> 00:08:21,735 食う寝るところに住むところ やぶら小路のぶら小路→ 110 00:08:21,735 --> 00:08:25,739 パイポパイポパイポのシューリンガン シューリンガンのグーリンダイ→ 111 00:08:25,739 --> 00:08:31,745 グーリンダイのポンポコナーのポンポコピーの 長久命の長助ちゃん」。 112 00:08:31,745 --> 00:08:34,748 「いないいない… ばあ!」。 113 00:08:34,748 --> 00:08:36,750 「あら?」。 「今 出てったぜ」。 114 00:08:36,750 --> 00:08:38,735 「はあ…」。 115 00:08:39,753 --> 00:08:42,756 (観客の笑い声) 116 00:08:42,756 --> 00:08:44,758 《なんなん? この感じ》 117 00:08:44,758 --> 00:08:50,780 《聞けば聞くほど 役の情景が立っていって あの子の存在が高座から消えていく》 118 00:08:50,780 --> 00:08:52,766 「入っちくれ 入っちくれ」。 119 00:08:52,766 --> 00:08:57,771 「ああ 聞いたよ。 お子さんに名前をつけたんだってね」。 120 00:08:57,771 --> 00:09:00,757 (練磨家からし) 《これは うまいのか?》 121 00:09:00,757 --> 00:09:05,779 《声優ちゃんは うまかった。 狙って泣かせたから》 122 00:09:05,779 --> 00:09:08,782 《だけど こいつは 何 狙ってんのか よく分からねえ》 123 00:09:08,782 --> 00:09:10,767 《じゃあ 下手?》 124 00:09:10,767 --> 00:09:16,756 「名前を呼ぶ時 これを読むから 間違ってたら言っておくれよ」。 125 00:09:16,756 --> 00:09:19,759 《うめえとすら思えねえほど自然!?》 126 00:09:19,759 --> 00:09:23,763 《俺のほうがウケてんのに 俺のほうが上なのに…》 127 00:09:25,832 --> 00:09:28,752 (〓 龍若) 《客にうまいと思わせるうちは二流→ 128 00:09:28,752 --> 00:09:30,754 …とは よう言うたもんやな》 129 00:09:30,754 --> 00:09:36,776 《聞き手が噺の世界に集中するあまり 演者の存在が消えたように感じる》 130 00:09:36,776 --> 00:09:41,831 《名人の高座を見た時 まれに そう錯覚することがあるが→ 131 00:09:41,831 --> 00:09:44,751 まさか 可楽杯で味わうなんて》 132 00:09:44,751 --> 00:09:50,740 「長久命の長助~ ええ~」。 133 00:09:51,758 --> 00:09:54,828 「ご愁傷さま」。 「死んじゃいねえんですよ!」。 134 00:09:54,828 --> 00:09:56,763 〓(観客の笑い声) 135 00:09:56,763 --> 00:09:58,765 (阿良川こぐま) 《不利に働くと思ってたけど…》 136 00:09:59,766 --> 00:10:01,768 (こぐまの声) 客のほとんどが『寿限無』をやれる。 137 00:10:01,768 --> 00:10:03,753 耳も肥えてる。 138 00:10:03,753 --> 00:10:06,756 そんな客相手にウケを取るのは 簡単じゃない。 139 00:10:07,824 --> 00:10:11,828 《知ってる噺だからこそ 想像しやすいってのはあるか》 140 00:10:14,747 --> 00:10:18,751 (阿良川志ぐま) ああ 『寿限無』は好きにやっていい。 141 00:10:18,751 --> 00:10:21,754 思うようにやってみろと 朱音に言ってやれ。 142 00:10:21,754 --> 00:10:23,756 分かりました。 143 00:10:23,756 --> 00:10:26,743 それと もう一つお聞きしたいことが。 144 00:10:26,743 --> 00:10:31,731 (志ぐま) なんで 『寿限無』を選んだのか… か。 145 00:10:31,731 --> 00:10:34,734 朱音は筋がいい。 146 00:10:34,734 --> 00:10:39,739 チビスケの頃から 俺が教えたことを すぐ ものにしちまった。 147 00:10:39,739 --> 00:10:45,745 でもな できすぎて抜け落ちちまってんだよ。 148 00:10:45,745 --> 00:10:49,732 役の心情に寄り添う意識が。 149 00:10:49,732 --> 00:10:55,755 朱音は 役に対する理解度が浅くても それなりに こなせちまうからな。 150 00:10:55,755 --> 00:11:00,760 だが そんなものは しょせん 中身のねえハリボテの芸。 151 00:11:00,760 --> 00:11:03,763 人の心は動かせない。 152 00:11:03,763 --> 00:11:06,749 八五郎は その時 何を考えているのか? 153 00:11:06,749 --> 00:11:10,737 熊五郎は? 和尚は? 隠居は? 154 00:11:10,737 --> 00:11:14,724 登場人物になりきり 考える。 155 00:11:14,724 --> 00:11:18,745 了見。 それを あいつに学んでほしかった。 156 00:11:18,745 --> 00:11:21,748 『寿限無』は くすぐりや アレンジの足し代がないぐらい→ 157 00:11:21,748 --> 00:11:23,733 シンプルな噺だ。 158 00:11:23,733 --> 00:11:27,737 役の了見について考えるには ちょうどいいだろう。 159 00:11:28,738 --> 00:11:32,742 言ってあげればいいのに。 やぼなことを言うな。 160 00:11:32,742 --> 00:11:36,763 自分で悩み考え たどり着くことに 意味があるんだ。 161 00:11:36,763 --> 00:11:40,783 それに 種は もう芽吹いている。 162 00:11:40,783 --> 00:11:43,720 実るのも時間の問題だよ。 163 00:11:43,720 --> 00:11:45,805 「学校行くから迎えに来たよ」。 164 00:11:45,805 --> 00:11:51,794 「寿限無 寿限無 五劫のすり切れず 海砂利水魚の水行末 雲行末 風来末→ 165 00:11:51,794 --> 00:11:56,783 食う寝るところに住むところ やぶら小路のぶら小路→ 166 00:11:56,783 --> 00:12:00,737 パイポパイポパイポのシューリンガン シューリンガンのグーリンダイ→ 167 00:12:00,737 --> 00:12:06,759 グーリンダイのポンポコナーのポンポコピーの 長久命の長助いる?」。 168 00:12:06,759 --> 00:12:09,796 「あら 迎えに来てくれたのに ごめんなさいねえ」。 169 00:12:09,796 --> 00:12:15,752 (阿良川一剣)《ハハッ… 例年の可楽杯特有の熱気はどこへやら》 170 00:12:15,752 --> 00:12:21,774 《今や この会場は技術を競う場から 噺を楽しむ場に変わっている》 171 00:12:21,774 --> 00:12:26,779 《いや あの子によって変えられたと 評するのが正しいか…》 172 00:12:26,779 --> 00:12:29,766 《けど 困っちゃったねえ…》 173 00:12:29,766 --> 00:12:32,752 《ただ達者ってだけなら なんの問題もないんだけど→ 174 00:12:32,752 --> 00:12:35,755 このしゃべりのテンポ 間→ 175 00:12:35,755 --> 00:12:38,791 間違いない》 176 00:12:38,791 --> 00:12:41,794 《あの子が師事しているのは 阿良川志ぐま》 177 00:12:42,762 --> 00:12:44,864 「ほら ほら! 起きなさい!」。 178 00:12:44,864 --> 00:12:47,767 《…にしても解せないなあ》 179 00:12:47,767 --> 00:12:53,773 《例の破門騒動以来 志ぐま師匠は 弟子入りを全て断っていると聞いたが》 180 00:12:53,773 --> 00:12:58,778 《それに この若さに似合わない 芸の練度の高さ》 181 00:12:58,778 --> 00:13:02,732 《志ぐま師匠 一体 何を…》 182 00:13:02,732 --> 00:13:04,817 「水行末 雲行末 風来末 食う寝るところ…」。 183 00:13:04,817 --> 00:13:07,754 「おばちゃん! 学校遅れちゃうから 先 行くね!」。 184 00:13:07,754 --> 00:13:09,739 (観客の笑い声) 185 00:13:10,740 --> 00:13:16,763 (こぐま)《演じよう 表現しようと力むほど 演者の存在感は大きくなる》 186 00:13:16,763 --> 00:13:19,766 《人物の了見を考え 知ることで→ 187 00:13:19,766 --> 00:13:22,735 大げさな表現や技術に頼るまでもなく→ 188 00:13:22,735 --> 00:13:26,723 ごく自然に その人物として振る舞えるようになっていく》 189 00:13:26,723 --> 00:13:32,729 《さりげなく自然に 演者の存在が消えてしまうほどに》 190 00:13:32,729 --> 00:13:35,748 《きっと 師匠が 了見の意味を先に話してたら…》 191 00:13:35,748 --> 00:13:38,751 すぐ 了見を身につけてやりますよ! 192 00:13:38,751 --> 00:13:41,788 フッ…。 《空回りしてただろうな》 193 00:13:41,788 --> 00:13:47,760 《ただ それだけ ひたむきだからこそ つい あの子のことを応援してしまう》 194 00:13:47,760 --> 00:13:52,765 《そういう意味じゃあ 僕も彼女の術中に はまった一人か》 195 00:13:52,765 --> 00:13:55,768 「おばちゃーん! 大変だー!」。 196 00:14:05,745 --> 00:14:10,733 「ハアハア ハアハア…」。 197 00:14:10,733 --> 00:14:16,756 「ハアハア ハアハア…」。 198 00:14:16,756 --> 00:14:18,741 「おっとっと…」。 199 00:14:19,759 --> 00:14:21,761 「おばちゃーん!」。 200 00:14:21,761 --> 00:14:23,796 「ハアハア ハアハア…」。 201 00:14:23,796 --> 00:14:27,767 「寿限無 寿限無 五劫のすり切れず 海砂利水魚の水行末 雲行末 風来末→ 202 00:14:27,767 --> 00:14:30,737 食う寝るところに住むところ やぶら小路のぶら小路→ 203 00:14:30,737 --> 00:14:32,739 パイポパイポパイポのシューリンガン シューリンガンのグーリンダイ→ 204 00:14:32,739 --> 00:14:36,743 グーリンダイのポンポコナーのポンポコピーの 長久命の長助が…」。 205 00:14:36,743 --> 00:14:39,746 「ハアハア…」。 206 00:14:39,746 --> 00:14:41,748 「どうしたの?」。 207 00:14:41,748 --> 00:14:43,750 「ちょっと待ってね… ハアハア…」。 208 00:14:43,750 --> 00:14:46,736 「寿限無 寿限無… 違って…」。 209 00:14:46,736 --> 00:14:48,738 「川に落ちちゃったんだよ!」。 210 00:14:49,806 --> 00:14:51,758 「あんた!」。 211 00:14:51,758 --> 00:14:53,760 「ハアハア…」。 212 00:14:53,760 --> 00:14:55,778 「ん?」。 213 00:14:55,778 --> 00:14:58,798 「うちの寿限無 寿限無 五劫のすり切れず 海砂利水魚の水行末 雲行末 風来末→ 214 00:14:58,798 --> 00:15:01,768 食う寝るところに住むところ やぶら小路のぶら小路→ 215 00:15:01,768 --> 00:15:03,770 パイポパイポパイポのシューリンガン シューリンガンの…」。 216 00:15:03,770 --> 00:15:06,756 「あっ! また ぎんちゃんの頭 ぶったのかい?」。 217 00:15:06,756 --> 00:15:08,758 「違うよ! 川に落ちたよ!」。 218 00:15:09,776 --> 00:15:11,811 (おけが落ちる音) 219 00:15:11,811 --> 00:15:15,782 「何を!? 寿限無 寿限無 五劫のすり切れず 海砂利水魚の水行末 雲行末 風来末→ 220 00:15:15,782 --> 00:15:17,784 食う寝るところに住むところ やぶら小路のぶら小路→ 221 00:15:17,784 --> 00:15:20,787 パイポパイポパイポのシューリンガン シューリンガンのグーリンダイ→ 222 00:15:20,787 --> 00:15:24,791 グーリンダイのポンポコナーのポンポコピーの 長久命の長助が 川に!?」。 223 00:15:25,741 --> 00:15:27,743 「どけ! どいてくれ!」。 224 00:15:29,779 --> 00:15:31,764 「おまえさん もしや あの子は もう…」。 225 00:15:31,764 --> 00:15:34,750 「馬鹿野郎! 縁起でもねえこと言うな!」。 226 00:15:34,750 --> 00:15:36,769 「あいつに限って…」。 227 00:15:36,769 --> 00:15:38,821 「無事でいてくれよ!」。 228 00:15:38,821 --> 00:15:42,775 「寿限無 寿限無 五劫のすり切れず 海砂利水魚の水行末 雲行末 風来末→ 229 00:15:42,775 --> 00:15:45,761 食う寝るところに住むところ やぶら小路のぶら小路→ 230 00:15:45,761 --> 00:15:47,763 パイポパイポパイポのシューリンガン シューリンガンのグーリンダイ→ 231 00:15:47,763 --> 00:15:50,766 グーリンダイのポンポコナーのポンポコピーの 長久命の長助!」。 232 00:15:52,752 --> 00:15:54,737 「いないじゃないか…」。 233 00:15:54,737 --> 00:15:57,757 「まさか もう 流されちまったんじゃ…」。 234 00:15:57,757 --> 00:16:01,794 「そんなウソだ! ウソだろ こんな…」。 235 00:16:01,794 --> 00:16:04,780 「おーい!」。 236 00:16:04,780 --> 00:16:09,769 「寿限無 寿限無 五劫のすり切れず 海砂利水魚の水行末 雲行末 風来末→ 237 00:16:09,769 --> 00:16:12,788 食う寝るところに住むところ やぶら小路のぶら小路→ 238 00:16:12,788 --> 00:16:15,775 パイポパイポパイポのシューリンガン シューリンガンのグーリンダイ→ 239 00:16:15,775 --> 00:16:19,779 グーリンダイのポンポコナーのポンポコピーの 長久命の長助~!」。 240 00:16:19,779 --> 00:16:21,797 「頼むから返事してくれ!」。 241 00:16:21,797 --> 00:16:23,749 「寿限無 寿限無 五劫のすり切れ…」。 242 00:16:23,749 --> 00:16:25,735 「何?」。 243 00:16:30,756 --> 00:16:34,760 「えっ?」。 「えっ?」。 「えっ?」。 244 00:16:35,761 --> 00:16:39,749 「あっ… あれ… なんで…?」。 245 00:16:39,749 --> 00:16:41,734 「なんでって…」。 246 00:16:41,734 --> 00:16:45,738 「あんまり助けが来ねえから 自分で上がってきちまった」。 247 00:16:45,738 --> 00:16:48,774 (観客の笑い声) ご存じ 『寿限無』の一席でした。 248 00:16:48,774 --> 00:16:55,748 (拍手) 249 00:16:55,748 --> 00:16:57,750 (息を吐く音) 250 00:16:59,719 --> 00:17:04,707 (拍手と歓声) 251 00:17:04,707 --> 00:17:17,720 ♬~ 252 00:17:17,720 --> 00:17:23,726 (拍手と歓声) 253 00:17:27,730 --> 00:17:29,749 (樫尾公久)あっ…。 254 00:17:29,749 --> 00:17:31,717 (樫尾)《やべえ やべえ!》 255 00:17:31,717 --> 00:17:34,720 《記事にしないといけないのに 普通に聞いてしまった!》 256 00:17:34,720 --> 00:17:36,722 (古味沙恵)先輩…。 (樫尾)ん? 257 00:17:36,722 --> 00:17:41,727 (古味)なんか 落語って かっこいいですね…。 258 00:17:42,762 --> 00:17:44,730 (樫尾)今更? 259 00:17:44,730 --> 00:17:48,734 (古味)いや… 分かってましたよ! 分かってたけど 改めて再認識みたいな。 260 00:17:48,734 --> 00:17:51,771 (阿良川魁生) いや~ ありがとうございました! 261 00:17:51,771 --> 00:17:54,740 (魁生)あかねさんで 『寿限無』でした。 262 00:17:54,740 --> 00:17:57,727 それでは 伺ってみましょう。 263 00:17:57,727 --> 00:18:01,731 一生師匠 ご覧になって いかがでしたか? 264 00:18:12,725 --> 00:18:15,728 (阿良川一生)おまえ…→ 265 00:18:15,728 --> 00:18:21,734 ここは おまえが来ていい場所じゃないって 分かってるよな? 266 00:18:22,735 --> 00:18:24,737 …はい! 267 00:18:24,737 --> 00:18:27,740 (一生)ならいい。 (マイクを置く音) 268 00:18:27,740 --> 00:18:32,745 (観客のどよめき) 269 00:18:32,745 --> 00:18:35,748 (女性)何? 今の。 (男性)どういうこと? 270 00:18:40,753 --> 00:18:42,755 (阿良川ぐりこ)ハハッ…。 271 00:18:42,755 --> 00:18:44,757 フッ…。 (岩清水真智子)えっ? えっ? 272 00:18:49,812 --> 00:18:56,736 〓♬~『夕焼小焼』 273 00:18:56,736 --> 00:19:03,042 (ヒグラシの鳴き声) 274 00:19:10,733 --> 00:19:14,787 (男性)いや~ 面白かったな! 今年の可楽杯! 275 00:19:14,787 --> 00:19:17,757 (女性)優勝 予想できた? 276 00:19:17,757 --> 00:19:22,745 (男性)いやあ。 まさかっちゃまさかだったけど 順当っちゃ順当じゃなかった? 277 00:19:22,745 --> 00:19:25,765 「えっ なんで!?」とか ならなかったっつうかさ。 278 00:19:25,765 --> 00:19:27,767 (女性)分かる 分かる! 279 00:19:27,767 --> 00:19:32,755 (女性)一生師匠のコメントだけは 意味分からなかったけど。 280 00:19:33,739 --> 00:19:36,742 (スタッフ)それでは ご案内しますね。 281 00:19:36,742 --> 00:19:41,747 優勝者と一生師匠の座談会は 15分を予定しています。 282 00:19:41,747 --> 00:19:43,766 クソが! 283 00:19:43,766 --> 00:19:47,787 (昇平)気持ちは分かるけどさあ。 まあ 落ち着きなよ。 284 00:19:47,787 --> 00:19:49,755 (昇平)2位だって 立派な順位じゃん。 285 00:19:49,755 --> 00:19:52,792 声優ちゃんと同率2位な。 286 00:19:52,792 --> 00:19:54,744 (ため息) 287 00:19:54,744 --> 00:19:57,747 それに おまえも聞いたろ。 あの講評。 288 00:19:58,764 --> 00:20:03,753 (龍若)今年は ホントにレベルが高くて 審査も随分悩みました。 289 00:20:03,753 --> 00:20:06,739 ですが からしくんはコント。 290 00:20:06,739 --> 00:20:10,743 ひかるさんは 一人芝居の要素が大きかった。 291 00:20:10,743 --> 00:20:15,748 その中で あかねさんは 純度の高い落語をやっていた。 292 00:20:15,748 --> 00:20:19,752 落語家として 彼女を評価せざるを得んなと。 293 00:20:20,719 --> 00:20:24,724 (昇平)まあ… コント的って言われたら 確かにイラっとくるね。 294 00:20:24,724 --> 00:20:26,709 そっちじゃねえよ! (昇平)えっ? 295 00:20:26,709 --> 00:20:33,733 あの寿限無ちゃんの高座が終わった後 阿良川一生が なんて言ったか覚えてるか? 296 00:20:33,733 --> 00:20:38,721 ここは おまえが来ていい場所じゃないって 分かってるよな? 297 00:20:38,721 --> 00:20:43,726 素人の大会をプロが荒らしてんじゃねえって 言ったんだ。 298 00:20:43,726 --> 00:20:46,729 俺も声優ちゃんも しょせんは素人。 299 00:20:47,746 --> 00:20:51,751 (からしの声) あいつの相手にすら なってなかったんだよ。 300 00:20:52,701 --> 00:20:55,755 (スタッフ)あっ メモ帳 使います? 301 00:20:55,755 --> 00:20:57,723 一生師匠 迫力すごいから→ 302 00:20:57,723 --> 00:21:00,726 質問を書いておいたほうが…。 大丈夫ですよ。 303 00:21:00,726 --> 00:21:03,712 聞きたいこと 一つしかないんで。 304 00:21:03,712 --> 00:21:06,715 あっ… 分かりました。 305 00:21:15,741 --> 00:21:18,744 どうぞ そちらにお掛けください。 306 00:21:26,719 --> 00:21:29,755 《なんだ この緊張感は…》 307 00:21:29,755 --> 00:21:34,727 《座談会っつうから もっと和やかな雰囲気かと思ったら…》 308 00:21:34,727 --> 00:21:37,763 それでは これより座談会を始めます。 309 00:21:37,763 --> 00:21:41,767 あかねさん どうぞ 一生師匠に聞きたいことがあれば。 310 00:21:43,736 --> 00:21:45,738 6年前。 311 00:21:48,741 --> 00:21:52,745 真打昇進試験で 阿良川志ぐまの弟子→ 312 00:21:52,745 --> 00:21:56,749 阿良川志ん太を破門にしたのは なんでですか? 313 00:22:03,739 --> 00:22:10,713 (風の音) 314 00:22:10,713 --> 00:22:15,718 ♬~