1 00:00:37,604 --> 00:00:39,573 (ふすまの開く音) (座布団を置く音) 2 00:00:39,573 --> 00:00:49,583 ♬~ 3 00:00:49,583 --> 00:00:53,587 (桜咲朱音) 〈そこから おっ父の噺を見るのが…〉 4 00:00:53,587 --> 00:00:58,592 ♬~ 5 00:00:58,592 --> 00:01:01,562 〈私は大好きだった〉 6 00:03:50,597 --> 00:03:53,600 (阿良川志ん太) 「そしたら 大家が うち来てさ→ 7 00:03:53,600 --> 00:03:56,570 ちょいと 道具箱 預かる なんてこと言うからさ→ 8 00:03:56,570 --> 00:03:58,605 ああ じゃあ 道具箱ってことは→ 9 00:03:58,605 --> 00:04:01,575 大家さん 大工なんか やんのかなあ と思ってね→ 10 00:04:01,575 --> 00:04:03,577 じゃあ どうぞ! って貸したんだよ」。 11 00:04:03,577 --> 00:04:05,579 「あの年で大工なんて務ま…」。 12 00:04:05,579 --> 00:04:08,582 (せき) (志ん太)「あれ もうろくだね」。 13 00:04:08,582 --> 00:04:10,550 「おまえが もうろくだよ!」。 (観客の笑い声) 14 00:04:10,550 --> 00:04:13,553 (志ん太)「おまえ… おまえ それ なんじゃねえか!?」。 15 00:04:14,554 --> 00:04:17,557 (吉乃紗季)かたい! かたいよ 志んちゃん! 16 00:04:17,557 --> 00:04:19,559 かたいですか…。 17 00:04:19,559 --> 00:04:22,562 (紗季)そうだよ。 気負いすぎ。 18 00:04:22,562 --> 00:04:25,565 (志ん太)ああ… ですかね。 (ため息) 19 00:04:25,565 --> 00:04:29,569 (紗季)例の試験もあるし 娘ちゃんも大きいしで→ 20 00:04:29,569 --> 00:04:32,539 グ~ッてなるのは分かるけど…。 21 00:04:38,578 --> 00:04:41,548 もっと こう スーッときて ワッ! ってね。 22 00:04:41,548 --> 00:04:44,551 頑張るんだよ。 (志ん太)ありがとうございます。 23 00:04:47,554 --> 00:04:50,557 (樫尾公久) 随分 買ってるんですね。 24 00:04:50,557 --> 00:04:54,561 正直 パッとしないというか ピンとこなかったんですけど…。 25 00:04:54,561 --> 00:04:57,564 まあ 今日の出来も いまいちだったしね。 26 00:04:57,564 --> 00:04:59,566 (樫尾)なら なんで? 27 00:04:59,566 --> 00:05:01,568 (ため息) 28 00:05:01,568 --> 00:05:05,539 (紗季)私は あの子の会心の一席を見たことがある。 29 00:05:07,574 --> 00:05:11,578 (紗季の声)こんなとこで くすぶっていい男 じゃないんだよ あの子はさ。 30 00:05:11,578 --> 00:05:13,580 (ため息) 31 00:05:13,580 --> 00:05:18,552 (携帯電話の振動音) (志ん太のため息) 32 00:05:18,552 --> 00:05:21,555 (携帯電話の振動音) (志ん太)朱音の…? 33 00:05:21,555 --> 00:05:23,557 (児童)じゃあ 後でね! 34 00:05:23,557 --> 00:05:25,625 (児童)じゃあね~! (児童)バイバ~イ! 35 00:05:25,625 --> 00:05:27,561 ⚟(尾崎ママ)はあ!? 36 00:05:27,561 --> 00:05:31,565 ちょっと! そんな言い方ないんじゃない!? あなた どうして そんな…。 37 00:05:31,565 --> 00:05:33,567 だから それは さっき…。 (尾崎ママ)はあ!? 38 00:05:33,567 --> 00:05:35,602 (尾崎ママ)だからも何もないから! (泣き声) 39 00:05:35,602 --> 00:05:38,572 ああ うちの子は こんなに泣いて…! (柳谷先生)尾崎さん 大きな声は…。 40 00:05:38,572 --> 00:05:40,574 (尾崎ママ)申し訳ないとか思わないの!? (ため息) 41 00:05:40,574 --> 00:05:42,576 (尾崎ママ)まったく…。 これだから 今の子は…。 42 00:05:42,576 --> 00:05:44,544 全然 話 聞かないじゃん! 43 00:05:46,580 --> 00:05:50,650 分かった。 じゃあ やってみせるから見て。 44 00:05:50,650 --> 00:05:52,619 やってみせる? (ジャンボ)えっ? 45 00:05:53,587 --> 00:05:57,591 ええー… 事の始まりは 5時間目の国語の時間。 46 00:05:57,591 --> 00:06:02,596 「そんけいする人」をテーマに書いた作文を 一人一人 発表してた。 47 00:06:02,596 --> 00:06:06,566 「そんけいする人 五年三組 桜咲あかね」。 48 00:06:06,566 --> 00:06:09,569 「わたしのそんけいする人は おっ父です」。 49 00:06:09,569 --> 00:06:12,572 「おっ父は落語家で 話が とっても面白くて…」。 50 00:06:12,572 --> 00:06:16,610 「ダハハ…! そんけい? ハハッ…! やっば!」。 51 00:06:16,610 --> 00:06:19,579 「ママ 言ってたぜ おまえのパパはヒモだって」。 52 00:06:19,579 --> 00:06:21,615 「それを そんけい?」。 53 00:06:21,615 --> 00:06:25,585 「ヒモ? 何? それ」 「ヒヒッ! そんなことも知らねえのか?」。 54 00:06:25,585 --> 00:06:28,588 やばっ! 「仕事してない 駄目なパパだって言ってんだ」。 55 00:06:28,588 --> 00:06:31,591 「はあ!?」。 (柳谷)すごい! 56 00:06:31,591 --> 00:06:34,561 あの… ホントに このとおり そのままでして…。 57 00:06:34,561 --> 00:06:38,565 でも だからって 泣かせるまで言わなくても…! 58 00:06:38,565 --> 00:06:42,569 さっきから被害者ぶってるけどさ けんか売ったの そっちだろ? 59 00:06:42,569 --> 00:06:45,572 なめたこと言ってんじゃねえぞ この…! 60 00:06:45,572 --> 00:06:47,574 やーめーろ。 61 00:06:47,574 --> 00:06:49,576 えっ おっ父! なんで!? 62 00:06:49,576 --> 00:06:54,581 (志ん太)柳谷先生 すみません。 毎度毎度 朱音がご迷惑を…。 63 00:06:54,581 --> 00:06:58,585 そちらさんも すみません。 うちの子が…。 64 00:06:58,585 --> 00:07:00,587 おっ父! こいつらは…! 65 00:07:00,587 --> 00:07:03,556 「こいつら」!? うっ…! 66 00:07:03,556 --> 00:07:07,560 (志ん太)どんな理由であれ 乱暴な言葉を使うのは よくない。 67 00:07:07,560 --> 00:07:09,562 朱音なら分かるよな? 68 00:07:09,562 --> 00:07:12,565 (尾崎ママ) お父さんが話の分かる方で助かります。 69 00:07:12,565 --> 00:07:16,569 ホントに その子は…。 (志ん太)柳谷先生から話は聞いてます。 70 00:07:16,569 --> 00:07:20,573 親子そろって 私のことをおっしゃっていたそうで…。 71 00:07:20,573 --> 00:07:24,544 お互い 子に恥じない親でありたいものですね。 72 00:07:27,580 --> 00:07:29,582 じゃあ これで…。 73 00:07:29,582 --> 00:07:31,551 帰るぞ 朱音。 74 00:07:35,555 --> 00:07:37,557 荷物 取ってこい。 うん! 75 00:07:40,560 --> 00:07:42,562 (ため息) 76 00:07:52,572 --> 00:07:56,576 ♬~(防災無線の音楽) 77 00:07:56,576 --> 00:07:59,579 (志ん太)うん! うまい うまい。 78 00:07:59,579 --> 00:08:02,549 朱音も食べろ。 溶けるぞ。 79 00:08:04,551 --> 00:08:06,553 …ごめんなさい。 80 00:08:07,587 --> 00:08:11,558 (朱音の声)おっ父はすごいってことを 言いたくて 言い返したのに→ 81 00:08:11,558 --> 00:08:16,563 逆に おっ父が 嫌な気持ちになったんじゃないかって…。 82 00:08:21,568 --> 00:08:27,540 (志ん太)馬鹿野郎。 俺に気を使うなんて10年早いんだよ。 83 00:08:30,577 --> 00:08:33,580 (志ん太の声)落語家には 3つの階級があってな。 84 00:08:33,580 --> 00:08:37,550 下から 前座 二ツ目 真打って 分かれてるんだ。 85 00:08:37,550 --> 00:08:39,552 (朱音の声)おっ父は二ツ目でしょ? 86 00:08:39,552 --> 00:08:41,554 (志ん太の声)よく覚えてたな。 87 00:08:45,558 --> 00:08:49,562 (志ん太の声) 今度 真打になるための試験があってな。 88 00:08:49,562 --> 00:08:53,566 それに合格すれば 真打になれる。 89 00:08:53,566 --> 00:08:55,568 真打になれば ギャラが上がっ…。 90 00:08:55,568 --> 00:08:58,538 あっ… お金が たくさんもらえる。 91 00:09:01,574 --> 00:09:04,577 そうなりゃ 誰にも文句なんて言わせねえ。 92 00:09:06,579 --> 00:09:08,581 だから 変な気を使うな。 93 00:09:08,581 --> 00:09:11,584 どーんと構えてりゃいいんだよ。 94 00:09:11,584 --> 00:09:15,588 じゃあ 父ちゃん 稽古するから 朱音も宿題やれよ! 95 00:09:15,588 --> 00:09:18,591 はーい! うん! 96 00:09:18,591 --> 00:09:20,560 (ふすまの閉まる音) 97 00:09:25,598 --> 00:09:27,600 だよなあ…。 98 00:09:32,572 --> 00:09:36,576 真打になる。 ならないと…。 99 00:09:36,576 --> 00:09:38,711 じゃないと…。 100 00:09:38,711 --> 00:09:40,680 ⚞(座布団を置く音) ⚞ひっくち。 101 00:09:47,554 --> 00:09:50,557 さて まずは 今日のネタをさらうか。 102 00:09:51,591 --> 00:09:55,562 「おう 与太! 与太郎! 与太~!」。 103 00:09:58,598 --> 00:10:00,567 (桜咲真幸)あっ もう…! 104 00:10:00,567 --> 00:10:03,570 これ 昼のカレーうどんの…。 105 00:10:03,570 --> 00:10:08,575 にしても 尾崎ママ めっちゃキレてんじゃん。 キモッ! 106 00:10:08,575 --> 00:10:13,580 (真幸)…ったく 朱音と徹の馬鹿。 また やらかして…。 107 00:10:15,548 --> 00:10:17,550 ただいま! ん? 108 00:10:17,550 --> 00:10:20,587 ああ~ やっちまった カレーかぶり。 109 00:10:20,587 --> 00:10:24,591 もう… どんだけ カレー 好きなのよ みんな。 110 00:10:24,591 --> 00:10:26,626 「しょうがねえな ホントに」。 111 00:10:26,626 --> 00:10:30,563 「ええー 与太 えっ おまえ… おまえ そ… そっちから行ったの? おまえ」。 112 00:10:30,563 --> 00:10:34,567 「おまえ そんな… おまえ 表から入ろうとするんじゃないよ。 ええ?」。 113 00:10:34,567 --> 00:10:37,570 「裏から入んだよ 裏から。 ねえ。 待ってろ おめえは。 うん」。 114 00:10:37,570 --> 00:10:39,572 (せき払い) 115 00:10:39,572 --> 00:10:41,541 《見える》 116 00:10:43,576 --> 00:10:46,579 《部屋の中には おっ父一人しかいない》 117 00:10:46,579 --> 00:10:51,551 《なのに… だけど 部屋の中には3人いる》 118 00:10:51,551 --> 00:10:53,586 《体の向きが変わる度に→ 119 00:10:53,586 --> 00:10:56,556 顔や しゃべり方 声が コロコロ変わる》 120 00:10:56,556 --> 00:10:59,592 《意地悪な人 怒りっぽい人 のんきな人→ 121 00:10:59,592 --> 00:11:01,561 いろんな人が顔を出す》 122 00:11:01,561 --> 00:11:04,597 《すごい…! 魔法みたいだ!》 123 00:11:04,597 --> 00:11:06,566 ヒヒッ…! 124 00:11:06,566 --> 00:11:08,568 (志ん太)「チェッ!」。 125 00:11:08,568 --> 00:11:11,571 (2人)「ペッ! いらねえ ちくしょう!!」。 126 00:11:11,571 --> 00:11:13,573 《どうやったら できるんだろう…!》 127 00:11:13,573 --> 00:11:16,576 「ば… ばあさん! ばあさん! へっ! ばあさん!」。 128 00:11:16,576 --> 00:11:19,579 (真幸)お~い お母さん 帰ったよ~。 129 00:11:19,579 --> 00:11:21,548 ひっくち! 130 00:11:22,582 --> 00:11:26,553 はあ…。 ホント 落語馬鹿ばっか。 131 00:11:30,557 --> 00:11:35,528 (真幸)まあ しゃあないか。 来週だしね。 132 00:11:39,566 --> 00:11:42,569 (手を合わせる音) (志ん太・真幸・朱音)いただきます! 133 00:11:43,570 --> 00:11:45,572 あむっ! 134 00:11:45,572 --> 00:11:47,574 うん 美味しい! 135 00:11:47,574 --> 00:11:50,543 うん うまい! うまくいったなあ! 136 00:11:55,582 --> 00:11:57,550 おやすみなさい! 137 00:12:00,553 --> 00:12:03,556 (真幸)ちょっと! 起きなよ 徹! 138 00:12:03,556 --> 00:12:05,592 (志ん太)う~ん…。 139 00:12:05,592 --> 00:12:09,596 ほら! ちょっと! まだ稽古するんじゃないの? 寝るの? 140 00:12:09,596 --> 00:12:12,599 う~ん… やる…。 141 00:12:12,599 --> 00:12:16,569 じゃあ おやりよ! もう遅いよ。 私は先に寝るから。 142 00:12:16,569 --> 00:12:18,571 う~ん…。 143 00:12:18,571 --> 00:12:22,575 (真幸)そういや 徹 読んだの? 朱音の作文。 144 00:12:22,575 --> 00:12:25,578 (志ん太)えっ? いや…。 145 00:12:25,578 --> 00:12:30,583 ♬~ 146 00:12:30,583 --> 00:12:35,588 (寝息) 147 00:12:35,588 --> 00:12:51,571 ♬~ 148 00:12:51,571 --> 00:12:55,575 (寝息) 149 00:15:32,565 --> 00:15:34,534 (係員)受付 こちらでございます! 150 00:15:39,572 --> 00:15:42,575 あっ おっ父だ! うちのより大きい! 151 00:15:42,575 --> 00:15:45,578 えっ そうか? 同じに見えるけど…。 152 00:15:45,578 --> 00:15:47,547 (阿良川志ぐま)おっ 元気がいいねえ。 ん? 153 00:15:48,548 --> 00:15:50,583 (真幸)志ぐま師匠! 154 00:15:50,583 --> 00:15:52,552 久しぶりだねえ 真幸ちゃん。 155 00:15:52,552 --> 00:15:56,556 ご無沙汰してます。 いつも 主人がお世話になってます。 156 00:15:56,556 --> 00:15:58,558 いやいや 俺なんて全然…。 157 00:15:58,558 --> 00:16:01,594 しかし 月日が流れるのは早いねえ。 158 00:16:01,594 --> 00:16:03,563 ねえ 師匠! おっ父は? 159 00:16:03,563 --> 00:16:06,566 (真幸)馬鹿! ん? ああ…。 160 00:16:06,566 --> 00:16:11,571 まあ あれだ。 今は そっとしといてやんな。 161 00:16:13,539 --> 00:16:17,543 《阿良川流真打昇進試験》 162 00:16:17,543 --> 00:16:20,580 《出演者の噺を 客と師匠が審査》 163 00:16:20,580 --> 00:16:22,548 《審査結果を集計し→ 164 00:16:22,548 --> 00:16:26,552 技量を認められた者だけが 真打に昇進できる》 165 00:16:26,552 --> 00:16:28,554 《今年の審査員長は→ 166 00:16:28,554 --> 00:16:33,526 うちの師匠の兄弟子で 当代一の呼び声高い…》 167 00:16:41,534 --> 00:16:44,537 (志ん太)《だ… だから どうした!?》 168 00:16:44,537 --> 00:16:47,540 《この日のために どれだけ かけてきたと思ってる!》 169 00:16:47,540 --> 00:16:51,544 《いつもと同じ 自分の芸を信じるだけ》 170 00:16:51,544 --> 00:16:56,549 《でも もし しくじったら…》 171 00:16:57,550 --> 00:16:59,552 (志ん太)《いや…!》 (顔をたたく音) 172 00:16:59,552 --> 00:17:03,556 馬鹿か 俺は! 気持ちで負けて どうする!? 173 00:17:03,556 --> 00:17:08,527 《やるしかないんだ。 俺には それしか道がないんだ!》 174 00:17:11,564 --> 00:17:14,534 (司会)ええー では 始めてまいりましょう。 175 00:17:14,534 --> 00:17:19,572 ただ今より 阿良川流真打昇進試験を開演いたします! 176 00:17:19,572 --> 00:17:23,576 最初の出場者は この方です。 177 00:17:23,576 --> 00:17:28,581 ♬~(おはやし) 178 00:17:28,581 --> 00:17:43,563 ♬~(おはやし) (志ん太の荒い息遣い) 179 00:17:44,563 --> 00:17:46,532 (志ん太)ええー…。 180 00:17:46,532 --> 00:17:51,537 まずは 1番手でございまして 私 阿良川志ん太と申します。 181 00:17:52,572 --> 00:17:55,541 (志ん太)《おっ…! 寄席と全然違う》 182 00:17:55,541 --> 00:17:57,543 《空気が重たく冷たい》 183 00:17:57,543 --> 00:17:59,545 (志ん太)ええー…。 (せき払い) 184 00:17:59,545 --> 00:18:04,550 《何より お客さんの 値踏みするような目…》 185 00:18:04,550 --> 00:18:10,556 (志ん太)いやあ 本日は 五月晴れの中 こんな悪趣味な試験にお越しいただき→ 186 00:18:10,556 --> 00:18:12,558 ありがとうございます。 187 00:18:12,558 --> 00:18:15,561 (志ん太) 《いまいちか? そんなことない?》 188 00:18:15,561 --> 00:18:18,564 ホントにですね 皆さんの一票で 私の人生が変わる。 189 00:18:18,564 --> 00:18:20,533 《馬鹿か? 何 考えてる!?》 190 00:18:20,533 --> 00:18:23,536 なんだか 政治家みてえだなあ なんて思いましてね。 だったら…。 191 00:18:23,536 --> 00:18:25,538 《今は 枕に集中しろ!》 192 00:18:25,538 --> 00:18:27,540 《はっ…!》 193 00:18:29,575 --> 00:18:31,577 (つばを飲み込む音) 194 00:18:31,577 --> 00:18:34,580 (志ん太)い… いやあ 私は落語家なもんでね…。 195 00:18:34,580 --> 00:18:36,549 (志ぐま)《まずい テンポが速すぎる》 196 00:18:36,549 --> 00:18:38,584 そんなとこも政治家みてえだなあと…。 197 00:18:38,584 --> 00:18:41,554 (志ん太)《思ったよりウケない。 欲しがりすぎたか?》 198 00:18:41,554 --> 00:18:44,557 《どうする? やばい! やばい! このままじゃ…》 199 00:18:44,557 --> 00:18:46,592 この…。 200 00:18:46,592 --> 00:18:48,561 ひっくち…! 201 00:18:48,561 --> 00:18:51,564 《はっ…!》 202 00:18:51,564 --> 00:18:53,566 《この声…》 203 00:18:53,566 --> 00:18:56,535 《はっ…!》 204 00:18:57,570 --> 00:19:01,574 (志ん太)えっ? 俺のまねしてる? 朱音が? 205 00:19:01,574 --> 00:19:06,579 そう。 素人目だけど これが意外とうまくてさ。 206 00:19:06,579 --> 00:19:10,549 徹よりセンスあるかもよ~? そりゃ やばいな…。 207 00:19:10,549 --> 00:19:13,586 (真幸)そう思うなら さっさと真打になんなさいよ。 208 00:19:13,586 --> 00:19:15,588 簡単に言うなよ! 209 00:19:15,588 --> 00:19:18,557 (真幸)言うよ! 朱音のためだもん。 (志ん太)朱音の…? 210 00:19:18,557 --> 00:19:20,559 (真幸)あきれた…。 211 00:19:20,559 --> 00:19:25,531 朱音はパパっ子だよ。 パパの自慢 したいに決まってるじゃん。 212 00:19:26,532 --> 00:19:31,570 私の前で弱音吐くのはいいけどさ→ 213 00:19:31,570 --> 00:19:35,541 せめて 朱音の前では かっこいいお父さんでいてよね。 214 00:19:41,547 --> 00:19:45,551 (志ん太)随分 冷え切っているようで。 でも 寒いのも悪くない。 215 00:19:45,551 --> 00:19:47,553 (志ぐま)《なんだ?》 216 00:19:47,553 --> 00:19:50,556 (志ん太)寒い中飲む燗酒の うまさたるや。 217 00:19:50,556 --> 00:19:54,560 ついつい もう一杯 もう一杯と手が伸びる。 218 00:19:54,560 --> 00:19:58,564 いつしか 夢心地で がぶがぶ飲んで しくじるなんてのは…。 219 00:19:58,564 --> 00:20:00,533 (志ぐま)《雰囲気が変わった》 220 00:20:00,533 --> 00:20:03,536 よくある話でございます。 221 00:20:04,537 --> 00:20:07,573 (志ん太) 「ちょいと おまえさん! おまえさん!」。 222 00:20:07,573 --> 00:20:09,542 「起きとくれよ! おまえさん!」。 223 00:20:09,542 --> 00:20:14,547 「なんだよ? ええ? 邪険な起こし方すんなえ。 なんだい?」。 224 00:20:14,547 --> 00:20:16,549 「なんだい? じゃないやね この人は…」。 225 00:20:16,549 --> 00:20:19,552 (阿良川全生)《枕を終えて 噺に入ったか…》 226 00:20:19,552 --> 00:20:25,558 ♬~ 227 00:20:25,558 --> 00:20:31,564 (全生)〈腕はいいが 酒に溺れ 借金生活を送る 魚屋の勝五郎が→ 228 00:20:31,564 --> 00:20:34,533 芝の浜で財布を拾ったことをきっかけに→ 229 00:20:34,533 --> 00:20:37,536 商人としての矜持を取り戻す→ 230 00:20:37,536 --> 00:20:40,539 心温まる人情噺〉 231 00:20:42,541 --> 00:20:46,545 「後を頼むぜ」 「はい。 気をつけてね。 行っといで」。 232 00:20:46,545 --> 00:20:48,547 さあ 亭主を見送るってえと→ 233 00:20:48,547 --> 00:20:52,551 しばらくぶりで商売へ出てくれた 商いへ出かけてくれたってんで→ 234 00:20:52,551 --> 00:20:55,588 おかみさんのほうは ほっと ひと息つきまして→ 235 00:20:55,588 --> 00:20:57,556 まぶたのほうが 重た~くなってまいりまして→ 236 00:20:57,556 --> 00:21:00,559 とろとろ とろとろっとしてきたところへ…。 237 00:21:00,559 --> 00:21:03,596 (扇子でたたく音) 「おい おっ母! 俺だよ!」。 238 00:21:03,596 --> 00:21:05,598 (扇子でたたく音) 「開けちくれ! おっ母!」。 239 00:21:05,598 --> 00:21:09,568 「はいはいはい…。 あっ ちょいと待っとくれ。 今ね…」。 240 00:21:09,568 --> 00:21:13,572 「はっ…! どうしたんだい? おまえさん」。 241 00:21:13,572 --> 00:21:16,575 「いいから! いいから おめえ あと閉めろよ! あと閉めろってんだよ!」。 242 00:21:16,575 --> 00:21:21,580 (全生)《うーん…》 243 00:21:21,580 --> 00:21:25,551 《勝五郎が芝の浜に行く場面をカットした》 244 00:21:25,551 --> 00:21:28,587 《いや 全然いいんだけど…》 245 00:21:28,587 --> 00:21:30,556 《大筋さえ合えば→ 246 00:21:30,556 --> 00:21:34,560 登場人物の設定からオチまで 変えたっていい》 247 00:21:34,560 --> 00:21:36,562 《それも創意工夫の一つ》 248 00:21:36,562 --> 00:21:39,565 《とはいえ→ 249 00:21:39,565 --> 00:21:44,570 勝五郎が河岸に向かう途中 訪れた 芝の浜の情景を語りで見せる…→ 250 00:21:44,570 --> 00:21:47,573 それが『芝浜』の醍醐味》 251 00:21:48,574 --> 00:21:52,611 大体 『芝浜』唯一の 芝の浜の場面をカットって→ 252 00:21:52,611 --> 00:21:56,549 こんなの あんパンの あん抜きだ。 (阿良川一剣)《イライラしてんねえ…》 253 00:21:56,549 --> 00:21:59,585 《兄さんの嫌いそうなアプローチだもんな》 254 00:21:59,585 --> 00:22:01,587 《いや でも 気持ちは分かる》 255 00:22:01,587 --> 00:22:06,559 《見せ場を一つ捨てたことには違いない》 256 00:22:06,559 --> 00:22:10,563 《それでも あいつは 風景を語るよりも…》 257 00:22:10,563 --> 00:22:13,566 (志ん太)「起こしたけれども おまえさん うるさいなんてなこと言ってさ→ 258 00:22:13,566 --> 00:22:16,569 どこへも出かけちゃいないじゃないかさ! 芝の浜…?」。 259 00:22:16,569 --> 00:22:19,605 (一剣)《人を語る道を選んだ》 260 00:22:19,605 --> 00:22:23,576 (志ん太)「俺は 今朝 おめえに…」 「起こしたよ! で 芝 行ってないの」。 261 00:22:23,576 --> 00:22:25,578 《志ん太の強みは演技力》 262 00:22:25,578 --> 00:22:30,549 《だが あえて見せ場を捨て 自分の得意な人物描写を押し出すことで→ 263 00:22:30,549 --> 00:22:33,552 観客を話に引き込んだ》 264 00:22:33,552 --> 00:22:36,522 《この舞台で よくぞ!》 265 00:22:37,556 --> 00:22:41,560 《しかし この女房の造形は…》 266 00:22:41,560 --> 00:22:43,529 おっ母だ! えっ? 267 00:22:44,563 --> 00:22:48,567 おっ父… おっ母をやってる! 268 00:22:48,567 --> 00:22:51,537 《朱音 真幸 見てるか?》 269 00:22:53,539 --> 00:22:59,545 (志ん太の声)うちの師匠に弟子入りして 落語に打ち込み続けて13年。 270 00:22:59,545 --> 00:23:02,548 恐ろしいほど芽が出なくて…。 271 00:23:04,550 --> 00:23:06,518 (志ん太の声)ろくな稼ぎもねえ。 272 00:23:10,556 --> 00:23:14,560 (志ん太の声)それでも 真幸は 俺に落語をやめろと言わなかった。 273 00:23:15,561 --> 00:23:17,563 (志ん太)《朱音は…》 274 00:23:17,563 --> 00:23:21,533 (朱音の声) 「そんけいする人 五年三組 桜咲あかね」 275 00:23:21,533 --> 00:23:26,538 「わたしが この世で一番そんけいする人は おっ父です」 276 00:23:26,538 --> 00:23:30,542 「おっ父は落語家で 話が とっても面白くて→ 277 00:23:30,542 --> 00:23:33,545 毎日 わたしを笑わせてくれます」 278 00:23:33,545 --> 00:23:36,548 「おっ父の夢は 真打になることです」 279 00:23:36,548 --> 00:23:40,552 「わたしの夢も おっ父が真打になることです」 280 00:23:40,552 --> 00:23:43,555 「わたしは おっ父が大好きです」 281 00:23:43,555 --> 00:23:48,560 (志ん太)《こんな俺を 朱音は好きでいてくれた》 282 00:23:50,562 --> 00:23:53,565 (志ん太)《その思いに応えたい》 283 00:23:53,565 --> 00:23:56,535 《父として 落語家として→ 284 00:23:56,535 --> 00:24:04,576 俺が今まで培ってきた技も人生も 何もかも つぎ込んで→ 285 00:24:04,576 --> 00:24:09,548 俺は 今日 真打になる!》 286 00:24:12,584 --> 00:24:16,555 「よそう。 また夢になるといけねえ」。 287 00:24:16,555 --> 00:24:24,630 (拍手と歓声) 288 00:24:24,630 --> 00:24:26,565 《すげえ!》 289 00:24:26,565 --> 00:24:30,569 《おっ父 かっこいい…!》 290 00:24:31,570 --> 00:24:33,572 (雷鳴) 291 00:24:33,572 --> 00:24:36,575 (司会)大変長らくお待たせいたしました! 292 00:24:36,575 --> 00:24:39,578 集計結果が出そろったようです。 293 00:24:39,578 --> 00:24:42,581 大丈夫だよね? 大丈夫… 大丈夫じゃん! うるさい! 294 00:24:42,581 --> 00:24:45,551 ええー 結果発表は 阿良川…→ 295 00:24:45,551 --> 00:24:48,554 あっ い… 一生師匠 お願いします。 296 00:24:49,555 --> 00:24:53,559 (マイクをたたく音) (一生)おっ 入ってるな。 297 00:24:53,559 --> 00:24:56,595 ええー 皆様 この度は→ 298 00:24:56,595 --> 00:24:59,598 阿良川流真打昇進試験に お立ち会いいただき→ 299 00:24:59,598 --> 00:25:02,568 誠にありがとうございました。 300 00:25:02,568 --> 00:25:07,573 私もね 久しぶりに若手のネタを見たんですけどね→ 301 00:25:07,573 --> 00:25:10,576 いやあ 驚きました。 302 00:25:10,576 --> 00:25:16,582 まあ だらだら しゃべっても仕方ないんでね 結果を申し上げますと→ 303 00:25:16,582 --> 00:25:19,551 ええー 今日の出場者→ 304 00:25:19,551 --> 00:25:21,653 全員 破門です。 305 00:25:21,653 --> 00:25:24,556 ⚟(雷鳴) 306 00:25:24,556 --> 00:25:27,559 (司会)い… いやあ 師匠 冗談が…。 307 00:25:27,559 --> 00:25:31,597 (一生)一門の面汚しどもが みっともねえ芸をお見せしちまって→ 308 00:25:31,597 --> 00:25:34,566 すいやせんでした。 309 00:25:34,566 --> 00:25:36,635 (志ぐま)ああっ…! 310 00:25:36,635 --> 00:25:40,539 (観客のざわめき) ⚟(雷鳴) 311 00:25:40,539 --> 00:25:43,542 じゃあ まあ そういうことで。 以上。 312 00:25:43,542 --> 00:25:46,545 ああっ! ちょっ… 師匠!? 313 00:25:46,545 --> 00:25:52,551 ねえ どうしたの? 「はもん」って何? ねえ おっ母! おっ母ってば! 314 00:25:52,551 --> 00:25:56,622 ねえ おっ母! (真幸)《徹…》 315 00:25:56,622 --> 00:25:58,624 ⚟(雷鳴) 316 00:26:01,560 --> 00:26:04,563 (志ぐま)ちょっと どういうことですか!? 破門って。 317 00:26:04,563 --> 00:26:07,533 大体 志ん太は 俺の弟子だ! 318 00:26:07,533 --> 00:26:13,539 〈後に この日の受験者全員が 正式に破門となる〉 319 00:26:13,539 --> 00:26:15,541 人の弟子を勝手に…! 320 00:26:15,541 --> 00:26:18,544 (一生)出来の悪い弟子を持ったな。 (志ぐま)がっ…! 321 00:26:19,545 --> 00:26:22,548 〈破門の理由については 明かされていない〉 322 00:26:23,549 --> 00:26:27,553 あんなもん 『芝浜』とは言わねえよ。 323 00:26:27,553 --> 00:26:31,557 (雷鳴) 324 00:26:31,557 --> 00:26:35,561 (門下生)えっ これ 本当なんですか!? (門下生)志ん太…。 325 00:26:35,561 --> 00:26:38,564 兄さん! どういうことですか!? 326 00:26:38,564 --> 00:26:42,568 (門下生)ギャグですよね? ねえ? ギャグですよね? 兄さん! 327 00:26:46,572 --> 00:26:51,543 〈あの日 落語家 阿良川志ん太は死んだ〉 328 00:27:05,557 --> 00:27:11,563 〈あの日 落語家 阿良川志ん太は死んだ〉 329 00:27:13,532 --> 00:27:15,534 〈でも…〉 330 00:27:18,570 --> 00:27:20,572 〈終わりじゃない!〉 331 00:27:20,572 --> 00:27:31,550 ♬~ 332 00:27:31,550 --> 00:27:37,589 〈むしろ あの時から始まったんだ〉 333 00:27:37,589 --> 00:27:43,595 ♬~ 334 00:27:43,595 --> 00:27:45,564 〈私の物語が〉 335 00:27:46,598 --> 00:27:59,578 ♬~