1 00:00:34,868 --> 00:00:45,879 ♬~ 2 00:02:20,907 --> 00:02:23,910 (阿良川ぐりこ)《一体 何をやってんだ…》 3 00:02:23,910 --> 00:02:27,914 《これから爆売れする落語家 阿良川ぐりこともあろう者が→ 4 00:02:27,914 --> 00:02:30,917 てめえの師匠をつけるなんて…》 5 00:02:31,918 --> 00:02:35,922 《すみません 師匠 それもこれも 昨日の現場で…》 6 00:02:36,857 --> 00:02:38,859 (ぐりこ)「はなから しまいまで 釣りの手ほどきしてくれる?」。 7 00:02:38,859 --> 00:02:44,865 「んなこた どうでもいいよ。 ほんのコツだけ教えてくれや」。 8 00:02:44,865 --> 00:02:46,867 (拍手) 9 00:02:46,867 --> 00:02:48,869 (利一の声)ぐりこ ちょっといい? 10 00:02:48,869 --> 00:02:50,871 おう 利一。 どうした? 11 00:02:50,871 --> 00:02:53,874 (利一)ぐりこって 志ぐま師匠の弟子だよね? 12 00:02:53,874 --> 00:02:58,879 おうよ! 阿良川志ぐま最後の弟子たあ 俺のことよ! 13 00:02:58,879 --> 00:03:01,882 ナッハッハッハッ…! (利一)言いにくいんだけどさ…。 14 00:03:01,882 --> 00:03:06,887 志ぐま師匠が 若いギャルと付き合ってるってガチ? 15 00:03:06,887 --> 00:03:08,889 はあっ!? んだ それ!? 16 00:03:08,889 --> 00:03:12,893 (利一)並んで歩いてるのを見たって人が 何人もいてさ…。 17 00:03:12,893 --> 00:03:14,895 (ぐりこ)ああ…。 18 00:03:14,895 --> 00:03:16,897 ガチ…。 ええっ…! 19 00:03:16,897 --> 00:03:19,900 なわけねえだろ! ハハハハハハ…! 20 00:03:21,902 --> 00:03:25,906 (ぐりこ)《あっ 入った! カラオケ…?》 21 00:03:28,909 --> 00:03:30,911 《あそこか…!》 22 00:03:33,847 --> 00:03:35,849 (ぐりこ)《はっ…!》 23 00:03:37,851 --> 00:03:40,854 《いや これ…》 24 00:03:41,855 --> 00:03:43,857 《ガチじゃん…!》 25 00:03:46,860 --> 00:03:49,863 (ぐりこ)《えっ… 何してんの? この2人》 26 00:03:49,863 --> 00:03:51,865 《落語!? そういう戯れ?》 27 00:03:51,865 --> 00:03:53,867 《でも 師匠の顔は…→ 28 00:03:53,867 --> 00:03:56,870 真剣そのもの!》 29 00:03:56,870 --> 00:03:58,872 (店員)あのー お客様…。 30 00:03:58,872 --> 00:04:00,874 えっ? (店員)どうかなさいましたか? 31 00:04:00,874 --> 00:04:04,878 (ぐりこ)えっ! え~ あの… いや 違くて その…。 32 00:04:04,878 --> 00:04:07,881 (ひねる音) (ぐりこ)ごっ…! ああ~…! 33 00:04:07,881 --> 00:04:11,885 (店員)お客様~! お客様~! お客様~…! 34 00:04:11,885 --> 00:04:13,887 (ぐりこ)ああっ…! うっ!? 35 00:04:15,889 --> 00:04:17,891 (阿良川志ぐま)馬鹿野郎!! 36 00:04:17,891 --> 00:04:21,895 つまらんうわさに乗せられて 俺をつけてただと!? 37 00:04:21,895 --> 00:04:25,899 (志ぐま)トンチキなことしやがって… 恥を知れ!! 38 00:04:26,900 --> 00:04:30,904 (桜咲朱音)そもそも コソコソするから→ 39 00:04:30,904 --> 00:04:32,839 駄目なんじゃん? 40 00:04:32,839 --> 00:04:35,842 ああっ!? てめえ 誰にナマこいてんだ この野郎! 41 00:04:35,842 --> 00:04:38,845 師匠 なんなんですか このガキは!? 42 00:04:38,845 --> 00:04:42,849 (志ぐま)こいつは桜咲朱音。 志ん太の娘だ。 えっ!? 43 00:04:43,850 --> 00:04:45,852 よろしく! 44 00:04:45,852 --> 00:04:47,854 (ぐりこ)えっ? 45 00:04:47,854 --> 00:04:49,856 《こ… こいつが…→ 46 00:04:49,856 --> 00:04:53,860 6年前に破門になった 志ん太兄さんの…》 47 00:04:53,860 --> 00:04:57,864 そんなことより…→ 48 00:04:57,864 --> 00:05:00,867 どうでした? 私の落語は。 49 00:05:01,868 --> 00:05:05,872 あの日から 稽古をつけていただくようになって6年…。 50 00:05:05,872 --> 00:05:09,876 まだ 人前で落語をやる許可は もらえていませんが→ 51 00:05:09,876 --> 00:05:13,880 私も今年で17 高校3年生になりました。 52 00:05:13,880 --> 00:05:17,884 (志ぐま)…思いは変わらずか。 はい。 53 00:05:18,885 --> 00:05:22,889 阿良川一門の真打になる。 54 00:05:22,889 --> 00:05:27,894 真打になって おっ父の芸は すごかったってことを→ 55 00:05:27,894 --> 00:05:31,898 みんなに… あの男に…→ 56 00:05:31,898 --> 00:05:33,900 私が証明する! 57 00:05:34,834 --> 00:05:36,837 弟子入りを認めてください! 58 00:05:37,837 --> 00:05:40,841 時がたつのは早えなあ…。 59 00:05:47,848 --> 00:05:54,854 弟子にしろって… 朱音 おまえ まだ小学生だろ? 60 00:05:54,854 --> 00:05:58,858 なぜ 落語家になりたい? 61 00:05:58,858 --> 00:06:01,861 一体 何があったんだ? 62 00:06:05,865 --> 00:06:10,870 おっ父は コンクリートを売る会社に入った。 63 00:06:11,872 --> 00:06:14,875 (朱音の声)いつまでも 落ち込んだままじゃいられないって→ 64 00:06:14,875 --> 00:06:20,880 働き出して… 毎日 忙しそうで…。 65 00:06:20,880 --> 00:06:22,882 でも そのおかげで→ 66 00:06:22,882 --> 00:06:29,889 落語してた時より お金がもらえて お外でご飯を食べられるようになって…。 67 00:06:31,892 --> 00:06:35,829 (志ぐま)…なら よかったじゃないか。 68 00:06:35,829 --> 00:06:40,834 みんなからも言われる よかったねって。 69 00:06:40,834 --> 00:06:44,838 おっ父が… 落語をやめて…→ 70 00:06:44,838 --> 00:06:47,841 やめさせられて よかったね… って。 71 00:06:47,841 --> 00:06:51,845 (朱音の声) 朱音は おっ父の落語が好きだった! 72 00:06:51,845 --> 00:06:57,851 一人でしゃべってるだけなのに いろんな人や景色が見えて 魔法みたいで…。 73 00:06:57,851 --> 00:07:02,856 だから もう おっ父の落語が見れなくなるのが 悲しくて…。 74 00:07:02,856 --> 00:07:06,860 でも みんなは おっ父が落語をやめた時→ 75 00:07:06,860 --> 00:07:10,864 真面目になったって みんな ニコニコ笑ってて…。 76 00:07:10,864 --> 00:07:12,866 (朱音がはなをすする音) 77 00:07:12,866 --> 00:07:15,869 悲しんでるのは朱音だけで→ 78 00:07:15,869 --> 00:07:18,872 よかったねって言われるたびに…→ 79 00:07:18,872 --> 00:07:24,878 おっ父の落語が駄目だって言われてるみたいで 嫌で… 悔しくて…。 80 00:07:24,878 --> 00:07:26,880 だから 決めたの!! 81 00:07:26,880 --> 00:07:31,885 朱音が真打になって おっ父の落語は すごいって証明するって! 82 00:07:31,885 --> 00:07:38,825 ♬~ 83 00:07:38,825 --> 00:07:42,829 (志ぐま)《大きくなった… ホントに…》 84 00:07:44,831 --> 00:07:49,836 《高卒で入門… 今どき珍しいが 全くない話ではない…》 85 00:07:49,836 --> 00:07:54,841 《問題があるとするならば… 俺のほうだ》 86 00:07:54,841 --> 00:07:57,844 《俺に弟子をとる資格なんてない…》 87 00:07:57,844 --> 00:07:59,846 《だが しかし…》 88 00:07:59,846 --> 00:08:01,848 (携帯電話の振動音) 89 00:08:01,848 --> 00:08:03,850 (志ぐま)すまんな 朱音。 90 00:08:03,850 --> 00:08:07,854 …もしもし。 ああ ご無沙汰してます! 91 00:08:07,854 --> 00:08:11,858 ええ。 ああ それは大変だ! 92 00:08:11,858 --> 00:08:14,861 こちらで探してみましょう。 では のちほど…。 93 00:08:15,862 --> 00:08:18,865 (ぐりこ)師匠 何かあったんですか? 94 00:08:18,865 --> 00:08:23,870 (志ぐま)らくご喫茶の吉乃さんだ。 今日 寄席に出られる演者を探してるらしい。 95 00:08:23,870 --> 00:08:25,872 急ですね。 96 00:08:25,872 --> 00:08:28,875 (志ぐま) 独演会の演者の入りが遅れるらしくてな…。 97 00:08:28,875 --> 00:08:30,877 そうですか…。 98 00:08:30,877 --> 00:08:33,813 分かりました! じゃあ 俺が…。 (志ぐま)ああ。 99 00:08:33,813 --> 00:08:35,815 朱音 おめえ 行ってこい。 100 00:08:35,815 --> 00:08:37,817 えっ いいの!? (ぐりこ)ええっ!? 101 00:08:37,817 --> 00:08:42,822 朱音… 弟子入りするってことは まさしく プロの落語家になるってことだ。 102 00:08:42,822 --> 00:08:45,825 一度 プロの世界を見てこい! 103 00:08:46,826 --> 00:08:51,831 分かりました。 爆笑とって鼻明かしてやりますから→ 104 00:08:51,831 --> 00:08:53,833 楽しみに待っててくださいよ! 105 00:08:55,835 --> 00:08:58,838 (吉乃紗季)あら ぐりちゃん! 今日は よろしくね。 106 00:08:58,838 --> 00:09:03,843 いやあ そのー… 今日 上がるのは俺じゃなくって…。 107 00:09:04,844 --> 00:09:06,846 こいつです。 108 00:09:06,846 --> 00:09:09,849 (紗季)《えっ? この子が…!?》 109 00:09:09,849 --> 00:09:13,853 あっ! 吉乃さんでいらっしゃいますか! (紗季)えっ… あっ はい。 110 00:09:13,853 --> 00:09:17,857 このたび 阿良川志ぐまより 代役の任を仰せつかりました! 111 00:09:17,857 --> 00:09:19,859 桜咲朱音と申します! 112 00:09:19,859 --> 00:09:24,864 またとない この機会 誠心誠意 努めてまいります! 113 00:09:24,864 --> 00:09:26,866 よろしくお願いします! 114 00:09:26,866 --> 00:09:28,868 《何? この子…》 115 00:09:29,869 --> 00:09:31,871 《いい子じゃないのよ~!》 116 00:09:31,871 --> 00:09:33,873 こちらこそ よろしくね。 117 00:09:35,809 --> 00:09:37,811 (女性客)あかねって誰? 118 00:09:37,811 --> 00:09:41,815 (男性客)名前だけって珍しいな。 どこの一門の人なんだろう? 119 00:09:43,817 --> 00:09:47,821 えっ 弟子じゃない? しかも 初高座!? 120 00:09:47,821 --> 00:09:50,824 最悪 俺がケツ拭くんで 上げてやってください! 121 00:09:50,824 --> 00:09:53,827 (紗季)《ぐりちゃんは ああ言ってたけど…》 122 00:09:55,829 --> 00:09:58,832 出囃子が鳴ったら出番だかんな。 123 00:09:59,833 --> 00:10:01,835 …って聞いてる? 124 00:10:01,835 --> 00:10:04,838 えっ!? えっ あっ… いや 確かに! 125 00:10:04,838 --> 00:10:08,842 師匠から借りた この着物 サイズぴったりで…。 126 00:10:08,842 --> 00:10:10,844 (ぐりこ)おまえ 緊張してんだろ。 127 00:10:10,844 --> 00:10:12,846 えっ? はあっ!? してないし! 128 00:10:12,846 --> 00:10:15,849 (ぐりこ)まあ 聞け。 いいか? 129 00:10:15,849 --> 00:10:18,852 利き手に「人」って字を書いて飲むんだ。 130 00:10:18,852 --> 00:10:21,855 「利き手」は「聴き手」。 131 00:10:21,855 --> 00:10:25,859 落語家は 聴き手の人をのむんだよ。 132 00:10:25,859 --> 00:10:29,863 師匠も大舞台の時は たまにやってんぞ。 師匠が!? 133 00:10:31,865 --> 00:10:33,867 (ぐりこ)やっぱ 緊張してんじゃねえか。 134 00:10:33,867 --> 00:10:35,869 うるさい! 135 00:10:35,869 --> 00:10:37,871 …まあ 気負わずやれよ。 136 00:10:39,873 --> 00:10:42,876 🔊♬~(出囃子) あんた… もしかして いい人? 137 00:10:42,876 --> 00:10:46,880 (ぐりこ)もしかしてって なんだよ! ごめん ウソ ウソ。 138 00:10:47,881 --> 00:10:49,883 …ありがとね。 139 00:10:52,886 --> 00:10:55,889 ちょっと楽んなった。 140 00:10:55,889 --> 00:10:58,892 (深呼吸) 141 00:11:01,895 --> 00:11:04,898 んじゃ…→ 142 00:11:04,898 --> 00:11:06,900 いってくる! 143 00:11:06,900 --> 00:11:12,906 🔊♬~(出囃子) 144 00:11:17,911 --> 00:11:21,915 (深呼吸) 145 00:11:23,917 --> 00:11:26,920 《うわっ 多っ…》 146 00:11:26,920 --> 00:11:30,924 《いや 知ってたけど… 分かってたけど》 147 00:11:34,861 --> 00:11:40,867 《ここから見ると… 圧やばっ…》 148 00:11:42,869 --> 00:11:45,872 《それに なんというか すごく…→ 149 00:11:45,872 --> 00:11:47,874 一人だ…》 150 00:11:48,875 --> 00:11:53,880 《でも… 私は 自分の意志で ここに来た》 151 00:11:56,883 --> 00:12:00,887 《折れるな。 逃げるな》 152 00:12:00,887 --> 00:12:02,889 《出し切れ…》 153 00:12:02,889 --> 00:12:05,892 《積み重ねてきたものを…》 154 00:12:07,894 --> 00:12:11,898 《私の中にあるものを…→ 155 00:12:11,898 --> 00:12:14,901 今日 ここで… 全部!》 156 00:12:15,902 --> 00:12:19,906 「えー 好き嫌いなどというものは どなたにもあるものですが…」。 157 00:12:19,906 --> 00:12:21,908 (ぐりこ)《よかった 話し始めた…》 158 00:12:21,908 --> 00:12:25,912 《声も出てるし 所作も堂々としてる》 159 00:12:25,912 --> 00:12:28,915 「とうっ! はっ はっ はあ…!」。 160 00:12:28,915 --> 00:12:30,917 「ああ 驚いた! いや 驚いた!」。 161 00:12:30,917 --> 00:12:32,852 (ぐりこ)〈落語は会話劇〉 162 00:12:32,852 --> 00:12:37,857 〈それぞれの登場人物を一人で演じて そのやりとりで笑いをとる〉 163 00:12:37,857 --> 00:12:39,859 「かまっ首ひゅいと持ち上げてね→ 164 00:12:39,859 --> 00:12:41,861 口をぱっくり 舌をペロペロペローって→ 165 00:12:41,861 --> 00:12:44,864 蛇がいるんだよ 蛇が! つあ~! 驚いた」。 166 00:12:44,864 --> 00:12:46,866 「へえ ホントかよ おい」。 167 00:12:46,866 --> 00:12:48,868 「ええ どうだい? そっちはよ なんかあるのかい?」。 168 00:12:48,868 --> 00:12:50,870 (紗季)《『まんじゅうこわい』》 169 00:12:50,870 --> 00:12:55,875 《町内の若い衆が 怖いものを言い合う中で起こる騒動を描いた→ 170 00:12:55,875 --> 00:12:57,877 おなじみの古典落語》 171 00:12:57,877 --> 00:12:59,879 《だけど…》 172 00:12:59,879 --> 00:13:02,882 「怖いもんあった…」 「ほ~れ 見ろ」。 173 00:13:02,882 --> 00:13:05,885 (紗季)《やだやだ… 何 これ…》 174 00:13:05,885 --> 00:13:10,890 《弟子入り前の… しかも 今日 初高座の子がやれるレベルじゃない》 175 00:13:13,893 --> 00:13:15,895 「まんじゅう…」。 176 00:13:15,895 --> 00:13:18,898 「ああん? まんじゅう? なんだい? ええ?」。 177 00:13:18,898 --> 00:13:22,902 「まんじゅう? なんだい おい。 まんじゅうって虫 いるかい?」。 178 00:13:22,902 --> 00:13:25,905 (観客の笑い声) 《でも なんだろう? この懐かしさは》 179 00:13:25,905 --> 00:13:27,907 「あの野郎 まんじゅうが怖いんだってよ」。 180 00:13:27,907 --> 00:13:31,911 「おっ! まんじゅう見て死ぬんだから “アン殺”ってんじゃない?」。 181 00:13:31,911 --> 00:13:33,913 《はっ… 志んちゃん?》 182 00:13:35,848 --> 00:13:37,850 「だっ はっ はっ はっ!」。 183 00:13:37,850 --> 00:13:39,852 「ほっ ほっ ほっ ほお~!」。 184 00:13:39,852 --> 00:13:41,854 「まんじゅう~!?」。 (観客の笑い声) 185 00:13:41,854 --> 00:13:44,857 「おい! 俺が まんじゅう怖え怖え って言うから→ 186 00:13:44,857 --> 00:13:48,861 みんなで まんじゅう買ってきて 俺のこと殺そうとしてんだ!」。 187 00:13:48,861 --> 00:13:51,864 「まんじゅう 怖~い…」。 188 00:13:51,864 --> 00:13:55,868 「まんじゅう~ 怖え… 怖えよお…」。 189 00:13:55,868 --> 00:13:59,872 「まんじゅう… ああ 怖え… まんじゅう 怖えよお…」。 190 00:13:59,872 --> 00:14:02,875 「怖え… まんじゅう…」。 191 00:14:02,875 --> 00:14:05,878 (つばをのみ込む音) 「ええ~ なんだい? これ。 おい…」。 192 00:14:05,878 --> 00:14:07,880 「つぶしあんじゃねえか」。 193 00:14:10,883 --> 00:14:13,886 「うん… うんうん」。 194 00:14:15,888 --> 00:14:17,890 「なんだい? これ おい」。 195 00:14:17,890 --> 00:14:20,893 「そばまんじゅうじゃねえか。 これよお~ ええ?」。 196 00:14:20,893 --> 00:14:23,896 「おい 怖えよ! おめえ まったく… ふざけ…」。 197 00:14:23,896 --> 00:14:27,900 (ぐりこ)《おいおい さっきの緊張は どこに行ったんだよ》 198 00:14:27,900 --> 00:14:30,903 《初高座でも物おじしない舞台度胸…》 199 00:14:30,903 --> 00:14:33,840 《クソッ… 何が まんじゅう怖いだ》 200 00:14:33,840 --> 00:14:36,843 《おめえが一番怖えよ》 201 00:14:38,845 --> 00:14:41,848 (阿良川魁生)はあ~ 最悪! 202 00:14:41,848 --> 00:14:45,852 せっかく念願かなって らくご喫茶で独演会ができるってのに…。 203 00:14:45,852 --> 00:14:51,858 事故渋滞のせいで 3時間半も高速バスに拘束されちゃうなんて→ 204 00:14:51,858 --> 00:14:53,860 笑えないよ…。 205 00:14:53,860 --> 00:14:55,862 すっかり お客さんを待たせちゃったなあ…。 206 00:14:55,862 --> 00:14:57,864 気が重いなあ…。 207 00:14:58,865 --> 00:15:00,867 ⚞(観客の笑い声) (魁生)ん? 208 00:15:00,867 --> 00:15:02,869 (魁生)ん…? 209 00:15:04,871 --> 00:15:06,873 「う~ん!」。 210 00:15:09,876 --> 00:15:11,878 「まんじゅう 怖~い」。 (観客の笑い声) 211 00:15:11,878 --> 00:15:13,880 (紗季)《ひどいわ 志ぐま師匠》 212 00:15:13,880 --> 00:15:16,883 《なんの情報も教えないで こんな子よこして→ 213 00:15:16,883 --> 00:15:19,886 感想 教えろだなんて…》 214 00:15:19,886 --> 00:15:24,891 《こんなの… すごかったとしか 言いようがないじゃないの》 215 00:15:24,891 --> 00:15:26,893 「えい! この野郎!」→ 216 00:15:26,893 --> 00:15:29,896 「おめえ まんじゅう怖え怖えって言いながら 食ったりしまったりしや→ 217 00:15:29,896 --> 00:15:31,898 おめえ 一体 ホントは何が怖えんだい?」。 218 00:15:31,898 --> 00:15:35,835 「いや~ あとは渋~いお茶が怖い」。 219 00:15:35,835 --> 00:15:45,845 (拍手と歓声) 220 00:15:45,845 --> 00:15:50,850 ハアハア ハアハア…。 221 00:15:50,850 --> 00:15:56,856 ハアハア ハアハア…。 222 00:15:56,856 --> 00:15:58,858 お疲れさん。 223 00:15:58,858 --> 00:16:00,860 あっ… ありがとう。 224 00:16:00,860 --> 00:16:03,863 どうだったよ? 初高座の感想は。 225 00:16:03,863 --> 00:16:05,865 ぷはあっ! 226 00:16:05,865 --> 00:16:07,867 意外と疲れた。 227 00:16:07,867 --> 00:16:10,870 (ぐりこ)20分以上 しゃべりっぱなしだからな。 228 00:16:10,870 --> 00:16:13,873 でも こういう疲れは大歓迎! 229 00:16:13,873 --> 00:16:15,875 フフッ…。 230 00:16:16,876 --> 00:16:18,878 ぶっはあ~! 231 00:16:18,878 --> 00:16:20,880 もう一度やらせてくんないかな! 232 00:16:20,880 --> 00:16:23,883 調子乗んな 馬鹿! おまえ…。 233 00:16:23,883 --> 00:16:27,887 (魁生)すご~~~い! えっ? 234 00:16:27,887 --> 00:16:29,889 (ぐりこ)ああっ…。 235 00:16:29,889 --> 00:16:32,825 すごい すごい! すごーい! 236 00:16:32,825 --> 00:16:35,828 もしかして 10代!? 年下だよね? いや びっくりだよ! 237 00:16:35,828 --> 00:16:38,831 長屋のわちゃわちゃ感が すっごくよく出てた! 238 00:16:38,831 --> 00:16:42,835 しゃべりのトーンやテンポが 志ぐま師匠っぽいけど ちょっと違う! 239 00:16:42,835 --> 00:16:44,837 ねえ 普段は どんな所に出てるの!? 240 00:16:44,837 --> 00:16:47,840 あっ! おまえ…。 (魁生)ねえ! ねえ ねえ ねえ ねえ! 241 00:16:47,840 --> 00:16:50,843 (頭突きする音) 気持ちは めっちゃ分かるけど…→ 242 00:16:50,843 --> 00:16:52,845 そいつ 次 出番…。 はあ? そこ!? 243 00:16:52,845 --> 00:16:55,848 関係ない! イッテテ…。 244 00:16:55,848 --> 00:16:57,850 ごめん ごめん。 245 00:16:57,850 --> 00:17:00,853 いい落語家に会うと 自分でも抑えられなくて つい…。 246 00:17:00,853 --> 00:17:02,855 でも ホント いい『まんじゅうこわい』だったよ! 247 00:17:02,855 --> 00:17:04,857 特に まんじゅうを頬張るしぐさ! 248 00:17:04,857 --> 00:17:07,860 栗まんじゅうとくずまんじゅうで 少し食べ方 変えてるとことか→ 249 00:17:07,860 --> 00:17:09,862 それそれ~! みたいな。 250 00:17:09,862 --> 00:17:11,864 🔊♬~(出囃子) 251 00:17:11,864 --> 00:17:13,866 (魁生)よし 出番だ。 252 00:17:13,866 --> 00:17:19,872 待てよ… 僕のために高座に上がって つないでくれたわけだし…。 253 00:17:19,872 --> 00:17:23,876 うん! 特別に タダで僕の独演会を見せてあげよう。 254 00:17:23,876 --> 00:17:25,878 はあ? 255 00:17:26,879 --> 00:17:28,881 袖で勉強していくといい。 256 00:17:28,881 --> 00:17:31,884 ♬~(出囃子) 257 00:17:31,884 --> 00:17:33,819 (拍手) 258 00:17:33,819 --> 00:17:36,822 偉そうに! 誰が見るもんか! 259 00:17:36,822 --> 00:17:39,825 (ぐりこ)いいじゃねえか。 勉強させてもらおうや。 260 00:17:39,825 --> 00:17:44,830 入門して2年 19歳で二ツ目になった うわさの落語家さまだ。 261 00:17:44,830 --> 00:17:46,832 おまえも見て損はねえよ。 262 00:17:46,832 --> 00:17:49,835 むかつくけど あいつの落語には…。 263 00:17:49,835 --> 00:17:54,840 🔊♬~(出囃子) 264 00:17:54,840 --> 00:17:56,842 (ぐりこ)色がある。 265 00:17:56,842 --> 00:18:00,846 ええ~ 本日は 大変長らくお待たせいたしました。 266 00:18:00,846 --> 00:18:03,849 でも 皆さん ラッキーでしたね。 267 00:18:03,849 --> 00:18:07,853 前方の女の子 かわいいのに腕もある! 268 00:18:07,853 --> 00:18:11,857 誰に落語を習ってるんですかね? いやあ 素晴らしい! 269 00:18:11,857 --> 00:18:14,860 落語に限らず 習い事は いろいろあるでしょうが→ 270 00:18:14,860 --> 00:18:18,864 それを修めるのは 並大抵のことじゃございません。 271 00:18:18,864 --> 00:18:20,866 「ちわ~! ご隠居さん こんちわ!」。 272 00:18:20,866 --> 00:18:23,869 「あいあい。 おお~ はっつぁん どうかしたのかい?」。 273 00:18:23,869 --> 00:18:26,872 「ああ よかったよかった 居つくれて」。 274 00:18:26,872 --> 00:18:30,876 「あっしはね モテてえんですよ モテたい! どうしたらいいんすかね?」。 275 00:18:30,876 --> 00:18:33,879 「私に聞かれても困るけどなあ」。 276 00:18:35,815 --> 00:18:40,820 (ぐりこ)〈顔は悪い お金もない。 そんな男が女にモテようと→ 277 00:18:40,820 --> 00:18:45,825 稽古屋に歌を習いに行った顛末を語る 音曲噺〉 278 00:18:46,826 --> 00:18:49,829 「あっ じゃあ 小唄なんか いかがですか?」。 279 00:18:49,829 --> 00:18:51,831 「あっ 小唄 よがんす よがんす」。 280 00:18:51,831 --> 00:18:53,833 「ああ そうですか じゃあ…→ 281 00:18:53,833 --> 00:18:56,836 小唄でもってね 『びんのほつれ』ってのがありますから」。 282 00:18:56,836 --> 00:19:01,841 「はい? ああ 鬢のほつれ。 ああ あの高速バスで よく起きてますね」。 283 00:19:01,841 --> 00:19:04,844 「それは便の遅れですね」。 (観客の笑い声) 284 00:19:04,844 --> 00:19:06,846 《はっ…!》 285 00:19:06,846 --> 00:19:10,850 《さっきまでと全然違う。 すごく色っぽい》 286 00:19:10,850 --> 00:19:13,853 《女の人を こんなに艶っぽく演じられるなんて…》 287 00:19:13,853 --> 00:19:16,856 (魁生)「じゃあ あたしが いっぺん歌ってご覧にいれますからね→ 288 00:19:16,856 --> 00:19:19,859 それ聴いて 覚えてくださいまし」。 289 00:19:19,859 --> 00:19:21,861 「じゃ お願いします」。 290 00:19:21,861 --> 00:19:26,866 ♬~(三味線) 291 00:19:26,866 --> 00:19:32,805 ♬~「もしも あたしが」 292 00:19:32,805 --> 00:19:35,808 《いや 歌うまっ!》 293 00:19:35,808 --> 00:19:42,815 ♬~「鶯ならば」 294 00:19:42,815 --> 00:19:46,819 ♬~「主のお庭の」 295 00:19:46,819 --> 00:19:48,821 《こんなこともできるの!?》 296 00:19:48,821 --> 00:19:50,823 「…と こういう調子ですね」。 297 00:19:50,823 --> 00:19:52,825 「ああ これ あっしが あっ やるんですか?」。 298 00:19:52,825 --> 00:19:55,828 「じゃあ お願いしますね」。 299 00:19:55,828 --> 00:19:57,830 ♬~「ちんとん おい」 ♬~(三味線) 300 00:19:57,830 --> 00:20:04,837 ♬~「もーしーもー あーたーしーがー うーぐーいーすーなーらーばー」 301 00:20:04,837 --> 00:20:07,840 (観客の笑い声) (魁生)「ハアハアハア…」。 302 00:20:07,840 --> 00:20:09,842 「息継ぎをしてください」。 303 00:20:09,842 --> 00:20:11,844 《うっ…!》 304 00:20:11,844 --> 00:20:13,846 できすぎて むかつくだろ。 305 00:20:13,846 --> 00:20:16,849 あいつの芸の本質は 色気だ。 306 00:20:16,849 --> 00:20:21,854 色気のある人物を演じられるからこそ まぬけな人物の言動が際立って→ 307 00:20:21,854 --> 00:20:23,856 波打つような笑いにつながる。 308 00:20:23,856 --> 00:20:26,859 何者なの? あいつ。 309 00:20:26,859 --> 00:20:29,862 (ぐりこ)阿良川魁生。 310 00:20:29,862 --> 00:20:32,865 6年前の真打昇進試験以降→ 311 00:20:32,865 --> 00:20:37,870 阿良川一生が二ツ目に上げた 唯一の男だ。 312 00:20:45,878 --> 00:20:48,881 《どの感想も あいつのことばっか…》 313 00:20:48,881 --> 00:20:51,884 《われながら 結構いい感じにできたと思ってた…》 314 00:20:51,884 --> 00:20:53,886 《でも…》 315 00:20:53,886 --> 00:20:57,890 (魁生)へえ~ なかなか うれしいこと書いてくれてるね。 316 00:20:57,890 --> 00:21:01,894 んなっ! (魁生)驚きすぎでしょ。 傷つくなあ。 317 00:21:01,894 --> 00:21:04,897 でも 随分 熱心に読んでたね。 318 00:21:04,897 --> 00:21:06,899 もしかして 俺のこと気になっちゃった? 319 00:21:06,899 --> 00:21:09,902 違えすよ。 (魁生)あっ それはそうと→ 320 00:21:09,902 --> 00:21:12,905 朱音ちゃんって 志ぐま師匠のとこに入門してるの? 321 00:21:12,905 --> 00:21:14,907 いや まだっすけど…。 322 00:21:14,907 --> 00:21:16,909 (魁生)そうなんだ じゃあ…→ 323 00:21:16,909 --> 00:21:20,913 朱音ちゃんも うちの師匠の弟子になんない? 324 00:21:20,913 --> 00:21:23,916 なんない。 (魁生)即答~。 悲しいなあ。 325 00:21:23,916 --> 00:21:26,919 結構 本気で言ったのにさ。 326 00:21:26,919 --> 00:21:31,924 うちの師匠は 今の年功序列の落語界に革命を起こすために→ 327 00:21:31,924 --> 00:21:34,860 若い才能を集めてるんだ。 328 00:21:34,860 --> 00:21:37,863 芸の腕だけを評価してくれる。 329 00:21:37,863 --> 00:21:40,866 僕らにとって最高の環境だ。 330 00:21:40,866 --> 00:21:42,868 朱音ちゃんも こっちにおいでよ。 331 00:21:43,869 --> 00:21:46,872 そっか… じゃあ…→ 332 00:21:46,872 --> 00:21:49,875 ちょっくら 志ぐま師匠に弟子入りしてきます! 333 00:21:49,875 --> 00:21:51,877 (魁生)ん…? あざっした。 んじゃ! 334 00:21:51,877 --> 00:21:54,880 (魁生)えっ? ちょっと どういうこと!? 335 00:21:55,881 --> 00:21:59,885 だって 言ったじゃないすか。 「腕さえあれば評価する」って。 336 00:21:59,885 --> 00:22:01,887 (魁生)あっ…。 337 00:22:01,887 --> 00:22:04,890 あっ そうだ。 阿良川魁生… さん。 338 00:22:04,890 --> 00:22:06,892 今日は負けたけど→ 339 00:22:06,892 --> 00:22:08,894 すぐに追いついてやりますから! 340 00:22:08,894 --> 00:22:10,896 覚悟してくださいね! 341 00:22:11,897 --> 00:22:13,899 ふ~ん…。 342 00:22:13,899 --> 00:22:16,902 (紗季)朱音ちゃーん! ほらほら ほらほらほら! 343 00:22:16,902 --> 00:22:20,906 こ~んなに たくさん あなたへの感想 書かれてたわよ。 344 00:22:20,906 --> 00:22:22,908 まとめてコピーしてたら 遅くなっちゃった。 345 00:22:22,908 --> 00:22:26,912 あら? 朱音ちゃん? (ぐりこ)おい 帰るぞ。 346 00:22:26,912 --> 00:22:29,915 あ… あれ? (紗季)もう帰っちゃったのかしらね…。 347 00:22:29,915 --> 00:22:31,917 (ぐりこ)おいおい おいおいおい…! 348 00:22:34,853 --> 00:22:37,857 ハアハア ハアハア…。 349 00:22:37,857 --> 00:22:42,861 ハアハア ハアハア…。 350 00:22:42,861 --> 00:22:47,867 ♬~