1 00:00:01,751 --> 00:00:04,254 {\an8}(みくちゃん) 1週間 お疲れさま 2 00:00:04,337 --> 00:00:06,297 ホ~ント助かっちゃったわ 3 00:00:06,381 --> 00:00:08,633 (柊(ひいらぎ))あしたから寂しくなるねえ 4 00:00:08,717 --> 00:00:10,677 (朱音(あかね))みくちゃん 柊さん 5 00:00:11,094 --> 00:00:13,221 本っ当に お世話になりました! 6 00:00:13,304 --> 00:00:15,140 (みくちゃん) ウウン こちらこそよ 7 00:00:15,890 --> 00:00:18,351 はい これ 少ないけど お給料 8 00:00:18,435 --> 00:00:19,686 (朱音)あざます! 9 00:00:19,769 --> 00:00:22,147 (みくちゃん) 享(きょう)ちゃんには感謝だけど… 10 00:00:22,230 --> 00:00:23,898 高座 来週だっけ? 11 00:00:23,982 --> 00:00:25,108 (朱音)あっ はい! 12 00:00:25,191 --> 00:00:27,986 (柊)あれ? 中間テストも あるって言ってなかった? 13 00:00:28,069 --> 00:00:30,864 (みくちゃん) え~っ!? 大変ねえ 14 00:00:30,947 --> 00:00:32,198 (柊)大丈夫なの? 15 00:00:32,282 --> 00:00:33,783 (朱音)フフフフッ… 16 00:00:33,867 --> 00:00:36,786 (朱音)あっしを誰だと思いねえ… 17 00:00:36,870 --> 00:00:40,999 もちろん どっちもブァ~ッと やってやりやすよ! 18 00:00:41,499 --> 00:00:43,501 {\an8}♪~ 19 00:02:08,962 --> 00:02:10,964 {\an8}~♪ 20 00:02:11,840 --> 00:02:12,882 (打球音) 21 00:02:15,134 --> 00:02:16,177 {\an8}へえ~ 22 00:02:17,137 --> 00:02:20,515 {\an8}今日の会場って 本当に 老人ホームなんスね 23 00:02:20,598 --> 00:02:21,975 (ドアの開く音) 24 00:02:22,058 --> 00:02:24,894 (田井中(たいなか))ハァ… いやはや すみません 25 00:02:24,978 --> 00:02:26,896 落語家さんたちですよね? 26 00:02:26,980 --> 00:02:29,232 本日 担当する田井中です 27 00:02:29,315 --> 00:02:31,151 (享二(きょうじ))阿良川(あらかわ)享二です 28 00:02:31,234 --> 00:02:33,611 本日は よろしくお願いいたします 29 00:02:33,695 --> 00:02:36,447 朱音です よろしくお願いします 30 00:02:36,531 --> 00:02:38,658 (田井中)どうぞ こちらへ ハァ… すいませんね 31 00:02:38,741 --> 00:02:41,119 (享二)いや とんでもない いつも お世話になっております 32 00:02:41,911 --> 00:02:42,829 ンッ… 33 00:02:42,912 --> 00:02:44,455 (女性)ああ… ハハハハッ… 34 00:02:44,539 --> 00:02:46,416 (女性)あら かわいい 35 00:02:46,499 --> 00:02:47,834 (朱音)今日のお客さんって— 36 00:02:47,917 --> 00:02:49,919 ここに 住んでる人たちなんですよね? 37 00:02:50,003 --> 00:02:51,254 (享二)そうだ 38 00:02:51,337 --> 00:02:55,008 施設のレクリエーションとして 今日は依頼をいただいている 39 00:02:55,091 --> 00:02:56,009 (朱音)なるほど… 40 00:02:57,635 --> 00:02:59,179 -(享二)慣れろよ -(朱音)うん? 41 00:02:59,679 --> 00:03:03,725 座布団さえあれば どこでもできるのが 落語の利点だ 42 00:03:03,808 --> 00:03:05,643 慣れない環境で 不安かもしれないが… 43 00:03:05,727 --> 00:03:06,561 (朱音)不安? 44 00:03:06,644 --> 00:03:07,312 あっ… 45 00:03:07,395 --> 00:03:08,730 違うのか? 46 00:03:08,813 --> 00:03:11,524 (朱音)いや むしろ ラッキーだなって 47 00:03:11,608 --> 00:03:13,026 ラッキー? 48 00:03:13,526 --> 00:03:15,695 さっき 思ったんですよね 49 00:03:16,571 --> 00:03:17,739 (朱音)今日のお客さんって— 50 00:03:17,822 --> 00:03:20,408 ふだん こういう生活してるんだなって 51 00:03:21,075 --> 00:03:22,952 {\an8}まあ 私たちって お客さんのこと— 52 00:03:23,036 --> 00:03:25,580 {\an8}会場に来てるとこしか 見れないじゃないですか 53 00:03:26,456 --> 00:03:29,417 (朱音)だから 当たり前のことなんですけど— 54 00:03:29,500 --> 00:03:32,295 普通に生活してて 落語を見るために— 55 00:03:32,378 --> 00:03:35,924 時間を割いてくれてるんだなって いうのが分かって 56 00:03:36,007 --> 00:03:38,009 だから この会場で良かった 57 00:03:39,010 --> 00:03:41,512 はなから やる気満々でしたけど 58 00:03:41,596 --> 00:03:45,058 今は もっと 楽しんでもらいたいなって感じです 59 00:03:46,392 --> 00:03:47,518 そうか 60 00:03:48,770 --> 00:03:51,981 いい心がけだが 気負いすぎるなよ 61 00:03:52,065 --> 00:03:53,149 (朱音)あっ はい 62 00:03:53,566 --> 00:03:55,735 (享二) 施設長さんからの了承は得た 63 00:03:55,818 --> 00:03:57,612 前座は君に任せる 64 00:03:57,695 --> 00:04:01,074 持ち時間は15分 好きにやるといい 65 00:04:01,157 --> 00:04:04,077 どうすれば 相手の喜ぶ落語ができるのか 66 00:04:04,160 --> 00:04:07,121 その答え とくと見せてもらうぞ 67 00:04:10,041 --> 00:04:11,167 (朱音)そうですね 68 00:04:11,251 --> 00:04:13,211 皐月(さつき)落語祭りを開催します 69 00:04:13,294 --> 00:04:14,420 (朱音)ホントに… 70 00:04:15,171 --> 00:04:17,382 いろいろ 勉強させてもらいましたから… 71 00:04:17,465 --> 00:04:21,344 (出囃子) 72 00:04:21,427 --> 00:04:24,472 (朱音)お礼も兼ねて その問いに… 73 00:04:24,555 --> 00:04:27,892 (まばらな拍手) 74 00:04:30,103 --> 00:04:32,981 (朱音)バシッと答えてみせます! 75 00:04:33,064 --> 00:04:35,566 (まばらな拍手) 76 00:04:39,070 --> 00:04:41,531 (朱音)お客さんは 20人弱 77 00:04:41,614 --> 00:04:43,950 おじいちゃんと おばあちゃんばっかり 78 00:04:44,033 --> 00:04:46,327 当たり前か 老人ホームだし 79 00:04:46,786 --> 00:04:48,788 持ち時間は15分 80 00:04:48,871 --> 00:04:51,416 その中で どれだけ楽しんでもらえるか 81 00:04:51,916 --> 00:04:55,753 “人にウケたきゃ まずは相手を受け入れろ”ってね 82 00:04:56,546 --> 00:04:58,256 (朱音)…だよね みくちゃん 83 00:04:59,007 --> 00:05:00,133 まずは… 84 00:05:00,216 --> 00:05:01,634 私を知ってもらう! 85 00:05:01,718 --> 00:05:02,552 (息を吸う音) 86 00:05:02,635 --> 00:05:05,305 え~ どうも 朱音と申します 87 00:05:05,388 --> 00:05:08,391 私は まだ17歳の高校生でして 88 00:05:08,474 --> 00:05:09,309 (一同)へえ~ 89 00:05:09,392 --> 00:05:12,895 (女性)あら ヤダ うちの孫と同い年だよ 90 00:05:12,979 --> 00:05:13,688 (朱音)弟子になる… 91 00:05:14,147 --> 00:05:16,983 えっ? お孫さんと同い年ですか? 92 00:05:17,066 --> 00:05:19,819 あっ 失礼ですけど お母さん おいくつで? 93 00:05:19,902 --> 00:05:21,863 (女性)88になります 94 00:05:21,946 --> 00:05:26,200 あっ 88! お若いですねえ! 95 00:05:26,284 --> 00:05:29,037 どう見ても 87にしか見えない 96 00:05:29,120 --> 00:05:30,329 (観客)フフフフッ… 97 00:05:30,413 --> 00:05:34,625 え~ ほかにも 高校生のお孫さんが いらっしゃるって方? 98 00:05:35,501 --> 00:05:37,378 あっ こんなに! 99 00:05:37,462 --> 00:05:40,298 じゃ 今日は どうぞ 孫娘が来たと思って— 100 00:05:40,381 --> 00:05:41,424 楽しんでいただければ… 101 00:05:41,507 --> 00:05:42,633 (享二)なるほど 102 00:05:42,717 --> 00:05:46,304 探ってるな この会場の空気を 103 00:05:49,223 --> 00:05:50,433 “マクラ” 104 00:05:50,516 --> 00:05:53,603 噺(はなし)に入る前の世間話や軽いトーク 105 00:05:54,270 --> 00:05:59,525 落語家は この間に 客席を温めつつ その空気を探る 106 00:05:59,776 --> 00:06:02,737 (朱音)なんとなく この会場の感じは分かった 107 00:06:02,820 --> 00:06:04,739 あとは… あの人! 108 00:06:05,490 --> 00:06:07,742 今のところ あの人だけ つまんなそう 109 00:06:07,825 --> 00:06:09,369 だったら… 110 00:06:09,452 --> 00:06:10,661 (朱音)え~ 今日は— 111 00:06:10,745 --> 00:06:14,415 「子ほめ」という噺を やらしていただこうと思うんですが 112 00:06:14,499 --> 00:06:17,794 どうぞ 最後まで おつきあいのほどをお願いします 113 00:06:19,128 --> 00:06:20,213 (男性)ハッ… 114 00:06:21,923 --> 00:06:23,091 (朱音)フフッ… 115 00:06:23,174 --> 00:06:24,300 アア… 116 00:06:24,384 --> 00:06:26,052 (朱音)ラストアイコンタクト? 117 00:06:26,135 --> 00:06:27,178 そう! 118 00:06:27,804 --> 00:06:30,932 “目は口ほどに ものを言う”ってやつよ 119 00:06:31,015 --> 00:06:33,559 CAさんがやってる接客術 120 00:06:33,643 --> 00:06:36,687 去り際に 相手の目を見て ニコッとしたら— 121 00:06:36,771 --> 00:06:38,564 好印象につながるの 122 00:06:38,648 --> 00:06:40,608 (朱音)そんな簡単にいくかな? 123 00:06:40,691 --> 00:06:42,151 (みくちゃん)いくいく! 124 00:06:42,235 --> 00:06:44,695 考えてみなさいよ ほかの誰かじゃない— 125 00:06:45,238 --> 00:06:50,243 自分だけに笑いかけてくれるのって 特別感あって うれしくなぁい? 126 00:06:50,326 --> 00:06:51,577 (朱音)落語の修業って… 127 00:06:51,661 --> 00:06:53,246 {\an8}(トメ) あっ サブローさん! 128 00:06:53,329 --> 00:06:56,833 {\an8}しっかり~! り~! り~! り~… 129 00:06:56,916 --> 00:06:58,209 (男性)ンン~ッ! 130 00:06:58,292 --> 00:06:59,460 フゥ… 131 00:07:01,045 --> 00:07:02,505 (享二)見違えたな 132 00:07:02,588 --> 00:07:05,967 落語に必要なのは お客さんとの対話だ 133 00:07:06,050 --> 00:07:07,552 言葉を交わさずとも— 134 00:07:07,635 --> 00:07:11,430 目線や表情 雰囲気から 得られる情報は多い 135 00:07:11,514 --> 00:07:15,143 気持ちをくみ 応えることで 自分の噺に引き込む 136 00:07:15,852 --> 00:07:19,063 それを可能にするのは お客さんへの意識があってこそ 137 00:07:19,147 --> 00:07:22,191 付け焼き刃は剥げやすい …なんてなことを申しまして 138 00:07:22,275 --> 00:07:26,279 人のマネというのは なかなか うまくいかないようでございますが 139 00:07:26,362 --> 00:07:29,031 (享二)“海”で よく学んできたようだな 140 00:07:29,115 --> 00:07:30,241 これで… 141 00:07:30,324 --> 00:07:31,868 (朱音)準備ができた! 142 00:07:31,951 --> 00:07:33,494 ここからが本番! 143 00:07:33,578 --> 00:07:35,872 ちわ~! 隠居は いるかい? 144 00:07:35,955 --> 00:07:37,957 何だい? 八(は)っつぁんかい? 145 00:07:38,040 --> 00:07:40,501 あ~ まあいいから こっちへ お上がり 146 00:07:40,585 --> 00:07:42,545 ヘヘッ… ええ どうも どうも 147 00:07:42,628 --> 00:07:44,422 今日は どうしたんだい? 148 00:07:44,505 --> 00:07:47,383 いやね 1杯 ごちになろうと思って 149 00:07:48,009 --> 00:07:49,051 タダの酒 150 00:07:49,468 --> 00:07:50,386 何だい? そりゃ 151 00:07:50,470 --> 00:07:54,515 いやいや 隠すことねえですよ さっき 表で聞いたんだ 152 00:07:54,599 --> 00:07:58,436 なんでも 隠居さん所に タダの酒があるって話 153 00:07:58,519 --> 00:08:01,439 こいつは ありがてえやと思って 来たんですよ 154 00:08:01,522 --> 00:08:04,358 ええ? 1杯飲ませろ このしみったれ 155 00:08:04,442 --> 00:08:06,277 -(観客)フフフフッ… -(朱音)いやいやいや… 156 00:08:06,360 --> 00:08:08,738 お前(めえ)さん そそっかしいね 157 00:08:08,821 --> 00:08:12,116 世の中に タダの酒なんて あるわけないだろう 158 00:08:12,200 --> 00:08:14,827 うちにあるのは 灘(なだ)の酒だよ 159 00:08:14,911 --> 00:08:16,913 -(朱音)タダじゃない 灘だ -(観客)ハハハハッ… 160 00:08:16,996 --> 00:08:18,414 (朱音)灘とタダ? 161 00:08:18,497 --> 00:08:20,249 (享二)同じ噺で変わるものだな 162 00:08:20,333 --> 00:08:22,376 (朱音)いいじゃないかい せっかく来たんスから 163 00:08:25,004 --> 00:08:26,047 {\an8}(享二)「子ほめ」 164 00:08:27,006 --> 00:08:31,636 タダ酒をたかりたい八五郎(はちごろう)が 隠居から人の褒め方を教わるが— 165 00:08:31,719 --> 00:08:36,390 話をロクに聞いていないせいで 失敗するサマを語る前座噺 166 00:08:37,183 --> 00:08:38,768 (朱音)はっ… なるほど 167 00:08:38,851 --> 00:08:42,730 45のヤツが来れば “45にしちゃ 大層 お若い” 168 00:08:42,813 --> 00:08:45,316 “どう見ても 100そこそこだ”って 169 00:08:45,399 --> 00:08:47,443 100じゃない 厄だ 170 00:08:47,527 --> 00:08:49,237 -(観客)ハハハハッ… -(朱音)何だ? その厄ってのは 171 00:08:49,320 --> 00:08:51,572 お前さん 何も知らないんだな 172 00:08:51,656 --> 00:08:53,866 男の大厄 42だ 173 00:08:53,950 --> 00:08:56,702 45のところを42と言われてごらん 174 00:08:57,703 --> 00:08:59,580 (享二)ゆったりしたテンポ 175 00:08:59,664 --> 00:09:01,999 今日のお客さんには ちょうどいいみたいだな 176 00:09:02,792 --> 00:09:05,378 お客さんに合わせて 伝え方を変えるのも— 177 00:09:05,461 --> 00:09:07,338 落語家ならでは 178 00:09:07,421 --> 00:09:09,340 前回の経験を糧にしたか 179 00:09:10,132 --> 00:09:12,301 今日は 安心して見ていられそうだな 180 00:09:12,385 --> 00:09:13,427 (朱音)来ればいいですよ 181 00:09:13,511 --> 00:09:16,389 50のヤツが来たら どうすんスか? 182 00:09:16,472 --> 00:09:20,351 まあ そのときは 45~46とでも言うかな 183 00:09:20,434 --> 00:09:22,853 はぁ~! 60のヤツが来たら? 184 00:09:22,937 --> 00:09:24,313 まあ 55~56だな 185 00:09:24,397 --> 00:09:25,690 -(田井中)フフッ… -(朱音)あ~ そうッスか 186 00:09:25,773 --> 00:09:26,983 70が来たら? 187 00:09:27,066 --> 00:09:28,192 65~66 188 00:09:28,276 --> 00:09:29,235 80は? 189 00:09:29,318 --> 00:09:30,736 -(観客)ハハハハッ! -(朱音)75~76 190 00:09:30,820 --> 00:09:31,737 90は? 191 00:09:31,821 --> 00:09:33,823 -(観客)ハハハハッ! -(朱音)85~86 192 00:09:33,906 --> 00:09:34,699 100は? 193 00:09:34,782 --> 00:09:35,491 (享二)ハッ… 194 00:09:36,409 --> 00:09:38,953 (享二) 噺のテンポが上がっている? 195 00:09:39,036 --> 00:09:41,956 車がギアを上げ 徐々に加速していくように— 196 00:09:42,039 --> 00:09:44,458 噺のテンポを徐々に引き上げたのか 197 00:09:44,542 --> 00:09:45,960 (朱音)そんときは 95~96とでも言うかな 198 00:09:46,043 --> 00:09:47,169 (観客)アハハハッ! 199 00:09:47,253 --> 00:09:50,464 (享二)お客さんも テンポが 上がったことに気づいていない 200 00:09:50,548 --> 00:09:52,008 まさか 君は… 201 00:09:52,091 --> 00:09:55,469 自分のやりたいテンポで話しても 楽しんでもらえるように… 202 00:09:55,553 --> 00:09:57,763 お客さんの耳を慣れさせたのか! 203 00:10:00,433 --> 00:10:03,978 (朱音)え~っ!? マヨネーズも自分で作ってるの? 204 00:10:04,061 --> 00:10:05,688 こだわってるんだねえ 205 00:10:05,771 --> 00:10:07,481 (みくちゃん)もちろん! 206 00:10:07,565 --> 00:10:10,109 お客さんが喜ぶのは大前提! 207 00:10:10,192 --> 00:10:14,113 その上で 自分が誇れる料理を提供しないとね 208 00:10:14,697 --> 00:10:16,073 (享二)驚いたな 209 00:10:17,074 --> 00:10:19,327 (志(し)ぐま)気働きか… 210 00:10:19,410 --> 00:10:22,371 (志ぐま)まあ 朱音なら大丈夫だろう 211 00:10:23,039 --> 00:10:26,459 (享二)お言葉ですが 本人は悩んでいるようでしたが 212 00:10:26,542 --> 00:10:27,710 (志ぐま)朱音はな— 213 00:10:28,252 --> 00:10:32,631 人を思い 考え 学ぶことができる子だ 214 00:10:33,257 --> 00:10:37,720 最近は よその弟子に感化されて 焦ってるようだが— 215 00:10:39,555 --> 00:10:40,514 心配ない 216 00:10:40,598 --> 00:10:41,432 (観客)アハハハッ! 217 00:10:41,515 --> 00:10:45,019 (志ぐま)その目は ちゃんと お客さまに届く 218 00:10:45,853 --> 00:10:47,188 (朱音)良かった 219 00:10:47,271 --> 00:10:50,232 私の噺で お客さんが笑ってくれてる 220 00:10:50,316 --> 00:10:52,360 すっごい うれしい! 221 00:10:52,443 --> 00:10:53,986 それに 「子ほめ」は— 222 00:10:54,070 --> 00:10:59,116 人の話をちゃんと聞いていないのに 分かった気になって 失敗する噺 223 00:10:59,492 --> 00:11:03,329 ここ最近の私と 重なる所が多いからかな 224 00:11:03,412 --> 00:11:06,165 噺が すごく近くに思える 225 00:11:06,832 --> 00:11:10,211 そういえば 昔 師匠から… 226 00:11:10,294 --> 00:11:12,254 (風鈴の音) 227 00:11:12,338 --> 00:11:13,172 (食べる音) 228 00:11:13,255 --> 00:11:15,257 (セミの鳴き声) 229 00:11:15,341 --> 00:11:16,467 (志ぐま)いいか? 朱音 230 00:11:16,550 --> 00:11:21,430 落語ってのは 当時の町人たちが作った演芸だ 231 00:11:21,514 --> 00:11:27,311 それもあって 出てくるのは 大工や魚屋 家を貸してる大家さん 232 00:11:27,395 --> 00:11:30,439 俺たちと同じ“普通の人”だ 233 00:11:31,315 --> 00:11:32,525 だから お前にも— 234 00:11:32,608 --> 00:11:36,278 いつか 噺に出てくる人たちの 気持ちが分かるようになる 235 00:11:37,321 --> 00:11:40,616 (朱音)昔の人の気持ちなんて 分かるかなぁ? 236 00:11:40,700 --> 00:11:42,243 (志ぐま)分かるさ 237 00:11:43,035 --> 00:11:45,996 (志ぐま) ものの考え方や生活が変わっても 238 00:11:46,080 --> 00:11:50,126 人間らしさってのは いつの時代も変わらねえもんさ 239 00:11:50,876 --> 00:11:54,547 だから 朱音 いろんな経験をしろ 240 00:11:54,630 --> 00:11:57,466 いくらでも悩め たくさん傷つけ 241 00:11:58,217 --> 00:12:02,304 それが いつか お前の糧になる日が必ず来る 242 00:12:02,388 --> 00:12:05,683 (風鈴の音) 243 00:12:05,766 --> 00:12:08,352 (朱音)あのころは よく意味が分からなかった 244 00:12:09,645 --> 00:12:11,105 でも 今なら分かる 245 00:12:12,189 --> 00:12:16,902 あのときの経験が 今 この瞬間につながってる! 246 00:12:16,986 --> 00:12:19,947 きっとムダなことなんて何もなくて 247 00:12:20,030 --> 00:12:23,033 どんなことも 全部 落語に生きるんだ! 248 00:12:25,619 --> 00:12:26,829 いくつって? 249 00:12:26,912 --> 00:12:29,665 生まれたばっかりだから 数えで1つだよ 250 00:12:29,749 --> 00:12:32,960 1つ!? よっ! 1つにしちゃ 大層 お若い! 251 00:12:33,043 --> 00:12:34,044 バカだねえ 252 00:12:34,128 --> 00:12:37,006 {\an8}1つで若けりゃ 一体 いくつだい? 253 00:12:37,089 --> 00:12:39,717 {\an8}どう見ても 半分でございます 254 00:12:39,800 --> 00:12:41,719 (観客)おお~っ! ハハハッ! (拍手) 255 00:12:41,802 --> 00:12:46,974 (笑い声) (拍手) 256 00:12:47,933 --> 00:12:49,101 (朱音)すごい… 257 00:12:49,185 --> 00:12:51,520 (拍手) 258 00:12:51,604 --> 00:12:53,105 (朱音)落語って… 259 00:12:53,981 --> 00:12:55,316 面白い! 260 00:12:55,399 --> 00:12:57,485 (拍手) 261 00:12:57,568 --> 00:12:58,611 (打球音) 262 00:13:02,531 --> 00:13:03,908 フゥ… 263 00:13:03,991 --> 00:13:05,659 (享二)見違えたな 264 00:13:05,743 --> 00:13:07,328 心底 驚かされたぞ 265 00:13:07,870 --> 00:13:10,039 その調子で精進することだな 266 00:13:10,122 --> 00:13:12,082 (朱音)ありがとうございました! 267 00:13:13,209 --> 00:13:14,627 (享二)何に対する礼だ? 268 00:13:14,710 --> 00:13:16,504 (朱音)何って もう 全部です 269 00:13:16,587 --> 00:13:17,421 (出囃子) 270 00:13:17,505 --> 00:13:19,632 (朱音)自分が狭いとこしか 見てなかったんだって— 271 00:13:19,715 --> 00:13:21,550 よく分かりました 272 00:13:21,634 --> 00:13:22,468 おかげで… 273 00:13:23,427 --> 00:13:26,680 また少し 落語が好きになれそうです! 274 00:13:27,723 --> 00:13:28,641 (享二)そうか… 275 00:13:29,183 --> 00:13:31,936 よく分からんが 力になれたのなら良かったよ 276 00:13:32,019 --> 00:13:32,812 (朱音)ああっ… 277 00:13:33,270 --> 00:13:36,357 君の答え とくと見せてもらった 278 00:13:36,440 --> 00:13:38,984 次は 俺が魅せる番だ 279 00:13:39,652 --> 00:13:43,113 兄弟子の威厳 示させていただく 280 00:13:47,284 --> 00:13:49,245 (朱音)前回の二人会(ににんかい)のときは— 281 00:13:49,328 --> 00:13:52,706 楽屋での雑用に追われて しっかり見れなかった 282 00:13:52,790 --> 00:13:54,250 (拍手) 283 00:13:54,333 --> 00:13:55,960 (男性)あっ… (拍手) 284 00:13:56,043 --> 00:13:58,754 (拍手) 285 00:13:58,837 --> 00:14:02,883 (朱音)これが 初めて見る享二さんの高座 286 00:14:04,426 --> 00:14:06,846 え~ 阿良川享二と申します 287 00:14:07,596 --> 00:14:09,807 (朱音)すごいきれいな正座 288 00:14:10,307 --> 00:14:13,602 姿勢がいいってだけで こんなに見れちゃうんだ 289 00:14:13,686 --> 00:14:15,312 (享二) …なんてなことを申しまして 290 00:14:15,396 --> 00:14:17,856 江戸(えど)っ子は金に執着がなかった 291 00:14:17,940 --> 00:14:18,774 金を余らせるなんて… 292 00:14:18,857 --> 00:14:20,943 (享二)彼女は 俺の問いに答えてみせた 293 00:14:21,777 --> 00:14:23,404 では 俺は… 294 00:14:23,946 --> 00:14:25,281 この高座で… 295 00:14:25,364 --> 00:14:26,740 (享二)あしたの風が吹く 296 00:14:26,824 --> 00:14:28,409 (享二)彼女に何を見せる? 297 00:14:28,492 --> 00:14:29,410 (享二)…といった具合で 298 00:14:29,493 --> 00:14:32,955 随分 ノーテンキな連中が いたようで 299 00:14:33,038 --> 00:14:34,748 …たく しょうがねえな 300 00:14:34,832 --> 00:14:37,167 マヌケな物(もん) 拾っちまったよ 301 00:14:37,251 --> 00:14:38,919 財布 拾ったよ 302 00:14:39,003 --> 00:14:42,006 中 見るってえと 銭が3両 書きつけに 印形(いんぎょう) 303 00:14:42,089 --> 00:14:45,467 書き付けには“神田竪大工町(かんだたてだいくちょう) 大工 吉五郎(きちごろう)”としてやんだ 304 00:14:45,551 --> 00:14:46,677 (朱音)この噺… 305 00:14:47,511 --> 00:14:49,138 {\an8}「三方一両損(さんぼういちりょうぞん)」 306 00:14:50,222 --> 00:14:52,182 財布を拾った金太郎(きんたろう)は— 307 00:14:52,266 --> 00:14:55,394 財布に入っていた 書きつけと印形を頼りに— 308 00:14:55,477 --> 00:14:58,063 落とし主の吉五郎に届ける 309 00:14:58,147 --> 00:15:02,151 でも 江戸っ子は 宵越しの銭を持たない性分 310 00:15:02,234 --> 00:15:06,530 落とした3両を前に 江戸っ子2人の意地がぶつかり合う 311 00:15:06,614 --> 00:15:08,741 (享二)あっ ここだ ここだ 312 00:15:08,824 --> 00:15:11,952 あっ なるほどね 丸に吉の字としたらぁな 313 00:15:12,953 --> 00:15:16,040 でもなぁ その野郎が いりゃいいんだけども— 314 00:15:16,123 --> 00:15:19,460 いねえってえと こんな物持って マヌケなんだよねえ 315 00:15:19,543 --> 00:15:21,795 おっ 何だい この障子 張り替えたばっかりか 316 00:15:21,879 --> 00:15:23,672 ええ ちょいと確かめてみるか 317 00:15:23,756 --> 00:15:24,590 よいしょっと! 318 00:15:24,673 --> 00:15:27,927 -(観客)ハハハハッ… -(享二)え~ どういう塩梅(あんばい)に… 319 00:15:28,010 --> 00:15:29,303 あ~ いた いた いた 320 00:15:29,386 --> 00:15:31,013 あっ なるほど あれで… 321 00:15:31,096 --> 00:15:34,433 (朱音)言葉 しぐさの ひとつひとつが丁寧 322 00:15:34,516 --> 00:15:37,061 きっちり演じる真面目な落語 323 00:15:38,520 --> 00:15:40,439 やい! てめえも江戸っ子なら— 324 00:15:40,522 --> 00:15:42,566 もっと さっぱりした物で 1杯やれ! 325 00:15:42,650 --> 00:15:44,526 (観客)わあ… 326 00:15:44,610 --> 00:15:45,903 (享二)変な野郎が来やがったよ 327 00:15:45,986 --> 00:15:46,820 (朱音)フフッ… 328 00:15:46,904 --> 00:15:49,740 (享二)お前 あれだろう? 大工でもって吉五郎ってんだろう? 329 00:15:49,823 --> 00:15:50,908 そうだよ 330 00:15:50,991 --> 00:15:52,826 俺は 大工でもって 吉五郎ってんだい 331 00:15:52,910 --> 00:15:53,744 何だ? てめえは 332 00:15:54,119 --> 00:15:56,622 俺はな 左官でもって 金太郎ってんだい 333 00:15:56,705 --> 00:15:59,041 金太郎だ? てめえ 金太郎にしちゃ赤くねえな 334 00:15:59,124 --> 00:16:03,504 (朱音)そっか 享二さんは ただの真面目じゃない 335 00:16:03,587 --> 00:16:06,048 真面目すぎるんだ! 336 00:16:06,131 --> 00:16:08,801 (享二)こうして わざわざ お前の所に届けに来てやったんだ 337 00:16:08,884 --> 00:16:10,719 ほら 受け取れ 338 00:16:10,803 --> 00:16:11,637 チッ… 339 00:16:11,720 --> 00:16:15,641 余計なことしてくれんじゃねえか バカ野郎 この野郎! 340 00:16:15,724 --> 00:16:18,560 俺はな そこに 財布 置いてきたんじゃないんだよ 341 00:16:18,644 --> 00:16:20,270 落としてきたんだよ! 342 00:16:20,354 --> 00:16:22,272 柳原(やなぎわら)で落としたか どこで落としたか— 343 00:16:22,356 --> 00:16:23,399 知ったこっちゃねえ! 344 00:16:23,482 --> 00:16:25,109 知ったこっちゃねえって… 345 00:16:25,192 --> 00:16:28,070 いや お前の名前が 書いてあんだよ なあ? 346 00:16:28,153 --> 00:16:29,279 うるせえ この野郎! 347 00:16:29,363 --> 00:16:31,907 中の銭は要らねえ てめえにやるから持ってけ! 348 00:16:31,990 --> 00:16:34,368 銭を届けて はり倒される? 349 00:16:34,451 --> 00:16:36,036 こんなバカな話はねえやい! 350 00:16:36,328 --> 00:16:37,371 やれるもんなら やってみやがれ! 351 00:16:37,454 --> 00:16:39,623 (朱音) 落語のやり取り自体 おかしいのに 352 00:16:39,707 --> 00:16:42,251 あんな真剣にやられたら 笑っちゃうよ! 353 00:16:42,334 --> 00:16:43,711 (享二)待って 待って 待って! 354 00:16:43,794 --> 00:16:45,754 また隣で始まった! 355 00:16:45,838 --> 00:16:49,133 ちょいと 大家さん! 大家さーん! 356 00:16:49,216 --> 00:16:50,426 (志ぐま)享二 357 00:16:51,051 --> 00:16:53,971 お前は人を笑わせようとするな 358 00:16:54,054 --> 00:16:57,683 小粋なシャレで 人さまを笑わせられるほど— 359 00:16:57,766 --> 00:17:00,144 お前は器用な男じゃねえだろう 360 00:17:00,227 --> 00:17:01,854 (志ぐま)真面目にやれ 361 00:17:02,771 --> 00:17:06,275 (享二)お言葉ですが 真面目なだけでは笑いには… 362 00:17:06,358 --> 00:17:08,986 (志ぐま)確かに 真面目なだけじゃ つまらねえ 363 00:17:09,069 --> 00:17:09,903 でもな— 364 00:17:09,987 --> 00:17:12,364 真面目すぎれば 面白くなる 365 00:17:12,448 --> 00:17:13,449 ハッ… 366 00:17:13,532 --> 00:17:15,576 突き抜ければ 個性 367 00:17:15,659 --> 00:17:16,952 愚直にやれ 368 00:17:17,036 --> 00:17:19,663 それが お前の武器になる 369 00:17:19,747 --> 00:17:22,207 こうして 吉五郎 金太郎 両名が— 370 00:17:22,291 --> 00:17:25,544 争う火種となった 3両の行く末は— 371 00:17:25,627 --> 00:17:30,716 南町(みなみまち)奉行 大岡越前守(おおおか えちぜんのかみ)さまの お裁きに委ねることになりました 372 00:17:31,133 --> 00:17:35,345 吉五郎 そのほうが落とした財布を 届けに来た金太郎を— 373 00:17:35,429 --> 00:17:39,558 打ち打擲(ちょうちゃく)に及んだとあるが これに相違ないか? 374 00:17:40,017 --> 00:17:41,393 おっしゃるとおりですが— 375 00:17:41,477 --> 00:17:44,229 “落っことした銭を受け取る 了見なんざありゃしねえから—” 376 00:17:44,313 --> 00:17:45,939 “てめえに くれてやる”って こう言ったんですよ 377 00:17:46,023 --> 00:17:47,232 さようか 378 00:17:47,858 --> 00:17:51,904 金太郎 そのほうは 何ゆえ 3両をもらいおかなかった? 379 00:17:52,404 --> 00:17:53,989 冗談言っちゃいけねえや! 380 00:17:54,073 --> 00:17:57,451 拾った物は届けろと 人の道を説くのが お上の仕事だ! 381 00:17:57,534 --> 00:17:59,703 そんな 3両いただくような しみったれじゃねえや! 382 00:17:59,787 --> 00:18:01,955 うむ… さようであるか 383 00:18:02,039 --> 00:18:05,334 しからば 両人とも 金子(きんす)は受け取らぬと— 384 00:18:05,417 --> 00:18:06,835 こう申すのじゃな 385 00:18:07,836 --> 00:18:11,298 (享二)落語家の師弟とは 不思議な関係だ 386 00:18:12,132 --> 00:18:16,470 弟子を取ったからといって 師匠が何かを得ることはない 387 00:18:16,929 --> 00:18:21,725 むしろ 礼儀作法のしつけに 落語の稽古 388 00:18:21,809 --> 00:18:25,479 ほかにも たくさん… 与えるばかりだ 389 00:18:26,313 --> 00:18:27,439 それでも… 390 00:18:29,650 --> 00:18:30,776 (享二)うむ… 391 00:18:30,859 --> 00:18:35,072 双方の申し開き この越前 しかと心得た 392 00:18:35,155 --> 00:18:40,202 しからば 争いの種となる この3両 越前が預かりおこう 393 00:18:40,285 --> 00:18:45,124 改めて 吉五郎 金太郎 両名に 褒美を遣わす 394 00:18:46,291 --> 00:18:49,670 江戸っ子の潔き心を 見せてもらった礼だ 395 00:18:49,753 --> 00:18:53,757 (享二)それでも 師匠は 我が子の面倒を見るように— 396 00:18:53,841 --> 00:18:57,219 損得を超えて 俺たちに気をかけてくれる 397 00:18:57,761 --> 00:18:59,847 感謝してもしきれない 398 00:19:01,849 --> 00:19:04,893 (志ぐま)よし じゃ 続きから やってみろ 399 00:19:04,977 --> 00:19:06,019 (享二)はい 400 00:19:06,728 --> 00:19:11,650 吉五郎が 金太郎の届けし金子を 受け取りおかば 3両 401 00:19:11,733 --> 00:19:16,029 また 金太郎も その折 もらいおかば 3両 402 00:19:16,113 --> 00:19:19,491 この預かりし3両に 越前が1両 足し 403 00:19:19,575 --> 00:19:22,411 え~ 両名に 2両ずつ遣わしたによって… 404 00:19:22,494 --> 00:19:26,999 (享二)俺も 兄弟子として 惜しみなく与えよう 405 00:19:27,082 --> 00:19:29,501 師匠にしていただいたように 406 00:19:29,585 --> 00:19:33,046 そして 与えるに足る人であり続ける 407 00:19:33,839 --> 00:19:36,758 言葉に力を宿すは 人となり 408 00:19:37,593 --> 00:19:38,760 人として— 409 00:19:39,553 --> 00:19:40,762 落語家として— 410 00:19:41,221 --> 00:19:43,432 前を歩み 見せる 411 00:19:43,891 --> 00:19:47,561 君が追いかけたいと思える 兄弟子の背中を! 412 00:19:49,021 --> 00:19:50,564 こたびの裁き… 413 00:19:52,399 --> 00:19:55,402 三方一両損と申す! 414 00:19:56,695 --> 00:19:58,071 すごい… 415 00:19:58,155 --> 00:20:03,785 (拍手と歓声) 416 00:20:03,869 --> 00:20:06,997 (朱音)これが享二さんの落語! 417 00:20:07,080 --> 00:20:11,126 (拍手) 418 00:20:11,710 --> 00:20:12,836 (みくちゃん)へえ~! 419 00:20:12,920 --> 00:20:16,590 大成功だったのね 良かったじゃな~い! 420 00:20:16,673 --> 00:20:19,968 (朱音)そうなの! 享二さんの落語も すごくってさ! 421 00:20:20,052 --> 00:20:21,136 (みくちゃん)ふ~ん! 422 00:20:21,220 --> 00:20:23,555 (朱音) あっ ここで学んだ接客術も— 423 00:20:23,639 --> 00:20:24,473 マクラに取り入れて やって… 424 00:20:24,556 --> 00:20:27,309 (享二)そうだ 俺は気にしないが— 425 00:20:27,392 --> 00:20:30,729 前座がマクラを振ることを よしとしない人もいるから— 426 00:20:30,812 --> 00:20:31,939 気をつけろよ 427 00:20:32,022 --> 00:20:33,065 はい! 428 00:20:35,025 --> 00:20:38,237 それと 俺のことは 享二兄(あに)さんと呼びなさい 429 00:20:38,320 --> 00:20:39,363 ハッ… 430 00:20:39,905 --> 00:20:42,157 兄さん …ですか 431 00:20:42,240 --> 00:20:43,241 (享二)そうだ 432 00:20:43,909 --> 00:20:48,121 (享二)弟子入りとは 師匠と親子の関係を結ぶようなもの 433 00:20:48,205 --> 00:20:51,541 師匠が親 弟子は皆 親の子だ 434 00:20:51,625 --> 00:20:54,169 兄弟を“さん”付けで 呼ばないだろう? 435 00:20:54,252 --> 00:20:59,174 落語家は近しい先輩を 兄さん 姉(ねえ)さんと呼ぶ 436 00:20:59,925 --> 00:21:01,677 分かったか? 朱音 437 00:21:01,760 --> 00:21:02,886 (朱音)あっ… 438 00:21:03,053 --> 00:21:05,138 君が今 目を向けるべきは 内ではなく… 439 00:21:05,222 --> 00:21:08,058 君の答え とくと見せてもらった 440 00:21:09,393 --> 00:21:11,353 (朱音)初めて名前を… 441 00:21:11,895 --> 00:21:12,729 はい! 442 00:21:14,272 --> 00:21:17,234 ご教授ありがとうございます 享二兄さん! 443 00:21:17,317 --> 00:21:19,653 うむ… よろしい 444 00:21:19,736 --> 00:21:20,946 (食べる音) 445 00:21:21,029 --> 00:21:23,407 (みくちゃん) いいわね 青春って感じで 446 00:21:23,490 --> 00:21:26,576 (柊)あっ そういえば あっちのほうは大丈夫そう? 447 00:21:26,660 --> 00:21:27,869 中間テスト 448 00:21:27,953 --> 00:21:29,496 あっ ヤバッ! 449 00:21:29,579 --> 00:21:30,706 (朱音)ヤバッ! 450 00:21:30,789 --> 00:21:32,249 (享二)“あっ ヤバッ”? 451 00:21:32,749 --> 00:21:34,918 何がヤバイんだ? 452 00:21:35,002 --> 00:21:36,211 (朱音)あっ… いっ… 453 00:21:36,295 --> 00:21:37,879 いや その… 454 00:21:37,963 --> 00:21:41,425 あっ こ… これから 頑張ろうかなぁなんて… 455 00:21:41,508 --> 00:21:43,635 こんの たわけー! 456 00:21:43,719 --> 00:21:45,053 アアーッ! 457 00:21:45,137 --> 00:21:48,682 学生の本分は勉強と言っただろう! 458 00:21:48,765 --> 00:21:50,976 中間テストの期間は 同行を禁ずる! 459 00:21:51,059 --> 00:21:52,352 -(享二)勉学に励め! -(朱音)へい 460 00:21:52,436 --> 00:21:55,147 (享二)あしたから毎日 俺の所にノートを持ってこい! 461 00:21:55,230 --> 00:21:56,481 -(朱音)へい いや… -(享二)遠慮は無用! 462 00:21:56,565 --> 00:21:58,233 (朱音)なんで こんなことになったか— 463 00:21:58,317 --> 00:21:59,693 あっしも分かんないんで… 464 00:21:59,776 --> 00:22:01,111 (享二)おい 聞いているのか!? 465 00:22:01,194 --> 00:22:02,988 (みくちゃん)青春ねえ 466 00:22:03,488 --> 00:22:05,490 {\an8}♪~ 467 00:23:30,951 --> 00:23:32,953 {\an8}~♪ 468 00:23:44,464 --> 00:23:46,675 (朱音)享二兄(あに)さん! “兄さん”って呼ぶと— 469 00:23:46,758 --> 00:23:49,010 ぐっと距離が 近くなった感じがします 470 00:23:49,219 --> 00:23:52,597 (享二)うん 同じ一門 同じ家族という思いが— 471 00:23:52,681 --> 00:23:54,391 より一層 強くなるだろう 472 00:23:54,474 --> 00:23:55,308 (朱音)はい! 473 00:23:55,392 --> 00:23:59,229 (亨二)とはいえ 落語家は ほかの一門の先輩方のことも— 474 00:23:59,312 --> 00:24:02,732 “兄さん”“姉さん”と 呼ぶのが一般的だがな 475 00:24:02,816 --> 00:24:06,111 あと上方(かみがた)では “あにさん”ではなく— 476 00:24:06,194 --> 00:24:08,405 “にいさん”と 呼ぶなどの違いはある 477 00:24:08,905 --> 00:24:10,365 (朱音)へえ~… 478 00:24:10,449 --> 00:24:13,076 (亨二)ただし その呼び方は 二ツ目(ふたつめ)まで 479 00:24:13,160 --> 00:24:15,704 真打に昇進された先輩は— 480 00:24:15,787 --> 00:24:18,373 “師匠”と呼ばないと 失礼になる場合もあるから 481 00:24:18,457 --> 00:24:19,249 気をつけろよ 482 00:24:19,332 --> 00:24:20,375 (朱音)覚えておきます 483 00:24:20,584 --> 00:24:21,626 (享二)もうひとつ 484 00:24:21,835 --> 00:24:25,213 よその師匠のことは “誰々師匠”と名前で呼ぶが— 485 00:24:25,297 --> 00:24:26,506 自分の師匠のことは— 486 00:24:26,590 --> 00:24:30,427 単に“師匠”または “ウチの師匠”という言い方をする 487 00:24:31,219 --> 00:24:33,221 これは まあ 師弟関係は— 488 00:24:33,305 --> 00:24:36,349 親子のようなものと 考えれば分かるだろう 489 00:24:36,433 --> 00:24:40,479 (朱音)そっか! 自分の父親は “うちのおっ父”だけど— 490 00:24:40,562 --> 00:24:43,690 友達の場合は “誰々ちゃんのおっ父”ですもんね 491 00:24:43,773 --> 00:24:45,025 (享二)たわけっ! 492 00:24:45,108 --> 00:24:47,486 よそさまの親御さんは “おっ父”ではなく— 493 00:24:47,569 --> 00:24:49,279 “お父さん”だろう! 494 00:24:49,529 --> 00:24:51,156 (朱音)う… うす…