1 00:00:01,134 --> 00:00:12,145 ♬~ 2 00:00:12,145 --> 00:00:31,164 ♬~ 3 00:00:31,164 --> 00:00:36,169 ♬~ 4 00:00:36,169 --> 00:00:56,189 ♬~ 5 00:00:56,189 --> 00:01:16,143 ♬~ 6 00:01:16,143 --> 00:01:29,189 ♬~ 7 00:01:41,101 --> 00:01:48,108 ♪(初華) Greensleeves was all my joy 8 00:01:48,108 --> 00:01:54,114 ♪ Greensleeves was my delight 9 00:01:54,114 --> 00:02:00,120 ♪ Greensleeves was my heart of gold 10 00:02:00,120 --> 00:02:07,094 ♪ And who but my lady greensleeves 11 00:02:09,062 --> 00:02:14,067 これからお話ししますのは 秘密を抱えた彼女… 12 00:02:14,067 --> 00:02:17,037 三角初音のお話 13 00:02:23,076 --> 00:02:28,048 父は豊川定治 祥ちゃんの祖父 14 00:02:30,083 --> 00:02:33,086 長年 連れ添った妻の死に 絶望した父と➡ 15 00:02:33,086 --> 00:02:36,089 同じく その妻を慕っていた➡ 16 00:02:36,089 --> 00:02:42,095 豊川の別荘の管理人だった 母との間に 私は生まれた 17 00:02:42,095 --> 00:02:46,099 私のことを知った父は 母と私を東京に呼び寄せ➡ 18 00:02:46,099 --> 00:02:50,103 一緒に暮らそうとしたらしい 19 00:02:50,103 --> 00:02:53,106 だが 婿養子だった父が➡ 20 00:02:53,106 --> 00:02:57,110 豊川の血が流れない私を 籍に入れることは➡ 21 00:02:57,110 --> 00:03:00,113 すなわち 失脚を意味する 22 00:03:00,113 --> 00:03:04,051 それを知った母は 父に迷惑をかけまいと➡ 23 00:03:04,051 --> 00:03:09,022 この島で 1人で私を育てることを決意した 24 00:03:11,058 --> 00:03:13,060 島の漁師だった養父は➡ 25 00:03:13,060 --> 00:03:17,064 そんな母を 私ごと受け入れてくれた 26 00:03:17,064 --> 00:03:23,070 幸せな家庭には やがて 新しい命が宿る 27 00:03:23,070 --> 00:03:26,073 《私は幸せじゃなかった》 28 00:03:26,073 --> 00:03:30,077 そう 私に妹ができたのだ 29 00:03:30,077 --> 00:03:33,080 妹の名前は初華 30 00:03:33,080 --> 00:03:41,088 私とよく似た顔をしていたが 明るく積極的で 私とは正反対 31 00:03:41,088 --> 00:03:43,090 「大きくなったら アイドルになるの!」 32 00:03:43,090 --> 00:03:46,093 「絶対に東京に出るから!」 33 00:03:46,093 --> 00:03:52,099 そう口癖のように話す初華に 私は… 34 00:03:52,099 --> 00:03:56,103 「初華は かわいいから きっとなれるよ」 35 00:03:56,103 --> 00:03:59,106 応援の言葉をかけながら➡ 36 00:03:59,106 --> 00:04:04,044 妹に対するコンプレックスで いっぱいだった 37 00:04:04,044 --> 00:04:08,048 養父は こんな私を かわいがってくれたが➡ 38 00:04:08,048 --> 00:04:10,050 その優しさが なおさら➡ 39 00:04:10,050 --> 00:04:15,055 家族の中での 私の異物感を際立たせた 40 00:04:15,055 --> 00:04:19,059 「私だけが家族じゃない」 41 00:04:19,059 --> 00:04:21,061 息が詰まる 42 00:04:21,061 --> 00:04:25,065 窒息しそうになる度 外に出た 43 00:04:25,065 --> 00:04:28,068 夜の山で 星空を眺めているときだけ➡ 44 00:04:28,068 --> 00:04:30,070 息ができる気がした 45 00:04:30,070 --> 00:04:33,073 大きく息を吸う 46 00:04:33,073 --> 00:04:38,078 何度も 何度も 大きく 大きく… 47 00:04:38,078 --> 00:04:42,082 フゥ~… 48 00:04:42,082 --> 00:04:45,085 大きなため息のようだった 49 00:04:45,085 --> 00:04:47,087 (セミの鳴き声) 50 00:04:47,087 --> 00:04:49,089 夏が来た 51 00:04:49,089 --> 00:04:53,093 夏休み 私と初華は➡ 52 00:04:53,093 --> 00:04:58,064 養父に 母が作ったお弁当を届けに 漁港に行くのが日課だった 53 00:05:00,100 --> 00:05:02,035 帰り道… 54 00:05:02,035 --> 00:05:05,038 「ズル~イ お姉ちゃんばっか」 55 00:05:05,038 --> 00:05:08,041 「初華の好きなお菓子もあるよ」 56 00:05:08,041 --> 00:05:13,046 初華は 1人で食べるには 少し多めのお菓子をつかんで➡ 57 00:05:13,046 --> 00:05:16,049 急勾配の坂道を 元気よく駆け上がる 58 00:05:16,049 --> 00:05:22,055 「ハァハァハァ… お姉ちゃん 早く~」 59 00:05:22,055 --> 00:05:25,058 私をせかす声に 顔を上げる 60 00:05:25,058 --> 00:05:31,064 山のてっぺんに 豊川家の別荘が見えた 61 00:05:31,064 --> 00:05:37,070 私は知っていた 夏には 私と同じ年の姪が来る 62 00:05:37,070 --> 00:05:40,073 教えてくれたのは母だった 63 00:05:40,073 --> 00:05:44,077 絶対に会ってはいけない その子の名は… 64 00:05:44,077 --> 00:05:47,080 豊川祥子 65 00:05:47,080 --> 00:05:53,086 同じ豊川の子なのに 祝福され 幸せに暮らしている 66 00:05:53,086 --> 00:05:56,089 なのに私は… 67 00:05:56,089 --> 00:05:59,059 独りぼっち… 68 00:06:01,027 --> 00:06:04,030 立ち止まってしまった私を 不思議に思ったのか➡ 69 00:06:04,030 --> 00:06:08,034 初華は 私の視線の先を見て ニコッと笑った 70 00:06:08,034 --> 00:06:11,037 「おととい あそこの子と遊んだよ!」 71 00:06:11,037 --> 00:06:14,040 「祥ちゃん かわいかった」 「えっ⁉」 72 00:06:14,040 --> 00:06:18,044 「祥ちゃんはね 何でも知ってて 何でもできて➡ 73 00:06:18,044 --> 00:06:21,047 東京のことを いっぱい話してくれて➡ 74 00:06:21,047 --> 00:06:23,049 東京でアイドルになりたいって 言ったら➡ 75 00:06:23,049 --> 00:06:26,052 応援するって約束してくれたんだ」 76 00:06:26,052 --> 00:06:29,055 「初音も一緒に行こうよ」 77 00:06:29,055 --> 00:06:31,057 私は母に➡ 78 00:06:31,057 --> 00:06:34,060 決して会ってはいけないと 言い含められている 79 00:06:34,060 --> 00:06:37,063 互いが不幸になると… 80 00:06:37,063 --> 00:06:40,066 「行かないよ 初華も もう行っちゃダメだよ」 81 00:06:40,066 --> 00:06:46,039 「えっ なんで? 変なの もう遊ぶ約束しちゃったもん」 82 00:06:50,076 --> 00:06:53,079 私に言われても聞かないだろう 83 00:06:53,079 --> 00:06:58,084 その手につかんだお菓子は きっと 祥ちゃんの分なのだ 84 00:06:58,084 --> 00:07:00,086 ズルイ… 85 00:07:00,086 --> 00:07:04,024 初華は 祥ちゃんと 何をして遊んだか 何を話したかを 86 00:07:04,024 --> 00:07:09,029 まるで記憶を共有するかのように ことこまやかに話してくれた 87 00:07:09,029 --> 00:07:13,033 祥ちゃんに誘われ 虫取りに行ったこと 88 00:07:13,033 --> 00:07:15,035 大きなカブトムシを 取ってあげたこと 89 00:07:15,035 --> 00:07:20,040 でっかいクモが出てきて 2人でギャーと叫んだこと 90 00:07:20,040 --> 00:07:26,046 夏の夜の間 私は初華から たくさんの祥ちゃんの話を聞いた 91 00:07:26,046 --> 00:07:29,049 どんな子だろう どんな子だろう どんな子だろう 92 00:07:29,049 --> 00:07:31,051 (妹と祥子の笑い声) 93 00:07:31,051 --> 00:07:36,056 祥ちゃんの隣にいるのは 初華ではなく私だと想像し➡ 94 00:07:36,056 --> 00:07:38,058 夢みて… 95 00:07:38,058 --> 00:07:43,063 初華だけズルイ 私も遊びたい 96 00:07:43,063 --> 00:07:47,033 ズルイ… ズルイ ズルイ ズルイ! 97 00:07:49,069 --> 00:07:54,074 夏休みも終わりに近づいたころ 初華が熱を出した 98 00:07:54,074 --> 00:07:58,078 「祥ちゃんと 遊ぶ約束してたのに…」 99 00:07:58,078 --> 00:08:00,080 私だって遊びたい 100 00:08:00,080 --> 00:08:03,016 「あした 東京に帰っちゃうから 会いたかったのに」 101 00:08:03,016 --> 00:08:06,019 私だって会いたい! 102 00:08:06,019 --> 00:08:09,990 「ハァハァ ハァハァ…」 103 00:08:12,025 --> 00:08:16,029 気づけば 別荘の前に立っていた 104 00:08:16,029 --> 00:08:20,033 「あの別荘には 決して行っちゃダメ」 105 00:08:20,033 --> 00:08:23,036 静かな母の声を思い出す でも… 106 00:08:23,036 --> 00:08:26,039 (瑞穂) 「清告さん 来られて良かったわね」 107 00:08:26,039 --> 00:08:29,042 (清告)「どうだった? 祥子」 (祥子)「楽しかったですわ」 108 00:08:29,042 --> 00:08:31,044 楽しそうな笑い声 109 00:08:31,044 --> 00:08:34,047 私は こんなふうに笑ったことがない 110 00:08:34,047 --> 00:08:36,049 「ごきげんよう」 (鼓動音) 111 00:08:36,049 --> 00:08:41,054 目が合ってしまった 思わず逃げようとしたけど 112 00:08:41,054 --> 00:08:44,024 「初華 今日は何をして遊ぶんですの?」 113 00:08:46,059 --> 00:08:50,063 私は 初華じゃない 114 00:08:50,063 --> 00:08:53,033 「初華?」 「私は…」 115 00:08:55,068 --> 00:08:57,070 「虫を取りに行こう」 116 00:08:57,070 --> 00:09:00,073 「大きなチョウチョがいる場所 知ってるんだ」 117 00:09:00,073 --> 00:09:03,076 私は初華の笑顔をマネた 118 00:09:03,076 --> 00:09:07,080 そうして 1日中 祥ちゃんと遊んだ 119 00:09:07,080 --> 00:09:10,083 初華のように 大きな声で はしゃいで➡ 120 00:09:10,083 --> 00:09:15,088 初華のように笑って 信じられないほど楽しかった 121 00:09:15,088 --> 00:09:18,091 あっという間に夕方になった 122 00:09:18,091 --> 00:09:21,094 (波の音) 123 00:09:21,094 --> 00:09:24,097 「あした 帰っちゃうんだよね?」 124 00:09:24,097 --> 00:09:28,101 「ええ もっと遊びたかったけれど」 125 00:09:28,101 --> 00:09:32,105 「じゃ… 夜も遊ぶ?」 126 00:09:32,105 --> 00:09:36,109 「えっ? でも 夜は怖いですわ」 127 00:09:36,109 --> 00:09:42,082 「迎えに行くよ 窓をたたいたら それが合図だから」 128 00:09:49,122 --> 00:09:53,126 コツーン カツーン 129 00:09:53,126 --> 00:09:58,097 祥ちゃんに教えてもらった部屋の 窓を目がけて 小石を投げた 130 00:10:03,069 --> 00:10:07,073 コツーン カツーン 131 00:10:07,073 --> 00:10:10,076 開いた窓から祥ちゃんが見えた 132 00:10:10,076 --> 00:10:15,081 私たちは 手に手を取り合って走りだした 133 00:10:15,081 --> 00:10:17,083 「フフッ… 怖くない?」 134 00:10:17,083 --> 00:10:19,085 「初華が一緒ですもの」 135 00:10:19,085 --> 00:10:23,089 「冒険の始まりのようで ワクワクしますわね!」 136 00:10:23,089 --> 00:10:28,094 私たちは 誰もいない世界を 2人だけで走り続けた 137 00:10:28,094 --> 00:10:30,063 「光ですわ!」 138 00:10:32,098 --> 00:10:37,103 紺青の夜空に広がる満天の星に 声を上げる 139 00:10:37,103 --> 00:10:41,107 「星って こんなに たくさんあるんですのね」 140 00:10:41,107 --> 00:10:49,115 こと座 白鳥座 ワシ座 夏の大三角 141 00:10:49,115 --> 00:10:53,119 オリオン座 サソリ座 いて座 142 00:10:53,119 --> 00:10:57,123 シソウヤライのナナツボシ 143 00:10:57,123 --> 00:11:00,126 指先で星々を追う 144 00:11:00,126 --> 00:11:03,062 2人で夜空を旅する気分だった 145 00:11:03,062 --> 00:11:08,067 楽しい 心から思った 146 00:11:08,067 --> 00:11:13,072 知っている星を 全部 言って 横を見ると➡ 147 00:11:13,072 --> 00:11:17,076 祥ちゃんが 私を見つめていた 148 00:11:17,076 --> 00:11:19,078 「初華は不思議な人ですわね」 149 00:11:19,078 --> 00:11:22,081 「いつもは お日さまみたいに明るいのに➡ 150 00:11:22,081 --> 00:11:25,084 今日は月のように優しくて」 151 00:11:25,084 --> 00:11:27,053 「月?」 152 00:11:29,088 --> 00:11:32,091 光がさした 153 00:11:32,091 --> 00:11:36,095 薄暗かった私の世界に光が満ちた 154 00:11:36,095 --> 00:11:39,098 生まれ変わったような気がした 155 00:11:39,098 --> 00:11:42,101 ずっとずっと照らされたかった! 156 00:11:42,101 --> 00:11:44,103 うれしかった! 157 00:11:44,103 --> 00:11:48,107 生まれて ずっと 私は かわいそうな子だった! 158 00:11:48,107 --> 00:11:51,110 かわいそうなだけだった私を 人間にしてくれた! 159 00:11:51,110 --> 00:11:53,112 大好き! 160 00:11:53,112 --> 00:11:56,115 優しい祥ちゃん! 私だけの祥ちゃん! 161 00:11:56,115 --> 00:11:59,118 祥ちゃん 祥ちゃん! ずっと一緒に… 162 00:11:59,118 --> 00:12:02,055 「初華は アイドルになれますわ」 163 00:12:02,055 --> 00:12:04,023 「えっ…」 164 00:12:06,059 --> 00:12:10,063 それは 初華の夢だ 165 00:12:10,063 --> 00:12:13,066 でも 祥ちゃんの➡ 166 00:12:13,066 --> 00:12:18,071 天の川のようにキラキラと 輝く目で見つめられたら➡ 167 00:12:18,071 --> 00:12:21,040 何も言えなくなった 168 00:12:25,078 --> 00:12:29,082 これが… 秘密の始まり 169 00:12:29,082 --> 00:12:34,087 誰も知らない 知られてはいけない 170 00:12:34,087 --> 00:12:40,093 自分で自分の首を絞めた 秘密を抱えた… 171 00:12:40,093 --> 00:12:43,062 彼女の話 172 00:12:45,098 --> 00:12:54,107 (雨の音) 173 00:12:54,107 --> 00:12:57,110 養父が死んだ 174 00:12:57,110 --> 00:13:00,113 海から戻ってこなかった 175 00:13:00,113 --> 00:13:04,050 私は 泣き続ける初華を慰めた 176 00:13:04,050 --> 00:13:07,053 自分は お姉ちゃんだから 泣いちゃダメだ 177 00:13:07,053 --> 00:13:09,055 お母さんや初華を支えなきゃ 178 00:13:09,055 --> 00:13:13,059 必死で泣くのを我慢していたのに 179 00:13:13,059 --> 00:13:16,062 「初音は パパが違うから悲しくないんだ!」 180 00:13:16,062 --> 00:13:18,064 (雷鳴) 181 00:13:18,064 --> 00:13:20,066 「私だって パパのこと好きだった!」 182 00:13:20,066 --> 00:13:23,069 息が詰まるんじゃなかったの? 183 00:13:23,069 --> 00:13:26,072 大事にしてもらっておいて 文句ばっか 184 00:13:26,072 --> 00:13:29,075 「自分の子供のように育ててくれて 感謝してた!」 185 00:13:29,075 --> 00:13:33,079 そうやって 悲しんでる自分が 好きなんでしょう? 186 00:13:33,079 --> 00:13:35,081 (泣き声) 187 00:13:35,081 --> 00:13:38,084 「祥ちゃんに 会いたい」 188 00:13:38,084 --> 00:13:40,086 かわいそうな私を 見てほしいから? 189 00:13:40,086 --> 00:13:43,089 悲劇ぶって 同情 集めるの 得意だよね 190 00:13:43,089 --> 00:13:45,091 「違う!」 191 00:13:45,091 --> 00:13:48,094 祥ちゃんが好き? 本当に? 192 00:13:48,094 --> 00:13:50,096 全部ウソ! ウソばっか! 193 00:13:50,096 --> 00:13:53,099 かわいそうな私 悲劇のヒロイン 194 00:13:53,099 --> 00:13:55,101 でも 幸せな子がいないと 演じられない 195 00:13:55,101 --> 00:13:59,105 祥ちゃんは悲劇の舞台装置! 大好き! 196 00:13:59,105 --> 00:14:02,041 「違う違う違う!」 197 00:14:02,041 --> 00:14:07,046 「祥ちゃんに… 会いたい…」 198 00:14:07,046 --> 00:14:11,050 「祥ちゃん 祥ちゃん 祥ちゃん 祥ちゃん 祥ちゃん 祥ちゃん」 199 00:14:11,050 --> 00:14:13,019 「祥ちゃん!」 200 00:14:17,056 --> 00:14:22,061 「東京に行けば… 祥ちゃんに会えるのかな」 201 00:14:22,061 --> 00:14:24,063 (汽笛) 202 00:14:24,063 --> 00:14:30,069 その夜 私は 少しばかりの荷物と ためていたお小遣いを持って➡ 203 00:14:30,069 --> 00:14:32,071 家を出た 204 00:14:32,071 --> 00:14:39,078 最終便のフェリーの甲板は やけに広くて寂しかった 205 00:14:39,078 --> 00:14:42,081 冷たい夜風が耳の横でうなる中➡ 206 00:14:42,081 --> 00:14:45,084 どんどん小さくなっていく 島の影が➡ 207 00:14:45,084 --> 00:14:50,089 お葬式で 小さく背中を丸めて 泣いていた母の姿とかぶって➡ 208 00:14:50,089 --> 00:14:53,059 少し泣いた 209 00:14:57,096 --> 00:15:01,033 東京に出て すぐ スカウトされた 210 00:15:01,033 --> 00:15:04,036 (まな)「全国のど自慢大会5連覇の 純田まなです!」 211 00:15:04,036 --> 00:15:07,039 「まなと一緒に アイドルになろう!」 212 00:15:07,039 --> 00:15:11,043 アイドルになったら 祥ちゃんに 見つけてもらえるかもしれない 213 00:15:11,043 --> 00:15:13,045 (まな)「あなたの名前は?」 214 00:15:13,045 --> 00:15:16,048 私じゃ… 初音じゃダメだ 215 00:15:16,048 --> 00:15:20,052 私は 祥ちゃんが 知っている人間にならなきゃ 216 00:15:20,052 --> 00:15:24,056 「初華 三角初華です」 217 00:15:24,056 --> 00:15:30,062 最低 お母さんと家族 名前まで捨てた 218 00:15:30,062 --> 00:15:37,069 未成年の私が東京で暮らすには 親の許可が必要になる 219 00:15:37,069 --> 00:15:42,074 豊川定治 私は 本当の父の名前を告げた 220 00:15:42,074 --> 00:15:47,079 そうすれば また少し 祥ちゃんに近づけるかもしれない 221 00:15:47,079 --> 00:15:50,082 事務所の人は小さく驚いた 222 00:15:50,082 --> 00:15:55,087 ただ どうして それ以上 聞かれなかったのか 223 00:15:55,087 --> 00:15:58,090 どうして島に戻らずに済んだのか 224 00:15:58,090 --> 00:16:02,028 このときの私は 何も分かっていなかった 225 00:16:02,028 --> 00:16:07,033 初華になった私は sumimiとしてデビューが決まった 226 00:16:07,033 --> 00:16:09,035 ♪~ 227 00:16:09,035 --> 00:16:11,037 都心に新しく建った➡ 228 00:16:11,037 --> 00:16:14,040 大きな商業ビルの お披露目イベント 229 00:16:14,040 --> 00:16:17,043 デビュー前の新人が立てるのが 不思議なくらいの➡ 230 00:16:17,043 --> 00:16:19,045 きらびやかなステージ 231 00:16:19,045 --> 00:16:23,049 歌いながら見た世界は キラキラした大人ばかりで➡ 232 00:16:23,049 --> 00:16:26,052 私には縁がないように見えた 233 00:16:26,052 --> 00:16:29,055 (まな・初華) 「ありがとうございました」 234 00:16:29,055 --> 00:16:34,060 でも 1人だけ 知っている声があった 235 00:16:34,060 --> 00:16:39,065 豊川清告 祥ちゃんのお父さん 236 00:16:39,065 --> 00:16:42,068 ひっきりなしに話しかけてくる 人たちの輪から外れて➡ 237 00:16:42,068 --> 00:16:46,072 息をついているのを見かけて チャンスだと思った 238 00:16:46,072 --> 00:16:49,075 祥ちゃんに会えるかもしれない 239 00:16:49,075 --> 00:16:53,079 「あの… 祥ちゃんのお父さんですか?」 240 00:16:53,079 --> 00:16:56,082 島で仲良くしてもらっていた初華 241 00:16:56,082 --> 00:17:00,086 それだけで 分かってくれた 242 00:17:00,086 --> 00:17:02,021 アイドルを目指す初華ちゃん 243 00:17:02,021 --> 00:17:04,023 お父さんが覚えるくらい➡ 244 00:17:04,023 --> 00:17:08,027 祥ちゃんは 毎日 初華のことを話していたらしい 245 00:17:08,027 --> 00:17:12,031 ズキンと胸が痛くなったけど 246 00:17:12,031 --> 00:17:16,035 「おめでとう 夢をかなえたんだね」 247 00:17:16,035 --> 00:17:19,038 自分のことのように喜んでくれた 248 00:17:19,038 --> 00:17:24,043 うれしかった この人なら 話してもいいのかもしれない 249 00:17:24,043 --> 00:17:28,047 私は 自分の父親のことを打ち明けた 250 00:17:28,047 --> 00:17:31,050 デビューも 力添えがあったのだと思っている 251 00:17:31,050 --> 00:17:34,053 その感謝を伝えてほしいと 252 00:17:34,053 --> 00:17:37,056 それが間違いだった 253 00:17:37,056 --> 00:17:40,059 「それで 私 祥ちゃんに会いたくて…」 254 00:17:40,059 --> 00:17:43,062 別荘に行ってはいけない… 255 00:17:43,062 --> 00:17:47,066 どうして母は 私にだけ そう言ったのか 256 00:17:47,066 --> 00:17:51,070 全てが間違いだったのだ 257 00:17:51,070 --> 00:17:53,072 悲劇が始まった 258 00:17:53,072 --> 00:17:55,074 (雷鳴) 259 00:17:55,074 --> 00:17:57,076 (清告)「親として 恥ずかしくないんですか⁉」 260 00:17:57,076 --> 00:17:59,078 「あの子は 感謝してると言ったんですよ!」 261 00:17:59,078 --> 00:18:01,013 「認知も援助もせず➡ 262 00:18:01,013 --> 00:18:04,016 親としての責任を放棄した あなたに対して!」 263 00:18:04,016 --> 00:18:08,020 「今からでも遅くない 彼女を豊川家に迎え入れるよう➡ 264 00:18:08,020 --> 00:18:10,022 今度の親族会議で 進言するべきです」 265 00:18:10,022 --> 00:18:12,024 (定治) 「誠実ぶるのも ほどほどにしろ」 266 00:18:12,024 --> 00:18:17,029 「豊川の人間に知れたら 我々どころか祥子にも累が及ぶぞ」 267 00:18:17,029 --> 00:18:19,031 (清告)「ウッ…」 268 00:18:19,031 --> 00:18:22,034 「初音にも 二度と豊川に近づかぬよう➡ 269 00:18:22,034 --> 00:18:25,037 よく言い聞かせておく」 (清告)「ですが…」 270 00:18:25,037 --> 00:18:29,041 「お前は 豊川の家の恐ろしさを知らぬのだ」 271 00:18:29,041 --> 00:18:31,043 「あっ… ウウ…」 272 00:18:31,043 --> 00:18:34,046 (定治)「今のは 聞かなかったことにしてやる」 273 00:18:34,046 --> 00:18:38,050 「祥子が大事なら 口を閉じていろ」 274 00:18:38,050 --> 00:18:41,053 (拍手) 275 00:18:41,053 --> 00:18:47,059 祥ちゃんのお父さんは 私のせいで全てを失った… 276 00:18:47,059 --> 00:18:50,062 違う! 祥ちゃんから奪ったんだ! 277 00:18:50,062 --> 00:18:53,065 私が祥ちゃんから お父さんを! 278 00:18:53,065 --> 00:18:58,070 生まれ育った大きな家を! 人生を奪ってしまった! 279 00:18:58,070 --> 00:19:02,074 こんなことになるなんて 思ってなかった! 280 00:19:02,074 --> 00:19:07,079 ただ 会いたくて… 281 00:19:07,079 --> 00:19:09,081 会いたかった… 282 00:19:09,081 --> 00:19:14,086 昨日まで住んでいた家の 玄関よりも狭い家 283 00:19:14,086 --> 00:19:20,092 家計を助けるために 働いて 働いて 働いて 働いて 284 00:19:20,092 --> 00:19:28,100 家族も友達も笑顔も 全部 奪ってしまった… 285 00:19:28,100 --> 00:19:30,102 それなのに… 286 00:19:30,102 --> 00:19:33,105 「えっ バンド? 分かった いいよ」 287 00:19:33,105 --> 00:19:35,107 ダメなのに… 288 00:19:35,107 --> 00:19:37,109 「祥ちゃんの頼みだもん」 289 00:19:37,109 --> 00:19:39,111 「やっぱり私の家に来て」 290 00:19:39,111 --> 00:19:44,116 「ずっといていいから ずっと 一緒にいるから」 291 00:19:44,116 --> 00:19:46,118 ダメなのに… 292 00:19:46,118 --> 00:19:49,121 「運命共同体か…」 293 00:19:49,121 --> 00:19:52,124 「ずっと… ここにいていいから」 294 00:19:52,124 --> 00:19:58,130 「ムジカがなくなっても 一緒に… いてくれる?」 295 00:19:58,130 --> 00:20:00,132 「Ave Mujica やろう」 296 00:20:00,132 --> 00:20:02,068 「ずっと一緒にいよう」 297 00:20:02,068 --> 00:20:05,071 ダメなのに… 298 00:20:05,071 --> 00:20:12,078 そんなことを言ってまで 祥ちゃんをダマし続ける自分が➡ 299 00:20:12,078 --> 00:20:14,080 気持ち悪い… 300 00:20:14,080 --> 00:20:16,082 (本の落ちる音) 301 00:20:22,121 --> 00:20:24,123 (定治)初音 302 00:20:24,123 --> 00:20:27,126 (定治)帰りなさい (祥子)えっ? 303 00:20:27,126 --> 00:20:34,133 ♬~ 304 00:20:34,133 --> 00:20:39,138 (定治)もう初音には会うな 学校も行く必要はない 305 00:20:39,138 --> 00:20:41,140 えっ… 306 00:20:41,140 --> 00:20:45,144 スイスだ 手続きが終わるまで家から出るな 307 00:20:45,144 --> 00:20:47,146 あっ… 308 00:20:47,146 --> 00:20:49,148 (荷物を片づける音) 309 00:20:49,148 --> 00:20:51,150 (カバンを閉める音) 310 00:20:51,150 --> 00:21:04,096 ♬~ 311 00:21:04,096 --> 00:21:15,107 (呼び出し音) 312 00:21:15,107 --> 00:21:20,079 初華… どうして出てくれないんですの? 313 00:21:23,115 --> 00:21:25,084 初華… 314 00:21:27,119 --> 00:21:30,122 📞(バイブレーター)初華ですの⁉ 315 00:21:30,122 --> 00:21:32,124 📞(海鈴)豊川さん 三角さん 316 00:21:32,124 --> 00:21:35,127 📞 今日の練習すっぽかすなんて どうしたんです⁉ えっ? 317 00:21:35,127 --> 00:21:37,129 (海鈴)Ave Mujicaの練習ですよ 318 00:21:37,129 --> 00:21:39,131 連絡もなしに こういうの やめてほしいんですよ! 319 00:21:39,131 --> 00:21:41,133 トラウマなんですよ! 320 00:21:41,133 --> 00:21:43,135 📞 一体 私の 何が悪かったんですか⁉ 321 00:21:43,135 --> 00:21:46,138 📞 ここに来て まだ信用してくれないんですか⁉ 322 00:21:46,138 --> 00:21:48,140 📞 三角さんに至っては 連絡も取れない 323 00:21:48,140 --> 00:21:50,142 📞 学校にも来ない! 324 00:21:50,142 --> 00:21:52,144 📞 お宅に伺ったら ポストに➡ 325 00:21:52,144 --> 00:21:55,147 1週間前のタウン情報紙が 入ったままだったんですよ! 326 00:21:55,147 --> 00:22:00,119 (波の音) 327 00:22:05,090 --> 00:22:18,103 ♬~ 328 00:22:18,103 --> 00:22:31,116 ♬~ 329 00:22:31,116 --> 00:22:51,136 ♬~ 330 00:22:51,136 --> 00:23:01,080 ♬~ 331 00:23:01,080 --> 00:23:17,096 ♬~ 332 00:23:17,096 --> 00:23:20,099 ♬~ 333 00:23:20,099 --> 00:23:34,179 ♬~ 334 00:23:46,091 --> 00:23:59,138 ♬~