1 00:00:05,973 --> 00:00:09,276 《豚:ここは… どこだ?》 2 00:00:11,979 --> 00:00:14,314 (ジェス)にゃふん! 《んっ?》 3 00:00:14,314 --> 00:00:16,817 あっ 悪い。 4 00:00:16,817 --> 00:00:20,821 よかった… 起きてくれましたね 豚さん。 5 00:00:20,821 --> 00:00:23,323 んっ…。 6 00:00:23,323 --> 00:00:26,627 《ああっ そうだ! 俺は…》 7 00:00:28,662 --> 00:00:31,498 あの男の黒のリスタを 使ってくれたのか? 8 00:00:31,498 --> 00:00:34,835 はい。 残量は ごく少量でしたが➡ 9 00:00:34,835 --> 00:00:37,337 組み合わせれば きちんと使えました。 10 00:00:37,337 --> 00:00:41,341 残りのリスタは 書き置きと一緒にお屋敷に。 11 00:00:41,341 --> 00:00:44,177 フム…。 12 00:00:44,177 --> 00:00:47,180 ジェス。 はい。 13 00:00:47,180 --> 00:00:50,851 本当にありがとう おかげで命拾いした。 14 00:00:50,851 --> 00:00:52,853 いいんです。 15 00:00:54,855 --> 00:00:58,058 私がやりたくて やったことですから。 16 00:02:31,651 --> 00:02:34,988 ここは キルトリの北東にある 森の中です。 17 00:02:34,988 --> 00:02:37,157 そこにある道を抜けると➡ 18 00:02:37,157 --> 00:02:40,827 たぶん いくつか小さな村が あるんだと思います。 19 00:02:40,827 --> 00:02:43,330 なんだか 自信のなさそうな言い方だが➡ 20 00:02:43,330 --> 00:02:48,168 それで王都へ行けるのか? はい 北へ北へと行けば➡ 21 00:02:48,168 --> 00:02:50,837 王都は目立つ高い山にあって➡ 22 00:02:50,837 --> 00:02:54,541 一目見れば それとわかる とのことですから。 23 00:02:56,510 --> 00:03:01,448 そういえば旅をするのは 初めてって言ってたな。 24 00:03:01,448 --> 00:03:04,451 大丈夫です。 きっと辿りつきます。 25 00:03:04,451 --> 00:03:06,953 んっ… そうか。 26 00:03:06,953 --> 00:03:09,289 じゃ 早速 出発するか。 27 00:03:09,289 --> 00:03:11,792 十分 休んだか? はいっ! 28 00:03:13,794 --> 00:03:18,465 《台車に俺を乗せ 歩きどおしで ほとんど寝てないはずだ》 29 00:03:18,465 --> 00:03:20,467 ジェス。 あっ。 30 00:03:20,467 --> 00:03:23,136 俺の背中に乗ってみないか? えっ? 31 00:03:23,136 --> 00:03:25,639 《優しい子だから 普通に頼んだところで➡ 32 00:03:25,639 --> 00:03:28,475 かたくなに歩こうとするだろう。 だが俺はもう➡ 33 00:03:28,475 --> 00:03:31,812 この優しすぎる少女の 扱い方がわかってきている》 34 00:03:31,812 --> 00:03:35,148 かわいい生足の女の子に 馬乗りになってもらうのが➡ 35 00:03:35,148 --> 00:03:39,052 小さい頃からの夢だったんだ。 あっ…。 36 00:03:42,322 --> 00:03:44,658 この道をまっすぐで いいんだよな? 37 00:03:44,658 --> 00:03:49,162 えぇ あの… たぶん 大丈夫です。 38 00:03:49,162 --> 00:03:54,000 どうした? 気分が悪いのか? いえ えっと…。 39 00:03:54,000 --> 00:03:59,005 豚さんに乗せてもらうのは 初めてなものですから… その…。 40 00:03:59,005 --> 00:04:03,777 んっ… すれて くすぐったくて。 41 00:04:03,777 --> 00:04:06,613 すれて…? 42 00:04:06,613 --> 00:04:09,282 ちょっ… いやいやいやいやいや! 何やっとんねん! 43 00:04:09,282 --> 00:04:12,452 座り方あかんわ! 座り方… ですか? 44 00:04:12,452 --> 00:04:15,956 そうだ すまない。 俺の配慮が足りなかった。 45 00:04:15,956 --> 00:04:19,793 いえ別に… 耐えられないほどではないので。 46 00:04:19,793 --> 00:04:23,463 ただ ちょっと変な感じがして。 《やめろ! 47 00:04:23,463 --> 00:04:26,299 頼むやめてくれ! そんな薄い本みたいなセリフで➡ 48 00:04:26,299 --> 00:04:29,302 俺と少女の幸せな時間を 汚さないでくれ!》 49 00:04:29,302 --> 00:04:31,304 んっ? 50 00:04:31,304 --> 00:04:34,141 今度は手のほうに 体重をかけて乗ってみてくれ。 51 00:04:34,141 --> 00:04:36,977 はい。 52 00:04:36,977 --> 00:04:40,814 どうだ? あの… まだ…。 53 00:04:40,814 --> 00:04:43,150 背骨が… んっ。 54 00:04:43,150 --> 00:04:46,486 《あんっ! この純真な少女に 初めてを教えるのは➡ 55 00:04:46,486 --> 00:04:48,989 俺の背骨であってはならない!》 56 00:04:48,989 --> 00:04:51,491 じゃあ もっと後ろに座るんだ。 57 00:04:51,491 --> 00:04:54,828 もも肉のすぐ手前。 脚で俺をしっかり挟め。 58 00:04:54,828 --> 00:04:58,165 行くぞ。 59 00:04:58,165 --> 00:05:00,767 あっ これなら大丈夫です。 60 00:05:00,767 --> 00:05:03,603 《よし これでようやく… んっ!?》 61 00:05:03,603 --> 00:05:09,442 おい… あれは何だ? 俺たち狙われてるんじゃないか? 62 00:05:09,442 --> 00:05:13,280 大丈夫です あれはヘックリポンという動物ですよ。 63 00:05:13,280 --> 00:05:15,282 ヘックリポン…。 64 00:05:15,282 --> 00:05:18,118 あぁ リスタ屋のおっちゃんが 言ってたやつか。 65 00:05:18,118 --> 00:05:21,121 何もしてきませんから このまま行きましょう。 66 00:05:21,121 --> 00:05:23,623 あ… あぁ。 67 00:05:23,623 --> 00:05:28,295 あんな動物 俺がいた所では 見たことがないんだが。 68 00:05:28,295 --> 00:05:30,297 そうなんですね。 69 00:05:30,297 --> 00:05:32,966 メステリアでは ごくありふれた生き物ですよ。 70 00:05:32,966 --> 00:05:37,137 暗黒時代が終わったあたりから 急に増え始めたらしいです。 71 00:05:37,137 --> 00:05:41,641 奇妙なうわさは絶えませんが。 奇妙なうわさっていうと? 72 00:05:41,641 --> 00:05:43,977 いろいろな言い伝えがあるんです。 73 00:05:43,977 --> 00:05:46,980 幸運をもたらすと伝わる 地域もあれば➡ 74 00:05:46,980 --> 00:05:50,817 会うと不幸になると言われている 地域もあるそうで。 75 00:05:50,817 --> 00:05:53,486 フフッ だから結局➡ 76 00:05:53,486 --> 00:05:56,656 ヘックリポンは 何もしてないと思うんですが。 77 00:05:56,656 --> 00:05:59,826 なんだか楽しそうに話すんだな。 はい。 78 00:05:59,826 --> 00:06:02,262 歴史や民話が大好きなんです! 79 00:06:02,262 --> 00:06:05,765 本を読むとは聞いていたが そっち系もいけるのか。 80 00:06:05,765 --> 00:06:09,102 フム いい趣味だと思うぞ。 そうですか? 81 00:06:09,102 --> 00:06:11,938 豚さんにも 何か趣味があるんですか? 82 00:06:11,938 --> 00:06:15,609 《日常系アニメを見て 美少女にブヒブヒ言うこと。 83 00:06:15,609 --> 00:06:17,611 だなんて とても言えない》 84 00:06:17,611 --> 00:06:19,613 俺も読書は好きだな。 85 00:06:19,613 --> 00:06:22,616 あと最近のマイブームは 雑草の食べ比べ。 86 00:06:22,616 --> 00:06:26,620 きれいな女の子の登場する物語が お好きなんですか? 87 00:06:26,620 --> 00:06:29,789 うん そっちはモノローグだな。 ハッ! 88 00:06:29,789 --> 00:06:33,126 ハァ… ミステリーってわかるか? 89 00:06:33,126 --> 00:06:35,128 謎を解く話が好きなんだ。 90 00:06:35,128 --> 00:06:37,964 物語にちりばめられた 些細な証拠から➡ 91 00:06:37,964 --> 00:06:40,967 ある一つの意外な事実に 辿りつくような話が。 92 00:06:40,967 --> 00:06:43,803 そんな読み物があるんですね! 93 00:06:43,803 --> 00:06:46,640 先も長そうだ。 道中で話してやるよ。 94 00:06:46,640 --> 00:06:49,643 本当ですか! 楽しみです。 95 00:06:49,643 --> 00:06:52,145 あっ もしかすると➡ 96 00:06:52,145 --> 00:06:55,315 豚さんがいろいろなことに 気付いてくださるのは➡ 97 00:06:55,315 --> 00:06:58,818 その ミステリーというのを 読んでいるからなんですか? 98 00:06:58,818 --> 00:07:01,755 そうかもしれないな。 まっ➡ 99 00:07:01,755 --> 00:07:05,592 細かいことが気になってしまう 悪い癖のせいでもあると思うが。 100 00:07:05,592 --> 00:07:10,263 じゃあ… 豚さんに 隠し事はできませんね。 101 00:07:10,263 --> 00:07:13,933 いや 別に隠したいことがあったら 隠してもいいんだぞ。 102 00:07:13,933 --> 00:07:17,771 ジェスが俺の心の声をスルーして くれているのと同じように➡ 103 00:07:17,771 --> 00:07:21,942 俺だって ジェスの 知られたくないことは詮索しない。 104 00:07:21,942 --> 00:07:25,278 《俺と出会う ちょっと前に 黒のリスタを買っていながら➡ 105 00:07:25,278 --> 00:07:27,781 そのことを俺に話さなかった理由。 106 00:07:27,781 --> 00:07:31,117 この旅に出れば キルトリン家には戻らないのに➡ 107 00:07:31,117 --> 00:07:33,119 お使いだと ごまかした理由。 108 00:07:33,119 --> 00:07:35,121 まぁ他にもいろいろあるが➡ 109 00:07:35,121 --> 00:07:37,624 どれも俺が知らなくて いいことなのだろう》 110 00:07:39,626 --> 00:07:41,628 あの…。 111 00:07:43,630 --> 00:07:45,632 豚さん…。 112 00:07:45,632 --> 00:07:49,969 私の話を聞いても 一緒に 王都まで行ってくれるって➡ 113 00:07:49,969 --> 00:07:52,472 そう 約束してくれますか? 114 00:07:52,472 --> 00:07:54,808 もちろんだ。 そうでもしないと➡ 115 00:07:54,808 --> 00:07:58,478 俺は一生 豚として 生きていくしかないからな。 116 00:07:58,478 --> 00:08:01,081 そうでしたね。 あぁ! 117 00:08:08,254 --> 00:08:12,092 覚悟を決めました。 私 話します。 118 00:08:12,092 --> 00:08:14,094 俺も覚悟を決めた。 119 00:08:14,094 --> 00:08:16,262 何を聞いても怖気づいたりしない。 120 00:08:16,262 --> 00:08:18,264 安心しろ。 121 00:08:22,102 --> 00:08:25,939 私 王都へ この身を捧げに行くんです。 122 00:08:25,939 --> 00:08:28,775 んっ? そうでない場合は➡ 123 00:08:28,775 --> 00:08:31,111 道中で死にます。 はっ? 124 00:08:31,111 --> 00:08:33,313 イェスマの宿命です。 125 00:08:37,283 --> 00:08:41,955 メステリアでは 16歳になったイェスマは 仕えている家を出て➡ 126 00:08:41,955 --> 00:08:45,291 自力で王都へ向かう 決まりになっているのです。 127 00:08:45,291 --> 00:08:48,461 大半は道中で命を落とします。 128 00:08:48,461 --> 00:08:50,964 王都へ辿りついたイェスマは➡ 129 00:08:50,964 --> 00:08:53,967 一生 元の場所に 戻ることはありません。 130 00:08:53,967 --> 00:08:56,636 王都に着いたら どうなるっていうんだ? 131 00:08:56,636 --> 00:09:00,240 いったい何が…。 いろいろなうわさがありますが➡ 132 00:09:00,240 --> 00:09:03,243 本当のことは誰にもわかりません。 133 00:09:03,243 --> 00:09:06,579 王都は世間から 完全に隔絶されていて➡ 134 00:09:06,579 --> 00:09:09,582 誰も内部の様子を知らないんです。 135 00:09:09,582 --> 00:09:14,087 豚さんは 私がどうして 逃げるようにお屋敷を離れたか➡ 136 00:09:14,087 --> 00:09:16,589 疑問に思っていますよね。 あぁ…。 137 00:09:16,589 --> 00:09:21,261 お答えします。 私のしている この銀の首輪。 138 00:09:21,261 --> 00:09:24,764 これにはとてつもない 魔力が注ぎ込まれており➡ 139 00:09:24,764 --> 00:09:27,100 たいへん高く売れるんです。 140 00:09:27,100 --> 00:09:30,270 そして この首輪は 魔法で守られていて➡ 141 00:09:30,270 --> 00:09:34,274 首を切り落とさないかぎり 外すことはできません。 142 00:09:34,274 --> 00:09:40,280 そして骨など イェスマの体そのものも 安くない値段で売れます。 143 00:09:40,280 --> 00:09:43,783 王朝からキルトリン家に 手切れ金が支払われ➡ 144 00:09:43,783 --> 00:09:47,120 小間使いではなくなった 瞬間から 私は➡ 145 00:09:47,120 --> 00:09:49,789 イェスマを殺して稼いでいる➡ 146 00:09:49,789 --> 00:09:52,992 「イェスマ狩り」に追われる立場になる ということです。 147 00:09:56,296 --> 00:10:00,467 もちろん キルトリン家の皆さんは 優しい方々ですから➡ 148 00:10:00,467 --> 00:10:04,304 私を売ってお金にしようだなんて 思わないでしょう。 149 00:10:04,304 --> 00:10:06,973 しかし私は キリンスさんに➡ 150 00:10:06,973 --> 00:10:10,143 今日が旅立ちの日だと 話してしまいました。 151 00:10:10,143 --> 00:10:14,481 キリンスさんも とてもいい方なのですが➡ 152 00:10:14,481 --> 00:10:18,151 情報は いつどうやって広まるか わかりません。 153 00:10:18,151 --> 00:10:22,655 だから できるだけ屋敷から離れて この森に隠れていたんです。 154 00:10:22,655 --> 00:10:27,327 《いったい どうなってんだ この世界は》 155 00:10:27,327 --> 00:10:29,329 豚さん。 あっ…。 156 00:10:29,329 --> 00:10:32,165 やっぱり… だめですか? 157 00:10:32,165 --> 00:10:34,501 だめなもんか! 158 00:10:34,501 --> 00:10:36,503 あっ。 159 00:10:36,503 --> 00:10:40,507 こんな歪んだ世界で ジェスみたいな 優しい子が傷つくのを➡ 160 00:10:40,507 --> 00:10:42,675 黙って見ていられるわけが ないだろう。 161 00:10:42,675 --> 00:10:44,677 俺は王都に行くぞ。 162 00:10:44,677 --> 00:10:48,014 俺はただの豚。 剣も魔法も使えないが➡ 163 00:10:48,014 --> 00:10:52,018 知恵のかぎりを尽くして ジェスを守る。 ずっと一緒だ。 164 00:10:52,018 --> 00:10:55,021 ジェスが王都に着くまで こうやって股の下に➡ 165 00:10:55,021 --> 00:10:57,023 ピッタリ くっついててやる。 166 00:11:00,627 --> 00:11:04,464 《かっこいいことを言おうとして スベってしまっただろうか》 167 00:11:04,464 --> 00:11:09,302 お手洗いに行くときは 離れてくださいね フフッ。 168 00:11:09,302 --> 00:11:11,304 《なんて強い子なんだ。 169 00:11:11,304 --> 00:11:15,475 残酷すぎる運命を前にしながらも 平気そうに笑って。 170 00:11:15,475 --> 00:11:18,578 そうやって秘密を 俺から隠し通した》 171 00:11:20,813 --> 00:11:25,485 《俺がジェスの運命から恐れをなして 逃げ出してしまうと思って。 172 00:11:25,485 --> 00:11:27,487 いや 違う》 173 00:11:27,487 --> 00:11:30,323 俺が豚になって この世界に来た理由➡ 174 00:11:30,323 --> 00:11:32,325 わかった気がするよ。 175 00:11:32,325 --> 00:11:34,327 本当… ですか? 176 00:11:34,327 --> 00:11:36,329 ⦅運命かもしれませんね⦆ 177 00:11:38,331 --> 00:11:41,834 ジェスと一緒に王都まで行って 人間に戻してもらう。 178 00:11:41,834 --> 00:11:44,003 そういう運命を辿るために➡ 179 00:11:44,003 --> 00:11:48,841 俺は お前が旅立つ前日に 豚小屋に現れたんじゃないのか? 180 00:11:48,841 --> 00:11:50,843 はい…。 181 00:11:50,843 --> 00:11:52,845 俺たちは運命共同体だ。 182 00:11:52,845 --> 00:11:55,682 少なくとも王都までは ずっと一緒だ。 183 00:11:55,682 --> 00:11:57,684 はい。 184 00:12:06,793 --> 00:12:09,796 《やはり相当 疲れていたみたいだな。 185 00:12:09,796 --> 00:12:12,465 イェスマ狩り… か。 186 00:12:12,465 --> 00:12:15,468 イェスマはみんな 王都を目指して旅に出る。 187 00:12:15,468 --> 00:12:20,640 とすると イェスマ狩りの仕事場は 必然的に王都周辺になる。 188 00:12:20,640 --> 00:12:24,811 つまり この旅は ゴールである王都が 近づけば近づくほど➡ 189 00:12:24,811 --> 00:12:26,813 どんどん危険になっていく》 190 00:12:26,813 --> 00:12:28,815 (葉ずれの音) 191 00:12:30,817 --> 00:12:32,819 ハア…。 192 00:12:36,656 --> 00:12:41,160 《ジェスには心の声が聞こえる。 そして考える豚がいる。 193 00:12:41,160 --> 00:12:43,830 この武器を最大限に生かして➡ 194 00:12:43,830 --> 00:12:46,100 俺たちは理不尽な運命に 立ち向かわなければならない。 195 00:12:46,100 --> 00:12:49,502 そして無事 王都に辿りつき➡ 196 00:12:49,502 --> 00:12:52,171 偉大なる王とやらを 問いただしてやるのだ。 197 00:12:52,171 --> 00:12:54,841 なぜ イェスマたちが 平和に生きることを➡ 198 00:12:54,841 --> 00:12:57,510 許してやらないのか… と。 199 00:12:57,510 --> 00:13:00,780 俺の血は今 使命感に燃えている。 200 00:13:00,780 --> 00:13:03,783 レバーもしっかり 加熱されていることだろう。 201 00:13:03,783 --> 00:13:06,953 背中で眠っている 罪のない少女のために➡ 202 00:13:06,953 --> 00:13:10,256 全身全霊 考えろ 豚!》 203 00:13:13,960 --> 00:13:15,962 ジェス 起きてくれ ジェス。 204 00:13:15,962 --> 00:13:18,131 あっ… あっ! 205 00:13:18,131 --> 00:13:22,802 すみません 私 ずっと寝てしまって。 206 00:13:22,802 --> 00:13:25,805 お前の銀の首輪 それはイェスマの➡ 207 00:13:25,805 --> 00:13:27,974 アイデンティティーなんだろ? はい。 208 00:13:27,974 --> 00:13:32,478 隠しておけば イェスマだとバレず 狙われにくくなるんじゃないか? 209 00:13:32,478 --> 00:13:35,148 確かに… そのとおりです。 210 00:13:35,148 --> 00:13:38,985 だったら スカーフを買わないか? あっ… はい! 211 00:13:38,985 --> 00:13:41,821 それと 村では 声に出さずにやり取りしよう。 212 00:13:41,821 --> 00:13:43,823 《わかりました。 213 00:13:43,823 --> 00:13:47,493 スカーフ たくさんありますね。 214 00:13:47,493 --> 00:13:49,495 どれが似合うと思います?》 215 00:13:49,495 --> 00:13:52,999 明らかに首輪を隠そうと しているようなものじゃだめだ。 216 00:13:52,999 --> 00:13:56,336 かえって イェスマだと アピールすることにもなりかねない。 217 00:13:56,336 --> 00:13:59,338 肌の色に近いのを選ぶのが いいんじゃないか。 218 00:13:59,338 --> 00:14:02,108 《あ… そうですね。 219 00:14:02,108 --> 00:14:07,613 ごめんなさい》 《あぁ… もう これだからオタクは。 220 00:14:07,613 --> 00:14:10,283 せっかくジェスが 楽しそうにしていたのに➡ 221 00:14:10,283 --> 00:14:13,619 雰囲気ぶち壊しじゃないか》 222 00:14:13,619 --> 00:14:15,621 いや待て。 223 00:14:15,621 --> 00:14:18,124 肌の色に近い スカーフなんてしてたら➡ 224 00:14:18,124 --> 00:14:20,460 近くで見たとき むしろ怪しいな。 225 00:14:20,460 --> 00:14:23,463 訂正だ。 ジェスにいちばん 似合うものを選ぼう。 226 00:14:23,463 --> 00:14:25,465 《わぁ…。 227 00:14:25,465 --> 00:14:28,634 じゃあ豚さんが選んでください》 ハッ! 228 00:14:28,634 --> 00:14:31,804 《ようやく俺の真価を 発揮するときがきたか。 229 00:14:31,804 --> 00:14:35,308 彼女いない歴イコール年齢の 眼鏡ヒョロガリクソ童貞。 230 00:14:35,308 --> 00:14:38,978 ここは チノパンとチェックシャツに関する 豊富な知識を生かして➡ 231 00:14:38,978 --> 00:14:42,482 16歳の金髪美少女に 選んでやろうじゃないか➡ 232 00:14:42,482 --> 00:14:44,484 いちばん似合うスカーフをな!》 233 00:14:46,486 --> 00:14:48,488 ウーン…。 234 00:14:48,488 --> 00:14:53,326 《どのスカーフも ジェスなら似合ってしまうな。 235 00:14:53,326 --> 00:14:56,829 今の服装は水色のワンピース。 236 00:14:56,829 --> 00:14:59,832 青系のスカーフなら遠目に見ても 目立たないだろう。 237 00:14:59,832 --> 00:15:02,602 しかし同じ色では 明らかにセンスがない。 238 00:15:02,602 --> 00:15:04,604 とすると…》 239 00:15:04,604 --> 00:15:07,106 その薄緑のやつはどうだ? 240 00:15:07,106 --> 00:15:10,943 《この きれいな 浅い湖のような色ですか?》 241 00:15:10,943 --> 00:15:12,945 そうだ。 242 00:15:12,945 --> 00:15:16,783 《どうでしょうか 似合います?》 似合ってると思うぞ。 243 00:15:16,783 --> 00:15:20,486 《ありがとうございます じゃあ買ってきますね》 244 00:15:22,955 --> 00:15:25,458 《「きれいな浅い湖」か…。 245 00:15:25,458 --> 00:15:29,295 そういう表現は 俺には一生できないだろうな》 246 00:15:29,295 --> 00:15:31,297 あっ。 247 00:15:36,636 --> 00:15:38,638 んっ。 248 00:15:47,313 --> 00:15:49,649 《お待たせしました~》 249 00:15:49,649 --> 00:15:51,851 エヘヘ…。 250 00:15:55,988 --> 00:15:57,990 あの… すみません…。 251 00:16:03,095 --> 00:16:05,097 (マーサ)んっ? 252 00:16:07,099 --> 00:16:09,769 あっ… フッ…。 253 00:16:09,769 --> 00:16:13,105 こんにちは お嬢ちゃん。 254 00:16:13,105 --> 00:16:15,608 長旅に疲れているみたいだね。 255 00:16:15,608 --> 00:16:19,111 腹が減ったろう。 えぇ… そうなんです。 256 00:16:19,111 --> 00:16:21,280 フッ… セレス! 257 00:16:21,280 --> 00:16:23,282 (セレス)はい。 (ドアの開く音) 258 00:16:23,282 --> 00:16:27,286 蒸したタオルと簡単な食事を 用意しておくれ。 んっ? 259 00:16:27,286 --> 00:16:29,956 (セレス)はい かしこまりましたです。 260 00:16:29,956 --> 00:16:32,058 あっ…。 261 00:16:36,128 --> 00:16:38,130 フゥ… お嬢ちゃん➡ 262 00:16:38,130 --> 00:16:41,968 こっから谷を渡るにしても キルトリへ抜けるにしても➡ 263 00:16:41,968 --> 00:16:45,137 次の町へ着く頃には 日が暮れちまう。 264 00:16:45,137 --> 00:16:47,640 泊まってったらどうだい? あっ…。 265 00:16:47,640 --> 00:16:50,142 ではお願いします。 266 00:16:50,142 --> 00:16:55,481 どうぞ お使いください。 ご親切にありがとうございます。 267 00:16:55,481 --> 00:16:57,650 キルトリから来たのかい? 268 00:16:57,650 --> 00:16:59,652 イェスマのお嬢ちゃん。 あっ…。 269 00:16:59,652 --> 00:17:02,088 はい。 んっ!? 270 00:17:02,088 --> 00:17:04,090 そうかそうか。 271 00:17:04,090 --> 00:17:06,592 これから王都へ向かうのかい? えぇ。 272 00:17:06,592 --> 00:17:10,930 そうなんです。 おいおい あまりに無警戒すぎないか? 273 00:17:10,930 --> 00:17:12,932 んっ… あっ!? 274 00:17:12,932 --> 00:17:15,101 ジェス 逃げるぞ。 あっ…。 275 00:17:15,101 --> 00:17:17,103 壁にイェスマの首輪がかかってる! 276 00:17:17,103 --> 00:17:21,107 《フッ… 大丈夫ですよ》 んっ? 277 00:17:21,107 --> 00:17:24,944 あちらは どなたの首輪なんですか? 278 00:17:24,944 --> 00:17:28,948 (2人)あっ…。 279 00:17:28,948 --> 00:17:32,785 あれは イースというイェスマの首輪だよ。 280 00:17:32,785 --> 00:17:36,122 この子… セレスの前任者で➡ 281 00:17:36,122 --> 00:17:41,961 ここで働いていたんだ。 それは… 残念です。 282 00:17:41,961 --> 00:17:45,631 イースさんは どちらで亡くなられたんですか? 283 00:17:45,631 --> 00:17:47,967 私たちはね➡ 284 00:17:47,967 --> 00:17:51,137 16歳の誕生日を迎えた イェスマたちを➡ 285 00:17:51,137 --> 00:17:54,307 修道院に匿ってたことがあってさ。 286 00:17:54,307 --> 00:17:57,476 もしかすると バップサスの修道院ですか? 287 00:17:57,476 --> 00:18:02,081 知っていたのかい。 そうさ この村がバップサスさ。 288 00:18:02,081 --> 00:18:07,586 そうでしたか… 実は私 キルトリン家に仕えておりまして。 289 00:18:07,586 --> 00:18:09,589 あの事件を聞いて➡ 290 00:18:09,589 --> 00:18:12,591 幼いながらも衝撃を受けたことを 覚えています。 291 00:18:12,591 --> 00:18:14,593 ありがとうございます。 292 00:18:16,762 --> 00:18:21,267 キルトリン家のイェスマだってさ。 そこに掛けてな。 293 00:18:25,938 --> 00:18:28,107 バップサスと言いますと➡ 294 00:18:28,107 --> 00:18:32,111 イースさんは火事で お亡くなりになったのですか? 295 00:18:32,111 --> 00:18:34,113 ハァ… いいや。 296 00:18:34,113 --> 00:18:37,450 イェスマ狩りに連れていかれたんだ。 あぁ…。 297 00:18:37,450 --> 00:18:41,954 きっと殺されるまでに ひどいことをされたんだろうねぇ。 298 00:18:41,954 --> 00:18:44,123 では この首輪は? 299 00:18:44,123 --> 00:18:47,627 狩人の一人が イェスマ狩りから 取り返したんだよ。 300 00:18:47,627 --> 00:18:51,130 この村の自慢さ。 そうなんですね。 301 00:18:51,130 --> 00:18:54,133 《あの首輪は 邪悪なものではなく➡ 302 00:18:54,133 --> 00:18:57,637 むしろジェスの安心する 材料となっているらしいな》 303 00:18:57,637 --> 00:19:00,239 んっ? あっ。 304 00:19:00,239 --> 00:19:02,742 《フム。 細いアキレス腱から➡ 305 00:19:02,742 --> 00:19:05,578 柔らかそうな ふくらはぎへと続く まっさらな肌。 306 00:19:05,578 --> 00:19:09,415 膝の裏のシワは ほんのり桃色だ。 ブヒブヒ》 307 00:19:09,415 --> 00:19:11,917 ハッ…。 《あっ… いかん。 308 00:19:11,917 --> 00:19:15,087 この少女もイェスマ。 思考を読めるんだった。 309 00:19:15,087 --> 00:19:17,590 俺は豚 俺は豚 俺は豚》 310 00:19:19,592 --> 00:19:21,794 《草うめぇ 草うめぇ 草うめぇ》 311 00:19:23,763 --> 00:19:26,599 あの…。 あっ。 フゴ。 312 00:19:26,599 --> 00:19:28,934 あっ? 313 00:19:28,934 --> 00:19:30,936 お願いがあります。 314 00:19:38,944 --> 00:19:43,282 ジェス さっき話してた事件なんだが いつごろのことなんだ? 315 00:19:43,282 --> 00:19:45,451 5年前の話です。 316 00:19:45,451 --> 00:19:48,954 本来 王都へ向かわなければ ならない年頃の➡ 317 00:19:48,954 --> 00:19:51,457 イェスマを匿っていた修道院が➡ 318 00:19:51,457 --> 00:19:54,627 ある夜 原因不明の火事になったんです。 319 00:19:54,627 --> 00:19:57,296 何人ものイェスマが焼け死に➡ 320 00:19:57,296 --> 00:20:00,966 外へ逃げたイェスマたちも 姿を消しました。 321 00:20:00,966 --> 00:20:05,638 イェスマ狩りにやられたのか? はい… おそらく。 322 00:20:05,638 --> 00:20:08,474 ジェスは その事件の現場を見たいんだな。 323 00:20:08,474 --> 00:20:11,977 はい。 花を供えられたらと。 324 00:20:14,647 --> 00:20:17,650 あの… ジェスさん。 んっ? 325 00:20:17,650 --> 00:20:21,320 その豚さんは お友達ですか? はい。 326 00:20:21,320 --> 00:20:24,323 実は 19歳の男の方なんですよ。 327 00:20:24,323 --> 00:20:27,993 眼鏡ヒョロガリクソ童貞です。 どうぞよろしく。 328 00:20:27,993 --> 00:20:31,497 えっ 人間… なんですか? えぇ。 329 00:20:31,497 --> 00:20:34,500 どういうわけか 豚になってしまったようで。 330 00:20:34,500 --> 00:20:36,502 あっ…。 331 00:20:36,502 --> 00:20:39,004 王都に着いたら魔法使いの方に➡ 332 00:20:39,004 --> 00:20:41,006 戻してもらおうと 思っているんです。 333 00:20:41,006 --> 00:20:43,509 そうなんですね…。 334 00:20:43,509 --> 00:20:47,847 私の脚を見て いろいろなことを 考えておられたものですから➡ 335 00:20:47,847 --> 00:20:52,184 おかしな豚さんだなと 思っていたんです。 ンゴッ! 336 00:20:52,184 --> 00:20:56,355 見境のない豚さんですね。 面目ない。 337 00:20:56,355 --> 00:20:59,358 今後はジェスの脚だけ見て 生きることにする。 338 00:20:59,358 --> 00:21:01,360 フフッ…。 339 00:21:03,295 --> 00:21:08,467 《本当に この薄緑で よかったのだろうか》 340 00:21:08,467 --> 00:21:11,303 《豚さんの心の声には➡ 341 00:21:11,303 --> 00:21:14,473 他の人と違った 安心感があります》 342 00:21:14,473 --> 00:21:17,143 《もう少し じっくりと考えたほうが➡ 343 00:21:17,143 --> 00:21:19,145 よかったのかもしれない》 344 00:21:19,145 --> 00:21:22,982 《これほどまでに 表の声と かい離がなくて》 345 00:21:22,982 --> 00:21:27,486 《ジェスたそは お顔が究極的に かわいいから 非モテオタク的には➡ 346 00:21:27,486 --> 00:21:30,990 どれも似合っているように 見えてしまう。 しかしだ➡ 347 00:21:30,990 --> 00:21:33,993 俺は そこに甘えて よかったのだろうか? 348 00:21:33,993 --> 00:21:37,163 かわいい お顔を 最高に際立たせるような色が➡ 349 00:21:37,163 --> 00:21:39,331 他にあったのではないか?》 350 00:21:39,331 --> 00:21:44,837 《これほどまでに優しい内面に 私は触れたことがありません》 351 00:21:44,837 --> 00:21:48,340 あの… 豚さん。 352 00:21:48,340 --> 00:21:52,011 スカーフ 選んでくださって ありがとうございました。 353 00:21:52,011 --> 00:21:54,013 大した手間じゃない。 354 00:21:56,348 --> 00:22:00,452 《皆さん 普通は 裏表を持っているものです。 355 00:22:00,452 --> 00:22:02,955 もちろん 私だって》 356 00:22:02,955 --> 00:22:05,457 (セレス)ジェスさん 豚さん。 あっ。 357 00:22:05,457 --> 00:22:09,261 ここを もう少し歩けば 修道院の焼け跡です。 358 00:22:13,299 --> 00:22:18,137 《私のことを思ってくださる人が 確かにいるのだという➡ 359 00:22:18,137 --> 00:22:20,139 証し》 360 00:22:24,643 --> 00:22:28,047 《このスカーフは宝物です》