1 00:00:01,702 --> 00:00:06,306 ♬「何度でも 何度でも叫ぶ」 2 00:00:06,306 --> 00:00:14,615 ♬「この暗い夜の怪獣になっても」 3 00:00:14,615 --> 00:00:20,387 ♬「ここに残しておきたいんだよ」 4 00:00:20,387 --> 00:00:22,389 ♬「この秘密を」 5 00:00:25,125 --> 00:00:28,996 ♬「だんだん食べる」 6 00:00:28,996 --> 00:00:35,736 ♬「赤と青の星々 未来から過去を」 7 00:00:35,736 --> 00:00:39,606 ♬「順々に食べる」 8 00:00:39,606 --> 00:00:47,714 ♬「何十回も噛み潰し 溶けたなら飲もう」 9 00:00:47,714 --> 00:00:52,319 ♬「丘の上で星を見ると」 10 00:00:52,319 --> 00:00:58,125 ♬「感じるこの寂しさも」 11 00:00:58,125 --> 00:01:00,994 ♬「朝焼けで」 12 00:01:00,994 --> 00:01:07,701 ♬「手が染まる頃にはもう忘れてるんだ」 13 00:01:07,701 --> 00:01:15,042 ♬「この世界は好都合に未完成」 14 00:01:15,042 --> 00:01:17,945 ♬「だから知りたいんだ」 15 00:01:17,945 --> 00:01:25,619 ♬「でも怪獣みたいに遠く遠く叫んでも」 16 00:01:25,619 --> 00:01:29,423 ♬「また消えてしまうんだ」 17 00:01:41,802 --> 00:01:44,404 ⚟(ノック ドアが開く音) 18 00:01:44,404 --> 00:01:47,407 邪魔するぞ。 バデーニさん。 19 00:01:49,910 --> 00:01:53,747 唐突だが 研究には納屋を使わせてもらう。 20 00:01:53,747 --> 00:01:56,283 教会での作業は避けたい。 21 00:01:56,283 --> 00:02:00,687 その間 君は別の納屋を使… ん? 22 00:02:00,687 --> 00:02:03,590 ⚟(足音) (バデーニ)なんだ これは? 23 00:02:03,590 --> 00:02:05,959 あ いや…。 24 00:02:05,959 --> 00:02:10,163 文字を勉強しようと思って ヨレンタさんに教わったんです。 25 00:02:10,163 --> 00:02:13,934 は? おいおい全く…。 26 00:02:13,934 --> 00:02:16,370 何してるんだ ヨレンタさんは。 27 00:02:16,370 --> 00:02:19,873 君のような身分の者に 文字を教えるなんて。 28 00:02:19,873 --> 00:02:22,376 え。 ハァ…。 29 00:02:22,376 --> 00:02:27,047 君はわかってないようだがな 大半の人間が読み書きできないのは➡ 30 00:02:27,047 --> 00:02:29,783 いいことなんだよ。 あ…! 31 00:02:29,783 --> 00:02:32,686 文字を扱うというのは特殊な技能➡ 32 00:02:32,686 --> 00:02:36,056 言葉を残すというのは重い行為だ。 33 00:02:36,056 --> 00:02:40,727 一定の資質と最低限の教養が要求される。 34 00:02:40,727 --> 00:02:45,699 誰もが簡単に文字を使えたら ゴミのような情報であふれ返ってしまう。 35 00:02:45,699 --> 00:02:48,468 そんな世の中 目も当てられん。 36 00:02:48,468 --> 00:02:50,904 そ それは…。 37 00:02:50,904 --> 00:02:54,808 だいたい なんで君が文字を使える必要が あるんだ。 38 00:02:54,808 --> 00:02:57,611 あの ちょっと…➡ 39 00:02:57,611 --> 00:03:00,614 フ… 本を書きたくて。 40 00:03:00,614 --> 00:03:02,749 は? 41 00:03:02,749 --> 00:03:06,253 もちろん 誰かに発表する予定も場もないんで➡ 42 00:03:06,253 --> 00:03:09,156 まぁ 日記みたいなものというか…。 43 00:03:09,156 --> 00:03:12,359 身元は明かしませんけど。 は?? 44 00:03:12,359 --> 00:03:15,929 なんか 今回の件を書き出してみたくて。 45 00:03:15,929 --> 00:03:19,833 は???もちろん 専門的な ことは書けないので➡ 46 00:03:19,833 --> 00:03:22,702 物語形式というか。 47 00:03:22,702 --> 00:03:25,205 ちょ ちょっと待ってくれ。 48 00:03:26,673 --> 00:03:31,178 いろいろ言いたいことはあるが なんというか…。 49 00:03:31,178 --> 00:03:33,113 なんでそんなことをする? 50 00:03:33,113 --> 00:03:35,048 は…? 51 00:03:35,048 --> 00:03:38,518 だから ずっと文字も読めなかった君が➡ 52 00:03:38,518 --> 00:03:41,054 なんで足がつくかもしれん 危険まで冒して➡ 53 00:03:41,054 --> 00:03:45,325 ここ数か月のことを 書き出したくなるんだよ。 急に! 54 00:03:45,325 --> 00:03:49,029 えっ あの… そ その…。 55 00:03:51,131 --> 00:03:55,736 もういい。 どうせ君は まともな文章は書けんだろうし➡ 56 00:03:55,736 --> 00:04:00,140 書けても完成したら私が燃やすから 勝手にしたまえ。 57 00:04:00,140 --> 00:04:03,543 これ以上話すと 私までおかしくなりそうだ。 58 00:04:03,543 --> 00:04:05,879 悪いが退出してくれるか? 59 00:04:05,879 --> 00:04:08,181 …すいません。 60 00:04:09,816 --> 00:04:13,987 (子供)クラボフスキさん 虹って なんで出るんですかー? 61 00:04:13,987 --> 00:04:19,693 (クラボフスキ)それはね 雨に耐えたみんなを 神が祝福してくださってるからだよ。 62 00:04:19,693 --> 00:04:21,628 (子供たち)へぇ~! 63 00:04:21,628 --> 00:04:25,499 じゃあ なんで虹って あんな色してるんですか? 64 00:04:25,499 --> 00:04:29,369 えーと… それは…➡ 65 00:04:29,369 --> 00:04:31,605 その…。 66 00:04:31,605 --> 00:04:33,607 ⚟(ノック) 67 00:04:35,275 --> 00:04:37,377 あの バデーニさん…。 68 00:04:39,713 --> 00:04:41,715 え⁉ バデーニさん⁉ 69 00:04:43,383 --> 00:04:46,353 っ… ん…。 70 00:04:46,353 --> 00:04:50,157 あぁ…すいません 最近ちょっと寝不足で。 71 00:04:50,157 --> 00:04:53,827 だ 大丈夫ですか。 ええ。 72 00:04:53,827 --> 00:04:57,297 あの… 起き抜けに 申し訳ないですが。 73 00:04:57,297 --> 00:05:02,002 ん…?虹が何故あんな色してるか 知ってます? 74 00:05:02,002 --> 00:05:06,339 さっき子供たちから質問されたんですが 答えられなくて。 75 00:05:06,339 --> 00:05:09,009 それ ただで教えろと? 76 00:05:09,009 --> 00:05:11,778 あ… わかりました。 77 00:05:11,778 --> 00:05:15,115 では追加の紙とインクを 手配します。 78 00:05:15,115 --> 00:05:17,584 んっ… いいでしょう。 79 00:05:17,584 --> 00:05:21,121 (やや早口で)エピクロス曰く 「そもそも虹は水分を含んだ大気に➡ 80 00:05:21,121 --> 00:05:24,925 太陽から光が照射するがために生じる」 らしく また➡ 81 00:05:24,925 --> 00:05:28,929 「光と大気が特殊な仕方で結合し 虹のさまざまな特色性を➡ 82 00:05:28,929 --> 00:05:32,365 全体にしろ部分にしろ作り出す」 こともあるとか。 83 00:05:32,365 --> 00:05:36,269 そして この時生じた光が 「さらに反射するがために周囲の大気は➡ 84 00:05:36,269 --> 00:05:41,808 その異なった部分に光の照射を受け 結果として あのような彩色をとる」➡ 85 00:05:41,808 --> 00:05:44,744 というわけです。 あ…。 86 00:05:44,744 --> 00:05:46,947 ありがとうございます。 87 00:05:48,648 --> 00:05:54,387 あっ… これ どうやって子供たちに 説明したら伝わりますか? 88 00:05:54,387 --> 00:05:57,190 知りません。 89 00:05:57,190 --> 00:05:59,192 まだ何か? 90 00:05:59,192 --> 00:06:03,863 バデーニさん エピクロス読んだことあるんですか? 91 00:06:03,863 --> 00:06:07,200 ええ 最近ちょっときっかけが。 92 00:06:07,200 --> 00:06:09,870 もちろん 異教徒の批判のために読んだんで➡ 93 00:06:09,870 --> 00:06:14,174 彼の原子論は無神論的だ とか 言わないでくださいよ。 94 00:06:14,174 --> 00:06:17,577 (クラボフスキ)では… ルクレティウスは読んだことあります?➡ 95 00:06:17,577 --> 00:06:21,081 あのエピクロス主義者の。 …ええ まあ。 96 00:06:21,081 --> 00:06:24,584 本当ですか⁉ 何を隠そう私➡ 97 00:06:24,584 --> 00:06:29,155 ルクレティウスが読みたくて 修道院に入ったところもあるんです! 98 00:06:29,155 --> 00:06:32,058 結局は読めずじまいでしたが…。 99 00:06:32,058 --> 00:06:36,897 もちろん私も教会の役に立てるために 興味を持ちましたよ! 100 00:06:36,897 --> 00:06:40,600 はぁ。 しかし何故 ルクレティウスなど? 101 00:06:40,600 --> 00:06:44,070 数々の賢者が引用してるからですよ。 102 00:06:44,070 --> 00:06:49,042 ルクレティウスの詩は なんとも その… 感動的だと。 103 00:06:49,042 --> 00:06:53,947 あっ… 当然 異教徒の書いたものですから 警戒はしてますよ。 104 00:06:55,682 --> 00:07:00,253 読んだことがあるのなら どんな内容か… 是非一節だけでも。 105 00:07:00,253 --> 00:07:03,290 お断りします。 106 00:07:03,290 --> 00:07:05,759 ハァ… あのね➡ 107 00:07:05,759 --> 00:07:09,629 私は前提として 知識の共有に興味はありません。 108 00:07:09,629 --> 00:07:12,065 というか 嫌いだ。 109 00:07:12,065 --> 00:07:16,903 並の人間が欲すると 悲劇を招きかねない。 う…。 110 00:07:16,903 --> 00:07:21,841 そもそも それを扱うのに相応しい資格を 持ち合わせていない普通の人に➡ 111 00:07:21,841 --> 00:07:24,444 知識なんて必要ないでしょ。 112 00:07:24,444 --> 00:07:26,379 そ そんな…。⚟(椅子に座る音) 113 00:07:26,379 --> 00:07:28,315 では。 114 00:07:28,315 --> 00:07:30,583 ん…。 115 00:07:30,583 --> 00:07:32,652 (大きな足音) 116 00:07:32,652 --> 00:07:36,189 全く! バデーニさんの態度には困る! 117 00:07:36,189 --> 00:07:40,026 あんな傲慢 教会の信徒としてどうなんだ!➡ 118 00:07:40,026 --> 00:07:44,264 「資格のない普通の人」なんて発想は 差別的すぎる!➡ 119 00:07:44,264 --> 00:07:46,866 人には いろんな役割があるんだ! 120 00:07:50,036 --> 00:07:56,476 <いや… そう考えたらバデーニさんにも バデーニさんの役割がある。➡ 121 00:07:56,476 --> 00:08:00,947 気にくわないからって 隣人に こんなに怒るなんて…➡ 122 00:08:00,947 --> 00:08:04,517 私も信徒として まだまだだな。➡ 123 00:08:04,517 --> 00:08:09,990 思い出せ… 私の役割は村人の信仰を支えること。➡ 124 00:08:09,990 --> 00:08:12,892 それだけに集中しろ。➡ 125 00:08:12,892 --> 00:08:17,731 そうだ。 今さら私に 異教ルクレティウスの知識なんて➡ 126 00:08:17,731 --> 00:08:20,367 全く必要ないじゃないか。➡ 127 00:08:20,367 --> 00:08:23,269 求める必要など…> 128 00:08:23,269 --> 00:08:25,739 ⚟(老人A) クラボフスキさん?っ! 129 00:08:25,739 --> 00:08:29,342 ああ… すみません。 ボーッとしちゃって。 130 00:08:29,342 --> 00:08:33,046 (老女)忙しく働いて くださってる証拠ですね。 131 00:08:33,046 --> 00:08:37,283 ああ そういや みんな知ってるかい? 132 00:08:37,283 --> 00:08:40,587 バデーニさんの 顔の傷の話。 133 00:08:40,587 --> 00:08:44,224 (老人B)おお! あの傷ずっと気になってたんだよ! 134 00:08:44,224 --> 00:08:46,593 っ! (老女)是非聞かせてください。 135 00:08:46,593 --> 00:08:48,928 (老人A)そうこなきゃ。➡ 136 00:08:48,928 --> 00:08:52,298 これはバデーニさんが まだ出家する前➡ 137 00:08:52,298 --> 00:08:55,935 とある私塾に通ってた頃の話だ。➡ 138 00:08:55,935 --> 00:09:01,207 そこにはバデーニさんと 共同研究や情報交換をしたりする➡ 139 00:09:01,207 --> 00:09:04,043 親友も通ってたらしい。 140 00:09:04,043 --> 00:09:08,415 (老人B)へぇ あのバデーニさんにも 友人がいるなんてな。 141 00:09:08,415 --> 00:09:10,850 (老人A)だけど そんなある日➡ 142 00:09:10,850 --> 00:09:14,654 その親友に 研究成果を盗まれたらしいんだ。 143 00:09:14,654 --> 00:09:18,091 っ! (老人A)驚くのは ここからだよ。➡ 144 00:09:18,091 --> 00:09:22,529 バデーニさんが そのことを主張したら なんと逆上されて➡ 145 00:09:22,529 --> 00:09:25,265 決闘を申し込まれたらしいんだ。 146 00:09:25,265 --> 00:09:27,333 ま まさか…。 147 00:09:27,333 --> 00:09:30,336 (老人A)そう バデーニさんは生きてる。 148 00:09:32,038 --> 00:09:38,344 (老人A)つまり その決闘で 仲のよかった友人を殺したってことさ。➡ 149 00:09:38,344 --> 00:09:42,348 あの傷は その時できたものなんだと。 150 00:09:42,348 --> 00:09:46,753 なんてことだ… そんな話 誰から。 151 00:09:46,753 --> 00:09:51,958 本人からだよ。 傷のことを聞いたら教えてくれた。 152 00:09:51,958 --> 00:09:55,261 (老女)ひ… 人殺しが聖職者に? 153 00:09:55,261 --> 00:09:58,231 (老人A)出家前の決闘は特殊な例で➡ 154 00:09:58,231 --> 00:10:03,002 聖職に就く論理的正当性は あるとかなんとか。 155 00:10:03,002 --> 00:10:05,905 (老人B)なんにせよ 恐ろしい話だ。 156 00:10:05,905 --> 00:10:08,708 (老女)ええ… バデーニさんには今までどおり➡ 157 00:10:08,708 --> 00:10:11,111 籠もっててもらいましょう。 158 00:10:17,550 --> 00:10:19,552 ⚟(ドアが開く音) 159 00:10:21,287 --> 00:10:23,990 ⚟(ドアが閉まる音 バデーニの足音) 160 00:10:27,193 --> 00:10:30,330 (クラボフスキ)あの。 …ん? 161 00:10:30,330 --> 00:10:34,067 掘り返すようで申し訳ないんですけど…➡ 162 00:10:34,067 --> 00:10:37,937 聞きました。 その傷の話。 163 00:10:37,937 --> 00:10:40,340 大変… 辛かったでしょう。 164 00:10:40,340 --> 00:10:44,010 まぁ 彼とは仲よかったですから。 165 00:10:44,010 --> 00:10:46,713 何故ですか? ん…? 166 00:10:46,713 --> 00:10:50,250 何故 そんな悲劇を味わったのに➡ 167 00:10:50,250 --> 00:10:55,522 学問とか研究とか そういうことから離れないんですか? 168 00:10:55,522 --> 00:11:01,361 神が人間に与えてくださった 可能性を 自ら放棄したくないからです。 169 00:11:01,361 --> 00:11:03,363 っ…! 170 00:11:03,363 --> 00:11:09,903 それによって私は 歴史的な特別な瞬間に 立ち合えるかもしれないですし。 171 00:11:09,903 --> 00:11:14,407 …し しかし あなたが持っている 行きすぎた好奇心や➡ 172 00:11:14,407 --> 00:11:18,711 必要以上に多くを知ろうとする 欲望には際限がない。 173 00:11:18,711 --> 00:11:21,181 いずれは それ自体が目的化して➡ 174 00:11:21,181 --> 00:11:24,817 非道徳的なことまで 知ろうとするようになる。 175 00:11:24,817 --> 00:11:29,188 すでにこの世は非道徳的なことで あふれ返っていませんか? 176 00:11:29,188 --> 00:11:31,824 あ…! 177 00:11:31,824 --> 00:11:34,193 クラボフスキさん。 178 00:11:34,193 --> 00:11:39,098 そういう世界を変えるために 何が必要だと思いますか? 179 00:11:39,098 --> 00:11:42,035 え…。 180 00:11:42,035 --> 00:11:44,537 知 です。 181 00:11:53,479 --> 00:11:55,848 知 か…。 182 00:11:55,848 --> 00:12:00,720 だからこそ 適任者だけが 丁寧に扱うべきなんですよアレは。 183 00:12:00,720 --> 00:12:05,625 ま 私は世のため云々に興味ありませんが。 184 00:12:05,625 --> 00:12:07,627 ん…。 185 00:12:09,395 --> 00:12:11,698 ⚟(老人A)おぉ クラボフスキさん。 ん? 186 00:12:11,698 --> 00:12:14,601 教会を出るなんて珍しい。 187 00:12:14,601 --> 00:12:17,570 ええ ちょっと街の図書館へ。 188 00:12:17,570 --> 00:12:20,473 ⚟(老人A)図書館? 何か用が? 189 00:12:20,473 --> 00:12:26,279 いえ何も。 ただ 久々に用もないものを 知ってみようかと思って。 190 00:12:28,948 --> 00:12:33,620 えー⁉ 今日に限って緊急閉館⁉ 191 00:12:33,620 --> 00:12:35,688 一体何故…? 192 00:12:35,688 --> 00:12:41,694 まぁ… ここへ来るという選択に後悔はない…➡ 193 00:12:41,694 --> 00:12:44,697 ということにしよう… うん。 194 00:12:44,697 --> 00:12:47,233 お? ん? 195 00:12:47,233 --> 00:12:59,812 ♬~ 196 00:12:59,812 --> 00:13:03,216 やはりあの石箱に従うと齟齬が出る。 197 00:13:03,216 --> 00:13:07,620 チッ 一体何故だ… 何故 真円にならない。 198 00:13:16,562 --> 00:13:19,165 (バデーニ)オクジー君。 ん? 199 00:13:19,165 --> 00:13:22,068 今日のパンだ。 あぁ どうも。 200 00:13:24,671 --> 00:13:27,507 そういえば… 聞かれました? 201 00:13:27,507 --> 00:13:31,711 ン? (オクジー)ピャスト伯が… 天に帰られたって。 202 00:13:31,711 --> 00:13:36,482 っ! …そうか。 では 祈らねばな。 203 00:13:36,482 --> 00:13:42,922 ええ…。 それで 組織の再編成とかで ヨレンタさんも大忙しらしくて。 204 00:13:42,922 --> 00:13:49,796 だろうな。 どうあれ彼女は この研究を離脱する定めだったわけか。 205 00:13:49,796 --> 00:13:53,066 それはさておき ちょっと頼みがある。 206 00:13:53,066 --> 00:13:55,401 明日から地下通路を掘ってくれ。 207 00:13:55,401 --> 00:13:59,172 えっ。 納屋と教会を繋ぐものだ。 208 00:13:59,172 --> 00:14:02,375 あと いざという時の 脱出口も作ってくれ。 209 00:14:02,375 --> 00:14:04,377 あ… はい。 210 00:14:06,079 --> 00:14:08,448 じゃ 私は研究に戻る。 211 00:14:08,448 --> 00:14:10,983 (オクジー)…あの。 212 00:14:10,983 --> 00:14:15,355 その仕事と引き換えに って言っちゃなんですが…➡ 213 00:14:15,355 --> 00:14:17,990 俺も お願いしたいことが。 214 00:14:17,990 --> 00:14:24,764 ほう ちょうど研究が停滞して 機嫌の悪い今の私に交渉とは聡明だな。 215 00:14:24,764 --> 00:14:28,367 えっ。 まぁいい 言ってみろ。 216 00:14:28,367 --> 00:14:32,371 あ… 配給のパンを 増やしてもらえませんか? 217 00:14:34,273 --> 00:14:38,478 あの…。 (バデーニ) ふん 貧民に与える分を増やすためか。 218 00:14:38,478 --> 00:14:41,714 っ! 気付かないとでも思ったか。 219 00:14:41,714 --> 00:14:46,586 こっそり分け与えてたんだろ。 前にも言ったが無駄だぞ。 220 00:14:46,586 --> 00:14:49,389 それで天国に近づくとは限らない。 221 00:14:49,389 --> 00:14:51,457 あ…。 222 00:14:51,457 --> 00:14:56,162 ま 寄付をやめろとは言わないが パンは増やせない。 223 00:14:56,162 --> 00:14:59,165 配給の総量は決まってるからな。 224 00:15:06,239 --> 00:15:11,577 (ペンを走らせる音) 225 00:15:11,577 --> 00:15:14,247 ハ…! これでもダメか…。 226 00:15:14,247 --> 00:15:17,116 チッ やはり誤差が…。 227 00:15:17,116 --> 00:15:19,952 ピャスト伯の記録と合わん。 228 00:15:19,952 --> 00:15:23,823 何故だ。 発想に落ち度はないはずだぞ…。 229 00:15:23,823 --> 00:15:29,529 太陽が中心なら惑星は逆行せず 軌道は完璧な真円にならなければ…。 230 00:15:31,264 --> 00:15:35,501 いや ピャスト伯と言えども やはり人だ。 231 00:15:35,501 --> 00:15:37,904 完璧な記録ではないのかもしれない。 232 00:15:39,939 --> 00:15:43,309 そもそも彼は天動説と決めつけていた。 233 00:15:43,309 --> 00:15:46,913 その思い込みが 正確さを歪めたのかもしれん。 234 00:15:49,615 --> 00:15:53,553 発想ではなく 記録に誤りが…。 235 00:15:53,553 --> 00:15:55,721 ん? 236 00:15:55,721 --> 00:15:58,291 なんだ このネックレス。 237 00:15:58,291 --> 00:16:00,760 オクジー君の…。 238 00:16:00,760 --> 00:16:07,600 ♬~ 239 00:16:07,600 --> 00:16:11,204 仮に中心は二つでも… 円は描ける。 240 00:16:11,204 --> 00:16:13,506 その際 軌道は…。 241 00:16:15,441 --> 00:16:17,910 楕円 か――。 242 00:16:17,910 --> 00:16:21,214 (早口で)石箱のおかげで 火星の公転周期はわかってる。 243 00:16:21,214 --> 00:16:26,018 それを応用して 恒星天と火星 恒星天と太陽の二直線の交点で➡ 244 00:16:26,018 --> 00:16:28,454 地球の位置は求められるんじゃ…。 245 00:16:28,454 --> 00:16:32,325 その地球軌道をもとに… 任意の地球から見た火星と➡ 246 00:16:32,325 --> 00:16:38,631 そこから1.88年後の地球から見た火星の 二つの情報から 火星の軌道を…。 247 00:16:42,034 --> 00:16:44,036 ――ッ! 248 00:16:51,043 --> 00:16:53,980 オ゛ェ゛ッ! オヴッ ヴェッ! カハッ…! 249 00:16:53,980 --> 00:16:58,251 ハッ…! ハァ… ハァ… ハァ…。 250 00:16:58,251 --> 00:17:00,186 …よし。 251 00:17:00,186 --> 00:17:03,756 よしッ! よしッ! よしッ! よしッ! よしッ! よしッ! 252 00:17:03,756 --> 00:17:07,260 (壁を打つ音) よしッ! よしッ! よしッ! よしッ! よしッ! よしッ! 253 00:17:07,260 --> 00:17:10,763 よしッ!! ハァッ… ハァ…。 254 00:17:13,466 --> 00:17:17,169 神様 合ってるかもしれません! 255 00:17:19,438 --> 00:17:21,073 ⚟(ドアが閉まる音) 256 00:17:21,073 --> 00:17:25,444 フッ フフフ… この方法で進めれば…。 257 00:17:25,444 --> 00:17:29,115 しっかりと検算し 論文として整形して…。 258 00:17:29,115 --> 00:17:31,117 ん? 259 00:17:37,356 --> 00:17:41,227 これはオクジー君の書いてる本 とやらか。 260 00:17:41,227 --> 00:17:45,698 全く… 貴族でもないのに寄付したり➡ 261 00:17:45,698 --> 00:17:48,968 知識階級でもないのに執筆したり➡ 262 00:17:48,968 --> 00:17:52,805 やはり世俗の者が考えることはわからん。 263 00:17:52,805 --> 00:18:06,218 ♬~ 264 00:18:09,255 --> 00:18:11,257 あ…。 265 00:18:14,660 --> 00:18:18,531 いつも髪を結んだ大男が パンを与えてるだろう。 266 00:18:18,531 --> 00:18:21,434 え… あ…。 267 00:18:21,434 --> 00:18:26,572 今後も そいつが パンを与え続けると約束しよう。 268 00:18:26,572 --> 00:18:28,541 その代わり➡ 269 00:18:28,541 --> 00:18:31,978 ちょっと貸してほしいものがある。 270 00:18:31,978 --> 00:18:35,247 も 物… ない。 271 00:18:35,247 --> 00:18:37,583 いや――。 272 00:18:37,583 --> 00:18:41,087 貸してほしいのは ココだ。 273 00:18:41,087 --> 00:18:44,390 ど… どこ…? 274 00:18:44,390 --> 00:18:48,961 (鐘の音) 275 00:18:48,961 --> 00:18:51,397 配給だ。 276 00:18:51,397 --> 00:18:54,900 アレ? いつもより多いんですが。 277 00:18:54,900 --> 00:18:58,371 (バデーニ)私は少食だったことを思い出した。 278 00:18:58,371 --> 00:19:00,973 明日からも粛々と穴を掘ってくれ。 279 00:19:00,973 --> 00:19:03,042 あ…? 280 00:19:03,042 --> 00:19:26,966 ♬~ 281 00:19:26,966 --> 00:19:31,170 (鳥のさえずり) 282 00:19:32,772 --> 00:19:34,707 あ…?➡ 283 00:19:34,707 --> 00:19:39,345 珍しいですね この時間に納屋にいないなんて。 284 00:19:39,345 --> 00:19:42,248 研究は? オクジー君。 285 00:19:42,248 --> 00:19:45,051 今日から あの納屋に戻っていいぞ。 286 00:19:46,919 --> 00:19:48,921 え? 287 00:19:50,589 --> 00:19:52,858 終わった。 288 00:19:52,858 --> 00:19:54,860 は? 289 00:20:03,369 --> 00:20:06,172 地動説が完成した。 290 00:20:17,216 --> 00:20:19,151 (レフ)いよいよ今日からか。 291 00:20:19,151 --> 00:20:22,722 (シモン)あぁ… 正直 気が重いな。 292 00:20:22,722 --> 00:20:25,024 ま まァ… 頑張ろうぜ! 293 00:20:25,024 --> 00:20:27,226 ⚟(助祭)司教様がいらっしゃいます。 294 00:20:38,604 --> 00:20:43,008 こんにちは 親愛なる兄弟たちよ。 295 00:20:43,008 --> 00:20:46,445 知ってのとおり 諸君らは今日から――➡ 296 00:20:46,445 --> 00:20:50,249 異端審問の職に就く。 297 00:20:50,249 --> 00:20:54,220 その前に 私から一つ 話したいことがある。 298 00:20:54,220 --> 00:20:58,624 この職の重要性についてだ。 299 00:20:58,624 --> 00:21:05,231 数百年前―― 西ローマ崩壊後 社会は秩序を失った。 300 00:21:05,231 --> 00:21:10,469 混乱と暴力がはびこり 権力が生まれては消え➡ 301 00:21:10,469 --> 00:21:14,340 バラバラな人類を統一する術はなかった。 302 00:21:14,340 --> 00:21:18,811 誰も彼もが皆 大切なものを奪われた。 303 00:21:18,811 --> 00:21:24,583 そんな狂気の沙汰に唯一 希望の光を照らしたのが➡ 304 00:21:24,583 --> 00:21:29,054 我々の帰依する教会だ。 305 00:21:29,054 --> 00:21:35,261 社会に文化と道徳を布教し 日々に愛と救済を与えた。 306 00:21:35,261 --> 00:21:39,064 教会により 人々は繋がる。 307 00:21:39,064 --> 00:21:45,504 この素晴らしき行いに 文句をつける者がいようか? 308 00:21:45,504 --> 00:21:48,207 驚くことに いるのだ。 309 00:21:48,207 --> 00:21:51,510 それこそが異教 異端者だ。 310 00:21:51,510 --> 00:21:55,848 奴らは信仰を失い 破壊に存在意義を覚える。 311 00:21:55,848 --> 00:22:00,352 履き違えた自由を謳い 道徳や倫理を砕き➡ 312 00:22:00,352 --> 00:22:06,125 救いと希望を放棄し 人々を分断する。 313 00:22:06,125 --> 00:22:10,196 我々は彼らを――。 314 00:22:10,196 --> 00:22:13,265 異端者を「救わねば」ならん。 315 00:22:13,265 --> 00:22:17,269 彼らは悪魔に唆された被害者だ。 316 00:22:17,269 --> 00:22:21,140 彼らの魂は死後 地獄へ行く。 317 00:22:21,140 --> 00:22:25,611 こんな悲惨なことはない。 君らの仕事により➡ 318 00:22:25,611 --> 00:22:29,381 異端者を悔悛へと 導いてほしい。 319 00:22:29,381 --> 00:22:31,817 今を生きる我々は➡ 320 00:22:31,817 --> 00:22:35,254 かつての錯乱した時代を 見たことはない。 321 00:22:35,254 --> 00:22:41,627 しかしだからこそ 二度とそんな時代を 訪れさせるわけにはいかない。 322 00:22:41,627 --> 00:22:44,196 その責任がある。 323 00:22:44,196 --> 00:22:48,834 家族のため 未来のため 信徒のため➡ 324 00:22:48,834 --> 00:22:52,238 そして異端者のため――➡ 325 00:22:52,238 --> 00:22:54,506 君らが必要だ。 326 00:22:54,506 --> 00:23:00,679 その仕事で 君らの情熱で 全人類を救ってくれ。 327 00:23:00,679 --> 00:23:02,982 頼む。 328 00:23:04,984 --> 00:23:08,888 (レフ)俺 ちょっと意識が甘かった。 反省しなきゃ。 329 00:23:08,888 --> 00:23:14,059 (シモン)ああ 僕もだ。 弱音を吐いてる場合じゃないよな。 330 00:23:14,059 --> 00:23:18,998 だな。 身を粉にして この仕事を全うしよう。 331 00:23:18,998 --> 00:23:21,500 ⚟(ノヴァク)お~い。 (2人)…あ? 332 00:23:21,500 --> 00:23:27,306 どうも。 君らの実習を担当するノヴァクだ。 333 00:23:27,306 --> 00:23:30,042 よろしく~。 334 00:23:30,042 --> 00:23:45,424 ♬~ 335 00:23:45,424 --> 00:23:49,295 ♬「描き始めた あなたは小さく」 336 00:23:49,295 --> 00:23:53,165 ♬「ため息をした あんなに大きく」 337 00:23:53,165 --> 00:23:57,069 ♬「波打つ窓の光の束が」 338 00:23:57,069 --> 00:24:02,474 ♬「あなたの横顔に跳ねている」 339 00:24:04,877 --> 00:24:08,714 ♬「僕の体は雨の集まり」 340 00:24:08,714 --> 00:24:12,618 ♬「貴方の指は春の木漏れ日」 341 00:24:12,618 --> 00:24:16,689 ♬「紙に弾けたインクの影が」 342 00:24:16,689 --> 00:24:21,694 ♬「僕らの横顔を描写している」 343 00:24:23,562 --> 00:24:32,004 ♬「長い夢を見た 僕らは気球にいた」 344 00:24:32,004 --> 00:24:40,279 ♬「遠い国の誰かが月と見間違ったらいい」 345 00:24:40,279 --> 00:24:48,487 ♬「あの海を見たら 魂が酷く跳ねた」 346 00:24:48,487 --> 00:24:53,125 ♬「白い魚の群れに」 347 00:24:53,125 --> 00:24:56,028 ♬「あなたは見惚れている」