1 00:00:03,170 --> 00:00:07,374 (若きオクジー) <いつ見ても 空の世界は綺麗だ。➡ 2 00:00:07,374 --> 00:00:09,676 …なのに> 3 00:00:13,180 --> 00:00:26,627 ♬~ 4 00:00:26,627 --> 00:00:31,498 なのに… 我々の世界は なんで汚れているのですか? 5 00:00:31,498 --> 00:00:35,636 それは地球が宇宙の中心だからだよ。 6 00:00:35,636 --> 00:00:39,106 それなら 特別な感じで良い気が…。 7 00:00:39,106 --> 00:00:44,611 中心というのは 一番“底辺”ということだよ。 8 00:00:44,611 --> 00:00:48,215 重い物は地球上のどこであろうと➡ 9 00:00:48,215 --> 00:00:51,051 常に下に向かって落ちる。 10 00:00:51,051 --> 00:00:56,657 何故なら地球の中心が 宇宙の一番底にあるからだ。 11 00:00:56,657 --> 00:01:00,260 神様が そうお創りになられた。 12 00:01:00,260 --> 00:01:02,195 (オクジー)何故ですか? 13 00:01:02,195 --> 00:01:05,566 (司祭)地球は位が低く穢れていて➡ 14 00:01:05,566 --> 00:01:11,371 そこに住む人類は 無力で罪深いと思い知らせるためだよ。 15 00:01:11,371 --> 00:01:15,108 君の見上げる夜空が いつも綺麗なのは➡ 16 00:01:15,108 --> 00:01:19,112 この穢れた大地から 見上げているからだよ。 17 00:01:19,112 --> 00:01:26,386 地球が宇宙の一番下にあるなら なんで空の星は落ちてこないんですか? 18 00:01:26,386 --> 00:01:28,422 …わからない。 19 00:01:28,422 --> 00:01:32,826 人は所詮 この大地のことしか わからない。 20 00:01:32,826 --> 00:01:38,999 天の世界は崇高で荘厳で 偉大で広大で➡ 21 00:01:38,999 --> 00:01:43,003 下等な地球如きとは調和しない。 22 00:01:55,282 --> 00:01:58,185 すまない 待たせたね! オクジー君。 23 00:01:58,185 --> 00:02:01,021 あ… い いえ グラスさん。 24 00:02:01,021 --> 00:02:04,591 今夜は快晴で星がよく見えてね! 25 00:02:04,591 --> 00:02:07,160 夜空は素晴らしいよ。 26 00:02:07,160 --> 00:02:11,164 毎晩惜しみなく 豊麗な輝きを見せてくれる。 27 00:02:12,966 --> 00:02:17,904 君は見ないのか? その“眼”なら夜空も新鮮だろう。 28 00:02:17,904 --> 00:02:20,207 あ いえ あの…。 29 00:02:22,042 --> 00:02:24,378 空を見るのは苦手で。 30 00:02:24,378 --> 00:02:26,947 ん…? そうか。 31 00:02:26,947 --> 00:02:32,486 ああそうだ。 今日はオクジー君が ここの支部に移ってから1年だ。 32 00:02:32,486 --> 00:02:35,222 仕事が終わったら祝杯を挙げよう。 33 00:02:35,222 --> 00:02:39,526 もちろん私の奢りだ。 あぁ ありがとうございます。 34 00:02:43,397 --> 00:02:45,999 では―― 仕事にかかろう。 35 00:02:48,602 --> 00:02:53,240 ♬「何度でも 何度でも叫ぶ」 36 00:02:53,240 --> 00:03:01,448 ♬「この暗い夜の怪獣になっても」 37 00:03:01,448 --> 00:03:07,254 ♬「ここに残しておきたいんだよ」 38 00:03:07,254 --> 00:03:09,256 ♬「この秘密を」 39 00:03:11,958 --> 00:03:15,796 ♬「だんだん食べる」 40 00:03:15,796 --> 00:03:22,569 ♬「赤と青の星々 未来から過去を」 41 00:03:22,569 --> 00:03:26,440 ♬「順々に食べる」 42 00:03:26,440 --> 00:03:34,514 ♬「何十回も噛み潰し 溶けたなら飲もう」 43 00:03:34,514 --> 00:03:39,152 ♬「丘の上で星を見ると」 44 00:03:39,152 --> 00:03:45,092 ♬「感じるこの寂しさも」 45 00:03:45,092 --> 00:03:47,861 ♬「朝焼けで」 46 00:03:47,861 --> 00:03:54,634 ♬「手が染まる頃にはもう忘れてるんだ」 47 00:03:54,634 --> 00:04:01,875 ♬「この世界は好都合に未完成」 48 00:04:01,875 --> 00:04:04,778 ♬「だから知りたいんだ」 49 00:04:04,778 --> 00:04:12,452 ♬「でも怪獣みたいに遠く遠く叫んでも」 50 00:04:12,452 --> 00:04:16,256 ♬「また消えてしまうんだ」 51 00:04:21,695 --> 00:04:23,697 ⚟(足音) あ…! 52 00:04:26,666 --> 00:04:29,269 俺行きます。 頼む。 53 00:04:31,471 --> 00:04:37,177 民間警備組合の者です。 私が今回の証人を務めます。 54 00:04:37,177 --> 00:04:42,115 個人特定による報復を避けるため マスクの着用を お許しください。 55 00:04:42,115 --> 00:04:44,117 …っ! 56 00:04:45,886 --> 00:04:48,388 (グラス)では 早速始めましょうか。 57 00:04:48,388 --> 00:04:50,390 あ… ッ! 58 00:04:54,261 --> 00:04:56,263 決闘開始。 59 00:04:59,100 --> 00:05:02,936 ウアァッ!! フッ! ン゛ッ! 60 00:05:02,936 --> 00:05:04,938 フッ! クッ! 61 00:05:06,873 --> 00:05:09,776 うぅっ う…。 62 00:05:09,776 --> 00:05:12,379 チッ… うっ! 63 00:05:14,514 --> 00:05:16,850 んっ…! ちょ ちょっと! 64 00:05:16,850 --> 00:05:20,220 そもそも私が決闘を申し込んだのは ナストゥラ伯だぞ! 65 00:05:20,220 --> 00:05:24,925 何故この私が 貴様らのような 下級の者と戦わねばならんのだ! 66 00:05:24,925 --> 00:05:31,231 そのナストゥラ伯に依頼され 代理で闘うのが我々 代闘士です。 67 00:05:31,231 --> 00:05:34,334 貴方だって了承しているはずですが。 68 00:05:36,136 --> 00:05:38,972 ま… 負けたら…➡ 69 00:05:38,972 --> 00:05:41,308 負けたら死ぬではないか。 70 00:05:41,308 --> 00:05:43,810 はい。 そういうものですので。 71 00:05:43,810 --> 00:05:46,213 くっ… うっ…! 72 00:05:46,213 --> 00:05:48,148 ふっ… う…! 73 00:05:48,148 --> 00:05:50,483 ウアアァッ!! 74 00:05:50,483 --> 00:05:52,419 <よし!> 75 00:05:52,419 --> 00:05:54,421 ッ!! 76 00:05:56,289 --> 00:05:58,625 あ…。 77 00:05:58,625 --> 00:06:00,727 どぁっ! 78 00:06:02,596 --> 00:06:05,298 あ… あぁ…。 79 00:06:08,068 --> 00:06:12,739 い… 嫌だ。 死にたくない…。 80 00:06:12,739 --> 00:06:16,276 そうだ 金をやる! 取引だ! 81 00:06:16,276 --> 00:06:19,679 きっ 君は私に なんの恨みもないだろ⁉ 82 00:06:19,679 --> 00:06:25,252 人を殺すなど罪深い! 本当は君もやりたくないはずだ! 83 00:06:25,252 --> 00:06:29,155 いや… 正直マジで そのとおりなんですけど…。 84 00:06:29,155 --> 00:06:31,157 で では…。 85 00:06:32,993 --> 00:06:35,395 仕事なので…。 (剣を抜く音) 86 00:06:37,931 --> 00:06:40,033 ヴッ… ゴホッ…。 87 00:06:42,469 --> 00:06:46,039 じ… 地獄に…。 88 00:06:46,039 --> 00:06:47,974 ん…。 89 00:06:47,974 --> 00:06:50,877 堕ち…ろ…。 90 00:07:00,553 --> 00:07:05,992 死体を預けてきた。 これで今日の仕事は終わりだ。 91 00:07:05,992 --> 00:07:10,664 にしても さすがの反応だ! やはりいい“眼”だね。 92 00:07:10,664 --> 00:07:13,566 ん? どうかしたかい? 93 00:07:13,566 --> 00:07:17,570 か… 彼は天国に行けたのでしょうか。 94 00:07:20,140 --> 00:07:22,075 気になるかね? 95 00:07:22,075 --> 00:07:24,077 不安なんです。 96 00:07:24,077 --> 00:07:28,848 この仕事で 人が死ぬ瞬間を何度も見てきた…。 97 00:07:28,848 --> 00:07:32,752 でも 誰一人 満足な顔で死ぬ人はいなかった。 98 00:07:34,587 --> 00:07:38,258 皆 酷く怯えた顔で 死んでいった…。 99 00:07:38,258 --> 00:07:41,795 地獄の入り口が 見えてるみたいに…。 100 00:07:41,795 --> 00:07:47,133 もしかしたら天国に行ける人ってのは ものすごく少ないんじゃないんですか? 101 00:07:47,133 --> 00:07:51,004 だとしたら 大勢殺した俺なんか とても…。 102 00:07:51,004 --> 00:07:55,408 オクジー君 この世に好きな物や事はあるかい? 103 00:07:55,408 --> 00:07:59,379 えっ? な… なんですか急に。 104 00:07:59,379 --> 00:08:03,149 穢れたこの世を好ましく思うのは 不適切では? 105 00:08:03,149 --> 00:08:07,087 そんなことないよ! 「好き」がいけないわけがない! 106 00:08:07,087 --> 00:08:12,425 この世に期待しなくなると 我々の魂は瞬く間に濁ってしまう。 107 00:08:12,425 --> 00:08:17,430 “好き”とか“夢”とか“希望”とか そういうモノは捨てちゃダメだ! 108 00:08:19,866 --> 00:08:24,704 そ… それもそうですね。 考えを入れ替えます。 109 00:08:24,704 --> 00:08:29,843 っ! あぁ すまない。 気を遣わせてしまったね。 110 00:08:29,843 --> 00:08:33,546 是非 君の忌憚なき本音も 聞かせてくれたまえ。 111 00:08:33,546 --> 00:08:36,449 そ そんな 俺の意見なんて。 112 00:08:36,449 --> 00:08:40,120 水くさいじゃないか。 出会って1年もたつんだ。 113 00:08:40,120 --> 00:08:42,122 遠慮せずに さァ! 114 00:08:47,594 --> 00:08:49,529 …き➡ 115 00:08:49,529 --> 00:08:53,033 「期待したら裏切られるのがオチ」 これが俺の心情です。 116 00:08:53,033 --> 00:08:55,568 ハナから諦めたほうが傷が浅くてすむ。 117 00:08:55,568 --> 00:08:59,572 というか そもそも人生って 全然楽しいこと起きないじゃないですか。 118 00:08:59,572 --> 00:09:01,808 この世界で幸福になれるのは➡ 119 00:09:01,808 --> 00:09:05,311 生まれた時点で その資格を持ってる 一部の人たちだけ。 120 00:09:05,311 --> 00:09:09,282 選ばれなかった人が幸せを望むことは 全く無駄な行為です。 121 00:09:09,282 --> 00:09:12,085 この世は終わってる。 なので➡ 122 00:09:12,085 --> 00:09:14,087 希望は天国にしかない。 123 00:09:14,087 --> 00:09:17,257 天国最高 天国最高 天国最高。 124 00:09:17,257 --> 00:09:20,126 早く行きたい早く行きたい早く行きたい。 125 00:09:20,126 --> 00:09:22,562 ハァ ハァ ハァ…。 126 00:09:22,562 --> 00:09:24,497 あ…。 127 00:09:24,497 --> 00:09:28,368 と とか言って アハ ハハ…。 つまり君は…。 128 00:09:28,368 --> 00:09:33,206 この世に“永遠”とか“完璧”がないから 何も信頼できないと? 129 00:09:33,206 --> 00:09:36,443 え? 全然そんなこと言って…。 わかる! 130 00:09:36,443 --> 00:09:40,780 何を隠そう 私も少し前まで そう思っていたよ。 131 00:09:40,780 --> 00:09:43,683 だが 私は見つけてしまったのだ。 132 00:09:43,683 --> 00:09:47,287 絶対の信頼をおける希望をね。 133 00:09:47,287 --> 00:09:50,056 知りたいか? いえ 特段…。 134 00:09:50,056 --> 00:09:53,359 今は忌憚ある建て前を 言ってくれたまえ。 135 00:09:53,359 --> 00:09:56,796 (オクジー)…知りたいです。 136 00:09:56,796 --> 00:10:00,033 (酒場のにぎわい) 137 00:10:00,033 --> 00:10:03,236 ⚟おい アイツら。 ⚟ああ 人殺しだ。 138 00:10:03,236 --> 00:10:05,271 さてと! 酒を二つ。 139 00:10:05,271 --> 00:10:07,407 ⚟(カウンターを叩く音) (オクジー グラス)ん…? 140 00:10:07,407 --> 00:10:10,243 ここは上級市民の通う店だ。 141 00:10:10,243 --> 00:10:13,146 代闘士風情は お引き取り願おう。 142 00:10:13,146 --> 00:10:16,049 気分を害したのなら申し訳ない。 143 00:10:16,049 --> 00:10:20,587 しかし この店は我々組合の出入りも 許可されている。➡ 144 00:10:20,587 --> 00:10:22,655 しばし勘弁願いたい。 145 00:10:22,655 --> 00:10:25,258 (オクジー)違いますよグラスさん。 ん…? 146 00:10:25,258 --> 00:10:29,596 こういう方には もっとハッキリ言うべきです。 147 00:10:29,596 --> 00:10:31,531 む…。 148 00:10:31,531 --> 00:10:34,300 生まれてスイマセン!! 生まれてスイマセン!! 生まれてスイマセン!! 生まれてスイマセン!! 149 00:10:34,300 --> 00:10:37,604 なっ! やっ やめろ!生まれてスイマセン!! もういい!生まれてスイマセン!! 150 00:10:37,604 --> 00:10:40,507 (オクジー)ハッ ハッ… ほら…。 151 00:10:40,507 --> 00:10:44,077 こうやって心から謝れば 譲ってくれるんです。 152 00:10:44,077 --> 00:10:47,947 う… うん。 とりあえず ありがとう。 153 00:10:47,947 --> 00:10:50,850 さて さっきの話の続きだ。 154 00:10:50,850 --> 00:10:53,086 さっき? え? 155 00:10:53,086 --> 00:10:56,422 ほら 私の見つけた希望についてだけど。 156 00:10:56,422 --> 00:10:59,626 …あぁ! もちろん覚えてました! 157 00:11:04,797 --> 00:11:06,766 コレがソレだ。 158 00:11:06,766 --> 00:11:09,569 火星の観測記録。 159 00:11:09,569 --> 00:11:12,805 かせい…? なんですかソレ。 160 00:11:12,805 --> 00:11:15,708 ああ そこからか。➡ 161 00:11:15,708 --> 00:11:20,547 天には毎晩 同じ配置に同じ星座が見えるだろう? 162 00:11:20,547 --> 00:11:22,482 そしてそれは形を変えず➡ 163 00:11:22,482 --> 00:11:27,320 一晩で東から西へ動き やがて朝が来る。 164 00:11:27,320 --> 00:11:29,622 だが ある時だ…。 165 00:11:29,622 --> 00:11:34,460 なんの気なしに星を眺めていたら 驚愕の事実に気付いた。 166 00:11:34,460 --> 00:11:40,233 なんと天には 固定された星座の中を “動く星”もあるのだ…! 167 00:11:40,233 --> 00:11:43,136 一晩での動きは非常に僅かだ。 168 00:11:43,136 --> 00:11:47,907 しかし 数日単位で見れば 位置がハッキリ変わってる! 169 00:11:47,907 --> 00:11:51,778 興味を持った私は修道士様に聞いてみた。 170 00:11:51,778 --> 00:11:57,550 その動く星は“惑星”と呼ばれ 天に5つほどあるのだと知った。 171 00:11:57,550 --> 00:12:01,521 私が見つけたのは その中で最も動きがわかりやすく➡ 172 00:12:01,521 --> 00:12:05,425 炎のように赤く輝く“火星”だ。 173 00:12:05,425 --> 00:12:09,762 それから私は 火星の軌跡を記録することにした。 174 00:12:09,762 --> 00:12:11,698 すると どうだろう! 175 00:12:11,698 --> 00:12:15,568 火星は円を描くように 星座を巡って動くではないか! 176 00:12:15,568 --> 00:12:17,637 1か月 半年! 1年! 177 00:12:17,637 --> 00:12:21,908 ぶれずに迷わずに 常に円の形に則った軌道だ! 178 00:12:21,908 --> 00:12:25,578 揺れる草 流れる川 ゆらめく火。 179 00:12:25,578 --> 00:12:31,284 自然界に動くもの数あれど これほどまで規則正しく動くものはない。 180 00:12:31,284 --> 00:12:33,253 まさに“完璧”だ! 181 00:12:33,253 --> 00:12:38,057 そして気付いたのだ。 確かに この地は穢れていて無秩序だ。 182 00:12:38,057 --> 00:12:41,494 高貴にして完璧なる天には届きもしない。 183 00:12:41,494 --> 00:12:45,698 しかし! 私たちにも “完璧”を見ることはできるではないか!! 184 00:12:45,698 --> 00:12:48,067 人は完璧を認識できる。 185 00:12:48,067 --> 00:12:51,838 しかも太陽と違い 火星は直視可能だ! 186 00:12:51,838 --> 00:12:54,841 この地球は完璧な観測の特等席! 187 00:12:54,841 --> 00:12:58,311 そう考えたら 人も地球も捨てたものじゃない! 188 00:12:58,311 --> 00:13:00,246 んっんっ… プハッ! 189 00:13:00,246 --> 00:13:03,883 今や これにより この世の全てを肯定できる。 190 00:13:03,883 --> 00:13:06,352 そして2年越しの観測の末➡ 191 00:13:06,352 --> 00:13:10,056 そろそろ火星軌道が一周し 輪を閉じる。 192 00:13:10,056 --> 00:13:13,860 もうじき大団円を迎えるのだ! フフッ フハハハ…。 193 00:13:13,860 --> 00:13:16,763 へ へぇ~。 スゲー。 194 00:13:16,763 --> 00:13:18,698 <なかなか こじつけ解釈じゃ…> 195 00:13:18,698 --> 00:13:22,268 ⚟なかなか こじつけ解釈だね。 っ⁉ 196 00:13:22,268 --> 00:13:24,871 逞しいとも言えるか。 197 00:13:24,871 --> 00:13:27,774 火星軌道の完璧な円環だって? 198 00:13:27,774 --> 00:13:32,278 さすが 下級市民の無教養ぶりは羨ましい。 199 00:13:32,278 --> 00:13:35,682 先ほどから絡んで頂いて申し訳ないが➡ 200 00:13:35,682 --> 00:13:38,584 私の感動は どうしようと奪えない! 201 00:13:38,584 --> 00:13:40,820 好きなだけ笑うがいいさ。 202 00:13:40,820 --> 00:13:43,489 いやいや 邪魔して悪かったね。 203 00:13:43,489 --> 00:13:46,259 せいぜい楽しんでくれよ。 204 00:13:46,259 --> 00:13:49,896 しかし 観測を始めた時期が悪かった。 205 00:13:49,896 --> 00:13:52,932 じゃなきゃ もっと前に気付けたのに。 206 00:13:52,932 --> 00:13:55,635 ふっ… 適当なことを。 207 00:13:59,972 --> 00:14:02,041 (グラス)あ ありえない! 208 00:14:02,041 --> 00:14:04,177 っ⁉ 209 00:14:04,177 --> 00:14:06,579 どうしました? 210 00:14:06,579 --> 00:14:11,984 毎日… 毎日 2年間動いてたんだ。 211 00:14:11,984 --> 00:14:14,253 それがここ最近➡ 212 00:14:14,253 --> 00:14:17,890 移動速度が ずいぶん遅くなっていたんだが…。 213 00:14:17,890 --> 00:14:20,360 ついに今日…➡ 214 00:14:20,360 --> 00:14:22,361 火星が止まった。 215 00:14:22,361 --> 00:14:26,599 え⁉ 昨日から全く動いていない…。 216 00:14:26,599 --> 00:14:30,169 何故 こんなことが…。 217 00:14:30,169 --> 00:14:34,941 2年かけて やっと完成を迎える直前で…。 218 00:14:34,941 --> 00:14:37,944 何故… 何故…。 219 00:14:42,782 --> 00:14:45,118 ⚟(剣で打ち合う音) 220 00:14:45,118 --> 00:14:48,020 ⚟(代闘士A)おーい オクジー。 ん? 221 00:14:48,020 --> 00:14:52,925 仕事終わりかー。 あ… いえ これからです。 222 00:14:52,925 --> 00:14:57,697 ⚟(剣で打ち合う音) しかし大変だな。 グラスみたいな変人と組まされちまって。 223 00:14:57,697 --> 00:15:01,434 ⚟(剣で打ち合う音) い いえ。 いつも前向きな方ですよ。 224 00:15:01,434 --> 00:15:04,137 ⚟(代闘士B)“前向き”だからだ…よっ!! ⚟(貴族)ぐぁっ!! 225 00:15:06,572 --> 00:15:10,443 グラスはな 昔はもっと普通な奴だったんだ。 226 00:15:10,443 --> 00:15:13,646 愚痴なんかも よく言ってな。 227 00:15:13,646 --> 00:15:18,618 それがある時 疫病で家族みんな亡くしちまってな。 228 00:15:18,618 --> 00:15:24,056 さらにだ 絶望して 自分の人生も終わらせようとしやがった。 229 00:15:24,056 --> 00:15:27,960 そ そんな悲劇が…。 230 00:15:27,960 --> 00:15:32,064 (代闘士B)一番の悲劇は そこで死に切れなかったことさ。 231 00:15:34,767 --> 00:15:38,070 (代闘士A) その罪は教会で赦してもらったが➡ 232 00:15:38,070 --> 00:15:41,474 正直本人は 死に切れなくて悔やんでたよ。➡ 233 00:15:41,474 --> 00:15:45,344 「これが私の運命なのか」ってね。 234 00:15:45,344 --> 00:15:49,348 (代闘士B)だが ここ1、2年で 唐突に明るくなり始めた。➡ 235 00:15:49,348 --> 00:15:53,052 訳を聞いたら 観測を始めたんだと。➡ 236 00:15:53,052 --> 00:15:57,256 「あれは天国からの家族のメッセージだ」 とか言ってな。 237 00:15:57,256 --> 00:16:03,162 (代闘士A)気ィつけろよ。 そういう 不安定なのは急に何するかわかんねぇぞ。 238 00:16:04,764 --> 00:16:09,468 “好き”とか“夢”とか“希望”とか そういうモノは捨てちゃダメだ! 239 00:16:12,104 --> 00:16:14,841 ん…? 240 00:16:14,841 --> 00:16:18,711 フ… フ… フフッ ハ…。 241 00:16:18,711 --> 00:16:22,481 曲がった…。 (オクジー)え…? 242 00:16:22,481 --> 00:16:26,352 曲がった。 明後日のほうに。 243 00:16:26,352 --> 00:16:28,421 っ⁉ 244 00:16:28,421 --> 00:16:32,458 (グラス)完璧な 円環が壊れた…。 245 00:16:32,458 --> 00:16:36,128 醜く 歪んだ。 あっ…。 246 00:16:36,128 --> 00:16:43,236 ♬~ 247 00:16:43,236 --> 00:16:47,640 これが… 私の 運命か…。 248 00:16:55,948 --> 00:16:59,151 どうも。 ああ じゃあ行こうか。 249 00:17:03,155 --> 00:17:05,424 今日は観測なしですか? 250 00:17:05,424 --> 00:17:07,360 まぁね…。 251 00:17:07,360 --> 00:17:12,565 君の言うとおり 天国を差し置いて この世界で何かを期待するのは➡ 252 00:17:12,565 --> 00:17:17,203 間違っていたのかもと思ってね。 ッハハハハ…。➡ 253 00:17:17,203 --> 00:17:20,540 えーっと 今日の業務は…。 254 00:17:20,540 --> 00:17:24,243 珍しいな… 異端者の移送警備か。 255 00:17:24,243 --> 00:17:26,245 い 異端者⁉ 256 00:17:26,245 --> 00:17:29,982 (グラス)悪魔と通じているかもしれん。 用心しろよー! 257 00:17:29,982 --> 00:17:31,918 えっ…。 258 00:17:31,918 --> 00:17:34,520 (ダミアン)民間警備組合の者か? 259 00:17:36,889 --> 00:17:39,592 異端審問官のダミアンだ。 260 00:17:51,904 --> 00:17:54,707 (ダミアン)民間警備組合が到着しました。 261 00:17:54,707 --> 00:17:57,310 我々も行きましょう ノヴァクさん。 262 00:17:57,310 --> 00:17:59,278 何見てるんです? 263 00:17:59,278 --> 00:18:03,416 お守り。 ふあぁ~~。 264 00:18:03,416 --> 00:18:06,419 だるい仕事の始まりかー。 265 00:18:06,419 --> 00:18:12,558 (雨音) 266 00:18:12,558 --> 00:18:14,493 …ふぅ。 267 00:18:14,493 --> 00:18:16,996 (異端者) マスクを取ってもいいのかね? っ! 268 00:18:18,764 --> 00:18:22,034 (グラス)これから死ぬ異端者に見られても 何も困らん。 269 00:18:22,034 --> 00:18:25,271 ふっ… そうか。 270 00:18:25,271 --> 00:18:30,076 それにしても雨とはね。 空が見えんのはいかん。 271 00:18:33,346 --> 00:18:35,281 ん…。 272 00:18:35,281 --> 00:18:38,884 君らは空に興味はないか? 273 00:18:38,884 --> 00:18:42,355 星を眺めるのは快いぞ。 274 00:18:42,355 --> 00:18:46,225 (オクジー)我々は あなたと話してはいけない 決まりになっている。➡ 275 00:18:46,225 --> 00:18:48,928 黙ってて頂けますか? 276 00:18:48,928 --> 00:18:51,797 断ったら殴られるのかな? 277 00:18:51,797 --> 00:18:55,968 (オクジー)いや 正直かわいそうで 殴る気も起きない。 278 00:18:55,968 --> 00:18:59,905 何故人類を救済する教会に 刃向かうのか…。 279 00:18:59,905 --> 00:19:03,609 何故自ら天国に 行けなくなるようなことをするのか…。 280 00:19:05,311 --> 00:19:08,714 気の毒ですが あなたの死刑は免れない。 281 00:19:08,714 --> 00:19:12,952 ですが今からでも考え直して 悔悛したらどうです? 282 00:19:12,952 --> 00:19:15,855 ふっ。 慈悲深いね。 283 00:19:15,855 --> 00:19:20,026 だが君らこそ一度 考え直すべきじゃないか? 284 00:19:20,026 --> 00:19:23,329 教会が本当に君らを救うのか。 285 00:19:23,329 --> 00:19:28,167 そもそも彼らの言う天国など 本当に存在するのか? 286 00:19:28,167 --> 00:19:30,102 っ!! 287 00:19:30,102 --> 00:19:33,739 ふっ… 異端者如きにはわかるまいさ。 288 00:19:33,739 --> 00:19:37,710 (異端者)そういう君らは 一体何をわかっているんだ? 289 00:19:37,710 --> 00:19:41,514 君らは この世の絶望から目を逸らすために➡ 290 00:19:41,514 --> 00:19:46,252 あるかもわからぬ 天国に逃げてるだけじゃないのか? 291 00:19:46,252 --> 00:19:49,789 フン! 貴様の狙いはわかっている。 292 00:19:49,789 --> 00:19:55,294 そうやって不安を煽り 我々を絶望へと突き放したいのだろう。 293 00:19:55,294 --> 00:19:57,229 (異端者)いや。 ん…? 294 00:19:57,229 --> 00:20:00,633 君らが絶望を突き放しているのだ。 295 00:20:02,401 --> 00:20:09,475 2000年前 アテナイの老人が毒杯を呷った 惨事から今の哲学が生まれた。 296 00:20:09,475 --> 00:20:17,083 1500年前 一人の青年が磔にされた無念が 今の教会を形作った。 297 00:20:17,083 --> 00:20:22,188 人は悲劇を肥やしに 時に新たな希望を生み出す。 298 00:20:23,856 --> 00:20:27,860 (異端者)その場しのぎの慰めなんか 現実を変えやしない。 299 00:20:27,860 --> 00:20:32,965 だが 芯から湧き出た苦悩は 煮詰められた挫折は➡ 300 00:20:32,965 --> 00:20:37,470 あるいは君の絶望は 希望に転化しうるのだ。 301 00:20:37,470 --> 00:20:40,406 なのに君らは 絶望に目を塞ぎ➡ 302 00:20:40,406 --> 00:20:44,276 誰かがくれた死後の保証つきの 人生を生きている。 303 00:20:44,276 --> 00:20:48,047 そんな人間に希望など訪れない。 304 00:20:48,047 --> 00:20:50,015 くっ…。 305 00:20:50,015 --> 00:20:53,552 黙っていれば戯言ばかり!! 何も知らないで!! 306 00:20:53,552 --> 00:20:57,490 グラスさん落ち着いてください! 異端の策かもしれない! 307 00:20:57,490 --> 00:21:00,126 ふっ。 “異端”か。 308 00:21:00,126 --> 00:21:04,597 君がそう呼ばれる者を 何故恐れるか よくわかるぞ。 309 00:21:04,597 --> 00:21:08,067 私のことが理解不能だからではない。 310 00:21:08,067 --> 00:21:10,002 逆だ。 っ⁉ 311 00:21:10,002 --> 00:21:15,608 (異端者)君自身が 心の底では 天国を信じ切れてないからだ。 312 00:21:15,608 --> 00:21:18,010 勝手なことを言わないでください。 313 00:21:18,010 --> 00:21:22,381 「本当は天国なんかなくて ただ死んで終わりかも」➡ 314 00:21:22,381 --> 00:21:25,918 そう思っているんだろう。 (オクジー)そんなこと思っていません。 315 00:21:25,918 --> 00:21:28,287 不安になるのは よくわかる。 316 00:21:28,287 --> 00:21:31,090 死後の予定が揺らぐのは辛いだろう。 317 00:21:31,090 --> 00:21:33,025 (オクジー)もう黙ってください。 318 00:21:33,025 --> 00:21:35,694 しかし君は いや人類は➡ 319 00:21:35,694 --> 00:21:38,597 正面から向き合うべきだ。 (オクジー)やめてください。 320 00:21:38,597 --> 00:21:43,736 麗しの天国なぞ ないのかもしれないということに。 321 00:21:43,736 --> 00:21:45,938 やめろと頼んでるだろ!! 322 00:21:48,207 --> 00:21:53,646 だが この地球は天国なんかよりも 美しいということに。 323 00:21:53,646 --> 00:21:56,315 …っ! 324 00:21:56,315 --> 00:21:58,617 な… 何をバカな…。 325 00:21:58,617 --> 00:22:01,654 君だって本当は信じたいだろ? 326 00:22:01,654 --> 00:22:06,058 この星は生きるに値する 素晴らしい何かだと。 327 00:22:07,893 --> 00:22:09,829 ふっ。 328 00:22:09,829 --> 00:22:13,732 もういいです 十分だ。 バカバカしい…。 329 00:22:13,732 --> 00:22:17,903 落ち着いて考えれば 全て無根拠な妄想だ。 330 00:22:17,903 --> 00:22:20,706 根拠はある。 (オクジー)そうですか。➡ 331 00:22:20,706 --> 00:22:23,242 だとしても今ここにはない。 332 00:22:23,242 --> 00:22:26,278 いや 今ここにある。 333 00:22:26,278 --> 00:22:30,049 今ちょうど見える そこの山だ。 334 00:22:30,049 --> 00:22:36,188 全ての証拠は あの中腹に置かれた石箱の中にある。 335 00:22:36,188 --> 00:22:40,092 さて 事態を理解しているかね。 336 00:22:40,092 --> 00:22:44,296 今夜 君たちは これから少しの間だけ➡ 337 00:22:44,296 --> 00:22:50,169 恐らく人生で初めて 自らの運命を変える挑戦権を得ている。 338 00:22:50,169 --> 00:22:54,506 っ! (異端者)一生快適な自己否定に留まるか➡ 339 00:22:54,506 --> 00:22:58,510 全てを捨てて自己肯定に賭けて出るか➡ 340 00:22:58,510 --> 00:23:01,847 どちらを選ぶも自由だ。 341 00:23:01,847 --> 00:23:04,350 さァ どうする。 342 00:23:06,051 --> 00:23:08,254 ど どうもこうも――。 343 00:23:10,889 --> 00:23:12,992 えっ…。 344 00:23:18,230 --> 00:23:20,232 な… っ⁉ 345 00:23:21,900 --> 00:23:23,869 頼む…。 346 00:23:23,869 --> 00:23:30,009 (雨音) 347 00:23:30,009 --> 00:23:45,424 ♬~ 348 00:23:45,424 --> 00:23:49,295 ♬「描き始めた あなたは小さく」 349 00:23:49,295 --> 00:23:53,165 ♬「ため息をした あんなに大きく」 350 00:23:53,165 --> 00:23:57,069 ♬「波打つ窓の光の束が」 351 00:23:57,069 --> 00:24:02,474 ♬「あなたの横顔に跳ねている」 352 00:24:04,877 --> 00:24:08,714 ♬「僕の体は雨の集まり」 353 00:24:08,714 --> 00:24:12,618 ♬「貴方の指は 春の木漏れ日」 354 00:24:12,618 --> 00:24:16,689 ♬「紙に弾けたインクの影が」 355 00:24:16,689 --> 00:24:21,694 ♬「僕らの横顔を描写している」 356 00:24:23,562 --> 00:24:32,004 ♬「長い夢を見た 僕らは気球にいた」 357 00:24:32,004 --> 00:24:40,279 ♬「遠い国の誰かが月と見間違ったらいい」 358 00:24:40,279 --> 00:24:48,487 ♬「あの海を見たら 魂が酷く跳ねた」 359 00:24:48,487 --> 00:24:53,292 ♬「白い魚の群れに」 360 00:24:53,292 --> 00:24:57,296 ♬「あなたは見惚れている」