1 00:00:02,803 --> 00:00:04,805 っ…。 2 00:00:07,307 --> 00:00:10,344 見ない顔だな。 なんの用だ。 3 00:00:10,344 --> 00:00:14,481 あ はい。 自分 オクジーと申します。 4 00:00:14,481 --> 00:00:18,652 ちょっと見てほしい書類? があって➡ 5 00:00:18,652 --> 00:00:20,654 そこまで案内したく…。 6 00:00:22,022 --> 00:00:24,258 っ! 血の臭いだな。 7 00:00:24,258 --> 00:00:29,062 君 傭兵か。 悪いが私は聖職者だ。 8 00:00:29,062 --> 00:00:31,899 このまま一定の距離を保つように。 9 00:00:31,899 --> 00:00:34,635 あ… はい。 すいません。 10 00:00:34,635 --> 00:00:38,505 それと… まず一つ確認したい。 11 00:00:38,505 --> 00:00:43,744 君の話は 私の人生を大きく変えると言えるか? 12 00:00:43,744 --> 00:00:47,347 そう断言できないものに 時間を割きたくない。 13 00:00:49,049 --> 00:00:54,021 ある意味では 人生を変えてしまうかもしれません…。 14 00:00:54,021 --> 00:00:59,026 その… 教会的に 少し問題かもしれないので…。 15 00:00:59,026 --> 00:01:03,030 ほう 少しは骨がありそうだな。 16 00:01:03,030 --> 00:01:08,368 いいだろう。 教会での受け取り方は私が判断する。 17 00:01:08,368 --> 00:01:10,304 で 内容は? 18 00:01:10,304 --> 00:01:14,174 いや それが… わかりません。 19 00:01:14,174 --> 00:01:17,477 は? 内容がわからない? 20 00:01:17,477 --> 00:01:19,813 じゃあ何故 私に見せようと? 21 00:01:19,813 --> 00:01:25,285 それも その… わかりません。 言われてきただけなので…。 22 00:01:25,285 --> 00:01:27,621 (バデーニ)は? 誰に? 23 00:01:27,621 --> 00:01:31,158 昔… 街の修道院にいた頃➡ 24 00:01:31,158 --> 00:01:34,695 天界について質問をした人 いませんでした? 25 00:01:34,695 --> 00:01:36,964 ――さァな。 26 00:01:36,964 --> 00:01:40,701 院の決まりで定期的に市民と話してたが➡ 27 00:01:40,701 --> 00:01:44,137 あの時間はとにかく苦痛で 覚えていない。 28 00:01:44,137 --> 00:01:46,840 そ そうですか…。 29 00:01:46,840 --> 00:01:50,110 その人の伝言で来たんですよね。 30 00:01:50,110 --> 00:01:53,013 こういう記録を取ってた人なんですが。 31 00:01:53,013 --> 00:01:55,115 あ…。 32 00:01:57,184 --> 00:01:59,753 ふむ…。 33 00:01:59,753 --> 00:02:02,656 火星の観測記録か。 34 00:02:02,656 --> 00:02:06,660 なんだ けっこう緻密な記録じゃないか。 35 00:02:06,660 --> 00:02:11,031 世俗にも たまにはこういう者が… ん? 36 00:02:11,031 --> 00:02:13,767 何故 逆行からの記録がない? 37 00:02:13,767 --> 00:02:17,637 2年に一度 ここからが重要な事象だぞ。 38 00:02:17,637 --> 00:02:19,673 ああ それは…。 39 00:02:19,673 --> 00:02:25,879 その逆行? とかいうのに心を痛めて 観測やめちゃったんです。 40 00:02:25,879 --> 00:02:29,383 は? 心を痛める? 41 00:02:29,383 --> 00:02:32,686 惑星の逆行を知らなかったのか? 42 00:02:32,686 --> 00:02:35,222 そもそも惑星って名前自体が➡ 43 00:02:35,222 --> 00:02:39,192 「惑う人」プラネーテスから来てるんだぞ? 44 00:02:39,192 --> 00:02:42,329 軌道は惑うに決まってるだろ。 45 00:02:42,329 --> 00:02:47,534 というか それを知らないで こんな緻密な記録を取ってたのか? 46 00:02:47,534 --> 00:02:50,103 一体なんのために? 47 00:02:50,103 --> 00:02:52,305 わかりません…。 48 00:02:54,841 --> 00:02:57,744 ハァ… もういい。 49 00:02:57,744 --> 00:03:01,348 そんな得体の知れないものに 時間は割けない。 50 00:03:01,348 --> 00:03:03,283 帰ってくれ。 51 00:03:03,283 --> 00:03:06,853 (オクジー)えっ あ… はい…。 52 00:03:06,853 --> 00:03:09,256 なにかと思えば まったく…。 53 00:03:11,558 --> 00:03:15,962 <なんで私は こんな所に…> 54 00:03:18,365 --> 00:03:23,170 ♬「何度でも 何度でも叫ぶ」 55 00:03:23,170 --> 00:03:31,411 ♬「この暗い夜の怪獣になっても」 56 00:03:31,411 --> 00:03:37,217 ♬「ここに残しておきたいんだよ」 57 00:03:37,217 --> 00:03:39,219 ♬「この秘密を」 58 00:03:41,955 --> 00:03:45,826 ♬「だんだん食べる」 59 00:03:45,826 --> 00:03:52,599 ♬「赤と青の星々 未来から過去を」 60 00:03:52,599 --> 00:03:56,470 ♬「順々に食べる」 61 00:03:56,470 --> 00:04:04,311 ♬「何十回も噛み潰し 溶けたなら飲もう」 62 00:04:04,311 --> 00:04:09,049 ♬「丘の上で星を見ると」 63 00:04:09,049 --> 00:04:15,155 ♬「感じるこの寂しさも」 64 00:04:15,155 --> 00:04:17,791 ♬「朝焼けで」 65 00:04:17,791 --> 00:04:24,564 ♬「手が染まる頃にはもう忘れてるんだ」 66 00:04:24,564 --> 00:04:31,872 ♬「この世界は好都合に未完成」 67 00:04:31,872 --> 00:04:34,774 ♬「だから知りたいんだ」 68 00:04:34,774 --> 00:04:42,415 ♬「でも怪獣みたいに遠く遠く叫んでも」 69 00:04:42,415 --> 00:04:46,119 ♬「また消えてしまうんだ」 70 00:04:47,821 --> 00:04:51,158 (修道院長)バデーニ君 覚えているか? 71 00:04:51,158 --> 00:04:54,594 この修道院に入る条件を。 72 00:04:54,594 --> 00:05:00,100 (バデーニ)「3校以上の上級大学から 推薦されている者のみ」です。 73 00:05:00,100 --> 00:05:06,973 そうだ。 我々は神に仕える仕事をする 選ばれし集団だ。 74 00:05:06,973 --> 00:05:09,910 その前提で言うぞ。 75 00:05:09,910 --> 00:05:13,246 君は 圧倒的だ。 76 00:05:13,246 --> 00:05:16,149 他は10人がかりで協力してる中➡ 77 00:05:16,149 --> 00:05:20,987 君は ただ一人で この量の問題を解いたそうじゃないか。 78 00:05:20,987 --> 00:05:23,290 ええ 修道院長。 79 00:05:23,290 --> 00:05:26,326 凄いな… だが➡ 80 00:05:26,326 --> 00:05:30,230 これがどういうことか わかるな? 81 00:05:32,999 --> 00:05:35,502 (修道院長)何度言えばわかる…。 82 00:05:35,502 --> 00:05:39,673 ここでは 想定を超えた勉強は許されない。 83 00:05:39,673 --> 00:05:44,511 規律どおりに行動しろ 足並みを揃えろ。 84 00:05:44,511 --> 00:05:48,114 私より無知な者との協力は 不毛です。 85 00:05:48,114 --> 00:05:51,318 勝手な発言も懲罰対象だ。 86 00:05:52,953 --> 00:05:55,488 ムチ打ち1回。 87 00:05:55,488 --> 00:05:57,490 自分でやれ。 88 00:05:59,259 --> 00:06:01,194 んっ…! (ムチで打つ音) 89 00:06:01,194 --> 00:06:03,129 よし。 …ん? 90 00:06:03,129 --> 00:06:05,065 (ムチで打つ音)お おい。 91 00:06:05,065 --> 00:06:07,067 (ムチで打つ音) 92 00:06:07,067 --> 00:06:09,736 (ムチで打つ音) ふんっ! ん…! 93 00:06:09,736 --> 00:06:12,239 (ムチで打つ音) ん…! ん゛っ! 94 00:06:12,239 --> 00:06:14,674 (ムチで打つ音) うっ…! ん゛ん゛っ! 95 00:06:14,674 --> 00:06:16,643 何もそこまで…。 96 00:06:16,643 --> 00:06:19,012 (バデーニ)これで発言してもいいですか。 97 00:06:19,012 --> 00:06:24,451 ッ! バデーニ君! 一体 何度こんなことを繰り返す! 98 00:06:24,451 --> 00:06:29,689 懲罰と引き替えに 勉強の自由を得られる限りは。 99 00:06:29,689 --> 00:06:33,460 フ… 愚かだな。 100 00:06:33,460 --> 00:06:37,097 確かに君は ウチで一番博学だ。 101 00:06:37,097 --> 00:06:40,133 しかし 思慮深さは皆無だ。 102 00:06:40,133 --> 00:06:43,603 (バデーニ) 思慮深くてはダメなんですよ 修道院長。 103 00:06:43,603 --> 00:06:48,275 んん! そんなヤワな姿勢じゃ 時代に埋もれて終わる。 104 00:06:48,275 --> 00:06:52,145 利口なだけでは いざという時 掴み取れない。 105 00:06:52,145 --> 00:06:55,148 掴む? 何を? 106 00:06:55,148 --> 00:06:57,951 私がずっと待っている➡ 107 00:06:57,951 --> 00:07:03,123 私を特別にする瞬間。 私を偉大にする瞬間。 108 00:07:03,123 --> 00:07:07,560 私が歴史を動かす瞬間ですよ。 109 00:07:07,560 --> 00:07:13,133 んん… そんな傲慢な態度のままでは 特別などにはなれん! 110 00:07:13,133 --> 00:07:17,003 その情熱は神学にだけ向けろ。 111 00:07:17,003 --> 00:07:21,574 代数や幾可学が一体何に必要なんだ。 112 00:07:21,574 --> 00:07:26,413 神が人類に課した 最大の難問を解くのにですよ。 113 00:07:26,413 --> 00:07:29,449 (修道院長)全ての答えは聖書にあるぞ。 114 00:07:29,449 --> 00:07:32,585 (バデーニ)では 今一度聞きます。 115 00:07:32,585 --> 00:07:36,990 何故 惑星は 後ろへ戻ったりするのですか? 116 00:07:38,692 --> 00:07:44,197 神が創った二つの世界―― 月より下の この大地は➡ 117 00:07:44,197 --> 00:07:50,603 不完全で生成消滅を繰り返し 予測不能の運動をする。 118 00:07:50,603 --> 00:07:54,007 しかし月より上の天界は永久不滅。 119 00:07:54,007 --> 00:07:55,942 終わりも始まりもない。 120 00:07:55,942 --> 00:07:59,846 完璧な形である円運動を永遠に行う。 121 00:07:59,846 --> 00:08:02,716 それは納得できる。 122 00:08:02,716 --> 00:08:06,519 でも実際に起こってることは違う。 123 00:08:06,519 --> 00:08:09,522 神が創った完璧であるはずの天界でも➡ 124 00:08:09,522 --> 00:08:15,161 円は歪み 奇妙な輪を描く“逆行”が生じる。 125 00:08:15,161 --> 00:08:19,100 この謎の原因に人類は立ち向かわなければ ならない。 126 00:08:19,100 --> 00:08:24,604 そうでなきゃ… 神が設計を間違えたことになる。 127 00:08:26,272 --> 00:08:29,242 そんなことは あり得ない。 128 00:08:29,242 --> 00:08:34,481 ならば ここには人類が気付いていない “理由”が隠れてるはずだ。 129 00:08:34,481 --> 00:08:38,051 んん…! 「理由」などない。 130 00:08:38,051 --> 00:08:40,954 そういう「定め」なだけだ。 131 00:08:40,954 --> 00:08:46,459 人類が天界について 今以上に知れることはない。 132 00:08:46,459 --> 00:08:49,796 天と地は階級が違うんだ。 133 00:08:49,796 --> 00:08:52,999 貧民に貴族の気が知れるか? 134 00:08:52,999 --> 00:08:56,236 知れるというなら そいつは異常だ。 135 00:08:56,236 --> 00:09:00,407 でも あなたなら目を通せるはずだ。 ん…? 136 00:09:00,407 --> 00:09:04,744 ウチの図書室に厳重に保管してる➡ 137 00:09:04,744 --> 00:09:08,548 異教 異端者たちの禁書を…! 138 00:09:11,317 --> 00:09:13,887 …その話をするな。 139 00:09:13,887 --> 00:09:16,556 私は知る資格がある。 140 00:09:16,556 --> 00:09:19,058 神によって能力が与えられたのに➡ 141 00:09:19,058 --> 00:09:22,362 何故 人間に制限されなければならないのか!! 142 00:09:22,362 --> 00:09:25,265 好奇心は罪だからだ!! 143 00:09:25,265 --> 00:09:28,835 聖書にそう解釈できる記述もある! 144 00:09:28,835 --> 00:09:33,006 君は人より その欲が強い! 145 00:09:33,006 --> 00:09:36,876 間違っても禁書を読もうなどと思うな! 146 00:09:36,876 --> 00:09:41,581 体罰ではすまんぞ。 どうするんです? 147 00:09:41,581 --> 00:09:43,983 目玉を 焼く。 148 00:09:45,518 --> 00:09:51,257 それと当分の間 君は理論研究禁止だ。は? 149 00:09:51,257 --> 00:09:54,260 君に研究はまだ早かった。 150 00:09:54,260 --> 00:09:59,365 知識ではなく 精神がな。 不毛な処罰です。 151 00:09:59,365 --> 00:10:02,769 (修道院長)では 神のご加護を。 152 00:10:02,769 --> 00:10:04,771 (ドアが閉まる音) 153 00:10:09,542 --> 00:10:13,813 クソッ。 なんでこんな誰にでもできること…。 154 00:10:13,813 --> 00:10:16,316 私にふさわしくない。 155 00:10:16,316 --> 00:10:19,719 <もうここで得られるものは全て得たし➡ 156 00:10:19,719 --> 00:10:22,422 還俗して大学でも行くか> 157 00:10:22,422 --> 00:10:24,357 …む。 158 00:10:24,357 --> 00:10:26,893 <全く不用心な…。➡ 159 00:10:26,893 --> 00:10:30,396 そんな院長に 思慮深さを説かれたくなど…> 160 00:10:30,396 --> 00:10:32,332 ん? 161 00:10:32,332 --> 00:10:34,534 なんだ あの表紙…? 162 00:10:38,605 --> 00:10:41,107 はっ! うっぐっ! くっ…! 163 00:10:42,609 --> 00:10:47,213 この小口の刻印… やっぱり 禁書だ。 164 00:10:47,213 --> 00:10:50,450 しかも“宇宙に関する禁忌”。 165 00:10:50,450 --> 00:10:55,255 ふっ… この前の話で気になったのか? 166 00:10:55,255 --> 00:10:58,858 自分だって好奇心に弱いじゃないか。 167 00:11:03,763 --> 00:11:06,599 (激しい鼓動) 168 00:11:06,599 --> 00:11:08,568 …ッ! 169 00:11:08,568 --> 00:11:10,570 (激しい鼓動) 170 00:11:12,405 --> 00:11:14,374 (修道士たち)っ⁉ ん…?っ! 171 00:11:14,374 --> 00:11:17,777 私の部屋で何をしている? 172 00:11:17,777 --> 00:11:20,613 (修道士)お お前まさか それっ⁉ 173 00:11:20,613 --> 00:11:25,585 待て。 まだ君が読んでいるところを見てない。 174 00:11:25,585 --> 00:11:28,087 今なら間に合う。 175 00:11:28,087 --> 00:11:31,124 それを置いて立ち去れ。 176 00:11:31,124 --> 00:11:36,729 ウチの修道院から目潰しされた者など 出すわけにはいかん! 177 00:11:36,729 --> 00:11:39,966 ましてや 私の代からなど…。 178 00:11:39,966 --> 00:11:43,736 もし その本を開いたら 一瞬で取り押さえる。 179 00:11:43,736 --> 00:11:47,640 読む暇などない。 そんなの不毛だろう? 180 00:11:49,509 --> 00:11:54,180 そのとおりですね。 本を開くのは一瞬でしょう。 181 00:11:54,180 --> 00:11:57,784 …でも 私はずっと待ってた! 182 00:11:59,752 --> 00:12:03,022 そんな特別な一瞬を!! 183 00:12:03,022 --> 00:12:04,958 残念だよ。 184 00:12:04,958 --> 00:12:09,162 (早い口調で)<「太陽測距法により 太陽は地球の約109倍の大きさとなる。➡ 185 00:12:09,162 --> 00:12:11,564 これにより――…」> (取り押さえられる音) 186 00:12:13,566 --> 00:12:17,036 (バデーニ) グフッ… こっ こんなこと続けたら➡ 187 00:12:17,036 --> 00:12:19,305 教会正統派は終わるぞ!! 188 00:12:19,305 --> 00:12:23,509 教皇は 世俗化し 修道院は戒律で思考停止! 189 00:12:23,509 --> 00:12:26,879 教会は免罪符で金を稼いでる!! 190 00:12:26,879 --> 00:12:29,716 これで迷える者の希望に なれるのか⁉ 191 00:12:29,716 --> 00:12:32,385 このままでは近いうちに 対抗勢力によって➡ 192 00:12:32,385 --> 00:12:35,288 教会正統派は崩れるぞ! (修道士たち)くっ…! 193 00:12:35,288 --> 00:12:40,193 そしたら… そしたら私の格も墜ちるではないか…! 194 00:12:42,795 --> 00:12:44,731 君は左遷だ。 195 00:12:44,731 --> 00:12:49,402 研究など無縁な長閑な所で 一生を終えろ。 196 00:12:49,402 --> 00:12:51,938 っ…! (修道院長)還俗してもムダだ。➡ 197 00:12:51,938 --> 00:12:56,743 我が修道院の力で 大学は立ち入り禁止にする。 198 00:12:56,743 --> 00:13:00,580 うぁっ! はっ はっ…! (修道院長)が その前に眼を焼く。 199 00:13:00,580 --> 00:13:03,616 運が良ければ失明は免れる。 200 00:13:03,616 --> 00:13:06,786 片目だけでも残るといいな。 201 00:13:06,786 --> 00:13:09,689 ふぅっ ふぅっ ふっ…。では 神の御加護を。 202 00:13:12,358 --> 00:13:15,061 ⚟(オクジーの足音) 203 00:13:15,061 --> 00:13:17,163 (バデーニ)待て。 204 00:13:20,299 --> 00:13:22,335 (バデーニ)書類を見よう。 えっ? 205 00:13:22,335 --> 00:13:27,707 (バデーニ)ただし その観測日誌の続きを 君が記録するのが条件だ。 206 00:13:27,707 --> 00:13:31,911 えっ お 俺が? 手始めに今日の火星だ。 207 00:13:31,911 --> 00:13:34,947 ちょうど私の研究に必要でな。 208 00:13:34,947 --> 00:13:39,385 観測方法は その日誌の絵で だいたいわかるだろ。 209 00:13:39,385 --> 00:13:41,621 (オクジー)えっ。 えっ? 210 00:13:41,621 --> 00:13:45,992 君のような下級市民の 怪しい話に協力するんだ。 211 00:13:45,992 --> 00:13:48,895 せめてこのくらい貢献してくれ。 212 00:13:48,895 --> 00:13:51,097 あっ あの! でも! 213 00:13:53,099 --> 00:13:57,904 俺… 夜空が見られないんですけど…。 214 00:13:57,904 --> 00:14:00,573 …申し訳ないが➡ 215 00:14:00,573 --> 00:14:04,377 冗談につきあってるヒマはない。 では。 216 00:14:09,882 --> 00:14:11,884 んっ…。 217 00:14:15,254 --> 00:14:18,691 っ… んっ…。 218 00:14:18,691 --> 00:14:20,993 んっ…! 219 00:14:20,993 --> 00:14:23,763 無理だ。 できない…。 220 00:14:23,763 --> 00:14:26,666 そもそも なんで俺がこんなことしなきゃ…。 221 00:14:26,666 --> 00:14:28,668 …ん? 222 00:14:28,668 --> 00:14:33,272 いや こんなことしなきゃいけない 理由なんてないぞ…。 223 00:14:33,272 --> 00:14:35,575 そ そうだ。 224 00:14:35,575 --> 00:14:39,812 <すぐにこんなの捨てて 街へ戻って全部やり直そう。➡ 225 00:14:39,812 --> 00:14:45,284 元の街に帰れなくても 流れ者として 別の街で一から人生を始めればいい。➡ 226 00:14:45,284 --> 00:14:49,088 階級は最下層に落ちるけど もともと似たようなもんだ。➡ 227 00:14:49,088 --> 00:14:51,991 元より この世界において苦しいのは当然。➡ 228 00:14:51,991 --> 00:14:55,695 ここを耐えれば俺には死後 天国がある!> 229 00:14:57,830 --> 00:15:00,533 <そうだ 天国だ…!> 230 00:15:04,070 --> 00:15:06,072 あっ。 231 00:15:12,678 --> 00:15:15,281 <それに引き替え あの人たちは➡ 232 00:15:15,281 --> 00:15:18,017 俺の人生で たった二人だけの➡ 233 00:15:18,017 --> 00:15:21,687 天国より この世を重視した人たちだ。➡ 234 00:15:21,687 --> 00:15:26,492 彼らの地獄行きは確実だ。 そんな人の言うこと聞いちゃダメだ> 235 00:15:28,127 --> 00:15:32,965 <だけど 俺の人生で たった二人…➡ 236 00:15:32,965 --> 00:15:36,402 たった二人 彼らだけが➡ 237 00:15:36,402 --> 00:15:38,371 死ぬ その瞬間> 238 00:15:38,371 --> 00:15:41,374 満足そうな顔をしてた…。 239 00:15:44,010 --> 00:15:48,514 一体 何故だ。 地獄へ行くのに何故あんな顔…。 240 00:15:55,221 --> 00:15:58,090 いや! 見たって 何も変わらない! 241 00:15:58,090 --> 00:16:00,126 期待なんてやめろ! 242 00:16:00,126 --> 00:16:03,729 (異端者の声) 絶望は 希望に転化し得るのだ。 243 00:16:03,729 --> 00:16:06,632 (グラスの声)この世界に期待することだ! 244 00:16:06,632 --> 00:16:16,108 ♬~ 245 00:16:16,108 --> 00:16:19,846 ダメだ… でも…! 246 00:16:19,846 --> 00:16:21,848 …っ! 247 00:16:26,552 --> 00:16:31,057 (バデーニ)うむ 初めてにしては上出来だ。 248 00:16:31,057 --> 00:16:34,961 では案内してもらおうか。 っ!書類とやらに。 249 00:16:44,370 --> 00:16:47,874 人生が変わるような ものでしたか? 250 00:16:47,874 --> 00:16:52,511 いや違う… これは➡ 251 00:16:52,511 --> 00:16:55,114 宇宙が変わるぞ。 252 00:17:02,188 --> 00:17:06,759 え…? 宇宙が… 変わる…? 253 00:17:06,759 --> 00:17:08,794 ええっ⁉ 254 00:17:08,794 --> 00:17:11,330 だっ 大丈夫ですか⁉ オエッ オォロロ…。 255 00:17:11,330 --> 00:17:14,867 ッグ… ハァッ ハァッ ハァ…。 256 00:17:14,867 --> 00:17:17,570 大丈夫だ…。 257 00:17:17,570 --> 00:17:22,542 今吐き出したのは くだらん常識と積み上げた思い込みだ。 258 00:17:22,542 --> 00:17:26,279 フフフッ… これは凄いぞ。 259 00:17:26,279 --> 00:17:29,181 やはり神は間違えてなかったんだ。 260 00:17:29,181 --> 00:17:33,452 それどころか 人類に理解可能に宇宙を創った。 261 00:17:33,452 --> 00:17:37,223 確かに教会では少し問題があるが…。 262 00:17:37,223 --> 00:17:42,595 いや 適切な解釈を見つければ 公表も不可能ではないか? 263 00:17:42,595 --> 00:17:47,266 一体 何が書かれているのですか? 264 00:17:47,266 --> 00:17:50,603 ああ… 端的に言うと…。 265 00:17:50,603 --> 00:17:55,141 (早い口調で)アリストテレスの同心球理論と プトレマイオスの離心円・周転円理論の乖離と➡ 266 00:17:55,141 --> 00:17:57,376 それぞれの欠点の指摘。 267 00:17:57,376 --> 00:18:00,146 あ あ…。 さらに 今用いられている全ての理論において➡ 268 00:18:00,146 --> 00:18:04,650 宇宙全体と その部分に均衡がなく それぞれ独立した計算で記述され➡ 269 00:18:04,650 --> 00:18:07,219 体系化されていないことに対する異議。 270 00:18:07,219 --> 00:18:10,890 そして これらの問題の根本原因は 天界における相当数の➡ 271 00:18:10,890 --> 00:18:13,559 不規則な運動に起因しているが➡ 272 00:18:13,559 --> 00:18:17,129 それを単純に説明し得る ある運動の提示――。 273 00:18:17,129 --> 00:18:20,833 は⁉ まぁ もっと端的に言うと➡ 274 00:18:20,833 --> 00:18:23,736 「地球は動いてる」。 275 00:18:28,574 --> 00:18:32,211 全然動いてないですが…。 …だな。 276 00:18:32,211 --> 00:18:36,782 だが 間違いにしては ここに書かれてることは あまりにも…➡ 277 00:18:36,782 --> 00:18:39,285 合理的だ。 っ! 278 00:18:39,285 --> 00:18:42,188 一つ実験をしよう。 279 00:18:42,188 --> 00:18:46,792 例の観測日誌を見て ここ2年の火星の軌道を描いてくれ。 280 00:18:49,929 --> 00:18:52,365 えーと…。 281 00:18:52,365 --> 00:18:55,668 (図を描く音) 282 00:18:58,237 --> 00:19:02,041 こうですか? ああ。 いいだろう。 283 00:19:02,041 --> 00:19:05,911 (バデーニ)これが天界における最大の謎。 284 00:19:05,911 --> 00:19:09,348 惑星の逆行だ。 285 00:19:09,348 --> 00:19:12,885 人類は この原因を解明することは諦め➡ 286 00:19:12,885 --> 00:19:16,188 せめて計算は可能にしようと努めた。 287 00:19:16,188 --> 00:19:21,861 その結果 理論は複雑化し 用いられる仮説も増えた。 288 00:19:21,861 --> 00:19:25,865 全ては惑星が 前にだけ進んでくれないからだ。 289 00:19:25,865 --> 00:19:29,535 でも実際は違ったんだ。 ん…? 290 00:19:29,535 --> 00:19:34,373 惑星は 前にだけ進みながら 後戻りしてたんだ。 291 00:19:34,373 --> 00:19:37,276 は? そんなの不可能じゃ…。 292 00:19:39,078 --> 00:19:41,480 ああ。 不可能だ。 293 00:19:43,249 --> 00:19:46,252 地球が静止してる場合はな。 294 00:19:48,554 --> 00:19:51,557 だが地球が動けば…➡ 295 00:19:51,557 --> 00:19:53,559 可能だ。 296 00:20:01,233 --> 00:20:04,370 …何してるんです? 297 00:20:04,370 --> 00:20:07,173 宇宙を再現してる。 298 00:20:07,173 --> 00:20:12,978 (足音) 299 00:20:12,978 --> 00:20:18,617 この枝を中心に 私より内側の円を 回るように追い越してくれ。 300 00:20:18,617 --> 00:20:20,553 え。 (バデーニ)早く。 301 00:20:20,553 --> 00:20:22,488 あぁ… っ! 302 00:20:22,488 --> 00:20:24,490 (走る足音) 303 00:20:30,696 --> 00:20:34,033 ハァ ハァ… 今ので何が? 304 00:20:34,033 --> 00:20:35,968 ああ…。 う…。 305 00:20:35,968 --> 00:20:42,742 今の一瞬に プトレマイオスの千年を覆す 秘密が隠されていたぞ。 306 00:20:42,742 --> 00:20:45,611 っ! わからないか? 307 00:20:45,611 --> 00:20:51,150 私を火星 君を地球とした時に 君からはどう見えた? 308 00:20:51,150 --> 00:20:53,652 …え? 309 00:20:53,652 --> 00:20:58,090 (バデーニ)まず最初の地点では 君から見て前方にいる私は➡ 310 00:20:58,090 --> 00:21:00,993 前に向かって順行してたはずだ。 311 00:21:00,993 --> 00:21:03,996 しかし速度の違いから距離が縮まる。 312 00:21:03,996 --> 00:21:10,236 ここで君から見ると 私が順行する速度は どんどん遅くなっていく。 313 00:21:10,236 --> 00:21:14,140 そしてついに並び 追い越す一瞬➡ 314 00:21:14,140 --> 00:21:20,012 地球の君から見て火星の私は 後ろに逆行して見える。 315 00:21:20,012 --> 00:21:26,018 そして完全に追い越してしまえば 再び前進しているように見える。 316 00:21:26,018 --> 00:21:29,588 もし逆行は 本当に行われているのではなく➡ 317 00:21:29,588 --> 00:21:34,827 地球から観測しているせいで そう見えているだけだとしたら――…➡ 318 00:21:34,827 --> 00:21:37,863 本来の惑星の軌道は こうだ。 319 00:21:37,863 --> 00:21:42,968 どちらがよりシンプルか わかるだろ? …えぇ。 320 00:21:42,968 --> 00:21:47,173 君 この話の意味がわかるか? 321 00:21:47,173 --> 00:21:50,409 あの石箱は人類に説いている。 322 00:21:50,409 --> 00:21:56,215 天界は崇高で荘厳で 偉大で広大で➡ 323 00:21:56,215 --> 00:22:01,453 そして 地球と調和している――と。 324 00:22:01,453 --> 00:22:03,389 …っ!! 325 00:22:03,389 --> 00:22:07,092 って 天界と地球が調和…? 326 00:22:07,092 --> 00:22:12,498 ま… まさか天界は この地球と一緒で… 汚れてると? 327 00:22:12,498 --> 00:22:14,567 若しくは➡ 328 00:22:14,567 --> 00:22:19,605 我々の住む大地は 醜い底辺として切り離されてなどなく…。 329 00:22:19,605 --> 00:22:22,575 っ! 疾うの昔から➡ 330 00:22:22,575 --> 00:22:26,879 あの美しさの一員だったのかもしれない。 331 00:22:26,879 --> 00:22:31,383 少なくとも私は そっちを信じる。 332 00:22:31,383 --> 00:22:35,087 そ… そんな…。 333 00:22:35,087 --> 00:22:38,724 天と… 地が…➡ 334 00:22:38,724 --> 00:22:41,660 一つ… なんて。 335 00:22:41,660 --> 00:22:47,800 ♬~ 336 00:22:47,800 --> 00:22:50,336 (オクジー)この空… なんか…。 337 00:22:50,336 --> 00:22:53,038 慈悲深さを感じるか。 338 00:22:53,038 --> 00:22:57,543 この空が私に どデカい利益を与えてくださる。 339 00:22:57,543 --> 00:23:03,015 いや… そうなのかもしれませんが…。 340 00:23:03,015 --> 00:23:06,785 もっとこう 単純に…。 ん…? 341 00:23:06,785 --> 00:23:11,390 今日の空 なんか綺麗じゃないですか? 342 00:23:13,559 --> 00:23:16,095 フッ…。 343 00:23:16,095 --> 00:23:21,400 その“なんか”を “絶対”にする方法が 一つだけあるぞ。 344 00:23:23,269 --> 00:23:26,238 世界を 動かせ。 345 00:23:26,238 --> 00:23:28,240 ハ…。 346 00:23:30,042 --> 00:23:45,424 ♬~ 347 00:23:45,424 --> 00:23:49,295 ♬「描き始めた あなたは小さく」 348 00:23:49,295 --> 00:23:53,165 ♬「ため息をした あんなに大きく」 349 00:23:53,165 --> 00:23:57,069 ♬「波打つ窓の光の束が」 350 00:23:57,069 --> 00:24:02,474 ♬「あなたの横顔に跳ねている」 351 00:24:04,877 --> 00:24:08,714 ♬「僕の体は雨の集まり」 352 00:24:08,714 --> 00:24:12,618 ♬「貴方の指は 春の木漏れ日」 353 00:24:12,618 --> 00:24:16,689 ♬「紙に弾けたインクの影が」 354 00:24:16,689 --> 00:24:21,694 ♬「僕らの横顔を描写している」 355 00:24:23,562 --> 00:24:32,004 ♬「長い夢を見た 僕らは気球にいた」 356 00:24:32,004 --> 00:24:40,279 ♬「遠い国の誰かが月と見間違ったらいい」 357 00:24:40,279 --> 00:24:48,487 ♬「あの海を見たら 魂が酷く跳ねた」 358 00:24:48,487 --> 00:24:53,125 ♬「白い魚の群れに」 359 00:24:53,125 --> 00:24:56,128 ♬「あなたは見惚れている」