1 00:01:44,371 --> 00:01:47,541 (明日風)フフッ 制服デートってやつです。 2 00:01:47,541 --> 00:01:51,044 (朔)なんでまた急に。 デートみたいなことは➨ 3 00:01:51,044 --> 00:01:53,380 やめたほうがいいと 聞いてたけどな。 4 00:01:53,380 --> 00:01:56,550 そんな昔のことは 忘れてしまったよ。 5 00:01:56,550 --> 00:02:00,654 今日じゃないとダメなの? 明日のことはわからない。 6 00:02:00,654 --> 00:02:02,656 『カサブランカ』かよ。 7 00:02:02,656 --> 00:02:05,659 (明日風)あのね 気付いたの…。 8 00:02:05,659 --> 00:02:09,496 私たちが互いに高校生なのは 今しかなくて➨ 9 00:02:09,496 --> 00:02:15,002 10年後にどれだけ求めても この今は戻ってこないんだって。 10 00:02:15,002 --> 00:02:17,104 だから制服デート? 11 00:02:20,173 --> 00:02:23,010 いつか我慢できずに そういうことを言いだすのは➨ 12 00:02:23,010 --> 00:02:25,345 俺のほうだと思ってたよ。 13 00:02:25,345 --> 00:02:29,516 何も知らなければ 私は幻の女のままで➨ 14 00:02:29,516 --> 00:02:32,519 君の前から ふっと消えられたのにな。 15 00:02:34,521 --> 00:02:37,357 幻の女 か。 16 00:02:37,357 --> 00:02:41,695 君のクラスに行った日の夜 眠れなかったんだ。 17 00:02:41,695 --> 00:02:44,031 だから カラカラ振って➨ 18 00:02:44,031 --> 00:02:49,202 缶の中に残ってるドロップの数を 確認するみたいに理由を考えた。 19 00:02:49,202 --> 00:02:52,706 それで最後に 心の蓋を外してみたら➨ 20 00:02:52,706 --> 00:02:55,709 コロンって答えが出てきたの。 21 00:02:55,709 --> 00:02:59,880 ああ ただの高校生 西野明日風として➨ 22 00:02:59,880 --> 00:03:02,683 君と青春してみたかったんだって。 23 00:03:06,153 --> 00:03:09,823 例えば…。 こういう例えばなら➨ 24 00:03:09,823 --> 00:03:13,660 試してみる時間と理由は 残されていると思わない? 25 00:03:13,660 --> 00:03:18,498 そっか。 明日姉って 思ったよりも 俺のこと気に入ってたんだ。 26 00:03:18,498 --> 00:03:21,668 知らなかったの? 27 00:03:21,668 --> 00:03:26,006 私はずっと前から 君のことが大好きなんだよ。 28 00:03:26,006 --> 00:03:28,008 あっ…! 29 00:03:35,849 --> 00:03:39,019 まずは高校生っぽい 遊びでもする? 30 00:03:39,019 --> 00:03:41,121 うん。 31 00:03:45,192 --> 00:03:47,527 (朔)ん~…。 32 00:03:47,527 --> 00:03:51,031 デートで分けていいのは 夏の日のチューペットだけ! 33 00:03:51,031 --> 00:03:53,366 (朔)えっ? 34 00:03:53,366 --> 00:03:55,368 (明日風)そうやって2年越しで➨ 35 00:03:55,368 --> 00:03:57,370 手紙のやり取りをするんだけど➨ 36 00:03:57,370 --> 00:04:00,974 もしも君と私だったら どんな言葉を交わすと思う? 37 00:04:00,974 --> 00:04:03,643 《って 近い近い》 38 00:04:03,643 --> 00:04:05,645 はあ~。 39 00:04:05,645 --> 00:04:09,149 君はもっと平然としているのかと 思ってたよ。 40 00:04:09,149 --> 00:04:11,985 憧れの先輩との初デート。 41 00:04:11,985 --> 00:04:15,155 ドギマギしない男がいるのなら 教えてほしいな。 42 00:04:15,155 --> 00:04:19,493 慣れてるでしょ? 女の子とのあの程度の距離感は。 43 00:04:19,493 --> 00:04:23,163 慣れてねえよ 明日姉とのああいう距離感は。 44 00:04:23,163 --> 00:04:26,500 フフッ。 45 00:04:26,500 --> 00:04:28,802 あっ! (キューの落ちる音) 46 00:04:32,672 --> 00:04:36,343 ねぇ 君は気付いてる? 47 00:04:36,343 --> 00:04:39,012 すてきな後輩との初デートで➨ 48 00:04:39,012 --> 00:04:41,848 ドギマギしない女の子も いないんだよ。 49 00:04:41,848 --> 00:04:43,850 あっ! 50 00:04:45,852 --> 00:04:49,689 実は こういうとこ初めてなんだ。 そうなの? 51 00:04:49,689 --> 00:04:55,695 うちって母が中学 父は高校の教師で結構厳格なの。 52 00:04:55,695 --> 00:05:01,801 お祭りで食べ物を買うのもダメ こういう場所に来るのもダメ…。 53 00:05:01,801 --> 00:05:03,970 屋台の大ざっぱな焼きそばや➨ 54 00:05:03,970 --> 00:05:07,307 ○○焼きをラムネで流し込む おいしさを知らないなんて➨ 55 00:05:07,307 --> 00:05:10,477 人生の半分は損してるね。 56 00:05:10,477 --> 00:05:13,980 それって 君がこの間 七瀬さんとしたことじゃんか。 57 00:05:13,980 --> 00:05:15,982 んっ…。 58 00:05:15,982 --> 00:05:19,986 だけど 本当は遠い昔に一度だけ➨ 59 00:05:19,986 --> 00:05:22,322 連れていって もらったことがあるの。 60 00:05:22,322 --> 00:05:25,992 ご両親に? さあ? 61 00:05:25,992 --> 00:05:28,094 ねぇ 教えて。 62 00:05:30,163 --> 00:05:34,834 (明日風)こう? あれ? ええと…。 63 00:05:34,834 --> 00:05:37,837 うう~…。 64 00:05:37,837 --> 00:05:40,173 だぁ~っ! こうだってば! 65 00:05:40,173 --> 00:05:45,178 よし。 んっ! それで 次は? 66 00:05:45,178 --> 00:05:47,681 んっ! あとは…! 67 00:05:47,681 --> 00:05:52,185 まっすぐ突き出すだけだよ。 こう? 68 00:05:52,185 --> 00:05:54,387 そっ! そんな感じ。 69 00:06:00,794 --> 00:06:03,296 初めてにしては悪くないよ。 70 00:06:03,296 --> 00:06:06,633 ちょっとコツつかんだかも。 見ててね。 71 00:06:06,633 --> 00:06:08,835 うん。 んっ! 72 00:06:13,807 --> 00:06:17,644 明日姉! ネクタイ ネクタイ締めて! えっ? 73 00:06:17,644 --> 00:06:19,646 んっ? 74 00:06:24,150 --> 00:06:27,153 見ました? 見なかったことにしようと➨ 75 00:06:27,153 --> 00:06:30,156 努力してます。 どこまで見えました? 76 00:06:30,156 --> 00:06:34,661 明日姉ってターコイズブルー好きですよね。 77 00:06:34,661 --> 00:06:38,164 もうお嫁に行けない。 フッ。 78 00:06:38,164 --> 00:06:41,501 責任取ってあげようか? ハラキリ? 79 00:06:41,501 --> 00:06:44,671 もちっと穏便に…。 80 00:06:44,671 --> 00:06:49,376 じゃあ 君の歌を聴かせて。 81 00:06:51,678 --> 00:06:54,848 あれがいいな。 んっ? 82 00:06:54,848 --> 00:06:57,851 俺のことを思い出すって 言ってた曲だね。 83 00:06:57,851 --> 00:07:01,788 正確に言うと あのころの君を ね。 84 00:07:01,788 --> 00:07:05,959 《俺が野球を辞めて 腐っていた時期。 そして➨ 85 00:07:05,959 --> 00:07:09,296 この人に初めて出会った去年の秋。 86 00:07:09,296 --> 00:07:11,631 自分の精いっぱいを ささげていたものが➨ 87 00:07:11,631 --> 00:07:13,633 両手から滑り落ちて➨ 88 00:07:13,633 --> 00:07:17,804 どうしようもなく やるせなさと 憤りを覚えていた あのころ。 89 00:07:17,804 --> 00:07:21,808 明日姉は 俺がずっと憧れて 手を伸ばしていた➨ 90 00:07:21,808 --> 00:07:24,811 月そのものみたいに見えた。 91 00:07:24,811 --> 00:07:27,647 誰かの目や 誰かのずるさや➨ 92 00:07:27,647 --> 00:07:30,817 誰かの弱さや汚さなんか 相手にしないで➨ 93 00:07:30,817 --> 00:07:34,988 自分が信じた道を 当たり前のように歩く。 94 00:07:34,988 --> 00:07:37,824 もしも こんなふうに 在れていたのならば➨ 95 00:07:37,824 --> 00:07:41,494 こんなふうにならなかったのに。 96 00:07:41,494 --> 00:07:44,998 例えば こんな会話をした》 97 00:07:44,998 --> 00:07:46,100 ⸨格好よく生きるために➨ 98 00:07:46,100 --> 00:07:49,002 かっこ悪くならなきゃ いけないとき➨ 99 00:07:49,002 --> 00:07:51,004 どうすればいいんだろう。 100 00:07:51,004 --> 00:07:53,340 君にとってのかっこ悪いが➨ 101 00:07:53,340 --> 00:07:56,509 外から見てもかっこ悪いとは かぎらないよ。 102 00:07:56,509 --> 00:07:58,678 野良猫が近所のおばあちゃんに➨ 103 00:07:58,678 --> 00:08:02,615 こび売って餌をもらっていたら かっこ悪いと思わない? 104 00:08:02,615 --> 00:08:04,617 違うよ。 105 00:08:04,617 --> 00:08:07,954 野良猫で在り続けるために そうしているの。 106 00:08:07,954 --> 00:08:10,123 そのうち思い出すよ➨ 107 00:08:10,123 --> 00:08:12,125 きっと君なら⸩ 108 00:08:14,127 --> 00:08:17,297 《朔:例えば こんな会話をした》 109 00:08:17,297 --> 00:08:19,466 ⸨どうせ裏切られるのなら➨ 110 00:08:19,466 --> 00:08:22,635 最初から 信じなければいいと思う? 111 00:08:22,635 --> 00:08:25,472 「どうせ」の数に 反比例するように➨ 112 00:08:25,472 --> 00:08:28,575 人生はモノクロになって いくんじゃないかな。 113 00:08:32,645 --> 00:08:34,981 美しく生きられないのなら➨ 114 00:08:34,981 --> 00:08:38,151 死んでいるのと 大した違いはない か。 115 00:08:38,151 --> 00:08:41,654 そっちのほうが ずっと君らしいよ⸩ 116 00:08:43,656 --> 00:08:46,659 《例えば こんな一筆箋をもらった》 117 00:08:46,659 --> 00:08:48,661 ⸨《明日風:「君へ。 118 00:08:48,661 --> 00:08:51,331 言葉には力があると思っています。 119 00:08:51,331 --> 00:08:53,333 心が疲れているときは➨ 120 00:08:53,333 --> 00:08:56,336 自然と染み入るような 音楽とともに。 121 00:08:56,336 --> 00:09:00,607 どうか君の隙間を埋められるピースが 見つかりますようにと➨ 122 00:09:00,607 --> 00:09:04,611 願いを込めて。 明日風」》⸩ 123 00:09:04,611 --> 00:09:10,283 《朔:故郷を離れ 憧れの街へと旅立つ歌。 124 00:09:10,283 --> 00:09:12,952 どんなに遠く離れても いつだって➨ 125 00:09:12,952 --> 00:09:15,288 帰ってこられる場所は ここにあるよ。 126 00:09:15,288 --> 00:09:18,792 同じ空の下から あなたのことを思っているよ。 127 00:09:18,792 --> 00:09:23,296 そんなふうに祈りながら 俺がそうしてもらったように➨ 128 00:09:23,296 --> 00:09:26,633 借り物の言葉とやり方だけど➨ 129 00:09:26,633 --> 00:09:30,837 今の明日姉に 届くように…》 130 00:09:33,973 --> 00:09:37,977 ねぇ ちょっと らしくないこと 聞いてもいいかな? 131 00:09:37,977 --> 00:09:41,314 んっ? 君には夢がある? 132 00:09:41,314 --> 00:09:45,151 去年までは メジャーで活躍する野球選手。 133 00:09:45,151 --> 00:09:49,823 あっ! ごめんなさい やっちゃった…。 134 00:09:49,823 --> 00:09:51,825 当面はそうだな…。 135 00:09:51,825 --> 00:09:56,329 新しい夢を 見つけることが夢 かな。 136 00:09:56,329 --> 00:09:59,499 明日姉は? って聞いてもいい? 137 00:09:59,499 --> 00:10:01,501 うん…。 138 00:10:01,501 --> 00:10:04,838 言葉を届ける仕事に就きたいの。 139 00:10:04,838 --> 00:10:08,508 小説家ってこと? 140 00:10:08,508 --> 00:10:12,679 イチ読者でありながら 本を作ることに携われる➨ 141 00:10:12,679 --> 00:10:15,682 小説の編集者になりたいんだ。 142 00:10:15,682 --> 00:10:17,684 編集者。 143 00:10:17,684 --> 00:10:20,186 (明日風)小さい頃から いろんな物語と➨ 144 00:10:20,186 --> 00:10:22,689 言葉に囲まれていたの。 145 00:10:22,689 --> 00:10:25,692 勇気をもらって 支えられて…。 146 00:10:25,692 --> 00:10:28,695 たとえ私のヒーローには 手が届かなくても➨ 147 00:10:28,695 --> 00:10:31,865 それに近いものに 触れることはできた。 148 00:10:31,865 --> 00:10:34,033 (朔)ちょっとわかる気がするな。 149 00:10:34,033 --> 00:10:38,371 だからね そういう物語を生み出して➨ 150 00:10:38,371 --> 00:10:41,040 届けるためのお手伝いがしたい。 151 00:10:41,040 --> 00:10:44,043 こういうのって チープかな? 152 00:10:44,043 --> 00:10:46,045 つまりその…。 153 00:10:46,045 --> 00:10:49,549 単純に本が好きだから それに関わる仕事に就きたくて➨ 154 00:10:49,549 --> 00:10:54,220 なんかぼんやりしてるというか 安易というか…。 155 00:10:54,220 --> 00:10:57,223 《明日姉は 引け目を感じているんだ。 156 00:10:57,223 --> 00:11:02,328 誰もが納得できるような できれば劇的でドラマチックな➨ 157 00:11:02,328 --> 00:11:04,330 この年になってまだ➨ 158 00:11:04,330 --> 00:11:08,501 夢を語るに足る根拠が 必要なんじゃないかと》 159 00:11:08,501 --> 00:11:14,007 それは 十分夢を追いかける理由に なるんじゃないかな? 160 00:11:14,007 --> 00:11:17,343 そっか… ありがとう。 161 00:11:17,343 --> 00:11:21,014 本当は少し自信がなかった。 162 00:11:21,014 --> 00:11:26,019 東京は編集者を目指すために? うん。 私って➨ 163 00:11:26,019 --> 00:11:29,022 普通の人たちが当たり前のように 経験していることを➨ 164 00:11:29,022 --> 00:11:31,524 経験してなかったりするから。 165 00:11:31,524 --> 00:11:36,863 《朔:たぶんそれは とても正しい 夢への一歩目なのだと思う》 166 00:11:36,863 --> 00:11:40,366 私がこの町を 大好きで大嫌いって言ったの➨ 167 00:11:40,366 --> 00:11:42,869 覚えてる? うん。 168 00:11:42,869 --> 00:11:47,707 私 ずっとここにいる自分は 簡単に想像できるんだ。 169 00:11:47,707 --> 00:11:51,044 福大に行って 手堅く就職して➨ 170 00:11:51,044 --> 00:11:54,714 まだ名前も知らない誰かの お嫁さんになるの。 171 00:11:54,714 --> 00:11:59,385 田舎町に染まっていく 自分が怖い。 172 00:11:59,385 --> 00:12:03,823 じゃあ 決意が固まりつつあると 言ってたのは 東京だ? 173 00:12:03,823 --> 00:12:08,995 その答えは… もうちょっとだけ 保留にしておきたいかな。 174 00:12:08,995 --> 00:12:11,097 そっか。 175 00:12:13,499 --> 00:12:15,802 んっ? (荷台を叩く音) 176 00:12:21,841 --> 00:12:23,843 んっ! 177 00:12:26,846 --> 00:12:28,848 フッ。 178 00:12:32,518 --> 00:12:35,355 俺も小説家を目指すって 言いだすかもよ。 179 00:12:35,355 --> 00:12:39,859 そしたら担当編集者は私だ? かもね。 180 00:12:39,859 --> 00:12:46,032 東京に出た私が ある日 君が ペンネームで書いた小説を見つけるの。 181 00:12:46,032 --> 00:12:50,536 すてきな物語に さめざめ涙して 書籍化を打診したら➨ 182 00:12:50,536 --> 00:12:53,373 打ち合わせ場所に君が現れる。 183 00:12:53,373 --> 00:12:56,042 まるで おとぎ話だ。 184 00:12:56,042 --> 00:12:59,379 おとぎ話みたいな現実だって あるんだよ。 185 00:12:59,379 --> 00:13:02,682 本当は すぐ近くに。 186 00:13:07,153 --> 00:13:09,822 明日姉っ。 な~に~? 187 00:13:09,822 --> 00:13:11,991 東京に行くなら それまでに➨ 188 00:13:11,991 --> 00:13:14,661 ここでしか見られないものを もっと見よう。 189 00:13:14,661 --> 00:13:20,166 ここでしかできない会話をして ここでしか流せない涙を流そう。 190 00:13:20,166 --> 00:13:23,169 遠くに離れても 心はいつだって➨ 191 00:13:23,169 --> 00:13:27,006 この場所に帰ってこられるように。 192 00:13:27,006 --> 00:13:29,108 うん! 193 00:13:41,354 --> 00:13:44,857 (夕湖)陽 こういうのも 着てみればいいのに。 194 00:13:44,857 --> 00:13:46,859 (陽)そういうのは夕湖みたいな➨ 195 00:13:46,859 --> 00:13:49,362 女の子らしい子のための服でしょ。 196 00:13:49,362 --> 00:13:52,198 そんなことないよ! 特別な日のために➨ 197 00:13:52,198 --> 00:13:56,202 一着ぐらいは持っておいたら? 特別な日って? 198 00:13:56,202 --> 00:13:59,038 好きな男の子とデートするとか。 199 00:13:59,038 --> 00:14:03,309 ないない。 夕湖 私のこと なんだと思ってんのさ。 200 00:14:03,309 --> 00:14:08,147 かわいい女の子だけど? マジな顔で言われると反応に困る! 201 00:14:08,147 --> 00:14:11,818 ねぇ どう思う? (海人)普通にないっしょ 陽だし。 202 00:14:11,818 --> 00:14:13,820 あんだと こらぁ! 203 00:14:13,820 --> 00:14:16,322 はいはい どうせ旦那も同意見でしょ。 204 00:14:16,322 --> 00:14:19,492 すみませんね~ ちんちくりんの色気なしで~。 205 00:14:19,492 --> 00:14:22,829 いや 陽の女の子らしい格好 見てみたいぞ。 206 00:14:22,829 --> 00:14:25,498 なっ…! (朔)というわけで夕湖ちゃん➨ 207 00:14:25,498 --> 00:14:29,335 べっぴんさんにしてあげて~! か~しこまり~! 208 00:14:29,335 --> 00:14:34,006 (陽)ちょ ちょっと… 待って~! 209 00:14:34,006 --> 00:14:36,509 はいはい ちゅうも~く! 210 00:14:36,509 --> 00:14:39,679 見て見て~。 開けるよ~ 陽! 211 00:14:39,679 --> 00:14:42,181 ちょ 待って…! 212 00:14:42,181 --> 00:14:44,183 (2人)おっ! 213 00:14:44,183 --> 00:14:47,687 恥ずいから… あんま… 見ないで。 214 00:14:47,687 --> 00:14:50,523 夕湖マジック ヤッベ~! 215 00:14:50,523 --> 00:14:53,359 陽じゃないみてえ 女子だ女子! 216 00:14:53,359 --> 00:14:56,362 ぐはっ! (叩く音) 217 00:14:56,362 --> 00:14:58,364 な… なんで!? 218 00:14:58,364 --> 00:15:02,135 やっぱ私は男っぽい格好のほうが 性に合ってるよ。 219 00:15:02,135 --> 00:15:04,470 ぶっちゃけ自分でも…。 (朔)陽。 220 00:15:04,470 --> 00:15:06,639 すごくきれいだ。 221 00:15:06,639 --> 00:15:08,641 はあっ!? 222 00:15:08,641 --> 00:15:10,810 アンタ ここぞとばかりに からかって…! 223 00:15:10,810 --> 00:15:14,147 いや ホントに似合ってるよ。 や… やめて。 224 00:15:14,147 --> 00:15:17,650 ホント ちょっと… なんなん もう。 225 00:15:17,650 --> 00:15:21,154 せっかくだから買っちゃいなよ! うぅ…。 226 00:15:21,154 --> 00:15:24,157 買わないの? うぅ…。 227 00:15:29,495 --> 00:15:33,099 買う。 (2人)フフッ。 228 00:15:38,004 --> 00:15:42,175 そういえばさ アンタって 西野先輩のこと好きなの? 229 00:15:42,175 --> 00:15:45,011 ブフッ! ゴホッ…! (夕湖/海人)えぇ~!? 230 00:15:45,011 --> 00:15:48,815 あ~ あ~。 ほれ口元拭きんしゃい。 231 00:15:50,850 --> 00:15:52,852 おい マジなのかよ。 232 00:15:52,852 --> 00:15:56,022 落ち着けよ。 なんだって急に? 233 00:15:56,022 --> 00:16:00,626 何回か河川敷で見たんだよね 親しげに話してるの。 234 00:16:00,626 --> 00:16:04,463 アンタのああいう顔って 他で見たことないからさ。 235 00:16:04,463 --> 00:16:06,466 んっ…。 おい 朔。 236 00:16:06,466 --> 00:16:08,568 ちょっと黙ってろ。 237 00:16:11,304 --> 00:16:17,310 去年 俺が野球部 辞めた直後に 偶然知り合った人なんだよ。 238 00:16:17,310 --> 00:16:21,147 みんな気を遣って 理由とか聞いてこなかっただろ。 239 00:16:21,147 --> 00:16:24,984 だって朔 何も話さないってオーラ ムンムンだったぜ。 240 00:16:24,984 --> 00:16:27,653 弱ってるのを 見せたくなかったんだよ。 241 00:16:27,653 --> 00:16:31,157 夕湖なんて 毎日泣きそうな顔してたしさ。 242 00:16:31,157 --> 00:16:34,994 だって! あのころの朔 いつもと全然違ったもん。 243 00:16:34,994 --> 00:16:36,996 何にも教えてくれないし➨ 244 00:16:36,996 --> 00:16:39,832 どうやって接したらいいか わからなくて…。 245 00:16:39,832 --> 00:16:42,001 その優しさがうれしかったし➨ 246 00:16:42,001 --> 00:16:44,504 聞かれても はぐらかしていたと思う。 247 00:16:44,504 --> 00:16:47,673 みんなは俺にとって 日常だったから。 248 00:16:47,673 --> 00:16:52,178 だけど やっぱりどこかで 吐き出したい気持ちもあったんだ。 249 00:16:52,178 --> 00:16:55,348 その相手が 西野先輩だったってこと? 250 00:16:55,348 --> 00:16:58,684 あの人は 俺にとって 非日常だったんだよ。 251 00:16:58,684 --> 00:17:03,623 なるほど… ね。 252 00:17:03,623 --> 00:17:06,792 (踏切警報機の音) 253 00:17:06,792 --> 00:17:10,296 悪かったな 朔 さっきは熱くなって。 254 00:17:10,296 --> 00:17:14,133 いつものことだろ。 ちょ ひどくね!? 255 00:17:14,133 --> 00:17:18,638 なぁ海人。 お前から言いださないかぎり➨ 256 00:17:18,638 --> 00:17:22,141 俺は何も知らないってことで いいんだよな? 257 00:17:22,141 --> 00:17:32,652 ♬~ 258 00:17:32,652 --> 00:17:35,488 知らねえのかよ 朔。 259 00:17:35,488 --> 00:17:38,658 誰かが よ~いドンの ピストルを撃たなきゃ➨ 260 00:17:38,658 --> 00:17:41,060 レースは始まんねえんだ。 261 00:17:43,663 --> 00:17:47,833 スタートラインで構えてないと 合図があっても走りだせない。 262 00:17:47,833 --> 00:17:50,336 このレースで そこに立つ権利があるのは➨ 263 00:17:50,336 --> 00:17:52,505 最初から一人しかいないぜ。 264 00:17:52,505 --> 00:17:54,507 熱くなるのは得意だろ? 265 00:17:54,507 --> 00:17:57,343 暑苦しい男は はやんねえの。 266 00:17:57,343 --> 00:17:59,645 (朔)へっ…。 267 00:18:01,614 --> 00:18:04,784 なぁ お前って 俺のこと好きなんだな。 268 00:18:04,784 --> 00:18:07,620 お前ら のことがな。 269 00:18:07,620 --> 00:18:10,790 恥ずいぞ 今の。 へっ。 270 00:18:10,790 --> 00:18:13,125 (笑い声) 271 00:18:13,125 --> 00:18:16,529 じゃあな 朔。 じゃあな 海人。 272 00:18:25,471 --> 00:18:27,473 んっ? 273 00:18:29,475 --> 00:18:32,278 (岩波)よう。 274 00:18:35,147 --> 00:18:38,150 明日 三者面談をするんだがな➨ 275 00:18:38,150 --> 00:18:41,654 福井に決めたそうだ。 ちょっと 蔵セン! えっ? 276 00:18:41,654 --> 00:18:46,492 国語の教師を目指すんだとよ。 まぁ 福井で生きていくなら➨ 277 00:18:46,492 --> 00:18:48,995 間違いのない選択だ。 278 00:18:48,995 --> 00:18:50,997 《朔:たぶん 何かあって➨ 279 00:18:50,997 --> 00:18:53,332 身動きが取れなくなっているんだ。 280 00:18:53,332 --> 00:18:56,002 だとしたら 俺の役割は…》 281 00:18:56,002 --> 00:18:58,170 東京 行きたいんでしょ。 ハッ! 282 00:18:58,170 --> 00:19:00,606 小説の編集者になるために。 283 00:19:00,606 --> 00:19:04,777 はぁ… やっぱり か。 284 00:19:04,777 --> 00:19:08,114 ここの鍵を渡したときに 言っただろう。 285 00:19:08,114 --> 00:19:12,785 誰よりも自由で 誰よりも 不自由なお前に預けると。 286 00:19:12,785 --> 00:19:16,989 もう一度よく考えてみろ。 んっ。 287 00:19:23,129 --> 00:19:27,466 (ドアの開閉音) 288 00:19:27,466 --> 00:19:29,635 《朔:誰よりも自由で不自由…。 289 00:19:29,635 --> 00:19:34,640 俺はその正解に 触れることができるだろうか》 290 00:19:34,640 --> 00:19:36,809 どうして言っちゃうかな~。 291 00:19:36,809 --> 00:19:40,146 言ってほしそうにしてたからだよ。 2人とも。 292 00:19:40,146 --> 00:19:43,149 何か 俺に話せることはある? 293 00:19:43,149 --> 00:19:48,154 両親 特にお父さんが かたくなに反対してるの。 294 00:19:48,154 --> 00:19:50,656 東京に進学すること? 295 00:19:50,656 --> 00:19:52,992 編集者を目指すことも。 296 00:19:52,992 --> 00:19:55,327 どうせ話し合っても無駄なら➨ 297 00:19:55,327 --> 00:19:59,999 早いうちに 気持ちを 切り替えたほうがいいかなって。 298 00:19:59,999 --> 00:20:05,004 ほら 福井にいれば いつでも君とデートできるしさ。 299 00:20:05,004 --> 00:20:07,840 そんなデートは死んでもごめんだな。 300 00:20:07,840 --> 00:20:10,142 今の明日姉は らしくないよ。 301 00:20:12,178 --> 00:20:15,014 私らしさ か…。 302 00:20:15,014 --> 00:20:19,685 それは君が私に重ねていた 幻なんじゃないかな。 303 00:20:19,685 --> 00:20:22,354 《確かに俺は この人に➨ 304 00:20:22,354 --> 00:20:25,524 自分の理想を押しつけていた ところがあるのだろう》 305 00:20:25,524 --> 00:20:29,862 言ったでしょ 君は私を美化しすぎてる。 306 00:20:29,862 --> 00:20:33,532 《だけど たった今 確信した》 307 00:20:33,532 --> 00:20:36,535 どうせ君にがっかりされるなら…。 308 00:20:36,535 --> 00:20:39,038 えっ ひゃぁっ! (川に落ちる音) 309 00:20:39,038 --> 00:20:41,540 えっ 何? 何? 310 00:20:41,540 --> 00:20:44,877 ぐだぐだうるせえよ! なにが幻の女だ。 311 00:20:44,877 --> 00:20:46,879 ハッ…! 312 00:20:46,879 --> 00:20:53,219 なによ 自分の理想を押しつけて 勝手に憧れて 最後は幻滅? 313 00:20:53,219 --> 00:20:56,388 それは君がいちばん 嫌っていたことじゃないの? 314 00:20:56,388 --> 00:20:58,724 違うね。 そもそも俺は➨ 315 00:20:58,724 --> 00:21:01,494 この場所で そうやって ぐしょぬれになりながら➨ 316 00:21:01,494 --> 00:21:04,830 子どもたちを笑顔にしていた アンタに目を奪われた。 317 00:21:04,830 --> 00:21:08,667 最初からこの憧れは 地に足がついてるんだよ。 318 00:21:08,667 --> 00:21:10,836 そんなの偶然…。 319 00:21:10,836 --> 00:21:14,006 そうだよ 偶然だから偶然じゃない。 320 00:21:14,006 --> 00:21:16,509 別に俺の目が あろうがなかろうが➨ 321 00:21:16,509 --> 00:21:20,846 アンタは最初から 自由で 優しくて 強いんだ。 322 00:21:20,846 --> 00:21:23,849 違うよ! 私がそう在れたのは…。 323 00:21:23,849 --> 00:21:27,686 明日姉は いろんな言葉を 俺に届けてくれた。 324 00:21:27,686 --> 00:21:30,356 心の穴ぼこを埋めてくれた。 325 00:21:30,356 --> 00:21:35,528 そのアンタが 「どうせ」なんて言葉を 簡単に使うなよ! 326 00:21:35,528 --> 00:21:37,530 ハッ! 327 00:21:37,530 --> 00:21:42,701 人生が… モノクロになっていく か。 328 00:21:42,701 --> 00:21:48,040 幻想の押しつけと憧れの違いは 正直まだよくわかんね。 329 00:21:48,040 --> 00:21:51,544 ただ一つ確かなのは きっと俺は➨ 330 00:21:51,544 --> 00:21:53,546 明日姉のいいところを➨ 331 00:21:53,546 --> 00:21:56,148 明日姉よりも ずっとたくさん言えるってこと。 332 00:21:58,384 --> 00:22:00,686 それじゃダメかな? 333 00:22:04,657 --> 00:22:07,159 やっぱり君って人は➨ 334 00:22:07,159 --> 00:22:11,497 どこまでいっても 私のヒーローなんだね。 335 00:22:11,497 --> 00:22:16,335 明日姉が俺のヒーローなんだよ。 336 00:22:16,335 --> 00:22:18,337 んっ? えいっ。 337 00:22:18,337 --> 00:22:21,340 どわっ! あのな~! 338 00:22:21,340 --> 00:22:23,676 危ないよ~! げふぉっ 汚ねえ! 339 00:22:23,676 --> 00:22:27,346 だから言ったのに。 かける前に言おうね! 340 00:22:27,346 --> 00:22:31,016 意外と反射神経 鈍いんだ? ぐっ…。 341 00:22:31,016 --> 00:22:35,354 《朔:舞い上がった水滴に 光の粒が乱反射して➨ 342 00:22:35,354 --> 00:22:39,024 キラキラとこの瞬間を彩っていく。 343 00:22:39,024 --> 00:22:41,694 あの日に帰るように➨ 344 00:22:41,694 --> 00:22:45,197 明日へと向かうように》 345 00:22:45,197 --> 00:22:47,199 ねぇ! 君のこと➨ 346 00:22:47,199 --> 00:22:49,368 抱き締めてもいいかな? 347 00:22:49,368 --> 00:22:51,570 はっ? 348 00:22:54,873 --> 00:22:57,710 体操服 ある? ない! 349 00:22:57,710 --> 00:23:00,646 俺もねえよ。 どうやって帰ろうか。 350 00:23:00,646 --> 00:23:02,815 風に吹かれながら。 351 00:23:02,815 --> 00:23:07,653 それはまぁ 悪くない。 352 00:23:07,653 --> 00:23:10,322 美しく生きられないのなら➨ 353 00:23:10,322 --> 00:23:12,992 死んでいるのと大した違いはない。 354 00:23:12,992 --> 00:23:15,327 君のように やってみるよ。 355 00:23:15,327 --> 00:23:18,664 ラムネの瓶に浮かんだ ビー玉みたいに。 356 00:23:18,664 --> 00:23:21,333 今の明日姉らしくやればいいよ。 357 00:23:21,333 --> 00:23:24,003 言葉を届ける仕事に 就きたいなら➨ 358 00:23:24,003 --> 00:23:27,506 まずは明日姉の言葉を お父さんに届けるんだ。 359 00:23:27,506 --> 00:23:29,608 うん! 360 00:23:31,677 --> 00:23:33,679 《朔:2人で歩いた跡には➨ 361 00:23:33,679 --> 00:23:38,017 まるで 『ヘンゼルとグレーテル』みたいな 道しるべが出来ていく。 362 00:23:38,017 --> 00:23:41,687 この人は もう大丈夫だと思った。 363 00:23:41,687 --> 00:23:44,590 そう 思っていた》