1 00:02:17,537 --> 00:02:20,707 (明日風)フフッ 制服デートってやつです。 2 00:02:20,707 --> 00:02:24,211 (朔)なんでまた急に。 デートみたいなことは➡ 3 00:02:24,211 --> 00:02:26,546 やめたほうがいいと 聞いてたけどな。 4 00:02:26,546 --> 00:02:29,716 そんな昔のことは 忘れてしまったよ。 5 00:02:29,716 --> 00:02:33,820 今日じゃないとダメなの? 明日のことはわからない。 6 00:02:33,820 --> 00:02:35,822 『カサブランカ』かよ。 7 00:02:35,822 --> 00:02:38,825 (明日風)あのね 気付いたの…。 8 00:02:38,825 --> 00:02:42,662 私たちが互いに高校生なのは 今しかなくて➡ 9 00:02:42,662 --> 00:02:48,168 10年後にどれだけ求めても この今は戻ってこないんだって。 10 00:02:48,168 --> 00:02:50,270 だから制服デート? 11 00:02:53,340 --> 00:02:56,176 いつか我慢できずに そういうことを言いだすのは➡ 12 00:02:56,176 --> 00:02:58,512 俺のほうだと思ってたよ。 13 00:02:58,512 --> 00:03:02,683 何も知らなければ 私は幻の女のままで➡ 14 00:03:02,683 --> 00:03:05,685 君の前から ふっと消えられたのにな。 15 00:03:07,688 --> 00:03:10,524 幻の女 か。 16 00:03:10,524 --> 00:03:14,861 君のクラスに行った日の夜 眠れなかったんだ。 17 00:03:14,861 --> 00:03:17,197 だから カラカラ振って➡ 18 00:03:17,197 --> 00:03:22,369 缶の中に残ってるドロップの数を 確認するみたいに理由を考えた。 19 00:03:22,369 --> 00:03:25,872 それで最後に 心の蓋を外してみたら➡ 20 00:03:25,872 --> 00:03:28,875 コロンって答えが出てきたの。 21 00:03:28,875 --> 00:03:33,046 ああ ただの高校生 西野明日風として➡ 22 00:03:33,046 --> 00:03:35,849 君と青春してみたかったんだって。 23 00:03:39,319 --> 00:03:42,989 例えば…。 こういう例えばなら➡ 24 00:03:42,989 --> 00:03:46,827 試してみる時間と理由は 残されていると思わない? 25 00:03:46,827 --> 00:03:51,665 そっか。 明日姉って 思ったよりも 俺のこと気に入ってたんだ。 26 00:03:51,665 --> 00:03:54,835 知らなかったの? 27 00:03:54,835 --> 00:03:59,172 私はずっと前から 君のことが大好きなんだよ。 28 00:03:59,172 --> 00:04:01,174 あっ…! 29 00:04:09,015 --> 00:04:12,185 まずは高校生っぽい 遊びでもする? 30 00:04:12,185 --> 00:04:14,287 うん。 31 00:04:18,358 --> 00:04:20,694 (朔)ん~…。 32 00:04:20,694 --> 00:04:24,197 デートで分けていいのは 夏の日のチューペットだけ! 33 00:04:24,197 --> 00:04:26,533 (朔)えっ? 34 00:04:26,533 --> 00:04:28,535 (明日風)そうやって2年越しで➡ 35 00:04:28,535 --> 00:04:30,537 手紙のやり取りをするんだけど➡ 36 00:04:30,537 --> 00:04:34,141 もしも君と私だったら どんな言葉を交わすと思う? 37 00:04:34,141 --> 00:04:36,810 《って 近い近い》 38 00:04:36,810 --> 00:04:38,812 はあ~。 39 00:04:38,812 --> 00:04:42,315 君はもっと平然としているのかと 思ってたよ。 40 00:04:42,315 --> 00:04:45,152 憧れの先輩との初デート。 41 00:04:45,152 --> 00:04:48,321 ドギマギしない男がいるのなら 教えてほしいな。 42 00:04:48,321 --> 00:04:52,659 慣れてるでしょ? 女の子とのあの程度の距離感は。 43 00:04:52,659 --> 00:04:56,329 慣れてねえよ 明日姉とのああいう距離感は。 44 00:04:56,329 --> 00:04:59,666 フフッ。 45 00:04:59,666 --> 00:05:01,968 あっ! (キューの落ちる音) 46 00:05:05,839 --> 00:05:09,509 ねぇ 君は気付いてる? 47 00:05:09,509 --> 00:05:12,179 すてきな後輩との初デートで➡ 48 00:05:12,179 --> 00:05:15,015 ドギマギしない女の子も いないんだよ。 49 00:05:15,015 --> 00:05:17,017 あっ! 50 00:05:19,019 --> 00:05:22,856 実は こういうとこ初めてなんだ。 そうなの? 51 00:05:22,856 --> 00:05:28,862 うちって母が中学 父は高校の教師で結構厳格なの。 52 00:05:28,862 --> 00:05:34,968 お祭りで食べ物を買うのもダメ こういう場所に来るのもダメ…。 53 00:05:34,968 --> 00:05:37,137 屋台の大ざっぱな焼きそばや➡ 54 00:05:37,137 --> 00:05:40,473 ○○焼きをラムネで流し込む おいしさを知らないなんて➡ 55 00:05:40,473 --> 00:05:43,643 人生の半分は損してるね。 56 00:05:43,643 --> 00:05:47,147 それって 君がこの間 七瀬さんとしたことじゃんか。 57 00:05:47,147 --> 00:05:49,149 んっ…。 58 00:05:49,149 --> 00:05:53,153 だけど 本当は遠い昔に一度だけ➡ 59 00:05:53,153 --> 00:05:55,488 連れていって もらったことがあるの。 60 00:05:55,488 --> 00:05:59,159 ご両親に? さあ? 61 00:05:59,159 --> 00:06:01,261 ねぇ 教えて。 62 00:06:03,330 --> 00:06:08,001 (明日風)こう? あれ? ええと…。 63 00:06:08,001 --> 00:06:11,004 うう~…。 64 00:06:11,004 --> 00:06:13,340 だぁ~っ! こうだってば! 65 00:06:13,340 --> 00:06:18,345 よし。 んっ! それで 次は? 66 00:06:18,345 --> 00:06:20,847 んっ! あとは…! 67 00:06:20,847 --> 00:06:25,352 まっすぐ突き出すだけだよ。 こう? 68 00:06:25,352 --> 00:06:27,554 そっ! そんな感じ。 69 00:06:33,960 --> 00:06:36,463 初めてにしては悪くないよ。 70 00:06:36,463 --> 00:06:39,799 ちょっとコツつかんだかも。 見ててね。 71 00:06:39,799 --> 00:06:42,002 うん。 んっ! 72 00:06:46,973 --> 00:06:50,810 明日姉! ネクタイ ネクタイ締めて! えっ? 73 00:06:50,810 --> 00:06:52,812 んっ? 74 00:06:57,317 --> 00:07:00,320 見ました? 見なかったことにしようと➡ 75 00:07:00,320 --> 00:07:03,323 努力してます。 どこまで見えました? 76 00:07:03,323 --> 00:07:07,827 明日姉ってターコイズブルー好きですよね。 77 00:07:07,827 --> 00:07:11,331 もうお嫁に行けない。 フッ。 78 00:07:11,331 --> 00:07:14,668 責任取ってあげようか? ハラキリ? 79 00:07:14,668 --> 00:07:17,837 もちっと穏便に…。 80 00:07:17,837 --> 00:07:22,542 じゃあ 君の歌を聴かせて。 81 00:07:24,844 --> 00:07:28,014 あれがいいな。 んっ? 82 00:07:28,014 --> 00:07:31,017 俺のことを思い出すって 言ってた曲だね。 83 00:07:31,017 --> 00:07:34,954 正確に言うと あのころの君を ね。 84 00:07:34,954 --> 00:07:39,125 《俺が野球を辞めて 腐っていた時期。 そして➡ 85 00:07:39,125 --> 00:07:42,462 この人に初めて出会った去年の秋。 86 00:07:42,462 --> 00:07:44,798 自分の精いっぱいを ささげていたものが➡ 87 00:07:44,798 --> 00:07:46,800 両手から滑り落ちて➡ 88 00:07:46,800 --> 00:07:50,971 どうしようもなく やるせなさと 憤りを覚えていた あのころ。 89 00:07:50,971 --> 00:07:54,974 明日姉は 俺がずっと憧れて 手を伸ばしていた➡ 90 00:07:54,974 --> 00:07:57,978 月そのものみたいに見えた。 91 00:07:57,978 --> 00:08:00,814 誰かの目や 誰かのずるさや➡ 92 00:08:00,814 --> 00:08:03,983 誰かの弱さや汚さなんか 相手にしないで➡ 93 00:08:03,983 --> 00:08:08,154 自分が信じた道を 当たり前のように歩く。 94 00:08:08,154 --> 00:08:10,990 もしも こんなふうに 在れていたのならば➡ 95 00:08:10,990 --> 00:08:14,661 こんなふうにならなかったのに。 96 00:08:14,661 --> 00:08:18,164 例えば こんな会話をした》 97 00:08:18,164 --> 00:08:20,166 ((格好よく生きるために➡ 98 00:08:20,166 --> 00:08:22,168 かっこ悪くならなきゃ いけないとき➡ 99 00:08:22,168 --> 00:08:24,170 どうすればいいんだろう。 100 00:08:24,170 --> 00:08:26,506 君にとってのかっこ悪いが➡ 101 00:08:26,506 --> 00:08:29,676 外から見てもかっこ悪いとは かぎらないよ。 102 00:08:29,676 --> 00:08:31,845 野良猫が近所のおばあちゃんに➡ 103 00:08:31,845 --> 00:08:35,782 こび売って餌をもらっていたら かっこ悪いと思わない? 104 00:08:35,782 --> 00:08:37,784 違うよ。 105 00:08:37,784 --> 00:08:41,121 野良猫で在り続けるために そうしているの。 106 00:08:41,121 --> 00:08:43,289 そのうち思い出すよ➡ 107 00:08:43,289 --> 00:08:45,291 きっと君なら)) 108 00:08:47,293 --> 00:08:50,463 《朔:例えば こんな会話をした》 109 00:08:50,463 --> 00:08:52,632 ((どうせ裏切られるのなら➡ 110 00:08:52,632 --> 00:08:55,802 最初から 信じなければいいと思う? 111 00:08:55,802 --> 00:08:58,638 「どうせ」の数に 反比例するように➡ 112 00:08:58,638 --> 00:09:01,741 人生はモノクロになって いくんじゃないかな。 113 00:09:05,812 --> 00:09:08,148 美しく生きられないのなら➡ 114 00:09:08,148 --> 00:09:11,317 死んでいるのと 大した違いはない か。 115 00:09:11,317 --> 00:09:14,821 そっちのほうが ずっと君らしいよ)) 116 00:09:16,823 --> 00:09:19,826 《例えば こんな一筆箋をもらった》 117 00:09:19,826 --> 00:09:21,828 ((《明日風:「君へ。 118 00:09:21,828 --> 00:09:24,497 言葉には力があると思っています。 119 00:09:24,497 --> 00:09:26,499 心が疲れているときは➡ 120 00:09:26,499 --> 00:09:29,502 自然と染み入るような 音楽とともに。 121 00:09:29,502 --> 00:09:33,773 どうか君の隙間を埋められるピースが 見つかりますようにと➡ 122 00:09:33,773 --> 00:09:37,777 願いを込めて。 明日風」》)) 123 00:09:37,777 --> 00:09:43,450 《朔:故郷を離れ 憧れの街へと旅立つ歌。 124 00:09:43,450 --> 00:09:46,119 どんなに遠く離れても いつだって➡ 125 00:09:46,119 --> 00:09:48,455 帰ってこられる場所は ここにあるよ。 126 00:09:48,455 --> 00:09:51,958 同じ空の下から あなたのことを思っているよ。 127 00:09:51,958 --> 00:09:56,463 そんなふうに祈りながら 俺がそうしてもらったように➡ 128 00:09:56,463 --> 00:09:59,799 借り物の言葉とやり方だけど➡ 129 00:09:59,799 --> 00:10:04,003 今の明日姉に 届くように…》 130 00:10:07,140 --> 00:10:11,144 ねぇ ちょっと らしくないこと 聞いてもいいかな? 131 00:10:11,144 --> 00:10:14,481 んっ? 君には夢がある? 132 00:10:14,481 --> 00:10:18,318 去年までは メジャーで活躍する野球選手。 133 00:10:18,318 --> 00:10:22,989 あっ! ごめんなさい やっちゃった…。 134 00:10:22,989 --> 00:10:24,991 当面はそうだな…。 135 00:10:24,991 --> 00:10:29,496 新しい夢を 見つけることが夢 かな。 136 00:10:29,496 --> 00:10:32,665 明日姉は? って聞いてもいい? 137 00:10:32,665 --> 00:10:34,667 うん…。 138 00:10:34,667 --> 00:10:38,004 言葉を届ける仕事に就きたいの。 139 00:10:38,004 --> 00:10:41,674 小説家ってこと? 140 00:10:41,674 --> 00:10:45,845 イチ読者でありながら 本を作ることに携われる➡ 141 00:10:45,845 --> 00:10:48,848 小説の編集者になりたいんだ。 142 00:10:48,848 --> 00:10:50,850 編集者。 143 00:10:50,850 --> 00:10:53,353 (明日風)小さい頃から いろんな物語と➡ 144 00:10:53,353 --> 00:10:55,855 言葉に囲まれていたの。 145 00:10:55,855 --> 00:10:58,858 勇気をもらって 支えられて…。 146 00:10:58,858 --> 00:11:01,861 たとえ私のヒーローには 手が届かなくても➡ 147 00:11:01,861 --> 00:11:05,031 それに近いものに 触れることはできた。 148 00:11:05,031 --> 00:11:07,200 (朔)ちょっとわかる気がするな。 149 00:11:07,200 --> 00:11:11,538 だからね そういう物語を生み出して➡ 150 00:11:11,538 --> 00:11:14,207 届けるためのお手伝いがしたい。 151 00:11:14,207 --> 00:11:17,210 こういうのって チープかな? 152 00:11:17,210 --> 00:11:19,212 つまりその…。 153 00:11:19,212 --> 00:11:22,715 単純に本が好きだから それに関わる仕事に就きたくて➡ 154 00:11:22,715 --> 00:11:27,387 なんかぼんやりしてるというか 安易というか…。 155 00:11:27,387 --> 00:11:30,390 《明日姉は 引け目を感じているんだ。 156 00:11:30,390 --> 00:11:35,495 誰もが納得できるような できれば劇的でドラマチックな➡ 157 00:11:35,495 --> 00:11:37,497 この年になってまだ➡ 158 00:11:37,497 --> 00:11:41,668 夢を語るに足る根拠が 必要なんじゃないかと》 159 00:11:41,668 --> 00:11:47,173 それは 十分夢を追いかける理由に なるんじゃないかな? 160 00:11:47,173 --> 00:11:50,510 そっか… ありがとう。 161 00:11:50,510 --> 00:11:54,180 本当は少し自信がなかった。 162 00:11:54,180 --> 00:11:59,185 東京は編集者を目指すために? うん。 私って➡ 163 00:11:59,185 --> 00:12:02,188 普通の人たちが当たり前のように 経験していることを➡ 164 00:12:02,188 --> 00:12:04,691 経験してなかったりするから。 165 00:12:04,691 --> 00:12:10,029 《朔:たぶんそれは とても正しい 夢への一歩目なのだと思う》 166 00:12:10,029 --> 00:12:13,533 私がこの町を 大好きで大嫌いって言ったの➡ 167 00:12:13,533 --> 00:12:16,035 覚えてる? うん。 168 00:12:16,035 --> 00:12:20,873 私 ずっとここにいる自分は 簡単に想像できるんだ。 169 00:12:20,873 --> 00:12:24,210 福大に行って 手堅く就職して➡ 170 00:12:24,210 --> 00:12:27,880 まだ名前も知らない誰かの お嫁さんになるの。 171 00:12:27,880 --> 00:12:32,552 田舎町に染まっていく 自分が怖い。 172 00:12:32,552 --> 00:12:36,990 じゃあ 決意が固まりつつあると 言ってたのは 東京だ? 173 00:12:36,990 --> 00:12:42,161 その答えは… もうちょっとだけ 保留にしておきたいかな。 174 00:12:42,161 --> 00:12:44,264 そっか。 175 00:12:46,666 --> 00:12:48,968 んっ? (荷台を叩く音) 176 00:12:55,008 --> 00:12:57,010 んっ! 177 00:13:00,013 --> 00:13:02,015 フッ。 178 00:13:05,685 --> 00:13:08,521 俺も小説家を目指すって 言いだすかもよ。 179 00:13:08,521 --> 00:13:13,026 そしたら担当編集者は私だ? かもね。 180 00:13:13,026 --> 00:13:19,198 東京に出た私が ある日 君が ペンネームで書いた小説を見つけるの。 181 00:13:19,198 --> 00:13:23,703 すてきな物語に さめざめ涙して 書籍化を打診したら➡ 182 00:13:23,703 --> 00:13:26,539 打ち合わせ場所に君が現れる。 183 00:13:26,539 --> 00:13:29,208 まるで おとぎ話だ。 184 00:13:29,208 --> 00:13:32,545 おとぎ話みたいな現実だって あるんだよ。 185 00:13:32,545 --> 00:13:35,848 本当は すぐ近くに。 186 00:13:40,319 --> 00:13:42,989 明日姉っ。 な~に~? 187 00:13:42,989 --> 00:13:45,158 東京に行くなら それまでに➡ 188 00:13:45,158 --> 00:13:47,827 ここでしか見られないものを もっと見よう。 189 00:13:47,827 --> 00:13:53,332 ここでしかできない会話をして ここでしか流せない涙を流そう。 190 00:13:53,332 --> 00:13:56,336 遠くに離れても 心はいつだって➡ 191 00:13:56,336 --> 00:14:00,173 この場所に帰ってこられるように。 192 00:14:00,173 --> 00:14:02,275 うん! 193 00:14:14,520 --> 00:14:18,024 (夕湖)陽 こういうのも 着てみればいいのに。 194 00:14:18,024 --> 00:14:20,026 (陽)そういうのは夕湖みたいな➡ 195 00:14:20,026 --> 00:14:22,528 女の子らしい子のための服でしょ。 196 00:14:22,528 --> 00:14:25,365 そんなことないよ! 特別な日のために➡ 197 00:14:25,365 --> 00:14:29,369 一着ぐらいは持っておいたら? 特別な日って? 198 00:14:29,369 --> 00:14:32,205 好きな男の子とデートするとか。 199 00:14:32,205 --> 00:14:36,476 ないない。 夕湖 私のこと なんだと思ってんのさ。 200 00:14:36,476 --> 00:14:41,314 かわいい女の子だけど? マジな顔で言われると反応に困る! 201 00:14:41,314 --> 00:14:44,984 ねぇ どう思う? (海人)普通にないっしょ 陽だし。 202 00:14:44,984 --> 00:14:46,986 あんだと こらぁ! 203 00:14:46,986 --> 00:14:49,489 はいはい どうせ旦那も同意見でしょ。 204 00:14:49,489 --> 00:14:52,658 すみませんね~ ちんちくりんの色気なしで~。 205 00:14:52,658 --> 00:14:55,995 いや 陽の女の子らしい格好 見てみたいぞ。 206 00:14:55,995 --> 00:14:58,664 なっ…! (朔)というわけで夕湖ちゃん➡ 207 00:14:58,664 --> 00:15:02,502 べっぴんさんにしてあげて~! か~しこまり~! 208 00:15:02,502 --> 00:15:07,173 (陽)ちょ ちょっと… 待って~! 209 00:15:07,173 --> 00:15:09,675 はいはい ちゅうも~く! 210 00:15:09,675 --> 00:15:12,845 見て見て~。 開けるよ~ 陽! 211 00:15:12,845 --> 00:15:15,348 ちょ 待って…! 212 00:15:15,348 --> 00:15:17,350 (2人)おっ! 213 00:15:17,350 --> 00:15:20,853 恥ずいから… あんま… 見ないで。 214 00:15:20,853 --> 00:15:23,689 夕湖マジック ヤッベ~! 215 00:15:23,689 --> 00:15:26,526 陽じゃないみてえ 女子だ女子! 216 00:15:26,526 --> 00:15:29,529 ぐはっ! (叩く音) 217 00:15:29,529 --> 00:15:31,531 な… なんで!? 218 00:15:31,531 --> 00:15:35,301 やっぱ私は男っぽい格好のほうが 性に合ってるよ。 219 00:15:35,301 --> 00:15:37,637 ぶっちゃけ自分でも…。 (朔)陽。 220 00:15:37,637 --> 00:15:39,806 すごくきれいだ。 221 00:15:39,806 --> 00:15:41,808 はあっ!? 222 00:15:41,808 --> 00:15:43,976 アンタ ここぞとばかりに からかって…! 223 00:15:43,976 --> 00:15:47,313 いや ホントに似合ってるよ。 や… やめて。 224 00:15:47,313 --> 00:15:50,817 ホント ちょっと… なんなん もう。 225 00:15:50,817 --> 00:15:54,320 せっかくだから買っちゃいなよ! うぅ…。 226 00:15:54,320 --> 00:15:57,323 買わないの? うぅ…。 227 00:16:02,662 --> 00:16:06,265 買う。 (2人)フフッ。 228 00:16:11,170 --> 00:16:15,341 そういえばさ アンタって 西野先輩のこと好きなの? 229 00:16:15,341 --> 00:16:18,177 ブフッ! ゴホッ…! (夕湖/海人)えぇ~!? 230 00:16:18,177 --> 00:16:21,981 あ~ あ~。 ほれ口元拭きんしゃい。 231 00:16:24,016 --> 00:16:26,018 おい マジなのかよ。 232 00:16:26,018 --> 00:16:29,188 落ち着けよ。 なんだって急に? 233 00:16:29,188 --> 00:16:33,793 何回か河川敷で見たんだよね 親しげに話してるの。 234 00:16:33,793 --> 00:16:37,630 アンタのああいう顔って 他で見たことないからさ。 235 00:16:37,630 --> 00:16:39,632 んっ…。 おい 朔。 236 00:16:39,632 --> 00:16:41,734 ちょっと黙ってろ。 237 00:16:44,470 --> 00:16:50,476 去年 俺が野球部 辞めた直後に 偶然知り合った人なんだよ。 238 00:16:50,476 --> 00:16:54,313 みんな気を遣って 理由とか聞いてこなかっただろ。 239 00:16:54,313 --> 00:16:58,150 だって朔 何も話さないってオーラ ムンムンだったぜ。 240 00:16:58,150 --> 00:17:00,820 弱ってるのを 見せたくなかったんだよ。 241 00:17:00,820 --> 00:17:04,323 夕湖なんて 毎日泣きそうな顔してたしさ。 242 00:17:04,323 --> 00:17:08,160 だって! あのころの朔 いつもと全然違ったもん。 243 00:17:08,160 --> 00:17:10,162 何にも教えてくれないし➡ 244 00:17:10,162 --> 00:17:12,999 どうやって接したらいいか わからなくて…。 245 00:17:12,999 --> 00:17:15,167 その優しさがうれしかったし➡ 246 00:17:15,167 --> 00:17:17,670 聞かれても はぐらかしていたと思う。 247 00:17:17,670 --> 00:17:20,840 みんなは俺にとって 日常だったから。 248 00:17:20,840 --> 00:17:25,344 だけど やっぱりどこかで 吐き出したい気持ちもあったんだ。 249 00:17:25,344 --> 00:17:28,514 その相手が 西野先輩だったってこと? 250 00:17:28,514 --> 00:17:31,851 あの人は 俺にとって 非日常だったんだよ。 251 00:17:31,851 --> 00:17:36,789 なるほど… ね。 252 00:17:36,789 --> 00:17:39,959 (踏切警報機の音) 253 00:17:39,959 --> 00:17:43,462 悪かったな 朔 さっきは熱くなって。 254 00:17:43,462 --> 00:17:47,300 いつものことだろ。 ちょ ひどくね!? 255 00:17:47,300 --> 00:17:51,804 なぁ海人。 お前から言いださないかぎり➡ 256 00:17:51,804 --> 00:17:55,308 俺は何も知らないってことで いいんだよな? 257 00:17:55,308 --> 00:18:05,818 ♬~ 258 00:18:05,818 --> 00:18:08,654 知らねえのかよ 朔。 259 00:18:08,654 --> 00:18:11,824 誰かが よ~いドンの ピストルを撃たなきゃ➡ 260 00:18:11,824 --> 00:18:14,226 レースは始まんねえんだ。 261 00:18:16,829 --> 00:18:20,100 スタートラインで構えてないと 合図があっても走りだせない。 262 00:18:20,100 --> 00:18:23,502 このレースで そこに立つ権利があるのは➡ 263 00:18:23,502 --> 00:18:25,671 最初から一人しかいないぜ。 264 00:18:25,671 --> 00:18:27,673 熱くなるのは得意だろ? 265 00:18:27,673 --> 00:18:30,509 暑苦しい男は はやんねえの。 266 00:18:30,509 --> 00:18:32,812 (朔)へっ…。 267 00:18:34,780 --> 00:18:37,950 なぁ お前って 俺のこと好きなんだな。 268 00:18:37,950 --> 00:18:40,786 お前ら のことがな。 269 00:18:40,786 --> 00:18:43,956 恥ずいぞ 今の。 へっ。 270 00:18:43,956 --> 00:18:46,292 (笑い声) 271 00:18:46,292 --> 00:18:49,695 じゃあな 朔。 じゃあな 海人。 272 00:18:58,638 --> 00:19:00,639 んっ? 273 00:19:02,641 --> 00:19:05,444 (岩波)よう。 274 00:19:08,314 --> 00:19:11,317 明日 三者面談をするんだがな➡ 275 00:19:11,317 --> 00:19:14,820 福井に決めたそうだ。 ちょっと 蔵セン! えっ? 276 00:19:14,820 --> 00:19:19,659 国語の教師を目指すんだとよ。 まぁ 福井で生きていくなら➡ 277 00:19:19,659 --> 00:19:22,161 間違いのない選択だ。 278 00:19:22,161 --> 00:19:24,163 《朔:たぶん 何かあって➡ 279 00:19:24,163 --> 00:19:26,499 身動きが取れなくなっているんだ。 280 00:19:26,499 --> 00:19:29,168 だとしたら 俺の役割は…》 281 00:19:29,168 --> 00:19:31,337 東京 行きたいんでしょ。 ハッ! 282 00:19:31,337 --> 00:19:33,773 小説の編集者になるために。 283 00:19:33,773 --> 00:19:37,943 はぁ… やっぱり か。 284 00:19:37,943 --> 00:19:41,280 ここの鍵を渡したときに 言っただろう。 285 00:19:41,280 --> 00:19:45,951 誰よりも自由で 誰よりも 不自由なお前に預けると。 286 00:19:45,951 --> 00:19:50,156 もう一度よく考えてみろ。 んっ。 287 00:19:56,295 --> 00:20:00,633 (ドアの開閉音) 288 00:20:00,633 --> 00:20:02,802 《朔:誰よりも自由で不自由…。 289 00:20:02,802 --> 00:20:07,807 俺はその正解に 触れることができるだろうか》 290 00:20:07,807 --> 00:20:09,975 どうして言っちゃうかな~。 291 00:20:09,975 --> 00:20:13,312 言ってほしそうにしてたからだよ。 2人とも。 292 00:20:13,312 --> 00:20:16,315 何か 俺に話せることはある? 293 00:20:16,315 --> 00:20:21,320 両親 特にお父さんが かたくなに反対してるの。 294 00:20:21,320 --> 00:20:23,823 東京に進学すること? 295 00:20:23,823 --> 00:20:26,158 編集者を目指すことも。 296 00:20:26,158 --> 00:20:28,494 どうせ話し合っても無駄なら➡ 297 00:20:28,494 --> 00:20:33,165 早いうちに 気持ちを 切り替えたほうがいいかなって。 298 00:20:33,165 --> 00:20:38,170 ほら 福井にいれば いつでも君とデートできるしさ。 299 00:20:38,170 --> 00:20:41,006 そんなデートは死んでもごめんだな。 300 00:20:41,006 --> 00:20:43,309 今の明日姉は らしくないよ。 301 00:20:45,344 --> 00:20:48,180 私らしさ か…。 302 00:20:48,180 --> 00:20:52,852 それは君が私に重ねていた 幻なんじゃないかな。 303 00:20:52,852 --> 00:20:55,521 《確かに俺は この人に➡ 304 00:20:55,521 --> 00:20:58,691 自分の理想を押しつけていた ところがあるのだろう》 305 00:20:58,691 --> 00:21:03,028 言ったでしょ 君は私を美化しすぎてる。 306 00:21:03,028 --> 00:21:06,699 《だけど たった今 確信した》 307 00:21:06,699 --> 00:21:09,702 どうせ君にがっかりされるなら…。 308 00:21:09,702 --> 00:21:12,204 えっ ひゃぁっ! (川に落ちる音) 309 00:21:12,204 --> 00:21:14,707 えっ 何? 何? 310 00:21:14,707 --> 00:21:18,043 ぐだぐだうるせえよ! なにが幻の女だ。 311 00:21:18,043 --> 00:21:20,045 ハッ…! 312 00:21:20,045 --> 00:21:26,385 なによ 自分の理想を押しつけて 勝手に憧れて 最後は幻滅? 313 00:21:26,385 --> 00:21:29,555 それは君がいちばん 嫌っていたことじゃないの? 314 00:21:29,555 --> 00:21:31,891 違うね。 そもそも俺は➡ 315 00:21:31,891 --> 00:21:34,660 この場所で そうやって ぐしょぬれになりながら➡ 316 00:21:34,660 --> 00:21:37,997 子どもたちを笑顔にしていた アンタに目を奪われた。 317 00:21:37,997 --> 00:21:41,834 最初からこの憧れは 地に足がついてるんだよ。 318 00:21:41,834 --> 00:21:44,003 そんなの偶然…。 319 00:21:44,003 --> 00:21:47,173 そうだよ 偶然だから偶然じゃない。 320 00:21:47,173 --> 00:21:49,675 別に俺の目が あろうがなかろうが➡ 321 00:21:49,675 --> 00:21:54,013 アンタは最初から 自由で 優しくて 強いんだ。 322 00:21:54,013 --> 00:21:57,016 違うよ! 私がそう在れたのは…。 323 00:21:57,016 --> 00:22:00,853 明日姉は いろんな言葉を 俺に届けてくれた。 324 00:22:00,853 --> 00:22:03,522 心の穴ぼこを埋めてくれた。 325 00:22:03,522 --> 00:22:08,694 そのアンタが 「どうせ」なんて言葉を 簡単に使うなよ! 326 00:22:08,694 --> 00:22:10,696 ハッ! 327 00:22:10,696 --> 00:22:15,868 人生が… モノクロになっていく か。 328 00:22:15,868 --> 00:22:21,207 幻想の押しつけと憧れの違いは 正直まだよくわかんね。 329 00:22:21,207 --> 00:22:24,710 ただ一つ確かなのは きっと俺は➡ 330 00:22:24,710 --> 00:22:26,712 明日姉のいいところを➡ 331 00:22:26,712 --> 00:22:29,315 明日姉よりも ずっとたくさん言えるってこと。 332 00:22:31,550 --> 00:22:33,852 それじゃダメかな? 333 00:22:37,823 --> 00:22:40,326 やっぱり君って人は➡ 334 00:22:40,326 --> 00:22:44,663 どこまでいっても 私のヒーローなんだね。 335 00:22:44,663 --> 00:22:49,501 明日姉が俺のヒーローなんだよ。 336 00:22:49,501 --> 00:22:51,503 んっ? えいっ。 337 00:22:51,503 --> 00:22:54,506 どわっ! あのな~! 338 00:22:54,506 --> 00:22:56,842 危ないよ~! げふぉっ 汚ねえ! 339 00:22:56,842 --> 00:23:00,512 だから言ったのに。 かける前に言おうね! 340 00:23:00,512 --> 00:23:04,183 意外と反射神経 鈍いんだ? ぐっ…。 341 00:23:04,183 --> 00:23:08,520 《朔:舞い上がった水滴に 光の粒が乱反射して➡ 342 00:23:08,520 --> 00:23:12,191 キラキラとこの瞬間を彩っていく。 343 00:23:12,191 --> 00:23:14,860 あの日に帰るように➡ 344 00:23:14,860 --> 00:23:18,364 明日へと向かうように》 345 00:23:18,364 --> 00:23:20,366 ねぇ! 君のこと➡ 346 00:23:20,366 --> 00:23:22,534 抱き締めてもいいかな? 347 00:23:22,534 --> 00:23:24,737 はっ? 348 00:23:28,040 --> 00:23:30,876 体操服 ある? ない! 349 00:23:30,876 --> 00:23:33,812 俺もねえよ。 どうやって帰ろうか。 350 00:23:33,812 --> 00:23:35,981 風に吹かれながら。 351 00:23:35,981 --> 00:23:40,819 それはまぁ 悪くない。 352 00:23:40,819 --> 00:23:43,489 美しく生きられないのなら➡ 353 00:23:43,489 --> 00:23:46,158 死んでいるのと大した違いはない。 354 00:23:46,158 --> 00:23:48,494 君のように やってみるよ。 355 00:23:48,494 --> 00:23:51,830 ラムネの瓶に浮かんだ ビー玉みたいに。 356 00:23:51,830 --> 00:23:54,500 今の明日姉らしくやればいいよ。 357 00:23:54,500 --> 00:23:57,169 言葉を届ける仕事に 就きたいなら➡ 358 00:23:57,169 --> 00:24:00,673 まずは明日姉の言葉を お父さんに届けるんだ。 359 00:24:00,673 --> 00:24:02,775 うん! 360 00:24:04,843 --> 00:24:06,845 《朔:2人で歩いた跡には➡ 361 00:24:06,845 --> 00:24:11,183 まるで 『ヘンゼルとグレーテル』みたいな 道しるべが出来ていく。 362 00:24:11,183 --> 00:24:14,853 この人は もう大丈夫だと思った。 363 00:24:14,853 --> 00:24:17,756 そう 思っていた》