1 00:00:35,335 --> 00:00:38,672 《ロゼ:魔女はウソをつけない。 2 00:00:38,672 --> 00:00:45,012 それゆえ魔女は 人と離れ 別の生き物として暮らしてきた。 3 00:00:45,012 --> 00:00:47,347 魔女である母から生まれたので➡ 4 00:00:47,347 --> 00:00:50,851 私も生まれたときから魔女だった。 5 00:00:50,851 --> 00:00:55,522 母は幼くして死に 祖母と暮らしていたけれど➡ 6 00:00:55,522 --> 00:00:58,859 その祖母も 4年前に土へと返り➡ 7 00:00:58,859 --> 00:01:02,362 今は私一人。 8 00:01:02,362 --> 00:01:06,700 王都の外れに位置する 森の奥深く➡ 9 00:01:06,700 --> 00:01:11,204 湖の真ん中に浮かぶ 離れ小島。 10 00:01:11,204 --> 00:01:15,208 そこには魔女の庵がある》 (ドアの開閉音) 11 00:01:15,208 --> 00:01:33,060 ♬~ 12 00:01:33,060 --> 00:01:36,063 あっ…。 (風の音) 13 00:01:38,999 --> 00:01:41,001 うっ…! 14 00:01:54,014 --> 00:01:57,017 (魔女ベル) 15 00:01:57,017 --> 00:01:59,686 《庵を訪れる者は➡ 16 00:01:59,686 --> 00:02:03,523 大抵 魔女の秘薬を求めて やってくる。 17 00:02:03,523 --> 00:02:07,361 どこか後ろ暗いものを 求めるのだから➡ 18 00:02:07,361 --> 00:02:12,366 身分を隠したがる 訳ありな人ばかりだ。 だから➡ 19 00:02:12,366 --> 00:02:14,368 そういう意味においては…》 (ドアベル) 20 00:02:14,368 --> 00:02:16,370 あっ! 21 00:02:16,370 --> 00:02:18,372 《ありえない訪問者だった》 22 00:02:20,374 --> 00:02:22,376 (ドアの閉まる音) 23 00:02:24,378 --> 00:02:27,547 (ハリージュ)失礼する。 湖の魔女殿のお宅で➡ 24 00:02:27,547 --> 00:02:31,385 間違いないだろうか。 はい…。 25 00:02:31,385 --> 00:02:34,988 ええ… 湖の 「善き」魔女の庵です。 26 00:02:34,988 --> 00:02:38,158 フム… 依頼を受けてもらいたい。 27 00:02:38,158 --> 00:02:41,661 訳あって身分は明かせないが…。 《私は彼を知っている。 28 00:02:41,661 --> 00:02:46,667 ハリージュ・アズム。 王宮勤めの エリート騎士様》 29 00:02:46,667 --> 00:02:49,503 ハッ! 30 00:02:49,503 --> 00:02:53,006 どのようなご依頼でしょう… お客様。 31 00:02:53,006 --> 00:02:55,008 《ハリージュ様… と➡ 32 00:02:55,008 --> 00:02:58,512 素直にその名を呼べたなら どれだけよかっただろう》 33 00:02:58,512 --> 00:03:00,514 フゥ…。 34 00:03:00,514 --> 00:03:03,350 惚れ薬を作ってほしい。 35 00:03:03,350 --> 00:03:06,686 ハッ! ハァッ…。 36 00:03:06,686 --> 00:03:09,890 それ… は…。 37 00:03:17,030 --> 00:03:19,533 んっ? んっ… あいにくと➡ 38 00:03:19,533 --> 00:03:21,868 惚れ薬は現在 品切れしておりまして。 39 00:03:21,868 --> 00:03:26,373 なら 作れるのだな。 ハッ! い… え…。 40 00:03:26,373 --> 00:03:30,377 《しまった。 下手を打ったかもしれない》 41 00:03:30,377 --> 00:03:32,546 ええ まあ…。 42 00:03:32,546 --> 00:03:34,481 では依頼しよう。 43 00:03:34,481 --> 00:03:37,150 調薬に必要なものがあれば こちらでそろえる。 44 00:03:37,150 --> 00:03:41,154 お高いですよ? 言い値で払おう。 45 00:03:41,154 --> 00:03:44,157 それにお時間も かなり頂くことになるかと。 46 00:03:44,157 --> 00:03:46,827 待とう。 47 00:03:46,827 --> 00:03:48,829 ハッ…。 48 00:03:51,832 --> 00:03:56,670 ハァ… 申し訳ないが こちらにも譲れない事情がある。 49 00:03:56,670 --> 00:04:00,006 ハッ… わかりました。 50 00:04:00,006 --> 00:04:03,176 必要な素材をまとめますので お待ちください。 51 00:04:03,176 --> 00:04:05,178 うむ…。 52 00:04:05,178 --> 00:04:15,188 ♬~ 53 00:04:15,188 --> 00:04:17,190 (握り潰す音) 54 00:04:22,696 --> 00:04:25,499 まずはこちらを 集めていただけますか。 55 00:04:28,368 --> 00:04:30,670 ホッ… 感謝する。 56 00:04:33,039 --> 00:04:38,445 《こうして… 魔女は 惚れ薬によって失恋した》 57 00:06:20,680 --> 00:06:24,985 (フクロウの鳴き声) 58 00:06:29,856 --> 00:06:31,858 (魔女ベル) 59 00:06:33,793 --> 00:06:35,795 あっ…。 60 00:06:35,795 --> 00:06:37,797 んっ… んんっ…。 61 00:06:42,135 --> 00:06:46,439 ハァ… こんなことしても 意味ないのに。 62 00:06:48,642 --> 00:06:51,144 (深呼吸する音) 63 00:06:51,144 --> 00:06:53,146 (ドアベル) 64 00:06:53,146 --> 00:06:56,149 いらっしゃいませ。 持ってきていただけましたか。 65 00:06:56,149 --> 00:06:58,151 ああ。 (ドアを閉める音) 66 00:06:58,151 --> 00:07:00,153 お荷物をお預かりしましょう。 67 00:07:05,659 --> 00:07:08,995 では 素材の確認を させていただきます。 68 00:07:08,995 --> 00:07:13,333 襟巻き蝙蝠の鳴き声で酔わせた 火鼠の肝だったな。 69 00:07:13,333 --> 00:07:15,335 ええ。 70 00:07:17,337 --> 00:07:19,339 (落ちる音) 71 00:07:24,010 --> 00:07:26,346 魔女殿は その…。 72 00:07:26,346 --> 00:07:28,682 こんな所で薬を作っているのか。 73 00:07:28,682 --> 00:07:31,851 ええ まあ。 そ そうか…。 74 00:07:31,851 --> 00:07:34,454 はい 間違いありません。 75 00:07:34,454 --> 00:07:38,124 これほどきれいな状態のものは 久々に見ました。 76 00:07:38,124 --> 00:07:40,794 フゥ… これでようやく。 はい。 77 00:07:40,794 --> 00:07:43,463 ようやく次の素材を お願いできます。 くっ…! 78 00:07:43,463 --> 00:07:46,132 次は…。 まだあるのか!? ぴゃっ! 79 00:07:46,132 --> 00:07:48,134 これで何度目だ!? 80 00:07:48,134 --> 00:07:50,804 断崖絶壁にしか咲かない 花の花粉! 81 00:07:50,804 --> 00:07:53,473 天から最初に落ちてくる滴! 82 00:07:53,473 --> 00:07:56,476 どえらい悲鳴を上げる薬草の根! 83 00:07:56,476 --> 00:07:58,478 そのあともそうだ! 84 00:07:58,478 --> 00:08:00,981 どれも手に入れるまでに 時間のかかるものばかり! 85 00:08:00,981 --> 00:08:03,817 アンタはどうして 一度にまとめて言えない!? 86 00:08:03,817 --> 00:08:07,320 これが王宮薬剤師だったら 懲罰ものだぞ! 87 00:08:07,320 --> 00:08:09,990 ハッ… あっ…。 88 00:08:09,990 --> 00:08:11,991 あっ…。 89 00:08:11,991 --> 00:08:15,495 んっ…。 90 00:08:15,495 --> 00:08:18,331 大声を出して悪かった。 91 00:08:18,331 --> 00:08:22,836 《不機嫌で 威圧的で 口が悪いくせに。 92 00:08:22,836 --> 00:08:25,505 でも その声は優しくて…》 93 00:08:25,505 --> 00:08:28,007 その すまなかった。 94 00:08:28,007 --> 00:08:32,011 いえ まぶしくて。 はっ? 95 00:08:32,011 --> 00:08:34,514 お客様 顔がいいから。 96 00:08:36,449 --> 00:08:39,119 何を言っているんだ。 言葉のままです。 97 00:08:39,119 --> 00:08:41,121 つきあってられん。 98 00:08:41,121 --> 00:08:45,825 《この表情もいいな…。 ホントに 顔がいい》 99 00:08:47,794 --> 00:08:51,131 それで? 次は何を持ってくればいい? 100 00:08:51,131 --> 00:08:53,800 少々お待ちください。 今 メモを…。 101 00:08:53,800 --> 00:08:57,137 できるだけまとめてくれ。 あ~…。 102 00:08:57,137 --> 00:08:59,139 《ハリージュ様は➡ 103 00:08:59,139 --> 00:09:01,641 私が片思いを していることどころか➡ 104 00:09:01,641 --> 00:09:05,812 私のことさえ 知らなかったに違いない。 105 00:09:05,812 --> 00:09:10,316 私がずっと前 勝手に一目惚れしただけ。 106 00:09:10,316 --> 00:09:12,819 ただ それだけ。 107 00:09:12,819 --> 00:09:14,821 認知さえされていない➡ 108 00:09:14,821 --> 00:09:17,323 世捨て人の魔女に できることなんて➡ 109 00:09:17,323 --> 00:09:20,927 せいぜい薬を手渡すまでの 時間稼ぎ程度》 110 00:09:22,996 --> 00:09:24,998 次の素材ですが➡ 111 00:09:24,998 --> 00:09:27,667 虹色キリギリスの触角ですね。 フム…。 112 00:09:27,667 --> 00:09:32,338 必ず 満月の夜に むしってきてください。 あっ! 113 00:09:32,338 --> 00:09:35,775 満月は つい先週 終わったばかりだが? 114 00:09:35,775 --> 00:09:40,447 そうですね。 俺もそれほど 暇なわけではないのだが。 115 00:09:40,447 --> 00:09:44,451 フゥ… お時間がないのでしたら しかたありませんね。 116 00:09:44,451 --> 00:09:46,453 とても残念です。 うっ! 117 00:09:46,453 --> 00:09:49,622 くっ…。 118 00:09:49,622 --> 00:09:51,791 しかたないか…。 119 00:09:51,791 --> 00:09:55,962 《そこまでして 振り向かせたい相手なんだ…》 120 00:09:55,962 --> 00:09:57,964 ハァ…。 121 00:09:57,964 --> 00:10:00,300 ああ もったいない! あっ!? な なんだ…。 122 00:10:00,300 --> 00:10:04,471 次にため息をつく際は ぜひ教えてください。 はっ? 123 00:10:04,471 --> 00:10:08,975 美しい男のため息は 薬の材料になりますから。 124 00:10:08,975 --> 00:10:11,978 くっ… 絶対に言うものか! 125 00:10:11,978 --> 00:10:13,980 (ドアベル) 126 00:10:13,980 --> 00:10:15,982 くぅ…! 127 00:10:18,985 --> 00:10:20,987 (ドアを閉める音) 128 00:10:23,156 --> 00:10:27,160 《好きになってほしいなんて 考えてもいない。 129 00:10:27,160 --> 00:10:30,330 ほんの少しでも 覚えてもらえたら➡ 130 00:10:30,330 --> 00:10:32,632 それでいい》 131 00:10:42,342 --> 00:10:44,344 フワァ…。 132 00:10:44,344 --> 00:10:47,013 (ゲオネス)珍しいな お前があくびなんて。 133 00:10:47,013 --> 00:10:49,182 あ ああ…。 ほら。 134 00:10:49,182 --> 00:10:52,519 すまん あまり寝てなくてな。 135 00:10:52,519 --> 00:10:56,689 なんだ 夜遊びでもしてたのか? な~んて➡ 136 00:10:56,689 --> 00:10:58,691 お前にかぎってそれはないか。 ああ。 137 00:10:58,691 --> 00:11:00,860 久しぶりに遊んだ。 あっ! 138 00:11:00,860 --> 00:11:05,031 なんせ一晩中 キリギリスを追いかけていたからな。 139 00:11:05,031 --> 00:11:07,033 キリギリス? 140 00:11:07,033 --> 00:11:10,370 輪切りのたまねぎをつるして 食いついたところを引くんだが➡ 141 00:11:10,370 --> 00:11:14,374 コツをつかむまでが大変でな… なかなか奥が深い。 142 00:11:14,374 --> 00:11:17,377 それはまた ずいぶんと楽しそうだな。 143 00:11:17,377 --> 00:11:20,880 ああ やってみると 存外夢中になる。 144 00:11:20,880 --> 00:11:23,550 童心に返った気分だ。 ハァ…。 145 00:11:23,550 --> 00:11:27,220 ハリージュ 虫を追いかけるのもいいが➡ 146 00:11:27,220 --> 00:11:29,389 もっと他に 追いかけないといけないものが➡ 147 00:11:29,389 --> 00:11:32,892 あるんじゃないのか? 他に追いかけるもの…。 148 00:11:32,892 --> 00:11:34,994 あっ… 犯罪者か? 149 00:11:34,994 --> 00:11:36,996 違う。 あっ いや➡ 150 00:11:36,996 --> 00:11:40,166 俺たち騎士の本分としては 間違っていないが違う。 151 00:11:40,166 --> 00:11:42,168 フッ…。 152 00:11:42,168 --> 00:11:44,837 ハリージュ お前が追うべきものはな…。 153 00:11:44,837 --> 00:11:47,173 幸福だよ。 154 00:11:47,173 --> 00:11:49,175 あっ? (席を立つ音) 155 00:11:51,344 --> 00:11:55,348 誰かいい人いないのか? 実家に帰ったときの親か。 156 00:11:55,348 --> 00:11:59,519 まあ こうも仕事漬けじゃあ そうそう出会いもないか。 157 00:11:59,519 --> 00:12:02,722 フッ ないな。 だよなあ~。 158 00:12:07,360 --> 00:12:09,362 ないな…。 159 00:12:16,202 --> 00:12:18,404 あっ。 (魔女ベル) 160 00:12:22,041 --> 00:12:24,043 あっ…。 161 00:12:29,882 --> 00:12:31,884 (ドアベル) 162 00:12:31,884 --> 00:12:35,488 (ティエン)やぁ ロゼ。 なんだ ティエンか。 163 00:12:35,488 --> 00:12:38,491 あっ…。 ハァ…。 フッ。 164 00:12:38,491 --> 00:12:40,493 《彼は ティエン・コン。 165 00:12:40,493 --> 00:12:43,329 祖母が生きていた頃から つきあいのある➡ 166 00:12:43,329 --> 00:12:45,331 なじみの商人だ》 167 00:12:45,331 --> 00:12:50,003 ふうっ…。 鐘の音に 気付かなかったのかい? 珍しい。 168 00:12:50,003 --> 00:12:53,506 聞こえたけど 暗くてよく見えなかったの。 169 00:12:53,506 --> 00:12:58,011 ご先祖が作った魔法の鐘も 万能ではないってことか。 170 00:12:58,011 --> 00:13:03,016 誰かが桟橋に近づいたのが わかるだけでも便利だけどね。 171 00:13:03,016 --> 00:13:09,355 お~ 頑張ってたくさん作ったね。 では 早速確認しよう。 172 00:13:09,355 --> 00:13:11,858 「こすると温かくなる薬」に➡ 173 00:13:11,858 --> 00:13:16,029 「髪に塗ってしばらく 放置していると若返る薬」。 174 00:13:16,029 --> 00:13:20,533 それと 「頑固な鍋汚れを落とす薬」 うん 確かに。 175 00:13:20,533 --> 00:13:24,037 う~ん いい色合い! 176 00:13:24,037 --> 00:13:27,040 さすがだね ロゼ。 それはどうも。 177 00:13:27,040 --> 00:13:29,042 魔女の秘薬はもちろんだけど➡ 178 00:13:29,042 --> 00:13:32,045 ロゼはふだん使いの 薬を作るのがうまい。 179 00:13:32,045 --> 00:13:34,981 それくらい誰でもできるでしょ。 180 00:13:34,981 --> 00:13:37,650 誰でも ではないかな。 181 00:13:37,650 --> 00:13:42,488 魔女は魔女からしか生まれない。 その存在だけでも貴重だ。 182 00:13:42,488 --> 00:13:46,826 今の時代 これほどの力を持つ 魔女はそういない。 183 00:13:46,826 --> 00:13:50,663 ロゼは もっと自信を持って いいと思うよ。 184 00:13:50,663 --> 00:13:55,335 別に自信っていうか… まぁ 4年もやってるから。 185 00:13:55,335 --> 00:13:57,337 フフッ…。 186 00:13:57,337 --> 00:14:01,507 4年か… もうそんなにたつんだね。 187 00:14:01,507 --> 00:14:04,844 うん…。 フッ…。 188 00:14:04,844 --> 00:14:10,183 大きくなったねぇ… こ~んなに小さかったロゼが。 189 00:14:10,183 --> 00:14:12,185 そんなに小さくはない…。 190 00:14:12,185 --> 00:14:15,688 そうだったかい? 初めて会ったときは➡ 191 00:14:15,688 --> 00:14:19,692 先代のスカートに隠れていたから よく見えなかったしなぁ。 192 00:14:19,692 --> 00:14:23,196 もう忘れてよ。 フフッ…。 193 00:14:23,196 --> 00:14:27,033 さて 今回分の納品は これでいいとして➡ 194 00:14:27,033 --> 00:14:29,869 次回はこのくらい お願いしたいな。 195 00:14:29,869 --> 00:14:33,473 うっ… さすがに多いんだけど。 196 00:14:33,473 --> 00:14:35,641 それも日用品の薬ばっかり。 197 00:14:35,641 --> 00:14:37,643 それはしかたないさ。 198 00:14:37,643 --> 00:14:40,646 ロゼが作る魔女の秘薬は 出来もいいし➡ 199 00:14:40,646 --> 00:14:44,484 需要も多いんだけど いかんせん値が張るからね。 200 00:14:44,484 --> 00:14:46,486 どうしても数が売れない。 201 00:14:46,486 --> 00:14:49,822 だから日用品の薬を たくさん作らないと➡ 202 00:14:49,822 --> 00:14:52,492 食っていけない でしょ。 そのとおり。 203 00:14:52,492 --> 00:14:54,994 それはわかってるけどさぁ。 204 00:14:54,994 --> 00:14:58,331 単価を上げるのも一つの手だね。 単価? 205 00:14:58,331 --> 00:15:01,167 うん 最近よく売れている➡ 206 00:15:01,167 --> 00:15:04,504 「デートの前に首に振りかける薬」が あるだろ? 207 00:15:04,504 --> 00:15:06,506 あ~ これ? 208 00:15:06,506 --> 00:15:11,010 相談なんだけど そのボトルを変えたくてね。 はぁ…。 209 00:15:11,010 --> 00:15:15,181 なんせ その薬は 若い女性に大変人気がある。 210 00:15:15,181 --> 00:15:17,183 かわいらしいパッケージにすれば➡ 211 00:15:17,183 --> 00:15:19,852 多少値上げをしても 売れると思うんだよ。 212 00:15:19,852 --> 00:15:21,854 へぇ~。 213 00:15:21,854 --> 00:15:24,190 例えば… そうだな~。 214 00:15:24,190 --> 00:15:26,859 う~ん こういうのとかどうだい? 215 00:15:26,859 --> 00:15:29,028 いいんじゃない 何でも。 216 00:15:29,028 --> 00:15:32,031 そうかい? じゃあ今度からは この瓶に➡ 217 00:15:32,031 --> 00:15:35,301 「デートの前に首に振りかけ」… 長いな。 218 00:15:35,301 --> 00:15:39,639 この薬 名前を付けない? せっかくボトルも変えるんだし。 219 00:15:39,639 --> 00:15:43,476 えぇ… 私そういうの わかんないからいいよ。 220 00:15:43,476 --> 00:15:46,646 興味もないし。 興味がない…。 221 00:15:46,646 --> 00:15:48,648 すっかり やさぐれてしまって…。 222 00:15:48,648 --> 00:15:51,150 昔はあんなに かわいらしかったのに。 223 00:15:51,150 --> 00:15:54,153 ティエンお兄ちゃんは悲しいよ。 224 00:15:54,153 --> 00:15:58,157 お兄ちゃんって年じゃないでしょ。 10以上 離れてるんだし。 225 00:15:58,157 --> 00:16:01,327 おじさんだよ おじさん。 おじ…! 226 00:16:01,327 --> 00:16:03,663 う~ん まぁ それでもいいか! 227 00:16:03,663 --> 00:16:05,665 (ドアベル) 228 00:16:05,665 --> 00:16:07,667 フゥ…。 229 00:16:07,667 --> 00:16:10,670 それじゃあ ティエンおじさんはもう行くよ。 230 00:16:10,670 --> 00:16:13,506 また近いうちに来るからね。 はいはい。 231 00:16:13,506 --> 00:16:17,410 あまり やさぐれないように。 うるさい。 232 00:16:20,346 --> 00:16:23,683 ハァ…。 《やさぐれもする。 233 00:16:23,683 --> 00:16:28,855 先日 4年間もひっそりと 片思いしている人が会いに来た。 234 00:16:28,855 --> 00:16:32,458 愛した人に使う惚れ薬を求めて》 235 00:16:34,460 --> 00:16:37,296 う~ん…。 236 00:16:37,296 --> 00:16:39,298 あ… あっ!? 237 00:16:39,298 --> 00:16:41,300 (物が落ちる音) 238 00:16:43,302 --> 00:16:47,139 あ~ やってしまった… 片づけるか。 239 00:16:47,139 --> 00:16:49,141 あっ。 240 00:16:52,144 --> 00:16:54,146 これ…。 241 00:16:57,984 --> 00:17:00,820 《あれは 祖母が死んですぐの頃➡ 242 00:17:00,820 --> 00:17:03,656 調合の材料が尽きてしまい➡ 243 00:17:03,656 --> 00:17:07,493 初めて一人で 王都を訪れた日のこと。 244 00:17:07,493 --> 00:17:10,329 いつも祖母に 連れられて来ていた私は➡ 245 00:17:10,329 --> 00:17:13,432 一人では行きつけのお店の 場所もわからなくて…》 246 00:17:15,501 --> 00:17:17,837 ((あっ…)) 247 00:17:17,837 --> 00:17:22,008 《笑顔と活気にあふれた 王都を楽しむ余裕もなく》 248 00:17:22,008 --> 00:17:25,177 ((あっ! (いななき) 249 00:17:25,177 --> 00:17:27,179 ハァ…)) 250 00:17:27,179 --> 00:17:29,348 《華やかな街の人々は➡ 251 00:17:29,348 --> 00:17:34,287 自分の情けなさを 感じさせるだけだった》 252 00:17:34,287 --> 00:17:38,791 ((そういや知ってるか 湖の魔女が死んだって話。 253 00:17:38,791 --> 00:17:40,793 あっ! 254 00:17:40,793 --> 00:17:44,130 本当かよ! あのばあさん 俺がガキんちょの頃からいたぞ。 255 00:17:44,130 --> 00:17:46,132 200年は生きてるって話だろ? 256 00:17:46,132 --> 00:17:48,634 てっきりあと100年くらいは 生きてるもんだと➡ 257 00:17:48,634 --> 00:17:50,636 思ってたけどなぁ ハハハハ…。 258 00:17:50,636 --> 00:17:54,140 《違う おばあちゃんは 200年も生きてない。 259 00:17:54,140 --> 00:17:56,642 ご先祖様と一緒になっているんだ。 260 00:17:56,642 --> 00:18:00,813 おばあちゃんの名誉のために 訂正しなくちゃ》 261 00:18:00,813 --> 00:18:03,316 なんにせよ これで安心だわな! 262 00:18:03,316 --> 00:18:05,318 ハハハハ! ハッ! 263 00:18:05,318 --> 00:18:07,320 《安心? どうして?》 264 00:18:07,320 --> 00:18:10,323 魔女が来るってだけで 不安だったしなぁ。 265 00:18:10,323 --> 00:18:13,159 向こうも 人目は避けてたようだけど。 266 00:18:13,159 --> 00:18:15,828 悪いことしてる 自覚があったんでしょ。 267 00:18:15,828 --> 00:18:21,334 ねぇ~? なのに平気な顔して 街に来るんだもの。 怖いわぁ➡ 268 00:18:21,334 --> 00:18:24,503 子どもがさらわれたりしたら…。 そんなことあったの!? 269 00:18:24,503 --> 00:18:28,507 なんかほら 昔あったじゃない 人がいなくなったの。 270 00:18:28,507 --> 00:18:31,344 あれ絶対そうよ 魔女の仕業。 271 00:18:31,344 --> 00:18:33,279 (笑い声) 272 00:18:33,279 --> 00:18:36,449 けどこれからは もう心配しなくて済むな! 273 00:18:36,449 --> 00:18:38,618 いや~ よかった~!)) 274 00:18:38,618 --> 00:18:42,121 《そのとき 私は初めて知った。 275 00:18:42,121 --> 00:18:45,791 魔女が 死んで喜ばれるほど 疎まれていたことを。 276 00:18:45,791 --> 00:18:47,960 おばあちゃんは知っていたのかな。 277 00:18:47,960 --> 00:18:52,131 もしかすると ずっと一人で 耐えていたのかもしれない…。 278 00:18:52,131 --> 00:18:54,133 この悪意から》 279 00:18:54,133 --> 00:18:56,636 ((では 魔女の死にかんぱ~い! 280 00:18:56,636 --> 00:18:59,472 ハハハ 献杯の間違いだろ~。 281 00:18:59,472 --> 00:19:04,810 いいんだよ。 これでようやく 安心できるってもんだ ハハハ…! 282 00:19:04,810 --> 00:19:07,813 人が死んで安心したとは 胸くそが悪い。 (3人)あっ。 283 00:19:07,813 --> 00:19:09,815 ハッ… えっ。 284 00:19:09,815 --> 00:19:11,984 店主 勘定。 は はいっ。 285 00:19:11,984 --> 00:19:15,655 人って にいさん… 死んだのは魔女だぞ? 286 00:19:15,655 --> 00:19:19,158 だからなんだ。 魔女も人には違いない。 287 00:19:19,158 --> 00:19:23,162 アンタらは魔女に 何か悪さを されたことがあるのか? 288 00:19:23,162 --> 00:19:26,832 あっ いや…。 でも… なぁ。 ああ…。 289 00:19:26,832 --> 00:19:30,936 俺なら自分が死んだことを 喜ぶヤツなど 呪ってやるが。 290 00:19:33,172 --> 00:19:37,610 彼女が善き魔女であることを 祈るんだな。 291 00:19:37,610 --> 00:19:39,612 あっ…。 292 00:19:41,614 --> 00:19:44,917 おいっ ハリージュ! アズム殿 お待ちください! 293 00:19:46,952 --> 00:19:51,624 あの藍色のマント 騎士団だったのか。 アズムっていやあ➡ 294 00:19:51,624 --> 00:19:54,293 ハイズラーンの領主が そんな名前だったよな。 295 00:19:54,293 --> 00:19:57,963 (店主)怒らせてないだろうな!? 俺たちは無関係だぞ! 296 00:19:57,963 --> 00:20:01,467 《ハリージュ・アズム…》)) 297 00:20:01,467 --> 00:20:04,970 《その日 私は恋に落ちた。 298 00:20:04,970 --> 00:20:09,975 決して手が届くことのない 相手だと わかっていたけれど》 299 00:20:14,480 --> 00:20:16,982 (寝息) 300 00:20:16,982 --> 00:20:18,984 ハッ! (魔女ベル) 301 00:20:18,984 --> 00:20:20,986 鐘の音! 302 00:20:20,986 --> 00:20:23,389 いっ… たぁ…。 (足をぶつける音) 303 00:20:27,326 --> 00:20:29,829 あっ…。 304 00:20:29,829 --> 00:20:31,831 ハァ…。 305 00:20:33,833 --> 00:20:35,835 あっ…。 306 00:20:37,837 --> 00:20:40,339 んっ…。 307 00:20:53,686 --> 00:20:56,355 別に他意はない。 308 00:20:56,355 --> 00:21:00,659 (洗う音) 309 00:21:04,363 --> 00:21:06,665 別に他意はない。 310 00:21:09,368 --> 00:21:11,370 (魔女ベル) 311 00:21:11,370 --> 00:21:13,372 ウソぉ! 312 00:21:13,372 --> 00:21:16,876 《もし ハリージュ様に今来られたら…。 313 00:21:16,876 --> 00:21:20,379 いや それはない。 今までも夜にしか来なかったし。 314 00:21:20,379 --> 00:21:22,381 でも もしかしたら…》 315 00:21:22,381 --> 00:21:24,383 んっ…。 316 00:21:27,386 --> 00:21:31,056 あっ…。 317 00:21:31,056 --> 00:21:33,058 あ… あ…。 318 00:21:33,058 --> 00:21:35,995 も~っ! 319 00:21:35,995 --> 00:21:39,331 別に! 別に彼だって かまわなかったんだけど! 320 00:21:39,331 --> 00:21:41,834 本当に 他意はないのだけど! 321 00:21:41,834 --> 00:21:43,836 (飛び込む音) 322 00:21:47,339 --> 00:21:49,341 変に疲れた。 323 00:21:49,341 --> 00:21:52,344 《心をこんなふうに 揺さぶられることには➡ 324 00:21:52,344 --> 00:21:54,346 慣れていない。 325 00:21:54,346 --> 00:21:56,682 ずっと一人で生きてきたし➡ 326 00:21:56,682 --> 00:22:00,519 生活も ほとんど同じことの繰り返し。 327 00:22:00,519 --> 00:22:03,189 4年前に抱えた恋心も➡ 328 00:22:03,189 --> 00:22:06,859 たまに一人で ひっそりと取り出して眺めては➡ 329 00:22:06,859 --> 00:22:10,362 いい思い出だったなと 振り返る程度。 330 00:22:10,362 --> 00:22:12,865 そのはずだったのに➡ 331 00:22:12,865 --> 00:22:16,702 鐘の音がするたびに 胸が高鳴って…。 332 00:22:16,702 --> 00:22:18,871 そしておびえる。 333 00:22:18,871 --> 00:22:25,044 けれど ハリージュ様は 「私」に会いに来るわけではない。 334 00:22:25,044 --> 00:22:27,880 「魔女」に会いに来るのだ》 335 00:22:27,880 --> 00:22:30,382 もっときちんと➡ 336 00:22:30,382 --> 00:22:33,819 私はそれを 理解しなければならない。 337 00:22:33,819 --> 00:22:37,156 そんなの とっくにわかってる。 338 00:22:37,156 --> 00:22:40,326 こんな思い 届かなくても…。 339 00:22:40,326 --> 00:22:44,663 《いいのに。 いいって言いたいのに。 340 00:22:44,663 --> 00:22:47,666 言えればよかったのに。 341 00:22:47,666 --> 00:22:52,371 私は 自分にさえ ウソをつけない》