1 00:00:00,542 --> 00:00:06,548 ♪~ 2 00:01:07,817 --> 00:01:09,486 (竜ヶ峰(りゅうがみね) 帝人(みかど))都市伝説って何? 3 00:01:09,611 --> 00:01:12,489 (紀田正臣(きだまさおみ)) 黒バイクだよ 首なしライダーだよ 4 00:01:12,614 --> 00:01:14,282 (甘楽(かんら)) 黒いバイクに乗ってる男にはね― 5 00:01:14,574 --> 00:01:16,409 首から上がないの 6 00:01:16,659 --> 00:01:19,120 きれいになくなってるのに 動いてるんだって 7 00:01:19,496 --> 00:01:21,873 (岸谷新羅(きしたにしんら))そんなに難しい 仕事じゃないみたいだけど― 8 00:01:21,956 --> 00:01:23,124 一応 気をつけてね 9 00:01:23,291 --> 00:01:26,252 (折原臨也(おりはらいざや))俺 あんたが 正義の味方になったなんて― 10 00:01:26,336 --> 00:01:28,087 聞いてなかったけどな 11 00:01:28,296 --> 00:01:32,634 (浅沼(あさぬま)) 何なんだよ 何なんだよぉ! 12 00:01:48,483 --> 00:01:54,489 ~♪ 13 00:02:01,746 --> 00:02:03,915 (いななき) 14 00:02:05,875 --> 00:02:08,336 (少女)首なしライダー? 聞いたことがある 15 00:02:09,211 --> 00:02:11,172 (少女)友達が 走ってるの 見たって 16 00:02:11,714 --> 00:02:14,634 (店員) さあ あんまり関心ないですね 17 00:02:15,009 --> 00:02:17,971 (女性)それだったら 写真に撮りました ほら! 18 00:02:18,221 --> 00:02:19,472 (いななき) 19 00:02:20,515 --> 00:02:24,060 (男性)首なしライダー? こいつっす こいつ 20 00:02:24,185 --> 00:02:25,019 (男性)うがぁー! 21 00:02:25,311 --> 00:02:27,230 (晴子(はるこ))聞いたことあるよね 22 00:02:27,355 --> 00:02:29,732 (秋絵(あきえ)) サンシャイン近くで見たかも 23 00:02:30,150 --> 00:02:31,234 (陽子(ようこ))マジ? 24 00:02:31,359 --> 00:02:32,527 よく分かんないけど― 25 00:02:32,694 --> 00:02:34,863 みんな騒いでたから きっとそうなんじゃない? 26 00:02:36,156 --> 00:02:37,699 (新羅)みんな冗舌だ 27 00:02:38,533 --> 00:02:41,369 (甘楽)また出たみたいですね~ 例のバイク 28 00:02:41,452 --> 00:02:44,706 (田中太郎(たなかたろう))でも 首がないなんて ホントなんですかね… 29 00:02:44,873 --> 00:02:47,167 (セットン) ただの趣味の悪い噂ですよ 30 00:02:47,458 --> 00:02:50,420 (甘楽)でも 結構 ホントらしいって噂も聞きますよ~ 31 00:02:50,545 --> 00:02:51,880 (田中太郎)へ~ 32 00:02:52,255 --> 00:02:54,257 (セットン)首がないなんて あり得ないですよ 33 00:02:54,465 --> 00:02:56,134 (甘楽)人間じゃなかったら… 34 00:02:56,217 --> 00:02:58,177 ありえるんじゃないですかね~ 35 00:03:00,263 --> 00:03:02,265 (新羅) 本当に関わり合いになった人は― 36 00:03:02,390 --> 00:03:03,892 寡黙になるらしい 37 00:03:05,143 --> 00:03:07,687 (神近莉緒(かみちかりお)) ごめんなさい よく分からないんで 38 00:03:10,565 --> 00:03:11,983 (新羅)あなたはどうかな? 39 00:03:13,109 --> 00:03:16,613 あの伝説の首なしライダーに どんな印象を抱いてる? 40 00:03:17,155 --> 00:03:20,617 怖い? かっこいい? 実は何だか いい人そう? 41 00:03:21,117 --> 00:03:22,327 いや やっぱり… 42 00:03:23,703 --> 00:03:25,622 どう受け止めたらいいのか 分からない? 43 00:03:29,918 --> 00:03:31,544 (新羅) 今日は首なしライダーについて― 44 00:03:31,669 --> 00:03:33,755 僕が知っていることを教えよう 45 00:03:34,047 --> 00:03:38,301 縷縷綿綿(るるめんめん)とした話になるが 希有壮大(けうそうだい)な心で聞いてほしい 46 00:03:40,053 --> 00:03:41,596 まずは自己紹介しよう 47 00:03:42,096 --> 00:03:44,599 僕は岸谷新羅 24歳 48 00:03:44,933 --> 00:03:47,101 この街で もぐりの医者をやっている 49 00:03:47,185 --> 00:03:49,270 あえて言えば“出張闇医者”だ 50 00:03:51,105 --> 00:03:53,942 非合法な武器で傷ついた人たちの 手当てとか― 51 00:03:54,484 --> 00:03:57,445 顔を変えなきゃならない人たちの 整形手術とか 52 00:04:00,114 --> 00:04:02,617 こう見えても 腕もいいし信頼もあるんだ 53 00:04:03,868 --> 00:04:06,120 さて いよいよ本題だ 54 00:04:06,829 --> 00:04:07,872 (新羅)ただいま 55 00:04:09,415 --> 00:04:12,585 (シャワーの音) お? 56 00:04:19,884 --> 00:04:22,971 (新羅) そう 僕は あの首なしライダー… 57 00:04:24,097 --> 00:04:26,641 セルティ・ストゥルルソンと 同居している 58 00:04:28,309 --> 00:04:30,270 帰ったよ セルティ 59 00:04:32,814 --> 00:04:35,483 こっちは よくある簡単な仕事だったよ 60 00:04:36,317 --> 00:04:37,485 そっちは どうだった? 61 00:04:37,986 --> 00:04:38,987 (セルティ・ストゥルルソン) のぞくな 62 00:04:39,112 --> 00:04:40,613 ああ ごめんごめん 63 00:04:40,697 --> 00:04:42,282 何と言うか いやらしい意味じゃなく― 64 00:04:42,365 --> 00:04:43,658 ついうっかり 65 00:04:48,997 --> 00:04:52,041 あー 何かイラついているようだね 66 00:04:52,625 --> 00:04:54,836 カルシウムの摂取が必要かな? 67 00:04:56,587 --> 00:04:58,673 (セルティ) 卵の殻でも食えというのか? 68 00:05:01,467 --> 00:05:03,594 (新羅) あー いいんじゃないかな 69 00:05:03,720 --> 00:05:05,471 もっとも僕は あれだ 70 00:05:05,847 --> 00:05:07,223 栄養学には疎いから― 71 00:05:07,348 --> 00:05:10,601 卵の殻に いかほどのカルシウムが 含まれているのか― 72 00:05:10,727 --> 00:05:13,271 どれだけ吸収効率がいいのか といった類いのことは― 73 00:05:13,396 --> 00:05:14,856 分からないけどね 74 00:05:16,107 --> 00:05:19,736 そもそも君の脳みそが どこにあるかも分からないのに― 75 00:05:19,861 --> 00:05:22,989 カルシウムがどれだけ有用か ってこともあるけどさ 76 00:05:23,823 --> 00:05:24,949 (セルティ)黙れ! 77 00:05:31,956 --> 00:05:33,207 なあ セルティ 78 00:05:33,666 --> 00:05:37,003 何度も聞くけど 眼球の存在しない君には― 79 00:05:37,128 --> 00:05:39,547 一体この世界が どんなふうに見えるのかな? 80 00:05:43,384 --> 00:05:45,386 (セルティ) 自分で理解出来ないものを― 81 00:05:45,511 --> 00:05:47,555 他人に教える事は出来ない 82 00:05:49,515 --> 00:05:51,225 (新羅)彼女には首がないけど― 83 00:05:51,392 --> 00:05:54,604 視界もあるし音も聞こえるし においも感じてる 84 00:05:54,979 --> 00:05:58,900 ただ 首がないからって 全方向が見えるわけじゃないらしい 85 00:05:59,233 --> 00:06:02,528 普通の人間より 少し視野が広い程度みたいだ 86 00:06:04,405 --> 00:06:06,699 これは僕の推理に過ぎないけど― 87 00:06:07,366 --> 00:06:09,577 君の体から 絶えず染み出している― 88 00:06:09,702 --> 00:06:12,872 その“影”のような 不思議SFトンデモ物質― 89 00:06:13,206 --> 00:06:15,625 その粒子が光の代わりに 周囲に放たれ― 90 00:06:15,750 --> 00:06:17,752 跳ね返ったところを吸収し― 91 00:06:17,877 --> 00:06:20,630 周囲の情報を得ている というのはどうかな? 92 00:06:21,881 --> 00:06:25,676 当然 遠くのものに対しては 情報が不鮮明になる 93 00:06:28,179 --> 00:06:31,474 (セルティ)興味ない 見えて聞こえれば それでいい 94 00:06:31,766 --> 00:06:34,769 セルティ 君はいつだってそうだ 95 00:06:35,269 --> 00:06:36,979 君の感じる世界は― 96 00:06:37,105 --> 00:06:40,608 果たして 僕が感じてる世界と どれだけ差異があるのか 97 00:06:41,484 --> 00:06:44,112 僕は ただ それが気になるだけなんだよ 98 00:06:44,445 --> 00:06:48,116 これは何も視界だけの話じゃない 価値観の問題でもある 99 00:06:48,741 --> 00:06:50,993 人間としての価値観ではなく― 100 00:06:51,119 --> 00:06:54,330 この街に具現化した ただ1人の妖精― 101 00:06:57,458 --> 00:07:00,878 デュラハンとして見た 世界の価値ってやつをさ 102 00:07:13,474 --> 00:07:14,308 ん? 103 00:07:15,810 --> 00:07:16,894 どうしたんだい? 104 00:07:17,854 --> 00:07:21,190 よかったら話してくれよ 何があったのか 105 00:07:26,446 --> 00:07:30,741 今日の仕事 折原君は簡単だって言ってたけど 106 00:07:31,451 --> 00:07:34,829 (セルティ)仕事自体は 何事もなく あっさり終わったんだ 107 00:07:36,497 --> 00:07:37,331 で? 108 00:07:41,836 --> 00:07:44,338 (臨也)ほんとに運び屋様々だね 109 00:07:44,630 --> 00:07:47,967 あんたあっての俺 俺あってのあんた 110 00:07:48,342 --> 00:07:50,678 (セルティ) 後のほうは認めたくないな 111 00:07:50,761 --> 00:07:52,180 (臨也)そう言わないで 112 00:07:52,805 --> 00:07:54,599 これからもよろしく頼むよ 113 00:07:54,807 --> 00:07:57,560 あんたとは 仲良くやっていきたいんだからさ 114 00:07:57,810 --> 00:07:59,562 この先もずっと 115 00:08:05,735 --> 00:08:08,070 (セルティ) 不気味さを感じるのは気のせいか? 116 00:08:08,196 --> 00:08:11,073 おっと! 間違いなく気のせいだよ 117 00:08:11,199 --> 00:08:13,576 ところでさ あんた デュラハンって知ってる? 118 00:08:15,077 --> 00:08:17,955 アイルランドの首がない 妖精のことらしいんだけど― 119 00:08:18,080 --> 00:08:21,501 最近 代々木公園に流れてきた 似顔絵描きのじいさんが― 120 00:08:21,626 --> 00:08:24,504 昔それを見たって言ってんだよね 121 00:08:25,338 --> 00:08:26,672 そのじいさんがさ― 122 00:08:26,797 --> 00:08:29,926 首がない 首がないって 騒いでたらしいんだ 123 00:08:30,051 --> 00:08:33,596 それって要するにデュラハンって やつの首のことかな? 124 00:08:36,933 --> 00:08:38,518 (セルティ)まだそこにいるのか? 125 00:08:38,643 --> 00:08:40,852 さあ ちょっと分かんないけど 126 00:08:41,020 --> 00:08:42,188 (いななき) 127 00:08:47,443 --> 00:08:49,487 やっぱり気になるんだ 128 00:08:56,661 --> 00:08:59,080 (新羅)セルティ・ ストゥルルソンは人間ではない 129 00:09:00,081 --> 00:09:01,541 俗にデュラハンと呼ばれる― 130 00:09:01,666 --> 00:09:05,336 ケルト伝承などにうたわれる 妖精の類いである 131 00:09:10,633 --> 00:09:12,635 (セルティ) 似顔絵描きを知りませんか? 132 00:09:13,636 --> 00:09:16,472 (女性)ああ あの人なら もういないですよ 133 00:09:16,681 --> 00:09:20,393 ねえ あの人 横浜へ行くって 言ってなかった? 134 00:09:20,601 --> 00:09:21,561 (男性)ああ? 135 00:09:23,729 --> 00:09:26,774 (新羅)デュラハンは切り落とした 自分の首を脇に抱え― 136 00:09:26,941 --> 00:09:29,235 コシュタ・バワーと呼ばれる 首なし馬に牽(ひ)かれた― 137 00:09:29,360 --> 00:09:31,529 二輪の馬車に乗って やってくる 138 00:09:35,449 --> 00:09:39,287 彼らが訪れるのは 死期が迫った人間がいる家だ 139 00:09:47,670 --> 00:09:50,965 もし うっかりと 扉を開けてしまったら最後… 140 00:09:55,303 --> 00:09:57,513 タライいっぱいの血液を 浴びせかけられる 141 00:09:59,974 --> 00:10:02,893 そんな不吉で 死のにおいに満ちた伝説と― 142 00:10:03,019 --> 00:10:06,897 現実の彼女の姿は 簡単には結び付かないね 143 00:10:07,648 --> 00:10:09,567 首がないことを除いては 144 00:10:10,901 --> 00:10:13,404 彼女がなぜ この日本 この東京― 145 00:10:13,529 --> 00:10:15,615 この池袋にやってきたのか 146 00:10:15,948 --> 00:10:19,118 なぜ こんなにも自分の首に こだわっているのか 147 00:10:20,661 --> 00:10:21,370 それをこれから― 148 00:10:21,495 --> 00:10:22,663 お話ししよう 149 00:10:31,505 --> 00:10:33,507 (新羅)今から20年前のことだ 150 00:10:34,342 --> 00:10:37,011 彼女がある山の中で ふいに目を覚ますと― 151 00:10:37,386 --> 00:10:39,597 いつの間にか首がなくなっていた 152 00:10:40,514 --> 00:10:42,141 その瞬間に気づいたのは― 153 00:10:42,266 --> 00:10:45,061 様々な記憶が欠落していたこと 154 00:10:46,020 --> 00:10:49,231 それは自分の行動の 理由であったり― 155 00:10:49,357 --> 00:10:52,234 ある程度さかのぼった 過去の記憶であったり 156 00:10:53,152 --> 00:10:56,030 けれど自分が デュラハンであること― 157 00:10:56,197 --> 00:10:58,741 名前がセルティ・ストゥルルソン であること 158 00:10:59,075 --> 00:11:03,329 自分の能力の使い方に関しては 確実に記憶していた 159 00:11:05,706 --> 00:11:08,042 そして彼女がまず驚いたのは… 160 00:11:08,459 --> 00:11:12,213 (セルティ)私は頭でものを 考えていたわけじゃなかったんだ 161 00:11:12,421 --> 00:11:13,881 (新羅)ということだった 162 00:11:15,424 --> 00:11:16,467 それに続いて― 163 00:11:16,592 --> 00:11:18,052 自分の“首”とおぼしき気配を― 164 00:11:18,177 --> 00:11:20,638 感じ取ることができるのにも 気がついた 165 00:11:28,479 --> 00:11:32,066 状況を考え 彼女は1つの推理をした 166 00:11:32,691 --> 00:11:34,568 自分の意思は もともと― 167 00:11:34,735 --> 00:11:37,196 “体”と“頭”で 共有していたものであり― 168 00:11:37,321 --> 00:11:41,075 欠落した記憶は“頭”の中に 含まれているのではないかと 169 00:11:42,034 --> 00:11:43,786 そして彼女は決意した 170 00:11:44,078 --> 00:11:47,081 己の存在意義を知る首を 取り戻すこと 171 00:11:47,331 --> 00:11:51,085 それこそが今の自分に 与えられた存在意義だ 172 00:11:52,420 --> 00:11:53,546 もしかしたら― 173 00:11:53,921 --> 00:11:57,591 “頭”が自らの意思で体のもとを 離れたのかもしれないが― 174 00:11:57,758 --> 00:12:01,512 そうだとしても結局は 手にしてみなければ分からない 175 00:12:02,930 --> 00:12:04,974 (セルティ) 横浜には もういなかった 176 00:12:05,516 --> 00:12:08,394 次は多摩 その次は千葉 177 00:12:08,936 --> 00:12:11,105 どこへ行っても行き違いだった 178 00:12:11,397 --> 00:12:13,941 (新羅)また明日にでもすれば よかったじゃないか 179 00:12:15,025 --> 00:12:16,444 (セルティ)必死だった 180 00:12:16,986 --> 00:12:19,613 自分の首が そこにあるかもしれないんだ 181 00:12:22,241 --> 00:12:26,162 どうしても取り戻したかった 一日も早く 182 00:12:26,829 --> 00:12:27,746 このまま― 183 00:12:27,830 --> 00:12:30,958 自分の記憶も曖昧なまま 生きていくのは嫌だ 184 00:12:33,085 --> 00:12:35,504 (新羅)周囲に残る わずかな気配をたどり― 185 00:12:35,796 --> 00:12:37,673 ここまでやってきたものの― 186 00:12:38,466 --> 00:12:41,635 首はどうやら 海外に渡ってしまったようだ 187 00:12:42,636 --> 00:12:44,805 船の行き先は日本らしい 188 00:12:45,139 --> 00:12:47,933 密航をして後を追うと 決めたはいいが― 189 00:12:48,058 --> 00:12:49,602 問題は この馬だ 190 00:12:51,020 --> 00:12:53,147 これは馬の死骸に憑依(ひょうい)させた― 191 00:12:53,272 --> 00:12:55,608 デュラハンの使い魔のような存在だ 192 00:12:56,233 --> 00:12:59,028 いざとなれば消し去ってしまう こともできたのだが― 193 00:12:59,153 --> 00:13:02,364 果たして その後に どこへ行ってしまうのか? 194 00:13:02,823 --> 00:13:05,284 その記憶は多分“頭”の中だ 195 00:13:05,743 --> 00:13:07,703 そう思うと 消し方が分かっていても― 196 00:13:07,828 --> 00:13:09,997 なかなか踏み切ることができない 197 00:13:13,918 --> 00:13:15,336 (いななき) 198 00:13:18,172 --> 00:13:19,340 そんな時― 199 00:13:23,928 --> 00:13:25,054 彼女は― 200 00:13:27,056 --> 00:13:28,724 それに出会ったんだ 201 00:13:32,019 --> 00:13:35,356 (セルティ) 結局 どこにも見つからなかった 202 00:13:35,856 --> 00:13:36,732 けど… 203 00:13:37,358 --> 00:13:40,236 (平和島(へいわじま) 静雄(しずお))あー その似顔絵描きなら知ってるぜ 204 00:13:40,361 --> 00:13:41,070 (セルティ)え? 205 00:13:42,029 --> 00:13:45,616 おとといくらいから 南池袋公園に来てたんだ 206 00:13:46,450 --> 00:13:47,701 一緒に行ってやろうか? 207 00:13:51,163 --> 00:13:53,832 そんなんじゃ不便だろ? なっ 208 00:13:59,046 --> 00:14:01,215 (画家)さあ できたよ 209 00:14:02,132 --> 00:14:04,176 (亜梨沙(ありさ))うわー すっごーい 210 00:14:04,301 --> 00:14:06,512 (女子)亜梨沙より美人に描けてる 211 00:14:06,887 --> 00:14:08,222 (亜梨沙)ちょっと! 212 00:14:08,472 --> 00:14:10,224 (女子)おじさん さすがですね 213 00:14:10,391 --> 00:14:12,601 (画家)いやいや まだまだ描きたいものも― 214 00:14:12,726 --> 00:14:15,604 まともに描けない有様でね 215 00:14:16,730 --> 00:14:18,399 (亜梨沙)ありがとうございました 216 00:14:18,607 --> 00:14:21,569 (画家) どういたしまして またおいで 217 00:14:21,694 --> 00:14:22,862 (亜梨沙)はーい 218 00:14:25,447 --> 00:14:28,450 (画家)ああ すまんが もう暗いんでな― 219 00:14:28,576 --> 00:14:30,244 今日は これで終わりだ 220 00:14:30,411 --> 00:14:32,955 (静雄)デュラハンを見たってのは 本当か? 221 00:14:33,080 --> 00:14:34,081 ああ? 222 00:14:36,083 --> 00:14:39,128 ああ… ああ 本当だとも 223 00:14:39,253 --> 00:14:40,588 私が若い頃― 224 00:14:40,713 --> 00:14:42,798 アイルランドの山ん中で見た 225 00:14:42,923 --> 00:14:45,134 間違いなく この目でな 226 00:14:46,886 --> 00:14:48,929 (セルティ)首をなくしたとは どういう意味だ? 227 00:14:49,513 --> 00:14:51,223 首をなくした? 228 00:14:51,348 --> 00:14:53,392 ハハ… そうじゃない 229 00:14:53,893 --> 00:14:55,436 首がないんだ 230 00:14:55,895 --> 00:14:58,355 首がどうしても決まらない 231 00:15:01,525 --> 00:15:02,443 ほれ 232 00:15:10,784 --> 00:15:14,955 女だった それもひどく美しい女だった 233 00:15:15,664 --> 00:15:19,376 霧の深い夜 山道ですれ違った 234 00:15:20,419 --> 00:15:23,005 ものすごい勢いで走り去っていった 235 00:15:23,130 --> 00:15:25,633 恐ろしくも美しい姿だった 236 00:15:27,092 --> 00:15:30,930 この世のものじゃない そう直感した 237 00:15:32,431 --> 00:15:34,600 宿に帰って話をすると― 238 00:15:34,725 --> 00:15:37,603 それはデュラハンに違いないと 言われた 239 00:15:37,811 --> 00:15:40,606 古くから その地に 住んでいるんだそうだ 240 00:15:40,731 --> 00:15:42,441 (セルティ) なぜ あなたのデュラハンは― 241 00:15:42,566 --> 00:15:44,193 首を抱えてないんだ? 242 00:15:44,443 --> 00:15:46,028 描けないんだ 243 00:15:46,403 --> 00:15:48,989 描けば描くほど違って見える 244 00:15:50,240 --> 00:15:52,201 あの日の記憶は確かなのに― 245 00:15:52,326 --> 00:15:56,163 どうしても あの女に たどり着くことができない 246 00:15:57,122 --> 00:15:59,959 (セルティ) その女の髪の色は? 目の色は? 247 00:16:00,084 --> 00:16:01,585 表情はどんなだった? 248 00:16:02,294 --> 00:16:04,797 (画家) フッ それを口にできるなら― 249 00:16:04,922 --> 00:16:07,299 絵にしようとは思わなかっただろう 250 00:16:08,050 --> 00:16:11,220 そういえば最近 妙な男が訪ねてきてな― 251 00:16:11,345 --> 00:16:14,890 その男は この絵は これで完璧だと言うんだ 252 00:16:15,182 --> 00:16:18,227 彼女は首がなくていいんだとね 253 00:16:19,728 --> 00:16:21,689 変わった男だった 254 00:16:22,356 --> 00:16:24,733 なんで そこまでこだわるんだ? 255 00:16:25,359 --> 00:16:28,904 (画家)あの経験は 私の人生で最高のものだ 256 00:16:29,029 --> 00:16:31,365 あの夜が一生だった 257 00:16:31,573 --> 00:16:36,078 取り戻したいんだ あの瞬間 あの時の記憶を 258 00:16:42,793 --> 00:16:44,712 (静雄)じいさん ありがとな 259 00:16:45,379 --> 00:16:46,714 (新羅)なるほどね 260 00:16:49,508 --> 00:16:50,509 ところで君は― 261 00:16:50,926 --> 00:16:53,554 そのおじいさんと会った記憶は ないんだろ? 262 00:16:56,181 --> 00:16:56,974 (セルティ)ない 263 00:16:57,099 --> 00:16:59,226 (新羅)そのデュラハンは 君かもしれないし― 264 00:16:59,351 --> 00:17:00,978 君じゃないかもしれない 265 00:17:01,395 --> 00:17:03,522 あるいは単なる 見間違いかもしれない 266 00:17:03,981 --> 00:17:06,900 (セルティ) あれは私だ きっとそうだ 267 00:17:07,067 --> 00:17:08,068 そうか 268 00:17:10,738 --> 00:17:13,574 (セルティ)私はどこに向かって 走っていたんだろう 269 00:17:13,699 --> 00:17:16,410 何を思い どんな目的で… 270 00:17:17,036 --> 00:17:19,663 (新羅)そんなに気にする必要が あるんだろうか 271 00:17:20,164 --> 00:17:20,914 (セルティ)ん? 272 00:17:21,205 --> 00:17:25,711 (新羅)君はまさしく 神出鬼没で斬新奇抜な存在だよ 273 00:17:26,170 --> 00:17:27,253 だからといって― 274 00:17:27,378 --> 00:17:31,050 今のままでは 君の望みの達成は前途遼遠だ 275 00:17:31,675 --> 00:17:32,885 (セルティ)何が言いたい 276 00:17:33,010 --> 00:17:34,219 単純に言おう 277 00:17:34,470 --> 00:17:35,554 諦めなよ 278 00:17:38,182 --> 00:17:41,935 その変わった男の言ったこと 当たってるんじゃないかな 279 00:17:42,269 --> 00:17:45,105 首 なくたって いいんじゃないかな 280 00:17:48,901 --> 00:17:51,487 自分の首を捜すのは もうやめてさ― 281 00:17:51,945 --> 00:17:53,614 2人でどこかに行こうよ 282 00:17:54,573 --> 00:17:55,783 どこでもいい 283 00:17:57,117 --> 00:17:58,619 君が望むなら― 284 00:17:58,744 --> 00:18:02,790 僕はどんな手を使ってでも 君を故郷に帰してみせる 285 00:18:03,749 --> 00:18:05,292 僕もそこへ行くよ 286 00:18:05,667 --> 00:18:06,960 それで ずっと一緒に… 287 00:18:07,086 --> 00:18:09,171 (セルティ) お前のことは嫌いじゃないが― 288 00:18:09,296 --> 00:18:12,341 今 こうして ここで 暮らしているだけで十分だ 289 00:18:12,466 --> 00:18:14,384 フッ そんなこと言わないでさ… 290 00:18:14,510 --> 00:18:15,677 (セルティ)十分だ! 291 00:18:19,765 --> 00:18:20,849 (新羅)だったらさ― 292 00:18:21,433 --> 00:18:23,560 せめて もうちょっと女の子らしく… 293 00:18:23,685 --> 00:18:24,812 (セルティ)もういい! 294 00:18:29,024 --> 00:18:30,150 (戸が閉じる音) 295 00:18:32,361 --> 00:18:34,196 (新羅)やっぱり僕の価値観と― 296 00:18:34,321 --> 00:18:36,949 彼女の価値観には 違いがあるのだろうか 297 00:18:37,825 --> 00:18:40,494 閑話休題 さっきの続きを話そうか 298 00:18:41,870 --> 00:18:43,872 船に乗ってからの彼女の… 299 00:18:43,997 --> 00:18:46,750 いや 彼女と僕の話を 300 00:18:48,001 --> 00:18:50,671 船員に話をつけて 密航したはいいが― 301 00:18:50,838 --> 00:18:54,341 彼女は自分の姿が ひどく目立つことに気がついた 302 00:18:56,593 --> 00:19:00,180 彼女を知る今となっては なんてことない光景だけど 303 00:19:04,852 --> 00:19:07,271 初めて見た時は驚いたものさ 304 00:19:07,813 --> 00:19:09,523 僕が4歳の時だった 305 00:19:11,275 --> 00:19:14,444 僕は父さんと一緒に 日本へ帰る途中だった 306 00:19:15,112 --> 00:19:18,740 父の森厳(しんげん)は お世辞にも普通とは言えない人間だ 307 00:19:19,700 --> 00:19:21,368 僕が見たことを聞いたら― 308 00:19:21,493 --> 00:19:24,705 親としては一笑に付すのが 正しい態度じゃなかろうか 309 00:19:26,206 --> 00:19:28,041 しかし父さんは違った 310 00:19:28,458 --> 00:19:31,712 医者としての性(さが)なのか 俄然 興味を持ったんだ 311 00:19:33,964 --> 00:19:34,965 (岸谷森厳)ご婦人 312 00:19:35,340 --> 00:19:39,052 失礼だが あなたには 首がないというが本当かな? 313 00:19:39,720 --> 00:19:41,221 (新羅)父さんは言った 314 00:19:41,722 --> 00:19:42,973 一度だけでいい 315 00:19:43,098 --> 00:19:46,059 あなたを解剖させてくれれば 居場所を提供しよう 316 00:19:48,020 --> 00:19:49,563 彼女は承諾した 317 00:19:49,938 --> 00:19:52,649 打算もあれば いろいろ不安もあったろう 318 00:19:57,112 --> 00:20:00,407 この時のことを 彼女はあまり覚えていないらしい 319 00:20:02,868 --> 00:20:05,204 人間用の麻酔はあまり効かず― 320 00:20:05,621 --> 00:20:07,748 ショックが強かったのかもしれない 321 00:20:09,041 --> 00:20:13,378 (森厳)痛覚はあるようだが 人間よりは かなり鈍いようだな 322 00:20:18,050 --> 00:20:19,509 心臓がない 323 00:20:19,635 --> 00:20:22,971 どの臓器も形だけで 何の機能もしていない 324 00:20:23,096 --> 00:20:26,975 血管はあるのに血は通っていない ただ肉があるだけだ 325 00:20:27,392 --> 00:20:29,937 まるで生きている人体模型だな 326 00:20:30,229 --> 00:20:31,104 ただし… 見ろ 327 00:20:35,984 --> 00:20:38,070 こいつ どうやったら死ぬんだ? 328 00:20:40,530 --> 00:20:41,949 (新羅)ひどい父親だろう? 329 00:20:42,616 --> 00:20:46,161 4歳の子供に彼女の解剖を させようっていうんだから 330 00:20:46,954 --> 00:20:51,166 けど こんな教育のおかげで 医者の技能が身に付いたんだから 331 00:20:51,583 --> 00:20:53,794 何が幸いするか分からない 332 00:20:54,962 --> 00:20:55,879 (森厳)どうした? 333 00:20:59,007 --> 00:21:00,175 (新羅)ひと目 見た時から― 334 00:21:00,968 --> 00:21:02,636 彼女に魅せられていた 335 00:21:04,012 --> 00:21:06,807 その気持ちは 一緒に暮らした この20年間― 336 00:21:06,932 --> 00:21:08,433 全く変わってない 337 00:21:09,184 --> 00:21:11,979 そして彼女は 運び屋の仕事をしながら― 338 00:21:12,104 --> 00:21:14,231 ずっと自分の首を捜してる 339 00:21:15,357 --> 00:21:18,443 首が戻ったら 彼女はどうするつもりなんだろう 340 00:21:18,944 --> 00:21:20,779 彼女はどうなってしまうんだろう 341 00:21:21,822 --> 00:21:25,242 彼女の意思は そのまま首の意思なんだろうか 342 00:21:25,492 --> 00:21:26,451 それとも… 343 00:21:27,494 --> 00:21:28,996 (セルティ)何を撮ってるんだ? 344 00:21:29,121 --> 00:21:31,331 ああ いや 何と言うか― 345 00:21:31,540 --> 00:21:34,501 甘い日常の断面を 一切合切 語り尽くして― 346 00:21:34,626 --> 00:21:36,295 後世に残そうかと 347 00:21:37,170 --> 00:21:39,506 (セルティ) 何でもいいから静かにしてくれ 348 00:21:39,631 --> 00:21:40,799 眠れない 349 00:21:41,675 --> 00:21:43,552 悪かったよ セルティ 350 00:21:45,345 --> 00:21:48,181 じゃあ この辺で 続きはまたいつか 351 00:21:51,560 --> 00:21:52,811 (新羅)おお! 352 00:21:53,020 --> 00:21:54,521 完璧じゃないですか 353 00:21:54,688 --> 00:21:57,316 (画家)ああ? どこが完璧なんだ 354 00:21:57,441 --> 00:22:01,320 デュラハンは首を抱えているのが 本来の姿なんだぞ 355 00:22:01,445 --> 00:22:04,364 (新羅)別になくたって いいんじゃないですか 首なんて 356 00:22:05,407 --> 00:22:06,742 いいわけがない 357 00:22:06,867 --> 00:22:09,786 実物を見ていないから そんなことを言うんだ 358 00:22:09,911 --> 00:22:12,664 世にも美しい女だったんだよ 359 00:22:12,789 --> 00:22:14,041 (新羅)ですよね 360 00:22:14,958 --> 00:22:17,753 でも やっぱり首は ないほうがいいな 361 00:22:17,878 --> 00:22:19,796 そのほうがチャーミングですよ 362 00:22:19,921 --> 00:22:21,465 これで完璧です 363 00:22:21,590 --> 00:22:24,593 だから おじいさんも 悩むことはないんですよ 364 00:22:24,718 --> 00:22:26,386 描けなくたっていいんです 365 00:22:26,553 --> 00:22:28,055 ずっと このままで 366 00:22:30,891 --> 00:22:31,975 ふむ… 367 00:22:32,059 --> 00:22:33,894 だが私は描く 368 00:22:34,019 --> 00:22:35,896 いいんですって これで 369 00:22:36,480 --> 00:22:38,356 変わった男だな あんた 370 00:22:38,482 --> 00:22:40,650 いやあ それほどでも 371 00:22:40,776 --> 00:22:41,526 フフフ… 372 00:22:41,985 --> 00:22:45,947 (新羅と画家の笑い声) 373 00:22:46,782 --> 00:22:52,829 ♪~ 374 00:24:06,987 --> 00:24:13,034 ~♪