1 00:00:02,135 --> 00:00:04,171 (桜井聖恵)本当に なんの変哲もない。 2 00:00:04,171 --> 00:00:09,142 (武蔵魏一)これがメインディッシュ…。 なんだか残念な気がしますね。 3 00:00:09,142 --> 00:00:11,144 …いや ちょっと待て。 4 00:00:11,144 --> 00:00:16,149 この満ち満ちた香りは どうだ! みずみずしく甘いトマトの香り…。 5 00:00:16,149 --> 00:00:21,154 焦げ目のついた具材の香ばしさと相まって 香りが とにかくすごい! 6 00:00:21,154 --> 00:00:38,138 ♬~ 7 00:00:38,138 --> 00:00:40,140 (武蔵)な… なんだ これは! (一同のどよめき) 8 00:00:43,143 --> 00:00:53,120 ♬~ 9 00:02:20,107 --> 00:02:22,109 (武蔵)ひ… ひと口目の衝撃…! 10 00:02:22,109 --> 00:02:24,111 熱々のパスタ→ 11 00:02:24,111 --> 00:02:27,114 花開いたトマトケチャップの 香りと甘みと共に→ 12 00:02:27,114 --> 00:02:29,116 ツルンと口の中に入ってくる! 13 00:02:29,116 --> 00:02:32,119 (田中光也)ピーマン ウィンナー 焦げた玉ねぎ! 14 00:02:32,119 --> 00:02:35,122 カリッ! シャキッ! 絶妙の歯応え。 15 00:02:35,122 --> 00:02:39,092 (小崎 峠)深い塩味とコクのあるパスタが それらの受け皿になっている。 16 00:02:39,092 --> 00:02:42,095 《かめばかむほど 口の中で合わさっていく》 17 00:02:42,095 --> 00:02:44,097 《新食感だ これは…》 18 00:02:44,097 --> 00:02:47,100 トマトの香りは かむほどに開いていくようだ。 19 00:02:47,100 --> 00:02:49,136 (森 隼人)皆様ほどの方が…。 20 00:02:49,136 --> 00:02:52,105 私は 高級料理のほうがいい… うっ!? 21 00:02:52,105 --> 00:02:55,108 《うおっ… もう なくなった!?》 22 00:02:55,108 --> 00:02:57,110 《終わり? もう終わり!?》 23 00:02:57,110 --> 00:03:00,113 《足りん… 全く足りんぞ…!》 24 00:03:00,113 --> 00:03:04,151 理屈なんか どうでもいいわ。 とにかく美味しい! 25 00:03:04,151 --> 00:03:08,121 最も驚いたのは 味わいと同時に来る この懐かしさよ! 26 00:03:08,121 --> 00:03:10,123 うむ わかる。 (小崎)ええ。 27 00:03:10,123 --> 00:03:15,095 (武蔵)子供の頃から ナポリタンと聞いて 最初に思い描く味のイメージ。 28 00:03:15,095 --> 00:03:19,132 あれの理想なんだ! ごちそうだったナポリタン。 29 00:03:19,132 --> 00:03:23,103 思い出として美化されてるはずの味に このナポリタンは追いついている…! 30 00:03:23,103 --> 00:03:27,107 理想のナポリタン! これが今日の主役だ! 31 00:03:27,107 --> 00:03:29,109 うまい! 32 00:03:30,110 --> 00:03:35,115 (西門理事長)《何を浸ってる。 こういうところで人間性が露見する》 33 00:03:35,115 --> 00:03:38,118 《いずれ切り捨てるべき者どもだな》 34 00:03:38,118 --> 00:03:41,088 満足していただけましたか? 皆様。 35 00:03:41,088 --> 00:03:43,090 素晴らしいですわ 西門さん。 36 00:03:43,090 --> 00:03:47,094 私も ここまで一品に心を奪われるとはね。 37 00:03:47,094 --> 00:03:49,096 すごいシェフを知ってるんだな 君は! 38 00:03:49,096 --> 00:03:52,132 (朝倉 海) このナポリタンを作った者を呼んでますが→ 39 00:03:52,132 --> 00:03:56,136 よろしい? もちろんだ。 ぜひ 礼を… うおっ!? 40 00:03:56,136 --> 00:03:59,106 北田岳 彼です。 41 00:03:59,106 --> 00:04:02,109 (拍手と歓声) 42 00:04:02,109 --> 00:04:06,113 彼が このナポリタンを? 少年のように見える。 43 00:04:06,113 --> 00:04:08,148 初めて会った時→ 44 00:04:08,148 --> 00:04:13,120 彼は すでに ナポリタンのクオリティーを 極限まで引き上げた作り方をしていました。 45 00:04:13,120 --> 00:04:15,122 ナポリタンのクオリティー? 46 00:04:15,122 --> 00:04:18,125 まず 具材を炒める順番が正しかった。 47 00:04:18,125 --> 00:04:20,127 玉ねぎを最初に入れ→ 48 00:04:20,127 --> 00:04:25,132 メイラード反応で香ばしさを引き出してから ウィンナー ピーマン。 49 00:04:25,132 --> 00:04:28,135 ウィンナーの持つコクと脂を フライパンの中で回す。 50 00:04:28,135 --> 00:04:31,104 次に パスタを入れ ケチャップを和えるわけですが→ 51 00:04:31,104 --> 00:04:33,106 ここがミソです。 52 00:04:33,106 --> 00:04:38,111 岳は 具材を寄せ フライパンの面に 直接ケチャップをかけたのです。 53 00:04:38,111 --> 00:04:41,181 なぜ そうするのか。 54 00:04:41,181 --> 00:04:45,118 パスタ 具材にかけるよりも 当然 劇的に温度が上がる。 55 00:04:45,118 --> 00:04:49,089 理想的なメイラード反応をもって 最上の香ばしさを生み出す。 56 00:04:49,089 --> 00:04:53,126 芳醇なトマトの香りは これによるものだったんです。 57 00:04:53,126 --> 00:04:55,128 あとは ゆっくり和えればいい。 58 00:04:55,128 --> 00:04:57,130 (魚見亜由) 《それだけの工夫で あんな…》 59 00:04:57,130 --> 00:05:00,133 (北田 岳)か… 完成品から逆算したら それぐらい…。 60 00:05:00,133 --> 00:05:04,104 なるほど。 じゃあ 一つ 答えてもらおう。 61 00:05:04,104 --> 00:05:07,107 フォークの温度を 今日 何度でお出しした? 62 00:05:07,107 --> 00:05:09,109 はあ? 63 00:05:09,109 --> 00:05:12,112 最初に会った時も言ったろう。 45度だよ。 64 00:05:12,112 --> 00:05:15,115 手に取った時に 「温かい」と「熱い」の境目になる→ 65 00:05:15,115 --> 00:05:17,117 45度に熱して出す。 66 00:05:17,117 --> 00:05:20,086 洋食を作る時には 毎回やってることだよ。 67 00:05:22,122 --> 00:05:25,091 聞きましたか? 皆さん。 68 00:05:25,091 --> 00:05:29,129 彼は 料理を出す時 フォークの温度を調整してるんですよ。 69 00:05:29,129 --> 00:05:33,099 フォークをお湯に浸し 45度に調整する。 70 00:05:33,099 --> 00:05:36,136 (海の声)最初に会った時 度肝を抜かれた。 71 00:05:36,136 --> 00:05:41,107 そ… そうよ! このフォークを持った時 心地のいい温かさを感じた。 72 00:05:41,107 --> 00:05:44,110 手に取ったフォーク ナイフが 冷めていると残念。 73 00:05:44,110 --> 00:05:47,113 記憶に残らないぐらいのものだけど→ 74 00:05:47,113 --> 00:05:52,118 このフォークの温度は 一品へのワクワクが すごく高まった! 75 00:05:52,118 --> 00:05:57,090 皿やフォークを温めるのは 僕もやってる。 でも 岳は完璧です。 76 00:05:57,090 --> 00:06:01,094 最初に触れた時 最も心地いいと感じる温度で お出しするのです。 77 00:06:01,094 --> 00:06:04,097 そこまでの発想はなかった。 78 00:06:04,097 --> 00:06:06,099 悔しいなあ~。 79 00:06:06,099 --> 00:06:08,134 そ… そんな大層な…。 80 00:06:08,134 --> 00:06:11,104 みんな やってることなんじゃないかって? 81 00:06:11,104 --> 00:06:14,107 やらないよ 普通。 そ… そうなの? 82 00:06:15,108 --> 00:06:20,113 許されるなら ドアノブの温度まで管理したいくらいだった。 83 00:06:21,114 --> 00:06:25,118 次に このパスタは アルデンテではありませんでしたよね。 84 00:06:25,118 --> 00:06:28,121 そうなんだよ! 麺が非常にやわらかい! 85 00:06:28,121 --> 00:06:32,125 でも それがいい! シンプルなのに 全く飽きなかった。 86 00:06:32,125 --> 00:06:34,160 岳。 87 00:06:34,160 --> 00:06:38,131 カ… カリッと炒めたウィンナー ピーマン 歯応えは こっちで十分主役になる。 88 00:06:38,131 --> 00:06:42,135 このバランスだと パスタは必ずしも アルデンテである必要はない。 89 00:06:42,135 --> 00:06:46,139 パスタはアルデンテという 先入観に とらわれてはいけない。 90 00:06:46,139 --> 00:06:48,108 《おお~ 北田!》 91 00:06:48,108 --> 00:06:50,110 だから ゆでたパスタを冷水に浸して 締め→ 92 00:06:50,110 --> 00:06:54,114 ワインビネガーとマヨネーズでマリネして 冷蔵庫に入れて保存しました。 93 00:06:54,114 --> 00:06:58,118 れ… 冷蔵庫だって!? 炒める前のパスタを!? 94 00:06:58,118 --> 00:07:02,122 結果 アルデンテでは得られない やわらかく もっちりとした食感。 95 00:07:02,122 --> 00:07:06,126 さらに マリネで まろやかで爽やかな風味も手に入れられた。 96 00:07:06,126 --> 00:07:08,128 ちょ… ちょっと待ってください。 97 00:07:08,128 --> 00:07:12,132 これは 海さん あなたのナポリタンを食べたから…。 98 00:07:12,132 --> 00:07:16,136 (海の声)え~? 俺は せいぜい 少し伸びるまで待ってもらったくらいだけど。 99 00:07:16,136 --> 00:07:19,139 いえ あの味のおかげです。 100 00:07:19,139 --> 00:07:23,143 脳が沸き立つようなナポリタンだった。 ただのケチャップ炒めじゃない。 101 00:07:23,143 --> 00:07:28,114 シンプルが故の無限の組み合わせ… 驚きをもって気がつかせてくれた。 102 00:07:28,114 --> 00:07:31,151 官能的食感… まさに理想の答えと感じました。 103 00:07:31,151 --> 00:07:35,121 この解を知りたい。 答えとなる扉を開けたい。 104 00:07:35,121 --> 00:07:40,126 僕なりの式で どう たどり着くのか。 もっと美しい式 レシピはないのか。 105 00:07:40,126 --> 00:07:43,096 繋がれ 繋がれ… と。 106 00:07:44,130 --> 00:07:49,135 気づいたら ワインビネガーとマヨネーズで パスタをマリネしていた。 107 00:07:49,135 --> 00:07:53,106 夢中で ここが恐ろしい舞台であることも忘れていた。 108 00:07:53,106 --> 00:07:56,076 僕は 楽しかった…! 109 00:07:59,112 --> 00:08:04,117 綿密な計算と理論をもって 一品に向かう 数学と料理のマリアージュ。 110 00:08:04,117 --> 00:08:08,121 北田岳 彼はヴェルス学園の生徒です。 111 00:08:08,121 --> 00:08:12,092 一つの分野ではなく 多方面に勉学の才能を発揮させる。 112 00:08:12,092 --> 00:08:16,096 そんなヴェルス学園の教育の象徴 北田岳。 113 00:08:16,096 --> 00:08:21,101 そんな彼を ぜひ この場で皆様に紹介したいと理事長が! 114 00:08:22,135 --> 00:08:24,104 (武蔵)素晴らしい! 西門くん。 (西門)なっ…。 115 00:08:24,104 --> 00:08:29,109 ひと芝居打ったってわけだ! 素晴らしいわ ヴェルス学園は。 116 00:08:29,109 --> 00:08:32,112 学園への補助金増額を 検討させてもらおう。 117 00:08:32,112 --> 00:08:35,115 当銀行も融資を増額しますわ。 118 00:08:35,115 --> 00:08:37,083 いや そ… その…。 119 00:08:39,119 --> 00:08:44,090 どうぞ 西門理事長。 北田くんに 存分な賛辞を! 120 00:08:44,090 --> 00:08:46,092 なんなんだ 一体…。 121 00:08:46,092 --> 00:08:48,094 理事長→ 122 00:08:48,094 --> 00:08:53,099 これで彼らは 岳くんのいるヴェルス学園に 多大な支援をしてくれますねえ。 123 00:08:53,099 --> 00:08:58,104 なのに この状況で 本人をたたえられないのは どうですかねえ~? 124 00:08:59,105 --> 00:09:01,107 えっ…? 125 00:09:01,107 --> 00:09:03,109 (拍手) 126 00:09:03,109 --> 00:09:06,112 いい表情ですよ。 理事長~。 127 00:09:06,112 --> 00:09:12,085 そういう人間味あふれる表情こそが 創作の最大のヒントになるんですよ。 128 00:09:14,087 --> 00:09:18,124 よかったな 岳。 この状況で お前が退学になるわけない。 129 00:09:18,124 --> 00:09:20,126 さて デザートもあるので。 130 00:09:20,126 --> 00:09:22,095 海さん…。 131 00:09:23,129 --> 00:09:26,132 いつか 俺のところに来ないか? 岳。 132 00:09:26,132 --> 00:09:31,137 お前の数学的思考は 料理のためにある。 133 00:09:31,137 --> 00:09:35,108 お前となら 誰も到達しない料理の真理…。 134 00:09:35,108 --> 00:09:38,111 その扉を開けられるかもしれない。 135 00:09:40,146 --> 00:09:43,116 待っている。 (扉の閉まる音) 136 00:09:45,118 --> 00:09:47,120 料理の真理!? 137 00:09:47,120 --> 00:09:51,124 お前の数学的思考は 料理のためにある。 138 00:09:52,125 --> 00:09:56,129 (荒い息) 139 00:09:57,096 --> 00:10:00,100 (北田 勲)おお 岳! 早起きだなあ。 140 00:10:00,100 --> 00:10:02,101 せっかくの夏休みだ。 141 00:10:02,101 --> 00:10:04,104 寝だめしたほうがいいんじゃないか? 142 00:10:06,106 --> 00:10:08,208 東大受験 どうだ? 143 00:10:08,208 --> 00:10:11,144 大丈夫だよ 父さん。 模試の結果も良好なの知ってるでしょ。 144 00:10:11,144 --> 00:10:13,112 そうか! 145 00:10:13,112 --> 00:10:19,119 いやあ… 自分の子供が東大に行くなんてよ 夢みたいで。 146 00:10:19,119 --> 00:10:22,121 亡くなった母ちゃんにも 自慢してやれるぜ。 147 00:10:23,189 --> 00:10:25,191 📺(武蔵神楽)東大入試なんて簡単なんです。 148 00:10:25,191 --> 00:10:30,096 📺(神楽)数学は 基本原理を理解していれば 必ず満点を取れます。 149 00:10:30,096 --> 00:10:33,166 他の科目は 最低限 取ればいい。 150 00:10:33,166 --> 00:10:35,135 📺(神楽)私は そういう感じです。 151 00:10:35,135 --> 00:10:38,104 武蔵さん。 ん? 知ってるのか? 152 00:10:38,104 --> 00:10:40,106 数学オリンピックの常連さん。 153 00:10:40,106 --> 00:10:44,144 (勲)ほう~。 きれいな顔して すげえこと言ってんぞ。 154 00:10:44,144 --> 00:10:48,114 (神楽)問2 幾何の問題はどうでした? 北田くん。 155 00:10:48,114 --> 00:10:50,116 座標計算で導き出したよ。 156 00:10:50,116 --> 00:10:55,121 なぜ 座標計算で? えっ… 幾何は ずっと その解き方なんだ。 157 00:10:55,121 --> 00:10:58,124 (神楽)私は 不変量を見つけました。 えっ!? 158 00:10:58,124 --> 00:11:03,129 (神楽)ACとBDの交点を取れば 方べき定理から不変量を見つけられます。 159 00:11:03,129 --> 00:11:07,133 そして ブロカールの定理から xの軌道を決定すれば→ 160 00:11:07,133 --> 00:11:10,136 座標計算をせず証明ができます。 161 00:11:10,136 --> 00:11:13,139 あなた 自由な発想で面白い人だったのに→ 162 00:11:13,139 --> 00:11:17,143 今は 凝り固まった頭をしてらっしゃるんですね。 163 00:11:17,143 --> 00:11:19,145 (広瀬一太郎)武蔵さん 素晴らしいよ。 164 00:11:19,145 --> 00:11:22,115 でも 調和点列を使う手もある。 165 00:11:22,115 --> 00:11:25,118 ♬~ 166 00:11:25,118 --> 00:11:28,121 (岳の声)すごい子だったよ。 167 00:11:28,121 --> 00:11:30,189 代表で銀メダルまで取って。 168 00:11:30,189 --> 00:11:33,126 📺数学オリンピックに出られる方→ 169 00:11:33,126 --> 00:11:36,129 みんな 東大入試なんて 面白くもないレベル? 170 00:11:37,197 --> 00:11:40,199 📺(神楽)ただ解くだけじゃ意味がないんです。 171 00:11:40,199 --> 00:11:42,135 📺私は そこまでの→ 172 00:11:42,135 --> 00:11:46,139 過程が美しいか 命を削れるほど面白いかどうか。 173 00:11:48,141 --> 00:11:51,144 (沸騰する音) ん? うおっ! 174 00:11:51,144 --> 00:11:53,146 アチチチチ…! しまった。 175 00:11:53,146 --> 00:11:57,116 おう 岳! ついでに 朝食 食っとけ。 お前のも作ってるからよ。 176 00:11:59,152 --> 00:12:01,120 うまいか? 岳。 177 00:12:01,120 --> 00:12:03,122 うん。 178 00:12:04,157 --> 00:12:06,125 美味しい! 179 00:12:06,125 --> 00:12:08,127 フフッ…。 180 00:12:08,127 --> 00:12:11,130 父さん 僕 ちょっと 東京に行ってくる。 181 00:12:12,131 --> 00:12:15,134 心配しないで すぐ帰るから。 182 00:12:20,139 --> 00:12:22,108 お願いします。 183 00:12:24,143 --> 00:12:26,145 (勲)よし わかった! 184 00:12:26,145 --> 00:12:28,114 よくわかんねえが 行ってこい! 185 00:12:28,114 --> 00:12:41,127 ♬~ 186 00:12:41,127 --> 00:12:44,130 疲れたな… 多分 ここかなあ。 187 00:12:46,099 --> 00:12:48,201 すみませ~ん。 188 00:12:48,201 --> 00:12:50,136 あっ…。 189 00:12:50,136 --> 00:12:53,206 (福田寧々)ランチタイム 終了してまして~。 190 00:12:53,206 --> 00:12:57,110 ああ いや… 北田です。 連絡したんですけど…。 191 00:12:57,110 --> 00:12:59,112 へ~? 192 00:12:59,112 --> 00:13:01,114 予約客ではないんですが…。 193 00:13:01,114 --> 00:13:03,116 ほら ヴェルス学園の…。 194 00:13:03,116 --> 00:13:07,120 (寧々)え~ お客様なら 一度で顔を覚えられるんですが→ 195 00:13:07,120 --> 00:13:12,125 それ以外の人間の記憶をシャットアウトして 仕事こなしてるんですね。 196 00:13:12,125 --> 00:13:15,128 ああ~ 合理的ですね。 197 00:13:15,128 --> 00:13:17,096 (赤松蘭菜)寧々。 198 00:13:17,096 --> 00:13:21,100 電話取ったの 私だよ。 料理人の赤松蘭菜です。 199 00:13:21,100 --> 00:13:24,137 あっ どうも。 あの 朝倉海シェフは…。 200 00:13:24,137 --> 00:13:26,105 (蘭菜)あんたが 北田岳。 201 00:13:27,140 --> 00:13:29,108 ナポリタンの…。 202 00:13:32,111 --> 00:13:37,116 ♬~ 203 00:13:37,116 --> 00:13:40,119 えっ あ… ありがとうございます。 204 00:13:40,119 --> 00:13:44,123 (蘭菜)グラス どう? 完璧な 最適な冷たさでしょう? 205 00:13:44,123 --> 00:13:49,128 ドアノブも 海が業者に話をつけて ドアごと一新。 206 00:13:49,128 --> 00:13:52,098 温かい…。 (蘭菜)電気で温め 管理できる特注品。 207 00:13:52,098 --> 00:13:57,103 ドアのどこを触っても 心地いいと感じる温度に調整できる。 208 00:13:57,103 --> 00:14:03,109 お客様が店内で触れるもの全て 細かく温度調整できるようになったわ。 209 00:14:03,109 --> 00:14:07,113 海は あんたと出会ったこと 喜々として私に聞かせ→ 210 00:14:07,113 --> 00:14:10,116 その温度管理を徹底するようにしたのよ。 211 00:14:10,116 --> 00:14:13,119 お… おお~! それはいいですね。 212 00:14:13,119 --> 00:14:17,156 合理的だあ。 もっと早くすればよかったのに。 213 00:14:17,156 --> 00:14:22,128 でも お店の方に手間が増えたとしたら すみません 僕のせいで…。 214 00:14:22,128 --> 00:14:24,130 (蘭菜)そんなこと問題じゃないわ。 215 00:14:24,130 --> 00:14:28,134 私が… この赤松蘭菜が それを考えつかなかった。 216 00:14:28,134 --> 00:14:30,136 それが問題なんだ。 217 00:14:30,136 --> 00:14:33,139 そのあと あんたが作ったっていうナポリタン。 218 00:14:33,139 --> 00:14:37,110 あれほど海が人のことを褒めるのを 初めて見たわ。 219 00:14:38,144 --> 00:14:40,146 (寧々)あっ! 220 00:14:40,146 --> 00:14:45,151 ああ~ 思い出した! あの時 ナポリタン作った男の子! 221 00:14:45,151 --> 00:14:47,120 (蘭菜)じゃあ 座って。 222 00:14:48,121 --> 00:14:52,125 私が 一皿 作ってあげる。 北田岳くん。 223 00:14:52,125 --> 00:14:54,127 (おなかが鳴る音) 224 00:14:54,127 --> 00:14:57,130 おなかはすいてますが… このお店の平均予算は? 225 00:14:57,130 --> 00:15:00,133 昼は8000円ですかねえ。 226 00:15:00,133 --> 00:15:03,136 あっ おなかいっぱいになりました。 227 00:15:03,136 --> 00:15:08,141 なけなしのバイト代でギリギリなんです。 海さんに会って少し話 したら…。 228 00:15:08,141 --> 00:15:10,109 (蘭菜)あんた 海から聞いてないの? 229 00:15:12,145 --> 00:15:16,149 (蘭菜の声)あんたが来たら 一品作って差し上げろと。 230 00:15:16,149 --> 00:15:18,117 そして こう聞いてくれと。 231 00:15:18,117 --> 00:15:23,156 「この味が どういう理屈で作られているか わかるか?」。 232 00:15:23,156 --> 00:15:28,127 「その理屈が納得できるものなら 俺が帰るまで店で待ってもらえ」。 233 00:15:28,127 --> 00:15:33,132 「そうでなかったら 交通費を渡して すぐに帰らせろ」。 234 00:15:33,132 --> 00:15:36,135 海さん いつか来いと誘ったのは自分なのに…。 235 00:15:36,135 --> 00:15:38,104 (足音) 236 00:15:43,142 --> 00:15:47,146 (蘭菜)電話じゃ 私に 海に会って どうするか言わなかったけど→ 237 00:15:47,146 --> 00:15:50,149 料理人になりたいって来たんじゃないの? 238 00:15:50,149 --> 00:15:53,119 はっきり言うけど それは無理よ。 239 00:15:53,119 --> 00:15:56,122 料理の世界は厳しい。 240 00:15:56,122 --> 00:16:00,126 覇気のかけらもない あなたみたいな子 絶対に通用しない。 241 00:16:00,126 --> 00:16:03,129 うちの店なんて来たら 特に地獄だよ。 242 00:16:03,129 --> 00:16:06,132 それに あの海って男は…。 243 00:16:06,132 --> 00:16:09,202 あの… 食べていいですか? 244 00:16:09,202 --> 00:16:12,104 すごくきれいですね 見た目。 245 00:16:12,104 --> 00:16:15,141 (蘭菜)今日は 純粋に 味の感想だけ聞かせてちょうだい。 246 00:16:15,141 --> 00:16:18,110 この鮮やかなピンクのお肉は 豚肉ですよね? 247 00:16:19,145 --> 00:16:23,149 《すごくやわらかい! スッとナイフが沈む感じ》 248 00:16:23,149 --> 00:16:28,120 《このオレンジ色のソース せっかくだから たっぷり絡めてスプーンで食べよう》 249 00:16:28,120 --> 00:16:30,122 (においを嗅ぐ音) 《この香り…》 250 00:16:30,122 --> 00:16:32,091 《ひょっとして…》 251 00:16:38,097 --> 00:16:40,099 《きた… きた!》 252 00:16:40,099 --> 00:16:42,134 きた~! 253 00:16:42,134 --> 00:16:46,138 ソースは蟹だ! 濃厚な蟹の味と香り! 254 00:16:46,138 --> 00:16:49,141 すごい! 豚肉と蟹の組み合わせなんて! 255 00:16:49,141 --> 00:16:52,111 (蘭菜)そのくらい 食べたら誰でもわかるわ。 256 00:16:52,111 --> 00:16:54,113 肝心なのは そこから…。 257 00:16:54,113 --> 00:16:56,115 豚肉の食感…。 258 00:16:56,115 --> 00:16:58,117 《しっとりと やわらかい…》 259 00:16:58,117 --> 00:17:01,120 《肉汁が一滴も流出してないんじゃないか?》 260 00:17:01,120 --> 00:17:05,124 《歯を入れた瞬間に こんなにジューシーにあふれ出すなんて!》 261 00:17:05,124 --> 00:17:08,127 《くう~ 肉だけでも美味しい!》 262 00:17:08,127 --> 00:17:12,098 《でも 肝心なのは このソースだ。 蟹の風味が丸ごと溶け込んでる!》 263 00:17:12,098 --> 00:17:14,100 肉汁の詰まった豚肉を→ 264 00:17:14,100 --> 00:17:17,136 まろやかな蟹ソースが 見事に受け止めてます! 265 00:17:17,136 --> 00:17:23,109 美味しい! 肉と魚介の組み合わせなんて あっていいんだな~! 266 00:17:23,109 --> 00:17:27,146 邪道っぽいけど あえて そこに挑戦したんですね! 267 00:17:27,146 --> 00:17:32,151 (蘭菜)おっしゃるとおり 肉と魚介の組み合わせは難しいとされるわ。 268 00:17:32,151 --> 00:17:35,121 全く違う味わいを持つ豚と蟹。 269 00:17:35,121 --> 00:17:38,124 どうやって結びつけられたか わかるかしら? 270 00:17:38,124 --> 00:17:41,127 《ソースには 卵黄が入ってる》 271 00:17:41,127 --> 00:17:44,130 《でも これは 料理にコクを加えるためのものなんだろう》 272 00:17:44,130 --> 00:17:47,133 《これだけで 劇的に豚と蟹が結びつくわけがない》 273 00:17:47,133 --> 00:17:50,136 すみません 紙とペンを。 274 00:17:50,136 --> 00:17:52,138 はあ? 275 00:17:52,138 --> 00:17:54,140 うま~! 276 00:17:54,140 --> 00:17:59,145 豚肉 蟹… 食材のそれが集合… 数字だとする。 277 00:17:59,145 --> 00:18:03,115 これに 煮る 焼くとかの調理法が 多分 関数なんだ。 278 00:18:03,115 --> 00:18:05,151 できた! この料理の式です。 279 00:18:05,151 --> 00:18:07,119 ここから逆算します。 280 00:18:07,119 --> 00:18:10,122 豚肉は 低温で火入れしたんだと思います。 281 00:18:10,122 --> 00:18:14,126 ここまで肉汁が内包されている豚肉は 初めてです。 282 00:18:14,126 --> 00:18:18,130 低温で じっくり焼いたとしか考えられません。 283 00:18:18,130 --> 00:18:22,134 高温だと その瞬間 肉汁は流出するはずなので。 284 00:18:22,134 --> 00:18:24,170 ハハ… 何 こいつ。 285 00:18:24,170 --> 00:18:27,139 違ってるんですか? 合ってるよ! 286 00:18:27,139 --> 00:18:30,142 でも 食べる時の温度で わかりそうなものだわ。 287 00:18:30,142 --> 00:18:33,145 ソースは どうなの? 288 00:18:33,145 --> 00:18:36,115 蟹肉をすり潰して溶け込ませたソースでした。 289 00:18:36,115 --> 00:18:39,118 それとは別に プリンッとした粒状の食感もありました。 290 00:18:39,118 --> 00:18:43,122 あれ なんだったんだろう? 蟹の風味であふれてた。 291 00:18:43,122 --> 00:18:47,159 あの粒があるから 豚と蟹の風味が釣り合っていた。 292 00:18:47,159 --> 00:18:51,130 粒の正体は蟹肉じゃない… とすると…→ 293 00:18:51,130 --> 00:18:53,099 蟹の卵… とか? 294 00:18:55,134 --> 00:18:58,137 でも そんなの料理にありなのかな? 295 00:18:58,137 --> 00:19:01,140 (蘭菜)ありよ。 蟹の卵巣を入れたわ。 296 00:19:01,140 --> 00:19:05,111 わあっ 当たった! まさに 蟹丸ごとのソース! 297 00:19:05,111 --> 00:19:09,081 肉汁の詰まった 最高の豚肉を受け止めるには十分! 298 00:19:09,081 --> 00:19:13,119 蟹の卵は その風味を押し上げて 一皿の一体感を出す。 299 00:19:13,119 --> 00:19:18,124 最高の豚 最高の蟹 1+1が2になった瞬間です! 300 00:19:18,124 --> 00:19:21,093 これが この料理のアイデアの全て…。 301 00:19:22,128 --> 00:19:26,132 違う… 2じゃ 式が成立しない。 302 00:19:26,132 --> 00:19:28,100 足りない…。 303 00:19:28,100 --> 00:19:33,139 数字… いや 素材の特性に 何かがあると考えないと成立しない。 304 00:19:33,139 --> 00:19:35,107 豚肉と蟹… これ…。 305 00:19:36,142 --> 00:19:38,144 相乗効果じゃないですか。 306 00:19:38,144 --> 00:19:43,115 豚肉と蟹の組み合わせ自体で すでに 美味しさの数値が跳ね上がっていませんか? 307 00:19:45,117 --> 00:19:48,120 お見事。 海さん! 308 00:19:48,120 --> 00:19:52,124 「美味しい」 「うまい」 料理の世界には2つの褒め言葉がある。 309 00:19:52,124 --> 00:19:57,129 その2つを あえて区別するなら 「美味しい」は 感性の言葉だ。 310 00:19:57,129 --> 00:20:01,100 味だけでなく 雰囲気や料理への思い… 個人の主観に左右される。 311 00:20:02,134 --> 00:20:06,138 だが 「うまい」は うま味をもたらす化学物質が存在し→ 312 00:20:06,138 --> 00:20:10,142 数値として 客観的に実証されてるものだ。 313 00:20:10,142 --> 00:20:17,116 この うま味成分を高めることが 食べた人間を満足させる重要な役割を担う。 314 00:20:17,116 --> 00:20:19,118 今日の蘭菜の料理でいえば→ 315 00:20:19,118 --> 00:20:23,122 豚肉のイノシン酸 蟹のグルタミン酸。 316 00:20:23,122 --> 00:20:25,124 イノシン酸とグルタミン酸は→ 317 00:20:25,124 --> 00:20:29,128 料理して掛け合わせると その成分数値が跳ね上がるのよ。 318 00:20:29,128 --> 00:20:32,098 肉と魚介の組み合わせは食べ慣れない→ 319 00:20:32,098 --> 00:20:34,100 そんな事実さえ 飛び越えてくるほどにね。 320 00:20:34,100 --> 00:20:36,102 今日のソースのようにして→ 321 00:20:36,102 --> 00:20:38,104 両者のバランスを整えられるなら→ 322 00:20:38,104 --> 00:20:41,140 豚と蟹の組み合わせは 革命のうまさよ。 323 00:20:41,140 --> 00:20:43,142 さすがだよ 岳。 324 00:20:43,142 --> 00:20:48,147 お前の脳内では このうま味が 数値化でもされてたかのようだな。 325 00:20:48,147 --> 00:20:51,117 海さん お久しぶりです。 326 00:20:51,117 --> 00:20:54,120 おお~ よく来た よく来た! 327 00:20:54,120 --> 00:21:00,126 大したもんだ! 料理素人なのに 蘭菜の料理を丸裸にするなんてさ~! 328 00:21:00,126 --> 00:21:04,130 海さん 僕 あの日のことが頭から離れません。 329 00:21:04,130 --> 00:21:09,135 純粋に数学を楽しんでいた 子供の頃以来だった あの感覚は…。 330 00:21:09,135 --> 00:21:12,138 夢にまで見るんです 今でも。 331 00:21:12,138 --> 00:21:18,144 そして 今日 この女性の一品のおかげで 新たな素晴らしい感覚が生まれました。 332 00:21:18,144 --> 00:21:20,146 ありがとうございます。 333 00:21:20,146 --> 00:21:24,116 僕は料理人になりたいのか? それすらもわからない。 334 00:21:24,116 --> 00:21:28,220 ただ この衝動の正体を知りたいんです。 335 00:21:28,220 --> 00:21:32,191 でないと 僕は 日常に戻ることもできないんです。 336 00:21:33,159 --> 00:21:36,162 じゃあ 準備万端じゃないか。 337 00:21:36,162 --> 00:21:40,132 蘭菜 約束だ。 今日の副菜担当を代わってやってくれ。 338 00:21:40,132 --> 00:21:42,134 (蘭菜)はい。 339 00:21:42,134 --> 00:21:44,136 国会議員の武蔵魏一だ。 340 00:21:44,136 --> 00:21:47,139 理事長の別荘で ナポリタンをごちそうになった。 341 00:21:47,139 --> 00:21:51,143 あの日以来 君の大ファンになってしまったんだ! 342 00:21:51,143 --> 00:21:55,114 武蔵議員は この店の重要なパトロンになってくださった。 343 00:21:55,114 --> 00:21:58,150 そして 今日は ご家族の誕生日でね。 344 00:21:58,150 --> 00:22:04,123 お前を呼んで作らせると約束したんだ。 完璧な一品を作って満足させろ。 345 00:22:04,123 --> 00:22:08,127 でなければ 俺は重要な顧客を失うことになる。 346 00:22:08,127 --> 00:22:10,196 そんな人間には用はない。 347 00:22:10,196 --> 00:22:13,132 帰って 二度と この店に近寄るな。 348 00:22:13,132 --> 00:22:15,201 冗談でしょう? 349 00:22:15,201 --> 00:22:20,105 冗談だと思うか? 俺のやり方を知ってるだろ? 350 00:22:20,105 --> 00:22:23,108 入りなさい。 お前の誕生日に うまい料理を作って…。 351 00:22:23,108 --> 00:22:25,144 (神楽)はいはい。 352 00:22:25,144 --> 00:22:27,112 我が娘 神楽だ。 353 00:22:27,112 --> 00:22:29,114 あら…。 354 00:22:29,114 --> 00:22:35,087 ♬~