1 00:00:01,134 --> 00:00:03,103 (店員)お客様 大丈夫ですか? 2 00:00:03,103 --> 00:00:07,107 (北田 岳)ああっ! はい 大丈夫 なんでもないです! 3 00:00:07,107 --> 00:00:10,110 ホットティーのおかわりも 大丈夫ですので…。 4 00:00:11,144 --> 00:00:14,147 (店員)本日のケーキ いちごのショートケーキ・ルージュです。 5 00:00:14,147 --> 00:00:16,116 えっ? 6 00:00:16,116 --> 00:00:18,118 えっ 頼んでないですけど…。 7 00:00:18,118 --> 00:00:21,121 注文の際に確認しましたよ。 8 00:00:21,121 --> 00:00:26,126 ホットティーをご注文のお客様には 本日のケーキがセットで付くんです。 9 00:00:26,126 --> 00:00:28,095 ごゆっくり。 10 00:00:35,135 --> 00:00:37,204 ハッ…! 11 00:00:37,204 --> 00:00:43,143 ♬~ 12 00:00:43,143 --> 00:00:47,147 なんで… カフェに入ってるんだ? 13 00:00:47,147 --> 00:00:50,117 時間 潰すとこなんて 他にもあるじゃないか…。 14 00:00:50,117 --> 00:00:52,119 カフェなんて 普通行かない…。 15 00:00:52,119 --> 00:00:56,123 お金もないし ここに あえて入る理由なんて…。 16 00:00:56,123 --> 00:01:00,093 しかも 今一番見たくないものに あふれたお店に 無意識に…。 17 00:01:05,165 --> 00:01:08,135 《この期に及んでも僕は…》 18 00:01:08,135 --> 00:01:11,138 《踏みとどまろうと…》 19 00:01:11,138 --> 00:01:13,140 《探ろうと…》 20 00:01:13,140 --> 00:01:15,142 挑もうと…! 21 00:01:19,146 --> 00:01:22,149 《襟首に一本 かかる指くらいに…→ 22 00:01:22,149 --> 00:01:24,151 わずかでも…》 23 00:01:26,153 --> 00:01:29,122 《挑みたい自分が ここにいる!》 24 00:01:35,128 --> 00:01:39,132 (すすり泣き) 25 00:01:39,132 --> 00:01:49,109 ♬~ 26 00:01:50,143 --> 00:01:54,114 (広瀬一太郎の声) 岳 会う前に見てもらいたいものが…。 27 00:01:58,118 --> 00:02:02,122 (広瀬の声)「岳のお父さん。 ここから僕の文章を岳に転送してください」 28 00:02:05,125 --> 00:02:07,160 (広瀬の声)「岳ひさしぶりだね」 29 00:02:07,160 --> 00:02:10,130 「12月の授賞式で会うの楽しみにしている」 30 00:02:10,130 --> 00:02:14,134 「授賞式なんかより 君に会うことだけが楽しみだ」 31 00:02:14,134 --> 00:02:18,138 「会う前にどうしても 君に読んでもらいたいものがある」 32 00:02:18,138 --> 00:02:20,140 「僕が数学賞を受賞した論文なんだ」 33 00:02:20,140 --> 00:02:23,110 「岳ならきっと喜んでくれると思う」 34 00:02:31,151 --> 00:02:41,128 ♬~ 35 00:04:08,115 --> 00:04:11,118 (配達人)頼まれていた特選フルーツ お届けしました。 36 00:04:11,118 --> 00:04:13,120 (布袋勝也)おおっ! ありがとう。 37 00:04:13,120 --> 00:04:17,157 お宅の用意するフルーツは いつも本当に みずみずしいからな。 38 00:04:17,157 --> 00:04:19,126 新作のデザートに使わせてもらうよ! 39 00:04:21,128 --> 00:04:23,130 おっ! 40 00:04:25,132 --> 00:04:27,134 (布袋)今日 定休日だろ。 41 00:04:27,134 --> 00:04:29,136 どうした? 海。 一人か? 42 00:04:31,138 --> 00:04:33,140 (ため息) 43 00:04:33,140 --> 00:04:37,110 北田か…。 今回ばかりは待っていても仕方ないぜ。 44 00:04:37,110 --> 00:04:42,115 理由も説明せず いきなり パティシエとして現場に立てなんてな。 45 00:04:42,115 --> 00:04:45,118 逃げられて当たり前。 ひどいのは お前だよ。 46 00:04:45,118 --> 00:04:50,123 (朝倉 海)ひどくないさ。 誰にも平等に こうやってきたんだ。 47 00:04:50,123 --> 00:04:52,125 そう… 平等に。 48 00:04:52,125 --> 00:04:57,130 前から ずっと思ってたんだが 海 お前→ 49 00:04:57,130 --> 00:04:59,099 わざと孤独になろうとしてないか? 50 00:05:03,170 --> 00:05:09,142 (布袋)あの日 七瀬蒼司に勝ったことで 海 お前は止まれなくなった。 51 00:05:11,111 --> 00:05:15,115 あれから お前は 料理の世界で勝てば勝つほど 孤独へと…。 52 00:05:15,115 --> 00:05:17,083 やめろ。 53 00:05:18,118 --> 00:05:20,120 やめろ。 54 00:05:20,120 --> 00:05:24,124 なんにせよ… これで北田も お前から離れた。 55 00:05:24,124 --> 00:05:28,128 今日 お前らのアパートの掃除に入った 寧々に聞いたが→ 56 00:05:28,128 --> 00:05:32,132 戻った形跡もない! もう 今頃は地元さ。 57 00:05:32,132 --> 00:05:37,137 孤独に拍車をかけて これで お前は また一人の道を突き進むんだろうなあ! 58 00:05:37,137 --> 00:05:39,139 (ドアの開く音) 59 00:05:39,139 --> 00:05:43,109 (荒い息) 60 00:05:44,110 --> 00:05:46,079 あっ…。 61 00:05:50,116 --> 00:05:53,186 (赤松蘭菜)Kに 何かご用ですか? 62 00:05:53,186 --> 00:05:55,121 (魚見亜由)えっ? あっ… ああ…。 63 00:05:55,121 --> 00:05:57,123 (蘭菜)本日は休業日です。 64 00:05:57,123 --> 00:06:00,126 そうでなくても 露骨に お店をのぞかれるのは…。 65 00:06:00,126 --> 00:06:02,128 Kの従業員の方!? 66 00:06:02,128 --> 00:06:05,131 い… いや ごめんなさい! 知り合いが ここで働いてて…。 67 00:06:05,131 --> 00:06:08,201 急に連絡取れなくなったので 様子見に…。 68 00:06:08,201 --> 00:06:10,136 知り合い? 69 00:06:10,136 --> 00:06:13,106 フフッ… あっ! 70 00:06:17,210 --> 00:06:19,179 ⚞が… 岳!? 71 00:06:23,149 --> 00:06:27,153 な… なんだよ 岳!? そんな真剣な顔でアイスに向き合って…。 72 00:06:27,153 --> 00:06:31,124 次は お菓子の修業やるってことなのか? (蘭菜)えっ!? 73 00:06:31,124 --> 00:06:39,132 ♬~ 74 00:06:39,132 --> 00:06:44,137 素朴な疑問だが なぜ 見習い用の白いコック服を着るんだ? 75 00:06:44,137 --> 00:06:47,107 今は もう 見習いじゃないだろ? 76 00:06:47,107 --> 00:06:51,111 デザートに関しては見習いです。 完全に 一からですから。 77 00:06:51,111 --> 00:06:53,146 どうですか? 78 00:06:53,146 --> 00:06:56,116 フッ… 等分割は得意分野だったな。 79 00:06:56,116 --> 00:07:00,153 癖というべき こだわりを感じさせる 美しい造形だ。 80 00:07:00,153 --> 00:07:02,122 まあ 癖もあるだろうが→ 81 00:07:02,122 --> 00:07:05,125 すねてる時も 部屋で だいぶ練習したんだろ? 82 00:07:05,125 --> 00:07:09,129 フッ… 負けず嫌いな奴。 83 00:07:09,129 --> 00:07:13,133 いいよ。 ペーニャや孫六がやるより だいぶきれいだ。 84 00:07:13,133 --> 00:07:17,137 そのスプーンの繊細な使い方を忘れるな。 85 00:07:17,137 --> 00:07:19,139 次を! 86 00:07:20,140 --> 00:07:25,111 信じ… られない。 パティシエ… やる気になってる。 87 00:07:25,111 --> 00:07:29,149 絶対に無理だと思ってた。 料理人を辞めてしまうかと…。 88 00:07:29,149 --> 00:07:32,118 りょ… 料理人を辞めるって なんだよ!? 89 00:07:32,118 --> 00:07:37,123 なんで 岳 お菓子作りしてるんだ? すご~く大事な本番が控えてるって聞いたぜ。 90 00:07:37,123 --> 00:07:41,094 ん? ちょ… ちょっと! なんで入ってきてるの!? あなた。 91 00:07:41,094 --> 00:07:44,097 出てって! ここは 星も獲得してる店なのよ! 92 00:07:44,097 --> 00:07:48,101 部外者なのに…。 シー シー! 声が聞こえる! 93 00:07:49,135 --> 00:07:51,137 (亜由)えっ や… やばい! こっち来る! 94 00:07:51,137 --> 00:07:53,106 えっ!? ちょ… ちょっと あなた! 95 00:07:56,109 --> 00:07:59,112 アイスクリーム作りだ。 96 00:07:59,112 --> 00:08:02,115 普通のレストランじゃ こんなスピードで教えていかないが→ 97 00:08:02,115 --> 00:08:05,118 まあ 今回は特別だよな。 98 00:08:06,119 --> 00:08:10,123 卵黄を溶きほぐして グラニュー糖を加え 混ぜる。 99 00:08:10,123 --> 00:08:13,126 沸騰直前まで温めた牛乳を→ 100 00:08:13,126 --> 00:08:17,130 3回に分けて 卵液に加えながら 泡立て器で混ぜる。 101 00:08:17,130 --> 00:08:21,101 熱が一気に入ると卵黄が固まるからな。 少しずつだ。 102 00:08:21,101 --> 00:08:25,105 そのあと かき混ぜながら 弱火で10分ほど温める。 103 00:08:25,105 --> 00:08:30,110 温度が82度に達すると とろみがつくから そこで火から下ろす。 104 00:08:30,110 --> 00:08:34,114 このアングレーズソースをこし 氷に当てて 粗熱を取ったら→ 105 00:08:34,114 --> 00:08:38,118 生クリームを加え 均一になるまで混ぜる。 106 00:08:38,118 --> 00:08:41,121 細かい数字は このノートに書いてるから 見な。 107 00:08:43,123 --> 00:08:47,127 普通の料理より 数字の指定がビッシリ…。 108 00:08:48,128 --> 00:08:50,096 《細かい…》 109 00:08:50,096 --> 00:08:53,133 《工程に… 自由がない》 110 00:08:53,133 --> 00:08:55,135 まあ 最初だからな。 111 00:08:55,135 --> 00:08:58,104 そのノートで数字を確認しながら…。 112 00:09:02,108 --> 00:09:04,077 (ため息) 113 00:09:05,111 --> 00:09:08,114 《そう… 数字だろうな》 114 00:09:08,114 --> 00:09:13,153 《北田をパティシエに… 一番の理由は それとしか考えられない》 115 00:09:13,153 --> 00:09:17,157 《細やかな温度の計算 管理 時間の配分》 116 00:09:17,157 --> 00:09:20,126 《パティシエの世界は 数字に支配されてると言っていい》 117 00:09:20,126 --> 00:09:25,131 《数学の道を歩んできた北田に 適性があると判断した》 118 00:09:25,131 --> 00:09:27,133 《海の狙いは 間違いなく そこ》 119 00:09:27,133 --> 00:09:33,139 《だが 表面的な数字の計算だけじゃないんだ。 パティシエは…》 120 00:09:33,139 --> 00:09:41,114 ♬~ 121 00:09:41,114 --> 00:09:46,152 《この余裕がない状況でパティシエ… 北田を追い詰めるだけだ》 122 00:09:46,152 --> 00:09:49,155 《それがわからない 海… お前じゃあるまい!》 123 00:09:49,155 --> 00:09:51,124 《なぜ 今 パティシエなんだ!?》 124 00:09:54,127 --> 00:09:59,132 大丈夫です! 与えられた数字とレシピは 全て頭に入れました。 125 00:09:59,132 --> 00:10:01,101 ハハッ…! 126 00:10:04,104 --> 00:10:08,107 あっ!? ダマができてる! えっ なんで!? 127 00:10:08,107 --> 00:10:12,078 《ちゃんと計算して 時間も正確だったのに… そんな!?》 128 00:10:13,112 --> 00:10:15,081 アイスクリーム作りにおいて→ 129 00:10:15,081 --> 00:10:18,084 ふとした拍子に 卵黄が固まりすぎてしまうミスは→ 130 00:10:18,084 --> 00:10:20,086 プロにも非常に多い。 131 00:10:20,086 --> 00:10:23,089 火の扱いが とにかく繊細で難しい。 132 00:10:23,089 --> 00:10:27,093 82度を正確にキープできたか? し… しました! 133 00:10:27,093 --> 00:10:31,097 そういうのは気になるほうなので… ちゃんとできたと思います! 134 00:10:31,097 --> 00:10:33,099 あっ…。 135 00:10:33,099 --> 00:10:35,101 お前 手 震えてるな。 136 00:10:35,101 --> 00:10:41,074 疲れてるのか 精神的なものなのか知らんが 集中を欠いている。 137 00:10:41,074 --> 00:10:44,077 鍋の中の余熱が わずかの間に入ったんだよ。 138 00:10:44,077 --> 00:10:46,079 えっ… えっ!? 139 00:10:46,079 --> 00:10:49,115 たった1度。 パティシエの世界は それでアウトだ。 140 00:10:49,115 --> 00:10:51,084 やり直せ。 141 00:10:51,084 --> 00:10:55,088 卵黄のにおいが立ってる! 火が入りすぎだ! 142 00:10:55,088 --> 00:10:57,090 真ん中だけ かき混ぜるな。 143 00:10:57,090 --> 00:11:01,094 鍋のフチも合わせて 均等に熱を入れるんだ。 やり直せ! 144 00:11:01,094 --> 00:11:04,097 クリームにかける衝撃を計算できてない。 145 00:11:04,097 --> 00:11:06,099 何度も触りすぎだ。 それもダメだ! 146 00:11:06,099 --> 00:11:09,068 (荒い息) 147 00:11:09,068 --> 00:11:11,070 これもダメだ。 148 00:11:11,070 --> 00:11:14,107 今度は 固まるのを恐れて 火入れが弱くなってる。 149 00:11:14,107 --> 00:11:18,077 このとろみじゃ軽すぎる。 やり直せ。 150 00:11:18,077 --> 00:11:23,116 (荒い息) 151 00:11:23,116 --> 00:11:25,084 …というように→ 152 00:11:25,084 --> 00:11:30,089 パティシエの世界は 綿密な設計と 厳格なルールに支配されている。 153 00:11:30,089 --> 00:11:32,091 うっ…。 154 00:11:32,091 --> 00:11:35,161 一切の逸脱が許されない。 155 00:11:35,161 --> 00:11:42,101 1ミリグラムの計算違い 10秒の超過。 それだけで失敗する。 156 00:11:42,101 --> 00:11:48,107 精密機械のように完璧な計算で 無駄な手数を入れず アドリブもできない。 157 00:11:48,107 --> 00:11:50,109 それが パティシエだ。 158 00:11:50,109 --> 00:11:54,080 パティシエとは 自由を捨てることなんだ。 159 00:11:57,116 --> 00:12:00,086 確かに 不自由な世界ですね。 160 00:12:00,086 --> 00:12:03,089 パティシエの世界に比べたら→ 161 00:12:03,089 --> 00:12:08,127 僕は 今まで すごく… アバウトに 自由に料理を作ってこれたんだと→ 162 00:12:08,127 --> 00:12:11,097 実感しています。 163 00:12:11,097 --> 00:12:16,102 でも それじゃダメってことなんですよ… ね? 164 00:12:16,102 --> 00:12:20,106 僕が自由に… その場の発想で作るっていうのが→ 165 00:12:20,106 --> 00:12:23,109 かせになってるってことですよね? 166 00:12:23,109 --> 00:12:27,113 このパティシエ転向のメッセージは… そういうことですよね? 167 00:12:27,113 --> 00:12:29,115 《違う… 違うわ!》 168 00:12:29,115 --> 00:12:32,118 《即興で瞬発的に作られる綿密なレシピ→ 169 00:12:32,118 --> 00:12:35,121 それができるのが北田岳 あなたの才能!》 170 00:12:35,121 --> 00:12:40,093 《自由な計算を楽しみながら… それが 北田岳という料理人の強さなのよ》 171 00:12:40,093 --> 00:12:43,129 《それがダメなんて あり得ないわ!》 172 00:12:43,129 --> 00:12:46,132 《海… パティシエを課した あなたの意図はわからないけれど→ 173 00:12:46,132 --> 00:12:48,101 それだけは違うと言って…》 174 00:12:48,101 --> 00:12:51,104 自由を捨てたほうがいいと…? 175 00:12:51,104 --> 00:12:54,107 さ~て どうでしょう? 176 00:12:55,108 --> 00:12:58,111 理由は言ってくれないか…。 177 00:12:58,111 --> 00:13:02,115 じゃあ わかるまで やるしかないですね。 178 00:13:03,116 --> 00:13:06,119 僕には時間が ないですから…。 179 00:13:09,088 --> 00:13:11,090 (蘭菜)《もう限界!》 180 00:13:11,090 --> 00:13:15,094 《疲労で手が震える上に 精神的にも相当 追い詰められてる》 181 00:13:15,094 --> 00:13:17,063 《さすがに 今日は休ませ…》 182 00:13:20,099 --> 00:13:23,102 な… 何? 183 00:13:23,102 --> 00:13:25,071 邪魔しないで… ください。 184 00:13:25,071 --> 00:13:27,073 は… はあ? 185 00:13:27,073 --> 00:13:31,077 岳 あいつ… 今 すごく逃げ場がない。 186 00:13:31,077 --> 00:13:35,081 今までも そうだった。 たくさんの不自由を与えられて→ 187 00:13:35,081 --> 00:13:37,083 一人 追い詰められて…。 188 00:13:37,083 --> 00:13:42,088 でも 次の瞬間に頭の中で繋がる。 189 00:13:42,088 --> 00:13:46,092 あいつ 今 そのギリギリのところにいる。 190 00:13:46,092 --> 00:13:49,095 同じ目をしている! 191 00:13:49,095 --> 00:13:51,097 岳は 必ずやる! 192 00:13:51,097 --> 00:13:54,067 お願い 助け船はいらない。 193 00:14:04,110 --> 00:14:06,079 ハハハハ…。 194 00:14:10,116 --> 00:14:15,088 俺のほうも聞かせてくれ。 なんで 戻ってきた? 195 00:14:15,088 --> 00:14:21,060 昨日 お前が飛び出して行った時 あの具合だ。 もう戻らないと思った。 196 00:14:24,097 --> 00:14:28,067 あの状態から なぜ いきなり 今 向き合えてる? 197 00:14:28,067 --> 00:14:30,069 一日で何があった? 198 00:14:31,070 --> 00:14:34,073 広瀬くんの論文を読みました。 199 00:14:34,073 --> 00:14:36,075 論文? 200 00:14:36,075 --> 00:14:40,079 今回の数学賞を取った 数学の論文です。 201 00:14:41,080 --> 00:14:44,117 (岳の声)整数論でした。 202 00:14:44,117 --> 00:14:47,086 久しぶりに数学に触れ 夜通し読みました。 203 00:14:47,086 --> 00:14:50,089 わざわざ日本語に訳してもらったので。 204 00:14:53,126 --> 00:14:55,128 へえ~ ブランクを感じさせない→ 205 00:14:55,128 --> 00:15:00,133 天才数学少年 北田岳ならではの エピソードだな。 206 00:15:00,133 --> 00:15:03,102 全く意味がわかりませんでした。 はあ? 207 00:15:03,102 --> 00:15:06,105 元々 数学の論文って→ 208 00:15:06,105 --> 00:15:10,109 現役の数学者でも 読めないものは読めないんです。 209 00:15:10,109 --> 00:15:13,112 学会でも 受理されるのに 5年かかるようなもの。 210 00:15:13,112 --> 00:15:18,117 専門外の論文だと 読むための大前提の勉強を2~3年やって→ 211 00:15:18,117 --> 00:15:23,122 それも 寝食忘れて 机に向き合って ようやく ちょっと読めるかな…。 212 00:15:23,122 --> 00:15:25,124 そんな世界です。 213 00:15:25,124 --> 00:15:27,093 はっ? えっ? 214 00:15:27,093 --> 00:15:30,096 読めませんでした。 なんの話だよ。 215 00:15:30,096 --> 00:15:35,101 以前の僕なら それで また 絶望したと思います。 216 00:15:35,101 --> 00:15:38,070 一度も敵わなかった。 217 00:15:38,070 --> 00:15:44,110 できることなら会いたくなかった彼の論文は 読解不能… つらすぎるでしょう。 218 00:15:44,110 --> 00:15:48,080 でもね なぜか…→ 219 00:15:48,080 --> 00:15:52,084 あの論文が正しいということだけは わかったんです。 220 00:15:52,084 --> 00:15:54,086 (広瀬)ん…? 221 00:15:54,086 --> 00:15:58,090 感覚的なものです。 論文の精査なんてできない。 222 00:15:58,090 --> 00:16:03,095 けれど 肌で この論文は正しいことを書いてると思った。 223 00:16:04,096 --> 00:16:06,098 〈数学の世界に→ 224 00:16:06,098 --> 00:16:08,100 有名な 「ポアンカレ予想」 なるものがある〉 225 00:16:08,100 --> 00:16:10,069 〈ミレニアム懸賞問題の 一つとして→ 226 00:16:10,069 --> 00:16:12,071 解けた人間に 1億円与えるという→ 227 00:16:12,071 --> 00:16:14,073 超難問ではあるが→ 228 00:16:14,073 --> 00:16:17,076 全く専門外でも 「証明はできないが→ 229 00:16:17,076 --> 00:16:19,111 ポアンカレ予想は 感覚的に当たってる」→ 230 00:16:19,111 --> 00:16:22,114 と感じる数学者は 多かったそうだ〉 231 00:16:22,114 --> 00:16:24,083 〈数学者としては 矛盾しているが→ 232 00:16:24,083 --> 00:16:26,085 「言語化できないが 肌で感じる」→ 233 00:16:26,085 --> 00:16:28,087 という感覚は→ 234 00:16:28,087 --> 00:16:31,090 数学の世界でも 大いにあり得るのだ〉 235 00:16:32,091 --> 00:16:37,063 同時に あれを書いた人間の 内面にまで触れた気がした。 236 00:16:39,098 --> 00:16:44,070 (岳の声)その心情とは 圧倒的な孤独。 237 00:16:44,070 --> 00:16:48,107 あの精査し尽くされたであろう 美しい定義文…。 238 00:16:48,107 --> 00:16:51,110 美しくあればあるほど→ 239 00:16:51,110 --> 00:16:56,082 その文に行き着くまで 誰も助けてくれなかったと感じる。 240 00:16:56,082 --> 00:17:03,089 挑むのは自分しかいないという… 孤独。 241 00:17:03,089 --> 00:17:05,057 孤独…。 242 00:17:06,092 --> 00:17:10,096 数学とは孤独。 それがすごく残った。 243 00:17:12,098 --> 00:17:16,068 えらくスピリチュアルなことを言うなあ。 ガラにもない。 244 00:17:16,068 --> 00:17:18,070 料理人も同じでしょ? 245 00:17:20,106 --> 00:17:23,075 広瀬くんと海さんは似ています。 246 00:17:23,075 --> 00:17:29,081 周りがうらやむような成功を収めているのに ちっとも幸せそうじゃない。 247 00:17:29,081 --> 00:17:34,086 止まらずに その分野の闇に ずんずんと足を踏み入れていく。 248 00:17:34,086 --> 00:17:37,089 周囲の人間の思惑なんて見向きもしない。 249 00:17:38,090 --> 00:17:44,096 料理人も孤独であればあるほど 美味しいものを作る。 そう思った。 250 00:17:44,096 --> 00:17:48,100 僕 今 相当 追い詰められてます。 死にそうですよ。 251 00:17:48,100 --> 00:17:52,104 でも この絶望的な孤独が→ 252 00:17:52,104 --> 00:17:57,109 広瀬くんと海さん 僕が憧れたあなたたちと 同じ道を歩めるというのなら…! 253 00:17:57,109 --> 00:18:01,113 この先の景色を見てみたいと思った! 254 00:18:01,113 --> 00:18:05,084 その先が たとえ 敗北や破滅しか待っていないとしても…! 255 00:18:06,085 --> 00:18:08,120 あっ… ああっ…。 256 00:18:08,120 --> 00:18:18,130 ♬~ 257 00:18:18,130 --> 00:18:20,132 蘭菜。 ハッ…! 258 00:18:20,132 --> 00:18:23,102 そこに 布袋が入荷してきた フルーツの盛り合わせがある。 259 00:18:23,102 --> 00:18:25,104 持ってきてくれ。 260 00:18:25,104 --> 00:18:27,106 えっ!? …はい! 261 00:18:30,076 --> 00:18:32,111 (亜由)大丈夫か? 262 00:18:32,111 --> 00:18:35,114 ええ… ちょっと めまいがしただけで。 263 00:18:35,114 --> 00:18:37,116 亜由さん なんで ここに…? 264 00:18:37,116 --> 00:18:40,086 そんなこと 今 どうだっていいだろ! ちょっと 休め…。 265 00:18:40,086 --> 00:18:42,088 (足音) 266 00:18:45,091 --> 00:18:48,094 苺のタルトだ。 食べろよ。 267 00:18:50,096 --> 00:18:53,099 作れというばかりじゃな…。 268 00:18:53,099 --> 00:18:57,103 店では 布袋に任せてたから 久しぶりのデザート作りだった。 269 00:18:57,103 --> 00:19:01,073 ハハ… 海さんのデザート 貴重かも。 270 00:19:01,073 --> 00:19:03,075 通常 苺のタルトというと→ 271 00:19:03,075 --> 00:19:08,114 広いタルト生地の上に 苺やクリームがのっているものが一般的だ。 272 00:19:08,114 --> 00:19:12,084 だが それだと食べるまでに タルト生地が 苺やクリームの水分で→ 273 00:19:12,084 --> 00:19:15,087 どうしても ふやけた食感になるだろう? 274 00:19:15,087 --> 00:19:17,089 それも 一つの味わいとしてはいいが→ 275 00:19:17,089 --> 00:19:21,093 今回は タルト本来のサクサク感を 引き出した一品だ。 276 00:19:21,093 --> 00:19:24,130 タルトを砕いて 最後にまぶすことで→ 277 00:19:24,130 --> 00:19:29,101 苺 クリーム タルト 全ての素材が 最高の状態で合わさるのさ。 278 00:19:30,102 --> 00:19:33,072 あんた 一体 何がしたいんだよ? 279 00:19:33,072 --> 00:19:35,074 岳は 信用して慕ってるけど→ 280 00:19:35,074 --> 00:19:40,079 伝え聞くだけじゃ… あんた 得体知れなくて気味悪いんだよ! 281 00:19:41,113 --> 00:19:46,085 岳を連れて 一体 どこに向かおうとしてるのか わからない…。 282 00:19:48,087 --> 00:19:52,091 (亜由)あんたみたいなのに付き合おうとすると 周りが疲弊していくんだ。 283 00:19:52,091 --> 00:19:55,094 岳だって きっと もたなくなる…。 284 00:19:55,094 --> 00:19:58,097 人に美味しさという幸せを与える仕事なのに→ 285 00:19:58,097 --> 00:20:01,100 慕ってついてくる周りの人は 幸せにしてやれない! 286 00:20:01,100 --> 00:20:03,102 間違ってるよ! 287 00:20:03,102 --> 00:20:05,071 誰だ? お前。 288 00:20:07,073 --> 00:20:09,075 (スプーンが落ちる音) 289 00:20:10,076 --> 00:20:12,078 あっ…。 290 00:20:16,082 --> 00:20:20,086 《工程に自由がない。 パティシエとは自由を捨てること》 291 00:20:20,086 --> 00:20:22,054 ハッ…! 292 00:20:23,089 --> 00:20:26,092 《数学者 料理人は同じ》 293 00:20:26,092 --> 00:20:28,094 《孤独…》 294 00:20:28,094 --> 00:20:31,097 《孤独》 295 00:20:31,097 --> 00:20:34,100 《なぜ 今 パティシエだったのか…》 296 00:20:36,102 --> 00:20:40,072 《僕である必要性 僕にしか作れない…》 297 00:20:41,073 --> 00:20:43,075 おい! 繋がったのか!? 298 00:20:43,075 --> 00:20:45,111 繋がってない…。 299 00:20:45,111 --> 00:20:48,080 《パティシエ… 僕にしか作れない… 不自由…》 300 00:20:48,080 --> 00:20:51,083 でも 繋がりそう…。 301 00:20:51,083 --> 00:20:53,085 北田くん! 岳! 302 00:20:53,085 --> 00:20:55,087 見ろよ なあ! 303 00:20:55,087 --> 00:20:58,090 何が 今 こいつに作用したのかなんて→ 304 00:20:58,090 --> 00:21:01,093 俺にも あんたにも まるで理解できないだろう? 305 00:21:01,093 --> 00:21:03,095 くっ…! 306 00:21:03,095 --> 00:21:08,100 お嬢さんが 岳を案ずる気持ちも 俺が 岳を追い詰めることも→ 307 00:21:08,100 --> 00:21:13,105 結局 岳… こいつには 何も及ぼさないかもしれないんだよ。 308 00:21:13,105 --> 00:21:17,109 常人を超えた世界の住人 数学という世界の住人→ 309 00:21:17,109 --> 00:21:20,112 北田岳という男…! 310 00:21:20,112 --> 00:21:23,115 俺が見たかったものは これだ! 311 00:21:23,115 --> 00:21:25,084 いけるか!? 岳! 312 00:21:27,086 --> 00:21:29,121 《僕にしか作れないもの…》 313 00:21:29,121 --> 00:21:45,104 ♬~ 314 00:21:45,104 --> 00:22:01,086 ♬~ 315 00:22:01,086 --> 00:22:04,089 よし! みんな いくよ! 316 00:22:04,089 --> 00:22:06,091 北田くん! 317 00:22:06,091 --> 00:22:14,066 ♬~ 318 00:22:15,100 --> 00:22:23,075 ♬~