1 00:01:43,230 --> 00:01:45,940 昔むかし あるところに→ 2 00:01:45,940 --> 00:01:49,330 仲のいい夫婦が おりました。 3 00:01:49,330 --> 00:01:53,240 2人の間には 子供が いませんでした。 4 00:01:53,240 --> 00:01:55,940 近くの神社に通っては→ 5 00:01:55,940 --> 00:01:59,310 「神様 どうか 子供を授けてください。 6 00:01:59,310 --> 00:02:02,580 どんなに小さな子供でも かまいません。 7 00:02:02,580 --> 00:02:06,260 どうか どうか」と 一心に拝み続けた。 8 00:02:06,260 --> 00:02:08,270 その思いが通じたのか→ 9 00:02:08,270 --> 00:02:14,270 十月目には 元気な男の子の産声が 響き渡った。 10 00:02:14,270 --> 00:02:16,270 ところが 驚いたことに→ 11 00:02:16,270 --> 00:02:20,330 男の子は 本当に 指先ほどの大きさしか なかった。 12 00:02:20,330 --> 00:02:22,950 おっとうは 「な~に 小さく産んで→ 13 00:02:22,950 --> 00:02:28,740 大きく育てれば いいんじゃ」と おっかあを なぐさめた。 14 00:02:28,740 --> 00:02:33,760 夫婦は 男の子を 一寸法師と名付け かわいがった。 15 00:02:33,760 --> 00:02:39,100 だが 一寸法師の体は 一向に大きくならなかった。 16 00:02:39,100 --> 00:02:42,270 一寸法師は なんとか 親孝行をしようと→ 17 00:02:42,270 --> 00:02:44,270 手助けをしたが→ 18 00:02:44,270 --> 00:02:46,220 指先ほどの身の丈では→ 19 00:02:46,220 --> 00:02:48,940 なかなか うまくいかなかった。 20 00:02:48,940 --> 00:02:53,900 ある日 一寸法師は思い立った。 21 00:02:53,900 --> 00:02:55,930 《一寸法師:おら 強い侍になって→ 22 00:02:55,930 --> 00:02:58,270 おっとうと おっかあに 恩返しする!》 23 00:02:58,270 --> 00:03:00,970 剣の代わりに 縫い針を 1本もらって→ 24 00:03:00,970 --> 00:03:02,970 武芸に励んだ。 25 00:03:05,870 --> 00:03:09,950 一寸法師は カエルやトカゲやダンゴ虫を相手に→ 26 00:03:09,950 --> 00:03:12,780 みるみる 上達していった。 27 00:03:12,780 --> 00:03:15,720 そして ある日 一寸法師は→ 28 00:03:15,720 --> 00:03:19,070 「武者修行の旅に出たい」 と 言い出した。 29 00:03:19,070 --> 00:03:21,960 心配する おっかあを前に おっとうは→ 30 00:03:21,960 --> 00:03:23,990 「見上げた心がけだ。 31 00:03:23,990 --> 00:03:28,730 思う存分 修行に励んでこい」 と 願いを聞き入れた。 32 00:03:28,730 --> 00:03:32,770 椀を 船の代わりに。 33 00:03:32,770 --> 00:03:34,740 箸を 櫂にして→ 34 00:03:34,740 --> 00:03:38,760 縫い針の刀を 腰に差した 一寸法師は→ 35 00:03:38,760 --> 00:03:41,330 都へと 船出した。 36 00:03:41,330 --> 00:03:44,600 小さな身で 船を漕いでいく 一寸法師を→ 37 00:03:44,600 --> 00:03:48,480 おっとうと おっかあは 涙を浮かべて見送った。 38 00:03:48,480 --> 00:03:50,520 (雷鳴) 39 00:03:50,520 --> 00:03:54,270 指先ほどの 一寸法師には 川を下っていく旅も→ 40 00:03:54,270 --> 00:03:58,230 大きな海を 渡っているようなものだった。 41 00:03:58,230 --> 00:04:09,600 ~ 42 00:04:09,600 --> 00:04:12,970 そんな旅が 幾日も続いた ある朝。 43 00:04:12,970 --> 00:04:17,580 一寸法師は 聞こえてくる人の声に 目を覚ました。 44 00:04:17,580 --> 00:04:19,600 もやが晴れてくると→ 45 00:04:19,600 --> 00:04:23,740 大きな建物と 行き交う人の姿が見えてきた。 46 00:04:23,740 --> 00:04:26,100 《これが 都か…》 47 00:04:26,100 --> 00:04:30,240 一寸法師は 早速 活気溢れる大通りを→ 48 00:04:30,240 --> 00:04:33,630 人の間を縫うように歩き出した。 49 00:04:33,630 --> 00:04:35,650 しばらく歩くと→ 50 00:04:35,650 --> 00:04:38,620 町外れの大きな屋敷に さしかかった。 51 00:04:38,620 --> 00:04:42,220 すると 屋敷の中から 笛の音が聞こえてきた。 52 00:04:46,560 --> 00:04:51,380 笛を奏でるのは 若い娘だった。 53 00:04:51,380 --> 00:04:56,600 一寸法師は ひと目で この娘が好きになった。 54 00:04:56,600 --> 00:05:00,110 頼もう! 頼もう! 55 00:05:00,110 --> 00:05:03,740 はて… どなたかな? 56 00:05:03,740 --> 00:05:06,710 頼もう! 頼もう! 57 00:05:06,710 --> 00:05:10,750 んんっ!? ほほ~ 今 呼んだのは お前か? 58 00:05:10,750 --> 00:05:12,780 私の名は 一寸法師。 59 00:05:12,780 --> 00:05:15,570 都へ 武者修行に参った。 60 00:05:15,570 --> 00:05:18,110 お前が 武者修行とな? 61 00:05:18,110 --> 00:05:22,760 家人は おもしろいやつだと 置いてくれることになった。 62 00:05:22,760 --> 00:05:24,760 こうして 一寸法師は→ 63 00:05:24,760 --> 00:05:30,250 都でも 位の高い役人の屋敷で 修行することになった。 64 00:05:30,250 --> 00:05:33,420 読み書きを習い→ 65 00:05:33,420 --> 00:05:37,340 武芸の修行にも耐えた。 66 00:05:37,340 --> 00:05:40,450 娘に好かれたい一心で→ 67 00:05:40,450 --> 00:05:43,100 頑張ったのだった。 68 00:05:43,100 --> 00:05:45,120 その頃 都では→ 69 00:05:45,120 --> 00:05:47,940 鬼が出て 人を さらっていくという話が→ 70 00:05:47,940 --> 00:05:50,070 飛び交っていた。 71 00:05:50,070 --> 00:05:52,610 ある日のこと 娘が 観音様へ→ 72 00:05:52,610 --> 00:05:55,260 お参りに出かけることになった。 73 00:05:55,260 --> 00:05:58,930 この日は 一寸法師も お供をすることになった。 74 00:05:58,930 --> 00:06:00,930 ウオ~! 75 00:06:00,930 --> 00:06:02,970 キャ~! 76 00:06:02,970 --> 00:06:04,970 遠くで 悲鳴が起こった。 77 00:06:07,220 --> 00:06:11,130 大きな鬼が すごい勢いで こっちに向かってきた。 78 00:06:11,130 --> 00:06:14,260 お供の 侍たちも 娘を守ろうと立ち向かったが→ 79 00:06:14,260 --> 00:06:17,050 一撃で 弾き飛ばされた。 80 00:06:17,050 --> 00:06:19,430 鬼は 不気味な笑いを浮かべ…。 81 00:06:19,430 --> 00:06:24,020 うまそうな娘じゃ。 今 ここで食ってやろうか。 82 00:06:24,020 --> 00:06:26,740 一寸法師は 娘の肩から飛び上がると→ 83 00:06:26,740 --> 00:06:29,080 鬼の指に 剣を突き刺した。 84 00:06:29,080 --> 00:06:32,210 イタタタタ! お前は誰だ! 85 00:06:32,210 --> 00:06:37,470 お供の一寸法師だ! お嬢様には 指一本 触らせるものか! 86 00:06:37,470 --> 00:06:40,970 フン! お前など握りつぶしてやる! 87 00:06:42,910 --> 00:06:46,760 修行をつんだ一寸法師は そう簡単にはつかまらない。 88 00:06:46,760 --> 00:06:50,720 だが とうとう つかまってしまい ひと飲みにされてしまった。 89 00:06:50,720 --> 00:06:52,930 そして 震える娘に近づき→ 90 00:06:52,930 --> 00:06:55,800 手をかけようとしたとき 鬼は 苦しみ出した。 91 00:06:55,800 --> 00:06:58,910 イタタタタ! 腹が! 92 00:06:58,910 --> 00:07:01,930 鬼の腹の中にいた 一寸法師は→ 93 00:07:01,930 --> 00:07:04,600 あたり構わず 針を突きまくっていたので→ 94 00:07:04,600 --> 00:07:07,500 鬼は のたうちまわって苦しんだ。 95 00:07:07,500 --> 00:07:09,620 降参するか! 96 00:07:09,620 --> 00:07:12,740 鬼は たまらず 一寸法師を はき出した。 97 00:07:12,740 --> 00:07:15,160 そして 目に涙を浮かべて→ 98 00:07:15,160 --> 00:07:18,260 もう 都には参りませんと約束して→ 99 00:07:18,260 --> 00:07:21,580 一目散に逃げ出した。 100 00:07:21,580 --> 00:07:26,050 あとには 鬼が身につけていた 小槌が落ちていた。 101 00:07:26,050 --> 00:07:30,090 娘は これは 珍しい打出の小槌で→ 102 00:07:30,090 --> 00:07:34,460 振りながら願いを言えば 何でも叶うのだと言った。 103 00:07:34,460 --> 00:07:37,330 では お嬢様 おらの背が伸びるよう→ 104 00:07:37,330 --> 00:07:39,960 小槌を 振ってみてくださいませんか。 105 00:07:39,960 --> 00:07:45,260 娘は 「せいでろ せいでろ」と 唱えながら小槌を振った。 106 00:07:47,510 --> 00:07:50,410 すると 不思議なことに 一寸法師の体は→ 107 00:07:50,410 --> 00:07:53,930 どんどん伸びはじめ→ 108 00:07:53,930 --> 00:07:57,420 見ちがえる若者となった。 109 00:07:57,420 --> 00:08:02,500 知恵と 見事な 剣の腕を身につけた一寸法師が→ 110 00:08:02,500 --> 00:08:07,760 娘を嫁にほしいと申し出ると 家人は 喜んで婿にした。 111 00:08:07,760 --> 00:08:11,260 望みを果たした一寸法師は→ 112 00:08:11,260 --> 00:08:15,100 おっとうと おっかあの暮らす ふるさとに向かった。 113 00:08:15,100 --> 00:08:17,770 お久しゅうございます。 114 00:08:17,770 --> 00:08:21,440 と言うと おっとうも おっかあも 一寸法師とわかり→ 115 00:08:21,440 --> 00:08:23,890 抱き合って喜んだ。 116 00:08:23,890 --> 00:08:27,980 そして 両親を都へ連れていくと→ 117 00:08:27,980 --> 00:08:33,980 嫁とともに 末永く 幸せに暮らしたということです。 118 00:08:43,460 --> 00:08:45,650 昔むかし 山あいの里に→ 119 00:08:45,650 --> 00:08:50,600 貧乏だが仲のいい 爺さんと婆さんがおりました。 120 00:08:50,600 --> 00:08:53,800 ある朝 爺さんは 野良仕事の合間に→ 121 00:08:53,800 --> 00:08:56,770 山へ山菜をとりに行くことにした。 122 00:08:56,770 --> 00:09:00,310 婆さんは 働き者の爺さんのために→ 123 00:09:00,310 --> 00:09:03,260 大きな塩むすびを 2つ作った。 124 00:09:03,260 --> 00:09:06,130 婆さんの塩むすびは→ 125 00:09:06,130 --> 00:09:08,820 爺さんには なによりのごちそうだった。 126 00:09:08,820 --> 00:09:12,810 行ってらっしぇ。 ああ 行ってくらぁ。 127 00:09:12,810 --> 00:09:16,440 爺さんは 大きな カゴを背負って いつものように→ 128 00:09:16,440 --> 00:09:19,150 テクテク 裏山を登っていった。 129 00:09:19,150 --> 00:09:23,120 その日は わらび ぜんまい たらのめなど→ 130 00:09:23,120 --> 00:09:26,320 思いのほか たくさんの山菜が見つかった。 131 00:09:26,320 --> 00:09:31,980 爺さんは ふだんは行かない 山の奥へ どんどん入っていった。 132 00:09:31,980 --> 00:09:34,850 気がつくと 婆さんの待つ家を→ 133 00:09:34,850 --> 00:09:37,680 はるか下に見る尾根に来ておった。 134 00:09:37,680 --> 00:09:39,780 ここらで 昼飯とすべか。 135 00:09:43,440 --> 00:09:45,440 おっと! 136 00:09:45,440 --> 00:09:47,830 おっとっとっとっと! 137 00:09:47,830 --> 00:09:50,360 ありゃりゃりゃりゃ! 138 00:09:50,360 --> 00:09:52,360 ありゃ~! 139 00:09:54,270 --> 00:09:56,820 ああ 婆さんの塩むすびが! 140 00:09:56,820 --> 00:09:59,690 よっぽど 深ぇ穴に違ぇねえ。 141 00:09:59,690 --> 00:10:02,610 爺さや爺さ もっとくれろ。 142 00:10:02,610 --> 00:10:04,980 もっとくれろや 塩むすび。 143 00:10:04,980 --> 00:10:07,760 なんとしたことだべか。 144 00:10:07,760 --> 00:10:11,020 もっと よく聞こうと 穴の縁に手をかけると…。 145 00:10:11,020 --> 00:10:14,520 わっ! あ~っ! 146 00:10:16,440 --> 00:10:19,540 爺さや爺さ もっとくれろ。 147 00:10:19,540 --> 00:10:22,540 もっとくれろや 塩むすび。 148 00:10:25,450 --> 00:10:29,480 誰ぞ 婆さんの塩むすびが ほしいと言うだか→ 149 00:10:29,480 --> 00:10:31,440 無理もねえな。 150 00:10:31,440 --> 00:10:35,290 これほど うめえ塩むすびは なかなか食えねえからな。 151 00:10:35,290 --> 00:10:37,290 おんや! 152 00:10:39,310 --> 00:10:43,480 爺さん お前はこれから 浄土へ行こうとしている。 153 00:10:43,480 --> 00:10:45,970 じゃが そこは 人の浄土ではない。 154 00:10:45,970 --> 00:10:49,440 くれぐれも 猫のマネをしてはならぬ。 155 00:10:49,440 --> 00:10:52,470 そう言うと 地蔵様は消えてしまった。 156 00:10:52,470 --> 00:10:55,590 今度は 白いネズミが現れた。 157 00:10:55,590 --> 00:11:00,480 爺さや爺さ。 あの塩むすびは 爺さの塩むすびか? 158 00:11:00,480 --> 00:11:02,430 そうだ。 159 00:11:02,430 --> 00:11:06,400 あ~んなに うまい塩むすびは 食ったことがない。 160 00:11:06,400 --> 00:11:10,830 婆さんの塩むすびを褒められて 嬉しくなった爺さんは→ 161 00:11:10,830 --> 00:11:13,960 もう1つの塩むすびを くれてやった。 162 00:11:13,960 --> 00:11:18,370 いつの間にか集まったネズミたちは 大喜び。 163 00:11:18,370 --> 00:11:22,150 爺さ爺さ。 ここは ネズミの浄土だ。 164 00:11:22,150 --> 00:11:25,020 気がつくと 爺さんの目の前には→ 165 00:11:25,020 --> 00:11:28,140 星空のような明かりが広がった。 166 00:11:28,140 --> 00:11:31,650 おらたちは 年に一度の 祭りの支度をしていて→ 167 00:11:31,650 --> 00:11:34,700 思いがけず 塩むすびをごちそうになった。 168 00:11:34,700 --> 00:11:37,820 どうか おらたちの祭りを 見ていってくれ。 169 00:11:37,820 --> 00:11:40,100 ネズミたちに誘われて→ 170 00:11:40,100 --> 00:11:43,310 飲めや歌えの もてなしを受けた。 171 00:11:43,310 --> 00:12:01,090 ~ 172 00:12:01,090 --> 00:12:03,110 ふぅ…。 173 00:12:03,110 --> 00:12:06,810 そうするうち 爺さんは 婆さんのことを思い出して→ 174 00:12:06,810 --> 00:12:10,180 そろそろ帰ってやらねば ならねえなと思った。 175 00:12:10,180 --> 00:12:13,140 わしゃ そろそろ おいとまするで。 176 00:12:13,140 --> 00:12:15,590 爺さ爺さ 待ってくれろ。 177 00:12:15,590 --> 00:12:20,140 と 宝箱の大きいのと 小さいのを2つ用意した。 178 00:12:20,140 --> 00:12:23,480 これは爺さと 塩むすびをこさえた婆さへの→ 179 00:12:23,480 --> 00:12:26,600 お礼だから 持ってってくれろ。 180 00:12:26,600 --> 00:12:30,820 山を下りるのに 大きい宝箱は重くて厄介だ。 181 00:12:30,820 --> 00:12:33,690 小さいほう もらっていくで。 182 00:12:33,690 --> 00:12:36,590 爺さんは 小さい箱を担ぐと→ 183 00:12:36,590 --> 00:12:40,510 ネズミたちに見送られて 穴を出て行った。 184 00:12:40,510 --> 00:12:44,510 外は もう夜になっていた。 185 00:12:46,750 --> 00:12:48,760 今 帰ったぞ。 186 00:12:48,760 --> 00:12:50,760 爺さん 山で何かあっただか? 187 00:12:50,760 --> 00:12:54,110 何かも何も 何から話すべえか…。 188 00:12:54,110 --> 00:12:58,100 爺さんは 山で起こったことを話した。 189 00:12:58,100 --> 00:13:01,040 そして もらった宝箱を開けると→ 190 00:13:01,040 --> 00:13:05,640 中には 大判小判や 上等な反物が詰まっていた。 191 00:13:05,640 --> 00:13:07,690 (2人)おぉ~! 192 00:13:07,690 --> 00:13:10,340 爺さんは 喜ぶ婆さんを見て→ 193 00:13:10,340 --> 00:13:12,440 何だか 嬉しくなった。 194 00:13:14,600 --> 00:13:18,020 次の朝 隣の地所に暮らす爺さんが→ 195 00:13:18,020 --> 00:13:21,110 昨日 山で拾った 山菜の詰まったカゴを→ 196 00:13:21,110 --> 00:13:23,190 届けに来た。 197 00:13:23,190 --> 00:13:27,190 大事な山菜を置いてくるとは クマでも出たか。 198 00:13:30,260 --> 00:13:32,780 そりゃあ 何じゃ~! 199 00:13:32,780 --> 00:13:36,340 爺さんは ネズミの浄土で見てきた 話をした。 200 00:13:36,340 --> 00:13:38,360 それだば おらも行って→ 201 00:13:38,360 --> 00:13:42,010 大きいほうの宝箱を せしめてこねばなるめえ。 202 00:13:42,010 --> 00:13:45,010 と言って 大急ぎで帰っていった。 203 00:13:47,050 --> 00:13:49,480 家に戻ると早速 残っている→ 204 00:13:49,480 --> 00:13:52,850 オコゲのご飯で おむすびを作り始めた。 205 00:13:52,850 --> 00:13:56,140 多いほうがいいだろうと 3つ作ると→ 206 00:13:56,140 --> 00:13:59,140 早速 山へ向かった。 207 00:14:01,810 --> 00:14:04,650 木の根っこをこえて 下に向かうと→ 208 00:14:04,650 --> 00:14:06,700 確かに 穴があった。 209 00:14:06,700 --> 00:14:10,090 早速 おむすびを放り込んだが 何の声もしねえ。 210 00:14:10,090 --> 00:14:14,640 おむすび くれてやったのに 礼のひとつもねえとは。 211 00:14:14,640 --> 00:14:19,260 勝手に中に入って行った。 212 00:14:19,260 --> 00:14:25,720 やがて光り輝く地蔵様が現れ この先が ネズミの浄土だから→ 213 00:14:25,720 --> 00:14:30,310 猫のマネはしないよう 注意を促した。 214 00:14:30,310 --> 00:14:32,380 しばらく行くと→ 215 00:14:32,380 --> 00:14:37,210 地面に今しがた放り込んだ おむすびがあった。 216 00:14:37,210 --> 00:14:41,890 なんだ 今日のおむすびは 口に合わねえだか。 217 00:14:41,890 --> 00:14:45,940 おんや? ここがネズミの浄土か? 218 00:14:45,940 --> 00:14:50,410 ここから先は ネズミの浄土じゃから→ 219 00:14:50,410 --> 00:14:52,730 行くのは遠慮してくれろ。 220 00:14:52,730 --> 00:14:57,150 隣の爺さんは 宝箱さえ持ち帰ればいいんじゃ。 221 00:14:57,150 --> 00:14:59,700 ネズミには用はねえと考えた。 222 00:14:59,700 --> 00:15:01,720 すると…。 223 00:15:01,720 --> 00:15:04,340 ニャ~ゴ ニャ~ゴ。 224 00:15:04,340 --> 00:15:06,880 ネズミたちは一斉に逃げ出した。 225 00:15:06,880 --> 00:15:09,130 ハハハ…。 226 00:15:09,130 --> 00:15:12,300 すると 星空は消え 真っ暗になった。 227 00:15:12,300 --> 00:15:16,290 隣の爺さんは手さぐりで 宝箱を見つけようとしたが→ 228 00:15:16,290 --> 00:15:20,940 まったく見つけられず しかも迷子になってしまった。 229 00:15:20,940 --> 00:15:24,950 やっと穴から這い出したが→ 230 00:15:24,950 --> 00:15:28,250 穴に入って3日3晩が過ぎていた。 231 00:15:28,250 --> 00:15:31,450 それから しばらくして 穴を探したが→ 232 00:15:31,450 --> 00:15:35,250 まったく見つからなかったという。 233 00:15:43,350 --> 00:15:45,950 昔むかし ある村に→ 234 00:15:45,950 --> 00:15:49,760 それはそれは きれいな娘がおりました。 235 00:15:49,760 --> 00:15:52,280 娘は村一番の分限者→ 236 00:15:52,280 --> 00:15:58,600 今で言う金持ちの娘だった その器量は村でも評判だった。 237 00:15:58,600 --> 00:16:01,650 娘も そろそろ年頃になったので→ 238 00:16:01,650 --> 00:16:05,770 父も母もよいところに 嫁がせたいと願っていた。 239 00:16:05,770 --> 00:16:12,370 そこで 娘と3人で村の氏神様に お参りすることにした。 240 00:16:14,320 --> 00:16:19,070 どうかよい婿と巡りあって 娘が嫁げますように。 241 00:16:19,070 --> 00:16:23,360 手を合わせて神様にお願いした。 242 00:16:23,360 --> 00:16:28,310 そこへやってきたのが 隣村に住むしようもない男。 243 00:16:28,310 --> 00:16:30,350 こいつ もういい歳なのだが→ 244 00:16:30,350 --> 00:16:33,580 いつも ぶらぶら遊んでばかりいる 怠け者。 245 00:16:33,580 --> 00:16:35,920 ろくに銭を持ったこともない。 246 00:16:35,920 --> 00:16:40,240 そのせいで村の者からは ぶらぶらと呼ばれていた。 247 00:16:40,240 --> 00:16:44,340 どうか娘に よい婿が授かりますように。 248 00:16:48,720 --> 00:16:52,640 あれは… なるほど きれいな娘だ。 249 00:16:52,640 --> 00:16:57,310 娘の噂は ぶらぶらも知っていた。 250 00:16:57,310 --> 00:17:01,600 そうか もう嫁にいく歳なのか。 251 00:17:01,600 --> 00:17:07,580 そのとき ぶらぶらの頭に 一生に一度のよい考えが閃いた。 252 00:17:07,580 --> 00:17:12,110 そこな者 待たれい。 253 00:17:12,110 --> 00:17:15,980 ぶらぶら 作り声なんかして もったいつけて呼びかけた。 254 00:17:15,980 --> 00:17:18,550 よき婿が欲しいとな。 255 00:17:18,550 --> 00:17:20,930 だ 誰だ! 256 00:17:20,930 --> 00:17:26,790 驚くでない 余はこの社に祀られた氏神だ。 257 00:17:26,790 --> 00:17:33,230 え!? 余が そこな娘の婿を 選んでしんぜよう。 258 00:17:33,230 --> 00:17:36,530 (みんな)え!? 隣村に住む→ 259 00:17:36,530 --> 00:17:39,720 ぶらぶらさんこそ その男だ。 260 00:17:39,720 --> 00:17:42,470 ぶらぶらさん? さよう。 261 00:17:42,470 --> 00:17:46,670 ぶらぶらさん 粋で立派ないい男。 262 00:17:46,670 --> 00:17:51,080 あ~ら疑いあるべからず。 (2人)はは~。 263 00:17:51,080 --> 00:17:53,130 目を丸くする娘をよそに→ 264 00:17:53,130 --> 00:17:56,420 父も母も手を合わせて 深々と頭を下げた。 265 00:17:56,420 --> 00:17:58,640 けど ぶらぶらがどんなやつかは→ 266 00:17:58,640 --> 00:18:01,810 娘も父も母も評判で知っていた。 267 00:18:01,810 --> 00:18:07,750 なんで ぶらぶらなんかに…。 けど 神様のお告げなんだよ。 268 00:18:07,750 --> 00:18:10,050 うむ 嫁取りをきっかけに→ 269 00:18:10,050 --> 00:18:16,820 粋で立派ないい男になると あ~ら疑いあるべからず。 270 00:18:16,820 --> 00:18:19,260 うぅ…。 271 00:18:19,260 --> 00:18:22,460 父と母に説き伏せられ 娘は とうとう→ 272 00:18:22,460 --> 00:18:26,350 ぶらぶらの嫁になると 決まってしまった。 273 00:18:26,350 --> 00:18:29,630 ぶらぶらはといえば そりゃもう大喜び。 274 00:18:29,630 --> 00:18:31,640 俺にあんなきれいな嫁が…。 275 00:18:31,640 --> 00:18:34,000 その上 実家は分限者だ。 276 00:18:34,000 --> 00:18:39,190 どうやら運が向いてきただ。 そうだ こうしちゃいられねえ。 277 00:18:39,190 --> 00:18:41,530 ろくに銭を 持ったこともないやつが→ 278 00:18:41,530 --> 00:18:44,200 親戚やら何やらから 銭を借りまくり→ 279 00:18:44,200 --> 00:18:48,350 嫁取りのしたくを調え始めた。 280 00:18:48,350 --> 00:18:51,410 やがて 嫁入りの日になった。 281 00:18:51,410 --> 00:18:55,710 娘は 泣く泣く父母の用意した 立派な駕籠に乗る。 282 00:18:59,350 --> 00:19:03,020 待つぶらぶらは 朝から落ち着かないったらない。 283 00:19:03,020 --> 00:19:05,020 婚礼じゃ 婚礼じゃ。 284 00:19:05,020 --> 00:19:07,670 料理はととのったか 酒は用意できてるか。 285 00:19:07,670 --> 00:19:09,910 何? 嫁は駕籠で来ると? 286 00:19:09,910 --> 00:19:14,910 途中の茶店で休憩する? では 駕籠かきに1杯飲ませてやれ。 287 00:19:16,850 --> 00:19:20,900 なに 構わん構わん。 大切な嫁御を迎えるのじゃ。 288 00:19:20,900 --> 00:19:23,690 そりゃもう大盤振る舞い。 289 00:19:23,690 --> 00:19:26,370 あの男 どれだけ銭借りたんじゃ? 290 00:19:26,370 --> 00:19:28,980 返すのも大変だろう? 291 00:19:28,980 --> 00:19:33,200 婚礼じゃ婚礼じゃ。 うっしっしっし。 292 00:19:33,200 --> 00:19:39,020 さて 娘を乗せた駕籠が 休憩の茶店にやってきた。 293 00:19:39,020 --> 00:19:42,510 へぇ。 婿殿がご酒を。 そりゃありがてえ。 294 00:19:42,510 --> 00:19:46,510 そこへやってきたのは 見るからにきりっとした若侍。 295 00:19:46,510 --> 00:19:49,680 茶店で休もうと 思っていたのだが。 296 00:19:49,680 --> 00:19:52,670 (いびき) 297 00:19:52,670 --> 00:19:55,020 (泣き声) 298 00:19:55,020 --> 00:19:57,650 どこからかすすり泣く声がする。 299 00:19:57,650 --> 00:19:59,690 どうやら駕籠の中だ。 300 00:19:59,690 --> 00:20:03,640 若侍 構わず 駕籠の引き戸をさっと開けた。 301 00:20:03,640 --> 00:20:06,180 娘御 どうかなさったのか? 302 00:20:06,180 --> 00:20:08,170 はい 実は…。 303 00:20:08,170 --> 00:20:10,970 娘が嫁入りのいきさつを話す。 304 00:20:10,970 --> 00:20:13,020 そうか それで。 305 00:20:13,020 --> 00:20:16,190 話を聞いた若侍 どうしたものかと思案した。 306 00:20:16,190 --> 00:20:18,190 モ~。 307 00:20:18,190 --> 00:20:21,200 まだ来ぬか もう来てもよいじゃろう。 308 00:20:21,200 --> 00:20:25,330 待つぶらぶらは うろうろ うろうろ落ち着かないこと。 309 00:20:25,330 --> 00:20:28,240 やがて。 310 00:20:28,240 --> 00:20:31,860 まだ酔っている駕籠かきが おぼつかない足取りで→ 311 00:20:31,860 --> 00:20:35,510 あっちへフラフラ こっちへフラフラしながらやってくる。 312 00:20:35,510 --> 00:20:37,880 こら しっかり担がぬか。 313 00:20:37,880 --> 00:20:40,800 中の嫁御が 駕籠酔いしたらどうする。 314 00:20:40,800 --> 00:20:44,020 しまいには とうとう 自分が付き添って→ 315 00:20:44,020 --> 00:20:48,690 駕籠はようやく ぶらぶらの 貧乏屋の玄関についた。 316 00:20:48,690 --> 00:20:51,830 嫁御どの よう参った。 317 00:20:51,830 --> 00:20:54,860 中から飛び出してきたのは→ 318 00:20:54,860 --> 00:20:58,480 一頭の子牛だった。 そのうち 座敷に上がりこみ→ 319 00:20:58,480 --> 00:21:02,020 料理は蹴散らすは 酒樽はひっくり返すわ。 320 00:21:02,020 --> 00:21:05,860 子牛は ますます暴れるばかり。 321 00:21:05,860 --> 00:21:10,240 騒動を聞いて駆けつけた 娘の父と母もびっくり。 322 00:21:10,240 --> 00:21:13,310 娘が いつの間にか牛に。 323 00:21:13,310 --> 00:21:15,850 不憫なことじゃ。 324 00:21:15,850 --> 00:21:18,920 それにしても いつからあんなお転婆に。 325 00:21:18,920 --> 00:21:20,800 よう暴れること。 326 00:21:20,800 --> 00:21:23,860 おとっつぁん おっかさん 私はここに。 327 00:21:23,860 --> 00:21:29,010 そこには 凛々しい若侍と 連れだった娘の姿があった。 328 00:21:29,010 --> 00:21:31,380 縁あって娘御をお助けもうした。 329 00:21:31,380 --> 00:21:36,700 お許しいただけるなら 娘御をば 嫁に取りとう存じまする。 330 00:21:36,700 --> 00:21:40,140 んまっ これこそ神様のお導き! 331 00:21:40,140 --> 00:21:45,160 父も母も目を輝かせて 若侍を見た。 332 00:21:45,160 --> 00:21:47,710 お 俺はどうなるんだ。 333 00:21:47,710 --> 00:21:52,300 ぶらぶらどん そなたは よい嫁がきたではないか。 334 00:21:52,300 --> 00:21:54,350 え? う 牛? 335 00:21:54,350 --> 00:21:56,370 のあ~っ! 336 00:21:56,370 --> 00:21:58,410 そこへやってきたのが牛方。 337 00:21:58,410 --> 00:22:01,030 おらのめんこい牛に何するだ。 338 00:22:01,030 --> 00:22:04,130 お前なんぞの嫁にはやらん! 339 00:22:04,130 --> 00:22:06,900 ぶらぶら もう踏んだり蹴ったり。 340 00:22:06,900 --> 00:22:11,000 散らかり放題の座敷に へたりこんだとさ。 341 00:22:13,320 --> 00:22:16,930 娘はやがて 若侍のもとへと→ 342 00:22:16,930 --> 00:22:20,430 みんなにうらやまれながら 嫁入りしたそうな。 343 00:22:22,320 --> 00:22:27,200 その見物の後ろには…。 344 00:22:27,200 --> 00:22:31,660 借金取りに追われる ぶらぶらの姿があったという。 345 00:22:31,660 --> 00:22:35,260 悪いことは できぬものじゃな。