1 00:01:44,440 --> 00:01:48,590 昔むかし あるところに たいそう不精者の夫婦が→ 2 00:01:48,590 --> 00:01:50,580 住んでおりました。 3 00:01:50,580 --> 00:01:54,130 何年も風呂にも入らずに→ 4 00:01:54,130 --> 00:01:56,680 食っちゃ寝 食っちゃ寝したもんだから→ 5 00:01:56,680 --> 00:02:01,420 体じゅうにアカがたまって とうとう→ 6 00:02:01,420 --> 00:02:05,120 こんな体になってしまった。 7 00:02:05,120 --> 00:02:07,480 なぁ 婆さんや。 8 00:02:07,480 --> 00:02:10,760 歳をとってみると 童のいないのは寂しいのう。 9 00:02:10,760 --> 00:02:15,150 ほんに おらたちも 童っこ欲しかったな。 10 00:02:15,150 --> 00:02:17,270 (2人)ふぅ。 11 00:02:17,270 --> 00:02:21,360 そうだ 体のアカを落として 人形こしらえっぺよ。 12 00:02:21,360 --> 00:02:24,860 この歳では童はできんからな。 んだな。 13 00:02:24,860 --> 00:02:29,880 早速 2人は風呂に入って お互いのアカを こすり落とした。 14 00:02:29,880 --> 00:02:32,480 いっぺえ出るだ。 15 00:02:35,340 --> 00:02:37,940 立派な人形ができるぞ。 16 00:02:41,130 --> 00:02:43,100 アカが落ちたら すっかり→ 17 00:02:43,100 --> 00:02:46,300 痩せっぽちになってしまったな。 んだ。 18 00:02:49,940 --> 00:02:51,940 ほらよ。 はいよ。 19 00:02:53,920 --> 00:02:56,840 できた! わしらの童っこだ。 20 00:02:56,840 --> 00:03:00,760 ほんに わしらの童っこじゃ めんこいのう。 21 00:03:00,760 --> 00:03:04,460 あまりのかわいさに 本当の子供のようじゃった。 22 00:03:10,310 --> 00:03:12,560 (力太郎)おぎゃ~ おぎゃ~! 23 00:03:12,560 --> 00:03:15,310 お爺さん 起きて! 大変だ! 24 00:03:15,310 --> 00:03:20,800 不思議なことにアカの中から 本当の子供が生まれたんじゃ。 25 00:03:20,800 --> 00:03:25,990 赤ん坊は とても力持ちなので 力太郎と名づけた。 26 00:03:25,990 --> 00:03:29,460 力太郎は大食いで 一升 食わせれば一升分。 27 00:03:29,460 --> 00:03:31,460 おかわり! 28 00:03:31,460 --> 00:03:33,860 一斗食わせれば一斗分。 おかわり。 29 00:03:33,860 --> 00:03:36,750 ズンガズンガと育っていって→ 30 00:03:36,750 --> 00:03:39,790 とうとう三斗五升も ペロリと食っちまった。 31 00:03:39,790 --> 00:03:42,720 おかわり。 32 00:03:42,720 --> 00:03:45,660 お爺さんとお婆さんは このままでは→ 33 00:03:45,660 --> 00:03:48,610 食い物がなくなってしまうと 嘆いた。 34 00:03:48,610 --> 00:03:51,960 おかわり! 35 00:03:51,960 --> 00:03:54,600 ある日のこと。 おとう おかあ。 36 00:03:54,600 --> 00:03:57,220 おら修業の旅に出るだ。 37 00:03:57,220 --> 00:04:00,960 力太郎は作ってもらった→ 38 00:04:00,960 --> 00:04:06,400 百貫目の鉄棒を担いで村を出た。 39 00:04:06,400 --> 00:04:08,910 食い物がなくなる 心配はねえけど→ 40 00:04:08,910 --> 00:04:12,250 また寂しくなるな。 ほんに。 41 00:04:12,250 --> 00:04:21,460 ~ 42 00:04:21,460 --> 00:04:25,330 (御堂二太郎) 小僧 邪魔だ 道をあけろ。 43 00:04:25,330 --> 00:04:29,790 俺は天下一の力持ち 御堂二太郎だぞ。 44 00:04:29,790 --> 00:04:34,710 ちょいっと カンラカラカラ。 45 00:04:34,710 --> 00:04:37,010 やりやがったな! 46 00:04:38,980 --> 00:04:42,450 ガッハッハ カンラカンラ。 47 00:04:42,450 --> 00:04:46,500 (御堂二太郎)助けてくれ~。 48 00:04:46,500 --> 00:04:48,700 頼む 下ろしてくれ。 49 00:04:48,700 --> 00:04:53,500 どうだ 参ったか。 参った 早く下ろしてくれ。 50 00:04:57,010 --> 00:05:00,920 ひゃ~! 51 00:05:00,920 --> 00:05:06,240 これはたまらん 御堂二太郎は 力太郎の一の家来になって→ 52 00:05:06,240 --> 00:05:08,740 お供することになった。 53 00:05:19,050 --> 00:05:22,490 (石二太郎)よくも天下一の 石二太郎の顔に→ 54 00:05:22,490 --> 00:05:25,510 石をぶつけたな! 握り潰してやる! 55 00:05:25,510 --> 00:05:28,660 (2人)カンラ カンラカンラ。 56 00:05:28,660 --> 00:05:31,460 俺が相手だ。 57 00:05:35,970 --> 00:05:42,070 グ~グ~。 58 00:05:42,070 --> 00:05:44,990 あぁ~。 59 00:05:44,990 --> 00:05:48,190 まだやってるのか。 60 00:05:51,830 --> 00:05:55,130 それ! (2人)あ~! 61 00:05:57,790 --> 00:06:04,750 力太郎は 御堂二太郎に続いて 石二太郎も家来に加えた。 62 00:06:04,750 --> 00:06:06,930 人がいねえな。 63 00:06:06,930 --> 00:06:10,950 (泣き声) 64 00:06:10,950 --> 00:06:14,460 (力太郎)この屋敷の中から 聞こえてくるぞ。 65 00:06:14,460 --> 00:06:19,290 私は嫌です。 何かあったのかい? 66 00:06:19,290 --> 00:06:22,950 この町では 月に一度 山からきた化け物が→ 67 00:06:22,950 --> 00:06:25,800 町の娘を さらって行きますんじゃ。 68 00:06:25,800 --> 00:06:30,460 そして 今日はうちの娘の番。 69 00:06:30,460 --> 00:06:33,480 そんな化け物 俺たちが退治してやる! 70 00:06:33,480 --> 00:06:35,530 それはありがたい。 71 00:06:35,530 --> 00:06:48,120 ~ 72 00:06:48,120 --> 00:06:53,830 (足音) 73 00:06:53,830 --> 00:06:56,330 ガハハハハ…。 74 00:07:02,920 --> 00:07:08,110 娘はどこだ。 75 00:07:08,110 --> 00:07:10,530 来たな化け物 俺が相手だ! 76 00:07:10,530 --> 00:07:12,530 邪魔するな! 77 00:07:16,840 --> 00:07:18,840 えい! 78 00:07:24,290 --> 00:07:28,110 邪魔者は片づいた。 今度こそ娘をもらう。 79 00:07:28,110 --> 00:07:30,710 うぐっ… うぅ…。 80 00:07:42,180 --> 00:07:45,260 おかげでおらも娘も 助かりました。 81 00:07:45,260 --> 00:07:49,820 お礼に何を 差し上げたらいいすべか。 82 00:07:49,820 --> 00:07:54,620 礼などいらんから 大きな釜に 飯をいっぱい炊いて食わせてくれ。 83 00:07:54,620 --> 00:07:58,660 は? あ… お安い御用です。 84 00:07:58,660 --> 00:08:04,460 炊き上がった五斗米の釜を2つ 3人は ペロリとたいらげた。 85 00:08:06,420 --> 00:08:08,450 なんと欲のねえ人たちだべ。 86 00:08:08,450 --> 00:08:11,840 ん… よし気に入った! 87 00:08:11,840 --> 00:08:15,840 おらの娘たちを 嫁にもらってくだされませ。 88 00:08:19,130 --> 00:08:22,280 力太郎は婿に入った長者の家に→ 89 00:08:22,280 --> 00:08:25,920 ふるさとから おとうとおかあを呼び寄せた。 90 00:08:25,920 --> 00:08:28,620 そしてみんなで 幸せに暮らしました。 91 00:08:28,620 --> 00:08:32,140 ところで おとうとおかあは 今度は アカではなく→ 92 00:08:32,140 --> 00:08:34,440 本当の肉がついたそうです。 93 00:08:43,350 --> 00:08:46,550 昔むかし ある山の麓の小屋に→ 94 00:08:46,550 --> 00:08:49,730 若いきこりが 一人住んでいました。 95 00:08:49,730 --> 00:08:56,330 きこりは 毎日 山へ入り 木をきって暮らしていました。 96 00:09:05,370 --> 00:09:10,060 ある日 きこりは 森の中で霧が出て→ 97 00:09:10,060 --> 00:09:12,560 道に迷ってしまいました。 98 00:09:14,540 --> 00:09:18,230 霧が晴れて気がつくと 今まで見たこともない→ 99 00:09:18,230 --> 00:09:21,830 立派なかまえの 屋敷の前に立っていました。 100 00:09:24,350 --> 00:09:30,160 大きな建物 広い庭 そこに咲きほこっている草や花。 101 00:09:30,160 --> 00:09:34,460 屋敷の中は静まり返り 誰もいない様子です。 102 00:09:40,070 --> 00:09:45,870 花の香りに誘われ きこりは 門をくぐって中へ入りました。 103 00:09:47,880 --> 00:09:52,680 ごめんください ごめんください。 104 00:09:55,870 --> 00:10:01,520 玄関を入ると屋敷の中に 女の人がいました。 105 00:10:01,520 --> 00:10:05,380 いかが されましたか? 106 00:10:05,380 --> 00:10:08,310 あの この森で きこりをしています。 107 00:10:08,310 --> 00:10:11,400 霧が出て 道に迷ってしまったので→ 108 00:10:11,400 --> 00:10:14,400 ちょっと 休ませてもらおうと思って…。 109 00:10:17,940 --> 00:10:20,310 ちょうど よいところに 来てくれました。 110 00:10:20,310 --> 00:10:22,860 お頼みしたいことが あります。 111 00:10:22,860 --> 00:10:25,700 頼みというのは どんなことでしょう? 112 00:10:25,700 --> 00:10:28,020 霧も晴れて 天気も よいので→ 113 00:10:28,020 --> 00:10:31,640 私も これから 町へ行ってきたいと思います。 114 00:10:31,640 --> 00:10:33,640 その間 ここで→ 115 00:10:33,640 --> 00:10:36,860 留守をして いただけませんでしょうか? 116 00:10:36,860 --> 00:10:39,310 それは たやすいことじゃ。 117 00:10:39,310 --> 00:10:41,360 それでは 出かけてまいります。 118 00:10:41,360 --> 00:10:45,200 一つだけ 約束して いただきたいことがあります。 119 00:10:45,200 --> 00:10:50,660 この屋敷の 他のお部屋を 決して 見ないでくださいね。 120 00:10:50,660 --> 00:10:53,530 わかった。 121 00:10:53,530 --> 00:10:57,480 女の人は 安心して 外へ出ていきました。 122 00:10:57,480 --> 00:11:00,520 きこりは 広い部屋に ひとりっきり。 123 00:11:00,520 --> 00:11:03,550 家の中は 物音ひとつ しません。 124 00:11:03,550 --> 00:11:07,320 まるで 時間が止まってしまったようです。 125 00:11:07,320 --> 00:11:09,560 しばらくすると きこりは→ 126 00:11:09,560 --> 00:11:12,860 この屋敷のことを 知りたくなりました。 127 00:11:15,310 --> 00:11:17,370 あの 女の人と→ 128 00:11:17,370 --> 00:11:22,770 「他の部屋は 決して見ない」という 約束を しましたが→ 129 00:11:22,770 --> 00:11:25,020 とうとう 約束を破り→ 130 00:11:25,020 --> 00:11:28,490 はじめの部屋を そっと開けて→ 131 00:11:28,490 --> 00:11:30,980 覗いてみました…。 132 00:11:30,980 --> 00:11:34,420 誰も いないと思っていたら→ 133 00:11:34,420 --> 00:11:38,420 3人の娘が 部屋を 掃除していました。 134 00:11:44,680 --> 00:11:47,700 おらは あの…。 135 00:11:47,700 --> 00:11:52,480 あっ… あっ! あ~ あ~。 136 00:11:52,480 --> 00:11:54,820 部屋に 娘たちがいたので→ 137 00:11:54,820 --> 00:11:58,710 きこりは ますます この屋敷に 興味をもちました。 138 00:11:58,710 --> 00:12:04,350 そして 2番目の部屋を開けると→ 139 00:12:04,350 --> 00:12:08,650 その部屋は 茶室のようです。 140 00:12:11,150 --> 00:12:13,670 3番目の部屋を開けると→ 141 00:12:13,670 --> 00:12:16,110 たくさんの弓矢など→ 142 00:12:16,110 --> 00:12:18,030 戦の道具が 並んでいます。 143 00:12:18,030 --> 00:12:21,700 いったい どうなってるんだ!? この屋敷は! 144 00:12:21,700 --> 00:12:24,680 きこりは そこに いるのが 恐ろしくなりました。 145 00:12:24,680 --> 00:12:30,390 4番目の部屋の襖を 開けてみると→ 146 00:12:30,390 --> 00:12:33,990 そこは 馬小屋です。 147 00:12:37,350 --> 00:12:39,980 次の 5番目の部屋には→ 148 00:12:39,980 --> 00:12:43,300 豪華な食器が 並べてあります。 149 00:12:43,300 --> 00:12:45,970 6番目の部屋に入ると→ 150 00:12:45,970 --> 00:12:49,690 そこは 酒蔵です。 151 00:12:49,690 --> 00:12:52,030 酒好きの きこりは→ 152 00:12:52,030 --> 00:12:55,600 酒の香りに たまりかね ひしゃくで すくうと→ 153 00:12:55,600 --> 00:12:57,730 ひと口 飲んでみました。 154 00:12:57,730 --> 00:13:03,830 その酒は たった ひと口で 全身に 染み渡りました。 155 00:13:06,020 --> 00:13:09,020 きこりは 酒を グイグイ飲み始めた。 156 00:13:15,020 --> 00:13:18,670 きこりは 7番目の部屋に向かいました。 157 00:13:18,670 --> 00:13:21,360 酔った きこりは フラフラと歩いていくと→ 158 00:13:21,360 --> 00:13:24,980 勢いよく 襖を開けました。 159 00:13:24,980 --> 00:13:27,380 そこは 広く美しい部屋で→ 160 00:13:27,380 --> 00:13:30,980 花の いい匂いで 満たされていました。 161 00:13:30,980 --> 00:13:32,980 部屋の奥の 特別の お膳に→ 162 00:13:32,980 --> 00:13:36,040 なぜか 鳥の巣が ありました。 163 00:13:36,040 --> 00:13:38,340 その巣を覗き込むと→ 164 00:13:38,340 --> 00:13:42,840 中には 小さな卵が 3つ入っています。 165 00:13:48,430 --> 00:13:50,430 あぁっ! 166 00:13:52,650 --> 00:13:56,360 割れた卵が なんと 鳥になったのです。 167 00:13:56,360 --> 00:13:58,710 (鳴き声) 168 00:13:58,710 --> 00:14:00,750 うわ~っ! 169 00:14:00,750 --> 00:14:02,760 鳥は すぐに 立派な うぐいすになり→ 170 00:14:02,760 --> 00:14:05,320 そして 鳴きながら 飛び去りました。 171 00:14:05,320 --> 00:14:07,370 お~い! 172 00:14:07,370 --> 00:14:17,560 ~ 173 00:14:17,560 --> 00:14:20,400 割れた卵は やはり うぐいすになり→ 174 00:14:20,400 --> 00:14:22,900 ひと声鳴いて 飛び立ってしまいました。 175 00:14:28,990 --> 00:14:31,940 いったい ここは 何というところか? 176 00:14:31,940 --> 00:14:36,550 そこへ 出かけていった 女の人が戻ってきました。 177 00:14:36,550 --> 00:14:41,970 女の人は 割れた卵を見つけて さめざめと泣き出しました。 178 00:14:41,970 --> 00:14:45,690 ああ 人間は なんと嘘つきなのですか? 179 00:14:45,690 --> 00:14:47,810 見ないでくださいと お願いしたのに→ 180 00:14:47,810 --> 00:14:52,010 いともたやすく 約束を破ってしまったのですね。 181 00:14:52,010 --> 00:14:57,020 きこりは 約束を 守らなかったことを詫びました。 182 00:14:57,020 --> 00:14:58,970 私は うぐいすの化身です。 183 00:14:58,970 --> 00:15:01,690 よい人に 会ったと思ったのですが→ 184 00:15:01,690 --> 00:15:04,590 それは 私の思い違いでした。 185 00:15:04,590 --> 00:15:07,190 すまぬことをした。 186 00:15:09,510 --> 00:15:11,520 これで お別れです。 187 00:15:11,520 --> 00:15:14,200 私は うぐいすの里へ戻ります。 188 00:15:14,200 --> 00:15:17,070 さようなら。 189 00:15:17,070 --> 00:15:19,140 すると 広い部屋は→ 190 00:15:19,140 --> 00:15:22,010 大きな屋敷とともに 霧のように消え失せ→ 191 00:15:22,010 --> 00:15:26,480 きこりは 山の中の 野原に立っていました。 192 00:15:26,480 --> 00:15:29,520 うぐいすの 悲しい さえずりだけが→ 193 00:15:29,520 --> 00:15:32,220 響いたということです。 194 00:15:32,220 --> 00:15:34,320 (うぐいすの鳴き声) 195 00:15:44,360 --> 00:15:48,240 昔むかし ある商人の家に→ 196 00:15:48,240 --> 00:15:51,700 奉公したばかりの 小僧さんがおりました。 197 00:15:51,700 --> 00:15:53,680 ある日のことです。 198 00:15:53,680 --> 00:15:56,120 旦那さんのところに 文が届いた。 199 00:15:56,120 --> 00:16:00,120 文に目を通した旦那さん その場で返事を書いた。 200 00:16:02,860 --> 00:16:07,030 この文をな 西町の平林という家に→ 201 00:16:07,030 --> 00:16:11,130 届けてきておくれ。 へぇ。 202 00:16:11,130 --> 00:16:13,840 宛名も書いておいた。 203 00:16:13,840 --> 00:16:16,220 へぇ~。 204 00:16:16,220 --> 00:16:20,140 よいな 平林の家じゃぞ! へい! 205 00:16:20,140 --> 00:16:24,350 小僧さんは 文を持って店を飛び出した。 206 00:16:24,350 --> 00:16:26,360 何しろ 初めてのおつかい。 207 00:16:26,360 --> 00:16:28,480 小僧さんは 名前を忘れぬように→ 208 00:16:28,480 --> 00:16:31,520 口の中で繰り返しながら 道を急いだ。 209 00:16:31,520 --> 00:16:35,360 平林さんだったな。 よ~し 平林 平林…。 210 00:16:35,360 --> 00:16:40,280 平林 平林… 平林 平林…。 211 00:16:40,280 --> 00:16:42,150 これは 平柳殿。 212 00:16:42,150 --> 00:16:44,150 高林殿ではないか。 213 00:16:44,150 --> 00:16:48,370 平柳 高林… 平柳 高林…。 214 00:16:48,370 --> 00:16:50,300 えぇ ようかん。 215 00:16:50,300 --> 00:16:53,360 青八木の ようかんは いかが? 青八木のようかん。 216 00:16:53,360 --> 00:16:56,840 青八木 青八木…。 どうどうどう どうどうどう。 217 00:16:56,840 --> 00:16:59,360 ヒヒ~ン ヒヒ~ン! 218 00:16:59,360 --> 00:17:02,530 あおるな あおるな! ああっ! 219 00:17:02,530 --> 00:17:04,490 あおるな あおるな…。 220 00:17:04,490 --> 00:17:07,690 小僧さん つぶやきながら 西町に向かう。 221 00:17:07,690 --> 00:17:10,880 どうやら 訪ねる家の近くに着いたので→ 222 00:17:10,880 --> 00:17:14,230 地元の人に訪ねてみることにした。 223 00:17:14,230 --> 00:17:18,680 すみません ここらに あおるなさんの家はありますか? 224 00:17:18,680 --> 00:17:23,810 あおるな? そんな家は知らねえな。 225 00:17:23,810 --> 00:17:27,360 ギー ギー。 226 00:17:27,360 --> 00:17:30,360 あぁ~ あっ! 227 00:17:30,360 --> 00:17:33,150 そん時になって ようやく小僧さんは→ 228 00:17:33,150 --> 00:17:37,700 訪ねる家の名前を 忘れてしまったことに気がついた。 229 00:17:37,700 --> 00:17:40,490 その文を届けるんだべ? 230 00:17:40,490 --> 00:17:42,690 宛名が書いてあるでねえか。 231 00:17:42,690 --> 00:17:45,560 おら 字が読めねえんで…。 232 00:17:45,560 --> 00:17:47,830 何て書いてあります? 233 00:17:47,830 --> 00:17:50,870 う~ん。 234 00:17:50,870 --> 00:17:53,850 おらも読めねえんだ。 あらら…。 235 00:17:53,850 --> 00:17:56,870 他の人に聞いてみてけろ。 236 00:17:56,870 --> 00:18:01,510 小僧さんは 字が読める人を探して また歩き始めた。 237 00:18:01,510 --> 00:18:04,480 そうか 宛名を 読んでもらえればいいんだ。 238 00:18:04,480 --> 00:18:08,200 いいことを教わったと小僧さん とある店の前にやってくる。 239 00:18:08,200 --> 00:18:10,150 あのぅ…。 240 00:18:10,150 --> 00:18:12,870 この宛名の家を 探してるんですが→ 241 00:18:12,870 --> 00:18:15,040 何と読むんでございましょうか? 242 00:18:15,040 --> 00:18:17,160 ああ これか。 243 00:18:17,160 --> 00:18:20,680 これは 平林だ。 ありがとうございます。 244 00:18:20,680 --> 00:18:25,150 平林 平林… 平林 平林…。 245 00:18:25,150 --> 00:18:29,240 あの… ここらに 平林さんの家はありませんか? 246 00:18:29,240 --> 00:18:33,310 平林? そんな家はないねぇ。 247 00:18:33,310 --> 00:18:36,160 あの… この名前の お宅なんですが。 248 00:18:36,160 --> 00:18:40,180 ん? それは 平林じゃなくて 平林だよ。 249 00:18:40,180 --> 00:18:42,650 平林 平林 平林 平林…。 250 00:18:42,650 --> 00:18:46,520 あの ここらに 平林さんの家はありませんか? 251 00:18:46,520 --> 00:18:49,190 平林? 聞いたことねえなぁ。 252 00:18:49,190 --> 00:18:52,160 この家なんですが。 253 00:18:52,160 --> 00:18:54,200 あぁ こりゃ 平林だな。 254 00:18:54,200 --> 00:18:57,350 平林…。 あぁ 平林だ。 255 00:18:57,350 --> 00:19:00,250 初ガツオ~。 256 00:19:00,250 --> 00:19:03,700 さて 困ったのは小僧さんだ。 257 00:19:03,700 --> 00:19:06,160 平林に 平林に 平林…。 258 00:19:06,160 --> 00:19:09,690 いったい どれが 本当の名前なのか。 259 00:19:09,690 --> 00:19:11,810 はぁ…。 260 00:19:11,810 --> 00:19:14,220 しかたないなぁ。 261 00:19:14,220 --> 00:19:16,850 全部言えば どれか当たるだろう。 262 00:19:16,850 --> 00:19:19,320 平林 平林 平林。 263 00:19:19,320 --> 00:19:22,520 平林 平林 平林…。 264 00:19:22,520 --> 00:19:24,510 そのとき 木の上から→ 265 00:19:24,510 --> 00:19:27,530 ひらりと飛び降りたのは 1人の忍者。 266 00:19:27,530 --> 00:19:30,200 あの人が 平林さんかもしれねえ! 267 00:19:30,200 --> 00:19:32,650 もし! 平林さんじゃありませんか? 268 00:19:32,650 --> 00:19:34,690 ねえ! 平林さ~ん! 269 00:19:34,690 --> 00:19:37,470 ちょいと 平林さ~ん! 270 00:19:37,470 --> 00:19:39,520 は~っ! 271 00:19:39,520 --> 00:19:41,860 消えた! 272 00:19:41,860 --> 00:19:43,980 何を そんな急いでるんだろう。 273 00:19:43,980 --> 00:19:46,200 おかしな格好してたなぁ。 274 00:19:46,200 --> 00:19:50,650 「平林 平林 平林 平林 平林 平林」 275 00:19:50,650 --> 00:19:53,540 小僧さんが そう叫びながら 歩き始めると→ 276 00:19:53,540 --> 00:19:56,020 2人の遊び人風の男に会った。 277 00:19:56,020 --> 00:19:58,810 何の物売りなんだ お前は。 278 00:19:58,810 --> 00:20:01,700 いえ 物売りじゃないんで。 279 00:20:01,700 --> 00:20:05,500 平林 平林 平林を 売ってるのかと思ったぜ。 280 00:20:05,500 --> 00:20:09,690 そうじゃないんで。 この名前の家を訪ねているんです。 281 00:20:09,690 --> 00:20:12,040 こりゃ 平林じゃねえのか。 282 00:20:12,040 --> 00:20:14,180 いやいや そりゃ違うな。 283 00:20:14,180 --> 00:20:17,730 じゃあ なんと読む? 284 00:20:17,730 --> 00:20:21,330 そりゃ いっぱちじゅうの も~くもくだな。 285 00:20:27,910 --> 00:20:31,710 はは~ そういうことか。 それなら…。 286 00:20:37,530 --> 00:20:40,170 うん それもありだな! 287 00:20:40,170 --> 00:20:43,850 すみません。 もう一度 お願いします。 288 00:20:43,850 --> 00:20:47,240 なんとも 厄介な名前だなぁ。 289 00:20:47,240 --> 00:20:50,340 え~ 平林 平林 平林。 290 00:20:50,340 --> 00:20:54,570 平林に いっぱちじゅうのも~くもくと。 291 00:20:54,570 --> 00:20:57,370 ひとつと やっつで とっきっき。 ワン! 292 00:20:59,350 --> 00:21:02,240 全部 言ってれば どれか当たるだろう。 293 00:21:02,240 --> 00:21:04,990 ひとつ残らず 言いながら訪ね歩いた。 294 00:21:04,990 --> 00:21:07,700 あは こりゃ おもしろいなぁ。 295 00:21:07,700 --> 00:21:10,670 「平林 平林 平林」 296 00:21:10,670 --> 00:21:14,850 「平林に いっぱちじゅうのも~くもく!」 297 00:21:14,850 --> 00:21:17,740 「ひとつと やっつで とっきっき~!」 298 00:21:17,740 --> 00:21:20,980 「平林 平林 平林」 299 00:21:20,980 --> 00:21:25,180 「平林に いっぱちじゅうのも~くもく!」 300 00:21:25,180 --> 00:21:28,680 「ひとつと やっつで とっきっき~! 平林…」 301 00:21:28,680 --> 00:21:30,700 何をしている。 302 00:21:30,700 --> 00:21:34,210 とうとう ひとりの旦那さんが 小僧さんの前に立った。 303 00:21:34,210 --> 00:21:36,490 へぇ 家を探しております。 304 00:21:36,490 --> 00:21:39,030 そりゃ 何という家だ? 305 00:21:39,030 --> 00:21:42,030 だから 平林 平林 平林。 306 00:21:42,030 --> 00:21:45,180 平林に いっぱちじゅうのも~くもく。 307 00:21:45,180 --> 00:21:48,040 ひとつと やっつで とっきっき~…。 308 00:21:48,040 --> 00:21:51,340 の どれかです。 309 00:21:51,340 --> 00:21:55,530 ふ~ん… そのような長い名前の家は→ 310 00:21:55,530 --> 00:21:58,530 この辺りにはないぞ。 はぁ…。 311 00:21:58,530 --> 00:22:00,830 で 旦那のお名前は? 312 00:22:00,830 --> 00:22:04,990 平林だ。 あ~っ 惜しいなぁ! 313 00:22:04,990 --> 00:22:08,390 残念そうに片足で 地面を踏んだ。 314 00:22:08,390 --> 00:22:10,410 とうとう 小僧さんは→ 315 00:22:10,410 --> 00:22:12,810 平林殿に気づかずに 行ってしまった。 316 00:22:12,810 --> 00:22:14,900 ん? 317 00:22:14,900 --> 00:22:18,500 平林殿が 文を開いてみると そこには…。 318 00:22:24,510 --> 00:22:28,310 と 書いてあったそうな…。