1 00:01:43,330 --> 00:01:50,960 昔むかし 相模の国の足柄山に 金太郎という名前の 2 00:01:50,960 --> 00:01:57,970 それは それは 元気な男の子が 住んでおりました。 3 00:01:57,970 --> 00:02:04,600 (テッポウを打つ音) 4 00:02:04,600 --> 00:02:16,990 ~ 5 00:02:16,990 --> 00:02:18,990 あぁ~! 6 00:02:18,990 --> 00:02:21,950 (金太郎)うわ~! 7 00:02:21,950 --> 00:02:26,000 うわ~! 大変だ。 金太郎さんが やられた!! 8 00:02:26,000 --> 00:02:28,290 うわ~! サルさんも やられた!! 9 00:02:28,290 --> 00:02:32,330 大変だ 大変だ 大変だ! 10 00:02:32,330 --> 00:02:35,170 あっ! 11 00:02:35,170 --> 00:02:37,590 サルどん。 12 00:02:37,590 --> 00:02:40,630 イテテ… お尻が イテテ! 13 00:02:40,630 --> 00:02:45,680 ごめん。 サルどんが 木の上に いるとは思わなかったんだ。 14 00:02:45,680 --> 00:02:48,640 サルは 木の上にいるもんだ! 15 00:02:48,640 --> 00:02:52,650 あっ! そうだったね。 ごめん。 16 00:02:52,650 --> 00:02:55,940 (2人)アハハハハ! 17 00:02:55,940 --> 00:03:01,320 こうして 金太郎は 毎日 毎日 山へ行っては 18 00:03:01,320 --> 00:03:04,160 山の動物たちと遊んでいた。 19 00:03:04,160 --> 00:03:08,660 家に帰れば お母さんを大切にしていた。 20 00:03:08,660 --> 00:03:10,660 金太郎のお母さんは 21 00:03:10,660 --> 00:03:13,630 それは きれいな 優しいお母さんだった。 22 00:03:13,630 --> 00:03:18,300 なんでも 赤い龍の夢をみた夜に身ごもり 23 00:03:18,300 --> 00:03:20,300 金太郎が生まれたときには 24 00:03:20,300 --> 00:03:24,350 それは ものすごいカミナリが 鳴っていたんだと。 25 00:03:24,350 --> 00:03:28,350 それで 金太郎は カミナリの子だとも いわれていた。 26 00:03:31,600 --> 00:03:36,690 金太郎は 生まれて まもなく ちょろり七滝で産湯を使い 27 00:03:36,690 --> 00:03:39,990 お母さんに大切に育てられた。 28 00:03:42,700 --> 00:03:48,040 やがて 歩き出すと もう 家の周りで遊びだし 29 00:03:48,040 --> 00:03:52,330 元気で力持ちの男の子に 育っていった。 30 00:04:00,630 --> 00:04:02,930 やがて 大きくなると 31 00:04:02,930 --> 00:04:06,640 お母さんが作ってくれた 腹掛けをし 32 00:04:06,640 --> 00:04:11,640 家にあった まさかりを担いで 山へ遊びにいくようになった。 33 00:04:11,640 --> 00:04:13,640 あっ! 34 00:04:13,640 --> 00:04:16,310 痛いよ 痛いよ…。 35 00:04:16,310 --> 00:04:19,820 ウサギさん! どうしたんだ? 36 00:04:19,820 --> 00:04:24,320 乱暴者のクマどんに やられた…。 37 00:04:24,320 --> 00:04:30,290 ウサギさんの傷も浅かったので また 金太郎は山へ入っていった。 38 00:04:30,290 --> 00:04:33,290 痛いよ…。 痛い 痛いよ! 39 00:04:33,290 --> 00:04:36,750 タヌキどん! どうしたんだ? 40 00:04:36,750 --> 00:04:40,500 乱暴者のクマどんに やられた…。 41 00:04:40,500 --> 00:04:44,380 そして また 金太郎は山へ入っていった。 42 00:04:44,380 --> 00:04:48,760 あっ! (2人)痛いよ…。 痛い 痛いよ! 43 00:04:48,760 --> 00:04:51,810 シカさんに キツネどん! 44 00:04:51,810 --> 00:04:53,770 やっぱり クマどんに? 45 00:04:53,770 --> 00:04:56,850 (2人)そうじゃ 金太郎さん。 46 00:04:56,850 --> 00:05:00,860 う~ん… 乱暴者のクマどんめ! 47 00:05:05,950 --> 00:05:09,740 ガオー! ウオー! 48 00:05:14,080 --> 00:05:16,080 ガオー! 49 00:05:19,920 --> 00:05:22,460 オラと相撲で勝負だ。 50 00:05:22,460 --> 00:05:26,970 なんだと! わしと相撲をとろうってのか。 51 00:05:26,970 --> 00:05:31,060 オラが勝ったら もう 乱暴をやめるんだ! 52 00:05:31,060 --> 00:05:35,640 あぁ いいとも。 わしが負けるわけはない! 53 00:05:38,270 --> 00:05:42,480 よ~し 土俵はできた。 オラが行司じゃ。 54 00:05:42,480 --> 00:05:46,490 まだよ まだよ。 (ウサギ)金太郎さん 頑張って! 55 00:05:46,490 --> 00:05:48,450 負けるな金太郎どん。 56 00:05:48,450 --> 00:05:50,870 ハッケヨイ のこった! 57 00:05:50,870 --> 00:05:52,870 ガオー! 58 00:05:54,950 --> 00:05:57,870 のこった! (ウサギ)負けるな 金太郎さん! 59 00:05:57,870 --> 00:06:00,170 勝て勝て 金太郎どん! 60 00:06:00,170 --> 00:06:02,250 おい クマどんをやっつけろ! 61 00:06:02,250 --> 00:06:04,590 金太郎さん 頑張って! 62 00:06:04,590 --> 00:06:08,300 ん~ だぁ! 63 00:06:08,300 --> 00:06:10,840 わぁ~ やったやった! 64 00:06:10,840 --> 00:06:13,260 (ウサギ)金太郎さんは すごい! 65 00:06:13,260 --> 00:06:16,140 金太郎さんは 日本一の力持ちじゃ! 66 00:06:16,140 --> 00:06:18,810 金太郎どん わしの負けじゃ。 67 00:06:18,810 --> 00:06:22,310 もう乱暴はしないから 勘弁してくれろ。 68 00:06:22,310 --> 00:06:25,320 金太郎どんの勝ち~! 69 00:06:25,320 --> 00:06:29,110 こうして山一番の 乱暴者のクマどんとも→ 70 00:06:29,110 --> 00:06:31,870 仲よくなった金太郎は→ 71 00:06:31,870 --> 00:06:36,660 また みんなと一緒に 山の奥へと向かった。 72 00:06:45,960 --> 00:06:47,970 怖い! 73 00:06:50,380 --> 00:06:54,850 (みんな)うぅ~。 74 00:06:58,600 --> 00:07:01,940 強い風は すぐにおさまった。 75 00:07:01,940 --> 00:07:04,610 あっ 橋が! 76 00:07:04,610 --> 00:07:09,110 来るときに渡った丸木の橋が 強い風に飛ばされ→ 77 00:07:09,110 --> 00:07:11,950 崖の下に落ちていた。 78 00:07:11,950 --> 00:07:15,950 どうしよう 金太郎どん。 79 00:07:15,950 --> 00:07:18,660 これじゃ家に帰れないわ。 80 00:07:18,660 --> 00:07:22,290 おっとうや おっかあのところへ 帰れないよ。 81 00:07:22,290 --> 00:07:26,630 よし オラに任せておけ! 82 00:07:26,630 --> 00:07:29,800 そう言って金太郎は まさかりを置くと→ 83 00:07:29,800 --> 00:07:34,090 そばの大きな枯れかけた木に 向かった。 84 00:07:34,090 --> 00:07:38,310 えいっ! えいっ! うぅ~! 85 00:07:38,310 --> 00:07:41,980 (みんな)頑張れ頑張れ 金太郎さん! 86 00:07:41,980 --> 00:07:47,440 う~ん うぅ~! 87 00:07:47,440 --> 00:07:49,440 えいやっ! 88 00:07:53,110 --> 00:07:55,490 (みんな)ワーイ! やったやった! 89 00:07:55,490 --> 00:07:59,290 金太郎さんは 日本一の力持ちじゃ! 90 00:07:59,290 --> 00:08:03,250 こうして山の動物たちは 金太郎のおかげで→ 91 00:08:03,250 --> 00:08:06,340 無事 家に帰ることができた。 92 00:08:06,340 --> 00:08:10,460 そして家に帰ると お腹を空かせた金太郎は→ 93 00:08:10,460 --> 00:08:15,970 お母さんが作ってくれた 大きなおにぎりをいっぱい食べた。 94 00:08:18,310 --> 00:08:24,100 それからも 足柄山の動物と お母さんの愛情に囲まれ→ 95 00:08:24,100 --> 00:08:29,070 スクスクと大きく育ち のちに都へのぼって→ 96 00:08:29,070 --> 00:08:34,360 坂田の金時という とても強い お侍になったという。 97 00:08:41,350 --> 00:08:48,320 ~ 98 00:08:48,320 --> 00:08:57,450 昔むかし 山のふもとに 山師が伜と暮らしておりました。 99 00:08:57,450 --> 00:09:04,460 山師というのは 山で切った木を 売り買いする者のことです。 100 00:09:08,460 --> 00:09:10,340 あっ! 101 00:09:10,340 --> 00:09:13,430 山師は 朝早くから支度をして→ 102 00:09:13,430 --> 00:09:18,350 伜を供に仕事場のある山へと 出かけていった。 103 00:09:18,350 --> 00:09:20,480 早くしろ。 104 00:09:20,480 --> 00:10:01,470 ~ 105 00:10:07,400 --> 00:10:10,780 ねぇ お父 ふもとの原っぱで大騒ぎしてるよ。 106 00:10:10,780 --> 00:10:14,740 お殿様がイノシシ狩りをされとるんだ。 107 00:10:14,740 --> 00:10:20,030 イノシシ狩りか。 おもしろそう オイラも手伝いたいな。 108 00:10:20,030 --> 00:10:23,120 何を言っとる。 お殿様は お気が短い。 109 00:10:23,120 --> 00:10:25,710 子供といえど 邪魔すれば手打ちにされるわい。 110 00:10:33,130 --> 00:10:35,430 よし倒れるぞ 下がって。 111 00:10:42,930 --> 00:10:46,020 やった! さぁ 今日はここまでじゃ。 112 00:10:46,020 --> 00:10:48,060 あとは 葉枯らしをせんとな。 113 00:10:48,060 --> 00:10:50,060 葉枯らし? 114 00:10:50,060 --> 00:10:52,480 葉っぱが枯れるまで待つことだ。 115 00:10:52,480 --> 00:10:54,400 干すことで皮もはぎやすくなる。 116 00:10:54,400 --> 00:10:58,030 切り出すのはそれからさ。 ふ~ん。 117 00:10:58,030 --> 00:11:00,370 あ お父! 118 00:11:00,370 --> 00:11:02,700 お お殿様だ。 119 00:11:05,790 --> 00:11:08,080 は 早く頭を下げて。 120 00:11:16,050 --> 00:11:18,720 これ 男。 ははっ。 121 00:11:18,720 --> 00:11:23,770 お前が切ったこの木は 何という木だ。 122 00:11:23,770 --> 00:11:26,060 あ…。 お父。 123 00:11:26,060 --> 00:11:28,020 あ う…。 124 00:11:28,020 --> 00:11:32,520 お前 自分が切った木が 何の木かもわからんというのか。 125 00:11:32,520 --> 00:11:34,730 え~い 怪しいヤツだ! 126 00:11:34,730 --> 00:11:39,450 あ ゆ… ゆすでございます。 ゆすの木です。 127 00:11:39,450 --> 00:11:42,030 ふむ ゆすの木じゃな。 128 00:11:42,030 --> 00:11:45,120 しかと覚えおくぞ。 129 00:11:45,120 --> 00:11:47,120 それ! 130 00:11:52,380 --> 00:11:54,710 フーッ。 131 00:11:54,710 --> 00:11:57,090 お父。 132 00:11:57,090 --> 00:12:03,050 それから 3か月ほどが経った。 133 00:12:03,050 --> 00:12:18,450 ~ 134 00:12:18,450 --> 00:12:20,450 チッ。 135 00:12:23,370 --> 00:12:25,450 あ~っ! 136 00:12:25,450 --> 00:12:28,040 (2人)お殿様! 137 00:12:28,040 --> 00:12:30,420 うっ…。 138 00:12:30,420 --> 00:12:45,390 ~ 139 00:12:45,390 --> 00:12:49,020 お父 ようやく 葉枯らしが終わったね。 140 00:12:49,020 --> 00:12:52,440 ああ これでこの木も いいムクになる。 141 00:12:52,440 --> 00:12:55,440 次は このムクを 山から下ろさねばならん。 142 00:12:55,440 --> 00:12:57,360 また大仕事だぞ。 143 00:12:57,360 --> 00:12:59,740 オイラも手伝うよ お父。 あ! 144 00:12:59,740 --> 00:13:02,030 どうした? 誰か来るよ。 145 00:13:02,030 --> 00:13:05,740 お殿様だ! えっ? 146 00:13:05,740 --> 00:13:08,120 お父。 147 00:13:08,120 --> 00:13:10,120 とにかくお辞儀じゃ。 148 00:13:18,050 --> 00:13:21,420 これ男 この木は何という木じゃ。 149 00:13:21,420 --> 00:13:24,800 こ これは ムクでございます。 150 00:13:24,800 --> 00:13:30,810 ムクか… ん? たわけ! 151 00:13:33,770 --> 00:13:37,070 お前は以前 この木をゆすと申したではないか。 152 00:13:37,070 --> 00:13:40,070 クーッ! 余をたばかりおって! 153 00:13:40,070 --> 00:13:44,700 いやいや それは…。 154 00:13:44,700 --> 00:13:46,700 お前たち この男を捕らえよ。 155 00:13:46,700 --> 00:13:49,370 城の牢に放り込んでおくのだ。 156 00:13:49,370 --> 00:13:53,080 ははっ! 後日 打ち首といたす。 157 00:13:53,080 --> 00:13:57,090 お お父…。 158 00:13:57,090 --> 00:14:02,090 こうして男は 殿様に偽りをいった咎により→ 159 00:14:02,090 --> 00:14:05,090 死罪を申し渡された。 160 00:14:10,390 --> 00:14:12,810 お父…。 161 00:14:12,810 --> 00:14:15,440 最後に言い残すことはないか。 162 00:14:15,440 --> 00:14:19,730 伜に ひと言だけ…。 163 00:14:19,730 --> 00:14:24,110 ん いいだろう。 誰か この男の伜をここに呼べ。 164 00:14:24,110 --> 00:14:26,410 はっ。 165 00:14:26,410 --> 00:14:29,780 お父 お父! 166 00:14:29,780 --> 00:14:33,410 伜いいか よく聞け。 うん。 167 00:14:33,410 --> 00:14:36,420 これから先 一生 いかの干したものを 168 00:14:36,420 --> 00:14:39,090 するめと言うな。 わかったな? 169 00:14:39,090 --> 00:14:41,420 うむ。 170 00:14:41,420 --> 00:14:46,050 うん。 もう いかの干したものを するめとは言わないよ。 171 00:14:46,050 --> 00:14:50,760 いかの干したものを するめと…。 172 00:14:50,760 --> 00:14:55,390 《そうか! ゆすの木を枯らして ムクに…》 173 00:14:55,390 --> 00:15:00,440 打ち首は 取りやめじゃ。 その男 無罪放免とする。 174 00:15:00,440 --> 00:15:02,730 お父…。 175 00:15:02,730 --> 00:15:05,740 余が浅はかであった。 許せよ。 176 00:15:05,740 --> 00:15:08,410 (咳払い) 177 00:15:08,410 --> 00:15:11,080 よかった よかった。 178 00:15:11,080 --> 00:15:14,700 うう…。 お父…。 179 00:15:14,700 --> 00:15:20,750 《物には 形が変わると 名前も変わることがあるか》 180 00:15:20,750 --> 00:15:23,760 さてさて いかに物を知らなかったか 181 00:15:23,760 --> 00:15:26,300 と悟った殿様ですが 182 00:15:26,300 --> 00:15:31,430 それからは 学問に精進したということです。 183 00:15:43,010 --> 00:15:49,300 昔むかし あるところに 一人のおばあさんがおりました。 184 00:15:49,300 --> 00:15:52,350 おばあさんは 来る日も来る日も 185 00:15:52,350 --> 00:15:55,350 しかめ面ばかりしておりました。 186 00:15:55,350 --> 00:15:58,310 それというのも たった一人の伜が 187 00:15:58,310 --> 00:16:01,690 遠い町に 働きに 出てしまったからなのです。 188 00:16:01,690 --> 00:16:04,650 独り暮らしは心細かったし 189 00:16:04,650 --> 00:16:07,660 伜のことも心配でならない。 190 00:16:07,660 --> 00:16:10,700 だもんで つい泣きたくなってしまうのを 191 00:16:10,700 --> 00:16:15,210 気丈にこらえていたもので しかめ面になっていたのです。 192 00:16:18,630 --> 00:16:20,960 そんな ある日のこと。 193 00:16:20,960 --> 00:16:24,050 遠い町の伜から便りが届きました。 194 00:16:24,050 --> 00:16:26,430 けれども おばあさんは 195 00:16:26,430 --> 00:16:29,720 文字を知らないので 便りが読めません。 196 00:16:31,970 --> 00:16:35,060 そこで表に出ると 197 00:16:35,060 --> 00:16:38,060 誰か通らぬかと待っていました。 198 00:16:41,980 --> 00:16:46,700 そこへ やってきたのは 旅のお侍さん。 199 00:16:46,700 --> 00:16:49,780 もし お侍様。 なんじゃ? 200 00:16:49,780 --> 00:16:53,160 この便りを 読んでもらえませんじゃろか? 201 00:16:53,160 --> 00:16:55,290 なに? 202 00:16:55,290 --> 00:16:59,750 わしは 文字を知らねえので 伜の便りが読めませんのじゃ。 203 00:17:01,670 --> 00:17:04,340 すまんが 先を急ぐ。 204 00:17:04,340 --> 00:17:08,720 お侍さんは すたすたと 歩きだしてしまいました。 205 00:17:08,720 --> 00:17:12,510 けれども 他に通る人もいない。 206 00:17:12,510 --> 00:17:15,640 お急ぎのところ 申し訳ないだが 207 00:17:15,640 --> 00:17:20,020 読んでもらえんじゃろうか? 208 00:17:20,020 --> 00:17:23,070 どうか この便りを 読んでくだせぇ。 209 00:17:23,070 --> 00:17:25,530 うるさい ばあさんだな。 210 00:17:25,530 --> 00:17:29,530 伜が どんな便りをよこしたか 知りたくて 知りたくて 211 00:17:29,530 --> 00:17:32,990 しかたねえのでごぜぇます。 212 00:17:32,990 --> 00:17:38,120 お侍さんは 辺りを見回したが 他に通る人もいない。 213 00:17:38,120 --> 00:17:42,040 しかたなく おばあさんから 便りを受け取ると 214 00:17:42,040 --> 00:17:45,050 はらりと開いた。 215 00:17:50,050 --> 00:17:53,050 う… う…。 216 00:17:55,680 --> 00:17:57,970 うっ… ううっ…。 217 00:18:02,020 --> 00:18:06,650 お侍さんは 便りを見たまま 泣きだしてしまいました。 218 00:18:06,650 --> 00:18:09,990 おばあさんは それは もう びっくり。 219 00:18:09,990 --> 00:18:13,160 どうして 伜の便りを読んだお侍さんが→ 220 00:18:13,160 --> 00:18:15,330 泣きださなきゃいかんのじゃろ? 221 00:18:15,330 --> 00:18:18,540 もしや 伜に悪いことでも 起きたのじゃろうか? 222 00:18:18,540 --> 00:18:22,460 おばあさんはもう 心配で心配でたまらない。 223 00:18:22,460 --> 00:18:26,630 お侍様 どげなことが 書いてあったのじゃろうか? 224 00:18:26,630 --> 00:18:30,670 もしや 伜に変わったことでも あったのじゃろうか? 225 00:18:30,670 --> 00:18:32,680 あぁ~っ! 226 00:18:32,680 --> 00:18:34,680 どんなことがありましょうとも→ 227 00:18:34,680 --> 00:18:37,970 決して びっくりして 泣きはしませんけに。 228 00:18:37,970 --> 00:18:39,980 早う 教えてくだされ。 229 00:18:39,980 --> 00:18:45,400 そうは言っても お侍さんは やっぱり 泣き続けるばかりです。 230 00:18:45,400 --> 00:18:49,990 お侍さんが 人の伜の便りに あんなに涙を流すなんて…。 231 00:18:49,990 --> 00:18:54,570 これはもう 伜に何か悪いことが 起きたに違いない。 232 00:18:54,570 --> 00:18:56,620 そう思うと おばあさんまで…。 233 00:18:56,620 --> 00:19:01,200 うぅ… うわ~ん! 234 00:19:01,200 --> 00:19:04,250 ずっとこらえていたものが あふれだし→ 235 00:19:04,250 --> 00:19:07,460 堰を切ったように 泣きだしてしまいました。 236 00:19:07,460 --> 00:19:12,010 お侍とおばあさんが2人して 道ばたで泣いていると→ 237 00:19:12,010 --> 00:19:14,630 焙烙売りがやってきました。 238 00:19:14,630 --> 00:19:20,060 焙烙というのは 土で焼いた鍋のことで→ 239 00:19:20,060 --> 00:19:24,020 豆を煎ったり 芋を焼いたりするものです。 240 00:19:24,020 --> 00:19:31,990 (泣き声) 241 00:19:31,990 --> 00:19:37,120 焙烙売りは何を思ったか いきなり泣きだしてしまいました。 242 00:19:37,120 --> 00:19:43,710 (泣き声) 243 00:19:43,710 --> 00:19:47,380 そこへ通りかかったのが 魚売りの男。 244 00:19:47,380 --> 00:19:51,340 もし 3人揃って 何を泣いておるのじゃ? 245 00:19:51,340 --> 00:19:54,630 (泣き声) 246 00:19:54,630 --> 00:19:56,840 いったい どうしたのじゃ? 247 00:19:56,840 --> 00:19:59,300 焙烙売りの言うことには→ 248 00:19:59,300 --> 00:20:02,350 去年の今ごろ 銭儲けをしようと→ 249 00:20:02,350 --> 00:20:05,730 たんと焙烙を仕入れ 売りに出たそうです。 250 00:20:05,730 --> 00:20:08,230 ところが ちょうどこの場所で…。 251 00:20:12,980 --> 00:20:16,700 仕入れた焙烙を みんな割ってしまったのです。 252 00:20:16,700 --> 00:20:21,830 それで 泣くに泣かれぬ1年を 過ごすことになったのです。 253 00:20:21,830 --> 00:20:26,000 けど 貧乏ひまなし 泣く間もなくて→ 254 00:20:26,000 --> 00:20:29,630 今日まで延ばしていたら ここで泣いている2人を見て→ 255 00:20:29,630 --> 00:20:31,840 あのときのことを思い出し→ 256 00:20:31,840 --> 00:20:34,840 どうにも 涙がこぼれてしようがない。 257 00:20:34,840 --> 00:20:39,640 それで 思い切り 泣くことにしたのだそうです。 258 00:20:39,640 --> 00:20:43,680 そうか。 なんなら 泣きたいだけ泣いたらええわ。 259 00:20:43,680 --> 00:20:47,810 それで おばあさんは 何を泣いておるんじゃ? 260 00:20:47,810 --> 00:20:51,480 わしはなぁ… 文字を知らぬで 伜の便りを→ 261 00:20:51,480 --> 00:20:54,320 お侍さんに 読んでもらおうとしたのじゃ。 262 00:20:54,320 --> 00:20:56,860 そしたら 便りを見たお侍さんが→ 263 00:20:56,860 --> 00:21:00,410 何も言わずに ただ 泣いてばかりおる。 264 00:21:00,410 --> 00:21:02,490 これはきっと 伜の身に→ 265 00:21:02,490 --> 00:21:06,200 何かよくないことが起こったに 違いないと思うて→ 266 00:21:06,200 --> 00:21:09,170 それで泣いておるのじゃ。 そうか。 267 00:21:09,170 --> 00:21:11,460 そりゃ 心配でならねえな。 268 00:21:11,460 --> 00:21:16,170 もし お侍さん 便りには なんて書いてあったんです? 269 00:21:16,170 --> 00:21:20,090 教えてくださいまし。 270 00:21:20,090 --> 00:21:22,100 拙者は…。 271 00:21:27,520 --> 00:21:30,400 わからん。 (2人)は? 272 00:21:30,400 --> 00:21:32,690 拙者 恥ずかしながら→ 273 00:21:32,690 --> 00:21:37,570 幼い頃より 書物に接することを とんと しなかったのだ。 274 00:21:37,570 --> 00:21:41,950 それで? そのため いまだに文字を知らず→ 275 00:21:41,950 --> 00:21:45,700 この便りを読むことができん。 えぇっ!? 276 00:21:45,700 --> 00:21:50,080 その恥ずかしさと悔しさで 泣いておるのじゃ。 277 00:21:50,080 --> 00:21:54,090 くぅ~っ! 278 00:21:58,760 --> 00:22:03,140 伜からの便りには なんと書いてあったかというと→ 279 00:22:03,140 --> 00:22:08,060 それはな… 町で元気に働いていること→ 280 00:22:08,060 --> 00:22:13,020 じきに土産を持って 帰ってくると そう書いてあったそうです。 281 00:22:13,020 --> 00:22:17,980 やがて 便りに書いてあったとおり 伜は たくさんの土産と→ 282 00:22:17,980 --> 00:22:20,990 稼いだ銭を持って 帰ってきました。 283 00:22:20,990 --> 00:22:25,160 それからというもの おばあさん 来る日も来る日も→ 284 00:22:25,160 --> 00:22:29,000 笑い顔で 暮らしていたということです。