1 00:01:46,200 --> 00:01:49,550 昔むかし あるところに→ 2 00:01:49,550 --> 00:01:53,240 それはそれは 流れの速い川があった。 3 00:01:53,240 --> 00:01:57,230 ふだん ちょっとでも雨が降ると→ 4 00:01:57,230 --> 00:01:59,960 山からドーッと水が流れ込み→ 5 00:01:59,960 --> 00:02:02,260 それは強い流れになった。 6 00:02:05,200 --> 00:02:07,540 だもんで 何度橋を架けても→ 7 00:02:07,540 --> 00:02:10,210 あっという間に 流されてしまうのだ。 8 00:02:10,210 --> 00:02:16,600 あ~ ここに橋があったら どれだけ便利なことじゃろう。 9 00:02:16,600 --> 00:02:18,960 川向こうと行き来もできぬ。 10 00:02:18,960 --> 00:02:20,960 まったく不便でならぬ。 11 00:02:24,250 --> 00:02:27,240 村の者たちは ほとほと困り果てていた。 12 00:02:27,240 --> 00:02:30,930 そこで 村の者みんなで 相談した挙句に→ 13 00:02:30,930 --> 00:02:35,910 よい大工に強い流れにも流されぬ 橋を造ってもらうことにした。 14 00:02:35,910 --> 00:02:39,550 選ばれたのは 町でもいちばんの大工。 15 00:02:39,550 --> 00:02:42,990 二つ返事で引き受けて 早速 村にやって来た。 16 00:02:42,990 --> 00:02:46,240 雨が降ってきた。 17 00:02:46,240 --> 00:02:49,610 すると どんどん水かさが増えてきて→ 18 00:02:49,610 --> 00:02:52,920 波があちこちで渦を巻き→ 19 00:02:52,920 --> 00:02:56,270 淵の岩に どうどうと ぶち当たってくる。 20 00:02:56,270 --> 00:03:02,930 この強い流れじゃ橋桁なんぞ いっぺんに流されてしまうぞ。 21 00:03:02,930 --> 00:03:06,260 大工は 強い流れを目の当たりにして→ 22 00:03:06,260 --> 00:03:08,560 いよいよ心配になってきた。 23 00:03:12,580 --> 00:03:14,600 《どうしたら この強い流れにも流されねえ→ 24 00:03:14,600 --> 00:03:16,900 橋が造れるだろうか》 25 00:03:26,300 --> 00:03:28,900 お~っ! 26 00:03:34,870 --> 00:03:36,910 うわ~っ! 27 00:03:36,910 --> 00:03:40,930 何を考えておったのじゃ。 28 00:03:40,930 --> 00:03:47,550 は 橋を この川に 橋を架けなければならんのじゃ。 29 00:03:47,550 --> 00:03:52,620 フ-ン ほんなら俺が架けてやろうか。 えっ? 30 00:03:52,620 --> 00:03:57,620 その代わり 橋ができたら お前の目ん玉もらうぞ。 31 00:04:05,570 --> 00:04:07,570 あ~ 驚いた。 32 00:04:10,980 --> 00:04:13,910 けんども勝手なことを言うもんだ。 33 00:04:13,910 --> 00:04:16,600 橋を架けるのは わしじゃというに。 34 00:04:16,600 --> 00:04:22,550 その日 大工は そのまま家に帰った。 35 00:04:22,550 --> 00:04:25,910 けれども鬼の言ったことが どうにも気になる。 36 00:04:25,910 --> 00:04:30,910 そこで 大工は日が昇ると 川へ行ってみた。 37 00:04:30,910 --> 00:04:33,250 お~っ! 38 00:04:33,250 --> 00:04:38,250 なんとそこには 橋が半分だけ 出来上がっているではないか。 39 00:04:38,250 --> 00:04:43,290 それも橋桁のない上手に 材木を組み合わせた橋だった。 40 00:04:43,290 --> 00:04:45,590 これは…。 41 00:04:54,590 --> 00:04:56,560 出た! 42 00:04:56,560 --> 00:04:59,590 橋半分造っといたぞ。 43 00:04:59,590 --> 00:05:02,240 さぁ 早く目ん玉よこせ。 44 00:05:02,240 --> 00:05:04,650 ま 待ってくれ。 45 00:05:04,650 --> 00:05:07,250 まだ半分しか 出来上がってないではないか。 46 00:05:07,250 --> 00:05:11,570 そうか。 では明日 橋が出来上がるでな。 47 00:05:11,570 --> 00:05:13,920 そのときは目ん玉もらうぞ。 48 00:05:13,920 --> 00:05:17,580 わし目ん玉取られたら 仕事ができんようになる。 49 00:05:17,580 --> 00:05:20,550 そうじゃな。 俺の名前がわかったら→ 50 00:05:20,550 --> 00:05:23,600 お前の目ん玉もらうのやめよう。 51 00:05:23,600 --> 00:05:25,650 な 名前? 52 00:05:25,650 --> 00:05:28,920 わからんときは お前の目ん玉もらうぞ。 53 00:05:28,920 --> 00:05:34,910 ア アイツ 俺の目ん玉 本気で取るつもりじゃ。 54 00:05:34,910 --> 00:05:39,260 大工は 恐ろしくなって タッタ タッタと走り出した。 55 00:05:39,260 --> 00:05:43,250 大工は鬼に見つからない ところまで行こうと→ 56 00:05:43,250 --> 00:05:46,560 ズンズンズンズン山のなかに入って行った。 57 00:05:46,560 --> 00:05:50,240 鬼の名前なんぞ わかるわけねえし…。 58 00:05:50,240 --> 00:05:53,230 できねえことを言って 目ん玉を取るつもりなんだ。 59 00:05:53,230 --> 00:05:56,580 もう逃げるっきゃないと 夜通し 山を越え 60 00:05:56,580 --> 00:05:59,600 奥へ奥へと逃げていった。 61 00:05:59,600 --> 00:06:02,200 すると どこからか 62 00:06:02,200 --> 00:06:05,260 か細い声が聞こえてきた。 63 00:06:05,260 --> 00:06:07,590 (女の子の歌声) 64 00:06:07,590 --> 00:06:09,930 うん? なんだ? 65 00:06:09,930 --> 00:06:12,430 立ち止まって耳を澄ますと 66 00:06:12,430 --> 00:06:16,200 どうやら女の子の歌う 手鞠歌のようだ。 67 00:06:16,200 --> 00:06:20,660 こんな山の中で 誰が…。 68 00:06:20,660 --> 00:06:25,540 「はやく鬼六 まなく玉」 69 00:06:25,540 --> 00:06:30,950 「もってこえばえいな」 70 00:06:30,950 --> 00:06:35,220 「はやく鬼六 まなく玉」 71 00:06:35,220 --> 00:06:38,590 大工は 歌いながら鞠をつく 女の子を見た。 72 00:06:38,590 --> 00:06:40,660 すると…。 73 00:06:40,660 --> 00:06:43,900 女の子の頭に 小さな角が生えていた。 74 00:06:43,900 --> 00:06:47,300 玉? まなく… 玉? まなく…。 75 00:06:47,300 --> 00:06:51,540 まな… 目ん玉のことなのか? 76 00:06:51,540 --> 00:06:54,260 「鬼六 まなく玉」 77 00:06:54,260 --> 00:06:56,960 「もってこえばえいな」 78 00:06:56,960 --> 00:07:00,560 怖くなった大工は 慌てて その場から逃げ去った。 79 00:07:02,530 --> 00:07:06,990 大工は 鬼に見つからないところへ 逃げたつもりだった。 80 00:07:06,990 --> 00:07:11,220 が なんと元の川に戻っていた。 81 00:07:11,220 --> 00:07:16,820 そして そこには橋桁のない 弓形をした橋が出来上がっていた。 82 00:07:21,230 --> 00:07:24,300 お前の目ん玉 もらうぞ。 83 00:07:24,300 --> 00:07:26,250 ま… 待ってくれ。 84 00:07:26,250 --> 00:07:28,260 うん? 85 00:07:28,260 --> 00:07:30,630 お前さんの名前を当てれば 86 00:07:30,630 --> 00:07:33,250 おいらの目ん玉は いらんと言ったな? 87 00:07:33,250 --> 00:07:36,900 ああ 言った 言った。 当ててみれ。 88 00:07:36,900 --> 00:07:40,920 う~ん… お前の名前は 鬼太郎! 89 00:07:40,920 --> 00:07:42,900 フン 違うわい。 90 00:07:42,900 --> 00:07:46,210 鬼次郎! 鬼三郎! 91 00:07:46,210 --> 00:07:48,540 違う。 鬼さん こっち! 92 00:07:48,540 --> 00:07:50,900 ふざけるな。 鬼嫁。 93 00:07:50,900 --> 00:07:52,910 それも違う。 94 00:07:52,910 --> 00:07:55,580 う~ん…。 95 00:07:55,580 --> 00:07:59,870 「はやく鬼六 まなく玉」 96 00:07:59,870 --> 00:08:04,910 「もってこえばえいな」 97 00:08:04,910 --> 00:08:07,360 もしかして…。 98 00:08:07,360 --> 00:08:09,760 わかった! 鬼六だ!! 99 00:08:09,760 --> 00:08:14,670 ゲゲッ!? なんで わかったのじゃ! 100 00:08:14,670 --> 00:08:18,870 名前を言い当てられた鬼は ブクブクと口から泡を吹き 101 00:08:18,870 --> 00:08:23,910 全身 泡にくるまれると 光りだして消えてしまった。 102 00:08:23,910 --> 00:08:28,950 鬼の造った橋は どんな大水にも 流されることがなかった。 103 00:08:28,950 --> 00:08:34,550 それにしても 鬼のやつ いい腕をしておったものじゃのう。 104 00:08:44,010 --> 00:08:47,430 昔むかし ある山奥で 105 00:08:47,430 --> 00:08:50,730 腹を空かせた熊と狐が出会った。 106 00:08:55,030 --> 00:08:58,450 (お腹が鳴る音) 107 00:08:58,450 --> 00:09:01,390 近頃 ろくな食い物がないのう。 108 00:09:01,390 --> 00:09:03,390 まったくだ…。 109 00:09:03,390 --> 00:09:06,040 あっ… オラに いい考えがあるんだが 110 00:09:06,040 --> 00:09:08,530 いっちょ 相談に乗ってくれねえか? 111 00:09:08,530 --> 00:09:12,370 そこで狐は 自分の思いつきを 語って聞かせた。 112 00:09:12,370 --> 00:09:17,790 それは 土地を耕して 畑を作ろうということだった。 113 00:09:17,790 --> 00:09:22,040 手始めに 熊は 頑丈な爪で荒れ地を耕し 114 00:09:22,040 --> 00:09:25,060 その間に 狐は里へ下りて 115 00:09:25,060 --> 00:09:28,030 いい種を 手に入れてくることになった。 116 00:09:28,030 --> 00:09:33,140 熊は 木の根株や石を掘り 畑らしくしていった。 117 00:09:33,140 --> 00:09:36,740 やがて 狐が 種を持ち帰り 畑にまいた。 118 00:09:40,780 --> 00:09:43,700 熊どんよ この種は じきに大きくなる。 119 00:09:43,700 --> 00:09:45,700 あとで ケンカにならぬように→ 120 00:09:45,700 --> 00:09:49,090 誰が どっちを取るか 今から決めておこうじゃないか。 121 00:09:49,090 --> 00:09:52,040 ええよ。 そんなら わしは→ 122 00:09:52,040 --> 00:09:56,030 土の下になるものをもらうが いいか? 123 00:09:56,030 --> 00:10:00,620 と 狐は先に決めてしまった。 仕方がないので 熊は→ 124 00:10:00,620 --> 00:10:03,420 土の上になるものを 取ることにした。 125 00:10:05,350 --> 00:10:09,370 実りの秋になって 熊と狐が畑に行ってみると→ 126 00:10:09,370 --> 00:10:11,880 いちめんの青葉になっていた。 127 00:10:11,880 --> 00:10:15,510 熊どんは 土から上のものを 取りなせぇ。 128 00:10:15,510 --> 00:10:20,550 熊どんは爪が強いんじゃから ついでに土を掘り返してくれ。 129 00:10:20,550 --> 00:10:23,050 いい葉っぱになった。 130 00:10:23,050 --> 00:10:26,270 熊は夢中で 畑を掘り起こし→ 131 00:10:26,270 --> 00:10:30,070 青葉だけを抱えて 自分の穴へ帰っていった。 132 00:10:32,530 --> 00:10:34,720 狐は 熊が見えなくなると→ 133 00:10:34,720 --> 00:10:37,390 熊に掘り返してもらった 土の中から→ 134 00:10:37,390 --> 00:10:43,380 よく太った大根を抜いて 1本ずつ 自分の穴へ運んでいった。 135 00:10:43,380 --> 00:10:48,480 次の日 熊が持ち帰った葉は 早くもしおれていた。 136 00:10:50,720 --> 00:10:55,170 まずいのう。 昨日はあんなに うまいと思ったのに…。 137 00:10:55,170 --> 00:10:59,560 そして 狐がどうしているのか 気になって 出かけていった。 138 00:10:59,560 --> 00:11:01,540 あっ! 139 00:11:01,540 --> 00:11:04,350 奥には 白い大根が たくさん積み上げられており→ 140 00:11:04,350 --> 00:11:07,550 狐はそれを うまそうにかじっていた。 141 00:11:07,550 --> 00:11:09,530 それは なんだい? 142 00:11:09,530 --> 00:11:13,020 これは 大根の根っこで 熊どんが持ってったのは→ 143 00:11:13,020 --> 00:11:15,890 葉っぱのほうじゃ。 葉っぱなんぞ 2日も経ちゃ→ 144 00:11:15,890 --> 00:11:18,390 食えんようになるのは 当たり前じゃ。 145 00:11:26,450 --> 00:11:29,700 狐どん その大根 一つくれんか? 146 00:11:29,700 --> 00:11:32,760 初めからの約束じゃから やれん。 147 00:11:32,760 --> 00:11:36,360 熊はがっかりして 帰っていった。 148 00:11:46,000 --> 00:11:49,510 次の年 狐が 熊の穴を訪ねてきた。 149 00:11:49,510 --> 00:11:53,230 熊どん もういっぺん 何か作ってみようじゃねえか。 150 00:11:53,230 --> 00:11:55,200 よし やろう。 151 00:11:55,200 --> 00:11:58,700 今度も 熊が畑をならし 狐が種をまいた。 152 00:12:03,390 --> 00:12:07,360 今度は オラは 土から下のものをもらうぞ。 153 00:12:07,360 --> 00:12:12,560 そんなら 今度は わしは 土から上のものをもらおう。 154 00:12:12,560 --> 00:12:16,690 しばらくすると 畑はまた 青葉に覆われ→ 155 00:12:16,690 --> 00:12:21,140 葉の間から なにやら 赤い実が覗いていた。 156 00:12:21,140 --> 00:12:24,560 狐は 土から上のものを みな 持って帰り→ 157 00:12:24,560 --> 00:12:26,510 穴の中に蓄えた。 158 00:12:26,510 --> 00:12:30,230 土の中にあったのは ちっぽけな根っこばかりだった。 159 00:12:30,230 --> 00:12:35,140 熊は 狐がどうしているのだろうと やってきた。 160 00:12:35,140 --> 00:12:39,090 狐は 穴の奥に きれいに敷いた葉の上に→ 161 00:12:39,090 --> 00:12:42,090 イチゴを並べて うまそうに食べていた。 162 00:12:44,030 --> 00:12:47,070 狐どん 少し分けてくれんか? 163 00:12:47,070 --> 00:12:49,880 約束は約束じゃ。 やれないな。 164 00:12:49,880 --> 00:12:52,890 お前とはもう 口もききとうない! 165 00:12:52,890 --> 00:12:55,690 熊はとうとう怒って 帰っていった。 166 00:12:59,710 --> 00:13:02,350 それから 幾日か過ぎて…。 167 00:13:02,350 --> 00:13:04,550 熊どん まぁ怒りなさんな。 168 00:13:04,550 --> 00:13:07,000 ハナっから 約束してたことなんじゃから。 169 00:13:07,000 --> 00:13:12,390 狐は罪滅ぼしに うまい話を 持ってきたのだと言って→ 170 00:13:12,390 --> 00:13:15,260 熊を笹やぶへ誘いだした。 171 00:13:15,260 --> 00:13:19,360 あれを見なされ。 172 00:13:19,360 --> 00:13:22,960 それは 大きなミツバチの巣だった。 173 00:13:26,450 --> 00:13:29,010 お前にみんなやろうと思うてのう。 174 00:13:29,010 --> 00:13:32,060 なるほど。 こりゃ わしの大好物じゃ。 175 00:13:32,060 --> 00:13:34,110 わ~っ! 176 00:13:34,110 --> 00:13:37,050 怒ったミツバチが 熊めがけて ブンブン飛び出してきた。 177 00:13:37,050 --> 00:13:41,040 払いのけても 払いのけても ハチは熊を刺した。 178 00:13:41,040 --> 00:13:43,020 狐は まんまと→ 179 00:13:43,020 --> 00:13:45,720 蜜の詰まったハチの巣を 持っていってしまった。 180 00:13:45,720 --> 00:13:47,710 もう許さんぞ! 181 00:13:47,710 --> 00:13:49,730 体中 ハチに刺された熊は→ 182 00:13:49,730 --> 00:13:53,420 狐にお仕置きをしてやろうと 決めたのだった。 183 00:13:53,420 --> 00:13:57,420 明くる年 秋の終わりの頃でした。 184 00:14:00,610 --> 00:14:03,210 あれ? ない… ないな。 185 00:14:05,540 --> 00:14:07,580 はぁ…。 186 00:14:07,580 --> 00:14:11,500 狐が腹を空かせていると 熊が やってきた。 187 00:14:11,500 --> 00:14:15,550 熊は 近ごろ 大根よりも イチゴよりも 蜂蜜よりも 188 00:14:15,550 --> 00:14:19,040 うまいものを食ったという話を 狐に聞かせた。 189 00:14:19,040 --> 00:14:22,060 それほど うまかったものとは なんじゃ? 190 00:14:22,060 --> 00:14:24,680 それは 生きた馬だ。 191 00:14:24,680 --> 00:14:26,710 う… 馬!? 192 00:14:26,710 --> 00:14:31,340 山の向こうに 大川が流れておって そのほとりに原っぱがある。 193 00:14:31,340 --> 00:14:33,870 そこに 馬がたくさん おるんじゃ。 194 00:14:33,870 --> 00:14:37,860 馬が寝ている隙に 後ろ脚に力いっぱい食いつけば 195 00:14:37,860 --> 00:14:40,910 馬は弱って倒れると言った。 196 00:14:40,910 --> 00:14:45,220 そのとき 狐どんのシッポを 馬のシッポに結んでおけば 197 00:14:45,220 --> 00:14:48,190 暴れて 逃げられることもない。 198 00:14:48,190 --> 00:14:50,720 狐は喜んで 帰っていった。 199 00:14:50,720 --> 00:14:53,730 狐は 早速 大川の原っぱへ行き 200 00:14:53,730 --> 00:14:57,730 たくさんの馬のなかから 寝ているのを見つけ 201 00:14:57,730 --> 00:14:59,760 忍び寄って シッポを結んだ。 202 00:14:59,760 --> 00:15:02,880 ガブッ! (馬のいななき) 203 00:15:02,880 --> 00:15:04,890 馬は 大声でいななくと 204 00:15:04,890 --> 00:15:09,460 弱るどころか 力いっぱい 原っぱを駆け回った。 205 00:15:09,460 --> 00:15:12,090 いや~! いや~! 206 00:15:12,090 --> 00:15:15,090 あぁ~! 207 00:15:21,040 --> 00:15:24,520 しばらくして 熊は 狐に出会った。 208 00:15:24,520 --> 00:15:29,090 相変わらず どちらも腹を空かせておったが 209 00:15:29,090 --> 00:15:36,090 狐は もう 熊に いじわるをしようとはしなかった。 210 00:15:47,090 --> 00:15:58,090 昔むかし ある山寺に 和尚さんと小僧さんがおりました。 211 00:16:07,010 --> 00:16:10,060 小僧さんは いつも 和尚さんが…。 212 00:16:10,060 --> 00:16:13,350 なんでも 正直が大切じゃ 213 00:16:13,350 --> 00:16:19,050 と 教えるもので なんでも 正直にしようと心がけていました。 214 00:16:19,050 --> 00:16:21,520 正直 正直。 215 00:16:21,520 --> 00:16:24,560 なんでも 正直が大切じゃ。 216 00:16:24,560 --> 00:16:28,060 正直 正直! 正直 正直! 217 00:16:28,060 --> 00:16:33,380 ある日のこと 和尚さんの留守に 魚屋さんがやってきた。 218 00:16:33,380 --> 00:16:37,390 これ 和尚さんに渡してくれ! 219 00:16:37,390 --> 00:16:39,370 ん? 220 00:16:39,370 --> 00:16:44,060 小僧さんは なんじゃろう と そっと フタを開けてみた。 221 00:16:44,060 --> 00:16:48,550 すると 鮎の焼いたのが5匹 並んでいた。 222 00:16:48,550 --> 00:16:51,050 う~ん…。 223 00:16:51,050 --> 00:16:53,440 お坊様というのは 224 00:16:53,440 --> 00:16:56,740 生臭な食べ物は 遠ざけるものじゃ 225 00:17:00,040 --> 00:17:06,070 和尚様は仏様に仕える身。 こんなもん 食べて 大丈夫かい? 226 00:17:06,070 --> 00:17:09,100 そこに 和尚さんが帰ってきた。 227 00:17:09,100 --> 00:17:12,000 和尚さん これは なんでございましょう? 228 00:17:12,000 --> 00:17:14,540 あぁ~! 229 00:17:14,540 --> 00:17:17,510 こ… これはな…。 230 00:17:17,510 --> 00:17:20,550 これは お剃刀だ。 231 00:17:20,550 --> 00:17:23,050 お剃刀? 232 00:17:23,050 --> 00:17:28,020 あぁ お前が手を切るといかんで わしが持ってやろう。 233 00:17:28,020 --> 00:17:34,680 そう言うて桶を持つと いそいそと 奥へ引っ込んでしまった。 234 00:17:34,680 --> 00:17:41,100 そこで 小僧さんが そっと覗いてみると…。 235 00:17:41,100 --> 00:17:43,720 ふ~ん…。 236 00:17:43,720 --> 00:17:46,390 あぁ うまい うまい! 237 00:17:46,390 --> 00:17:49,390 と 言うて むしゃむしゃ食べていた。 238 00:17:51,390 --> 00:17:55,380 それから また 幾日か経った ある日のこと。 239 00:17:55,380 --> 00:17:59,390 和尚さんは 遠くまで 用事で行くことになった。 240 00:17:59,390 --> 00:18:02,370 和尚さんは 馬で パカパカと。 241 00:18:02,370 --> 00:18:06,360 小僧さんは 和尚さんが持たせた 傘を1本 持って 242 00:18:06,360 --> 00:18:08,460 ショコショコ ついていった。 243 00:18:14,570 --> 00:18:16,840 小僧 川じゃぞ。 244 00:18:16,840 --> 00:18:21,420 そう言って和尚さんは 馬でパシャパシャと川を渡り始めた。 245 00:18:21,420 --> 00:18:27,420 小僧さんも 着物を尻にからげて パチャパチャと川の中に入っていった。 246 00:18:30,430 --> 00:18:32,420 あれ~。 247 00:18:32,420 --> 00:18:35,720 澄んだ川に 鮎がたくさん泳いでいた。 248 00:18:41,390 --> 00:18:45,880 和尚さん 和尚さん お剃刀が いっぱい泳いでます。 249 00:18:45,880 --> 00:18:47,880 足が切れたらどうしましょう。 250 00:18:47,880 --> 00:18:49,890 言われた和尚さんは…。 251 00:18:49,890 --> 00:18:53,370 おっ! 足を切られんようにして→ 252 00:18:53,370 --> 00:18:57,190 何があっても黙ってついてこ~い。 253 00:18:57,190 --> 00:19:00,400 へ~い。 254 00:19:00,400 --> 00:19:03,070 和尚さん パカパカ行ってしまうので→ 255 00:19:03,070 --> 00:19:06,170 小僧さんもショコショコついていった。 256 00:19:10,890 --> 00:19:14,360 しばらく行くと また川があった。 257 00:19:14,360 --> 00:19:16,350 小僧 川じゃぞ。 258 00:19:16,350 --> 00:19:20,050 和尚さん バシャバシャ川に入っていくから→ 259 00:19:20,050 --> 00:19:24,000 小僧さんもチャバチャバと入って行った。 260 00:19:24,000 --> 00:19:29,560 すると和尚さんの たばこ入れが 川の真ん中でフワッと落ちた。 261 00:19:29,560 --> 00:19:31,880 あぁ! 262 00:19:31,880 --> 00:19:34,750 何があっても 黙ってついてこい! 263 00:19:34,750 --> 00:19:38,250 …と言われているから黙っていた。 264 00:19:41,040 --> 00:19:44,060 それから パカパカ ショコショコ行ったところで→ 265 00:19:44,060 --> 00:19:46,070 くたびれてきた。 266 00:19:46,070 --> 00:19:48,670 小僧 ここらで一服するか。 267 00:19:50,730 --> 00:19:53,720 ん? んっ!? おっ んっ!? 268 00:19:53,720 --> 00:19:58,050 小僧 たばこ入れがどうしたか 知らんか? 269 00:19:58,050 --> 00:20:03,710 はぁ 2つ目の川を渡るときに フワーッと落ちて流れていきました。 270 00:20:03,710 --> 00:20:06,580 な… なんで拾わんのじゃ!? 271 00:20:06,580 --> 00:20:09,630 はぁ… 和尚様に 拾ってさしあげようと→ 272 00:20:09,630 --> 00:20:13,390 思いましたけど 初めの川を渡るときに→ 273 00:20:13,390 --> 00:20:16,040 何が起こっても 黙ってついてこいって→ 274 00:20:16,040 --> 00:20:20,560 ひどく叱られたで それで黙ってついてきました。 275 00:20:20,560 --> 00:20:23,700 バカ! もうこれから 馬から落ちたもんがあったら→ 276 00:20:23,700 --> 00:20:26,730 何でも拾え! 277 00:20:26,730 --> 00:20:30,420 そしてまた パカパカ ショコショコ行くと→ 278 00:20:30,420 --> 00:20:33,420 まあ! 279 00:20:35,390 --> 00:20:38,910 馬が歩きながら糞を落としていく。 280 00:20:38,910 --> 00:20:41,010 それを見た小僧さん。 281 00:20:41,010 --> 00:20:44,770 馬から落ちたもんがあったら 何でも拾え! 282 00:20:44,770 --> 00:20:49,770 …と言われたのを思い出して 拾わないかんと思うた。 283 00:20:53,010 --> 00:20:56,080 そこで開いた傘を逆にすると→ 284 00:20:56,080 --> 00:20:59,680 馬の後ろからバサバサと受けたのじゃ。 285 00:21:02,020 --> 00:21:05,040 じきに傘がいっぱいになった。 286 00:21:05,040 --> 00:21:07,110 和尚さん 和尚さん! 287 00:21:07,110 --> 00:21:10,010 馬から落ちたもんが こんなにあります! 288 00:21:10,010 --> 00:21:12,340 何じゃ? 289 00:21:12,340 --> 00:21:14,900 ん? 290 00:21:14,900 --> 00:21:18,200 見た和尚さん たちまち顔をしかめてしもうた。 291 00:21:18,200 --> 00:21:20,700 馬の糞ではないか! 292 00:21:20,700 --> 00:21:22,720 はぁ 馬から落ちたもんは→ 293 00:21:22,720 --> 00:21:25,890 なんでも拾えと おっしゃいましたもんで。 294 00:21:25,890 --> 00:21:28,860 アホ! バカ正直にもほどがあるわ! 295 00:21:28,860 --> 00:21:34,050 そんなもん川へ行ってきれいに 全部洗い流せ! 296 00:21:34,050 --> 00:21:36,050 へ~い。 297 00:21:36,050 --> 00:21:40,050 そこで小僧さん さっきの川に戻って行った。 298 00:21:42,560 --> 00:21:46,860 そして小僧さんは 傘に溜まった 糞をきれいに落とし→ 299 00:21:46,860 --> 00:21:50,430 傘も きれいに洗った。 300 00:21:50,430 --> 00:21:53,730 それで和尚さんに 追いつこうとしたが…。 301 00:21:55,670 --> 00:21:59,840 川へ行って きれいに全部洗い流せ! 302 00:21:59,840 --> 00:22:04,550 じっと傘を見ていた小僧さん。 303 00:22:04,550 --> 00:22:07,530 こりゃあ きれいに 全部洗い流さねばと→ 304 00:22:07,530 --> 00:22:11,030 川に傘を投げ込んでしまった。 305 00:22:24,380 --> 00:22:27,040 よし。 306 00:22:27,040 --> 00:22:32,840 和尚さんと小僧さんと 正直者は どっちなんだろうね。