1 00:01:43,590 --> 00:01:50,190 昔むかしあるところに そりゃあ 怠け者の息子がおりました。 2 00:01:52,620 --> 00:01:55,550 コイツ 飯だけは 人の倍も食うくせに→ 3 00:01:55,550 --> 00:01:59,550 あとは ごろんと寝てばかり。 4 00:02:01,560 --> 00:02:06,160 来る日も来る日も食っちゃ寝 食っちゃ寝の暮らしだった。 5 00:02:09,220 --> 00:02:12,520 (寝太郎)はぁ~! 6 00:02:12,520 --> 00:02:16,910 ハァー 貧しいのは前からじゃから しようがないけれど→ 7 00:02:16,910 --> 00:02:20,510 少しは 働いてくれんかのう。 8 00:02:20,510 --> 00:02:22,550 そのうちな。 9 00:02:22,550 --> 00:02:25,600 村の若い者は みんなよく働いておるし。 10 00:02:25,600 --> 00:02:29,170 なかには 嫁を もろうた者もおるというのに。 11 00:02:29,170 --> 00:02:32,510 おっかさんも ほとほと困り果てていた。 12 00:02:32,510 --> 00:02:35,510 ありゃ 三年寝太郎じゃ。 13 00:02:35,510 --> 00:02:38,500 そりゃええ 三年寝太郎じゃ。 14 00:02:38,500 --> 00:02:40,880 (みんな)アハハハッ! 15 00:02:40,880 --> 00:02:43,890 三年寝太郎というのは 三年経っても→ 16 00:02:43,890 --> 00:02:46,560 まだ起きぬというくらいの意味。 17 00:02:46,560 --> 00:02:51,060 ある年のこと 村がひどい干ばつに襲われた。 18 00:02:51,060 --> 00:02:53,880 何日も何日も雨が降らず→ 19 00:02:53,880 --> 00:02:57,520 田も干上がり 畑にやる水も事足りぬありさま。 20 00:02:57,520 --> 00:03:01,550 このままでは 田も畑も枯れてしまう。 21 00:03:01,550 --> 00:03:04,210 そもそも この村は 水利が悪いでのう。 22 00:03:04,210 --> 00:03:06,880 去年も おととしも 水が足らんかったが→ 23 00:03:06,880 --> 00:03:08,830 今年は一段とひどい! 24 00:03:08,830 --> 00:03:12,200 峰の向こうの水が引けたらなぁ。 25 00:03:12,200 --> 00:03:17,500 ああ あの水がこっちに来たら 村は ずいぶん助かるだろうに。 26 00:03:21,520 --> 00:03:25,210 若い者は総出で 深い井戸を掘ってみたが→ 27 00:03:25,210 --> 00:03:27,600 やっぱり 水は出なかった。 28 00:03:27,600 --> 00:03:30,850 山の向こうの川の水をみんなで→ 29 00:03:30,850 --> 00:03:33,550 汲みに行くくらいが精一杯だった。 30 00:03:33,550 --> 00:03:36,920 村が そんなありさまでも 寝太郎は やっぱり→ 31 00:03:36,920 --> 00:03:39,530 ごろり食っちゃ寝 食っちゃ寝の暮らしぶり。 32 00:03:39,530 --> 00:03:43,610 村の者は とうとう おっかさんのことまで→ 33 00:03:43,610 --> 00:03:45,610 相手にしなくなった。 34 00:03:49,550 --> 00:03:54,710 雨は降らず とうとう村の者は 飲む水まで事欠くようになった。 35 00:03:54,710 --> 00:03:58,880 そこで長者どんは 村の者に お触れを出した。 36 00:03:58,880 --> 00:04:01,250 誰でもいい。 神頼みでも何でも→ 37 00:04:01,250 --> 00:04:04,880 この日照りと干ばつを 何とかしてくれる者がおれば→ 38 00:04:04,880 --> 00:04:07,850 わしんとこの娘を嫁にやろう。 39 00:04:07,850 --> 00:04:09,940 長者どんの娘といえば→ 40 00:04:09,940 --> 00:04:14,840 村いちばんの器量よしと 評判のそれはきれいな娘だった。 41 00:04:14,840 --> 00:04:18,560 その上 気立てもよく働き者で 嫁にするのは→ 42 00:04:18,560 --> 00:04:22,570 どんな幸せ者だろうという 噂になっていた。 43 00:04:22,570 --> 00:04:26,220 神頼みでも 何でもええとおっしゃったぞ。 44 00:04:26,220 --> 00:04:28,170 雨を降らせばええんじゃ。 45 00:04:28,170 --> 00:04:30,610 水を引けばええんじゃ。 46 00:04:30,610 --> 00:04:33,900 ある者は 水の神に願をかけ。 47 00:04:33,900 --> 00:04:36,530 ある者は 雨乞いを始めた。 48 00:04:36,530 --> 00:04:40,570 川の水が引けぬかと 山に入る者があれば→ 49 00:04:40,570 --> 00:04:45,190 たくさんの水を運べぬかと 工夫する者もあった。 50 00:04:45,190 --> 00:04:47,610 けれども どれも うまくいきそうにない。 51 00:04:47,610 --> 00:04:52,510 それでも寝太郎は やっぱり 食っちゃ寝 食っちゃ寝。 52 00:04:52,510 --> 00:04:56,550 お前も村のために 働いたら どうじゃ。 53 00:04:56,550 --> 00:05:03,530 おっかあ すまねえが 飯を一升ばかり炊いてくれねえか。 54 00:05:03,530 --> 00:05:06,850 働きもせんで 飯ばかり食うて。 55 00:05:06,850 --> 00:05:08,880 おっかさんは そう思ったが→ 56 00:05:08,880 --> 00:05:12,270 息子の言うことだからと 一升の飯を炊いてやった。 57 00:05:12,270 --> 00:05:16,520 息子は一升の飯をペロリと平らげた。 58 00:05:16,520 --> 00:05:18,820 ちょっくら出かけてくるべ。 59 00:05:26,180 --> 00:05:28,220 ん? 60 00:05:28,220 --> 00:05:30,500 寝太郎が起き出したとよ。 61 00:05:30,500 --> 00:05:32,500 山に入ったというぞ。 62 00:05:32,500 --> 00:05:34,510 何をするつもりなんじゃ。 63 00:05:34,510 --> 00:05:36,610 見に行こうか。 見に行こう。 64 00:05:36,610 --> 00:05:42,110 そんなことを気にする様子もなく 寝太郎は山奥へ入った。 65 00:05:48,540 --> 00:05:52,840 やがて 山のずっと奥の うんと高いところまでやって来た。 66 00:05:56,180 --> 00:05:58,550 足場の悪い谷に下りると→ 67 00:05:58,550 --> 00:06:00,880 品定めでもするように→ 68 00:06:00,880 --> 00:06:05,270 あの岩 この岩と触ってみたり 押してみたりしている。 69 00:06:05,270 --> 00:06:07,220 何をするつもりなんじゃ? 70 00:06:07,220 --> 00:06:10,690 この谷川は 峰の向こうの川に つながっておるが…。 71 00:06:10,690 --> 00:06:15,790 ああ この川の水が村に引けたら と言い合っておった川じゃ。 72 00:06:21,550 --> 00:06:24,990 やがて 寝太郎が すっくと立ったのは 73 00:06:24,990 --> 00:06:28,490 谷の上にそびえる大岩の前だった。 74 00:06:37,720 --> 00:06:39,770 あれ? 押しはじめたぞ。 75 00:06:39,770 --> 00:06:42,190 あの大岩が 一人で動くわけあるまい。 76 00:06:42,190 --> 00:06:45,790 それに 大岩が動いたとて どうなるんじゃ? 77 00:06:48,550 --> 00:06:51,920 むむっ…。 78 00:06:51,920 --> 00:06:55,340 両腕だけでなく 顔も腰も大岩に押しつけて 79 00:06:55,340 --> 00:06:58,390 力いっぱい押した。 80 00:06:58,390 --> 00:07:00,330 やっぱり 動くわけないわ。 81 00:07:00,330 --> 00:07:02,760 しょせん 寝太郎のやることじゃ。 82 00:07:02,760 --> 00:07:05,010 大間違いの勘違いじゃ。 83 00:07:05,010 --> 00:07:07,500 帰ろうか。 帰ろう 帰ろう。 84 00:07:07,500 --> 00:07:11,970 むっ…。 85 00:07:11,970 --> 00:07:14,910 顔を真っ赤にした寝太郎が 86 00:07:14,910 --> 00:07:18,010 渾身の力を込めて 大岩を押した。 87 00:07:20,510 --> 00:07:23,900 あっ 動いた! なんつう バカ力じゃ! 88 00:07:23,900 --> 00:07:26,220 お~っ! う~っ。 89 00:07:26,220 --> 00:07:28,840 あ~っ!! 90 00:07:28,840 --> 00:07:31,560 うお~っ! 91 00:07:31,560 --> 00:07:33,530 あっ 大岩が…。 92 00:07:33,530 --> 00:07:35,530 落ちた! 93 00:07:49,560 --> 00:07:53,510 せき止められた川の水が 岸を越えて溢れだした。 94 00:07:53,510 --> 00:07:58,570 そして 新たな川筋が 村へ向かって流れていった。 95 00:07:58,570 --> 00:08:02,640 水は たちまち田を潤していった。 96 00:08:02,640 --> 00:08:04,890 おお! 水じゃ 水じゃ!! 97 00:08:04,890 --> 00:08:08,580 ありがたい! 神の恵みじゃ! そうでねえ。 98 00:08:08,580 --> 00:08:10,910 寝太郎のおかげじゃ。 99 00:08:10,910 --> 00:08:13,880 わしら 見てたで! すごいの なんの!! 100 00:08:13,880 --> 00:08:18,880 戻った男たちの話で 村人も寝太郎の働きを知った。 101 00:08:20,890 --> 00:08:23,890 おかげで 村は どんな日照りになっても 102 00:08:23,890 --> 00:08:26,860 水に困ることはなくなった。 103 00:08:26,860 --> 00:08:30,280 寝太郎は 長者どんの娘を嫁にもらい 104 00:08:30,280 --> 00:08:35,580 おっかさんを大事にしながら 幸せに暮らしたという。 105 00:08:45,860 --> 00:08:48,840 昔むかし あるところに 106 00:08:48,840 --> 00:08:52,510 嘘ばかりついている婆さんがいた。 107 00:08:52,510 --> 00:08:55,560 その上 ケチだったので 108 00:08:55,560 --> 00:08:58,660 隣近所からは煙たがられていた。 109 00:09:01,540 --> 00:09:04,540 婆さんには 3人のせがれがあったが 110 00:09:04,540 --> 00:09:07,540 婆さんとは仲が悪かった。 111 00:09:10,980 --> 00:09:14,400 父親は 早くに亡くなったので 112 00:09:14,400 --> 00:09:18,900 子供たちの中で 覚えておる者は誰もいなかった。 113 00:09:27,200 --> 00:09:29,530 おっかあ。 114 00:09:29,530 --> 00:09:32,350 どうした? おっかあらしくもない。 115 00:09:32,350 --> 00:09:34,840 それは 長男だった。 116 00:09:34,840 --> 00:09:36,860 まあ 座れ。 117 00:09:36,860 --> 00:09:40,160 近くに来たので 寄ってみたんじゃ。 118 00:09:40,160 --> 00:09:43,150 お前に お父とおっかあが 119 00:09:43,150 --> 00:09:46,180 夫婦になったときの話をしてやる。 120 00:09:46,180 --> 00:09:48,570 ふ~ん。 121 00:09:48,570 --> 00:09:52,170 あれは わしが まだ娘の頃じゃ。 122 00:09:54,810 --> 00:09:57,830 婆さんは 大きな庄屋の一人娘で 123 00:09:57,830 --> 00:10:00,860 町でも評判の器量よし。 124 00:10:00,860 --> 00:10:04,850 近くの村から 評判を聞きつけた若い衆が 125 00:10:04,850 --> 00:10:08,240 見にくるほどだった。 126 00:10:08,240 --> 00:10:12,240 みんなは この娘と夫婦になりたがった。 127 00:10:15,850 --> 00:10:18,360 だが 娘の親父は 128 00:10:18,360 --> 00:10:22,840 よほどの長者でもないかぎり 相手にしなかった。 129 00:10:22,840 --> 00:10:26,910 娘も いつも ちやほやされていたので→ 130 00:10:26,910 --> 00:10:30,630 嫁に行く気もなかった。 だが あるとき→ 131 00:10:30,630 --> 00:10:38,200 旅の商人に この娘が一目惚れしてしまった。 132 00:10:38,200 --> 00:10:42,300 どこの馬の骨とも知れぬ男を 婿にすることはならん! 133 00:10:42,300 --> 00:10:45,470 お前は必ず 将来 不幸になる! 134 00:10:45,470 --> 00:10:49,530 おっ父 私は後悔しません! 135 00:10:49,530 --> 00:10:52,150 とうとう 家を出て 男と一緒に→ 136 00:10:52,150 --> 00:10:56,350 ほったて小屋で 暮らすようになった。 137 00:10:56,350 --> 00:10:59,470 まったく。 おら 帰るわ。 138 00:10:59,470 --> 00:11:02,840 数日経ったある日 次男がやってきた。 139 00:11:02,840 --> 00:11:06,160 おっ母 おるか? あぁ おるで。 140 00:11:06,160 --> 00:11:08,200 こっちゃ来て 座れ。 141 00:11:08,200 --> 00:11:12,850 せがれ3人育てるのに 苦労した話をしてやる。 142 00:11:12,850 --> 00:11:17,240 夫婦になった娘は 貧しくても 好きな男と暮らし→ 143 00:11:17,240 --> 00:11:21,180 男の子を3人も授かり 幸せだった。 144 00:11:21,180 --> 00:11:26,830 だが 亭主に先立たれ 暮らしは 急に苦しくなった。 145 00:11:26,830 --> 00:11:30,190 それを風の便りで聞いた 庄屋の親父は→ 146 00:11:30,190 --> 00:11:35,540 娘を連れ戻そうとしたが 決して帰ろうとはしなかった。 147 00:11:35,540 --> 00:11:40,810 子供を近所に預けて のら仕事の手伝いに行ったり→ 148 00:11:40,810 --> 00:11:46,520 魚を売り歩いたり 石切場で力仕事をして→ 149 00:11:46,520 --> 00:11:50,420 朝から晩まで 働きづめに働いた。 150 00:11:50,420 --> 00:11:55,160 稼いだ金は 一文も無駄遣いせず コツコツと貯めた。 151 00:11:55,160 --> 00:11:57,230 3人のせがれは→ 152 00:11:57,230 --> 00:11:59,830 婆さんのおかげで 一人前になった。 153 00:12:03,470 --> 00:12:05,820 また 得意の大嘘をついておる。 154 00:12:05,820 --> 00:12:09,910 そうだな。 嘘ばかりじゃ。 (2人)ハハハハハ! 155 00:12:09,910 --> 00:12:12,530 婆さんのところに 三男が来た。 156 00:12:12,530 --> 00:12:15,860 おっ母。 なんじゃ? びっくりする。 157 00:12:15,860 --> 00:12:18,800 上の兄さたちは おっ母の言ってることは→ 158 00:12:18,800 --> 00:12:21,140 みんな 嘘だと笑っとるぞ。 159 00:12:21,140 --> 00:12:24,490 わしは 嘘つきだの ケチだの 言われてきたが→ 160 00:12:24,490 --> 00:12:28,960 切り詰めた金は ちゃ~んと みんなのために蓄えてあるんじゃ。 161 00:12:28,960 --> 00:12:31,650 そうか。 162 00:12:31,650 --> 00:12:36,870 いつもの大嘘に決まっとる。 (2人)アハハハ! 163 00:12:36,870 --> 00:12:40,340 その婆さんも 年老いて 病気がちになり→ 164 00:12:40,340 --> 00:12:43,140 床に ふせっていることが 多くなった。 165 00:12:43,140 --> 00:12:48,310 婆さんは3人のせがれを 枕元に呼び…。 166 00:12:48,310 --> 00:12:50,520 わしがいなくなったらな→ 167 00:12:50,520 --> 00:12:53,900 床の下の瓶に 金をいっぱい詰めて→ 168 00:12:53,900 --> 00:12:57,370 埋めといたから それを出して みんなで使え。 169 00:12:57,370 --> 00:13:00,830 やっぱり 金を 貯めこんでいたんじゃな。 170 00:13:00,830 --> 00:13:03,200 嘘に決まっておろうが。 171 00:13:03,200 --> 00:13:06,130 いや 老い先短いおっ母が→ 172 00:13:06,130 --> 00:13:10,900 いよいよ 最期というときになって 本当の話をしとるのかもしれん。 173 00:13:10,900 --> 00:13:13,900 (トンビの鳴き声) 174 00:13:16,540 --> 00:13:19,540 おっ母 肩もんでやる。 175 00:13:21,510 --> 00:13:23,980 おっ母 大根 持ってきたぞ。 176 00:13:23,980 --> 00:13:26,000 お前たち 近ごろ→ 177 00:13:26,000 --> 00:13:30,160 やたら訪ねてくるようになったが なんか あったか? 178 00:13:30,160 --> 00:13:34,180 だが 一番上の兄は 以前と変わらず→ 179 00:13:34,180 --> 00:13:38,750 ときどき 婆さんを訪ねて 話を聞いてやるだけだった。 180 00:13:38,750 --> 00:13:42,840 ある日 弟2人が 上の兄を呼び出して…。 181 00:13:42,840 --> 00:13:47,640 おっ母が危ないというときに 兄貴は親孝行もせんで…。 182 00:13:47,640 --> 00:13:50,840 なんじゃ! 金が出てきても 分けてやらんぞ! 183 00:13:50,840 --> 00:13:52,860 何っ!? 184 00:13:52,860 --> 00:13:55,230 せがれたちが 言い争っている間に→ 185 00:13:55,230 --> 00:13:58,330 婆さんは眠るように 逝ってしまった。 186 00:14:02,520 --> 00:14:05,510 兄貴よ 床下の瓶は どうなった? 187 00:14:05,510 --> 00:14:08,810 おら 瓶のことが気になって 夜も眠れん。 188 00:14:08,810 --> 00:14:10,830 早く出してみんか。 189 00:14:10,830 --> 00:14:14,130 そんなら あしたの朝 ばあさんの家に集まるか。 190 00:14:17,520 --> 00:14:20,520 さぁ 嘘か まことか見てみるか。 191 00:14:20,520 --> 00:14:22,840 次男が床下に下りた。 192 00:14:22,840 --> 00:14:26,300 おっ! これが目印に違いない。 193 00:14:26,300 --> 00:14:32,890 土を掘り始め やがて 大きな瓶を見つけて 掘り出した。 194 00:14:32,890 --> 00:14:35,940 見ろ! 本当にあったろうが。 195 00:14:35,940 --> 00:14:39,810 心配せんでも 金は分けてやるからな。 196 00:14:39,810 --> 00:14:42,660 よいしょ! よっと…。 197 00:14:42,660 --> 00:14:44,700 あ… あれ? 198 00:14:44,700 --> 00:14:46,920 なんか 入っちょる。 199 00:14:46,920 --> 00:14:50,420 掴みだしたのは 1枚の紙きれ。 200 00:14:55,570 --> 00:14:57,870 なんちゅう 親じゃ! 201 00:14:59,850 --> 00:15:03,800 おっ母は 筋金入りの大嘘つきじゃな。 202 00:15:03,800 --> 00:15:06,370 アハハハハ! 203 00:15:06,370 --> 00:15:11,910 これを見せたくて わざわざ 床下に瓶を埋めたんじゃな。 204 00:15:11,910 --> 00:15:13,910 くぅ~っ! 205 00:15:15,840 --> 00:15:18,300 この紙 おらがもらってもいいか? 206 00:15:18,300 --> 00:15:22,850 (2人)譲ってやるわい。 (みんな)ハハハハハ。 207 00:15:22,850 --> 00:15:26,360 3人は大笑いしながら おっ母を懐かしんだ。 208 00:15:26,360 --> 00:15:29,440 最後の嘘のおかげで→ 209 00:15:29,440 --> 00:15:34,940 3人は助け合って 仲よく暮らしたということです。 210 00:15:41,310 --> 00:15:46,370 昔むかし ある村に 爺さんと婆さんが おりました。 211 00:15:46,370 --> 00:15:50,800 この2人 若い頃から評判の働き者。 212 00:15:50,800 --> 00:15:53,860 毎日 働きづめに働いて 213 00:15:53,860 --> 00:15:59,810 気がつくと 夫婦の間に 子供がおりませんでした。 214 00:15:59,810 --> 00:16:03,850 よその家では そろそろ 子供も大きくなって 215 00:16:03,850 --> 00:16:05,800 隠居ができるというのに 216 00:16:05,800 --> 00:16:09,840 自分たちは のら仕事を手伝う子もなく 217 00:16:09,840 --> 00:16:13,890 このまま 動けなくなるまで 働き続けるのかと思うと 218 00:16:13,890 --> 00:16:15,810 恐ろしくなった。 219 00:16:15,810 --> 00:16:18,230 今からでも遅くはない。 220 00:16:18,230 --> 00:16:23,730 子供が欲しいと思い 毎日 村のお宮に願をかけにいった。 221 00:16:26,160 --> 00:16:29,160 その甲斐があったのか しばらくして 222 00:16:29,160 --> 00:16:32,180 婆さんに子が授かった。 223 00:16:32,180 --> 00:16:36,870 村人は たいそう驚いたが とにかく めでたいことだと 224 00:16:36,870 --> 00:16:42,160 婆さんの子供が生まれるのを 楽しみにしていた。 225 00:16:42,160 --> 00:16:44,660 十月十日 経って。 226 00:16:44,660 --> 00:16:49,180 元気に生まれたのは 玉のような男の子だった。 227 00:16:49,180 --> 00:16:53,670 村長をはじめ 村の衆も 我がことのように喜んだ。 228 00:16:53,670 --> 00:16:57,350 さて この天からの授かりものに ふさわしい 229 00:16:57,350 --> 00:16:59,310 よい名前をつけなければならない。 230 00:16:59,310 --> 00:17:05,460 おらは 太郎でも源太でも 普通の名前でいいんじゃが。 231 00:17:05,460 --> 00:17:11,330 村人は よい名前をつけてやりたい という一心で 知恵をしぼった。 232 00:17:11,330 --> 00:17:17,630 爺様! 獅子太郎という名は どうじゃ? 強そうじゃろう? 233 00:17:20,190 --> 00:17:23,560 そうか 確かに強そうだ。 234 00:17:23,560 --> 00:17:26,180 お前は 今日から 獅子太郎じゃ。 235 00:17:26,180 --> 00:17:31,020 ところが この話を聞きつけた 隣の爺さんが やってきて…。 236 00:17:31,020 --> 00:17:34,470 獅子太郎 確かに 立派な名前じゃ。 237 00:17:34,470 --> 00:17:37,510 だが 名前負けということもある。 238 00:17:37,510 --> 00:17:39,800 赤ん坊のうちはいいが 長じて 239 00:17:39,800 --> 00:17:44,850 獅子のような男にならねえときは なんとする? 240 00:17:44,850 --> 00:17:52,660 そう言われて しかたなしに 別の名前を考えることにした。 241 00:17:52,660 --> 00:17:58,180 次の日 お寺の和尚さんが通りかかった。 242 00:17:58,180 --> 00:18:01,170 《学のある 和尚さんのことだから 243 00:18:01,170 --> 00:18:04,170 いい知恵が きっと あるに ちげぇねえ》 244 00:18:04,170 --> 00:18:08,240 どんな名前がふさわしいか 尋ねてみた。 245 00:18:08,240 --> 00:18:11,140 う~む それは難題じゃ。 246 00:18:11,140 --> 00:18:14,200 確かに 名は体を表すといって 247 00:18:14,200 --> 00:18:17,500 名前と本人は 分かちがたいものだが 248 00:18:17,500 --> 00:18:19,520 将来のことを案じて 249 00:18:19,520 --> 00:18:23,840 立派すぎる名前はつけぬ というのは いかがなものか。 250 00:18:23,840 --> 00:18:28,260 爺さん どうしていいか わからなくなっちゃった。 251 00:18:28,260 --> 00:18:32,010 和尚様 頭を抱えておった。 252 00:18:32,010 --> 00:18:34,020 無理もない。 253 00:18:34,020 --> 00:18:37,990 和尚さんは 亡くなった人に 名前をつけるのが仕事じゃ。 254 00:18:37,990 --> 00:18:43,530 もう 自分たちで 勝手に 名前をつけることに決めた。 255 00:18:43,530 --> 00:18:48,200 うれしじゃ。 子供の名前は うれしに決めた。 256 00:18:48,200 --> 00:18:50,470 うれしじゃと? そうじゃ。 257 00:18:50,470 --> 00:18:54,540 わしゃ この歳になって 願ってもない子供を授かって 258 00:18:54,540 --> 00:18:57,470 嬉しゅうて たまらんかった。 だから うれしじゃ。 259 00:18:57,470 --> 00:18:59,560 うん うん。 260 00:18:59,560 --> 00:19:03,600 こうして 子供の名前は うれし ということになった。 261 00:19:03,600 --> 00:19:07,150 その名前を聞いた和尚さんは…。 262 00:19:07,150 --> 00:19:13,190 子の親となって 心から喜ぶ 母親の気持が よく表れた 263 00:19:13,190 --> 00:19:15,640 このうえなく よい名前じゃ。 264 00:19:15,640 --> 00:19:18,680 そして この うれしが すくすく育って 265 00:19:18,680 --> 00:19:24,320 親孝行になりますように と祈った。 めでたし めでたし。 266 00:19:24,320 --> 00:19:27,350 だが 話は そこで終わらなかった。 267 00:19:27,350 --> 00:19:32,390 この婆さんに また 子供が授かったのだ。 268 00:19:32,390 --> 00:19:38,870 それを知った爺さんも 村の衆も びっくり仰天。 269 00:19:38,870 --> 00:19:41,800 子供の名前 どうすべ? 270 00:19:41,800 --> 00:19:45,820 《今度の名前は うれし と 同じくらい よい名前か 271 00:19:45,820 --> 00:19:49,390 それ以上でないと 村の衆も納得すめぇ》 272 00:19:49,390 --> 00:19:52,810 十月十日目が来て…。 273 00:19:52,810 --> 00:19:56,680 オギャー! オギャー! 274 00:19:56,680 --> 00:20:00,840 また また 元気な 玉のような男の子だった。 275 00:20:00,840 --> 00:20:05,360 村人たちから こういう名前は どうじゃ と 276 00:20:05,360 --> 00:20:07,390 たくさんの名前が寄せられた。 277 00:20:07,390 --> 00:20:10,310 婆さんは ほとほと困ってしまった。 278 00:20:10,310 --> 00:20:13,550 せっかく村の衆が 知恵をしぼってくれたのに→ 279 00:20:13,550 --> 00:20:15,550 申し訳ないことじゃ。 280 00:20:18,470 --> 00:20:21,510 だが これで男の子が 2人になった。 281 00:20:21,510 --> 00:20:23,690 こりゃ めでたいことだ。 282 00:20:23,690 --> 00:20:27,850 それじゃ 子供の名前は めでたやじゃ! 283 00:20:27,850 --> 00:20:30,830 めでたやじゃと? 284 00:20:30,830 --> 00:20:34,540 爺さんは聞き返したが 婆さんが決めた名前だから→ 285 00:20:34,540 --> 00:20:37,390 それで間違いないだろうと思った。 286 00:20:37,390 --> 00:20:41,690 奇跡のように二度も子供を 授かった驚きの気持を→ 287 00:20:41,690 --> 00:20:46,580 みごとに表した天下一の名前じゃ。 288 00:20:46,580 --> 00:20:49,370 めでたし めでたし。 289 00:20:49,370 --> 00:20:51,870 だが 話は まだ終わらなかった。 290 00:20:51,870 --> 00:20:56,190 婆さんに まさかの 3人目の子供が授かったのだ。 291 00:20:56,190 --> 00:20:59,600 えぇ~! (みんな)どえっ! 292 00:20:59,600 --> 00:21:04,170 びっくり仰天を通り越して あきれてしまった。 293 00:21:04,170 --> 00:21:06,220 だが 3人目ともなると→ 294 00:21:06,220 --> 00:21:10,510 村人も もう名前に 知恵をしぼろうとは思わなかった。 295 00:21:10,510 --> 00:21:13,910 三度目の十月十日がきて→ 296 00:21:13,910 --> 00:21:17,960 今度もまた 玉のような男の子だった。 297 00:21:17,960 --> 00:21:22,070 婆さんは 男の子を3人までも 授かったことに→ 298 00:21:22,070 --> 00:21:24,850 感謝の気持を込めて→ 299 00:21:24,850 --> 00:21:28,010 ありがたや という名前をつけた。 300 00:21:28,010 --> 00:21:30,860 この名前を聞いた和尚さん。 301 00:21:30,860 --> 00:21:33,410 うれし めでたやときて ありがたやと→ 302 00:21:33,410 --> 00:21:35,870 兄弟3人の名が揃えば→ 303 00:21:35,870 --> 00:21:41,150 世の中の喜びをすべて 言い尽くした よい名前になる。 304 00:21:41,150 --> 00:21:45,690 3人は爺さんと婆さんに 大事に育てられた。 305 00:21:45,690 --> 00:21:50,650 だが ある日 3人が山へ出かけている間に→ 306 00:21:50,650 --> 00:21:53,700 家で爺さんが亡くなった。 307 00:21:53,700 --> 00:21:55,800 わぁ~ん! 308 00:21:55,800 --> 00:21:58,150 婆さんは 息子たちの名を呼びながら→ 309 00:21:58,150 --> 00:22:00,640 村の通りを走っていった。 310 00:22:00,640 --> 00:22:04,180 爺さんが亡くなってしもうた! 311 00:22:04,180 --> 00:22:08,860 うれし めでたや ありがたや はよ帰って来い! 312 00:22:08,860 --> 00:22:14,470 うれし めでたや ありがたや 爺さんが亡くなってしもた~! 313 00:22:14,470 --> 00:22:16,520 村の衆は 呆気にとられていたが→ 314 00:22:16,520 --> 00:22:21,010 すぐに それが 3人の子供の名前だとわかった。 315 00:22:21,010 --> 00:22:25,200 その様子を見ていた和尚さん。 316 00:22:25,200 --> 00:22:27,850 《しまった…》 317 00:22:27,850 --> 00:22:30,900 人の名前は よく考えてつけんとな。 318 00:22:30,900 --> 00:22:34,200 うれし めでたや ありがたや~!