1 00:01:44,990 --> 00:01:51,130 昔むかし あるところに 若い男がおりました。 2 00:01:51,130 --> 00:01:56,820 この男 もらうのは好きだが やるのが大嫌いという→ 3 00:01:56,820 --> 00:01:59,820 欲の張った男だった。 4 00:01:59,820 --> 00:02:06,340 欲の張ったせいかどうか いつまでたっても独り者だった。 5 00:02:06,340 --> 00:02:10,300 もうええ加減に 嫁でももらったらどうだ。 6 00:02:10,300 --> 00:02:14,800 だったら 物食わぬ嫁がおったら 世話してくれぬか。 7 00:02:17,620 --> 00:02:20,820 ある日のこと 日が暮れる頃になって→ 8 00:02:20,820 --> 00:02:25,820 それはきれいな娘が 男の家の前に立った。 9 00:02:28,800 --> 00:02:31,980 旅の者じゃが 日が暮れて難儀しておる。 10 00:02:31,980 --> 00:02:35,000 どうか一晩 泊めてもらえんじゃろか? 11 00:02:35,000 --> 00:02:40,040 宿は貸してもいいだが 食うものはないぞ。 12 00:02:40,040 --> 00:02:44,310 私は 物食わぬ女じゃ。 なんも食うものはいらん。 13 00:02:44,310 --> 00:02:46,780 宿だけでええ。 えっ!? 14 00:02:46,780 --> 00:02:53,860 そう言うので男は娘を招き入れ 一晩泊めることにした。 15 00:02:53,860 --> 00:02:57,910 娘は朝になっても 出て行こうとしない。 16 00:02:57,910 --> 00:03:04,330 それどころか家の用事やら 男の世話やらしてくれる。 17 00:03:04,330 --> 00:03:10,160 それで男は そのまんま 家に置いておくことにした。 18 00:03:10,160 --> 00:03:14,660 何よりええのは 娘が何も食わぬことだった。 19 00:03:14,660 --> 00:03:16,960 男の食事は ちゃんと用意して→ 20 00:03:16,960 --> 00:03:20,500 自分は座って お給仕までしてくれるのだが→ 21 00:03:20,500 --> 00:03:24,640 自分は ちいとも食べようとせん。 22 00:03:24,640 --> 00:03:26,640 少しは食べてみたいか? 23 00:03:29,320 --> 00:03:32,330 においかいどるだけでええ。 24 00:03:32,330 --> 00:03:36,000 男は だんだん 嬉しゅうなってきた。 25 00:03:36,000 --> 00:03:39,000 《よく働くで 家の中もきれいになったし→ 26 00:03:39,000 --> 00:03:43,040 世話も焼いてくれる。 それで なんも食わんのじゃ》 27 00:03:43,040 --> 00:03:46,040 これよりええ女房はないと思った。 28 00:03:49,610 --> 00:03:53,480 どうじゃ? ええ女房を もろうたもんじゃろう。 29 00:03:53,480 --> 00:03:59,150 まだ気づかんのか? お前の女房は ありゃ人間と違うぞ。 30 00:03:59,150 --> 00:04:02,320 世の中に物食わぬ人間が おるものか。 31 00:04:02,320 --> 00:04:05,830 何を言う! そんなことがあるものか! 32 00:04:05,830 --> 00:04:07,830 知らぬのは お前だけじゃ。 33 00:04:07,830 --> 00:04:10,950 嘘と思うなら米蔵見てみぃ。 34 00:04:10,950 --> 00:04:14,170 そうまで言われると 男も気になってきた。 35 00:04:14,170 --> 00:04:20,490 いっぱいだったはずの米は がっさり減っていた。 36 00:04:20,490 --> 00:04:23,990 《こりゃどうして? 女房は物食わんのに…》 37 00:04:26,500 --> 00:04:31,140 ある日 男は町に用事があると 女房に言った。 38 00:04:31,140 --> 00:04:33,610 夜まで戻らんから。 39 00:04:33,610 --> 00:04:38,680 出かけるフリをして→ 40 00:04:38,680 --> 00:04:44,430 嫁に気づかれぬよう そっと天井裏に隠れたのだ。 41 00:04:44,430 --> 00:04:51,310 すると女房が たくさんの米を とぎ始めていた。 42 00:04:51,310 --> 00:04:54,280 火をおこして飯を炊き始め→ 43 00:04:54,280 --> 00:04:59,630 飯が炊けると にぎり飯を33個もこしらえた。 44 00:04:59,630 --> 00:05:04,150 今度は サバを3匹 火で炙った。 45 00:05:04,150 --> 00:05:07,990 支度が終わると 女房は立て膝をついて→ 46 00:05:07,990 --> 00:05:10,490 パラリと髪をほどいた。 47 00:05:25,620 --> 00:05:30,380 ぐぐぐっ… こりゃたまらん! 人間じゃない! 48 00:05:30,380 --> 00:05:33,480 化け物だ! 49 00:05:36,440 --> 00:05:39,120 うわっ! あっ あぁ! 50 00:05:39,120 --> 00:05:43,040 落っこちたのは 物食うておる 女房の目の前だった。 51 00:05:43,040 --> 00:05:46,840 えっ…。 見たな。 52 00:05:50,830 --> 00:05:53,720 えっ… あぁ! 53 00:05:53,720 --> 00:05:55,720 待て! 54 00:05:58,460 --> 00:06:03,410 あぁ あややや!? 55 00:06:03,410 --> 00:06:05,410 助けてくれ! 56 00:06:07,830 --> 00:06:09,790 待たんかい! 57 00:06:09,790 --> 00:06:15,990 追いかけてくる女房の姿は 山姥の姿に変わっていた。 58 00:06:15,990 --> 00:06:18,940 コイツめ! うわっ! 59 00:06:18,940 --> 00:06:21,660 男をウサギのようにぶら下げると 60 00:06:21,660 --> 00:06:25,030 そのまま抱えて 山のなかへ走っていった。 61 00:06:25,030 --> 00:06:27,290 どうするつもりじゃ! 62 00:06:27,290 --> 00:06:31,670 山へ 持ってって 頭からガシガシ食ってやる。 63 00:06:31,670 --> 00:06:33,710 ひえぇ! 64 00:06:33,710 --> 00:06:36,360 おびえる男を抱えたまま 山姥は 65 00:06:36,360 --> 00:06:39,660 それは恐ろしい速さで 山のなかへ走っていった。 66 00:06:44,370 --> 00:06:46,370 しめた! 67 00:06:54,960 --> 00:07:01,370 すると今度は山姥が 大きなヘビになった。 68 00:07:01,370 --> 00:07:04,370 再びすごい勢いで 男を追いかけてきた。 69 00:07:10,950 --> 00:07:15,670 しまいに ヨモギと菖蒲の草むらで けつまずいて転んでしまった。 70 00:07:15,670 --> 00:07:18,040 イテテテ…。 71 00:07:18,040 --> 00:07:20,990 けつまずいたのは 小さなお地蔵様だった。 72 00:07:20,990 --> 00:07:23,360 これ 逃げずにここにおれ。 73 00:07:23,360 --> 00:07:26,380 えっ? 逃げてはいかん。 74 00:07:26,380 --> 00:07:32,370 地蔵様がそう言うもんで 急いで地蔵様の陰に隠れた。 75 00:07:32,370 --> 00:07:36,370 どこに隠れても逃がすものか。 76 00:07:41,990 --> 00:07:43,950 ええい 恨めしい。 77 00:07:43,950 --> 00:07:46,950 ヨモギと菖蒲くらい この体に毒なものはない。 78 00:07:46,950 --> 00:07:50,020 この草に触れると体が腐るのじゃ。 79 00:07:50,020 --> 00:07:54,270 この草さえなければ お前を食うてしまうものを。 80 00:07:54,270 --> 00:08:00,000 それを聞いた男は ヨモギと 菖蒲をむしってヘビへ投げつけた。 81 00:08:00,000 --> 00:08:03,700 うわぁ! 82 00:08:03,700 --> 00:08:07,700 恐ろしいうめき声を上げながら ヘビはどこかに消えてしまった。 83 00:08:11,320 --> 00:08:13,310 ハァー。 84 00:08:13,310 --> 00:08:17,660 あの化け物はきっとまた お前の家にやって来る。 85 00:08:17,660 --> 00:08:22,330 家に入れないようにするには ヨモギと菖蒲を門にさしておけ。 86 00:08:22,330 --> 00:08:26,540 それで 5月の節句には今でも 87 00:08:26,540 --> 00:08:31,040 ヨモギと菖蒲を 門にさすようになったのです。 88 00:08:41,990 --> 00:08:48,330 昔むかし あるところに 花を売って暮らす貧しい男がいた。 89 00:08:48,330 --> 00:08:52,960 男は 川向こうの町へ 花を売りに出かけた。 90 00:08:52,960 --> 00:08:58,990 そして 日暮れになると 売れ残った花を川に流した。 91 00:08:58,990 --> 00:09:01,300 捨てちまうのか。 92 00:09:01,300 --> 00:09:04,330 《いや なにそうじゃねえんだ》 93 00:09:04,330 --> 00:09:06,720 男は たとえ花が売れなくても 94 00:09:06,720 --> 00:09:09,640 その日 一日をつつがなく 過ごせたことに感謝して 95 00:09:09,640 --> 00:09:13,240 川の神様に あげているつもりだった。 96 00:09:16,000 --> 00:09:19,270 ある日のこと いつものように町で花を売り 97 00:09:19,270 --> 00:09:22,330 川まで戻ってくると 大水が出て 98 00:09:22,330 --> 00:09:24,290 川が渡れなくなっていた。 99 00:09:24,290 --> 00:09:26,320 こりゃ困った。 100 00:09:26,320 --> 00:09:28,290 これでは家に帰れんぞ。 101 00:09:28,290 --> 00:09:30,990 どうしたものかと考えていると…。 102 00:09:30,990 --> 00:09:32,950 うわ~っ! 103 00:09:32,950 --> 00:09:35,610 大きなカメが男の前に現れた。 104 00:09:35,610 --> 00:09:38,020 ここに乗れ。 105 00:09:38,020 --> 00:09:41,990 男は カメの背中にまたがった。 106 00:09:41,990 --> 00:09:43,990 どこに行くんじゃ? 107 00:09:43,990 --> 00:09:45,990 乙姫様の御殿じゃ。 108 00:09:45,990 --> 00:09:48,990 乙姫様の? そうじゃ。 109 00:09:48,990 --> 00:09:51,630 お前様が いつも花をくれるので 110 00:09:51,630 --> 00:09:57,000 乙姫様がお礼をしようと お前様を呼び申したのじゃ。 111 00:09:57,000 --> 00:09:58,970 そうか…。 112 00:09:58,970 --> 00:10:01,660 《本当に乙姫様がおるのか?》 113 00:10:01,660 --> 00:10:06,280 そう思っているうちに 辺りが 霧に巻かれた。 114 00:10:06,280 --> 00:10:09,320 やがて 真っ白な霧が晴れると 115 00:10:09,320 --> 00:10:13,000 そこは 乙姫様の御殿だった。 116 00:10:13,000 --> 00:10:16,960 男は 奥の間に案内された。 117 00:10:16,960 --> 00:10:23,030 すると そこに それはそれは美しい乙姫様がいた。 118 00:10:23,030 --> 00:10:26,620 いつも花をくれるのは お前様か? 119 00:10:26,620 --> 00:10:29,000 ありがたいことだ。 120 00:10:29,000 --> 00:10:31,390 へぇ… こっちこそ…。 121 00:10:31,390 --> 00:10:34,990 花のお礼に 男の子を1人やろう。 122 00:10:34,990 --> 00:10:37,660 手招きすると ボロ着をまとい 123 00:10:37,660 --> 00:10:40,600 鼻を垂らした 汚い男の子が出てきた。 124 00:10:40,600 --> 00:10:44,000 この子は 鼻は出ている。 よだれも垂れている。 125 00:10:44,000 --> 00:10:48,650 だが この子を大事にすれば 何でも願いを叶えてくれよう。 126 00:10:48,650 --> 00:10:51,160 お前様の子にするがよい。 127 00:10:51,160 --> 00:10:54,610 へぇ… その子の名は 何というのでございますか? 128 00:10:54,610 --> 00:10:56,650 名は とほう。 129 00:10:56,650 --> 00:10:58,660 とほう…。 130 00:10:58,660 --> 00:11:00,770 男は とほうを連れ 131 00:11:00,770 --> 00:11:03,770 また大ガメに乗って 帰ることになった。 132 00:11:06,340 --> 00:11:09,990 やがて男は 元の川に戻った。 133 00:11:09,990 --> 00:11:13,960 男は 家に帰って 改めて とほうを見た。 134 00:11:13,960 --> 00:11:17,020 見れば見るほど なりは汚い。 135 00:11:17,020 --> 00:11:19,970 鼻垂らし よだれ垂らしの男の子だ。 136 00:11:19,970 --> 00:11:22,990 とほう 鼻をかんだらどうだ? 137 00:11:22,990 --> 00:11:24,940 (とほう)とても かまれねえ。 138 00:11:24,940 --> 00:11:26,960 よだれは どうだ? 139 00:11:26,960 --> 00:11:28,990 とっても拭けねえ。 140 00:11:28,990 --> 00:11:30,980 着物は どうだ? 141 00:11:30,980 --> 00:11:33,670 これ 替えることもできねえ。 142 00:11:33,670 --> 00:11:36,140 ハア… しようがねえな。 143 00:11:36,140 --> 00:11:39,990 じゃ 飯でも食うか? うん。 144 00:11:39,990 --> 00:11:42,990 《これから 汚い上に ガツガツと食う 145 00:11:42,990 --> 00:11:46,330 とほうと一緒に暮らすのか…》 146 00:11:46,330 --> 00:11:49,350 それにしては…。 147 00:11:49,350 --> 00:11:54,850 家といっても 一間しかない手狭な家だ。 148 00:11:58,390 --> 00:12:04,010 《そういえば 何でも 願いを叶えるとか言ってたな》 149 00:12:04,010 --> 00:12:08,080 男は 乙姫様の言葉を思い出した。 150 00:12:08,080 --> 00:12:11,490 お前と2人で暮らすには この家は ちと狭い。 151 00:12:11,490 --> 00:12:13,470 なんとかならんか? 152 00:12:13,470 --> 00:12:15,470 あいよ。 153 00:12:21,650 --> 00:12:24,070 すると どうだ。 154 00:12:24,070 --> 00:12:27,840 貧しい家は たちまち 立派な構えの家になった。 155 00:12:27,840 --> 00:12:29,840 こりゃあ いい! 156 00:12:32,340 --> 00:12:36,650 こげな立派な家に こげな着物では よう住まれん。 157 00:12:36,650 --> 00:12:39,210 着物 出してくれんかな? 158 00:12:39,210 --> 00:12:41,210 あいよ。 159 00:12:44,290 --> 00:12:46,990 上等な着物が 山ほど出てきた。 160 00:12:46,990 --> 00:12:51,390 とほう… オラ 銭がないのじゃ。 銭は出せるか? 161 00:12:51,390 --> 00:12:53,660 どれくらい出そう? 162 00:12:53,660 --> 00:12:57,070 そうさな… 千両も出してもらおうか。 163 00:12:57,070 --> 00:12:59,370 お安い御用じゃ。 164 00:13:03,320 --> 00:13:07,290 なんと まあ ピカピカの小判が たくさん出てきた。 165 00:13:07,290 --> 00:13:13,180 せ… せ… 千両じゃ! 千両じゃ!! 166 00:13:13,180 --> 00:13:17,950 それっきり 男は 花を売る仕事を辞めてしまった。 167 00:13:17,950 --> 00:13:20,960 なに 千両の金があるんだ。 168 00:13:20,960 --> 00:13:24,390 なんか楽して儲けることを…。 169 00:13:24,390 --> 00:13:28,330 そうだ! 金貸しがいい。 170 00:13:28,330 --> 00:13:33,600 男は とほうの出した 千両の金を元手に金貸しを始めた。 171 00:13:33,600 --> 00:13:36,010 すると これが大当たり。 172 00:13:36,010 --> 00:13:40,310 男は あっという間に 大金持ちの旦那様になっていた。 173 00:13:42,950 --> 00:13:45,950 それから 数年 経った頃。 174 00:13:45,950 --> 00:13:49,050 男は つきあいも広くなり 175 00:13:49,050 --> 00:13:53,350 あっちこっちの旦那から 呼ばれては もてなしを受けた。 176 00:13:55,340 --> 00:13:59,280 ところが どこへ行くにも とほうが一緒についてくる。 177 00:13:59,280 --> 00:14:02,550 せっかく 立派な座敷に 招かれているのに 178 00:14:02,550 --> 00:14:06,550 汚いとほうがそばにいては 恥ずかしくてしようがなかった。 179 00:14:10,290 --> 00:14:14,140 とほう… たまには 鼻くらい かんだらどうじゃ? 180 00:14:14,140 --> 00:14:16,180 とても かまれねえ。 181 00:14:16,180 --> 00:14:19,780 よだれだけでも…。 とても拭けねえ。 182 00:14:19,780 --> 00:14:23,340 じゃあ 着物だけでも 替えたらどうじゃ? 183 00:14:23,340 --> 00:14:25,940 ええ着物 買うてやるから。 184 00:14:25,940 --> 00:14:28,510 これ 替えることもできねえ。 185 00:14:28,510 --> 00:14:32,030 前に聞いたときと 同じ答えしか返ってこない。 186 00:14:32,030 --> 00:14:35,010 男は ほとほと困ってしまった。 187 00:14:35,010 --> 00:14:38,900 たしかに とほうのおかげで ここまでになった。 188 00:14:38,900 --> 00:14:41,640 だが これから更に 店を大きくするには 189 00:14:41,640 --> 00:14:44,010 とほうがいては差支えがある。 190 00:14:44,010 --> 00:14:47,940 嫁をもらうにも この汚らしい子供は邪魔だ。 191 00:14:47,940 --> 00:14:53,500 だいぶ お前に世話になったが 都合によって お前に暇をやる。 192 00:14:53,500 --> 00:14:55,500 もう 帰ってくれぬか? 193 00:14:55,500 --> 00:14:57,600 そっか。 そんなら 仕方ねえ。 194 00:14:59,640 --> 00:15:03,240 とほうは そう答えて そのまま 家を出ていった。 195 00:15:09,720 --> 00:15:11,780 すると どうだ! 196 00:15:11,780 --> 00:15:15,620 たちまち 家は狭苦しい 元の家に戻った。 197 00:15:15,620 --> 00:15:19,160 着物も 以前のみすぼらしい着物に戻り 198 00:15:19,160 --> 00:15:24,300 何もかもそっくりそのまま 貧しい暮らしの頃に戻っていた。 199 00:15:24,300 --> 00:15:28,850 男はすっかり 途方に暮れてしまった。 200 00:15:28,850 --> 00:15:31,950 とほうを大事にしていればねぇ! 201 00:15:43,990 --> 00:15:50,330 ある村はずれの山寺に 和尚さんと小僧さんがいました。 202 00:15:50,330 --> 00:15:56,640 (寝息) 203 00:15:56,640 --> 00:16:00,660 実はこの日 和尚さんと小僧さんは 204 00:16:00,660 --> 00:16:04,960 朝早くから檀家へ法事に 行くことになっていたのです。 205 00:16:08,330 --> 00:16:10,620 うぅ… あっ! 206 00:16:10,620 --> 00:16:14,990 あぁ 大変だ 大変だ! 207 00:16:14,990 --> 00:16:19,610 遅れるわけにはいかぬから 早めに出るべ。 208 00:16:19,610 --> 00:16:21,660 ちょっと待ってください。 209 00:16:21,660 --> 00:16:24,350 和尚様! 210 00:16:24,350 --> 00:16:26,950 行く前に オシッコしとかないと…。 211 00:16:26,950 --> 00:16:30,500 がまんせい。 212 00:16:30,500 --> 00:16:35,040 厠に行けぬまま 和尚さんの後をついていきました。 213 00:16:35,040 --> 00:16:38,040 厠とは便所のことです。 214 00:16:42,650 --> 00:16:47,650 久々に寺から出た小僧さん。 清々しい気分になって 215 00:16:47,650 --> 00:16:54,990 オシッコのことは忘れていましたが しばらく行くうちに…。 216 00:16:54,990 --> 00:16:56,950 オシッコ! 217 00:16:56,950 --> 00:16:59,320 何をする? はい。 218 00:16:59,320 --> 00:17:02,950 今朝は支度に追われて 厠に行きそびれたものですから…。 219 00:17:02,950 --> 00:17:08,360 そこは道の神様が いらっしゃるところだ。 わぁ! 220 00:17:08,360 --> 00:17:11,980 《外に出ると うかうか オシッコもできないや。 221 00:17:11,980 --> 00:17:16,080 困ったぞ。 ますます したくなってきちゃった…》 222 00:17:18,580 --> 00:17:20,580 そ~っと…。 223 00:17:22,490 --> 00:17:25,860 これこれ 何をしておる! あっ… えっ!? 224 00:17:25,860 --> 00:17:28,280 お前は今こんなところで なぜ 225 00:17:28,280 --> 00:17:32,680 オシッコを止められるんだろう と 思ったべ? 226 00:17:32,680 --> 00:17:34,970 どうして わかったんですか? 227 00:17:34,970 --> 00:17:37,820 目の前に見えるものは なんじゃ? 228 00:17:37,820 --> 00:17:39,960 畑でございます。 229 00:17:39,960 --> 00:17:43,490 そうじゃ。 ここは お百姓さんが 丹精込めて 230 00:17:43,490 --> 00:17:46,310 芋や野菜を作るところじゃ。 231 00:17:46,310 --> 00:17:51,230 ここには畑の神様がおって 作物を守ってくださるのじゃ。 232 00:17:51,230 --> 00:17:54,490 ここで オシッコしようなぞとは もってのほかじゃ。 233 00:17:54,490 --> 00:17:56,440 わぁ! 234 00:17:56,440 --> 00:17:59,990 小僧さんは またしても オシッコができず 235 00:17:59,990 --> 00:18:02,960 急いで 和尚さんの後を追いました。 236 00:18:02,960 --> 00:18:07,320 オシッコしたいよ。 がまんせい。 237 00:18:07,320 --> 00:18:11,940 小僧さんは 一生懸命こらえましたが 238 00:18:11,940 --> 00:18:17,610 オシッコをしたいという気持は どんどん強くなってきました。 239 00:18:17,610 --> 00:18:33,680 ~ 240 00:18:33,680 --> 00:18:35,650 助かった。 241 00:18:35,650 --> 00:18:38,250 ここにするのには文句はあるまい。 242 00:18:42,340 --> 00:18:44,320 コラ 待ちなさい! 243 00:18:44,320 --> 00:18:48,620 この川は水神様がおられる とても神聖な川だ。 244 00:18:48,620 --> 00:18:51,480 オシッコなぞ とんでもない! 245 00:18:51,480 --> 00:18:53,550 わぁ! 246 00:18:53,550 --> 00:18:57,050 和尚様 もれそうです! がまんせい。 247 00:19:06,660 --> 00:19:09,310 お地蔵様 お助けください。 248 00:19:09,310 --> 00:19:11,330 小僧さんの目には 249 00:19:11,330 --> 00:19:15,300 地蔵様が にっこり ほほえんだように見えました。 250 00:19:15,300 --> 00:19:19,010 えっ!? してもいいんですか? 251 00:19:19,010 --> 00:19:21,320 コラ! そこにするヤツが あるか。 252 00:19:21,320 --> 00:19:24,690 だって もれちゃいます…。 253 00:19:24,690 --> 00:19:28,650 地蔵様に許されたと思いこんだ 小僧さんは 254 00:19:28,650 --> 00:19:32,640 どうしてよいか わかりませんでした。 255 00:19:32,640 --> 00:19:34,640 う~ん ん? 256 00:19:36,660 --> 00:19:41,730 あの家へ行って キチンと挨拶をして 厠を借りるのじゃ。 257 00:19:41,730 --> 00:19:43,650 やっと お許しが出た! 258 00:19:43,650 --> 00:19:47,280 そうか お地蔵様は これを教えてくれたのか。 259 00:19:47,280 --> 00:19:51,700 小僧さんは さっき 地蔵様が ほほえんでくれたわけが 260 00:19:51,700 --> 00:19:54,620 わかったような気がしました。 261 00:19:54,620 --> 00:19:56,660 これ これ。 262 00:19:56,660 --> 00:20:01,130 ここで待ってるから 早く用を足してくるのじゃ。 263 00:20:01,130 --> 00:20:04,000 あっ! これ。 はい。 264 00:20:04,000 --> 00:20:08,650 厠を借りるのはいいが 決して 汚すではないぞ。 265 00:20:08,650 --> 00:20:10,610 厠には それは それは→ 266 00:20:10,610 --> 00:20:13,540 べっぴんの神様が いらっしゃるからな。 267 00:20:13,540 --> 00:20:17,300 わかりました…。 268 00:20:17,300 --> 00:20:20,300 《厠にも神様が…。 269 00:20:20,300 --> 00:20:23,320 ここにも そこにも 神 神 神…》 270 00:20:23,320 --> 00:20:28,040 うぅ… あぁ…。 271 00:20:28,040 --> 00:20:31,640 何を ぐずぐずしている? 早くしてきなさい! 272 00:20:53,330 --> 00:20:55,380 あれ? 273 00:20:55,380 --> 00:20:57,990 犬が オシッコをかけても 木は なんともない…。 274 00:20:57,990 --> 00:21:02,560 ということは この木には 神様が いらっしゃらないんだ! 275 00:21:02,560 --> 00:21:04,560 よ~し! 276 00:21:09,470 --> 00:21:11,980 いや~! 277 00:21:11,980 --> 00:21:15,040 いい眺めだ。 278 00:21:15,040 --> 00:21:18,340 はぁ…。 279 00:21:23,660 --> 00:21:25,620 ん!? 280 00:21:25,620 --> 00:21:27,720 雨? 281 00:21:27,720 --> 00:21:29,720 止んだか? ん!? 282 00:21:32,050 --> 00:21:35,050 な… な… なんだ!? このにおいは! 283 00:21:36,940 --> 00:21:40,050 コ… コラ! そこで 何をしておる!? 284 00:21:40,050 --> 00:21:44,320 なんという所で オシッコをしている! 早く降りてこんか!! 285 00:21:44,320 --> 00:21:47,290 まったく お前というヤツは…。 286 00:21:47,290 --> 00:21:50,990 怒らないで 和尚様。 これには わけが…。 287 00:21:50,990 --> 00:21:53,410 どんなわけが あるというのだ!? 288 00:21:53,410 --> 00:21:56,710 あっちも こっちも 神様 神様 神だらけ。 289 00:22:01,300 --> 00:22:05,800 でもね 和尚様の頭には 髪がないでしょ。 290 00:22:07,820 --> 00:22:11,140 ん!? フフフ…。 291 00:22:11,140 --> 00:22:14,760 フフフ… アハハハハ! 292 00:22:14,760 --> 00:22:18,870 アハ… アハハハハ! 293 00:22:18,870 --> 00:22:21,970 (2人)アハハハハハ! 294 00:22:27,440 --> 00:22:34,040 (2人)アハハハハハ!