1 00:01:45,590 --> 00:01:52,090 ある町はずれに 貧しい男が住んでいました。 2 00:01:52,090 --> 00:01:54,650 男は決まった仕事もなく→ 3 00:01:54,650 --> 00:01:57,650 町へ出て 店の仕事を手伝っては 4 00:01:57,650 --> 00:02:01,150 駄賃をもらって暮らしていました。 5 00:02:09,080 --> 00:02:12,150 はぁ…。 6 00:02:12,150 --> 00:02:14,650 ふぅ…。 7 00:02:24,080 --> 00:02:27,530 そんな ある日のことです。 8 00:02:27,530 --> 00:02:31,420 イ イ… イテ! イテテテ!! 9 00:02:31,420 --> 00:02:35,370 うぅ~! あぁ~!! 10 00:02:35,370 --> 00:02:38,090 町へ出ての帰り道。 11 00:02:38,090 --> 00:02:42,740 罠にかかっている 子狸を見つけました。 12 00:02:42,740 --> 00:02:44,760 なんてこった! 13 00:02:44,760 --> 00:02:49,740 こんな雨の中 小さい子狸が 罠にかかるなんて かわいそうに。 14 00:02:49,740 --> 00:02:53,240 ほれ ほれ! 何もしねえから 安心しな。 15 00:02:58,230 --> 00:03:02,750 その夜のこと。 16 00:03:02,750 --> 00:03:08,750 男が寝ていると 部屋で 物音がします。 17 00:03:08,750 --> 00:03:14,040 フフフフフ…。 18 00:03:14,040 --> 00:03:16,080 お… お前は! 19 00:03:16,080 --> 00:03:20,080 はい 助けてもらって ありがとうございました。 20 00:03:20,080 --> 00:03:23,750 ダメじゃないか こんな所に のこのこ現れて。 21 00:03:23,750 --> 00:03:26,740 また 罠に かかったら どうするんじゃ? 22 00:03:26,740 --> 00:03:30,690 おら 助けてもらった お礼がしたいんです。 23 00:03:30,690 --> 00:03:34,280 お礼? お礼なんか いいよ。 24 00:03:34,280 --> 00:03:37,550 ちょっと 耳寄りな話が ありましてね。 25 00:03:37,550 --> 00:03:39,920 実は お寺の和尚さんが 26 00:03:39,920 --> 00:03:42,970 大きな茶釜を 探していると聞きました。 27 00:03:42,970 --> 00:03:45,370 おらが その茶釜に化けますから 28 00:03:45,370 --> 00:03:48,380 お前様は それを高く売ってください。 29 00:03:48,380 --> 00:03:52,760 そ… そんなことは できないよ! 人を騙すなんて…。 30 00:03:52,760 --> 00:03:56,420 それに お前は ずっと茶釜でおる気か? 31 00:03:56,420 --> 00:03:59,090 おらのことなら 心配ご無用! 32 00:03:59,090 --> 00:04:02,090 誰にも怪しまれずに 消え失せるのは 33 00:04:02,090 --> 00:04:04,040 お手のものですよ。 34 00:04:04,040 --> 00:04:07,410 ねっ? ねっ? ねぇ! 35 00:04:07,410 --> 00:04:09,360 う~ん…。 36 00:04:09,360 --> 00:04:18,970 次の日 男は風呂敷に包んだ茶釜を 背負って 寺を訪ねました。 37 00:04:18,970 --> 00:04:22,690 これが 家宝の茶釜でございます。 38 00:04:22,690 --> 00:04:25,700 おぉ! これは 立派な茶釜じゃ。 39 00:04:25,700 --> 00:04:29,250 これは 汲んでも汲んでも なかなか湯の尽きない 40 00:04:29,250 --> 00:04:31,200 不思議な茶釜です。 41 00:04:31,200 --> 00:04:35,310 汲んでも汲んでも 湯が尽きない茶釜じゃと? 42 00:04:35,310 --> 00:04:37,210 はい そうです。 43 00:04:37,210 --> 00:04:39,750 そりゃ ちょうど よかった! 44 00:04:39,750 --> 00:04:43,270 近々 檀家衆が 大勢 寺に見える。 45 00:04:43,270 --> 00:04:49,540 そこで 皆の衆に 茶を進ぜようと 思っておったところじゃ。 46 00:04:49,540 --> 00:04:52,110 うむ これはいい。 47 00:04:52,110 --> 00:04:57,710 この茶釜 気に入りました。 買わせていただきますよ。 48 00:04:57,710 --> 00:05:02,770 茶釜は 思ったより 高い値で売れました。 49 00:05:02,770 --> 00:05:08,760 しかし 男の気持は なぜか 晴れ晴れとしませんでした。 50 00:05:08,760 --> 00:05:11,260 その頃…。 51 00:05:13,260 --> 00:05:17,720 お寺では 和尚さんが 早速 茶を立ててみようと 52 00:05:17,720 --> 00:05:20,420 小僧さんに茶釜を洗わせました。 53 00:05:20,420 --> 00:05:26,070 ウヒヒヒヒ! ヒヒヒヒヒ! 54 00:05:26,070 --> 00:05:28,560 えっ? 55 00:05:28,560 --> 00:05:33,080 ウヒヒヒヒ! 56 00:05:33,080 --> 00:05:35,580 アハハハハハ! 57 00:05:35,580 --> 00:05:37,940 うわ~! 和尚様!! 58 00:05:37,940 --> 00:05:40,040 アハハハハハ! 59 00:05:40,040 --> 00:05:45,080 あぁ… 和尚様! 茶釜が 茶釜が笑っております! 60 00:05:45,080 --> 00:05:48,400 茶釜が笑っておるじゃと? 61 00:05:48,400 --> 00:05:50,850 そんなバカなことがあるものか。 62 00:05:50,850 --> 00:05:54,450 それより早く水を入れて 持ってきなさい。 63 00:05:57,540 --> 00:06:01,010 そこで 小僧さんは井戸に戻ると→ 64 00:06:01,010 --> 00:06:04,900 茶釜に水を入れて戻ってきました。 65 00:06:04,900 --> 00:06:08,000 何を そんなに怯えておるのじゃ? 66 00:06:10,100 --> 00:06:15,710 アツ アツアツアツ… アチッ アチチチ! 67 00:06:15,710 --> 00:06:21,930 アチーッ! アチアチアチ! アチチチ! 68 00:06:21,930 --> 00:06:23,920 (2人)あっ! 69 00:06:23,920 --> 00:06:28,520 子狸は お腹の毛を焦がしながら 寺から逃げ出しました。 70 00:06:34,630 --> 00:06:40,430 やっぱり人を騙して金を稼いでも ろくなことにはならないな。 71 00:06:42,670 --> 00:06:46,200 んっ? さぁ 傷の手当てもすんだ。 72 00:06:46,200 --> 00:06:50,410 そろそろ おっかさんや おっとさんの待つ山へ帰るだ。 73 00:06:50,410 --> 00:06:54,250 おら おっかあも おっとうもいねえだ。 74 00:06:54,250 --> 00:06:57,380 何だと? オメエ ひとりぼっちか? 75 00:06:57,380 --> 00:07:00,740 ああ おら あにさんと同じで ひとりぼっちさ。 76 00:07:00,740 --> 00:07:04,860 そっか。 オメエも ひとりぼっちか。 77 00:07:04,860 --> 00:07:09,860 だから おら ずっとず~っと あにさんと一緒に暮らすだよ。 78 00:07:11,960 --> 00:07:14,030 あっ よいしょ! あっ よいしょ! 79 00:07:14,030 --> 00:07:17,590 あっ ほれほれほれ! よいしょ よいしょ よいしょ! 80 00:07:17,590 --> 00:07:20,740 子狸の様子を見ているうちに→ 81 00:07:20,740 --> 00:07:25,240 男は なんだか幸せな気持に なってきました。 82 00:07:25,240 --> 00:07:28,030 あっ それ! あっ それ! 83 00:07:28,030 --> 00:07:31,530 ひょっこれ ひょっこれ! ほらほらほら! 84 00:07:31,530 --> 00:07:35,240 やいや やいや やいやい! やいやいやい! 85 00:07:35,240 --> 00:07:40,660 男は この芸をみんなにも 見せてやりたいと思いました。 86 00:07:40,660 --> 00:07:48,160 そして 男と子狸は 小さな見世物小屋を始めました。 87 00:07:51,920 --> 00:07:55,940 初めは 客も数えるほどしか 来ませんでしたが→ 88 00:07:55,940 --> 00:07:59,590 噂が噂を呼び 評判となって→ 89 00:07:59,590 --> 00:08:02,890 見世物小屋は 大当たりとなりました。 90 00:08:08,420 --> 00:08:12,920 お寺の和尚さんも 小僧さんも来ました。 91 00:08:12,920 --> 00:08:17,210 男は 和尚さんに謝り お金も返しました。 92 00:08:17,210 --> 00:08:23,640 そして見世物小屋は 更に どんどん大きくなっていきました。 93 00:08:23,640 --> 00:08:26,790 そのあとも男と子狸は一緒に→ 94 00:08:26,790 --> 00:08:30,790 いつまでも 仲よく暮らしたということです。 95 00:08:44,780 --> 00:08:47,620 昔むかし ある山奥の峠に→ 96 00:08:47,620 --> 00:08:52,520 おとん狐という あごひげの生えた狐がいました。 97 00:08:52,520 --> 00:08:56,760 この狐 ときどき人を化かしては 髪をそり落とすので→ 98 00:08:56,760 --> 00:09:00,930 近くの村人は たいそう困っておりました。 99 00:09:00,930 --> 00:09:04,300 ある日 庄屋どんの家で 村の者を招いて→ 100 00:09:04,300 --> 00:09:06,600 酒盛りをしました。 101 00:09:06,600 --> 00:09:10,010 その席で おとん狐の話が出ると→ 102 00:09:10,010 --> 00:09:15,310 和やかだった その場の雰囲気が いっぺんに悪くなりました。 103 00:09:17,250 --> 00:09:21,300 よし。 おとん狐を退治してくれれば→ 104 00:09:21,300 --> 00:09:25,400 褒美に米一俵をやるが 誰かいないか? 105 00:09:25,400 --> 00:09:29,460 褒美と聞いて村でも 力自慢で知られる2人の若者が→ 106 00:09:29,460 --> 00:09:32,610 名乗りをあげました。 107 00:09:32,610 --> 00:09:34,560 (2人)オー! 108 00:09:34,560 --> 00:09:37,780 おとん狐を退治するのは 朝飯前だ。 109 00:09:37,780 --> 00:09:40,150 わしらに任せてください。 110 00:09:40,150 --> 00:09:42,190 よし 頼んだぞ。 111 00:09:42,190 --> 00:09:46,240 やめとけ やめとけ。 お前たちが敵う相手じゃないわ。 112 00:09:46,240 --> 00:09:49,110 そうそう よせばいいのに。 113 00:09:49,110 --> 00:09:53,600 2人は ほろ酔い気分で 峠に向かいました。 114 00:09:53,600 --> 00:09:58,790 (2人)褒美だ 褒美だ! おとん狐をやっつけろ! 115 00:09:58,790 --> 00:10:00,790 うわっ! 116 00:10:00,790 --> 00:10:03,740 いたぞ いたぞ。 おとん狐だ。 117 00:10:03,740 --> 00:10:06,110 あんなヤツに騙されてたまるか。 118 00:10:06,110 --> 00:10:34,120 ~ 119 00:10:34,120 --> 00:10:36,120 (2人)うわっ! 120 00:10:38,780 --> 00:10:42,410 アイツどんなことをするのか。 見てやろうじゃないか。 121 00:10:42,410 --> 00:10:55,790 ~ 122 00:10:55,790 --> 00:10:58,410 かわいそうに。 爺さまと 婆さまは 123 00:10:58,410 --> 00:11:01,450 おとん狐に化かされていなさるよ。 124 00:11:01,450 --> 00:11:04,420 なんとか教えてやりてえな。 125 00:11:04,420 --> 00:11:10,130 そうだ。 ワンワンワン ワオーン! 126 00:11:10,130 --> 00:11:12,760 何ごとかのう。 127 00:11:12,760 --> 00:11:15,450 (2人)婆さま! 128 00:11:15,450 --> 00:11:17,780 あの女は狐が化けてんだよ! 129 00:11:17,780 --> 00:11:19,840 何言っとるだ。 130 00:11:19,840 --> 00:11:22,750 あれは ホントに狐が化けた女なんだよ。 131 00:11:22,750 --> 00:11:25,740 ウフフフフッ。 132 00:11:25,740 --> 00:11:28,790 2人は 峠で見たことを話しましたが 133 00:11:28,790 --> 00:11:31,760 何度言っても 婆さまは 信じてくれませんでした。 134 00:11:31,760 --> 00:11:36,120 何ごとじゃ。 135 00:11:36,120 --> 00:11:41,420 さっき この家に入ったのは 狐が化けた女なんだよ! 136 00:11:41,420 --> 00:11:46,420 お前たち酒クサイな。 酔っ払って 夢でも見てるんじゃろう。 137 00:11:51,470 --> 00:11:54,090 この反物の正体は汚れたムシロだ。 138 00:11:54,090 --> 00:11:56,120 見てろよ! 139 00:11:56,120 --> 00:11:58,940 (2人)あっ! やめんか! 140 00:11:58,940 --> 00:12:03,830 (2人)あっ あ~っ! 141 00:12:03,830 --> 00:12:07,800 何をする! これは嫁入りする娘のために 142 00:12:07,800 --> 00:12:11,840 大枚を叩いて織らせた反物なのに。 143 00:12:11,840 --> 00:12:15,840 何 今にもとの ボロムシロに戻るから見ていなさい。 144 00:12:21,760 --> 00:12:26,360 おりゃ! (2人)あっ! 145 00:12:29,790 --> 00:12:34,080 しかし ちぎってもちぎっても 反物は ムシロに戻りません。 146 00:12:34,080 --> 00:12:36,110 うりゃ! 147 00:12:36,110 --> 00:12:38,410 ありゃ? おりゃ? 148 00:12:42,100 --> 00:12:44,100 (2人)ん? 149 00:12:47,440 --> 00:12:50,410 あ~ 大切な反物が。 150 00:12:50,410 --> 00:12:55,460 何の恨みがあって 娘の反物を台なしにした。 151 00:12:55,460 --> 00:12:58,070 い いや これは…。 弁償しろ! 152 00:12:58,070 --> 00:13:00,500 弁償って言われても。 153 00:13:00,500 --> 00:13:04,260 弁償できねえなら 奉行所へ突き出してやる! 154 00:13:04,260 --> 00:13:06,460 あ~ 許してくれ。 155 00:13:06,460 --> 00:13:08,430 勘弁してください! 156 00:13:08,430 --> 00:13:14,120 爺さまは2人を放さず 奉行所へと向かっていきました。 157 00:13:14,120 --> 00:13:17,790 すると そこに和尚さんが 通りかかりました。 158 00:13:17,790 --> 00:13:22,740 どうしたんじゃ。 実は…。 159 00:13:22,740 --> 00:13:26,800 和尚さんは 爺さまから 騒ぎのわけを聞きました。 160 00:13:26,800 --> 00:13:30,120 よう聞きなされ。 161 00:13:30,120 --> 00:13:33,120 この若者たちは 爺さまと 婆さまが 162 00:13:33,120 --> 00:13:37,090 長年コツコツと貯めた金で 買った大事な反物を 163 00:13:37,090 --> 00:13:39,120 引き裂いてしまった。 164 00:13:39,120 --> 00:13:43,450 けれど これは2人が 爺さまと 婆さまが 165 00:13:43,450 --> 00:13:46,110 騙されては気の毒だと思い 166 00:13:46,110 --> 00:13:48,520 よかれと思ってやったことじゃ。 167 00:13:48,520 --> 00:13:53,520 そうなんだ。 おいらは爺さまと 婆さまのことを思って。 168 00:14:04,470 --> 00:14:08,450 この2人を奉行所にやって 罪人にしても 169 00:14:08,450 --> 00:14:11,840 引き裂いた反物は 元に戻らぬ。 170 00:14:11,840 --> 00:14:16,340 しばらく 寺に預けて 改心させては いかがかな? 171 00:14:18,780 --> 00:14:22,670 和尚さんは 2人を寺に連れていきました。 172 00:14:22,670 --> 00:14:26,170 お前たちも 頭を丸めたほうがよかろう。 173 00:14:28,760 --> 00:14:32,460 さあ 本堂で 爺さま 婆さまを 悲しませたことを 174 00:14:32,460 --> 00:14:35,450 反省しながら 拝みなさい。 175 00:14:35,450 --> 00:14:37,450 (2人)はい。 176 00:14:45,610 --> 00:14:55,110 (木魚の音) 177 00:14:58,120 --> 00:15:00,460 イテッ… イテッ! 痛い 痛い! 178 00:15:00,460 --> 00:15:02,790 (2人)痛い 痛い… 痛い! 痛い 痛い! 179 00:15:02,790 --> 00:15:05,160 あ~っ…。 頭が痛い…。 180 00:15:05,160 --> 00:15:07,430 俺もだ。 181 00:15:07,430 --> 00:15:11,830 ここは どこだ? 木魚を叩いていたつもりだが…。 182 00:15:11,830 --> 00:15:14,770 お互いの頭を叩いとったか。 183 00:15:14,770 --> 00:15:17,770 おとん狐 恐るべし。 184 00:15:22,740 --> 00:15:33,150 (笑い声) 185 00:15:33,150 --> 00:15:35,750 (キツネの鳴き声) 186 00:15:44,290 --> 00:15:48,680 ある町に 相九郎という男がいた。 187 00:15:48,680 --> 00:15:51,750 この男が どうにも慌て者。 188 00:15:51,750 --> 00:15:56,620 人が何か言うと すぐ早合点して 飛んでいってしまう。 189 00:15:56,620 --> 00:15:59,590 ある日のこと。 190 00:15:59,590 --> 00:16:02,940 あんた 今日 町でな…。 191 00:16:02,940 --> 00:16:05,680 町か? よし きた!! 192 00:16:05,680 --> 00:16:07,680 はあ? 193 00:16:09,920 --> 00:16:13,290 ハア… ハア… ハア…。 194 00:16:13,290 --> 00:16:16,960 さて なんで おら ここに来たんだったかな? 195 00:16:16,960 --> 00:16:19,570 誰かに聞いてみるか。 196 00:16:19,570 --> 00:16:22,630 ちょっと すまんがのう。 はい 何でしょうか? 197 00:16:22,630 --> 00:16:25,230 おら なんで ここにいるだかね? 198 00:16:25,230 --> 00:16:27,280 はあ? 199 00:16:27,280 --> 00:16:29,620 いや だから おら なんで ここにいるだかね? 200 00:16:29,620 --> 00:16:31,920 あんたが なんで ここにいるかなんて 201 00:16:31,920 --> 00:16:34,260 私に わかるわけないでしょ。 202 00:16:34,260 --> 00:16:37,330 やっぱり そうか。 さようなら! 203 00:16:37,330 --> 00:16:39,950 何だろうな? あの人は…。 204 00:16:39,950 --> 00:16:43,250 勝手にしゃべって 勝手に行っちまったよ。 205 00:16:43,250 --> 00:16:48,240 あそこに易者がいるぞ。 易者なら わかるべぇかな? 206 00:16:48,240 --> 00:16:50,790 あの… すみません。 はい いらっしゃい。 207 00:16:50,790 --> 00:16:52,740 何を見ましょうかな? 208 00:16:52,740 --> 00:16:55,830 あんたを易者と見込んで 聞きますがのう。 209 00:16:55,830 --> 00:16:59,250 オホン… 黙って座れば ピタリと当たる。 210 00:16:59,250 --> 00:17:02,280 じゃあ おらが なんで ここに来たか 教えてくれ。 211 00:17:02,280 --> 00:17:05,690 は? あなたが なんで ここにいるかですと? 212 00:17:05,690 --> 00:17:07,960 どれどれ。 213 00:17:07,960 --> 00:17:10,430 フム… よく わからんですな。 214 00:17:10,430 --> 00:17:14,280 なんだ? 黙って座れば ピタリと当たると言ったでねえか! 215 00:17:14,280 --> 00:17:16,260 そ… そんな無茶な…。 216 00:17:16,260 --> 00:17:18,280 早く教えてくれろ! 217 00:17:18,280 --> 00:17:20,270 わ… わかりました。 218 00:17:20,270 --> 00:17:23,910 一度 振り出しに戻って考えれば 思い出すんじゃないんですか? 219 00:17:23,910 --> 00:17:26,940 振り出しに戻る? わかった! 220 00:17:26,940 --> 00:17:29,910 お~っとっとっとっとっと! 221 00:17:29,910 --> 00:17:32,980 おっとっとっと…。 ああ あんた。 222 00:17:32,980 --> 00:17:35,920 おら 町へ行って 何するんじゃったかな? 223 00:17:35,920 --> 00:17:39,290 そうでのうて 町で おばさんにな…。 224 00:17:39,290 --> 00:17:41,570 そうか! おばさんか。 225 00:17:41,570 --> 00:17:43,590 あっ…。 226 00:17:43,590 --> 00:17:46,260 とっとっとっとっ…。 お~っとっとっと。 227 00:17:46,260 --> 00:17:48,300 こんちは! 228 00:17:48,300 --> 00:17:51,950 おや 相九郎さん。 久しぶりだね。 変わりはないかい? 229 00:17:51,950 --> 00:17:54,970 ああ おらは元気だ。 おばさんは どうですかね? 230 00:17:54,970 --> 00:17:59,610 あたしゃ 元気だよ。 ところで 今日は何の用だい? 231 00:17:59,610 --> 00:18:02,280 ハア… おら 何しに来たんだっけ? 232 00:18:02,280 --> 00:18:04,650 そりゃ あたしゃ知らんがな。 233 00:18:04,650 --> 00:18:06,700 そりゃ そうか。 234 00:18:06,700 --> 00:18:11,920 お~っと! とっとっとっとっ…。 235 00:18:11,920 --> 00:18:14,360 てい~っ! 236 00:18:14,360 --> 00:18:17,960 おら おばさんちに 何しにいったんだっけ? 237 00:18:17,960 --> 00:18:21,130 あんた 落ち着いて よう聞いてな。 238 00:18:21,130 --> 00:18:23,730 おら 落ち着いてるだ。 お前が 町でおばさんと 239 00:18:23,730 --> 00:18:26,300 言うたので 行ってみたんじゃ。 そうでのうて。 240 00:18:26,300 --> 00:18:31,270 町で おばさんに おうたら 元気でよかったっちゅう話じゃ。 241 00:18:31,270 --> 00:18:35,780 あぁ たしかに元気じゃった。 アハハハハ! 242 00:18:35,780 --> 00:18:42,120 そんな男だったので 村の者は そそうの相九郎と呼んでいたが 243 00:18:42,120 --> 00:18:48,120 そのうち ただ そそうさん と 呼ぶようになっていた。 244 00:18:48,120 --> 00:18:50,290 集まってもらったのは 他でもない 245 00:18:50,290 --> 00:18:53,250 今年も 辻仕事の時期になったでのう。 246 00:18:53,250 --> 00:18:56,460 皆の衆に 道の修繕を頼みたい。 247 00:18:56,460 --> 00:19:00,590 明日は ひとつ よろしくお願いしますよ。 248 00:19:00,590 --> 00:19:05,090 そういうわけだで 弁当こさえといてくれ。 あいよ。 249 00:19:08,580 --> 00:19:12,910 あんた 起きや。 むにゃ…。 250 00:19:12,910 --> 00:19:17,640 あんた 早よ起きや。 弁当できてるだで。 251 00:19:17,640 --> 00:19:21,010 そうか よっしゃ! 252 00:19:21,010 --> 00:19:23,930 行ってくるぜ! 253 00:19:23,930 --> 00:19:25,930 はぁ? 254 00:19:33,570 --> 00:19:38,660 あれ? うちのカカアめ! 弁当じゃのうて 枕 持たした! 255 00:19:38,660 --> 00:19:41,260 あの粗忽もんめ! 文句言うてくる! 256 00:19:43,630 --> 00:19:46,280 やい コラ! 枕なんぞ 誰が食えるか! 257 00:19:46,280 --> 00:19:50,940 痛っ! 何すんだ! 何するも どうするも… ん? 258 00:19:50,940 --> 00:19:54,660 アイタタ…。 人の女房に何するだ! 259 00:19:54,660 --> 00:19:57,260 しもた! 間違えた! さようなら。 260 00:19:59,240 --> 00:20:02,130 ん? けんども 人んちの女房 叩いて 261 00:20:02,130 --> 00:20:04,200 帰るわけにはいかんで。 262 00:20:04,200 --> 00:20:07,500 おらが悪かったんだ。 謝ってこよう。 263 00:20:11,320 --> 00:20:13,440 さっきは おらが悪かった。 264 00:20:13,440 --> 00:20:16,240 はぁ? 耳が遠いだで…。 265 00:20:16,240 --> 00:20:18,630 さっきは おらが悪かった。 266 00:20:18,630 --> 00:20:21,920 あ~ 五月の空は青いな。 267 00:20:21,920 --> 00:20:26,300 そうじゃのうて さっきは おらが悪かった と言ってるだ。 268 00:20:26,300 --> 00:20:32,280 はいはい。 腹が悪かったのかい。 薬飲んで 大事にせにゃあのう。 269 00:20:32,280 --> 00:20:36,260 腹など悪くないわ。 さっきは おらが悪かった と言ってるだ。 270 00:20:36,260 --> 00:20:39,570 聞こえんのか!? やだよう…。 271 00:20:39,570 --> 00:20:42,340 あたしゃ おならなんかしてないよ。 272 00:20:42,340 --> 00:20:44,640 ありゃ こりゃ人違いだ! 273 00:20:46,940 --> 00:20:48,930 ここだ ここだ! 274 00:20:48,930 --> 00:20:51,580 さっきは 女将さんを叩いて 悪かった! 275 00:20:51,580 --> 00:20:53,600 (うなり声) 276 00:20:53,600 --> 00:20:56,970 そげに怒らんでくれ。 (吠え声) 277 00:20:56,970 --> 00:20:59,900 あれ? また 人違いだ! わぁ~! 278 00:20:59,900 --> 00:21:07,950 ~ 279 00:21:07,950 --> 00:21:11,070 さっきは悪かった! 女房を叩いて…。 280 00:21:11,070 --> 00:21:14,120 いつ おらを叩いたって? 281 00:21:14,120 --> 00:21:17,290 ありゃ お前!? なんで よその家にいるんだ? 282 00:21:17,290 --> 00:21:19,960 お前さん 何を言ってるんだ? 283 00:21:19,960 --> 00:21:23,350 おらも そそっかしいが お前も相当なもんだな。 284 00:21:23,350 --> 00:21:25,780 よその家で針仕事してるなんて。 285 00:21:25,780 --> 00:21:29,230 人の家で針仕事するもんは おらんだろう。 286 00:21:29,230 --> 00:21:33,740 あんた 落ち着いて よく見てみろ。 自分家だろ? 287 00:21:33,740 --> 00:21:37,340 は? あれ ホントだ! おらの家だ。 288 00:21:37,340 --> 00:21:40,910 よかった よかった。 やっと 自分家に戻ってこれたな。 289 00:21:40,910 --> 00:21:45,780 お前もしばらく見ないうちに ずいぶんと 歳とったな。 290 00:21:45,780 --> 00:21:49,690 バカ言ってるでねえ! 朝に出ていったばかりだろ。 291 00:21:49,690 --> 00:21:52,260 それより ちょうど いいところへ 帰ってきた。 292 00:21:52,260 --> 00:21:55,630 忘れ物していったろ? 忘れ物? 293 00:21:55,630 --> 00:21:59,630 これだよ お前さん。 せっかく こさえた弁当。 294 00:21:59,630 --> 00:22:01,780 そうじゃ 弁当じゃ! 295 00:22:01,780 --> 00:22:05,790 わしの弁当 どこじゃ~!? 296 00:22:05,790 --> 00:22:07,920 どこじゃ? どこじゃ!? 297 00:22:07,920 --> 00:22:11,340 ん? なんで こんなところに 枕が落ちておるんじゃ? 298 00:22:11,340 --> 00:22:13,330 わしの弁当 どこじゃ!? 299 00:22:13,330 --> 00:22:15,280 コラーッ! あっ! 300 00:22:15,280 --> 00:22:19,180 おらの女房 なんで叩いた~!? 301 00:22:19,180 --> 00:22:22,420 あ~っ! コラーッ! 302 00:22:22,420 --> 00:22:25,960 お前さ~ん ほれ 弁当! 303 00:22:25,960 --> 00:22:30,430 あっ そうじゃ! 弁当 忘れてきたんじゃった~。 304 00:22:30,430 --> 00:22:34,230 やれやれ 話は最後まで聞くもんじゃなぁ。