1 00:01:44,340 --> 00:01:46,800 昔むかし あるところに 2 00:01:46,800 --> 00:01:50,300 とても穏やかな心を 持っているが 3 00:01:50,300 --> 00:01:54,370 どうにも うだつの上がらぬ男がいた。 4 00:01:54,370 --> 00:01:59,660 歳は もう 四十に近いというのに 嫁の来手もない。 5 00:01:59,660 --> 00:02:02,080 親も とうに亡くして 6 00:02:02,080 --> 00:02:05,680 小さなあばら家に ひとりで暮らしていた。 7 00:02:05,680 --> 00:02:09,300 ある日の晩のこと。 (ノック) 8 00:02:09,300 --> 00:02:11,350 なんだべ? 9 00:02:11,350 --> 00:02:13,670 戸を開けてみると なんと まぁ 10 00:02:13,670 --> 00:02:17,680 見たこともないような 美しい女が立っていた。 11 00:02:17,680 --> 00:02:20,080 夢だべか。 (ノック) 12 00:02:20,080 --> 00:02:21,980 うわ~! すみません。 13 00:02:21,980 --> 00:02:24,680 道に迷ってしまいました。 14 00:02:24,680 --> 00:02:28,820 今晩 ひと晩 泊めてはもらえませぬか? 15 00:02:28,820 --> 00:02:31,360 おら 男一人の暮らしだで。 16 00:02:31,360 --> 00:02:36,330 かまいませんから どうか 泊めてくださいまし。 17 00:02:36,330 --> 00:02:39,930 男は 女を泊めてやることにした。 18 00:02:42,350 --> 00:02:45,640 朝になっても 女は 家から去ろうとしない。 19 00:02:45,640 --> 00:02:47,670 夕方になると…。 20 00:02:47,670 --> 00:02:49,670 お手伝いいたしましょう。 21 00:02:51,810 --> 00:02:54,680 夕飯の支度をしてくれる。 22 00:02:54,680 --> 00:02:57,980 こんな ありがたいことはない。 23 00:03:03,670 --> 00:03:08,330 2日経っても 3日経っても 女は去ろうとしなかった。 24 00:03:08,330 --> 00:03:10,350 ある日のこと。 25 00:03:10,350 --> 00:03:13,980 私を嫁にもらってくれませぬか? え~っ!? 26 00:03:13,980 --> 00:03:17,690 あ… あ… あぁ~! 27 00:03:17,690 --> 00:03:21,340 おらで ええのか? はい。 28 00:03:21,340 --> 00:03:25,310 こんなに きれいな人が 自分の嫁になってくれた。 29 00:03:25,310 --> 00:03:28,850 男は 嬉しくて嬉しくて たまらなかった。 30 00:03:28,850 --> 00:03:32,870 畑へ出ても 嫁のことが 気にかかって しようがない。 31 00:03:32,870 --> 00:03:35,820 ひとうね耕しては 走って 家に帰り…。 32 00:03:35,820 --> 00:03:38,210 我が嫁や 顔見せろや。 33 00:03:38,210 --> 00:03:40,480 また ひとうね耕すと。 34 00:03:40,480 --> 00:03:43,000 嫁! 35 00:03:43,000 --> 00:03:46,670 いつも 嫁の美しい顔を 見ていたかった。 36 00:03:46,670 --> 00:03:49,350 ところが これでは 仕事にならない。 37 00:03:49,350 --> 00:03:54,240 困った嫁は 絵師に 自分の姿を 描いてもらうことにした。 38 00:03:54,240 --> 00:03:56,310 これを 私だと思って…。 39 00:03:56,310 --> 00:03:59,910 絵を眺めながら 仕事をしなされ。 40 00:03:59,910 --> 00:04:03,510 なるほど! この絵を お前と思えばいいんだな。 41 00:04:05,550 --> 00:04:09,550 男は 絵を眺めながら 仕事をするようになった。 42 00:04:11,570 --> 00:04:13,980 ところが ある日のこと。 43 00:04:13,980 --> 00:04:19,020 急に 強い風が吹いて 嫁の絵が飛ばされてしまった。 44 00:04:19,020 --> 00:04:21,990 うわ~! おらの嫁が…。 45 00:04:21,990 --> 00:04:26,060 絵は はるか空を舞い…。 46 00:04:26,060 --> 00:04:31,380 やがて 殿様の住む御殿に落ちた。 47 00:04:31,380 --> 00:04:34,500 おぉ~! なんと美しい…。 48 00:04:34,500 --> 00:04:38,950 絵があるなら 絵に写された女がいるに違いない。 49 00:04:38,950 --> 00:04:43,450 この絵の女を さがしてまいれ! (3人)はっ! 50 00:04:45,830 --> 00:04:48,510 この女を知っているか? 知らねえ。 51 00:04:48,510 --> 00:04:50,650 知っているか? うんにゃ。 52 00:04:50,650 --> 00:04:53,180 知っているか? おら 知らねえ。 53 00:04:53,180 --> 00:04:55,180 この女を知っているか? 54 00:04:55,180 --> 00:04:59,010 あっ! これは おらの嫁の絵姿じゃ。 55 00:04:59,010 --> 00:05:01,510 お前の嫁? 56 00:05:03,480 --> 00:05:05,480 (3人)えっ!? 57 00:05:05,480 --> 00:05:09,980 まさしく 絵のとおりの美しい女が そこにいるではないか。 58 00:05:09,980 --> 00:05:14,090 殿の言いつけにより この女は連れていく。 59 00:05:14,090 --> 00:05:18,190 えっ!? そんな! おらの嫁だで。 勘弁してくだせぇ!! 60 00:05:18,190 --> 00:05:20,490 ええい! わぁ~! 61 00:05:20,490 --> 00:05:23,660 殿様の言いつけでは しかたありませぬ。 62 00:05:23,660 --> 00:05:26,350 私は 行きますが これを…。 63 00:05:26,350 --> 00:05:30,300 別れぎわに 桃の種が入った袋を渡した。 64 00:05:30,300 --> 00:05:35,040 これを植えて 実がなりましたら 殿様の御殿に売りにきてください。 65 00:05:35,040 --> 00:05:37,410 きっと 私に会えますから! 66 00:05:37,410 --> 00:05:39,650 うぅ…。 67 00:05:39,650 --> 00:05:45,070 殿様は 絵のとおりの美しい女が やってきたので とても喜んだ。 68 00:05:45,070 --> 00:05:50,010 それからは 美しい着物を着せ いつも そばに置いた。 69 00:05:50,010 --> 00:05:53,030 だが 女は 決して 笑うことはなかった。 70 00:05:53,030 --> 00:05:57,500 どんな言葉をかけても どんなごちそうを並べても 71 00:05:57,500 --> 00:05:59,650 女は 決して笑わなかった。 72 00:05:59,650 --> 00:06:03,350 あるときなど おもしろい曲芸を見せたが…。 73 00:06:03,350 --> 00:06:06,810 女は やっぱり笑わない。 74 00:06:06,810 --> 00:06:09,860 お前は どうして笑わぬのだ? 75 00:06:09,860 --> 00:06:14,900 さぁ どうしてでございましょう。 うぅ~! 76 00:06:14,900 --> 00:06:18,820 殿様は どうにかして 女の笑ったところを見たいと 77 00:06:18,820 --> 00:06:20,850 思うようになった。 78 00:06:20,850 --> 00:06:24,810 一方 嫁を失って ひとりぼっちに なってしまった男は 79 00:06:24,810 --> 00:06:28,340 ただ 嫁の言葉を 信じるしかなかった。 80 00:06:28,340 --> 00:06:32,300 桃の種を植えると 来る日も来る日も世話を焼き 81 00:06:32,300 --> 00:06:34,300 桃が実るのを待った。 82 00:06:34,300 --> 00:06:37,720 何年か経った 夏のはじめのこと。 83 00:06:37,720 --> 00:06:41,810 とうとう 桃の実がなった。 84 00:06:41,810 --> 00:06:46,180 男は 待ちきれぬ思いで 桃の実を摘みとり 85 00:06:46,180 --> 00:06:48,330 殿様の御殿に向かった。 86 00:06:48,330 --> 00:06:52,130 おいしい桃! 87 00:06:54,370 --> 00:06:59,010 甘い桃だよ とろける桃だよ! 88 00:06:59,010 --> 00:07:02,650 女房のほっぺと瓜二つ! 89 00:07:02,650 --> 00:07:05,350 フフフ! あの声が そんなにおかしいか? 90 00:07:05,350 --> 00:07:09,840 桃売りが見とうございます。 そうか そうか。 91 00:07:09,840 --> 00:07:13,340 殿様は 桃売りを御殿の庭に招いた。 92 00:07:15,530 --> 00:07:17,510 わぁ~! 93 00:07:17,510 --> 00:07:21,030 甘い桃だよ とろける桃だよ。 94 00:07:21,030 --> 00:07:24,530 女房のほっぺと瓜二つ! 95 00:07:24,530 --> 00:07:26,820 殿様は やきもちをやいた。 96 00:07:26,820 --> 00:07:29,520 そんなに桃売りが おもしろいか!? 97 00:07:29,520 --> 00:07:33,390 おい 桃売りよ! お前の着ている服を貸せ! 98 00:07:33,390 --> 00:07:37,180 殿様は 桃売りの真似をして 女を喜ばせようとしたが…。 99 00:07:37,180 --> 00:07:39,150 うわっ! 100 00:07:39,150 --> 00:07:41,600 うまくいかない。 101 00:07:41,600 --> 00:07:46,020 そ… そうだ。 外で本当に 桃を売ってくるぞ。 102 00:07:46,020 --> 00:07:50,640 殿様は 桃売りの格好のまま 御殿の外へ出かけた。 103 00:07:50,640 --> 00:07:54,500 桃! 桃! 104 00:07:54,500 --> 00:07:58,070 日が暮れたので 殿様は御殿に戻った。 105 00:07:58,070 --> 00:08:00,990 桃売りは 御殿には入れぬぞ。 立ち去れ。 106 00:08:00,990 --> 00:08:04,190 何を言う!? わしは この国の殿であるぞ! 107 00:08:04,190 --> 00:08:06,530 開けろ! ふざけるな! 108 00:08:06,530 --> 00:08:10,350 桃売りの格好をした殿様が どこにいるんだ! 109 00:08:10,350 --> 00:08:16,350 んっ!? うまそうな桃だな。 ひとつくれ。 110 00:08:16,350 --> 00:08:20,840 殿様は 仕方なく 桃売りになったという。 111 00:08:20,840 --> 00:08:24,210 そして 桃売りの男は 殿様となり→ 112 00:08:24,210 --> 00:08:29,010 再び 嫁と一緒に いつまでも 仲よく暮らしたということだ。 113 00:08:31,050 --> 00:08:35,350 桃! 桃はいらんかね。 114 00:08:44,800 --> 00:08:49,260 美しい お堀があります。 115 00:08:49,260 --> 00:08:54,760 そこには たくさんのコイやフナが すんでいました。 116 00:09:02,310 --> 00:09:06,060 昼の間は 全然 釣れないのに→ 117 00:09:06,060 --> 00:09:09,860 夕方になると…。 118 00:09:15,050 --> 00:09:20,350 釣れて釣れて 魚籠がいっぱいになるのです。 119 00:09:27,860 --> 00:09:31,660 さて 帰ろうとすると…。 120 00:09:38,740 --> 00:09:45,240 おいてけ~ おいてけ~。 121 00:09:49,990 --> 00:09:54,420 お堀の底から 恐ろしい声が響いてきます。 122 00:09:54,420 --> 00:09:59,850 なので このお堀で釣りをする人は 誰もいませんでした。 123 00:09:59,850 --> 00:10:03,900 ある日 町一番の 肝のすわった男が→ 124 00:10:03,900 --> 00:10:08,500 このお堀で魚を釣ってやろうと 思い立ちました。 125 00:10:12,190 --> 00:10:14,990 なにが こえぇもんかい! 126 00:10:18,680 --> 00:10:20,870 おいてけ おいてけって 言いやがったって→ 127 00:10:20,870 --> 00:10:23,370 誰が おいてなんぞいくもんか! 128 00:10:26,840 --> 00:10:31,880 あんた~ 行くのは やめておくれ。 129 00:10:31,880 --> 00:10:34,300 てやんで~! 130 00:10:34,300 --> 00:10:36,880 男は 女房が止めるのも聞かず→ 131 00:10:36,880 --> 00:10:39,680 お堀に出かけていきました。 132 00:10:59,360 --> 00:11:04,840 やはり 昼の間は 一匹も釣れませんでした。 133 00:11:04,840 --> 00:11:08,680 (カラスの鳴き声) 134 00:11:08,680 --> 00:11:12,180 夕方になって急に釣れ始めました。 135 00:11:20,390 --> 00:11:23,390 おお 入れ食いだ! 入れ食いだ! 136 00:11:29,070 --> 00:11:33,370 魚籠がいっぱいになったので 帰ろうとしたとき…。 137 00:11:37,340 --> 00:11:43,400 おいてけ~ おいてけ~。 138 00:11:43,400 --> 00:11:45,400 フン! 何が おいてけだ! 139 00:11:47,350 --> 00:11:52,950 おいてけ~ おいてけ~。 140 00:12:00,880 --> 00:12:03,480 もし…。 141 00:12:07,160 --> 00:12:09,860 もし…。 えっ? 142 00:12:09,860 --> 00:12:12,530 大きな柳の木の下に 143 00:12:12,530 --> 00:12:16,630 着物の袖で 顔を隠した女がいました。 144 00:12:18,690 --> 00:12:23,190 その魚籠の中の魚 私に売ってくださいな。 145 00:12:23,190 --> 00:12:26,160 お金は いくらでも払いますから。 146 00:12:26,160 --> 00:12:29,210 い… いや… これは 売るわけにはいかねえんだよ! 147 00:12:29,210 --> 00:12:31,460 そんなこと言わずに…。 148 00:12:31,460 --> 00:12:33,520 家へ持って帰って 食べるんだい。 149 00:12:33,520 --> 00:12:36,900 そんなこと言わずに 売ってください。 150 00:12:36,900 --> 00:12:39,470 売らねえったら 売らねえんだい! 151 00:12:39,470 --> 00:12:43,540 これでもかい? 152 00:12:43,540 --> 00:12:45,560 うわ~っ!! 153 00:12:45,560 --> 00:12:49,180 目も鼻も口もない のっぺらぼうです。 154 00:12:49,180 --> 00:12:51,150 あ… あ…。 155 00:12:51,150 --> 00:12:53,220 わ~っ!! 156 00:12:53,220 --> 00:12:55,860 それでも 町一番の肝っ玉男。 157 00:12:55,860 --> 00:12:58,840 魚籠だけは しっかり持って逃げた。 158 00:12:58,840 --> 00:13:00,840 わっ… わ~っ! 159 00:13:15,170 --> 00:13:18,480 今 けえったぞ。 160 00:13:18,480 --> 00:13:20,510 おかえりなさい。 161 00:13:20,510 --> 00:13:22,550 ほら。 162 00:13:22,550 --> 00:13:25,550 本当に たくさん釣れましたね。 163 00:13:28,860 --> 00:13:32,530 ひと息ついた男は 酒を ちびりちびり飲みながら 164 00:13:32,530 --> 00:13:35,880 釣りの話を自慢げに始めた。 165 00:13:35,880 --> 00:13:39,520 いや 昼間は なかなか釣れねえんだ。 166 00:13:39,520 --> 00:13:42,800 夕方になって 急に釣れはじめてよ。 167 00:13:42,800 --> 00:13:46,240 それこそ入れ食いだ。 魚籠が いっぱいになった。 168 00:13:46,240 --> 00:13:50,190 よし けえろうと思って 立ち上がったら お堀の底から 169 00:13:50,190 --> 00:13:57,150 おいてけ~ おいてけ~って でっけぇ声がしやがった。 170 00:13:57,150 --> 00:14:02,260 ハハハハハハハ! 何が こえぇもんか。 171 00:14:02,260 --> 00:14:06,810 そしたら今度は 着物を着た女が 声かけてきやがった。 172 00:14:06,810 --> 00:14:10,530 その女が 魚を売ってくれって言いやがる。 173 00:14:10,530 --> 00:14:13,870 ダメだと言っても しつこく 売ってくれって聞かねえんだ。 174 00:14:13,870 --> 00:14:18,810 持って帰って食うんだと言っても 売ってくれ 売ってくれって。 175 00:14:18,810 --> 00:14:21,190 そのあとが驚いた。 176 00:14:21,190 --> 00:14:23,830 小袖で隠していた顔を見たら 177 00:14:23,830 --> 00:14:28,510 なんと 目も鼻も口もねえ のっぺらぼうの顔してやがった。 178 00:14:28,510 --> 00:14:30,970 驚いたのなんの。 179 00:14:30,970 --> 00:14:35,860 ありゃ 何かの見間違いだな。 ハハハハハハ! 180 00:14:35,860 --> 00:14:37,890 そうでしたか。 181 00:14:37,890 --> 00:14:39,890 おっ…。 182 00:14:41,810 --> 00:14:44,180 どうしたんだ? 明かりは。 183 00:14:44,180 --> 00:14:46,170 お前さん それは…。 184 00:14:46,170 --> 00:14:48,180 ああ? 185 00:14:48,180 --> 00:14:50,850 こんな顔ではなかったですか? 186 00:14:50,850 --> 00:14:53,910 ギャーッ!! 187 00:14:53,910 --> 00:14:57,210 あっ… あっ… うわ~っ! 188 00:14:59,180 --> 00:15:02,030 ぐっ… 助けてくれ!! 189 00:15:02,030 --> 00:15:04,700 おいてけ~。 190 00:15:04,700 --> 00:15:08,340 わ~っ! 191 00:15:08,340 --> 00:15:12,140 ギャーッ!! 192 00:15:14,190 --> 00:15:17,810 男は 草原に ひっくり返っていました。 193 00:15:17,810 --> 00:15:22,520 魚も竿も ありませんでした。 194 00:15:22,520 --> 00:15:25,540 そのあと 男は 二度と 195 00:15:25,540 --> 00:15:28,840 魚を釣りにいくことは なかったそうです。 196 00:15:31,890 --> 00:15:34,890 おいてけ~。 197 00:15:42,360 --> 00:15:47,020 真っ暗な夜 2人の男が歩いていた。 198 00:15:47,020 --> 00:15:50,650 ひとりの男は七夕の笹売りで 199 00:15:50,650 --> 00:15:54,360 もうひとりは 空にあげる凧を売る男だった。 200 00:15:54,360 --> 00:15:57,740 一つも売れないまま 面倒くさくなって 201 00:15:57,740 --> 00:16:00,680 売り物を放り投げてしまった。 202 00:16:00,680 --> 00:16:04,050 そんなわけで この2人… 。 203 00:16:04,050 --> 00:16:05,970 一文なし。 204 00:16:05,970 --> 00:16:10,870 腹 減ったな 食いもんでも落ちてないかな。 205 00:16:10,870 --> 00:16:14,330 さっき イモのかけらを拾ったぞ。 206 00:16:14,330 --> 00:16:18,010 な… なんだって? その イモのかけら どうした? 207 00:16:18,010 --> 00:16:21,030 生で ゴジゴジしてたから捨てた。 208 00:16:21,030 --> 00:16:23,970 捨てただと? なんて もったいないことするんじゃ! 209 00:16:23,970 --> 00:16:27,020 おいらが拾ったものを どうしようと 210 00:16:27,020 --> 00:16:29,330 おいらの勝手じゃろう! 211 00:16:29,330 --> 00:16:32,360 ああ その イモ 焼いて食いたかった! 212 00:16:32,360 --> 00:16:35,370 今度 拾ったら わしに よこすんじゃぞ! 213 00:16:35,370 --> 00:16:37,650 2人は 下を向いて歩いたが 214 00:16:37,650 --> 00:16:40,690 真っ暗な夜のため 何も見えんかった。 215 00:16:40,690 --> 00:16:43,070 ギャッ! 216 00:16:43,070 --> 00:16:48,410 何するだ。 人の頭 踏んづけて。 217 00:16:48,410 --> 00:16:53,710 てなわけで 3人は 近くの村まで 一緒に行くことにした。 218 00:16:55,670 --> 00:16:59,020 夜が明けて 周りが よく見えるようになると…。 219 00:16:59,020 --> 00:17:02,690 お… おい お前 どうした? 裸だぞ。 220 00:17:02,690 --> 00:17:06,460 はい 盗人に 身ぐるみ剥がされまして…。 221 00:17:06,460 --> 00:17:09,020 盗人に襲われる前は 222 00:17:09,020 --> 00:17:11,670 銭を いくらか 持っていたのだけど 223 00:17:11,670 --> 00:17:14,170 今は一文なし。 224 00:17:16,360 --> 00:17:19,480 夜が明けると 足元が見えていいな。 225 00:17:19,480 --> 00:17:23,200 あぁ。 金が落ちてても すぐ わかりますからね。 226 00:17:23,200 --> 00:17:26,570 ビタ銭でもいいから拾いてぇな。 227 00:17:26,570 --> 00:17:30,190 小さいこと言ってねえで もっと大きくいこうぜ。 228 00:17:30,190 --> 00:17:32,510 なら いくら拾ったらいい? 229 00:17:32,510 --> 00:17:34,970 どうせなら 100両といこうか! 230 00:17:34,970 --> 00:17:37,010 100!? 両!? 231 00:17:37,010 --> 00:17:40,200 そうよ 100両よ。 そりゃあ 豪儀だ。 232 00:17:40,200 --> 00:17:42,800 で 100両あったら どうする? 233 00:17:42,800 --> 00:17:45,640 え? う~ん…。 234 00:17:45,640 --> 00:17:49,310 そりゃあ 商売だな。 それも 魚屋がいい。 235 00:17:49,310 --> 00:17:51,340 なんで 魚屋なんだ? 236 00:17:51,340 --> 00:17:54,210 そりゃあ 魚屋になれば…。 なれば? 237 00:17:54,210 --> 00:17:57,310 朝は 鯛の塩焼きで一杯。 238 00:17:59,570 --> 00:18:02,070 昼は うなぎで一杯。 239 00:18:03,990 --> 00:18:06,590 夜は スズキの洗いで一杯。 240 00:18:08,840 --> 00:18:12,710 そりゃいいや。 あっしにも手伝わせてくださいな。 241 00:18:12,710 --> 00:18:15,680 おう いいとも。 やとってやるよ。 242 00:18:15,680 --> 00:18:18,530 へぇ~ おいら 魚屋の手代だ。 243 00:18:18,530 --> 00:18:22,810 じゃあ おいらは その魚屋の隣で 骨董屋でも やろうか。 244 00:18:22,810 --> 00:18:26,840 ん? なんで お前が 俺の店の隣なんだよ! 245 00:18:26,840 --> 00:18:31,650 え!? だって 半分の50両 おいらに分けてくれるんだろ? 246 00:18:31,650 --> 00:18:35,850 誰が そんなこと言った!? さっき イモも分けてくれねえで! 247 00:18:35,850 --> 00:18:38,300 え~っ! あれは 生で…。 248 00:18:38,300 --> 00:18:42,340 アンタ それで 半分よこせとは ムシがよすぎる。 249 00:18:42,340 --> 00:18:45,680 うん! なんてったって 拾ったのは俺だ。 250 00:18:45,680 --> 00:18:47,810 だから 俺の金だ! 251 00:18:47,810 --> 00:18:49,850 そんなこと言わないで→ 252 00:18:49,850 --> 00:18:53,040 あっしにも 10両でいいから 分けてくださいな。 253 00:18:53,040 --> 00:18:58,120 3人の男は 分けろ 分けねえ と いつまでも言い争いを続けた。 254 00:18:58,120 --> 00:19:01,040 こうして 連れになったのも 何かの縁だ。 255 00:19:01,040 --> 00:19:03,150 独り占めはないだろう。 256 00:19:03,150 --> 00:19:06,180 なんだよ! 俺の金 横取りするつもりか? 257 00:19:06,180 --> 00:19:10,970 そうですよ。 ひどい人だ。 お前まで なんだよ…。 258 00:19:10,970 --> 00:19:15,680 この人は おいらを 魚屋で やとってくれるって言ったんだ。 259 00:19:15,680 --> 00:19:18,180 あぁ 言った。 やとってやるとも。 260 00:19:18,180 --> 00:19:22,000 やった! じゃあ 10両でいいから分けておくれ。 261 00:19:22,000 --> 00:19:24,300 い や だ! 262 00:19:31,020 --> 00:19:33,660 お前には 情けというものがないのか! 263 00:19:33,660 --> 00:19:36,060 そんなもんない! 264 00:19:36,060 --> 00:19:38,680 おい 魚屋手伝うんだったら こっち来い! 265 00:19:38,680 --> 00:19:41,500 へい! 266 00:19:41,500 --> 00:19:45,390 へぇへぇ ご主人様 ところで おいらの給金は 267 00:19:45,390 --> 00:19:47,310 いかほどもらえるんで? 268 00:19:47,310 --> 00:19:50,360 そうさな まぁ 50文ってとこか。 269 00:19:50,360 --> 00:19:52,360 えっ? 270 00:19:52,360 --> 00:19:57,860 50文。 100両の中から たった50文…。 271 00:20:02,390 --> 00:20:04,340 なぁ ちょっと聞いたか? 272 00:20:04,340 --> 00:20:07,980 朝から晩まで働いて たったの50文だとよ。 273 00:20:07,980 --> 00:20:10,010 そりゃ ひでぇや。 274 00:20:10,010 --> 00:20:14,400 コラ! この しみったれ! 給金 もっと上げろ! 275 00:20:14,400 --> 00:20:16,890 半分の50両よこせ! 276 00:20:16,890 --> 00:20:21,190 フン! 何言ってやがる。 もう金輪際 分けてやるもんか! 277 00:20:23,160 --> 00:20:25,340 金よこせ! 278 00:20:25,340 --> 00:20:29,250 給金上げろ! 50両よこせ! 279 00:20:29,250 --> 00:20:33,350 うなぎ食わせろ! この野郎! 280 00:20:42,850 --> 00:20:46,370 腹へった。 もう 3日も水ばかりじゃ。 281 00:20:46,370 --> 00:20:49,490 せめて 1両くれ! ん? 282 00:20:49,490 --> 00:20:54,690 山分けしろ! 盆 暮れぐらい 休ませろ。 283 00:20:54,690 --> 00:20:58,830 この浪人 ケンカの仲裁をして 礼をもらうのを 284 00:20:58,830 --> 00:21:01,350 稼ぎのひとつにしていた。 285 00:21:01,350 --> 00:21:04,350 やかましい! 100両よこせ! 286 00:21:04,350 --> 00:21:06,970 ひゃ… 100両! 287 00:21:06,970 --> 00:21:11,010 こりゃ ケンカになれば 10両ぐらいの仲裁料は…。 288 00:21:11,010 --> 00:21:13,640 いや! 5両くらいもらえるか。 289 00:21:13,640 --> 00:21:16,730 いやいや 欲張っちゃいかん 1両でいいんだ。 290 00:21:16,730 --> 00:21:19,530 1両あれば 天ぷらが たらふく食える。 291 00:21:23,840 --> 00:21:27,860 3人は 取っ組み合いのケンカを 始めておった。 292 00:21:27,860 --> 00:21:32,700 ヘッヘッ… ケンカじゃ。 1両は いただきじゃ。 293 00:21:32,700 --> 00:21:35,670 ケンカやめろ~! 294 00:21:35,670 --> 00:21:37,680 ん? アンタ 誰? 295 00:21:37,680 --> 00:21:41,470 拙者 ケンカ仲裁を商売にしている 浪人じゃ。 296 00:21:41,470 --> 00:21:43,670 なんか ご用で? 297 00:21:43,670 --> 00:21:46,690 見たところ ケンカの最中じゃな? 298 00:21:46,690 --> 00:21:48,960 そう ケンカの最中。 299 00:21:48,960 --> 00:21:52,680 まだ ケンカ続けるか? 300 00:21:52,680 --> 00:21:55,130 いや もう ケンカは やめた。 301 00:21:55,130 --> 00:21:57,850 じゃあ 仲直りじゃな。 (3人)うん。 302 00:21:57,850 --> 00:22:00,360 うん! ん? なんです? 303 00:22:00,360 --> 00:22:02,980 仲裁料 1両じゃ。 304 00:22:02,980 --> 00:22:07,010 1両じゃと? 誰が持ってる? 305 00:22:07,010 --> 00:22:10,630 早く出せ。 100両のうちの1両じゃ。 306 00:22:10,630 --> 00:22:13,040 100両のうちの? 1両? 307 00:22:13,040 --> 00:22:16,190 どこに ある? 308 00:22:16,190 --> 00:22:19,490 さぁ まずは 拾った100両 出してみろ! 309 00:22:19,490 --> 00:22:22,860 ん? そういえば 310 00:22:22,860 --> 00:22:26,350 まだ 100両…。 拾ってなかった。 311 00:22:26,350 --> 00:22:28,650 な… 何っ!? 312 00:22:31,390 --> 00:22:34,390 あ~ 1両損した…。