1 00:01:47,830 --> 00:01:51,810 ある村に 無理難題なお触れを出して 2 00:01:51,810 --> 00:01:55,970 村人たちを悩ませてばかりいる 殿様がいました。 3 00:01:55,970 --> 00:02:00,510 ある日のこと その お触れとは…。 4 00:02:00,510 --> 00:02:03,130 60歳になった年寄りは 5 00:02:03,130 --> 00:02:05,660 体が弱って なんにもできなくなるので 6 00:02:05,660 --> 00:02:09,150 山に連れていって 置いてくるように というのです。 7 00:02:09,150 --> 00:02:13,290 村人たちは ほとほと困ってしまいましたが 8 00:02:13,290 --> 00:02:16,320 殿様の言うことには逆らえません。 9 00:02:16,320 --> 00:02:20,380 そんな村人のなかに 一人の若者がいて 10 00:02:20,380 --> 00:02:24,830 その母親が ちょうど60歳に なったばかりでした。 11 00:02:24,830 --> 00:02:30,320 若者は家に帰ると 母親に お触れのことを話しました。 12 00:02:30,320 --> 00:02:35,710 すると母親は 村の人に いらぬ気遣いをさせぬために 13 00:02:35,710 --> 00:02:40,810 夜の明けないうちに ここを出ましょう と言った。 14 00:02:44,700 --> 00:02:50,040 そして息子は 母親を背負って 山を登ったのです。 15 00:02:50,040 --> 00:02:53,340 (枝を折る音) 16 00:02:55,660 --> 00:02:58,260 なんだ 気のせいか。 17 00:03:00,370 --> 00:03:04,370 (枝を折る音) 18 00:03:08,310 --> 00:03:10,660 おっ母 何してる? 19 00:03:10,660 --> 00:03:14,030 まさか その折った木を目印にして…。 20 00:03:14,030 --> 00:03:16,360 お前が家に帰るときに 21 00:03:16,360 --> 00:03:19,860 道に迷わんようにと思って しとることじゃ。 22 00:03:23,320 --> 00:03:35,620 ~ 23 00:03:35,620 --> 00:03:39,920 わしゃ 帰る! おっ母を連れて帰ることに決めた。 24 00:03:43,990 --> 00:03:47,380 そっと 家に戻り 25 00:03:47,380 --> 00:03:49,660 母親を 誰にも見つからないように 26 00:03:49,660 --> 00:03:53,030 縁の下に かくまうことにしたのです。 27 00:03:53,030 --> 00:03:56,630 すまねえな… おっ母…。 28 00:03:58,670 --> 00:04:02,290 次の日 若者は いつものように 畑に出た。 29 00:04:02,290 --> 00:04:05,160 どうも 戦が始まるようだ。 30 00:04:05,160 --> 00:04:07,120 そりゃ 大変じゃ。 31 00:04:07,120 --> 00:04:11,620 隣の国から手紙が来て この国を渡さなければ 32 00:04:11,620 --> 00:04:14,670 城を焼いて 灰にするぞ と言ってきた。 33 00:04:14,670 --> 00:04:19,630 今 城では大騒ぎじゃ。 上には上がおるもんじゃ。 34 00:04:19,630 --> 00:04:23,010 戦が始まるのか…。 35 00:04:23,010 --> 00:04:26,050 また こんなお触れが出た。 36 00:04:26,050 --> 00:04:29,620 灰で 縄をなってこい というものだった。 37 00:04:29,620 --> 00:04:33,840 灰で 縄をなるなんて できるはずがないじゃないか。 38 00:04:33,840 --> 00:04:38,630 ほんに おらたちを悩ませる 困ったお殿様じゃなぁ。 39 00:04:38,630 --> 00:04:43,030 《おっ母なら 何か よい知恵があるのでは…》 40 00:04:43,030 --> 00:04:47,620 縁の下にかくまっている母親に お触れのことを話すと…。 41 00:04:47,620 --> 00:04:51,210 な~に そんなことは 簡単なことじゃ。 42 00:04:51,210 --> 00:04:53,330 いいか? よくお聞き。 43 00:04:53,330 --> 00:04:57,620 縄を固くなって それを大事に焼けば 44 00:04:57,620 --> 00:05:02,020 灰でなった縄になる。 45 00:05:02,020 --> 00:05:07,630 それを壊さぬように そっと 殿様のところに持っていけばいい。 46 00:05:07,630 --> 00:05:09,950 ふぅ… できた。 47 00:05:09,950 --> 00:05:13,670 翌日 お城へ持っていくと…。 48 00:05:13,670 --> 00:05:17,550 ほう… これはみごとな 灰でなった縄じゃ。 49 00:05:17,550 --> 00:05:21,850 お前に褒美をつかわそう! ははっ! 50 00:05:24,710 --> 00:05:27,460 それから数日後のことです。 51 00:05:27,460 --> 00:05:30,880 今度のお触れは ほら貝に糸を通して 52 00:05:30,880 --> 00:05:33,130 持ってこい というものだった。 53 00:05:33,130 --> 00:05:36,040 今度という今度は 誰もできんじゃろう。 54 00:05:36,040 --> 00:05:38,140 あぁ 無理じゃ 無理じゃ。 55 00:05:41,790 --> 00:05:44,700 若者は 縁の下にかくまっている母親に 56 00:05:44,700 --> 00:05:47,470 相談してみることにしました。 57 00:05:47,470 --> 00:05:51,340 な~に そんなことは 簡単なことじゃ。 58 00:05:51,340 --> 00:05:53,510 いいかい? よくお聞き。 59 00:05:53,510 --> 00:05:57,680 まず ほら貝の先を 明るいほうに向けるんじゃ。 60 00:05:57,680 --> 00:06:02,280 糸の先に メシ粒をつけ それをアリに咥えさせ 61 00:06:02,280 --> 00:06:05,820 ほら貝の口元から 這わせてやると 62 00:06:05,820 --> 00:06:11,310 光に向かって 複雑な道を通って 出てくるんじゃ。 63 00:06:11,310 --> 00:06:17,310 みごと ほら貝に 糸を通すことが できたではありませんか。 64 00:06:20,820 --> 00:06:25,800 ほう! これも また みごとに ほら貝に糸を通しておる。 65 00:06:25,800 --> 00:06:30,840 いや あっぱれ あっぱれ! 66 00:06:30,840 --> 00:06:35,800 それにしても どうして お前だけ わしが言った 難しいことを 67 00:06:35,800 --> 00:06:38,280 いとも簡単にできるのじゃ? 68 00:06:38,280 --> 00:06:42,340 本当のことなど 言うわけにはいきません。 69 00:06:42,340 --> 00:06:44,970 ただ 頭を下げて 黙っていると。 70 00:06:44,970 --> 00:06:47,360 正直に話してみよ。 71 00:06:47,360 --> 00:06:51,850 そうすれば 褒美を 前より もっと たくさん つかわすぞ。 72 00:06:51,850 --> 00:06:56,850 それでも押し黙っていると 業を煮やした殿様は…。 73 00:06:59,500 --> 00:07:03,140 黙っているとは よからぬことをしている証拠! 74 00:07:03,140 --> 00:07:08,780 そのまま 口をつぐんでいる気なら お前の首を切り捨ててくれようぞ。 75 00:07:08,780 --> 00:07:11,320 もはや これまでと観念した。 76 00:07:11,320 --> 00:07:14,290 実は わしは 60になる おっ母を 77 00:07:14,290 --> 00:07:17,320 山に 捨てに行こうとしたのですが 78 00:07:17,320 --> 00:07:20,860 どうにも かわいそうになって 家に連れ帰り 79 00:07:20,860 --> 00:07:23,380 縁の下に かくまっておりました。 80 00:07:23,380 --> 00:07:26,000 けれども 灰で縄をなったのも 81 00:07:26,000 --> 00:07:29,000 ほら貝に 糸を通すことができたのも 82 00:07:29,000 --> 00:07:33,670 おっ母から教えてもらったから できたのでございます。 83 00:07:33,670 --> 00:07:37,290 殿様… お触れを破ったのは わしです。 84 00:07:37,290 --> 00:07:39,880 おっ母は何も悪くありません。 85 00:07:39,880 --> 00:07:46,680 打ち首にするのなら このわしの首をお願いします。 86 00:07:49,400 --> 00:07:51,900 うぅ…。 87 00:07:53,830 --> 00:07:55,830 なるほど そうであったか。 88 00:07:55,830 --> 00:07:59,800 年寄りというものは ものを よく知っておるものじゃな。 89 00:07:59,800 --> 00:08:03,300 そんな年寄りを 山へ捨てるなど もったいない。 90 00:08:03,300 --> 00:08:05,340 わしが間違っておった。 91 00:08:05,340 --> 00:08:09,620 これから 年寄りを大事にするよう お触れを出そう。 92 00:08:09,620 --> 00:08:12,310 人の知恵とは すばらしいものじゃ。 93 00:08:12,310 --> 00:08:18,310 皆が知恵を出し合えば 戦なぞ起こさずに済むのじゃ。 94 00:08:20,320 --> 00:08:24,860 若者には たくさんの褒美が与えられました。 95 00:08:24,860 --> 00:08:27,880 それから この国ではお年寄りを 96 00:08:27,880 --> 00:08:33,380 これまで以上に 大切にしたということです。 97 00:08:44,330 --> 00:08:48,870 昔は旅をするのは とても大変でした。 98 00:08:48,870 --> 00:08:54,810 なので 遠くへ行くのに 何か月もかかることがありました。 99 00:08:54,810 --> 00:09:01,310 病気や事故で 帰ってこれなくなった人もいます。 100 00:09:03,320 --> 00:09:08,810 ある男が 村から 遠くの町へと 旅に出ることになりました。 101 00:09:08,810 --> 00:09:12,310 男にとっては初めての長い旅です。 102 00:09:15,000 --> 00:09:19,370 街道に出るために 山道を歩いていたときのこと。 103 00:09:19,370 --> 00:09:24,370 男は静かな泉の淵に出て そこで ひと休みしました。 104 00:09:24,370 --> 00:09:26,870 すると…。 105 00:09:36,300 --> 00:09:38,300 うわ~! 106 00:09:40,660 --> 00:09:44,940 わらわは この泉の主 水神である。 107 00:09:44,940 --> 00:09:47,330 す す… 水神!? 108 00:09:47,330 --> 00:09:50,350 そなたに頼みがある。 109 00:09:50,350 --> 00:09:54,140 この手紙を西の泉の淵へ 届けてくれぬか? 110 00:09:54,140 --> 00:10:00,060 淵の岸に立って 三度手を打つと わらわに よく似た者が現れる。 111 00:10:00,060 --> 00:10:02,480 その者に渡せばよい。 112 00:10:02,480 --> 00:10:04,580 へっ… へぇ! 113 00:10:12,840 --> 00:10:16,460 男はブルブル震えていましたが 手紙を受け取ったからには→ 114 00:10:16,460 --> 00:10:19,210 届けるほかありません。 115 00:10:19,210 --> 00:10:24,310 手紙を大切に懐に収めると また旅を続けました。 116 00:10:26,630 --> 00:10:29,770 何日かあとのことです。 117 00:10:29,770 --> 00:10:33,770 男は 西の泉の淵の近くまで やってきました。 118 00:10:36,840 --> 00:10:42,830 すると向こうから立派な着物を 着た男がやってきました。 119 00:10:42,830 --> 00:10:46,290 旅の者 どこへ行く? へぇ。 120 00:10:46,290 --> 00:10:50,460 西の泉の淵というところへ 手紙を届けにまいります。 121 00:10:50,460 --> 00:10:52,490 なに!? うっ! 122 00:10:52,490 --> 00:10:55,880 驚くのも無理はないが わしは陰陽師だ。 123 00:10:55,880 --> 00:10:58,500 陰陽師というのは占いをしたり→ 124 00:10:58,500 --> 00:11:03,670 さまざまな術を用いて 魔術のようなことをする人のこと。 125 00:11:03,670 --> 00:11:07,270 男は陰陽師に手紙を渡しました。 126 00:11:10,710 --> 00:11:14,120 こりゃ何でしょう? 水の者だな。 127 00:11:14,120 --> 00:11:17,490 水の者? うむ 水に住む魔物だ。 128 00:11:17,490 --> 00:11:20,340 えっ!? そなたを遣わすによって→ 129 00:11:20,340 --> 00:11:22,290 取って食えとある。 130 00:11:22,290 --> 00:11:25,340 えぇ!? 心配することはない。 131 00:11:25,340 --> 00:11:28,780 わしが この手紙を 書き換えてしんぜよう。 132 00:11:28,780 --> 00:11:36,620 そこで筆を水に浸して 手紙をスーッとなぞると→ 133 00:11:36,620 --> 00:11:40,340 文字が消えていった。 134 00:11:40,340 --> 00:11:42,460 そこに墨をつけた筆で→ 135 00:11:42,460 --> 00:11:47,420 見たこともない文字を サラサラッと書き付けた。 136 00:11:47,420 --> 00:11:49,330 これでよい。 137 00:11:49,330 --> 00:11:52,320 これを持って西の泉の淵へ行け。 138 00:11:52,320 --> 00:11:54,740 えっ!? 恐れることはない。 139 00:11:54,740 --> 00:11:57,110 そなたに魔物は害をなさぬ。 140 00:11:57,110 --> 00:12:00,330 だ… だったら あなたが行ったら よろしいでしょ! 141 00:12:00,330 --> 00:12:04,730 わしが行けば魔物が用心しよう。 お前が行くしかないのだ。 142 00:12:04,730 --> 00:12:06,620 け… けど…。 143 00:12:06,620 --> 00:12:09,470 きっと よいことがある 信じろ。 144 00:12:09,470 --> 00:12:12,010 へぇ。 145 00:12:12,010 --> 00:12:16,660 男は ビクビクしながら歩いていった。 146 00:12:16,660 --> 00:12:21,970 さて その西の泉の淵 木々に囲まれ薄暗く→ 147 00:12:21,970 --> 00:12:26,440 なんとな~く薄気味悪いところ。 148 00:12:26,440 --> 00:12:30,710 はぁ… なんで こんなことになったんだか。 149 00:12:30,710 --> 00:12:33,510 そして水神に言われたとおりに。 150 00:12:42,940 --> 00:12:44,990 なんぞ用か? 151 00:12:44,990 --> 00:12:47,460 うわぁ~ あっ! 152 00:12:47,460 --> 00:12:50,260 こ… これを預かってきやした! 153 00:12:54,830 --> 00:12:59,950 なっ!? なんと! 154 00:12:59,950 --> 00:13:03,370 手紙を読み終えると 不思議そうに男を見た。 155 00:13:03,370 --> 00:13:05,890 確かに水神に預かったものか。 156 00:13:05,890 --> 00:13:08,830 へ… へい さようで。 157 00:13:08,830 --> 00:13:11,720 そうか…。 158 00:13:11,720 --> 00:13:15,140 男は恐ろしくてならない。 159 00:13:15,140 --> 00:13:17,710 待っていろ。 160 00:13:17,710 --> 00:13:21,510 うっ… うぅ… えっ? 161 00:13:26,160 --> 00:13:30,840 やがて壺を抱えて また男の前に現れる。 162 00:13:30,840 --> 00:13:33,820 これを手紙を預けた水神に渡せ! 163 00:13:33,820 --> 00:13:37,120 えっ!? うっ…。 164 00:13:42,830 --> 00:13:44,820 ふぅ~! 165 00:13:44,820 --> 00:13:48,840 男は壺を抱えて 大急ぎで淵を離れた。 166 00:13:48,840 --> 00:13:51,840 すると さっきの場所に 陰陽師が待っていた。 167 00:13:51,840 --> 00:13:55,390 どうであった? これを届けろと。 168 00:13:55,390 --> 00:13:57,390 あっ! ふん! 169 00:13:59,300 --> 00:14:01,320 あぁ!? 170 00:14:01,320 --> 00:14:05,320 壺が割れると 中には大判小判がザックザク。 171 00:14:05,320 --> 00:14:07,660 あぁ…。 お前のものだ。 172 00:14:07,660 --> 00:14:10,120 えっ!? 持っていくがよい。 173 00:14:10,120 --> 00:14:13,660 祟りなどない。 ハハハハッ! 174 00:14:13,660 --> 00:14:18,170 陰陽師が笑いながら わけを話してくれた。 175 00:14:18,170 --> 00:14:23,670 西の泉の淵のあたりで 旅人が 消えてしまうという話を聞いて→ 176 00:14:23,670 --> 00:14:25,620 調べにやってきたのだ。 177 00:14:25,620 --> 00:14:27,640 そこへ お前がやってきて→ 178 00:14:27,640 --> 00:14:31,330 水神の手紙を見せてもらったので すべてがわかった。 179 00:14:31,330 --> 00:14:36,950 旅人は 水神を名のる魔物に 取って食われていたのだ。 180 00:14:36,950 --> 00:14:42,370 初めに手紙を預けた魔物とは 姉と妹の間柄。 181 00:14:42,370 --> 00:14:44,310 近くの者を取って食うと 182 00:14:44,310 --> 00:14:47,700 そこに魔物がいることが バレてしまうので 183 00:14:47,700 --> 00:14:52,320 お互いに旅人に手紙を預けては おびき寄せていたのだ。 184 00:14:52,320 --> 00:14:57,770 お前のおかげでもう旅人が 取って食われることはない。 185 00:14:57,770 --> 00:15:00,690 手柄を立てたのだ。 褒美に持っていけ。 186 00:15:00,690 --> 00:15:04,000 へぇ。 ハハハハッ。 187 00:15:04,000 --> 00:15:06,030 陰陽師はその場を去り 188 00:15:06,030 --> 00:15:09,630 男は大判小判を 自分のものにすることができた。 189 00:15:11,970 --> 00:15:14,520 それからというもの どちらの泉でも 190 00:15:14,520 --> 00:15:17,330 旅人が食われることは なくなったという。 191 00:15:17,330 --> 00:15:22,300 姉と妹の魔物は このことが あってから 仲が悪くなり 192 00:15:22,300 --> 00:15:28,540 互いの居場所を知られまいと どこかへ消えてしまったという。 193 00:15:28,540 --> 00:15:32,040 もしかしたら今もどこかの泉に 隠れているのかもしれません。 194 00:15:43,320 --> 00:15:48,330 昔むかし 貧しい若者がいました。 195 00:15:48,330 --> 00:15:51,780 若者は食うのに困り 仕事を求めて 196 00:15:51,780 --> 00:15:56,020 町から町を渡り歩いていました。 197 00:15:56,020 --> 00:15:59,320 (お腹が鳴る音) 198 00:16:08,280 --> 00:16:12,320 腹減った。 199 00:16:12,320 --> 00:16:15,640 川辺で腰を下ろしていると 200 00:16:15,640 --> 00:16:21,240 川上から 侍の着物と刀が 流れて来ました。 201 00:16:26,670 --> 00:16:32,120 若者はこれ幸いと 流れてきた着物を着て刀を差し 202 00:16:32,120 --> 00:16:34,160 歩き出しました。 203 00:16:34,160 --> 00:16:55,450 ~ 204 00:16:55,450 --> 00:16:57,450 ん…。 205 00:17:07,340 --> 00:17:10,310 (お腹の鳴る音) 206 00:17:10,310 --> 00:17:12,300 食いてえ。 207 00:17:12,300 --> 00:17:14,330 トウ ヤーッ! 208 00:17:14,330 --> 00:17:16,300 えい! 209 00:17:16,300 --> 00:17:18,420 面 胴! 210 00:17:18,420 --> 00:17:25,920 《ん あの目に込められた力 ただ者ではない》 211 00:17:29,960 --> 00:17:33,880 そこのお方 相当の使い手とお見受けする。 212 00:17:33,880 --> 00:17:39,660 ぶしつけながら 道場で弟子たちと ひとつ お手合わせ願えまいか。 213 00:17:39,660 --> 00:17:41,630 え…。 214 00:17:41,630 --> 00:17:45,000 若者は剣術のたしなみなど ありませんでしたが 215 00:17:45,000 --> 00:17:52,290 握り飯をわけてもらいたい一心で 道場に入っていきました。 216 00:17:52,290 --> 00:17:55,990 道場主は腕の立つ弟子たちを 何人か呼んで 217 00:17:55,990 --> 00:17:58,340 手合わせをさせました。 218 00:17:58,340 --> 00:18:00,490 きえ~っ! 219 00:18:00,490 --> 00:18:05,670 握り飯を 腹いっぱい…。 220 00:18:05,670 --> 00:18:11,620 けれど らんらんと光る若者の 目の力にかなう弟子はいません。 221 00:18:11,620 --> 00:18:16,330 ん~。 222 00:18:16,330 --> 00:18:19,630 参りました。 223 00:18:19,630 --> 00:18:22,280 お強い! 224 00:18:22,280 --> 00:18:24,290 ははぁ。 225 00:18:24,290 --> 00:18:28,310 道場主は 若者が 剣の達人に違いないと信じ 226 00:18:28,310 --> 00:18:31,660 師範代として道場に迎えました。 227 00:18:31,660 --> 00:18:34,260 どうぞ。 228 00:18:38,450 --> 00:18:44,450 けれども 娘に惚れていた 一番弟子はおもしろくありません。 229 00:18:46,450 --> 00:18:49,450 クソーッ!! 230 00:18:49,450 --> 00:18:54,440 次の日 若者の部屋に 一番弟子が訪ねてきました。 231 00:18:54,440 --> 00:18:57,450 ぶしつけながら 我ら 師範代のお手並みを 232 00:18:57,450 --> 00:19:02,450 ぜひとも拝見したく おじゃまをいたしました。 233 00:19:02,450 --> 00:19:06,440 この弓矢で あれなるカラスを しとめ 見せてください。 234 00:19:08,440 --> 00:19:12,450 《弓矢なんて 使ったことないのに…》 235 00:19:15,440 --> 00:19:18,440 う~っ…。 236 00:19:18,440 --> 00:19:22,450 《コイツが 日本一の剣豪で あるはずがない》 237 00:19:22,450 --> 00:19:24,450 ヒッヒッヒッヒッ…。 238 00:19:24,450 --> 00:19:26,450 うっ…。 239 00:19:26,450 --> 00:19:29,450 (キジの鳴き声) 240 00:19:29,450 --> 00:19:31,450 うわっ!! 241 00:19:38,450 --> 00:19:40,450 お~っ! 242 00:19:42,450 --> 00:19:45,440 キジをしとめたウワサは すぐ広がり 243 00:19:45,440 --> 00:19:50,450 若者は ますます 武芸の達人だと思われました。 244 00:19:50,450 --> 00:19:55,450 師範代! 245 00:19:55,450 --> 00:19:57,450 (みんな)師範代!! 246 00:19:58,450 --> 00:20:01,440 弟子たちが こうも頼んでいるのだ。 247 00:20:01,440 --> 00:20:04,450 ひとつ 稽古を つけてやってくれまいか? 248 00:20:04,450 --> 00:20:06,450 一手 お願いします! 249 00:20:06,450 --> 00:20:09,440 若者のほうは 道場主に頼まれても 250 00:20:09,440 --> 00:20:13,440 いろんな言い訳をし 稽古に出ようとはしません。 251 00:20:13,440 --> 00:20:18,450 《大恥をかかせて 道場から追い出してやる!》 252 00:20:18,450 --> 00:20:22,450 化けの皮を なんとか剥いでやろうと 253 00:20:22,450 --> 00:20:26,450 一番弟子は 若者に鉄砲を渡しました。 254 00:20:26,450 --> 00:20:31,450 武芸の達人なら 鉄砲の腕前も 大したものでござろう。 255 00:20:31,450 --> 00:20:35,440 鴨が池のカモを しとめて見せてくだされ。 256 00:20:35,440 --> 00:20:38,440 《やれやれ… 今度は鉄砲か》 257 00:20:53,440 --> 00:20:55,440 ヒッヒッヒッヒッ…。 258 00:20:58,440 --> 00:21:00,440 うわっ!! 259 00:21:07,450 --> 00:21:09,440 ヒッヒッヒッヒッ… おっ? 260 00:21:09,440 --> 00:21:12,450 (拍手) 261 00:21:21,440 --> 00:21:25,450 あっ… あっ… あ~っ! 262 00:21:25,450 --> 00:21:30,450 わ~っ!! 263 00:21:33,440 --> 00:21:37,450 うわ~っ! 264 00:21:37,450 --> 00:21:41,450 (みんな)おお~っ…。 265 00:21:41,450 --> 00:21:45,440 まこと みごとでござる。 266 00:21:45,440 --> 00:21:49,450 お前様こそ 達人の中の達人じゃ。 267 00:21:49,450 --> 00:21:52,450 ぜひとも わしの跡を 継いではもらえぬか? 268 00:21:52,450 --> 00:21:55,440 まあ… ウフフ。 269 00:21:55,440 --> 00:21:59,440 えっ? エヘヘヘ…。 270 00:21:59,440 --> 00:22:03,440 えっ… アハハハハハ! 私の着物の中に 何かいる! 271 00:22:03,440 --> 00:22:05,440 うっ…。 272 00:22:05,440 --> 00:22:10,450 (笑い声) 273 00:22:10,450 --> 00:22:14,450 く~っ…。 274 00:22:15,450 --> 00:22:20,440 (掛け声) 275 00:22:20,440 --> 00:22:24,450 若者は 道場主の娘の婿になり 276 00:22:24,450 --> 00:22:29,450 いつまでも 幸せに暮らしたということです。