1 00:01:54,380 --> 00:01:59,970 むか~しむかし そのまた昔 この地上ではなく 2 00:01:59,970 --> 00:02:05,060 神様たちが住む天の世界 天界のお話です。 3 00:02:05,060 --> 00:02:10,650 天界には 天の川という 大きな川が流れています。 4 00:02:21,320 --> 00:02:26,040 その西の岸辺には たいそう立派な御殿がありました。 5 00:02:26,040 --> 00:02:31,170 宇宙のすべてを取り計らう 神様のなかの神様 6 00:02:31,170 --> 00:02:33,670 天のみかどの住まいです。 7 00:02:36,380 --> 00:02:39,340 天のみかどには 一人の娘がいました。 8 00:02:39,340 --> 00:02:43,390 名前を織姫といいます。 9 00:02:43,390 --> 00:02:47,390 織姫は 機を織るのが とても上手でした。 10 00:02:50,310 --> 00:02:53,730 機という大きな道具を使って 糸を織り 11 00:02:53,730 --> 00:02:56,690 1枚の布を作ることが仕事です。 12 00:02:56,690 --> 00:03:01,820 織姫が 毎日毎日 精を出して 布を織るので 13 00:03:01,820 --> 00:03:03,910 天界の神様たちは 14 00:03:03,910 --> 00:03:07,410 着る物に不自由することは ありませんでした。 15 00:03:12,960 --> 00:03:16,670 やがて 織姫も年ごろの娘になり 16 00:03:16,670 --> 00:03:21,630 天のみかどは 婿を迎えようと考えました。 17 00:03:21,630 --> 00:03:25,050 たくさんの若者の中から 選ばれたのは 18 00:03:25,050 --> 00:03:30,350 天の川の東側に住んでいる 彦星という牛飼いでした。 19 00:03:32,310 --> 00:03:34,560 彦星もまた 働き者で 20 00:03:34,560 --> 00:03:37,650 飼っている牛は どれも立派でした。 21 00:03:39,650 --> 00:03:42,950 ついに お目見えの日がやってきました。 22 00:03:48,080 --> 00:03:52,870 2人はすぐに 相手を気に入ってしまいました。 23 00:03:55,830 --> 00:04:01,840 こうして 織姫と彦星は 晴れて 夫婦となったのです。 24 00:04:07,050 --> 00:04:11,850 織姫も彦星も それはそれは幸せでした。 25 00:04:20,070 --> 00:04:24,150 2人で過ごす時間は あっという間に過ぎていきます。 26 00:04:26,160 --> 00:04:28,660 (織姫)今度は お花を摘みにいきましょう。 27 00:04:28,660 --> 00:04:33,370 (彦星)あぁ それはいい。 その次は 森へ出かけよう。 28 00:04:33,370 --> 00:04:35,830 それも楽しそうです。 29 00:04:35,830 --> 00:04:41,550 織姫と彦星は 来る日も来る日も 楽しいことを考えては 30 00:04:41,550 --> 00:04:44,430 2人で出かけていきました。 31 00:04:44,430 --> 00:04:48,430 そんな毎日が 楽しくて仕方がなかったのです。 32 00:04:52,390 --> 00:04:54,980 そして いつの間にか 33 00:04:54,980 --> 00:04:57,980 仕事のことを 忘れてしまったのです。 34 00:05:06,030 --> 00:05:08,660 皆の者 どうかしたのか? 35 00:05:08,660 --> 00:05:13,950 織姫様が機織りをせんので 新しい布が届きません。 36 00:05:13,950 --> 00:05:17,370 おかげで 新しい着物が作れず…。 37 00:05:17,370 --> 00:05:20,670 古くなったのを がまんして 着ているのです。 38 00:05:20,670 --> 00:05:23,670 彦星もそうだ! そうそう! 39 00:05:23,670 --> 00:05:26,680 すっかり 牛の世話を しなくなったもので…。 40 00:05:26,680 --> 00:05:30,800 どの牛も痩せてしまって 今にも病に倒れそうだ。 41 00:05:30,800 --> 00:05:34,060 (みんな)みかど様 なんとかしてください! 42 00:05:34,060 --> 00:05:38,350 なんとかしてもらわないと 大変なことになります! 43 00:05:40,860 --> 00:05:49,370 (雷鳴) 44 00:05:51,410 --> 00:05:54,790 お父様 お久しぶりでございます。 45 00:05:54,790 --> 00:05:57,870 仲よう暮らしているようだな。 46 00:05:57,870 --> 00:06:02,290 はい 父上。 おかげさまで 楽しく暮らしています。 47 00:06:02,290 --> 00:06:06,840 それは よい。 だがな…。 48 00:06:06,840 --> 00:06:09,890 誰が 仕事を 放り出してよいと言った!? 49 00:06:09,890 --> 00:06:14,810 新しい布がのうて どうする!? 牛を痩せこけにさせて どうする!? 50 00:06:14,810 --> 00:06:17,350 皆 困り果てておるのだぞ! 51 00:06:17,350 --> 00:06:21,310 今日かぎり 彦は天の川の東で暮らすがよい。 52 00:06:21,310 --> 00:06:24,900 そなたは これまでどおり 西の岸辺で暮らすのだ! 53 00:06:24,900 --> 00:06:28,360 で… でも…。 わかったな!? 54 00:06:30,410 --> 00:06:38,370 彦星は 天の川を渡り 東の岸辺へと去っていきました。 55 00:06:38,370 --> 00:06:40,330 (泣き声) 56 00:06:40,330 --> 00:06:44,340 織姫は 彦星と 離ればなれになったことが 57 00:06:44,340 --> 00:06:46,670 悲しくて たまりません。 58 00:06:46,670 --> 00:06:49,300 涙はとどまることを知らず 59 00:06:49,300 --> 00:06:55,010 立ち上がることさえ できないありさまでした。 60 00:06:55,010 --> 00:07:00,980 (織姫の泣き声) 61 00:07:00,980 --> 00:07:06,650 うぅ…。 62 00:07:06,650 --> 00:07:09,190 はぁ…。 63 00:07:09,190 --> 00:07:11,200 わかった。 64 00:07:11,200 --> 00:07:14,870 1年に一度だけ 7月7日の夜にだけは 65 00:07:14,870 --> 00:07:17,370 彦星に会うことを許そう。 66 00:07:21,920 --> 00:07:26,880 織姫は 7月7日に 彦星に会えることを楽しみに 67 00:07:26,880 --> 00:07:29,800 機織りの仕事に精を出しました。 68 00:07:29,800 --> 00:07:35,350 彦星も また 一生懸命 牛の世話をしました。 69 00:07:35,350 --> 00:07:40,350 おかげで 神様たちは また 新しい着物を着ることができ 70 00:07:40,350 --> 00:07:44,310 牛たちも 元の立派な姿に戻りました。 71 00:07:50,360 --> 00:07:58,370 そして 7月7日の夜が来ると 織姫は天の川を渡っていきます。 72 00:07:58,370 --> 00:08:03,870 そこには 笑みを浮かべた彦星が 待っているのです。 73 00:08:07,420 --> 00:08:12,420 これが 七夕の由来です。 74 00:08:14,800 --> 00:08:19,310 夏の夜 東の空を見上げてごらんなさい。 75 00:08:19,310 --> 00:08:23,810 ひときわ輝く 2つの星が見つかるはずです。 76 00:08:23,810 --> 00:08:26,860 空の高い所にあるのが 織姫。 77 00:08:26,860 --> 00:08:31,360 低い所にあるのが 彦星です。 78 00:08:42,340 --> 00:08:46,550 昔むかし ある山の麓の小屋に→ 79 00:08:46,550 --> 00:08:49,680 若いきこりが 1人住んでいました。 80 00:08:49,680 --> 00:08:56,270 きこりは 毎日 山へ入り 木を切って暮らしていました。 81 00:09:05,360 --> 00:09:09,990 ある日 きこりは森の中で霧が出て→ 82 00:09:09,990 --> 00:09:12,490 道に迷ってしまいました。 83 00:09:14,490 --> 00:09:18,160 霧が晴れて気がつくと 今まで見たこともない→ 84 00:09:18,160 --> 00:09:21,750 立派なかまえの 屋敷の前に立っていました。 85 00:09:24,340 --> 00:09:30,180 大きな建物 広い庭 そこに咲きほこっている草や花。 86 00:09:30,180 --> 00:09:34,470 屋敷の中は静まり返り 誰もいない様子です。 87 00:09:40,060 --> 00:09:45,860 花の香りに誘われ きこりは 門をくぐって中へ入りました。 88 00:09:47,820 --> 00:09:52,610 ごめんください ごめんください。 89 00:09:55,620 --> 00:10:01,540 玄関を入ると屋敷の中に 女の人がいました。 90 00:10:01,540 --> 00:10:05,380 いかがされましたか? 91 00:10:05,380 --> 00:10:08,460 あの… この森で きこりをしています。 92 00:10:08,460 --> 00:10:11,260 霧が出て 道に迷ってしまったので→ 93 00:10:11,260 --> 00:10:14,350 ちょっと 休ませてもらおうと思って…。 94 00:10:17,810 --> 00:10:20,310 ちょうどよいところに 来てくれました。 95 00:10:20,310 --> 00:10:22,850 お頼みしたいことがあります。 96 00:10:22,850 --> 00:10:25,650 頼みというのは どんなことでしょう? 97 00:10:25,650 --> 00:10:28,070 霧も晴れて 天気もよいので→ 98 00:10:28,070 --> 00:10:31,650 私も これから 町へ行ってきたいと思います。 99 00:10:31,650 --> 00:10:33,660 その間 ここで→ 100 00:10:33,660 --> 00:10:36,870 留守をして いただけませんでしょうか? 101 00:10:36,870 --> 00:10:39,330 それは たやすいことじゃ。 102 00:10:39,330 --> 00:10:41,370 それでは 出かけてまいります。 103 00:10:41,370 --> 00:10:45,170 一つだけ約束して いただきたいことがあります。 104 00:10:45,170 --> 00:10:50,670 この屋敷の他のお部屋を 決して見ないでくださいね。 105 00:10:50,670 --> 00:10:53,470 わかった。 106 00:10:53,470 --> 00:10:57,350 女の人は 安心して 外へ出ていきました。 107 00:10:57,350 --> 00:11:00,390 きこりは 広い部屋に ひとりっきり。 108 00:11:00,390 --> 00:11:03,310 家の中は 物音ひとつしません。 109 00:11:03,310 --> 00:11:07,310 まるで 時間が 止まってしまったようです。 110 00:11:07,310 --> 00:11:09,530 しばらくすると きこりは→ 111 00:11:09,530 --> 00:11:12,860 この屋敷のことを 知りたくなりました。 112 00:11:15,320 --> 00:11:17,280 あの女の人と→ 113 00:11:17,280 --> 00:11:22,750 「他の部屋は 決して見ない」という 約束をしましたが→ 114 00:11:22,750 --> 00:11:25,040 とうとう 約束を破り→ 115 00:11:25,040 --> 00:11:28,500 はじめの部屋を そっと開けて→ 116 00:11:28,500 --> 00:11:30,960 覗いてみました…。 117 00:11:30,960 --> 00:11:34,380 誰もいないと思っていたら→ 118 00:11:34,380 --> 00:11:38,390 3人の娘が 部屋を掃除していました。 119 00:11:44,640 --> 00:11:47,690 おらは あの…。 120 00:11:47,690 --> 00:11:52,320 あっ… あっ! あ~ あ~。 121 00:11:52,320 --> 00:11:54,860 部屋に娘たちがいたので→ 122 00:11:54,860 --> 00:11:58,490 きこりは ますます この屋敷に興味をもちました。 123 00:11:58,490 --> 00:12:04,410 そして 2番目の部屋を開けると…。 124 00:12:04,410 --> 00:12:08,750 その部屋は 茶室のようです。 125 00:12:11,130 --> 00:12:13,630 3番目の部屋を開けると→ 126 00:12:13,630 --> 00:12:18,050 たくさんの弓矢など 戦の道具が並んでいます。 127 00:12:18,050 --> 00:12:21,640 いったい どうなってるんだ!? この屋敷は! 128 00:12:21,640 --> 00:12:24,520 きこりは そこにいるのが 恐ろしくなりました。 129 00:12:24,520 --> 00:12:30,310 4番目の部屋の襖を 開けてみると→ 130 00:12:30,310 --> 00:12:33,900 そこは 馬小屋です。 131 00:12:37,360 --> 00:12:43,160 次の5番目の部屋には 豪華な食器が並べてあります。 132 00:12:43,160 --> 00:12:46,330 6番目の部屋に入ると→ 133 00:12:46,330 --> 00:12:50,380 そこは 酒蔵です。 134 00:12:50,380 --> 00:12:53,960 酒好きのきこりは 酒の香りにたまりかね→ 135 00:12:53,960 --> 00:12:58,050 ひしゃくですくうと ひと口 飲んでみました。 136 00:12:58,050 --> 00:13:03,850 その酒は たったひと口で 全身に 染み渡りました。 137 00:13:06,020 --> 00:13:09,020 きこりは 酒を グイグイ飲み始めた。 138 00:13:15,030 --> 00:13:18,650 きこりは 7番目の部屋に向かいました。 139 00:13:18,650 --> 00:13:21,320 酔ったきこりは フラフラと歩いていくと→ 140 00:13:21,320 --> 00:13:24,990 勢いよく 襖を開けました。 141 00:13:24,990 --> 00:13:27,330 そこは 広く美しい部屋で→ 142 00:13:27,330 --> 00:13:30,870 花のいい匂いで 満たされていました。 143 00:13:30,870 --> 00:13:33,000 部屋の奥の 特別のお膳に→ 144 00:13:33,000 --> 00:13:35,960 なぜか 鳥の巣がありました。 145 00:13:35,960 --> 00:13:38,340 その巣を覗き込むと→ 146 00:13:38,340 --> 00:13:42,800 中には 小さな卵が 3つ入っています。 147 00:13:48,350 --> 00:13:50,350 あぁっ! 148 00:13:52,650 --> 00:13:56,360 割れた卵が なんと 鳥になったのです。 149 00:13:56,360 --> 00:13:58,490 (鳴き声) 150 00:13:58,490 --> 00:14:00,450 うわ~っ! 151 00:14:00,450 --> 00:14:02,700 鳥は すぐに 立派なうぐいすになり→ 152 00:14:02,700 --> 00:14:05,160 そして 鳴きながら 飛び去りました。 153 00:14:05,160 --> 00:14:07,370 お~い! 154 00:14:07,370 --> 00:14:17,460 ~ 155 00:14:17,460 --> 00:14:20,380 割れた卵は やはり うぐいすになり→ 156 00:14:20,380 --> 00:14:22,890 ひと声鳴いて 飛び立ってしまいました。 157 00:14:28,640 --> 00:14:31,980 いったい ここは 何というところか? 158 00:14:31,980 --> 00:14:37,650 そこへ 出かけていった 女の人が戻ってきました。 159 00:14:37,650 --> 00:14:41,650 女の人は 割れた卵を見つけて さめざめと泣き出しました。 160 00:14:41,650 --> 00:14:45,740 ああ 人間は なんと嘘つきなのですか? 161 00:14:45,740 --> 00:14:47,660 見ないでくださいと お願いしたのに→ 162 00:14:47,660 --> 00:14:52,040 いともたやすく 約束を破ってしまったのですね。 163 00:14:52,040 --> 00:14:56,670 きこりは 約束を 守らなかったことを詫びました。 164 00:14:56,670 --> 00:14:59,000 私は うぐいすの化身です。 165 00:14:59,000 --> 00:15:01,670 よい人に 会ったと思ったのですが→ 166 00:15:01,670 --> 00:15:04,680 それは 私の思い違いでした。 167 00:15:04,680 --> 00:15:07,260 すまぬことをした。 168 00:15:09,520 --> 00:15:11,480 これで お別れです。 169 00:15:11,480 --> 00:15:14,140 私は うぐいすの里へ戻ります。 170 00:15:14,140 --> 00:15:17,020 さようなら。 171 00:15:17,020 --> 00:15:19,150 すると 広い部屋は→ 172 00:15:19,150 --> 00:15:22,030 大きな屋敷とともに 霧のように消え失せ→ 173 00:15:22,030 --> 00:15:26,490 きこりは 山の中の 野原に立っていました。 174 00:15:26,490 --> 00:15:29,490 うぐいすの 悲しいさえずりだけが→ 175 00:15:29,490 --> 00:15:32,200 響いたということです。 176 00:15:32,200 --> 00:15:34,330 (うぐいすの鳴き声) 177 00:15:42,350 --> 00:15:44,470 昔むかし あるところに→ 178 00:15:44,470 --> 00:15:47,060 お爺さんと お婆さんがおりました。 179 00:15:47,060 --> 00:15:50,400 ある日 お爺さんは 山の畑に草取りに行くので→ 180 00:15:50,400 --> 00:15:55,230 弁当をこしらえてくれるように お婆さんに お願いしました。 181 00:15:55,230 --> 00:15:58,950 婆さん 弁当はできたかいの? 182 00:15:58,950 --> 00:16:03,450 ほれ ここに お前様の好物のそば焼き餅だで。 183 00:16:03,450 --> 00:16:06,410 ほうほう それはいい。 184 00:16:06,410 --> 00:16:11,040 では 行ってくるで。 気ぃつけてな。 185 00:16:11,040 --> 00:16:14,130 お爺さんは お婆さんのこしらえてくれた→ 186 00:16:14,130 --> 00:16:16,960 そば焼き餅を持って てってこてってこ→ 187 00:16:16,960 --> 00:16:20,130 山の畑へと登って行った。 188 00:16:20,130 --> 00:16:23,890 山の畑に着くと 弁当のそば焼き餅を→ 189 00:16:23,890 --> 00:16:28,680 小さな木のくぼみに置き 草取りに精を出した。 190 00:16:32,400 --> 00:16:36,940 やれ くたびれてきたわい。 きっきっき! 191 00:16:36,940 --> 00:16:40,320 猿どもが 木から木へと渡りながら→ 192 00:16:40,320 --> 00:16:44,450 弁当の前に集まるのが見えた。 193 00:16:44,450 --> 00:16:46,790 何をするつもりじゃろう。 194 00:16:46,790 --> 00:16:49,330 お爺さんは 黙って見ていることにした。 195 00:16:49,330 --> 00:16:51,370 きい~! 196 00:16:51,370 --> 00:16:53,960 するとどうじゃ 猿どもは木の枝に置いた→ 197 00:16:53,960 --> 00:16:58,340 お爺さんの弁当の そば焼き餅を むしゃらむしゃら食べ始めた。 198 00:16:58,340 --> 00:17:01,680 《おやおや 腹が減っているのだな。 199 00:17:01,680 --> 00:17:04,010 それなら ご馳走してやるとするか》 200 00:17:04,010 --> 00:17:06,060 お爺さんは 心のなかでそう思いながら→ 201 00:17:06,060 --> 00:17:08,390 やはり じっとしていた。 202 00:17:14,860 --> 00:17:17,360 きっき。 きっき。 あ? 203 00:17:20,030 --> 00:17:22,360 やがて そば焼き餅を 食べ終わった猿どもが→ 204 00:17:22,360 --> 00:17:25,030 お爺さんのほうへとやってくる。 205 00:17:25,030 --> 00:17:27,990 お爺さん いよいよ 目を閉じて座っていた。 206 00:17:27,990 --> 00:17:31,080 (猿太)こげなところに お地蔵さんがおるぞ。 207 00:17:31,080 --> 00:17:33,670 《わしゃ 地蔵か…》 208 00:17:33,670 --> 00:17:36,340 (猿吉)こげなところに 置いてはもったいない。 209 00:17:36,340 --> 00:17:38,750 川向こうの お堂にお運びもうそう。 210 00:17:38,750 --> 00:17:42,300 それがいい それがいい。 211 00:17:42,300 --> 00:17:47,970 猿ども手車を組んで その上にお爺さんをのせる。 212 00:17:47,970 --> 00:17:52,310 「猿ぺが 地蔵ぺを運ぶっぺ」 213 00:17:52,310 --> 00:17:55,310 「そ~れ そ~れ そ~れ」 214 00:17:55,310 --> 00:17:58,360 そうして えっちらおっちら 川を渡り始めた。 215 00:17:58,360 --> 00:18:00,320 あ そ~れ。 216 00:18:00,320 --> 00:18:03,490 「さ~るのケッツは ぬらせども」 ア ホイ。 217 00:18:03,490 --> 00:18:07,030 「地蔵のケッツはぬ~らすな」 218 00:18:07,030 --> 00:18:11,000 「さ~るのケッツは ぬらせども」 ホイ。 219 00:18:11,000 --> 00:18:13,870 「地蔵のケッツは ぬ~らすな」 220 00:18:13,870 --> 00:18:16,750 猿たちは おかしな節をつけた 歌をうたいながら→ 221 00:18:16,750 --> 00:18:18,750 お爺さんを運んでいった。 222 00:18:18,750 --> 00:18:22,630 お爺さんは 猿どもの歌が おかしくてたまらなかったけど→ 223 00:18:22,630 --> 00:18:24,800 じっと目をつむり黙っていた。 224 00:18:24,800 --> 00:18:31,020 やがて 猿どもは山のお堂に お爺さんを運ぶと上座に据えた。 225 00:18:31,020 --> 00:18:32,980 やがて どこから持ってきたんだか→ 226 00:18:32,980 --> 00:18:36,810 たくさんのお賽銭を お爺さんの膝元に投げた。 227 00:18:36,810 --> 00:18:39,480 (猿たち) ありがたや ありがたや。 228 00:18:39,480 --> 00:18:44,400 お地蔵様にあげ申す。 お地蔵様にあげ申す。 229 00:18:44,400 --> 00:18:47,990 そうして猿どもは 1匹残らず どこかへ行ってしまった。 230 00:18:53,200 --> 00:18:56,620 おんや これは! 231 00:18:56,620 --> 00:18:59,750 こりゃ本物じゃ。 こんだけ銭があれば…。 232 00:18:59,750 --> 00:19:04,340 そうじゃ! 婆さんに 新しい着物でも買うてやろう。 233 00:19:04,340 --> 00:19:06,840 ありがたや ありがたや。 234 00:19:06,840 --> 00:19:10,140 そう思ったお爺さんは 町へ向かうことにした。 235 00:19:10,140 --> 00:19:15,140 お婆さんのために 新しい着物とご馳走を買った。 236 00:19:15,140 --> 00:19:17,850 婆さん 帰ったぞ。 237 00:19:17,850 --> 00:19:21,820 お爺さんは 買ってきた着物や ご馳走をお婆さんに見せた。 238 00:19:21,820 --> 00:19:24,150 あれま どうしたね!? 239 00:19:24,150 --> 00:19:28,160 お爺さんがわけを話すと お婆さんの顔がほころんだ。 240 00:19:28,160 --> 00:19:31,780 それはまあ よいことがあったもんだで。 241 00:19:31,780 --> 00:19:34,200 そう言って喜んだと。 242 00:19:34,200 --> 00:19:36,330 2人して新しい着物を着て→ 243 00:19:36,330 --> 00:19:40,830 買ってきたご馳走を食べていると 隣の家のお婆さんがやってきた。 244 00:19:43,420 --> 00:19:46,630 あり!? お前 新しい着物だな!! 245 00:19:46,630 --> 00:19:50,800 それに そげなご馳走をいただいて 何かあったな! 246 00:19:50,800 --> 00:19:54,220 お爺さんとお婆さんが わけを話すと…。 247 00:19:54,220 --> 00:19:58,810 そんだら おらが爺さんにも 同じことやってもらおうか。 248 00:19:58,810 --> 00:20:01,900 そう言って 家に帰っていった。 249 00:20:01,900 --> 00:20:04,820 さて あくる日。 250 00:20:04,820 --> 00:20:08,320 わかったな うまくやれや。 わかった。 251 00:20:08,320 --> 00:20:11,740 まかしとき! (2人)シシシ…。 252 00:20:11,740 --> 00:20:15,120 隣の爺さんは 山の畑に向かった。 253 00:20:15,120 --> 00:20:20,080 山の畑に着くと そば焼き餅を木のくぼみに置き→ 254 00:20:20,080 --> 00:20:23,670 草取りもせず 畑の前にじっと座った。 255 00:20:23,670 --> 00:20:26,170 猿どもがやってくる。 256 00:20:32,220 --> 00:20:34,350 きっ。 257 00:20:37,470 --> 00:20:39,730 そば焼き餅を食べ終えると→ 258 00:20:39,730 --> 00:20:42,230 猿ども 爺さんのほうにやってきた。 259 00:20:44,150 --> 00:20:47,190 また お地蔵さんがおるで。 260 00:20:47,190 --> 00:20:50,820 こげなところでは もったいない。 お堂に運びもうそう。 261 00:20:50,820 --> 00:20:54,160 「さ~るのケッツは ぬらせども」 ア ホイ。 262 00:20:54,160 --> 00:20:57,370 「地蔵のケッツは ぬ~らすな」 263 00:20:57,370 --> 00:20:59,290 あ そ~れ そ~れ。 264 00:20:59,290 --> 00:21:02,830 爺さんは おかしいのを グッと こらえていたんだけれども。 265 00:21:02,830 --> 00:21:06,460 「とんとこぴ~んの ぞ~ろ ぞろ~」 266 00:21:06,460 --> 00:21:08,880 「あってれけのれ~」 267 00:21:08,880 --> 00:21:10,970 歌が いよいよ おかしくなるので とうとう…。 268 00:21:10,970 --> 00:21:13,800 プッ! 笑い出してしまった。 269 00:21:13,800 --> 00:21:18,810 アハハハ! 270 00:21:23,020 --> 00:21:26,480 お地蔵様だと思っていた猿どもは び~っくり! 271 00:21:26,480 --> 00:21:28,860 川の中に落ちた爺さんを→ 272 00:21:28,860 --> 00:21:32,490 ひっかいたり 足蹴にしながら 逃げていった。 273 00:21:32,490 --> 00:21:35,490 爺さんは やっと 岸に這い上がった。 274 00:21:35,490 --> 00:21:37,530 けれども ずっぽりと濡れねずみで→ 275 00:21:37,530 --> 00:21:39,830 そのうえ 猿どもにひっかかれ→ 276 00:21:39,830 --> 00:21:42,120 足蹴にされて ボロボロだった。 277 00:21:42,120 --> 00:21:46,460 思わず おいおい 泣き出してしまった。 278 00:21:46,460 --> 00:21:49,510 さて 隣の婆様は 今に 爺さんが→ 279 00:21:49,510 --> 00:21:53,430 きれいな着物やらを 買ってくるだろうと待っていた。 280 00:21:53,430 --> 00:21:57,300 そうじゃ。 もう こげな汚い着物は いらぬじゃろ。 281 00:21:57,300 --> 00:21:59,890 婆様は 着物を脱ぐと→ 282 00:21:59,890 --> 00:22:02,810 家中の着物と一緒に 焼いてしまった。 283 00:22:02,810 --> 00:22:06,310 それで 裸のまんまで 爺さんの帰りを待っていた。 284 00:22:06,310 --> 00:22:11,900 お~い! お~い! 285 00:22:11,900 --> 00:22:13,820 あれあれ!? 286 00:22:13,820 --> 00:22:15,860 おらが爺さんは 猿から銭もろうて→ 287 00:22:15,860 --> 00:22:17,830 着物だのなんだの買うて→ 288 00:22:17,830 --> 00:22:22,160 あんな歌 うたいながら 帰ってくるよ~。 ウシシシシ! 289 00:22:22,160 --> 00:22:24,210 ヘックション! 290 00:22:24,210 --> 00:22:26,790 それから しばらくの間 隣の婆さんは→ 291 00:22:26,790 --> 00:22:31,210 裸で暮らさねば ならなかったんだと。 292 00:22:31,210 --> 00:22:33,300 (くしゃみ)