1 00:00:16,050 --> 00:00:20,220 〈難民 それは現代社会も抱える 難問のひとつ 2 00:00:20,510 --> 00:00:24,560 迫害 紛争 暴力など さまざまな理由で— 3 00:00:24,560 --> 00:00:27,560 生まれた国を 逃れた人々のことである 4 00:00:27,560 --> 00:00:31,240 彼らは生きるために 他国へと脱出する 5 00:00:31,240 --> 00:00:33,740 徒歩で または船で 6 00:00:33,740 --> 00:00:38,740 ここ フリードニア王国でもまた 問題はまったく一緒だった 7 00:00:38,740 --> 00:00:44,080 王都パルナムの城壁から離れた場所に 難民たちの キャンプがある 8 00:00:44,590 --> 00:00:47,080 1000人弱の人々がここにいる 9 00:00:47,080 --> 00:00:50,590 人間族 エルフ 獣人族 ドワーフ 10 00:00:50,590 --> 00:00:52,920 さまざまな種族が集まっており— 11 00:00:52,920 --> 00:00:58,430 ほとんどが魔王領の拡大によって 国を追われた人々であった 12 00:00:58,430 --> 00:01:03,930 だが フリードニア王国にいる 難民たちは幸せなほうである 13 00:01:03,930 --> 00:01:05,940 この大陸において— 14 00:01:05,940 --> 00:01:08,770 難民を取り巻く環境は 過酷であった 15 00:01:08,770 --> 00:01:13,440 魔王領と接している国には 難民を無理やり徴兵し— 16 00:01:13,440 --> 00:01:15,880 最前線送りにするところもある 17 00:01:15,880 --> 00:01:19,550 あるいは 難民保護という名目のもと— 18 00:01:19,550 --> 00:01:21,550 安価な労働力として— 19 00:01:21,550 --> 00:01:24,720 奴隷のように酷使しているのが 実情であった 20 00:01:24,720 --> 00:01:28,730 国内の問題に 一応のめどがついた今— 21 00:01:28,730 --> 00:01:33,030 ソーマはついに この問題に 決着をつける覚悟をした〉 22 00:03:06,870 --> 00:03:08,870 (リーシア)おっきなテント 23 00:03:08,870 --> 00:03:11,870 (ソーマ)テントっていうより モンゴルのゲルだな 24 00:03:11,870 --> 00:03:13,870 んっ? あぁ なんでもない 25 00:03:13,870 --> 00:03:16,670 長が待っているはずだ 行こう 26 00:03:24,050 --> 00:03:28,390 よくおいでくださいました フリードニアの大王陛下 27 00:03:28,390 --> 00:03:31,060 その「大王」ってのは やめてくれないか 28 00:03:31,060 --> 00:03:34,900 では陛下 我が名はジルコマ 29 00:03:34,900 --> 00:03:37,560 この集落の長を 任されております 30 00:03:37,560 --> 00:03:43,070 こちらに控えているのは 我が妹 コマインです お見知りおきを 31 00:03:43,070 --> 00:03:46,740 この国で王をやっている ソーマ・カズヤだ 32 00:03:46,740 --> 00:03:50,910 先ほどは集落の者を 助けていただいたそうで— 33 00:03:50,910 --> 00:03:56,250 心よりお礼を申し上げます 助けたのは警備の冒険者たちだ 34 00:03:56,250 --> 00:03:58,920 礼なら彼らに言ってくれ 35 00:03:58,920 --> 00:04:01,420 今日 俺がここに来たのは— 36 00:04:01,420 --> 00:04:03,920 感謝の言葉を 聞きに来たわけじゃない 37 00:04:06,190 --> 00:04:09,360 俺は決断を促しに来たんだ 38 00:04:09,360 --> 00:04:11,870 使者から 勧告は聞いているだろう? 39 00:04:11,870 --> 00:04:13,870 君たちはどちらを選ぶ? 40 00:04:13,870 --> 00:04:15,870 それは! よせ コマイン 41 00:04:15,870 --> 00:04:19,370 しかし 兄上 我らの言葉は— 42 00:04:19,370 --> 00:04:22,540 この集落の者たち全員の 行く末を決める 43 00:04:22,540 --> 00:04:25,550 短慮は許されぬ あ… 44 00:04:25,550 --> 00:04:27,550 わかりました 45 00:04:29,550 --> 00:04:33,220 ソーマ… 状況を説明してほしいんだけど 46 00:04:33,220 --> 00:04:37,390 そろそろ この難民問題に 決着をつけたいんだ 47 00:04:37,390 --> 00:04:41,730 だから俺は彼らに対し ある決断を求めたんだ 48 00:04:41,730 --> 00:04:43,730 決断? 49 00:04:43,730 --> 00:04:46,230 郷愁を捨て この国の民となるか— 50 00:04:46,230 --> 00:04:48,400 あるいは この国を出ていくかだ 51 00:04:48,400 --> 00:04:50,400 ハッ…! 52 00:04:53,240 --> 00:04:55,240 君たちの願いは— 53 00:04:55,240 --> 00:04:58,250 今は魔王領となってしまっている 故郷へ帰り— 54 00:04:58,250 --> 00:05:00,750 元の生活を取り戻すことだろう? 55 00:05:00,750 --> 00:05:04,420 だけど現状 魔族を撃退しないかぎり— 56 00:05:04,420 --> 00:05:06,350 それは無理だ ハッ! 57 00:05:06,350 --> 00:05:09,860 そして それがいつになるかは 誰にもわからない 58 00:05:09,860 --> 00:05:12,690 その間 君たちはどうするんだ? 59 00:05:12,690 --> 00:05:15,030 故郷への帰還を望みながら— 60 00:05:15,030 --> 00:05:20,030 どこの国にも属さぬ者として 異国に滞在し続けるのか? 61 00:05:20,030 --> 00:05:22,870 不法に滞在されるのも困る 62 00:05:22,870 --> 00:05:25,870 許可なく 狩猟や採集行為を行うのも— 63 00:05:25,870 --> 00:05:27,870 本来ならば違法だ 64 00:05:27,870 --> 00:05:30,210 それらの不法行為を 許していれば— 65 00:05:30,210 --> 00:05:33,050 必ず国民の怒りを買うことになる 66 00:05:33,050 --> 00:05:37,380 でも 今まで黙認してきたし 支援もしてきたじゃない 67 00:05:37,380 --> 00:05:39,390 今まではな あっ… 68 00:05:39,390 --> 00:05:41,890 国に山ほど問題があったから— 69 00:05:41,890 --> 00:05:44,890 アルベルト殿の路線を 継承していただけだ 70 00:05:44,890 --> 00:05:47,230 だが もうこの問題を— 71 00:05:47,230 --> 00:05:50,230 放っておくことはできない ソーマ それは… 72 00:05:50,230 --> 00:05:53,730 国家とは 例えるなら でっかい人だ 73 00:05:53,730 --> 00:05:57,400 自分を愛してくれる者ならば 簡単に愛せるが— 74 00:05:57,400 --> 00:06:01,070 愛してくれない者を愛せるほど 度量は広くない 75 00:06:01,070 --> 00:06:04,580 もし君たちが あくまでも故郷にこだわり— 76 00:06:04,580 --> 00:06:08,180 この国に帰属意識を 持てないというのなら— 77 00:06:08,180 --> 00:06:12,350 俺は 君たちを 追放しなくてはならない 78 00:06:12,350 --> 00:06:16,520 我らはただ 故郷に帰りたいだけなのです 79 00:06:16,520 --> 00:06:20,690 その気持ちを個人の胸の中に 抱くだけなら かまわないし— 80 00:06:20,690 --> 00:06:24,700 もし事態が好転して 帰還できる状況になったら— 81 00:06:24,700 --> 00:06:26,870 帰還してもらってかまわない 82 00:06:26,870 --> 00:06:30,040 だが 少なくとも この国にいる間は— 83 00:06:30,040 --> 00:06:32,870 この国に帰属意識を持ってもらう 84 00:06:32,870 --> 00:06:34,870 クッ… 85 00:06:34,870 --> 00:06:38,040 あなたに何がわかるのです! やめろ コマイン 86 00:06:38,040 --> 00:06:40,880 いいや 兄上 言わせてほしい 87 00:06:40,880 --> 00:06:43,550 あなたは この国の王でしょう? 88 00:06:43,550 --> 00:06:45,890 ちゃんと国を 持ってるじゃないですか! 89 00:06:45,890 --> 00:06:48,050 国を失った者の悲しみが— 90 00:06:48,050 --> 00:06:50,060 あなたに わ… わかるよ 91 00:06:50,060 --> 00:06:52,060 えっ… 92 00:06:52,060 --> 00:06:54,060 君も聞いているだろう? 93 00:06:54,060 --> 00:06:57,060 俺は こことは違う世界から 召喚された人間だ 94 00:06:57,060 --> 00:06:59,230 俺には帰り道さえない 95 00:06:59,230 --> 00:07:01,230 あっ… 96 00:07:01,230 --> 00:07:03,230 ソーマ… 97 00:07:10,680 --> 00:07:16,180 だけど 俺には リーシアたちがいる そばで支えてくれる人がいる 98 00:07:16,180 --> 00:07:19,520 俺を思ってくれる人たちがいる 99 00:07:19,520 --> 00:07:23,520 その思いに応えようと 遮二無二 働いた 100 00:07:23,520 --> 00:07:25,530 そうしているうちに— 101 00:07:25,530 --> 00:07:28,530 いつの間にか 自分の国だと 思えるようになっていた 102 00:07:28,530 --> 00:07:30,530 この国を失ったら— 103 00:07:30,530 --> 00:07:34,700 俺はたぶん 故郷を失ったのと 同じくらい悲しむだろう 104 00:07:34,700 --> 00:07:36,700 ハァッ… 105 00:07:36,700 --> 00:07:39,040 すぐに受け入れられることでも ないだろう 106 00:07:39,040 --> 00:07:42,210 でも止まったままでは前には進めない 107 00:07:42,210 --> 00:07:44,540 我らをどう受け入れると? 108 00:07:44,540 --> 00:07:47,240 グラン・ケイオス帝国のようにですか? 109 00:07:49,220 --> 00:07:51,380 (ヒルデ)姫さん どういうことだい? 110 00:07:51,380 --> 00:07:56,220 帝国は難民たちに 国内の未開拓地を提供し— 111 00:07:56,220 --> 00:07:59,730 開拓すれば そこを臨時居住地として— 112 00:07:59,730 --> 00:08:03,060 認めるのよ へぇ お優しいんだな 113 00:08:03,060 --> 00:08:07,330 自給自足できれば 帝国の懐も痛まないし— 114 00:08:07,330 --> 00:08:11,000 もし のちに 彼らが 北への帰還を果たした場合— 115 00:08:11,000 --> 00:08:14,170 開墾された土地が まるまる残ることになる 116 00:08:14,170 --> 00:08:16,870 どちらにしても帝国に損はない 117 00:08:18,850 --> 00:08:22,180 ジルコマ 悪いが帝国のような方策は— 118 00:08:22,180 --> 00:08:24,520 うちはできない あっ… なぜです? 119 00:08:24,520 --> 00:08:28,350 危ういんだよ 危ういとは? 120 00:08:28,350 --> 00:08:32,690 自分たちが 汗水流して開拓した土地だ 121 00:08:32,690 --> 00:08:35,390 ならば自分たちの土地だと 思うじゃないか 122 00:08:37,360 --> 00:08:40,700 故郷へ帰りたいと 願う世代ならば まだいい 123 00:08:40,700 --> 00:08:43,370 しかし 次世代はどうだろうか? 124 00:08:43,370 --> 00:08:46,710 その地で生まれ 故郷を知らない世代は— 125 00:08:46,710 --> 00:08:50,040 父祖が汗水流して 切り開いた その土地が— 126 00:08:50,040 --> 00:08:52,550 間借りしているだけだという事実を— 127 00:08:52,550 --> 00:08:54,550 受け入れられるだろうか? 128 00:08:54,550 --> 00:08:59,050 陛下は 帝国の方針は誤りだと 思っているのでしょうか? 129 00:08:59,050 --> 00:09:02,390 いいや これは考え方の違いだ 130 00:09:02,390 --> 00:09:05,990 マリア殿は最良を信じて その方針を選び— 131 00:09:05,990 --> 00:09:09,830 俺は最悪を恐れて その方針を選べない 132 00:09:09,830 --> 00:09:11,830 それだけのことだ 133 00:09:11,830 --> 00:09:13,830 ならば陛下は— 134 00:09:13,830 --> 00:09:16,670 我らの処遇を どうするおつもりなのですか? 135 00:09:16,670 --> 00:09:20,670 故郷への帰還を諦めろ この国の民になれ 136 00:09:20,670 --> 00:09:23,840 さもなくば出ていけ 開拓はさせない 137 00:09:23,840 --> 00:09:25,850 あなたはいったい— 138 00:09:25,850 --> 00:09:27,850 我らをどうしようと いうのですか! 139 00:09:33,350 --> 00:09:35,360 オーエン (オーエン)はっ 140 00:09:35,360 --> 00:09:38,160 例のものを 承知いたしました 141 00:09:45,370 --> 00:09:49,540 今度できる 湾岸新都市 ヴェネティノヴァだ 142 00:09:49,540 --> 00:09:52,370 まだ居住区と 商業区を作り— 143 00:09:52,370 --> 00:09:55,040 交易港を 整備した 程度だけどな 144 00:09:55,040 --> 00:09:58,210 これから さまざまな 施設を増やし— 145 00:09:58,210 --> 00:10:03,050 文化の最先端となるような都市に 発展させていく予定だ 146 00:10:03,050 --> 00:10:06,890 俺は難民たちを その住民にしようと思っている 147 00:10:06,890 --> 00:10:08,890 あっ… えっ! 148 00:10:08,890 --> 00:10:12,730 この国の民として生きるなら 住みかを与えよう 149 00:10:12,730 --> 00:10:14,730 仕事もたくさんある 150 00:10:14,730 --> 00:10:19,070 パルナムで醸造所を営んでいる 妖狼族と同じようにだ 151 00:10:19,070 --> 00:10:21,070 この国の民となれば— 152 00:10:21,070 --> 00:10:24,470 まっとうに働くかぎり 飢えないし凍えない 153 00:10:26,410 --> 00:10:28,740 そんなすばらしい話が… そんなひどい話がありますか! 154 00:10:28,740 --> 00:10:31,910 何を言っているんです 兄上! こんなのは— 155 00:10:31,910 --> 00:10:33,910 「うまいエサをやるから しっぽを振れ」と— 156 00:10:33,910 --> 00:10:35,920 言っているのと 同じじゃないですか! 157 00:10:35,920 --> 00:10:38,080 コマイン 陛下は我らに— 158 00:10:38,080 --> 00:10:41,090 生活基盤を与えてくれると 言っているのだぞ 159 00:10:41,090 --> 00:10:44,760 だからといって 故郷への帰還を諦めるんですか? 160 00:10:44,760 --> 00:10:46,930 兄上は悔しくないんですか!? 161 00:10:46,930 --> 00:10:50,100 意見が違うのも無理はない 162 00:10:50,100 --> 00:10:54,100 俺自身 この提案は 一面ではかなり甘く— 163 00:10:54,100 --> 00:10:57,100 もう一面では かなり残酷だと思っている 164 00:10:57,100 --> 00:11:01,110 が… これが今の俺にできる 精いっぱいだ 165 00:11:01,110 --> 00:11:03,810 あとは君たちの決断しだいだ 166 00:11:06,380 --> 00:11:08,380 この集落の中には— 167 00:11:08,380 --> 00:11:12,220 あくまでも故郷への帰還に こだわる者もおります 168 00:11:12,220 --> 00:11:15,050 妹さんのようにか? いいえ 169 00:11:15,050 --> 00:11:17,720 コマインは これで 頭は柔軟です 170 00:11:17,720 --> 00:11:19,730 先ほどは ただ— 171 00:11:19,730 --> 00:11:24,230 この集落に住む 故郷への思いを 諦めきれぬ者たちの思いを— 172 00:11:24,230 --> 00:11:27,400 代弁したにすぎません あ… 兄上 173 00:11:27,400 --> 00:11:31,400 本当のことであろう 先ほど「ひどい」と言ったのも— 174 00:11:31,400 --> 00:11:34,740 そういった者たちの 気持ちを思ってのこと 175 00:11:34,740 --> 00:11:37,940 そなたは 人の痛みがわかるゆえに 176 00:11:39,910 --> 00:11:42,750 陛下の恩情 痛み入ります 177 00:11:42,750 --> 00:11:46,250 事は私の一存では 決められぬため— 178 00:11:46,250 --> 00:11:50,420 集落の者たちを集めたうえで お答えしたいと思います 179 00:11:50,420 --> 00:11:54,430 俺は決断を促しに来た と言ったはずだが? 180 00:11:54,430 --> 00:11:56,430 わかっております 181 00:11:56,430 --> 00:11:59,430 ですが できうるかぎり多くの者が— 182 00:11:59,430 --> 00:12:03,440 陛下が差し伸べてくださった手を 取るよう 説得したいのです 183 00:12:03,440 --> 00:12:06,540 たとえ 難民を割ることになろうとも 184 00:12:06,540 --> 00:12:09,380 《「難民を割る」 つまり— 185 00:12:09,380 --> 00:12:13,050 受け入れられない者たちを 追い出すことになっても… か》 186 00:12:13,050 --> 00:12:15,050 あまり時間もないぞ 187 00:12:15,050 --> 00:12:17,720 住民の募集は 引き延ばすことはできても— 188 00:12:17,720 --> 00:12:20,220 季節を引き延ばすことは できないからな 189 00:12:20,220 --> 00:12:23,720 わかっております もうすぐにも 冬 190 00:12:23,720 --> 00:12:26,560 備えを怠れば凍死者が出ます 191 00:12:26,560 --> 00:12:30,900 ですが 我らに時間をください 192 00:12:30,900 --> 00:12:32,900 (みんな)あっ… 193 00:12:32,900 --> 00:12:35,070 ここにヒルデがいると聞いた 194 00:12:35,070 --> 00:12:40,410 ブラッド! アンタ よくも私に 講義を押しつけてくれたね! 195 00:12:40,410 --> 00:12:42,740 な 何をするんだい? 196 00:12:42,740 --> 00:12:45,580 文句ならあとで いくらでも聞く 197 00:12:45,580 --> 00:12:48,250 悪いが手を貸してくれ 急患だ 198 00:12:48,250 --> 00:12:50,420 あっ… 患者は? 199 00:12:50,420 --> 00:12:53,920 妊婦だ。 すでに破水している (みんな)えっ! 200 00:12:53,920 --> 00:12:55,920 胎児の位置が悪い 201 00:12:55,920 --> 00:12:59,930 母親の腹の中で 出口を背に寝ている状態だ 202 00:12:59,930 --> 00:13:04,100 横位かい… また珍しくも厄介な 203 00:13:04,100 --> 00:13:06,530 産婆もお手上げだそうだ 204 00:13:06,530 --> 00:13:10,700 普通なら母か子 どちらかを犠牲にするところだ 205 00:13:10,700 --> 00:13:14,040 母子共に助かるには… あぁ 206 00:13:14,040 --> 00:13:16,380 切開するしかないだろうな 207 00:13:16,380 --> 00:13:18,380 できるのかい? 208 00:13:18,380 --> 00:13:21,880 母親の生存率は 2割に満たないと聞くよ 209 00:13:21,880 --> 00:13:26,050 生存率が低い理由は決まっている ほう… なんだい? 210 00:13:26,050 --> 00:13:29,060 俺とお前が執刀しないからだ 211 00:13:29,060 --> 00:13:31,560 さらりとすごいこと言うね 212 00:13:31,560 --> 00:13:34,390 事実だ。 正確に言うなら— 213 00:13:34,390 --> 00:13:38,900 俺の技術がなく 三つ目族の 感染症知識がないからだ 214 00:13:38,900 --> 00:13:42,240 俺だけでも 成功率を8割程度にはできる 215 00:13:42,240 --> 00:13:46,070 だが お前がそばで 衛生管理をしてくれれば— 216 00:13:46,070 --> 00:13:49,740 その確率をかぎりなく 10割に近づけることができる 217 00:13:49,740 --> 00:13:52,250 ったく しようがないねぇ! 218 00:13:52,250 --> 00:13:55,420 王様と難民の大将 聞いていたとおりだ 219 00:13:55,420 --> 00:13:58,920 悪いが アンタらと部下の力を借りたい 220 00:13:58,920 --> 00:14:00,920 あぁ もちろん 221 00:14:00,920 --> 00:14:05,020 (カルラ)ご主人様 ハクヤ殿に報告いたしました 222 00:14:05,020 --> 00:14:07,030 ドラゴニュートの嬢ちゃん 223 00:14:07,030 --> 00:14:09,860 ちょうどいいところに来た は はい? 224 00:14:09,860 --> 00:14:12,030 王都の医学研究所へ行って— 225 00:14:12,030 --> 00:14:14,700 大至急 道具と薬品を持ってきておくれ 226 00:14:14,700 --> 00:14:16,700 あっ… 227 00:14:16,700 --> 00:14:19,210 緊急事態だ 彼女の言うとおりにしてくれ 228 00:14:19,210 --> 00:14:21,210 王様も ああ言ってんだ 229 00:14:21,210 --> 00:14:25,710 いいかい「ヒルデの黒バッグ」って 言えば研究員には通じるから 230 00:14:25,710 --> 00:14:27,710 しょ 承知しました! 231 00:14:29,720 --> 00:14:32,890 難民の大将 このテントを借り受けたい 232 00:14:32,890 --> 00:14:36,390 少しでも衛生環境の いい場所を使いたいからね 233 00:14:36,390 --> 00:14:38,890 かまわない 好きに使ってくれ 234 00:14:38,890 --> 00:14:41,560 それと輸血が必要になるから— 235 00:14:41,560 --> 00:14:44,560 難民連中を集めておいてくれ 承知した 236 00:14:44,560 --> 00:14:47,070 王様! あっ はい! 237 00:14:47,070 --> 00:14:49,570 アンタは衛生ってもんが わかってるだろ? 238 00:14:49,570 --> 00:14:53,570 大将たちに説明して 少しでも環境を整えるんだ 239 00:14:53,570 --> 00:14:56,740 わかった リーシア オーエン やるぞ 240 00:14:56,740 --> 00:14:59,250 えぇ 承知いたした 241 00:14:59,250 --> 00:15:01,910 私も手伝わせてください! 242 00:15:01,910 --> 00:15:05,850 ブラッド 患者の症状を 詳しく聞かせてくれ 243 00:15:05,850 --> 00:15:10,360 お湯を大量に沸かすんだ 煮沸消毒といって— 244 00:15:10,360 --> 00:15:14,030 100度以上に熱すれば ほとんどの病原菌は死ぬ 245 00:15:14,030 --> 00:15:16,230 器具の消毒に必要だ! 246 00:15:27,710 --> 00:15:31,380 妊婦のお腹を裂くって聞いたけど 大丈夫なの? 247 00:15:31,380 --> 00:15:36,050 俺のいた国では 帝王切開は 難産に対して行われる— 248 00:15:36,050 --> 00:15:38,050 一般的な方法だよ 249 00:15:38,050 --> 00:15:41,220 相変わらず ソーマのいた国ってすごいわね 250 00:15:41,220 --> 00:15:45,560 そんな医療に近いことが できるのが あの2人だ 251 00:15:45,560 --> 00:15:50,060 まぁ 俺のいた世界には 光魔法がなかったから— 252 00:15:50,060 --> 00:15:52,060 単純には比べられないけどな 253 00:15:52,060 --> 00:15:57,400 それにしても 私が外で カルラが手伝いって納得できないわ 254 00:15:57,400 --> 00:16:02,070 なぁ ジルコマ 俺はヒルデたちの腕を知っている 255 00:16:02,070 --> 00:16:05,180 母子共に助かると確信している 256 00:16:05,180 --> 00:16:09,520 そのうえで言わせてほしい なんでしょうか? 257 00:16:09,520 --> 00:16:12,690 産まれてくる子は この国で産まれるんだ 258 00:16:12,690 --> 00:16:15,690 そして この国で育つことになる 259 00:16:15,690 --> 00:16:20,530 父祖の地など知らずに ここを故郷として 260 00:16:20,530 --> 00:16:24,530 赤ん坊にまで 亡国の民としての 生き方を強いるのは… 261 00:16:24,530 --> 00:16:29,870 みなまで申されるな 兄上 262 00:16:29,870 --> 00:16:32,370 心を決めました 私は… 263 00:16:32,370 --> 00:16:35,880 (産声) (みんな)あっ! 264 00:16:35,880 --> 00:16:37,880 産まれたの? (産声) 265 00:16:37,880 --> 00:16:41,210 ハァ… (産声) 266 00:16:41,210 --> 00:16:44,720 男の子… です… (産声) 267 00:16:44,720 --> 00:16:48,550 おぉ! 明日への希望が この世に誕生した! 268 00:16:48,550 --> 00:16:50,560 (2人)フフッ… 269 00:16:50,560 --> 00:16:52,560 ハハハ… わぁ… 270 00:16:52,560 --> 00:16:54,560 母親のほうは? 271 00:16:54,560 --> 00:16:58,560 手術は成功し 母子共に異常はありません 272 00:16:58,560 --> 00:17:00,730 あ… カルラ! 273 00:17:00,730 --> 00:17:03,530 しっかりして カルラ カルラ 274 00:17:05,840 --> 00:17:08,340 おぉ 空なる太陽よ 275 00:17:08,340 --> 00:17:11,840 我が集落に希望をもたらして くださったことを感謝します 276 00:17:11,840 --> 00:17:16,350 (2人)天かけるオオシカとなった 祖先の霊たちよ— 277 00:17:16,350 --> 00:17:20,190 いついつまでも この子をお守りください 278 00:17:20,190 --> 00:17:22,190 よかったな 279 00:17:22,190 --> 00:17:24,860 陛下には感謝の言葉もありません 280 00:17:24,860 --> 00:17:27,160 礼なら あの2人に言ってくれ 281 00:17:33,370 --> 00:17:37,700 私は集落の長の役割を コマインに譲ります 282 00:17:37,700 --> 00:17:40,870 (ソーマ/コマイン)えっ! 何を言い出すのです 兄上! 283 00:17:40,870 --> 00:17:43,210 お前は どうする気なんだ? 284 00:17:43,210 --> 00:17:46,380 この集落の人々は— 285 00:17:46,380 --> 00:17:49,050 流浪の暮らしに 疲弊しきっています 286 00:17:49,050 --> 00:17:52,720 彼らがこの国を 故郷にできるなら— 287 00:17:52,720 --> 00:17:55,890 それは すばらしいことだと思います 288 00:17:55,890 --> 00:18:00,560 ですが 故郷への帰還を諦めない 強硬派もいます 289 00:18:00,560 --> 00:18:04,560 私は彼らと共に 北へ戻ろうと思います 290 00:18:04,560 --> 00:18:08,670 そして どこかの国に仕官し 前線で戦い— 291 00:18:08,670 --> 00:18:12,000 故郷を奪還できるときを 待つつもりです 292 00:18:12,000 --> 00:18:17,010 兄上! 兄上はこの集落に必要な人です! 293 00:18:17,010 --> 00:18:21,010 私は陛下の提案を 残酷だと言ってしまいました 294 00:18:21,010 --> 00:18:23,850 私が北に行きます! だめだ 295 00:18:23,850 --> 00:18:28,350 お前が陛下の提案を拒否したのは 仲間を思ってのことだ 296 00:18:28,350 --> 00:18:32,530 その心があれば 私以上のまとめ役になれる 297 00:18:32,530 --> 00:18:37,860 私の中にも 故郷への帰還を 諦めきれない思いがある 298 00:18:37,860 --> 00:18:39,870 だが 長を任された 299 00:18:39,870 --> 00:18:42,200 だから その思いに蓋をし— 300 00:18:42,200 --> 00:18:45,200 今日まで胸の奥深くに 押し込めていた 301 00:18:45,200 --> 00:18:47,210 兄上… 302 00:18:47,210 --> 00:18:50,210 だが もうその必要はない 303 00:18:50,210 --> 00:18:54,210 陛下は この集落の人々が この国を愛するなら— 304 00:18:54,210 --> 00:18:58,380 この国の民として受け入れると おっしゃってくださった 305 00:18:58,380 --> 00:19:01,390 私の役目も終わりだ 306 00:19:01,390 --> 00:19:04,060 この思いを解き放ってもよかろう 307 00:19:04,060 --> 00:19:07,990 ったく… 妹を泣かすなよ バカ野郎 308 00:19:07,990 --> 00:19:10,830 返す言葉もありません 309 00:19:10,830 --> 00:19:14,000 コマインたちのこと よろしくお願いします 310 00:19:14,000 --> 00:19:17,000 俺にできるのは 手続きくらいのものだ 311 00:19:17,000 --> 00:19:22,010 彼女たちを本当に守れるとしたら それは この国自体だろう 312 00:19:22,010 --> 00:19:26,510 ならば この国を 幾久しく存続させてください 313 00:19:26,510 --> 00:19:29,210 わかった 314 00:19:37,860 --> 00:19:40,360 赤ちゃんって いい匂い! 315 00:19:40,360 --> 00:19:43,960 まだ首が座ってないからな 気をつけて抱けよ 316 00:19:46,200 --> 00:19:48,200 体調はどうだ? 317 00:19:48,200 --> 00:19:51,700 おかげさまで 術後も安定しています 318 00:19:51,700 --> 00:19:56,210 お乳の出もよく お腹いっぱい 飲ませてやることができます 319 00:19:56,210 --> 00:19:58,210 それはよかった 320 00:19:58,210 --> 00:20:01,880 お腹を裂くって言うから 最初はヒヤヒヤしたわ 321 00:20:01,880 --> 00:20:06,390 俺の国では 帝王切開は 成功率の高い手術なんだ 322 00:20:06,390 --> 00:20:09,220 お前… ウッ! あっ… 323 00:20:09,220 --> 00:20:11,720 ウゥ… 簡単そうに言うな! 324 00:20:11,720 --> 00:20:15,060 じゃあ 10割成功するからって 今 腹を裂けるか? 325 00:20:15,060 --> 00:20:17,060 あ… 326 00:20:17,060 --> 00:20:19,400 血と胎脂にまみれた 赤ん坊を見てないだろ! 327 00:20:19,400 --> 00:20:21,400 床に流れた血も— 328 00:20:21,400 --> 00:20:23,900 大量の輸血を必要としたこの人の姿も! 329 00:20:23,900 --> 00:20:25,910 カルラ… 330 00:20:25,910 --> 00:20:29,070 どんなに魔法と医術が発達したって— 331 00:20:29,070 --> 00:20:31,580 女にとって出産は命懸けなんだ! 332 00:20:31,580 --> 00:20:34,910 (泣き声) おぉ よしよし よしよし 333 00:20:34,910 --> 00:20:39,750 やっぱり私じゃだめみたい (泣き声) 334 00:20:39,750 --> 00:20:44,260 カルラ すまない 軽々しく言ってしまった 335 00:20:44,260 --> 00:20:46,590 あなたにも失礼だった 336 00:20:46,590 --> 00:20:48,590 め めっそうもない 337 00:20:48,590 --> 00:20:50,760 普通なら死んでいたはずの ところを— 338 00:20:50,760 --> 00:20:52,770 助けていただいたんです 339 00:20:52,770 --> 00:20:55,600 頭を下げなければいけないのは こちらのほうです 340 00:20:55,600 --> 00:20:58,770 男だから実感が湧かなくて 341 00:20:58,770 --> 00:21:01,110 どう詫びていいのかも わからない 342 00:21:01,110 --> 00:21:04,780 でしたら この子の 名付け親になってください 343 00:21:04,780 --> 00:21:07,710 えっ… 俺が!? えぇ! 344 00:21:07,710 --> 00:21:10,220 陛下が名付け親と なってくだされば— 345 00:21:10,220 --> 00:21:13,720 きっと この子にも 大地の恵みが訪れるでしょう 346 00:21:13,720 --> 00:21:19,230 でも… 俺でいいのかな? そのくらい男にもできるだろ 347 00:21:19,230 --> 00:21:24,560 わかったよ… 名前ね… ウーン 348 00:21:24,560 --> 00:21:27,570 あっ そうだ「フク」はどうかな 349 00:21:27,570 --> 00:21:30,570 俺のいた世界の言葉で 「幸せ」って意味だ 350 00:21:30,570 --> 00:21:33,410 フク… 351 00:21:33,410 --> 00:21:35,410 どうかな? 352 00:21:35,410 --> 00:21:39,580 ありがとうございます いい名前をいただきました 353 00:21:39,580 --> 00:21:43,750 きっとオオシカの角のように 立派に成長すると思います 354 00:21:43,750 --> 00:21:47,920 フクくん 元気に育てよ フクく~ん 355 00:21:47,920 --> 00:21:50,260 ベロベロばぁ! 356 00:21:50,260 --> 00:21:52,260 ウフフ… 357 00:21:52,850 --> 00:21:56,760 んっ? なんだよ 他人の赤ちゃんもいいけど— 358 00:21:57,070 --> 00:21:59,600 自分の子どもだと もっとかわいいでしょうね 359 00:21:59,950 --> 00:22:01,600 あぁ そうだな 360 00:22:04,390 --> 00:22:08,210 だったら… こ 今夜から励んでみる? 361 00:22:08,530 --> 00:22:11,210 えっ? あ… その… あっ 362 00:22:11,210 --> 00:22:14,210 やっぱり もう少し待ってもらえるか? 363 00:22:14,210 --> 00:22:16,720 もう! 結局それなの? ハハ… 364 00:22:16,720 --> 00:22:18,720 (咳払い) 365 00:22:18,720 --> 00:22:21,220 そういう話は 城でやってくれないか? 366 00:22:21,590 --> 00:22:23,920 聞かされる こっちの身にもなってくれ 367 00:22:23,920 --> 00:22:25,920