1 00:00:02,961 --> 00:00:06,840 (ソーマ)魔法が存在するせいで この世界の技術体系は— 2 00:00:06,923 --> 00:00:09,718 俺から見ると ちょっと おかしなことになっている 3 00:00:10,468 --> 00:00:13,013 例えば 戦艦アルベルト 4 00:00:13,471 --> 00:00:17,851 前国王の名を冠された 禁軍が所有する唯一の艦(ふね) 5 00:00:18,309 --> 00:00:19,769 全体的に見れば— 6 00:00:19,853 --> 00:00:23,440 産業革命にすら届いていない この世界の技術力で— 7 00:00:23,523 --> 00:00:26,609 こんな戦艦があるのは おかしいと思うかもしれない 8 00:00:26,901 --> 00:00:29,320 しかし たとえ鉄であっても— 9 00:00:29,404 --> 00:00:33,700 浮力を計算された形状であれば 水に浮かせることができる 10 00:00:33,783 --> 00:00:39,205 つまり 戦艦の外側だけなら 中世レベルの技術力でも作れたのだ 11 00:00:39,706 --> 00:00:42,917 それが産業革命以後まで 作られなかったのは— 12 00:00:43,001 --> 00:00:46,296 重い鉄の艦を動かす機関が なかったからだ 13 00:00:46,629 --> 00:00:52,343 しかし この世界には 鉄の艦を 牽引(けんいん)できるほど強力な海竜(かいりゅう)類がいた 14 00:00:52,427 --> 00:00:55,221 彼らを調教し 引っ張ってもらうことで— 15 00:00:55,305 --> 00:00:57,599 遠洋航海も可能になる 16 00:00:57,682 --> 00:01:00,143 だから 鉄の艦が造られたのだ 17 00:01:00,810 --> 00:01:03,772 戦艦に搭載されている 大砲にしても そうだ 18 00:01:04,397 --> 00:01:06,775 この世界には 火薬が既にある 19 00:01:06,858 --> 00:01:08,860 しかし 火縄銃はない 20 00:01:09,569 --> 00:01:13,198 なまじ魔法が遠距離攻撃手段として 使えてしまうため— 21 00:01:13,281 --> 00:01:15,325 銃が発達しなかったのだ 22 00:01:15,742 --> 00:01:18,453 また 付与術式というものもあり 23 00:01:18,536 --> 00:01:22,165 これは物体に さまざまな効果を 持った術式を付与することで 24 00:01:22,499 --> 00:01:24,084 より強固にしたり 25 00:01:24,167 --> 00:01:26,461 より切断力を上げたりできるのだ 26 00:01:27,045 --> 00:01:30,465 ただし 鉄砲は ないものの 大砲は存在する 27 00:01:31,090 --> 00:01:32,092 これは— 28 00:01:32,175 --> 00:01:36,638 水上では なぜか 水系以外の魔法が 大きく制限されてしまうため— 29 00:01:36,721 --> 00:01:40,308 艦船への攻撃手段として 大砲が発達したのだ 30 00:01:41,059 --> 00:01:45,188 結局 技術は 需要があって発達するものらしい 31 00:01:45,814 --> 00:01:49,025 こんなアンバランスな 技術体系を持つ世界で— 32 00:01:49,108 --> 00:01:52,946 俺は ひとり 土木事業を進めようとしていた 33 00:01:53,404 --> 00:01:58,451 ♪~ 34 00:03:16,905 --> 00:03:22,911 ~♪ 35 00:03:37,508 --> 00:03:38,801 (禁軍兵)ンッ… 36 00:03:38,885 --> 00:03:41,262 (禁軍兵たち)ンッ… ンッ… 37 00:03:41,638 --> 00:03:42,639 (禁軍兵)ンッ… 38 00:03:44,349 --> 00:03:45,516 (ハルバート)ンッ… 39 00:03:45,600 --> 00:03:47,602 ンッ… フゥ… 40 00:03:47,685 --> 00:03:48,770 …たく 41 00:03:48,853 --> 00:03:52,106 なんで 禁軍が道路工事なんか やんなきゃなんねえんだ? 42 00:03:52,190 --> 00:03:53,942 (カエデ)そこ! サボらないのです! 43 00:03:54,150 --> 00:03:57,195 (カエデ)無駄口たたいてないで キリキリ働くのですよ! 44 00:03:57,278 --> 00:03:58,363 なあ カエデ… 45 00:03:58,446 --> 00:03:59,447 (カエデ)ダメなのです! 46 00:03:59,781 --> 00:04:01,324 ハルは部下なのですよ 47 00:04:01,407 --> 00:04:03,409 ちゃんと 現場監督と呼ぶのです 48 00:04:03,493 --> 00:04:05,203 アア… 49 00:04:05,286 --> 00:04:09,374 監督 これって ホントに禁軍の仕事なのか? 50 00:04:09,457 --> 00:04:12,377 王都の失業者も 雇われているみたいですが— 51 00:04:12,460 --> 00:04:14,587 とても手が足らないのですよ 52 00:04:14,671 --> 00:04:18,174 何しろ 新たに建設される 港湾都市を起点に— 53 00:04:18,257 --> 00:04:22,011 王国中に道路網を 張り巡らせる計画なのですから 54 00:04:22,303 --> 00:04:26,015 だからって 普通 禁軍に こんなことさせるか? 55 00:04:26,266 --> 00:04:28,518 俺たちゃ 国を守るのが仕事だぞ 56 00:04:31,104 --> 00:04:35,984 (話し声) 57 00:04:40,530 --> 00:04:41,948 ウン! うまい! 58 00:04:42,281 --> 00:04:45,326 肉に絡めてあるソースが 甘辛くて イケるな! 59 00:04:45,410 --> 00:04:49,747 これは 王様が考案した ショウガヤキという料理なのです 60 00:04:50,081 --> 00:04:54,627 あの王様 料理の才能だけは 認めざるをえないな 61 00:04:55,503 --> 00:04:59,298 難民として我が国に来た 妖狼(ようろう)族に居住区を与え 62 00:04:59,382 --> 00:05:04,345 そこで造らせた醤油(しょうゆ)やミリンという 調味料が使われているらしいのです 63 00:05:04,637 --> 00:05:07,724 妖狼族は そうした調味料の生産者として— 64 00:05:07,807 --> 00:05:09,851 この国で生きていくすべを得 65 00:05:10,268 --> 00:05:13,229 私たちは こうして おいしい物が食べられる 66 00:05:13,312 --> 00:05:15,356 一石二鳥の施策なのです 67 00:05:17,900 --> 00:05:20,194 それに 生野菜が 食べられるってことも— 68 00:05:20,278 --> 00:05:21,279 すごいのです 69 00:05:22,030 --> 00:05:25,033 王都から道をつないだ ここから いちばん近い村で— 70 00:05:25,116 --> 00:05:27,035 用意させているのですよ 71 00:05:27,243 --> 00:05:31,247 兵站線(へいたんせん)を容易に維持できる 道の力は偉大なのです 72 00:05:31,831 --> 00:05:35,334 (ハルバート)作った道路が 早速 役に立っているのか 73 00:05:35,418 --> 00:05:37,086 この輸送力があれば— 74 00:05:37,170 --> 00:05:40,965 食料問題の解決に 大きく寄与するはずなのです 75 00:05:41,049 --> 00:05:42,050 そうなのか? 76 00:05:42,341 --> 00:05:46,220 流通がスムーズになれば 需給の不均衡が解消されて 77 00:05:46,304 --> 00:05:49,515 多少なりとも 食料品の 価格が下がるはずなのです 78 00:05:49,891 --> 00:05:52,351 そこまで考えて やっているのか? あの王様は 79 00:05:52,727 --> 00:05:54,979 王様は すごい人なのですよ 80 00:05:55,063 --> 00:05:57,857 怖いくらい 先見の明がある人なのです 81 00:05:59,067 --> 00:06:01,611 食べ終わったら ハルは お昼寝ですか? 82 00:06:01,694 --> 00:06:03,112 そうだな 83 00:06:03,196 --> 00:06:07,033 能率が上がるからって 食後の睡眠は王様推しだしな 84 00:06:07,408 --> 00:06:09,911 (カエデ)王様が 異世界人ということもあって… 85 00:06:10,495 --> 00:06:13,122 お… 王様! それに姫さまも! 86 00:06:13,414 --> 00:06:15,750 ハルバート 禁軍には慣れたか? 87 00:06:16,084 --> 00:06:18,252 (ハルバート)はっ! 問題ありません! 88 00:06:18,336 --> 00:06:20,129 (ソーマ)アア… 堅いなぁ 89 00:06:20,213 --> 00:06:22,882 俺に食ってかかったときの 威勢は どうした? 90 00:06:22,965 --> 00:06:25,468 (ハルバート)あ… あのときは 申し訳ありませんでした! 91 00:06:25,551 --> 00:06:27,637 陛下に対し 大変なご無礼をしてしまい… 92 00:06:27,720 --> 00:06:30,807 (ソーマ)国王命令だ 敬語は やめてくれ 93 00:06:31,015 --> 00:06:33,893 あと“陛下”もな “ソーマ”でいい 94 00:06:34,143 --> 00:06:36,104 あっ いえ ですが… 95 00:06:36,187 --> 00:06:39,190 ハル 聞こえなかったのか? これは命令だ 96 00:06:39,982 --> 00:06:41,901 分かった ソーマ 97 00:06:42,235 --> 00:06:43,694 それでいい 98 00:06:43,778 --> 00:06:47,698 ちょうど ため口で話せる 同年代の男が欲しかったんだよ 99 00:06:47,782 --> 00:06:49,242 フフッ… 100 00:06:53,621 --> 00:06:56,791 (リーシア)道を作るのって こんなふうにするのね 101 00:06:57,125 --> 00:06:59,293 何度も その上を 歩いてきたけど— 102 00:06:59,377 --> 00:07:01,754 道が どうやって 作られているかなんて— 103 00:07:01,838 --> 00:07:03,714 考えたことも なかったわ 104 00:07:03,798 --> 00:07:05,675 名目は視察だが— 105 00:07:05,758 --> 00:07:08,761 まあ 勉強だと思って よく見ておいてくれ 106 00:07:11,305 --> 00:07:12,723 (禁軍兵)よっ… ンッ… 107 00:07:12,807 --> 00:07:15,101 (リーシア) あのドロドロした物は何なの? 108 00:07:15,184 --> 00:07:17,812 (カエデ)火山灰と石灰を 混ぜた物なのです 109 00:07:18,437 --> 00:07:19,730 (ソーマ)俺のいた世界では— 110 00:07:19,814 --> 00:07:22,400 古代コンクリートって 呼んでいた物だ 111 00:07:22,483 --> 00:07:25,153 時間がたてば 固まる性質を持っている 112 00:07:25,903 --> 00:07:27,363 その強靱(きょうじん)さは— 113 00:07:27,447 --> 00:07:30,700 あれが全力疾走しても ヒビ割れが生じないほどだ 114 00:07:30,783 --> 00:07:33,953 それは すごいわね そんなに堅いの? 115 00:07:34,036 --> 00:07:36,831 いや むしろ 適度な しなやかさが あるから— 116 00:07:36,914 --> 00:07:38,416 加わる力を逃がせるんだ 117 00:07:39,125 --> 00:07:40,126 俺のいた世界には— 118 00:07:40,209 --> 00:07:44,630 このコンクリートを使った 2000年以上前の建物が残っていた 119 00:07:48,092 --> 00:07:50,803 (リーシア) 道の両側に建ててある街灯は— 120 00:07:50,887 --> 00:07:52,096 王都と同じ物なの? 121 00:07:52,555 --> 00:07:54,932 (カエデ)はい 中にヒカリゴケを入れて 122 00:07:55,016 --> 00:07:57,310 暗くなると点灯する仕組みなのです 123 00:07:57,727 --> 00:08:00,146 (ソーマ)あと 街路樹として植えてあるのは— 124 00:08:00,229 --> 00:08:02,482 神森(じんご)の森原産の退魔樹(たいまじゅ)だ 125 00:08:02,565 --> 00:08:03,566 (リーシア)退魔樹? 126 00:08:04,025 --> 00:08:05,943 アイーシャ 説明を頼む 127 00:08:06,027 --> 00:08:07,028 (アイーシャ)はっ! 128 00:08:09,530 --> 00:08:10,698 この退魔樹は— 129 00:08:10,781 --> 00:08:14,702 魔物や野生生物の嫌がる波動を 常に放出しているようなのです 130 00:08:15,411 --> 00:08:17,955 恐らく 大イノシシなどに 食い荒らされるのを— 131 00:08:18,039 --> 00:08:19,582 防ぐためなのでしょう 132 00:08:20,416 --> 00:08:24,086 神護の森では 集落の周りに この退魔樹を植え 133 00:08:24,170 --> 00:08:27,715 魔物や動物たちの 侵入を防ぐのに使っております 134 00:08:27,965 --> 00:08:30,635 簡易の結界みたいなものなのね 135 00:08:30,718 --> 00:08:32,845 まあ あんまり密に植えると— 136 00:08:32,929 --> 00:08:35,431 生態系に どんな影響があるか 分からないから— 137 00:08:36,015 --> 00:08:37,767 {\an8}適度に間隔を開けて 138 00:08:37,850 --> 00:08:40,019 {\an8}野生動物が 近寄りにくくする程度に 139 00:08:40,102 --> 00:08:41,395 {\an8}とどめてある 140 00:08:41,479 --> 00:08:42,813 どうして? 141 00:08:42,897 --> 00:08:45,024 完全に防げたほうが いいんじゃないの? 142 00:08:45,107 --> 00:08:46,859 じゃ リーシア 143 00:08:46,943 --> 00:08:50,488 季節ごとに狩り場を変える 灰色狼(はいいろおおかみ)やレッドベアが— 144 00:08:50,571 --> 00:08:53,699 道のせいで移動できず その地に とどまり 145 00:08:53,783 --> 00:08:57,245 餌がなくなって 家畜や人を 襲うようになったら どうする? 146 00:08:57,787 --> 00:08:58,788 うん? 147 00:08:58,871 --> 00:09:01,290 (ソーマ)あるいは 同じく1か所に とどまって 148 00:09:01,374 --> 00:09:04,543 その場の餌を食い尽くした 大猿や大イノシシが— 149 00:09:04,627 --> 00:09:08,172 やむなく 人里に下りてきて 田畑を食い荒らしたり 150 00:09:08,256 --> 00:09:09,799 …なんて事態になったら? 151 00:09:10,341 --> 00:09:14,053 絶対に やめたほうがいいのは 分かったけど… 152 00:09:14,136 --> 00:09:15,888 なんで そんな具体的なの? 153 00:09:16,222 --> 00:09:20,977 害獣対策は 地方自治体が 共通に抱える問題だからな 154 00:09:21,352 --> 00:09:23,771 ちほう… じちたい? 155 00:09:23,854 --> 00:09:27,233 そこまで考え抜いているなんて さすが陛下なのですよ! 156 00:09:27,316 --> 00:09:31,404 (クイの鳴き声) 157 00:09:31,487 --> 00:09:32,697 (一同)あっ… 158 00:09:33,656 --> 00:09:35,241 (鳴き声) 159 00:09:35,324 --> 00:09:36,659 (ソーマ)あれは? 160 00:09:36,742 --> 00:09:37,952 (リーシア)伝書クイね 161 00:09:38,411 --> 00:09:41,372 クイという鳥は 帰巣本能があるだけでなく— 162 00:09:41,455 --> 00:09:45,042 飼い主が放つ波動を 遠くから感知できるのです 163 00:09:45,126 --> 00:09:46,586 なるほど 164 00:09:46,669 --> 00:09:50,548 その習性を遠距離の伝達手段として 使用しているわけか 165 00:09:50,631 --> 00:09:51,841 (鳴き声) 166 00:09:52,800 --> 00:09:54,594 (リーシア)どうやら アイーシャへの手紙を— 167 00:09:54,677 --> 00:09:55,845 運んできたみたいね 168 00:09:59,515 --> 00:10:01,684 ハッ… そんな… 169 00:10:02,018 --> 00:10:03,019 (ソーマ)どうした? アイーシャ 170 00:10:03,436 --> 00:10:06,022 (アイーシャ)ダークエルフの 里の長(おさ)をしている父上から— 171 00:10:06,105 --> 00:10:07,481 連絡が来たんです 172 00:10:07,565 --> 00:10:11,360 昨夜 突如 神護の森で 大規模な地滑りが起きて 173 00:10:11,444 --> 00:10:14,238 集落の半分ほどを のみ込んでしまったと… 174 00:10:14,322 --> 00:10:14,989 (3人)えっ!? 175 00:10:15,364 --> 00:10:20,328 このところ 神護の森では 長雨が続いていたそうです 176 00:10:21,162 --> 00:10:22,621 行方不明者… 177 00:10:23,831 --> 00:10:26,667 多数… ウウッ… 178 00:10:27,001 --> 00:10:29,295 (リーシア)ソーマ (ソーマ)う~ん… 179 00:10:31,047 --> 00:10:32,048 (ハルバート)おい どうすん… 180 00:10:32,131 --> 00:10:35,426 しっ! 今 王様は考えてるのです 181 00:10:35,509 --> 00:10:37,178 ジャマしちゃダメなのです 182 00:10:37,261 --> 00:10:38,346 (ソーマ)カエデ 183 00:10:38,679 --> 00:10:40,348 今 ここには何人くらい いる? 184 00:10:40,681 --> 00:10:45,728 (カエデ)はっ! 禁軍兵54名 土木建築ギルドからの出向技師4名 185 00:10:46,062 --> 00:10:49,523 うち 土系魔導士は 私を含め6名なのです 186 00:10:49,815 --> 00:10:53,486 よし この部隊で ダークエルフの里の救援に向かう 187 00:10:53,653 --> 00:10:54,654 陛下! 188 00:10:54,737 --> 00:10:59,241 アイーシャ 1対1なら 俺はアイーシャより はるかに弱い 189 00:10:59,325 --> 00:11:02,078 だが 多くの人間を 動かせる立場にある 190 00:11:02,411 --> 00:11:03,704 だから 任せろ 191 00:11:03,788 --> 00:11:06,540 救える命は 救えるかぎり救ってみせる 192 00:11:06,791 --> 00:11:09,502 (泣き声) 193 00:11:09,877 --> 00:11:12,171 アイーシャ 泣くのは あとだ 194 00:11:12,254 --> 00:11:16,634 外部の人間である俺たちが 神護の森に入って救援活動するには 195 00:11:16,717 --> 00:11:18,594 お前がいてくれたほうがいい 196 00:11:18,886 --> 00:11:20,096 案内を頼むぞ 197 00:11:20,179 --> 00:11:21,722 ンンッ… はい! 198 00:11:22,014 --> 00:11:23,140 (ソーマ)うん 199 00:11:23,224 --> 00:11:25,434 災害救助は時間との勝負だ 200 00:11:25,518 --> 00:11:28,896 幸い ここは王都よりも 神護の森に近い 201 00:11:28,979 --> 00:11:30,856 このまま 現場に直行する 202 00:11:30,940 --> 00:11:34,568 (カエデ)かしこまりました すぐに兵たちを用意させるのです! 203 00:11:34,652 --> 00:11:36,112 (ソーマ)頼む (カエデ)ンッ… 204 00:11:38,030 --> 00:11:41,992 (ソーマ)リーシアは王都に戻って 救援部隊の派遣を要請してくれ 205 00:11:42,076 --> 00:11:46,163 そして ハクヤに言って救援物資を ダークエルフの里まで届けさせろ 206 00:11:46,247 --> 00:11:47,540 (リーシア)分かったわ 任せて 207 00:11:50,501 --> 00:11:53,587 アイーシャ ここから 神護の森まで どれくらい かかる? 208 00:11:53,671 --> 00:11:55,131 早馬で半日 209 00:11:55,214 --> 00:11:56,841 通常の行軍ペースですと— 210 00:11:56,924 --> 00:11:59,009 どんなに急いでも 2日は かかります 211 00:11:59,093 --> 00:12:00,136 2日!? 212 00:12:00,428 --> 00:12:04,390 発生が深夜だとすると 既に半日近く たってる 213 00:12:04,473 --> 00:12:08,060 どんなに急いでも 現場到着は発生から2日半 214 00:12:08,811 --> 00:12:12,773 72時間の壁まで 半日しかないのは厳しいな 215 00:12:12,857 --> 00:12:14,859 72時間の壁? 216 00:12:15,234 --> 00:12:17,236 こういう自然災害のとき 217 00:12:17,319 --> 00:12:21,240 発生から丸3日… つまり 72時間を過ぎると— 218 00:12:21,323 --> 00:12:23,701 要救助者の死亡率が跳ね上がるんだ 219 00:12:23,784 --> 00:12:26,495 なら さっさと 神護の森に向かおうぜ! 220 00:12:26,579 --> 00:12:27,913 分かってる 221 00:12:27,997 --> 00:12:31,208 だが 通常の行軍だと 時間がかかりすぎる 222 00:12:31,292 --> 00:12:34,670 一瞬で大勢を別の場所に 移動させる魔法とか ないのか? 223 00:12:34,754 --> 00:12:37,298 ねえよ! そんなのが あれば— 224 00:12:37,381 --> 00:12:40,759 そもそも 汗水垂らして 道路なんか作る必要ないだろう 225 00:12:41,051 --> 00:12:42,219 アア… 226 00:12:42,303 --> 00:12:45,181 くそ 何か ほかに移動手段は… 227 00:12:45,264 --> 00:12:47,016 (足音) (荷車の音) 228 00:12:50,561 --> 00:12:51,687 ハッ… 229 00:13:27,139 --> 00:13:29,767 (ボーダン)王よ お初にお目にかかります 230 00:13:30,226 --> 00:13:32,853 (ボーダン)ダークエルフの長で アイーシャの父 231 00:13:33,395 --> 00:13:35,231 ボーダン・ウドガルドと申します 232 00:13:35,523 --> 00:13:37,858 (ソーマ) 堅苦しい挨拶は抜きにしよう 233 00:13:37,942 --> 00:13:40,069 それよりも今は 救助が先決だ 234 00:13:41,487 --> 00:13:45,783 (ソーマ)とりあえず 手近の 禁軍兵士を50名ほど連れてきた 235 00:13:45,866 --> 00:13:49,870 数日後には 救援物資を持った 第2陣も到着するはずだ 236 00:13:50,454 --> 00:13:52,164 まずは状況を説明してくれ 237 00:13:52,248 --> 00:13:53,457 (ボーダン)はい 238 00:13:53,916 --> 00:13:58,337 地滑りを起こしたのは この集落の東側にある斜面で 239 00:13:58,420 --> 00:14:01,465 既に 100名以上の 死傷者が出ています 240 00:14:02,841 --> 00:14:05,886 行方不明者も まだ40名以上 241 00:14:05,970 --> 00:14:09,348 (ソーマ)なら その行方不明者の リストを作成してくれ 242 00:14:09,431 --> 00:14:13,185 安否確認が取れた順に 消していけば 取りこぼしがない 243 00:14:13,269 --> 00:14:15,980 (ボーダン)分かりました すぐに手配します 244 00:14:16,063 --> 00:14:19,525 それと 人手を割いて 山を見張らせてくれ 245 00:14:19,608 --> 00:14:21,360 ちょっとでも山が動いたり— 246 00:14:21,443 --> 00:14:24,488 変な音がしたりしたら 報告させるんだ 247 00:14:24,572 --> 00:14:27,741 救助中に再度 崩れたら シャレにならないからな 248 00:14:27,825 --> 00:14:31,036 陛下 その任 私にお与えください 249 00:14:31,120 --> 00:14:32,121 (ソーマ)ンッ… 250 00:14:33,289 --> 00:14:37,042 我が娘は幼いころより 神護の森を遊び場とし 251 00:14:37,126 --> 00:14:39,211 よく知悉(ちしつ)しております 252 00:14:39,295 --> 00:14:41,171 任せて心配はないかと 253 00:14:42,256 --> 00:14:45,926 かつて お前と一緒に森の中を 駆け回っていた連中がいるだろう 254 00:14:46,302 --> 00:14:50,431 その者たちなら お前と 同じくらい森に詳しいはずだ 255 00:14:50,514 --> 00:14:51,807 声をかけて連れていけ 256 00:14:52,099 --> 00:14:54,101 はっ! 承知しました 257 00:14:54,518 --> 00:14:58,522 頼んだぞ アイーシャ ただし 決してムチャはするなよ 258 00:14:59,857 --> 00:15:03,569 (ソーマ)これより 行方不明者の捜索活動を開始する 259 00:15:03,652 --> 00:15:07,156 耳を澄まし 土の中で助けを求める声を聞き 260 00:15:07,615 --> 00:15:09,617 慎重に彼らを救助せよ 261 00:15:10,284 --> 00:15:13,203 道路工事で培った 穴掘りスキルの見せ場だぞ! 262 00:15:13,495 --> 00:15:15,164 (ハルバート)ンンッ… 263 00:15:15,247 --> 00:15:17,416 だが 絶対 ムリはするな 264 00:15:17,499 --> 00:15:21,337 また崩れそうだと思ったら 救助中であっても退避しろ 265 00:15:21,962 --> 00:15:25,341 救助する側には 1人の犠牲者を出すことも許されん 266 00:15:25,841 --> 00:15:27,635 (ソーマ)いいな? (禁軍兵たち)はっ! 267 00:15:36,143 --> 00:15:38,395 ハッ… 声が聞こえた 268 00:15:38,479 --> 00:15:39,938 えっ? アア… 269 00:15:42,691 --> 00:15:45,194 この太い木の下だ まだ息があるぞ! 270 00:15:45,444 --> 00:15:47,154 ええっ? ンッ… 271 00:15:47,738 --> 00:15:48,739 声なんて聞こえな… 272 00:15:48,822 --> 00:15:50,366 いるんだよ! いいから掘れ! 273 00:15:51,158 --> 00:15:53,786 ンッ! ンッ! ンッ! 274 00:15:56,246 --> 00:15:57,956 ハッ… マジかよ 275 00:15:58,332 --> 00:16:00,709 (禁軍兵たち)よっ! ンンッ! 276 00:16:00,793 --> 00:16:02,419 (ハルバート)ンッンッ… 277 00:16:04,380 --> 00:16:05,381 ンンッ! 278 00:16:12,471 --> 00:16:15,975 ハァ… よく あそこに 埋まってるって分かったな 279 00:16:16,642 --> 00:16:18,060 (ソーマ)これが教えてくれたんだ 280 00:16:18,519 --> 00:16:21,021 それは… ネズミか? 281 00:16:21,271 --> 00:16:22,731 木彫りの …な 282 00:16:29,488 --> 00:16:30,948 こいつを操って— 283 00:16:31,031 --> 00:16:34,368 人間が入り込めないような所を あちこち探ってるんだ 284 00:16:34,451 --> 00:16:38,747 そうか… それがウワサの リビング何とかって能力か 285 00:16:38,831 --> 00:16:43,127 ああ ダンジョンでの探索用に いくつか試作品を作ってたんだが 286 00:16:43,210 --> 00:16:44,545 こんな所で役に立つなん… 287 00:16:44,628 --> 00:16:45,462 ウッ… 288 00:16:45,713 --> 00:16:47,172 うん? どうした? 289 00:16:47,464 --> 00:16:49,633 (ソーマ)ウッ… ウエッ… 290 00:16:49,925 --> 00:16:52,636 お… おい 大丈夫かよ? 291 00:16:52,720 --> 00:16:53,971 なんで 急に… 292 00:16:54,638 --> 00:16:56,473 ウウッ… わ… 悪い 293 00:16:57,725 --> 00:17:00,728 捜索中の木彫りネズミの1匹が— 294 00:17:00,811 --> 00:17:04,022 損壊の激しい遺体を 急に見つけたもんだから… 295 00:17:04,273 --> 00:17:08,902 ひと目 見ただけで 遺体って 分かる状態だったってことか 296 00:17:08,986 --> 00:17:09,987 ハァ… 297 00:17:11,196 --> 00:17:14,491 (ソーマ)そうか 行方不明者が全員 見つかったか 298 00:17:15,492 --> 00:17:19,413 (ボーダン)残念ながら 冷たい骸(むくろ)となった者もおりますが 299 00:17:19,496 --> 00:17:21,582 陛下が駆けつけてくださらなければ 300 00:17:21,665 --> 00:17:23,709 その数は もっと多くなっていたはず 301 00:17:24,460 --> 00:17:28,047 ダークエルフの長として 改めて お礼申し上げます 302 00:17:29,381 --> 00:17:31,258 (アイーシャ)陛下 父上! (ソーマ)あっ… 303 00:17:33,510 --> 00:17:37,056 王都から姫さまと共に 救援の第2陣が到着しました 304 00:17:37,473 --> 00:17:38,474 来たか! 305 00:17:39,016 --> 00:17:41,393 (ロブトール)もう… 遅い 306 00:17:45,439 --> 00:17:48,817 (ロブトール) ウ… ウウッ… アア… 307 00:17:52,279 --> 00:17:55,199 (ソーマ)確かに 捜索には間に合わなかった 308 00:17:55,282 --> 00:17:58,452 だが 救援というのは むしろ ここからが本番だ 309 00:17:58,786 --> 00:18:03,624 負傷者の手当て 土砂の除去 仮設住宅の建設 310 00:18:04,083 --> 00:18:05,834 やるべきことは いくらでもある 311 00:18:07,503 --> 00:18:10,047 だが 死んだ者は もう帰ってこない 312 00:18:10,130 --> 00:18:11,256 アッ… 313 00:18:11,340 --> 00:18:12,841 よさんか ロブトール 314 00:18:12,925 --> 00:18:13,926 アア… 315 00:18:14,009 --> 00:18:17,846 この者は 私の弟で ロブトールと申します 316 00:18:17,930 --> 00:18:19,848 この災害で妻を亡くし 317 00:18:19,932 --> 00:18:23,519 一人娘は いまだ 生死の境をさまよっておりまして 318 00:18:24,561 --> 00:18:28,273 いささか取り乱しておるようですが 何とぞ ご容赦を 319 00:18:28,732 --> 00:18:29,942 (ソーマ)いや いい… 320 00:18:30,025 --> 00:18:31,068 (ロブトール)王よ! 321 00:18:31,151 --> 00:18:33,821 私は森を守ってきたつもりです 322 00:18:34,363 --> 00:18:37,658 なのに なぜ… なぜ 森は 我が家族を… 323 00:18:37,741 --> 00:18:39,493 (ボーダン)ロブトール! (ロブトール)ハッ… 324 00:18:39,910 --> 00:18:41,954 今は 誰を責めるときでもない 325 00:18:42,454 --> 00:18:44,832 もちろん お前自身もだ 326 00:18:44,915 --> 00:18:46,208 ウウッ… 327 00:18:47,084 --> 00:18:50,003 (ボーダン)今は 妻の死を悼んでやれ 328 00:18:50,087 --> 00:18:53,924 そして 娘の魂が 現世に とどまるよう祈れ 329 00:18:54,216 --> 00:19:00,639 (ロブトールの泣き声) 330 00:19:00,722 --> 00:19:04,059 (ロブトールの泣き声) 331 00:19:10,440 --> 00:19:13,402 叔父上は間伐に反対していたのです 332 00:19:13,485 --> 00:19:15,529 森の守護者である ダークエルフが— 333 00:19:15,612 --> 00:19:18,574 不要に木々を伐採するなど とんでもないことだと… 334 00:19:19,074 --> 00:19:20,742 そうか それで… 335 00:19:21,410 --> 00:19:24,955 もし叔父上が もっと間伐に協力的であれば— 336 00:19:25,038 --> 00:19:27,124 叔父上の家族は 助かったのでしょうか? 337 00:19:27,666 --> 00:19:30,169 それは… 分からない 338 00:19:31,670 --> 00:19:34,339 確かに 適度な間伐をして 下草を育て— 339 00:19:34,798 --> 00:19:37,092 土の保水力を高めていれば— 340 00:19:37,175 --> 00:19:40,387 土砂崩れが起きにくい環境に することはできる 341 00:19:40,470 --> 00:19:44,099 だが それは あくまでも 起きにくくするだけだ 342 00:19:44,182 --> 00:19:48,937 今回みたいな長雨が原因だった場合 どこで起こっても おかしくない 343 00:19:49,021 --> 00:19:51,982 それでは ただ 運が悪かっただけだと… 344 00:19:52,816 --> 00:19:55,527 土砂崩れの 発生箇所に関しては そうだ 345 00:19:55,861 --> 00:19:59,615 しかし 間伐は常に 森の中での作業になる 346 00:19:59,698 --> 00:20:03,952 異様な音が聞こえる 森が動いているように見えるなどの 347 00:20:04,036 --> 00:20:06,496 土砂崩れの前兆に 気づきやすいのは確かだ 348 00:20:07,247 --> 00:20:11,376 気づけたなら 対策も立てられるし 避難だって できただろう 349 00:20:11,460 --> 00:20:14,796 “森を守る”と言えば 聞こえはいいが— 350 00:20:14,880 --> 00:20:17,591 守っているという 意識自体が間違いだ 351 00:20:18,300 --> 00:20:20,969 自然は人に守られるほど弱くはない 352 00:20:21,595 --> 00:20:26,558 自然を破壊するのが人のエゴなら 守ろうするのも またエゴなんだ 353 00:20:27,684 --> 00:20:31,146 本来なら 破壊と再生を 繰り返すはずの自然に— 354 00:20:31,230 --> 00:20:34,524 人の都合のいい状態のままで いてもらうわけだからな 355 00:20:35,776 --> 00:20:38,820 人にできるのは 間伐などで手を加え 356 00:20:38,904 --> 00:20:42,366 森を共存可能な状態で 維持していくことだけだ 357 00:21:02,135 --> 00:21:05,222 今回 私は何もできなかったわね 358 00:21:05,639 --> 00:21:08,433 救援部隊を呼びに 行ってくれただろう? 359 00:21:08,517 --> 00:21:10,644 みんな全力を尽くしたさ 360 00:21:11,186 --> 00:21:12,354 むしろ… 361 00:21:12,896 --> 00:21:14,940 何もできなかったのは 俺のほうだ 362 00:21:15,023 --> 00:21:16,233 そんな… 363 00:21:16,316 --> 00:21:18,151 大活躍だったって聞いたわよ 364 00:21:20,320 --> 00:21:22,406 俺の立場は国王だ 365 00:21:22,948 --> 00:21:26,493 有事の際 現場で指揮を執るのは 王の仕事じゃない 366 00:21:26,576 --> 00:21:31,248 王の仕事は 有事が起こる前に 事前準備をしておくことだ 367 00:21:32,040 --> 00:21:33,709 俺は それを怠った 368 00:21:33,792 --> 00:21:36,545 何を言ってるの? ソーマ あなたは… 369 00:21:37,045 --> 00:21:40,841 禁軍の救援部隊としての運用は うまくできたと思う 370 00:21:41,299 --> 00:21:43,635 だけど それ以上に 至らなかった点が多い 371 00:21:44,386 --> 00:21:47,806 情報伝達手段 長距離輸送手段 372 00:21:47,889 --> 00:21:50,225 救援物資の各地方での備蓄 373 00:21:50,308 --> 00:21:52,602 救援隊に付属する医療チーム… 374 00:21:53,353 --> 00:21:55,230 何もかもが足りなかった 375 00:21:56,315 --> 00:22:01,403 食料難と三公の問題ばかりに 目が行って これらの整備を怠った 376 00:22:02,571 --> 00:22:03,864 ソーマ… 377 00:22:10,954 --> 00:22:16,960 {\an8}♪~ 378 00:23:34,496 --> 00:23:40,502 {\an8}~♪