1 00:01:33,000 --> 00:01:38,700 宇宙暦798年 帝国暦489年 9月 2 00:01:38,700 --> 00:01:43,280 ユリアン・ミンツは フェザーン 駐在武官たる辞令を受けるべく 3 00:01:43,280 --> 00:01:47,580 首都星ハイネセンに向かっていた 4 00:01:47,580 --> 00:01:51,580 12歳の時に 戦災孤児育英特別法によって 5 00:01:51,580 --> 00:01:54,990 ヤン・ウェンリー提督の 被保護者になってから4年 6 00:01:54,990 --> 00:01:56,960 久しぶりに一人になってみて 7 00:01:56,960 --> 00:02:00,890 いまさらのように 自分自身の時間を持て余している 8 00:02:00,890 --> 00:02:03,060 だからというわけでもないが 9 00:02:03,060 --> 00:02:06,500 この機会を利用して やっておきたいことがある 10 00:02:06,500 --> 00:02:11,400 ヤン提督は本当は 歴史研究者になりたかった 11 00:02:11,400 --> 00:02:15,340 他人は提督を 魔術師だの 奇跡だのと言うが 12 00:02:15,340 --> 00:02:20,750 提督自身は歴史から学んだことを 応用しているにすぎないと言う 13 00:02:20,750 --> 00:02:23,580 それは謙遜だと僕などは思うが 14 00:02:23,580 --> 00:02:26,020 提督の言われるように フェザーンに行って 15 00:02:26,020 --> 00:02:28,350 別の価値観に触れる前に 16 00:02:28,350 --> 00:02:31,690 改めて ここに至る人類の歴史を 17 00:02:31,690 --> 00:02:35,060 振り返ってみようと思うのだ 18 00:02:35,060 --> 00:02:37,930 西暦2801年 19 00:02:37,930 --> 00:02:41,830 アルデバラン系 第2惑星テオリアを首都として 20 00:02:41,830 --> 00:02:45,000 銀河連邦を成立させた人類は 21 00:02:45,000 --> 00:02:47,970 この年を宇宙暦1年と改元し 22 00:02:47,970 --> 00:02:54,510 銀河系の中心部と辺境部に向けて 新たなる膨張を開始した 23 00:02:54,510 --> 00:02:59,720 ここに至る1世紀が 戦乱と無秩序の時代であって 24 00:02:59,720 --> 00:03:04,560 外的世界への人類の発展を 停滞させた後であるだけに 25 00:03:04,560 --> 00:03:09,760 そのほとばしるエネルギーは 一層 爆発的であったといえます 26 00:03:09,760 --> 00:03:12,700 それは 清新と進取の気風にあふれた 27 00:03:12,700 --> 00:03:16,300 人類の黄金時代の到来でした 28 00:03:16,300 --> 00:03:20,640 だが そんな中にも 問題がなかったわけではない 29 00:03:20,640 --> 00:03:23,610 地球とシリウスの戦乱の中で 生まれていた 30 00:03:23,610 --> 00:03:26,280 宇宙海賊の存在である 31 00:03:26,280 --> 00:03:30,150 それは軍事的な意味での脅威には なり得なかったが 32 00:03:30,150 --> 00:03:33,720 連邦にとっては 深刻な問題だった 33 00:03:33,720 --> 00:03:38,560 フロンティアの住人にとっては 単に航路の安全の問題ではなく 34 00:03:38,560 --> 00:03:42,190 そのための安全保障費や 保険料がかさみ 35 00:03:42,190 --> 00:03:46,770 辺境開発への意欲を 失わせることになるからである 36 00:03:46,770 --> 00:03:49,300 これを憂慮した銀河連邦は 37 00:03:49,300 --> 00:03:53,170 宇宙暦106年 宇宙軍の増員を決定 38 00:03:53,170 --> 00:03:57,380 本腰を入れて 宇宙海賊の一掃に乗り出した 39 00:03:57,380 --> 00:03:59,450 ミシェール・シュフラン クリストファー・ウッドら 40 00:03:59,450 --> 00:04:04,580 諸提督の活躍によって 2年後には ほぼその目的を達した 41 00:04:04,580 --> 00:04:08,250 ただ この種の犯罪者は 後を絶つことはない 42 00:04:08,250 --> 00:04:11,460 そのため いわば 対症療法の手段として 43 00:04:11,460 --> 00:04:15,090 強大な宇宙軍が残された 44 00:04:15,090 --> 00:04:17,530 その宇宙軍の存在に 45 00:04:17,530 --> 00:04:20,000 軍国主義によって 破滅へと向かった 46 00:04:20,000 --> 00:04:22,500 地球の轍を 踏むのではないかと 47 00:04:22,500 --> 00:04:25,940 不安を覚える者は 少なからず存在しました 48 00:04:25,940 --> 00:04:30,180 ですが だからこそ為政者達も 軍のコントロールに腐心し 49 00:04:30,180 --> 00:04:34,610 このあと200年ほど 平和と発展の時代が続きます 50 00:04:34,610 --> 00:04:36,980 しかしながら その平和が続く中で 51 00:04:36,980 --> 00:04:38,920 人類の上に いわゆる 52 00:04:38,920 --> 00:04:42,690 中世的停滞の影が 落ちかかりました 53 00:04:42,690 --> 00:04:45,290 疲労と倦怠が希望と野心を抑え 54 00:04:45,290 --> 00:04:49,160 消極が積極に 悲観が楽観に 退えいが進取に 55 00:04:49,160 --> 00:04:51,730 取って代わるように なってきたのです 56 00:04:51,730 --> 00:04:56,240 実際に科学技術における 新たな発見や発明が後を絶ち 57 00:04:56,240 --> 00:05:01,840 人類の生存圏の拡張も 再び頭打ちになっていったのです 58 00:05:01,840 --> 00:05:06,410 さらに政治的にも民主共和政治が その自浄力を失い 59 00:05:06,410 --> 00:05:09,680 利権あさりと権力闘争にのみ 興味を示す 60 00:05:09,680 --> 00:05:13,390 衆愚政治と化していったのです 61 00:05:13,390 --> 00:05:15,790 いつの時代も同じだな 62 00:05:15,790 --> 00:05:18,660 社会的活力が失われ 63 00:05:18,660 --> 00:05:22,630 社会生活や文化は 敗退の一途をたどった 64 00:05:22,630 --> 00:05:28,330 人々は無気力化し 老若男女を問わず 麻薬や酒 65 00:05:28,330 --> 00:05:32,640 性的乱交や 神秘主義にふける者が続出した 66 00:05:32,640 --> 00:05:36,180 あるいは スピードや暴力に刺激を求め 67 00:05:36,180 --> 00:05:40,950 事故や犯罪が激増し 反比例して検挙率は低下した 68 00:05:40,950 --> 00:05:47,590 生命を軽視し モラルを嘲笑する 傾向は深まる一方だった 69 00:05:47,590 --> 00:05:50,860 こうした傾向に 一つの影響を与えたのは 70 00:05:50,860 --> 00:05:53,830 地球統一以降 宗教の影響力が 71 00:05:53,830 --> 00:05:57,760 著しく低下したことではないかと いわれています 72 00:05:57,760 --> 00:06:02,470 13日戦争と その後の90年戦争という 73 00:06:02,470 --> 00:06:05,700 末世的 世紀末的状況下においても 74 00:06:05,700 --> 00:06:09,980 ついに救世主も現れず 神も降臨せず 75 00:06:09,980 --> 00:06:11,910 救いをもたらしてくれる 絶対者など 76 00:06:11,910 --> 00:06:15,780 いないのだという 認識のみが残ったのです 77 00:06:15,780 --> 00:06:17,750 連邦の黄金時代には 78 00:06:17,750 --> 00:06:22,550 それらが自らの力を頼む 積極性の源となっていたのですが 79 00:06:22,550 --> 00:06:24,520 社会の沈滞期になると 80 00:06:24,520 --> 00:06:29,330 逆に救いのない絶望感を もたらしたのだといえるでしょう 81 00:06:29,330 --> 00:06:32,330 これらの事態を憂慮する人々は 82 00:06:32,330 --> 00:06:34,870 むろん 数多く存在しました 83 00:06:34,870 --> 00:06:38,740 そして そうした人々の 人類社会の病状は 84 00:06:38,740 --> 00:06:42,270 抜本的な治療を 必要とするとの認識に 85 00:06:42,270 --> 00:06:44,980 誤りはなかったと いえるでしょう 86 00:06:44,980 --> 00:06:47,250 ただ彼らが誤ったのは 87 00:06:47,250 --> 00:06:52,450 民主共和制の自浄作用の 回復という長期療法ではなく 88 00:06:52,450 --> 00:06:55,820 即効性を求めて 激しい副作用のある 89 00:06:55,820 --> 00:06:58,520 劇薬を選んだことにあるのです 90 00:06:58,520 --> 00:07:02,820 すなわち 独裁政治という劇薬をである 91 00:07:07,730 --> 00:07:09,670 宇宙暦288年 92 00:07:09,670 --> 00:07:13,610 宇宙軍士官学校を首席で卒業し 少尉に任官した 93 00:07:13,610 --> 00:07:16,180 ルドルフ・フォン・ ゴールデンバウムは 94 00:07:16,180 --> 00:07:19,750 ウッド提督の再来といわれる らつ腕ぶりを示し 95 00:07:19,750 --> 00:07:22,680 当時 宇宙海賊の メインストリートといわれた 96 00:07:22,680 --> 00:07:27,020 ペテルギウス方面の 海賊組織を壊滅させ 97 00:07:27,020 --> 00:07:29,420 その苛烈さは批判も受けたが 98 00:07:29,420 --> 00:07:32,420 賞賛の声は はるかに大きかったのである 99 00:07:32,420 --> 00:07:35,860 閉塞した時代の状況に 窒息するような思いを 100 00:07:35,860 --> 00:07:38,800 味わっていた 銀河連邦の市民達は 101 00:07:38,800 --> 00:07:42,300 この若い鋭気に富んだ 新しい英雄を 102 00:07:42,300 --> 00:07:45,340 歓呼をもって迎えたのだった 103 00:07:45,340 --> 00:07:47,510 宇宙暦296年 104 00:07:47,510 --> 00:07:50,880 28歳にして 少将の地位にあったルドルフは 105 00:07:50,880 --> 00:07:53,650 軍籍を退いて政界に転じ 106 00:07:53,650 --> 00:07:55,610 連邦議会に議席を占めると 107 00:07:55,610 --> 00:07:58,780 若い政治家を その人気の下に結集し 108 00:07:58,780 --> 00:08:03,620 国家革新同盟のリーダーとして 議会に勢力を持つに至る 109 00:08:03,620 --> 00:08:07,290 強力な政府を! 強力な指導者を! 110 00:08:07,290 --> 00:08:10,490 社会に秩序と活力を! 111 00:08:13,000 --> 00:08:15,030 幾度かの選挙をへて 112 00:08:15,030 --> 00:08:18,800 国家革新同盟は 飛躍的に勢力を伸ばし 113 00:08:18,800 --> 00:08:24,110 ルドルフは強固な政治的基盤を 築くことに成功した 114 00:08:24,110 --> 00:08:27,580 彼は国民投票によって 国家元首となり 115 00:08:27,580 --> 00:08:31,920 議会によって首相に選出された 116 00:08:31,920 --> 00:08:37,290 この二つの職は不文律によって 兼任を禁じられていたのですが 117 00:08:37,290 --> 00:08:41,990 憲法に明文化されていないのを ルドルフは利用したのです 118 00:08:41,990 --> 00:08:46,830 そして それぞれにその権限が 制限されていたこの二つの職を 119 00:08:46,830 --> 00:08:48,900 一つの人格が占めた時 120 00:08:48,900 --> 00:08:52,040 その政治権力を せいちゅうする者は 121 00:08:52,040 --> 00:08:54,710 もはや存在し得なかったのです 122 00:08:54,710 --> 00:08:57,640 やがてルドルフは 批判勢力の存在を 123 00:08:57,640 --> 00:09:00,910 許容しない絶対的な独裁者として 124 00:09:00,910 --> 00:09:04,450 終身執政官を 自称するようになり 125 00:09:04,450 --> 00:09:09,220 ついに宇宙暦310年 銀河帝国の成立を宣言 126 00:09:09,220 --> 00:09:13,160 自ら 神聖にして不可侵なる 銀河帝国皇帝と 127 00:09:13,160 --> 00:09:16,030 称するようになるのである 128 00:09:16,030 --> 00:09:19,870 かくして銀河連邦は 銀河帝国に取って代わられ 129 00:09:19,870 --> 00:09:25,770 宇宙暦が廃されて この年が 新たに帝国暦1年とされた 130 00:09:28,040 --> 00:09:32,680 ルドルフの台頭は 民衆というものが根本的に 131 00:09:32,680 --> 00:09:36,350 自主的思考と それに伴う責任負担よりも 132 00:09:36,350 --> 00:09:40,950 命令と服従と それに伴う責任免除を好むという 133 00:09:40,950 --> 00:09:43,590 例証であると いえるでしょう 134 00:09:43,590 --> 00:09:45,660 ルドルフが皇帝となった時 135 00:09:45,660 --> 00:09:48,390 憤りを禁じ得なかった人々よりも 136 00:09:48,390 --> 00:09:53,570 快さいを叫んだ人々の方が はるかに多数派だったのですから 137 00:09:53,570 --> 00:09:57,940 ルドルフが皇帝になることを 望んだのは他ならぬ民衆である 138 00:09:57,940 --> 00:10:01,510 それに応えて ルドルフは強力極まる指導力と 139 00:10:01,510 --> 00:10:04,210 剛きな意志を持って 綱紀を粛正し 140 00:10:04,210 --> 00:10:08,450 行政運用の能率を高め 汚職官僚を一掃した 141 00:10:08,450 --> 00:10:11,450 不健全な生活様式や娯楽が 禁止され 142 00:10:11,450 --> 00:10:16,490 厳重な司法活動により 犯罪や未成年者非行が激減した 143 00:10:16,490 --> 00:10:19,420 ともかくも 人類社会を覆っていた弊風は 144 00:10:19,420 --> 00:10:21,790 吹き払われたのである 145 00:10:21,790 --> 00:10:24,730 だが彼の改革は それにとどまらなかった 146 00:10:24,730 --> 00:10:30,970 帝国暦9年 悪法の名も高い 劣悪遺伝子排除法が発布される 147 00:10:30,970 --> 00:10:34,340 宇宙の摂理は弱肉強食であり 148 00:10:34,340 --> 00:10:37,240 適者生存 優勝劣敗である 149 00:10:37,240 --> 00:10:40,810 人類社会もまた その例外ではあり得ない 150 00:10:40,810 --> 00:10:44,180 異常者が 一定数以上に増えた社会は 151 00:10:44,180 --> 00:10:46,620 活力を失って衰弱する 152 00:10:46,620 --> 00:10:51,390 余の熱望するところは 人類の永遠の繁栄である 153 00:10:51,390 --> 00:10:53,730 したがって人類を種として 154 00:10:53,730 --> 00:10:56,600 弱めるがごとき要素を 排除するのは 155 00:10:56,600 --> 00:11:03,240 人類の統治者たる余に与えられた 神聖な義務である 156 00:11:03,240 --> 00:11:08,870 ルドルフは弱者救済の 社会福祉政策を撤廃したばかりか 157 00:11:08,870 --> 00:11:14,650 身体障害者や貧困者を 異常者と見なして断種を強制し 158 00:11:14,650 --> 00:11:17,420 精神障害者を 安楽死させるなどの 159 00:11:17,420 --> 00:11:20,450 極端な政策をとったのである 160 00:11:20,450 --> 00:11:24,190 この法案が示されると それまでルドルフに盲従し 161 00:11:24,190 --> 00:11:27,660 崇拝していた民衆も さすがに鼻白んだ 162 00:11:27,660 --> 00:11:33,470 自分が優秀な人間であると 断言できる者は そう多くはない 163 00:11:33,470 --> 00:11:37,400 その民意を代表して 皇帝に非難を浴びせたのは 164 00:11:37,400 --> 00:11:42,510 議会に一部残っていた 共和派の政治家達である 165 00:11:42,510 --> 00:11:47,410 それに対してルドルフは 即座に議会を永久解散した 166 00:11:47,410 --> 00:11:52,520 さらに帝国内務省に 社会秩序維持局が設立され 167 00:11:52,520 --> 00:11:55,420 政治犯の摘発に乗り出した 168 00:11:55,420 --> 00:11:58,090 ルドルフの腹心である内務尚書 169 00:11:58,090 --> 00:12:01,490 エルンスト・ファルストロングが その局長を兼ね 170 00:12:01,490 --> 00:12:05,830 逮捕 拘禁 投獄 懲罰を行った 171 00:12:05,830 --> 00:12:07,870 ただし それは法律によらず 172 00:12:07,870 --> 00:12:10,700 局員の主観的な 判断によってであり 173 00:12:10,700 --> 00:12:14,510 摘発に証拠は 必要とされなかった 174 00:12:14,510 --> 00:12:19,080 それは暗黒の 恐怖政治の時代であった 175 00:12:19,080 --> 00:12:23,450 社会秩序維持局によって 逮捕された政治犯や思想犯で 176 00:12:23,450 --> 00:12:26,990 正式に死刑に処せられた者は 一人もいない 177 00:12:26,990 --> 00:12:30,320 ただ裁判なしで射殺された者 178 00:12:30,320 --> 00:12:34,690 不毛の流刑星に送り込まれて 消息不明になった者 179 00:12:34,690 --> 00:12:36,630 麻薬を投与されたり 180 00:12:36,630 --> 00:12:40,570 ロボトミー手術を施されたりして 廃人と化した者 181 00:12:40,570 --> 00:12:46,240 獄中で病死 または事故死した者 182 00:12:46,240 --> 00:12:50,180 これらの合計は 実に40億人の多数に登る 183 00:12:50,180 --> 00:12:53,750 それでも 帝国の全人口3000億の 184 00:12:53,750 --> 00:12:57,220 1.3パーセントに すぎないことを理由に 185 00:12:57,220 --> 00:13:00,190 社会の絶対多数の 安寧と福祉のために 186 00:13:00,190 --> 00:13:03,320 一握りの危険分子を 排除したのだと 187 00:13:03,320 --> 00:13:06,790 強弁することができた 188 00:13:06,790 --> 00:13:09,490 むろん その絶対多数の中には 189 00:13:09,490 --> 00:13:14,300 40億人の運命に戦慄して 沈黙してしまった者が 190 00:13:14,300 --> 00:13:17,800 多く含まれているのは 言うまでもないでしょう 191 00:13:20,040 --> 00:13:23,610 反対派を弾圧する一方で ルドルフは 192 00:13:23,610 --> 00:13:28,150 彼が優秀と認めた人材を選んで 特権を与え 193 00:13:28,150 --> 00:13:31,820 帝国を支える貴族階級を作った 194 00:13:31,820 --> 00:13:35,520 ルドルフが貴族として 選んだのは白人ばかりで 195 00:13:35,520 --> 00:13:38,420 しかもゲルマン風の姓を 与えられたのは 196 00:13:38,420 --> 00:13:42,360 ルドルフの知的衰弱を 表すものではなかったでしょうか 197 00:13:42,360 --> 00:13:49,070 ファルストロングも功績によって 伯爵号を授けられたが 198 00:13:49,070 --> 00:13:52,770 共和派の爆弾テロによって 暗殺された 199 00:13:52,770 --> 00:13:56,340 ルドルフは その容疑者として 2万人を処刑して 200 00:13:56,340 --> 00:13:59,610 功臣の霊を慰めた 201 00:13:59,610 --> 00:14:01,650 帝国暦42年 202 00:14:01,650 --> 00:14:05,420 ルドルフは83年の生涯を閉じた 203 00:14:05,420 --> 00:14:09,420 だが完全なる満足の中で 没したわけではない 204 00:14:09,420 --> 00:14:12,760 皇后エリザベートとの間に もうけた4人の子は 205 00:14:12,760 --> 00:14:17,730 いずれも女子であり 後継者たる男子を得られなかった 206 00:14:17,730 --> 00:14:21,600 晩年 寵姫マグダレーナが 男子を出産したが 207 00:14:21,600 --> 00:14:25,800 これは先天的に 白痴であったと伝えられる 208 00:14:28,040 --> 00:14:33,410 この件に関して帝国の公式記録は 沈黙を守っていますが 209 00:14:33,410 --> 00:14:36,180 その後 マグダレーナばかりでなく その家族や 210 00:14:36,180 --> 00:14:40,820 出産に関わった医師や看護婦まで 死をたまわった事実からして 211 00:14:40,820 --> 00:14:43,720 ちまたに流布する この噂が事実であるのは 212 00:14:43,720 --> 00:14:46,460 ほぼ間違いないところでしょう 213 00:14:46,460 --> 00:14:50,130 これは劣悪遺伝子排除法を発布し 214 00:14:50,130 --> 00:14:54,600 遺伝子が全てを決すると信じた ルドルフにとって 215 00:14:54,600 --> 00:14:57,500 強烈なしっぺ返しで あったでしょう 216 00:15:00,170 --> 00:15:03,540 ルドルフの死後 長女カタリナの子 ジギスムントが 217 00:15:03,540 --> 00:15:05,480 第2代皇帝となった 218 00:15:05,480 --> 00:15:07,410 25歳の若き皇帝は 219 00:15:07,410 --> 00:15:11,280 父親であるノイエ・シュタウフェン公 ヨアヒムの補佐を受けて 220 00:15:11,280 --> 00:15:14,380 銀河系に君臨することとなった 221 00:15:19,760 --> 00:15:25,930 これを契機に帝国各地で 共和主義者による反乱が起こった 222 00:15:25,930 --> 00:15:29,870 だがルドルフが 40年の歳月をかけて育成した 223 00:15:29,870 --> 00:15:33,670 貴族 軍隊 官僚の トリニティは強固であり 224 00:15:33,670 --> 00:15:37,410 またそれを指揮した ノイエ・シュタウフェン公ヨアヒムは 225 00:15:37,410 --> 00:15:39,910 沈着冷静な指導力を発揮し 226 00:15:39,910 --> 00:15:43,480 反乱勢力を粉砕した 227 00:15:43,480 --> 00:15:47,290 反乱に参加した 5億人あまりが処刑され 228 00:15:47,290 --> 00:15:51,160 その家族など100億人以上が 市民権を剥奪されて 229 00:15:51,160 --> 00:15:54,060 農奴階級に落とされた 230 00:15:54,060 --> 00:15:57,500 これによって 帝国の支配体制は 231 00:15:57,500 --> 00:16:01,300 揺るぎないものになったかに 思われた 232 00:16:03,640 --> 00:16:06,300 帝国暦164年 233 00:16:06,300 --> 00:16:09,670 反徒のけん属として 奴隷階級に落とされ 234 00:16:09,670 --> 00:16:11,610 アルタイル系第7惑星で 235 00:16:11,610 --> 00:16:16,250 過酷な労働に従事させられていた 青年 アーレ・ハイネセンは 236 00:16:16,250 --> 00:16:20,120 子ども達が水に氷の舟を浮かべて 遊んでいるのを見て 237 00:16:20,120 --> 00:16:22,190 一つのアイデアを思いつく 238 00:16:22,190 --> 00:16:26,560 それは この惑星に無尽蔵にある 天然のドライアイスを 239 00:16:26,560 --> 00:16:30,160 宇宙船の船体材料に しようというのだ 240 00:16:33,970 --> 00:16:37,870 長さ122キロの峡谷を 埋め尽くした 241 00:16:37,870 --> 00:16:41,310 巨大な氷の中をくり抜き 242 00:16:41,310 --> 00:16:46,210 動力部と居住区が設けられた 243 00:16:46,210 --> 00:16:49,880 40万人におよぶ男女が この船に乗り込み 244 00:16:49,880 --> 00:16:53,280 この惑星からの脱出に成功 245 00:16:53,280 --> 00:16:57,990 帝国の看守の目が届かない 無名の惑星の地下に潜んで 246 00:16:57,990 --> 00:17:02,760 80隻の恒星間宇宙船を 造り上げると 247 00:17:02,760 --> 00:17:09,370 帝国領を離れて 未踏の宙域へと新天地を求めた 248 00:17:09,370 --> 00:17:12,970 その旅は容易なものではなかった 249 00:17:12,970 --> 00:17:18,110 前途には航行不能な宙域が広がり 250 00:17:18,110 --> 00:17:21,150 現在のイゼルローン回廊を 見いだして 251 00:17:21,150 --> 00:17:24,220 通過に成功するまでの過程で 252 00:17:24,220 --> 00:17:27,920 指導者ハイネセンを事故で失い 253 00:17:27,920 --> 00:17:32,120 彼の親友で その後を継いだ グエン・キム・ホアも 254 00:17:32,120 --> 00:17:35,990 老いて失明するに至った時 255 00:17:35,990 --> 00:17:42,490 ようやく可住惑星を持つ 安定した恒星群を見いだした 256 00:18:08,790 --> 00:18:11,700 時に帝国暦218年 257 00:18:11,700 --> 00:18:15,270 復活させた宇宙暦で527年 258 00:18:15,270 --> 00:18:20,040 彼らは 自由惑星同盟の成立を宣言する 259 00:18:20,040 --> 00:18:22,770 最初の市民は およそ16万人 260 00:18:22,770 --> 00:18:27,180 後に長征1万光年と称される この旅程は 261 00:18:27,180 --> 00:18:30,920 半世紀以上の歳月と 半数以上の犠牲を 262 00:18:30,920 --> 00:18:34,490 必要としたのであった 263 00:18:34,490 --> 00:18:36,820 それから1世紀以上の間に 264 00:18:36,820 --> 00:18:41,260 同盟では人口の増加と 国力の充実が図られ 265 00:18:41,260 --> 00:18:47,070 銀河連邦の黄金時代が 再現されようとしていた 266 00:18:47,070 --> 00:18:52,270 そして宇宙暦640年 帝国暦331年 267 00:18:52,270 --> 00:18:55,470 帝国と同盟は 初めて互いに接触する 268 00:18:55,470 --> 00:19:01,210 戦艦同士の遭遇という形でである 269 00:19:01,210 --> 00:19:05,920 第20代皇帝フリードリヒ3世の 時代となっていた帝国では 270 00:19:05,920 --> 00:19:08,220 急きょ 討伐軍が組織され 271 00:19:08,220 --> 00:19:12,090 ヘルベルト大公が率いる 大艦隊が派遣されたが 272 00:19:12,090 --> 00:19:15,890 これが完膚なきまでに 敗北した 273 00:19:26,040 --> 00:19:28,940 同盟軍の総司令官リン・パオと 274 00:19:28,940 --> 00:19:32,410 参謀長 ユースフ・トパロウルのコンビは 275 00:19:32,410 --> 00:19:35,950 地の利を生かし ダゴン星域において 276 00:19:35,950 --> 00:19:39,780 史上空前といわれる 大規模な包囲せん滅戦を 277 00:19:39,780 --> 00:19:42,880 演出することに 成功したのである 278 00:19:49,460 --> 00:19:52,660 帝国では この敗戦の報が伝わると 279 00:19:52,660 --> 00:19:56,530 国内の異分子達が こぞって同盟への亡命を図り 280 00:19:56,530 --> 00:19:58,970 これを受け入れた同盟では 281 00:19:58,970 --> 00:20:01,870 量的に飛躍的な膨張を遂げる 282 00:20:01,870 --> 00:20:05,780 だが これが同盟の 国家体質を変質させる 283 00:20:05,780 --> 00:20:08,210 大きな要因となった 284 00:20:08,210 --> 00:20:11,050 亡命者は 共和主義者ばかりでなく 285 00:20:11,050 --> 00:20:15,590 単なる刑事犯から 宮廷内の権力闘争に敗れた貴族や 286 00:20:15,590 --> 00:20:19,090 皇族まで 含まれていたからである 287 00:20:19,090 --> 00:20:24,960 帝国と同盟は最初の接触以来 慢性的な戦争状態が続いているが 288 00:20:24,960 --> 00:20:29,670 その中でも擬似的な平和が 生じることもある 289 00:20:29,670 --> 00:20:34,510 その産物ともいえるのが フェザーン自治領である 290 00:20:34,510 --> 00:20:38,710 帝国と同盟の間には 巨大な危険宙域が横たわり 291 00:20:38,710 --> 00:20:42,180 通行が可能なのは 二つの回廊のみである 292 00:20:42,180 --> 00:20:45,420 ダゴン星域を含む イゼルローン回廊と 293 00:20:45,420 --> 00:20:48,350 もう一つが フェザーン回廊であるのだが 294 00:20:48,350 --> 00:20:50,360 このフェザーン回廊を 295 00:20:50,360 --> 00:20:55,090 両国と通商する 中立地帯としたのである 296 00:20:55,090 --> 00:20:57,760 フェザーン自治領は帝国に所属し 297 00:20:57,760 --> 00:21:00,670 自治領主は あくまで 帝国の臣下であるが 298 00:21:00,670 --> 00:21:04,500 内政に関しては ほぼ完全な自治権を有している 299 00:21:04,500 --> 00:21:09,170 これは後に初代自治領主となった 地球出身の大商人 300 00:21:09,170 --> 00:21:12,080 レオポルド・ラープが 異常なまでの熱心さで 301 00:21:12,080 --> 00:21:16,480 その成立を運動し 実現させたものである 302 00:21:16,480 --> 00:21:19,420 フェザーン自体は 一つの惑星にすぎないが 303 00:21:19,420 --> 00:21:23,120 帝国と同盟の交易を 独占支配することによる 304 00:21:23,120 --> 00:21:25,490 富の蓄積は膨大なもので 305 00:21:25,490 --> 00:21:29,860 特に両国への 経済的な影響力は絶大である 306 00:21:29,860 --> 00:21:32,800 帝国 同盟 フェザーンの国力の比率は 307 00:21:32,800 --> 00:21:35,270 5対4対1ともいわれ 308 00:21:35,270 --> 00:21:40,770 人口比率だけでも 250億対 130億対20億となっている 309 00:21:40,770 --> 00:21:46,410 まもなく本艦は 首都星 ハイネセンの周回軌道に入ります 310 00:21:46,410 --> 00:21:50,720 上陸予定者のシャトル移乗は 1800時 311 00:21:50,720 --> 00:21:53,620 繰り返します まもなく本艦は 312 00:21:53,620 --> 00:21:57,390 首都星ハイネセンの 周回軌道に入ります 313 00:21:57,390 --> 00:22:02,190 上陸予定者のシャトル移乗は 1800時 314 00:22:09,630 --> 00:22:12,540 首都星ハイネセン 315 00:22:12,540 --> 00:22:17,080 国父アーレ・ハイネセンの名を 持つ惑星 316 00:22:17,080 --> 00:22:21,250 自由惑星同盟の建国以来 270年 317 00:22:21,250 --> 00:22:24,550 その建国の理想は すでに失われ 318 00:22:24,550 --> 00:22:26,820 利権をあさる政治業者と 319 00:22:26,820 --> 00:22:32,420 利益誘導にのみ価値を求める 大衆の衆愚政治と堕していた 320 00:22:32,420 --> 00:22:35,860 一方の帝国はラインハルト・ フォン・ローエングラムの 321 00:22:35,860 --> 00:22:40,770 強力な指導力による政治改革が 断行されている 322 00:22:40,770 --> 00:22:43,000 理想を失った同盟は 323 00:22:43,000 --> 00:22:46,840 その存在価値すら なくしてしまうのだろうか 324 00:22:46,840 --> 00:22:49,740 答えられるものは誰もいない 325 00:24:24,700 --> 00:24:28,010 帝国軍の同盟領侵攻作戦が 発令される 326 00:24:28,010 --> 00:24:30,910 それは筋書きを書いたはずの フェザーンの思惑を越えた 327 00:24:30,910 --> 00:24:32,840 大胆で壮大なものだった 328 00:24:32,840 --> 00:24:36,180 だが ヤン・ウェンリーは一人 それを看破していたが… 329 00:24:36,180 --> 00:24:38,780 次回 銀河英雄伝説 第41話 作戦名 「ラグナロック」 330 00:24:38,780 --> 00:24:40,780 銀河の歴史が また1ページ