1 00:00:02,200 --> 00:00:05,970 「1億人100万隻体制」その言葉が 2 00:00:05,970 --> 00:00:09,310 帝国軍首脳部において ささやかれるようになったのは 3 00:00:09,310 --> 00:00:11,250 帝国軍最高司令官 4 00:00:11,250 --> 00:00:13,250 ラインハルト・フォン・ ローエングラム公爵の 5 00:00:13,250 --> 00:00:16,620 過熱な宣戦布告が自由惑星同盟と 6 00:00:16,620 --> 00:00:20,960 銀河帝国正統政府に対して たたきつけられているのである 7 00:00:20,960 --> 00:00:23,860 軍籍にない平民階級の青年たちが 8 00:00:23,860 --> 00:00:28,500 職場や学校から軍の徴募事務所へ 駆けつけるようになったのである 9 00:00:28,500 --> 00:00:30,800 門閥貴族どもの残党を倒せ! 10 00:00:30,800 --> 00:00:34,770 奴らの復活を許すな! 平民の権利を守れ! 11 00:00:34,770 --> 00:00:40,270 自由惑星同盟などと呼称する 門閥貴族どもの共犯者を倒せ! 12 00:00:56,890 --> 00:00:58,830 辞令を受け取るだけだから 13 00:00:58,830 --> 00:01:01,430 実際には5分と かからなかったんだけど 14 00:01:01,430 --> 00:01:03,360 2時間以上 待たされてね 15 00:01:03,360 --> 00:01:06,700 人事部は軍の一部といっても お役所仕事ですから 16 00:01:06,700 --> 00:01:09,640 「ヤン提督に敵が多いから わざと待たされた」 17 00:01:09,640 --> 00:01:11,940 なんて思うのは ひがみすぎかな? 18 00:01:11,940 --> 00:01:14,510 そういう側面も ないわけじゃないでしょうが 19 00:01:14,510 --> 00:01:18,210 全体に社会システムの 運用効率が落ちてるようですよ 20 00:01:18,210 --> 00:01:20,780 ほら あれを 21 00:01:20,780 --> 00:01:25,120 砂糖や肉 一部の食料品が 配給制になったそうです 22 00:01:25,120 --> 00:01:28,920 そういえば 何か全体に 雰囲気が暗いね 23 00:01:34,200 --> 00:01:37,630 帝国軍の大規模な出兵が 間近に迫っている 24 00:01:37,630 --> 00:01:41,340 という うわさが市民の間に 流布しております 25 00:01:41,340 --> 00:01:44,270 もっとも大半の反応は またかという程度で 26 00:01:44,270 --> 00:01:48,040 誰も深刻な懸念は していないようですが 27 00:01:48,040 --> 00:01:50,910 この情報は当然 同盟にも伝わっておりますが 28 00:01:50,910 --> 00:01:52,850 同盟の市民はもちろん 29 00:01:52,850 --> 00:01:56,120 政府首脳部も その例外ではないようです 30 00:01:56,120 --> 00:01:58,190 イゼルローン要塞は難攻不落だ 31 00:01:58,190 --> 00:02:01,790 しかもそこには 同盟軍最高の智将がいる 32 00:02:01,790 --> 00:02:03,720 まっ 安心したいところだろう 33 00:02:03,720 --> 00:02:06,930 同盟の凡庸な 政治屋どもとしてはな 34 00:02:06,930 --> 00:02:09,600 はい しかしその安心感が 35 00:02:09,600 --> 00:02:11,530 健全な判断力を奪い 36 00:02:11,530 --> 00:02:14,500 最悪の選択を さしてしまう結果につながった 37 00:02:14,500 --> 00:02:17,040 過去の成功が現在の誤断を招き 38 00:02:17,040 --> 00:02:21,040 未来そのものを奪い去る よい例証と言うべきだ 39 00:02:23,440 --> 00:02:26,310 おお 背が伸びたな 40 00:02:26,310 --> 00:02:29,050 1年半も会っておらんから 当然かな 41 00:02:29,050 --> 00:02:32,490 一晩寝れば1センチ伸びるという 年頃だからな 42 00:02:32,490 --> 00:02:35,720 司令長官も お元気そうで うれしく思います 43 00:02:35,720 --> 00:02:40,090 なんの 1日ごとに 地獄の門に近づいとるよ 44 00:02:40,090 --> 00:02:42,900 ルドルフ大帝が るつぼの中で煮られる姿が 45 00:02:42,900 --> 00:02:44,830 見られるのが楽しみだて 46 00:02:44,830 --> 00:02:47,330 ヤン提督から これを預かってまいりました 47 00:02:47,330 --> 00:02:49,370 長官に直接お渡しするようにと 48 00:02:49,370 --> 00:02:51,940 ん そうそう 49 00:02:51,940 --> 00:02:55,340 人事部のリバモア中将は 何か言っておったかな? 50 00:02:55,340 --> 00:02:59,680 いえ 何も 非公式のお話は 一切ありませんでした 51 00:02:59,680 --> 00:03:01,720 そんなところじゃろう リバモアも 52 00:03:01,720 --> 00:03:04,820 トリューニヒトとの心証を よくしたいとは思っても 53 00:03:04,820 --> 00:03:08,290 親子以上に年の離れた少年の 感心を買う気には 54 00:03:08,290 --> 00:03:10,220 ならなかったようじゃな 55 00:03:10,220 --> 00:03:13,630 僕の関心を買うことが どうしてトリューニヒト議長の 56 00:03:13,630 --> 00:03:16,030 心証をよくすることに なるのですか? 57 00:03:16,030 --> 00:03:18,670 僕はヤン・ウェンリー派です トリューニヒト派では 58 00:03:18,670 --> 00:03:21,000 ありませんけれど そうさな 59 00:03:21,000 --> 00:03:23,500 君のあずかり知らぬところでは あるが 60 00:03:23,500 --> 00:03:27,240 今回の君の人事は 議長直々のお声掛かりでな 61 00:03:27,240 --> 00:03:31,650 事情を知らぬ者には 君が議長の お気に入りに見えなくもない 62 00:03:31,650 --> 00:03:34,350 迷惑です! だろうとは思うが 63 00:03:34,350 --> 00:03:37,120 そう大声を出さんでもよろしい 64 00:03:37,120 --> 00:03:41,060 わしや ヤン提督の悪いところを マネすることはないさ 65 00:03:41,060 --> 00:03:44,630 すみません ところで その事情とおっしゃいますと 66 00:03:44,630 --> 00:03:48,260 うん 別にトリューニヒトに 限ったことではないがな 67 00:03:48,260 --> 00:03:51,670 為政者にとって 首都を遠く離れた地域の軍隊が 68 00:03:51,670 --> 00:03:54,140 司令官の私兵化し 軍閥化して 69 00:03:54,140 --> 00:03:57,640 中央政府のコントロールを 受け付けなくなるというのは 70 00:03:57,640 --> 00:04:00,010 言わば永遠の悪夢というやつでな 71 00:04:00,010 --> 00:04:02,310 それを防ぐために人事権を使って 72 00:04:02,310 --> 00:04:05,950 部隊の中枢メンバーが 固定しないように努めるわけだ 73 00:04:05,950 --> 00:04:09,520 すると僕の人事もそういった 計画の一環ということですか? 74 00:04:09,520 --> 00:04:13,890 まあ そういうことだ 単なる嫌がらせかと思いましたが 75 00:04:13,890 --> 00:04:16,320 あ… では本命は 76 00:04:16,320 --> 00:04:19,330 メルカッツ提督をヤン提督から 引き離すことにあった 77 00:04:19,330 --> 00:04:22,030 そういうことに なるのでしょうか? 78 00:04:22,030 --> 00:04:24,000 そう そのとおりじゃよ 79 00:04:24,000 --> 00:04:27,840 つけ加えるなら 政府としては 今後 条件さえ許せば 80 00:04:27,840 --> 00:04:30,740 キャゼルヌやシェーンコップ といった幹部たちを 81 00:04:30,740 --> 00:04:33,470 ヤン提督から 引き離そうとするじゃろう 82 00:04:33,470 --> 00:04:36,280 だってそんなことをして 何になるんですか? 83 00:04:36,280 --> 00:04:39,980 ヤン提督の実力を弱めて つまるところは帝国軍の立場を 84 00:04:39,980 --> 00:04:41,920 強化するようなものじゃ ありませんか 85 00:04:41,920 --> 00:04:45,150 連中には派閥次元の発想しか できんからさ 86 00:04:45,150 --> 00:04:48,060 特にイゼルローンに ヤン提督がおって 87 00:04:48,060 --> 00:04:50,590 帝国の侵攻を 防いでくれるもんだから 88 00:04:50,590 --> 00:04:53,260 安心して権力を もてあそんでおられる 89 00:04:53,260 --> 00:04:55,900 ヤン提督にとっては 皮肉なもんじゃな 90 00:04:55,900 --> 00:04:57,830 そのことなんですが 91 00:04:57,830 --> 00:05:00,130 親書に 目を通していただけませんか? 92 00:05:00,130 --> 00:05:02,830 ん?ああ 93 00:05:20,250 --> 00:05:22,560 卿らに 今日 集まってもらったのは 94 00:05:22,560 --> 00:05:25,790 自由惑星同盟を選奨する 反徒どもに対して 95 00:05:25,790 --> 00:05:28,660 武力による懲罰を加える 96 00:05:28,660 --> 00:05:32,030 その具体的な方法について 意見を聞くためだ 97 00:05:32,030 --> 00:05:35,540 私の腹案をまず述べておく それは過去のように 98 00:05:35,540 --> 00:05:38,110 イゼルローン回廊の 攻略にこだわらず 99 00:05:38,110 --> 00:05:41,310 もう1つの回廊を 侵攻ルートとすることだ 100 00:05:41,310 --> 00:05:45,710 つまりフェザーン回廊を通過して 同盟領に侵攻する 101 00:05:45,710 --> 00:05:50,220 なるほど帝国軍が フェザーンを通過する可能性か 102 00:05:50,220 --> 00:05:52,450 以前にも検討されたことがあるし 103 00:05:52,450 --> 00:05:55,260 対策案もあったんじゃが 当時と今では 104 00:05:55,260 --> 00:05:58,990 我が国の国力が比較にならん 実行は不可能じゃな 105 00:05:58,990 --> 00:06:01,400 ヤン提督は何と? ああ… 106 00:06:01,400 --> 00:06:04,800 現状で帝国軍のフェザーン通過を 阻止するとしたら 107 00:06:04,800 --> 00:06:06,730 フェザーン人の市民レベルでの 108 00:06:06,730 --> 00:06:09,200 抵抗によるしかないと 言ってきておる 109 00:06:09,200 --> 00:06:11,910 具体的にはゼネストや サボタージュによって 110 00:06:11,910 --> 00:06:14,210 フェザーンを 補給基地化させないとか 111 00:06:14,210 --> 00:06:17,610 回廊を民間船で 封鎖するとかじゃが 112 00:06:17,610 --> 00:06:19,950 うまくいくでしょうか? 113 00:06:19,950 --> 00:06:23,650 いくとは限らない ヤン提督自身がそう書いておる 114 00:06:23,650 --> 00:06:26,550 それにいけば いったで フェザーンの民間人を 115 00:06:26,550 --> 00:06:30,520 同盟の盾として帝国軍の前に 立たせることとなり 116 00:06:30,520 --> 00:06:34,800 その罪は戦場で殺し合いを することの非ではないともな 117 00:06:34,800 --> 00:06:38,700 じゃがフェザーン人には 独立不羈の精神がある 118 00:06:38,700 --> 00:06:41,570 他国の軍事力には 屈服しないというな 119 00:06:41,570 --> 00:06:44,270 じゃからいずれにしても 抵抗は起きるじゃろう 120 00:06:44,270 --> 00:06:49,110 ただし それが帝国軍の侵攻が 現実のものとなってからでは遅い 121 00:06:49,110 --> 00:06:51,880 組織的な抵抗は 難しくなるじゃろうし 122 00:06:51,880 --> 00:06:55,650 また実際に 犠牲を伴うことにもなる 123 00:06:55,650 --> 00:06:58,150 そのくらいなら あらかじめ手を打って 124 00:06:58,150 --> 00:07:00,090 フェザーンの世論を 喚起しておけば 125 00:07:00,090 --> 00:07:02,790 うまくすれば それが予防効果となって 126 00:07:02,790 --> 00:07:08,100 帝国がフェザーン通過を 断念するかもしれんとな 127 00:07:08,100 --> 00:07:12,470 うーん それにしても ヤン提督は 先のことがよく見えるが 128 00:07:12,470 --> 00:07:15,070 残念ながら手足が伴わない 129 00:07:15,070 --> 00:07:17,000 むろんそれは彼のせいではない 130 00:07:17,000 --> 00:07:21,380 彼には そこまで能動的に 行動する権限はないのだからな 131 00:07:21,380 --> 00:07:23,880 すると 制度のせいなのでしょうか? 132 00:07:23,880 --> 00:07:28,250 制度か 制度のせいにするのは わしとしては つらいな 133 00:07:28,250 --> 00:07:32,850 わしは自分が民主制共和国家の 軍人であることを誇りにしてきた 134 00:07:32,850 --> 00:07:38,960 そう 君と同じくらいの年に 2等兵になって以来 ずーっとな 135 00:07:38,960 --> 00:07:42,530 民主制共和国が 軍人の権限を制限するのは 136 00:07:42,530 --> 00:07:44,600 正しいとわしも思う 137 00:07:44,600 --> 00:07:48,970 軍人は戦場以外で 権力や権限を振るうべきではない 138 00:07:48,970 --> 00:07:52,870 また 軍隊が政府や社会の 批判を受けずに肥大化し 139 00:07:52,870 --> 00:07:55,210 国家の中の国家と化するようでは 140 00:07:55,210 --> 00:07:58,450 民主政治は 健全ではありえんだろう 141 00:07:58,450 --> 00:08:00,910 民主政治の制度は 間違っておらん 142 00:08:00,910 --> 00:08:05,390 問題は 制度とそれを支える精神が 乖離していることじゃ 143 00:08:05,390 --> 00:08:07,960 現在のところは 建前の存在が 144 00:08:07,960 --> 00:08:10,420 本音の堕落を ようやく防いでおるが 145 00:08:10,420 --> 00:08:15,060 さて それも いつまでもつことやら 146 00:08:15,060 --> 00:08:17,460 今度 同盟の弁務官事務所に 147 00:08:17,460 --> 00:08:20,370 ユリアン・ミンツ少尉とやらが 赴任してくるな 148 00:08:20,370 --> 00:08:22,970 ヤン・ウェンリーの 秘蔵っ子だそうですな 149 00:08:22,970 --> 00:08:25,970 どんなふうに 秘蔵していたものやら 150 00:08:28,240 --> 00:08:30,210 いずれにしても たった16歳の小僧に 151 00:08:30,210 --> 00:08:32,810 何ほどのことも できませんでしょう 152 00:08:32,810 --> 00:08:35,820 16歳の時にローエングラム公は すでに武勲を立て 153 00:08:35,820 --> 00:08:37,950 少佐の階級を得ていた 154 00:08:37,950 --> 00:08:41,690 ユリアン・ミンツの歩みは それに少し遅れているだけだ 155 00:08:41,690 --> 00:08:44,590 養父の七光りではないのですか? 156 00:08:44,590 --> 00:08:47,630 ローエングラム公も 姉の七光りと思われていた 157 00:08:47,630 --> 00:08:50,400 当時はな なるほど 158 00:08:50,400 --> 00:08:54,230 確かに俺が16の時 すでにあんたを追い落とし 159 00:08:54,230 --> 00:08:56,840 父親として 与えてもくれないものを 160 00:08:56,840 --> 00:09:01,280 実力で奪い取ってやると 決意していたのだからな 161 00:09:01,280 --> 00:09:04,040 ところでボルテックのほうは どうなってる? 162 00:09:04,040 --> 00:09:07,950 その件ですが いささか注意を要するかと 163 00:09:07,950 --> 00:09:11,890 すなわちフェザーンは 政治的 軍事的中立を放棄し 164 00:09:11,890 --> 00:09:15,660 我々の陣営に帰属することになる 165 00:09:15,660 --> 00:09:19,030 彼が我々に協力してくれる 166 00:09:19,030 --> 00:09:20,960 あっ あ… どうも 167 00:09:20,960 --> 00:09:22,930 むろん無償ではないがな 168 00:09:22,930 --> 00:09:25,600 つまり彼は 祖国を売るというのですか? 169 00:09:25,600 --> 00:09:30,240 お言葉ですが わたくしが売るのは フェザーンの形式上の独立のみで 170 00:09:30,240 --> 00:09:33,270 そんなものはフェザーンが 存在する真の意義と利益に 171 00:09:33,270 --> 00:09:36,040 なんら寄与するものでは ありません 172 00:09:36,040 --> 00:09:38,110 無用な形式を捨てることで 173 00:09:38,110 --> 00:09:41,850 フェザーンは より豊かな 実体を得ることができるのです 174 00:09:41,850 --> 00:09:45,790 口は重宝だな 親を売るにも 友人を裏切るにも 175 00:09:45,790 --> 00:09:47,960 理由のつけようは あるものだ 176 00:09:47,960 --> 00:09:50,360 それくらいにしておけ ビッテンフェルト 177 00:09:50,360 --> 00:09:53,330 彼の協力がなければ 我が軍がフェザーン回廊の 178 00:09:53,330 --> 00:09:55,900 旅客となるのは困難なのだ 179 00:09:55,900 --> 00:09:59,130 私は彼の協力に対して 相応の報酬と 180 00:09:59,130 --> 00:10:02,000 そして礼儀をもって 報いるつもりでいる 181 00:10:02,000 --> 00:10:04,270 むろん 卿らの意見を 聞きたいからこそ 182 00:10:04,270 --> 00:10:06,510 今日 卿らを集めたのだが 183 00:10:06,510 --> 00:10:08,440 ロイエンタール どうだ? 184 00:10:08,440 --> 00:10:11,350 小官としては才覚豊富な フェザーン人を 185 00:10:11,350 --> 00:10:13,780 無条件で 信じる気にはなれませんな 186 00:10:13,780 --> 00:10:17,480 フェザーン回廊を通過して 同盟領へ侵攻したとしてです 187 00:10:17,480 --> 00:10:20,390 その後 彼らが豹変して 回廊を封鎖したなら 188 00:10:20,390 --> 00:10:23,890 我々は敵のただ中に 孤立することとなります 189 00:10:23,890 --> 00:10:26,230 補給も通信もままならず 190 00:10:26,230 --> 00:10:29,560 いささか 危険度は 大きいのではありませんか 191 00:10:29,560 --> 00:10:32,530 ロイエンタール上級大将の ご心配はもっともだが 192 00:10:32,530 --> 00:10:35,800 フェザーンがそのような 卑劣な手段に出た時は 193 00:10:35,800 --> 00:10:38,710 武力をもって教訓を 垂れればよいことではないか 194 00:10:38,710 --> 00:10:42,580 フェザーン回廊に向けて 軍を反転させるということか? 195 00:10:42,580 --> 00:10:45,380 そう フェザーンには それほどの武力はない 196 00:10:45,380 --> 00:10:48,280 十分に きやつらの企図を 挫折させうるだろう 197 00:10:48,280 --> 00:10:52,150 反転したところへ 背後から 同盟軍が攻撃してきたらどうなる 198 00:10:52,150 --> 00:10:55,490 不利は免れんぞ 敗れるとは思わんが 199 00:10:55,490 --> 00:10:59,090 犠牲は無視できないものに なるだろう 200 00:10:59,090 --> 00:11:01,900 ロイエンタールの発言は 理にかなっているが 201 00:11:01,900 --> 00:11:04,930 基本的な構想からいえば フェザーン回廊を通過して 202 00:11:04,930 --> 00:11:08,670 同盟領へ侵攻することを 私は すでに決めている 203 00:11:08,670 --> 00:11:11,570 イゼルローン回廊のみを 侵入路と想定して 204 00:11:11,570 --> 00:11:14,470 自ら戦略上の選択範囲を狭めれば 205 00:11:14,470 --> 00:11:17,340 要塞への道を将兵の屍で舗装した 206 00:11:17,340 --> 00:11:20,780 同盟軍の愚行を 再現することになるだろう 207 00:11:20,780 --> 00:11:22,720 フェザーン回廊を 通過しないというのは 208 00:11:22,720 --> 00:11:24,650 人間が定めた都合であって 209 00:11:24,650 --> 00:11:27,390 宇宙開闢以来の法則ではない 210 00:11:27,390 --> 00:11:29,860 同盟の奴らが そう思い込むのは勝手だが 211 00:11:29,860 --> 00:11:33,060 奴らと幻想を 共有する義務はないのだ 212 00:11:33,060 --> 00:11:35,330 フェザーン回廊を 通過するというのは 213 00:11:35,330 --> 00:11:38,000 敵の意表をつくという 一点のみにおいても 214 00:11:38,000 --> 00:11:40,670 他の方法に勝る そこでまず 215 00:11:40,670 --> 00:11:44,000 奴らの期待どおり イゼルローン回廊に兵を進める 216 00:11:44,000 --> 00:11:48,780 この春 ケンプとミュラーの元に 動かしたより更に多数の兵をな 217 00:11:48,780 --> 00:11:51,710 だが 言うまでもなく これは陽動だ 218 00:11:51,710 --> 00:11:54,580 同盟の関心がイゼルローンに 集中した時 219 00:11:54,580 --> 00:11:57,550 我が主力は一気に フェザーン回廊を通過し 220 00:11:57,550 --> 00:11:59,550 同盟領に侵入する 221 00:11:59,550 --> 00:12:01,690 ヤン・ウェンリーは イゼルローンにあり 222 00:12:01,690 --> 00:12:04,660 同盟の他の将帥は論ずるに足らん 223 00:12:04,660 --> 00:12:06,860 おっしゃるとおりとは 思いますが 224 00:12:06,860 --> 00:12:09,760 そのヤン・ウェンリーです 彼が 我が軍主力の 225 00:12:09,760 --> 00:12:12,370 動向に即応して イゼルローンを離れ 226 00:12:12,370 --> 00:12:15,270 長駆してフェザーン方面の 防衛にあたる可能性も 227 00:12:15,270 --> 00:12:17,570 考慮に入れねばなりますまい 228 00:12:17,570 --> 00:12:20,470 その時は ヤン不在の イゼルローンを突破し 229 00:12:20,470 --> 00:12:23,010 移動するヤン・ウェンリーを 前後から挟撃し 230 00:12:23,010 --> 00:12:27,780 奴を民主国家の 殉教者にしてやればよかろう 231 00:12:27,780 --> 00:12:31,080 果たして うまくいきますかな 232 00:12:33,590 --> 00:12:38,860 うまくいかせたいものだ そうありたいものですな 233 00:12:38,860 --> 00:12:42,100 作戦名は どういうものに なりましょうか 234 00:12:42,100 --> 00:12:46,930 作戦名は「ラグナロック」だ 235 00:12:46,930 --> 00:12:49,800 ラグナロック 神々の… 236 00:12:49,800 --> 00:12:53,140 黄昏… 閣下! ぜひとも我が 237 00:12:53,140 --> 00:12:56,040 シュワルツ・ランツェンレイターに 先陣を賜りたい 238 00:12:56,040 --> 00:12:58,950 我が艦隊に 雪辱の機会を頂きますよう 239 00:12:58,950 --> 00:13:01,520 閣下 我が艦隊にこそ 240 00:13:01,520 --> 00:13:04,020 閣下! 閣下! 241 00:13:07,320 --> 00:13:09,360 あのボルテックという男には 242 00:13:09,360 --> 00:13:12,530 あまり過大な期待は なさらないが よろしいでしょう 243 00:13:12,530 --> 00:13:14,960 だが少なくとも ボルテックのほうが 244 00:13:14,960 --> 00:13:17,260 ルビンスキーよりは 御しやすかろう 245 00:13:17,260 --> 00:13:21,070 おっしゃるとおりですが 自ずと別の問題が生じましょう 246 00:13:21,070 --> 00:13:24,640 つまりボルテックにフェザーンが 御し得るかという点です 247 00:13:24,640 --> 00:13:27,470 万人の上に立つ器量が ないというのか? 248 00:13:27,470 --> 00:13:29,940 器量がありすぎても困りますが 249 00:13:29,940 --> 00:13:33,510 不平派の連中を ねじ伏せるぐらいの力量がないと 250 00:13:33,510 --> 00:13:35,480 もし力がないならないで 251 00:13:35,480 --> 00:13:38,290 奴は自分の地位と権力を守るため 252 00:13:38,290 --> 00:13:41,520 不平派の弾圧に 狂奔しなくてはなるまい 253 00:13:41,520 --> 00:13:43,860 そうすれば当然ながら 憎悪と反感は 254 00:13:43,860 --> 00:13:48,360 奴の一心に集中する それが限界に達する寸前に 255 00:13:48,360 --> 00:13:50,300 奴を私の手で処断すれば 256 00:13:50,300 --> 00:13:54,000 私としては効率よく古道具を 処理できるというわけだ 257 00:13:54,000 --> 00:13:57,370 リアクションなしにな そこまでお考えでしたか 258 00:13:57,370 --> 00:13:59,740 失礼しました わたくしなどの 259 00:13:59,740 --> 00:14:02,140 懸念すべきことでは ございませんでした 260 00:14:02,140 --> 00:14:05,350 どうかご思慮のままに 事をお進めください 261 00:14:05,350 --> 00:14:09,120 これは恐らく同盟を 征服した時にも使える手だ 262 00:14:09,120 --> 00:14:11,050 そう思わないか 総参謀長 263 00:14:11,050 --> 00:14:14,690 御意 新帝国の 権威と武力を背景に 264 00:14:14,690 --> 00:14:19,530 旧同盟領の総督たるの地位を 欲する者が必ずやおりましょう 265 00:14:19,530 --> 00:14:22,530 早めに人選を 進めておきましょうか? 266 00:14:24,730 --> 00:14:28,500 ヤン・ウェンリーは同盟において その功績と才能に 267 00:14:28,500 --> 00:14:31,910 ふさわしい待遇を受けているとは 言えぬ 268 00:14:31,910 --> 00:14:35,510 彼が新帝国の総督という 地位を示された時 269 00:14:35,510 --> 00:14:38,210 なお民主国家とやらに対する 忠誠心を 270 00:14:38,210 --> 00:14:40,180 不動のままに保てるだろうか 271 00:14:40,180 --> 00:14:42,580 つきましては閣下 272 00:14:42,580 --> 00:14:44,920 以前から 申し上げておりますように 273 00:14:44,920 --> 00:14:48,190 そうした不満分子の動向を 探る機関の必要性が 274 00:14:48,190 --> 00:14:52,390 一層増すかと考えますが 275 00:14:52,390 --> 00:14:55,900 どうも俺はフェザーンを 味方として考えるのには 276 00:14:55,900 --> 00:14:57,860 危惧を感じる 277 00:14:57,860 --> 00:15:00,330 ロイエンタール閣下は心配性だ 278 00:15:00,330 --> 00:15:03,040 だが相手はフェザーンだ どれほど疑っても 279 00:15:03,040 --> 00:15:06,010 度が過ぎるということはあるまい それはそうだ 280 00:15:06,010 --> 00:15:09,680 だが相手の意表をついて 電撃的な勝利を勝ち取り 281 00:15:09,680 --> 00:15:12,610 フェザーンにワナを仕掛ける暇を 与えなければよかろう 282 00:15:12,610 --> 00:15:15,050 万が一 それに失敗して敵中に 283 00:15:15,050 --> 00:15:18,080 孤軍となったとしたら 補給をどうする? 284 00:15:18,080 --> 00:15:20,690 そうなれば将兵の口を養うために 285 00:15:23,960 --> 00:15:27,890 たとえそれに成功しても 略奪者の汚名と引き換えか 286 00:15:27,890 --> 00:15:30,560 征服者として 憎悪されるのは構わんが 287 00:15:30,560 --> 00:15:33,900 略奪者として軽蔑されるのは 確かに愉快じゃないな 288 00:15:33,900 --> 00:15:37,540 それも略奪する物資が あればの話だ 289 00:15:37,540 --> 00:15:39,940 一昨年 俺たち自身がやったように 290 00:15:39,940 --> 00:15:42,280 焦土戦術を取られたら無残だぞ 291 00:15:42,280 --> 00:15:45,080 あの時の同盟軍の醜態を 覚えているだろう 292 00:15:45,080 --> 00:15:47,880 うん 我らは同盟を征服して 293 00:15:47,880 --> 00:15:50,780 恒久的に統治することを 目的とする以上 294 00:15:50,780 --> 00:15:53,220 民衆の反感を出発点とするのは 295 00:15:53,220 --> 00:15:55,590 あまりに 不利に過ぎるというものだ 296 00:15:55,590 --> 00:15:58,590 うん しかしその点に関しては 297 00:15:58,590 --> 00:16:01,160 我々がどうこう言うより ローエングラム公の 298 00:16:01,160 --> 00:16:04,730 お考えひとつでしょう うん 299 00:16:04,730 --> 00:16:07,630 ローエングラム公次第か 300 00:16:11,500 --> 00:16:13,910 ん?あれはラングでは なかったか? 301 00:16:13,910 --> 00:16:17,540 ラング? 前の社会秩序維持局 302 00:16:17,540 --> 00:16:19,780 国事犯や思想犯の 取り締まりをする 303 00:16:19,780 --> 00:16:22,320 言わば 政治警察の長官だった男だ 304 00:16:22,320 --> 00:16:25,320 かつての飼い主である 大貴族どもの没落に伴って 305 00:16:25,320 --> 00:16:27,450 ローエングラム公に 帰順したものの 306 00:16:27,450 --> 00:16:29,960 謹慎させられていたはずだが 307 00:16:29,960 --> 00:16:32,330 ローエングラム公が 秘密警察の類を 308 00:16:32,330 --> 00:16:34,690 復活させるとは思えませんが 309 00:16:34,690 --> 00:16:37,260 うん これまでのところ 310 00:16:37,260 --> 00:16:41,800 ローエングラム公の治世は公正で 正義の名に恥じないものだ 311 00:16:41,800 --> 00:16:45,140 それはローエングラム公こそ 唯一の覇者にふさわしいことを 312 00:16:45,140 --> 00:16:48,610 証明している だが もしローエングラム公が 313 00:16:48,610 --> 00:16:52,410 その証明を怠るようなことが あれば その時は… 314 00:16:52,410 --> 00:16:56,020 総参謀長閣下 わたくしが思いますに 315 00:16:56,020 --> 00:16:58,420 どのような上着をまとおうとも 316 00:16:58,420 --> 00:17:01,320 政治の実相はひとつです ほう それは何か? 317 00:17:01,320 --> 00:17:03,820 少数による多数の支配です 318 00:17:03,820 --> 00:17:08,460 民主共和制は自由意思による 多数派の支配をうたっているが 319 00:17:08,460 --> 00:17:12,070 全体を100として そのうち51を占めれば 320 00:17:12,070 --> 00:17:15,340 多数による支配を主張できます 321 00:17:15,340 --> 00:17:18,970 ところがその多数派もいくつもの 派閥に分かれています 322 00:17:18,970 --> 00:17:22,680 すなわち その51のうち 26を占めれば 323 00:17:22,680 --> 00:17:25,650 100という全体を支配できます 324 00:17:25,650 --> 00:17:29,220 多数支配などという 共和制の建前が 325 00:17:29,220 --> 00:17:31,550 いかに空しいものであるか 326 00:17:31,550 --> 00:17:36,390 明敏な閣下には お分かりいただけると存じます 327 00:17:36,390 --> 00:17:40,760 政治の実相が 少数による 多数の支配である以上 328 00:17:40,760 --> 00:17:43,960 安定させるには 私のような者の存在は 329 00:17:43,960 --> 00:17:46,200 不可欠でありましょうとも 330 00:17:46,200 --> 00:17:48,130 秘密警察がか 331 00:17:48,130 --> 00:17:50,800 治安維持のシステムがです 332 00:17:50,800 --> 00:17:54,240 秘密警察などというものが 存在するというだけでも 333 00:17:54,240 --> 00:17:57,140 一般大衆の憎悪の対象となる 334 00:17:57,140 --> 00:18:00,050 社会秩序維持局は 先日 解体されたが 335 00:18:00,050 --> 00:18:02,480 その責任者であった卿を 処罰するように 336 00:18:02,480 --> 00:18:07,150 求める声も多いのだ 開明派の カール・ブラッケのようにな 337 00:18:07,150 --> 00:18:09,690 ブラッケ氏には 氏のお考えがありましょうが 338 00:18:09,690 --> 00:18:13,930 わたくし ただ朝廷に対して 忠実たろうとしたのみ 339 00:18:13,930 --> 00:18:16,500 私利私欲のために 権限を行使したことは 340 00:18:16,500 --> 00:18:21,430 一度としてございません 忠誠心を処罰の対象となさるなら 341 00:18:21,430 --> 00:18:26,610 ローエングラム公ご自身にも決して よい結果をもたらされますまい 342 00:18:26,610 --> 00:18:29,640 そのローエングラム公も あまり卿らのごとき存在を 343 00:18:29,640 --> 00:18:32,250 好んではおられぬようだが 344 00:18:32,250 --> 00:18:35,720 公は 元々の武人 堂々たる戦いによって 345 00:18:35,720 --> 00:18:39,920 宇宙を征服なさろうとの気概を お持ちなのは当然 346 00:18:39,920 --> 00:18:42,820 しかしながら 時として一片の流言は 347 00:18:42,820 --> 00:18:45,530 1万隻の艦隊に勝ります 348 00:18:45,530 --> 00:18:48,430 公並びに総参謀長閣下の 349 00:18:48,430 --> 00:18:52,130 ご賢察とご寛容を 期待するものでございます 350 00:18:52,130 --> 00:18:54,800 私などはともかく ローエングラム公の 351 00:18:54,800 --> 00:18:58,640 ご寛容に対して 卿は 何をもってお応えするつもりだ 352 00:18:58,640 --> 00:19:01,210 そこが肝心なところだぞ 353 00:19:01,210 --> 00:19:04,940 それは 絶対の忠誠と すべての能力を上げて 354 00:19:04,940 --> 00:19:08,850 公の覇道に微力ながら 協力させていただきます 355 00:19:08,850 --> 00:19:12,990 その言はよし だが一度解体した社会秩維持局を 356 00:19:12,990 --> 00:19:14,990 復活させるわけにはいかん 357 00:19:14,990 --> 00:19:19,190 開明政策の後退として 非難されることにもなろうしな 358 00:19:19,190 --> 00:19:22,130 名称も何か別のものを 考えねばなるまい 359 00:19:22,130 --> 00:19:25,330 それならすでに考えてございます 360 00:19:25,330 --> 00:19:29,200 「内国安全保障局」 どうでしょう この名は? 361 00:19:29,200 --> 00:19:32,910 よい響きではありませんか 362 00:19:32,910 --> 00:19:36,340 古い酒は新しい革袋にだな 363 00:19:36,340 --> 00:19:40,110 酒の方もなるべく 新しくしたいと存じます 364 00:19:40,110 --> 00:19:43,980 よかろう せいぜい励むことだ 365 00:19:43,980 --> 00:19:46,180 ははあ 366 00:19:48,620 --> 00:19:50,590 自由惑星同盟との間に 367 00:19:50,590 --> 00:19:53,460 和平と共存の道は ないものでしょうか? 368 00:19:53,460 --> 00:19:57,260 ない 彼らのほうで それを閉ざした 369 00:20:00,100 --> 00:20:03,640 彼らが皇帝と誘拐犯をそろえて 送還してくれば 370 00:20:03,640 --> 00:20:06,840 私としては 当分の間 外交的にも軍事的にも 371 00:20:06,840 --> 00:20:09,380 手の打ちようがなかったのだが 372 00:20:09,380 --> 00:20:13,250 彼らは自分で自分の 死刑執行書にサインしたのだ 373 00:20:13,250 --> 00:20:16,050 同盟は滅びるべくして滅びるのだ 374 00:20:18,080 --> 00:20:21,390 フロイライン はい ローエングラム公 375 00:20:21,390 --> 00:20:25,160 私のやり方を 悪辣だと思うか 376 00:20:25,160 --> 00:20:29,560 わたくしが否定したら 閣下は 喜んでくださるのでしょうか 377 00:20:31,970 --> 00:20:35,470 そうですか メルカッツ提督は 閣議ですか 378 00:20:35,470 --> 00:20:37,500 すまんな せっかく寄ってくれたのに 379 00:20:37,500 --> 00:20:41,940 いえ 思ったより 客気がありますね 380 00:20:41,940 --> 00:20:45,210 タキシードを着たハイエナが うようよしているのさ 381 00:20:45,210 --> 00:20:48,050 国民のいない政府や 兵士のいない軍隊でも 382 00:20:48,050 --> 00:20:50,020 地位や称号は欲しいらしい 383 00:20:50,020 --> 00:20:54,420 実際 閣僚がよく6~7人で 済んだと感心するくらいのものだ 384 00:20:54,420 --> 00:20:57,320 ユリアン 君も我が軍に はせ参じたら 385 00:20:57,320 --> 00:21:00,330 少佐は堅いところだぞ 実際 メルカッツ閣下には 386 00:21:00,330 --> 00:21:03,130 今度 元帥の称号が 授けられることになったし 387 00:21:03,130 --> 00:21:05,430 かくいう俺も 中佐に昇進だそうだが 388 00:21:05,430 --> 00:21:07,430 指揮すべき兵士もいないのではな 389 00:21:07,430 --> 00:21:11,000 メルカッツ提督もさぞ ご苦労 なさっておいでなのでしょうね 390 00:21:11,000 --> 00:21:15,310 ああ 覚悟はしていたが 政党政府の実態は ひどいものだ 391 00:21:15,310 --> 00:21:17,740 あれで本気で ローエングラム公のような 392 00:21:17,740 --> 00:21:21,110 政戦両略の天才に 対抗できると思っているのかな 393 00:21:21,110 --> 00:21:24,450 思っているとしたら よほど気宇が壮大なのか 394 00:21:24,450 --> 00:21:27,450 精神が はちみつ漬けの チョコレートででもできているのか 395 00:21:27,450 --> 00:21:32,060 たぶん後者だろうが 巻き込まれるほうは迷惑な話だ 396 00:21:32,060 --> 00:21:36,660 まあ 唯一救いがあるとすれば ローエングラム公は天才だが 397 00:21:36,660 --> 00:21:41,300 歴史上 天才が凡人に敗れた例は 少なくないということだが 398 00:21:41,300 --> 00:21:43,640 最初から奇跡を 当てにしてるようでは 399 00:21:43,640 --> 00:21:46,440 勝利などおぼつかないな 400 00:21:46,440 --> 00:21:49,340 すまんな どうしても 悲観的になってしまうんだが 401 00:21:49,340 --> 00:21:51,810 立場上 うっかり 他人に言えなくてな 402 00:21:51,810 --> 00:21:56,180 愚痴を聞かせてしまったな いえ 僕ももしヤン提督が 403 00:21:56,180 --> 00:21:58,720 メルカッツ提督のような お立場になられたら… 404 00:21:58,720 --> 00:22:02,590 と考えると とても人ごととは思えませんから 405 00:22:02,590 --> 00:22:07,090 そうだな お互い 損な性格をしているよな 406 00:22:07,090 --> 00:22:09,730 少尉 そろそろ行きませんと 407 00:22:09,730 --> 00:22:12,100 ああ 今行く それでは 408 00:22:12,100 --> 00:22:14,830 行くか はい メルカッツ閣下にも 409 00:22:14,830 --> 00:22:17,800 お目にかかりたかったんですが よろしくお伝えください 410 00:22:17,800 --> 00:22:20,510 ああ そちらも大変だろうが 頑張れよ 411 00:22:20,510 --> 00:22:23,940 ありがとうございます 少佐も 412 00:22:23,940 --> 00:22:26,280 ユリアン・ミンツが 新たな任地である 413 00:22:26,280 --> 00:22:29,050 フェザーンに向けて ハイネセンを出発したのは 414 00:22:29,050 --> 00:22:33,390 宇宙歴798年 帝国歴489年 415 00:22:33,390 --> 00:22:36,290 標準歴9月19日のことである 416 00:22:36,290 --> 00:22:40,890 くしくもそれは帝国内において ローエングラム公ラインハルトが 417 00:22:40,890 --> 00:22:44,130 ラグナロック作戦を 発令したその日にあたる 418 00:22:44,130 --> 00:22:46,470 事態はヤン・ウェンリーの予測した 419 00:22:46,470 --> 00:22:49,070 最悪のペースで進んでいた 420 00:22:57,640 --> 00:23:02,420 私はフロイラインに 感謝している 本当だ 421 00:23:02,420 --> 00:23:07,020 あの時 私が山荘に赴いても 姉は会ってはくれなかっただろう 422 00:23:07,020 --> 00:23:11,760 あなたが説得してくれたから 姉も護衛を受け入れてくれた 423 00:23:11,760 --> 00:23:15,630 だが姉に嫌われても 私はもう戻れない 424 00:23:15,630 --> 00:23:20,470 私がここで覇道をひいたら 誰が宇宙に 統一と秩序を回復する 425 00:23:20,470 --> 00:23:23,740 血統と家紋を誇るしかない 大貴族の優等児や 426 00:23:23,740 --> 00:23:27,740 詭弁と利益誘導によって 愚民を動かすだけの扇動政治家に 427 00:23:27,740 --> 00:23:30,740 人類の未来を委ねるのか 428 00:23:34,210 --> 00:23:37,250 ローエングラム公 429 00:23:37,250 --> 00:23:40,590 明日 皇帝の配流を発表する 430 00:23:40,590 --> 00:23:43,490 翌日 宇宙歴798年 431 00:23:43,490 --> 00:23:46,460 帝国歴489年9月20日 432 00:23:46,460 --> 00:23:50,260 ゴールデンバウム朝 銀河帝国 第37代皇帝 433 00:23:50,260 --> 00:23:53,070 エルウィン・ヨーゼフ2世は 帝位を剥奪され 434 00:23:53,070 --> 00:23:55,970 代わって生後8ヵ月の カザリン・ケートヘンが 435 00:23:55,970 --> 00:23:59,370 帝位に就いた ゴールデンバウム王朝において 436 00:23:59,370 --> 00:24:03,680 初の女帝であり 史上最年少の皇帝である 437 00:24:03,680 --> 00:24:07,580 そして恐らくは 最後の皇帝であろう 438 00:24:07,580 --> 00:24:12,850 同時に帝国軍は 来たるべき 同盟領侵攻作戦の準備に入った 439 00:24:12,850 --> 00:24:16,420 作戦名は「ラグナロック」 その名のごとく 440 00:24:16,420 --> 00:24:20,060 ひとつの星間国家の終焉へと 向かうのであろうか 441 00:24:20,060 --> 00:24:23,960 誰も自らの運命の 赴く先は知らない 442 00:24:27,170 --> 00:24:29,100 フェザーンに着任したユリアンは 443 00:24:29,100 --> 00:24:32,970 ヤンの予測した帝国軍の作戦を くじくべく活動を開始する 444 00:24:32,970 --> 00:24:36,440 だが時すでに遅く 帝国軍のラグナロック作戦の 445 00:24:36,440 --> 00:24:38,880 第一弾は開始されていた 446 00:24:38,880 --> 00:24:43,480 次回「銀河英雄伝説」第42話 「鎮魂曲への招待」 447 00:24:43,480 --> 00:24:45,980 銀河の歴史が また1ページ