1 00:01:31,600 --> 00:01:36,180 宇宙暦 799年 新帝国暦 1年 6月 2 00:01:36,180 --> 00:01:40,610 カイザー ラインハルトは みずから 閣僚名簿を発表した 3 00:01:40,610 --> 00:01:43,180 国務尚書 マリーンドルフ伯 4 00:01:43,180 --> 00:01:46,090 軍務尚書 オーベルシュタイン元帥 5 00:01:46,090 --> 00:01:48,520 財務尚書 リヒター 6 00:01:48,520 --> 00:01:51,220 内務尚書 オスマイヤー 7 00:01:51,220 --> 00:01:53,990 司法尚書 ブルックドルフ 8 00:01:53,990 --> 00:01:56,430 学芸尚書 ゼーフェルト博士 9 00:01:56,430 --> 00:01:58,870 宮内尚書 ベルンハイム男爵 10 00:01:58,870 --> 00:02:01,130 民政尚書 ブラッケ 11 00:02:01,130 --> 00:02:03,470 工部尚書 シルヴァーベルヒ 12 00:02:03,470 --> 00:02:06,710 内閣書記官長 マインホフの10名である 13 00:02:06,710 --> 00:02:10,580 宰相は置かず カイザーみずから 最高行政官を兼ねる 14 00:02:10,580 --> 00:02:14,310 皇帝親政の体制である 15 00:02:14,310 --> 00:02:18,690 7月1日 国務尚書たる マリーンドルフ伯フランツが 16 00:02:18,690 --> 00:02:21,590 カイザー ラインハルトに 謁見を求めてきた 17 00:02:21,590 --> 00:02:26,090 陛下には ご結婚をなさる お気持ちはございませんか? 18 00:02:26,090 --> 00:02:29,060 結婚だと? さようで 19 00:02:29,060 --> 00:02:31,900 ご結婚なさり 世継ぎをもうけて 20 00:02:31,900 --> 00:02:35,600 帝位継承の秩序を 定められることもまた 21 00:02:35,600 --> 00:02:38,300 君主としての義務でございます 22 00:02:40,340 --> 00:02:44,640 その気はない 少なくとも 今のところはな 23 00:02:44,640 --> 00:02:47,480 余には他に やるべきことが多すぎる 24 00:02:47,480 --> 00:02:49,420 はあ 25 00:02:49,420 --> 00:02:52,090 ところで 今日 お目にかかりましたのは 26 00:02:52,090 --> 00:02:54,820 その儀ではございません 27 00:02:54,820 --> 00:02:57,390 私事で恐縮なのでございますが 28 00:02:57,390 --> 00:03:00,960 甥のキュンメル男爵のことで ございます 29 00:03:00,960 --> 00:03:03,930 フロイライン・マリーンドルフから 聞いている 30 00:03:03,930 --> 00:03:06,530 健康を害しているそうだな 31 00:03:06,530 --> 00:03:10,400 恐縮でございます 生まれついての病弱で 32 00:03:10,400 --> 00:03:13,970 余命いくばくもないと 医者も申しておりまして 33 00:03:13,970 --> 00:03:16,880 臣も娘も 唯一の身内のこととて 34 00:03:16,880 --> 00:03:18,950 心を痛めております 35 00:03:18,950 --> 00:03:21,750 そうか 気の毒にな 36 00:03:21,750 --> 00:03:26,090 そのキュンメル男爵が せめて一生の名誉として 37 00:03:26,090 --> 00:03:29,960 陛下の行幸を仰げないものかと 申しておりまして 38 00:03:29,960 --> 00:03:35,500 こうして お願いに 参上したわけでございます 39 00:03:35,500 --> 00:03:40,230 よかろう いつがよいか フロイライン・マリーンドルフと協議して 40 00:03:40,230 --> 00:03:42,170 予定を組んでもらおう 41 00:03:42,170 --> 00:03:44,240 はあ ありがたき幸せ 42 00:03:44,240 --> 00:03:47,540 男爵に代わりまして 御礼申し上げまする 43 00:03:55,350 --> 00:03:58,620 陛下にご結婚を勧められたとか 44 00:03:58,620 --> 00:04:01,620 どのような お考えでかな? 45 00:04:01,620 --> 00:04:06,290 ああ いや 陛下は まだ23歳のお若さ 46 00:04:06,290 --> 00:04:09,500 ご結婚を急ぐ必要もないとは 存じますが 47 00:04:09,500 --> 00:04:12,000 いずれ皇統の継続のためにも 48 00:04:12,000 --> 00:04:15,400 ご結婚なさるのは当然のこと 49 00:04:15,400 --> 00:04:17,970 そのことに 陛下のご注意を喚起し 50 00:04:17,970 --> 00:04:20,570 皇妃の候補者を 幾人か挙げておいても 51 00:04:20,570 --> 00:04:23,510 よろしかろうと思いましてな 52 00:04:23,510 --> 00:04:27,110 なるほど で 皇妃候補者の筆頭は 53 00:04:27,110 --> 00:04:29,710 国務尚書のご令嬢ですかな 54 00:04:31,680 --> 00:04:36,560 いや あれは自立と独歩の 気風が強い娘でしてな 55 00:04:36,560 --> 00:04:39,760 おとなしく宮廷の奥に端座して 56 00:04:39,760 --> 00:04:43,330 貴婦人を気取っているような 者ではありません 57 00:04:43,330 --> 00:04:45,870 いろいろ知っている娘ですが 58 00:04:45,870 --> 00:04:49,070 自分が女であることは 知らんのではないかと 59 00:04:49,070 --> 00:04:51,900 時々 心配になるのですよ 60 00:04:51,900 --> 00:04:55,100 国務尚書は 良識家でいらっしゃる 61 00:05:04,480 --> 00:05:09,090 軍務尚書は お父様と私とで 陛下をたぶらかして 62 00:05:09,090 --> 00:05:12,760 国政をろう断することがないよう 警告したのでしょう 63 00:05:12,760 --> 00:05:17,330 本心から心配しているかどうかは ともかくとして 一応はね 64 00:05:17,330 --> 00:05:19,300 途方もないことだ 65 00:05:19,300 --> 00:05:21,630 私は軍務尚書あたりと 66 00:05:21,630 --> 00:05:25,510 陛下への影響力を競おうなどとは 考えたくもない 67 00:05:25,510 --> 00:05:29,210 第一 陛下を お前の夫になどと… 68 00:05:29,210 --> 00:05:32,180 あっ ヒルダ まさか お前自身 69 00:05:32,180 --> 00:05:35,980 そんなことを考えておるのでは あるまいな 70 00:05:35,980 --> 00:05:38,950 まさか 71 00:05:38,950 --> 00:05:40,950 陛下と私… 72 00:05:43,420 --> 00:05:46,430 何にしても 陛下のご厚情に甘えて 73 00:05:46,430 --> 00:05:50,160 公私の別を忘れるようなことが あっては いかんよ 74 00:05:50,160 --> 00:05:54,630 人間の数だけ 誤解の種があるというからな 75 00:05:54,630 --> 00:05:58,070 ええ 分かっています うん 76 00:05:58,070 --> 00:06:01,940 それにしても 陛下のご厚情といえば 77 00:06:01,940 --> 00:06:05,950 キュンメル邸への行幸の件を 快くご承知くださって 78 00:06:05,950 --> 00:06:10,120 まことに ありがたいことだ ええ 79 00:06:10,120 --> 00:06:13,720 普通 皇帝陛下の 最初の臨御の栄に浴するのは 80 00:06:13,720 --> 00:06:18,560 よほどの功労があった者か お気に入りの者と決まっておって 81 00:06:18,560 --> 00:06:21,460 争いの種にまでなったものだが 82 00:06:21,460 --> 00:06:23,530 だからこそでしょう 83 00:06:23,530 --> 00:06:27,370 あえて何の縁もない キュンメル邸をお選びになることで 84 00:06:27,370 --> 00:06:29,870 ゴールデンバウム王朝の 慣例の愚かしさを 85 00:06:29,870 --> 00:06:32,670 お笑いになる おつもりなのではないかしら 86 00:06:32,670 --> 00:06:37,510 もちろん 病人をいたわる お気持ちに偽りはないと思うけど 87 00:06:37,510 --> 00:06:42,780 ああ見えて お優しい方ですから 88 00:06:42,780 --> 00:06:45,690 7月6日 カイザー ラインハルトは 89 00:06:45,690 --> 00:06:48,150 キュンメル邸を訪問した 90 00:06:48,150 --> 00:06:51,720 随行する者 わずか16名 91 00:06:51,720 --> 00:06:55,960 ラインハルトは厳重な警備や 大げさな行列を嫌い 92 00:06:55,960 --> 00:06:59,560 単独で外出したことすらあると 伝えられる 93 00:07:01,770 --> 00:07:03,970 あっ ハインリッヒ 94 00:07:09,080 --> 00:07:12,810 私ごときの住まいへ 玉体をお運びいただき 95 00:07:12,810 --> 00:07:15,180 きょうくの極みでございます 96 00:07:15,180 --> 00:07:17,680 今日一日をもって キュンメル家の名は 97 00:07:17,680 --> 00:07:21,220 過分の栄光に輝きましょう 98 00:07:21,220 --> 00:07:23,790 卿が喜んでくれて嬉しい 99 00:07:23,790 --> 00:07:28,390 それだけで ぜいを尽くした 酒池肉林の歓迎にも勝る 100 00:07:33,770 --> 00:07:37,970 無理をしない方がいいわ ハインリッヒ 101 00:07:37,970 --> 00:07:40,810 フロイライン・マリーンドルフの 言うとおりだ 102 00:07:40,810 --> 00:07:42,740 無理をすることはない 103 00:07:42,740 --> 00:07:46,610 まず自分の体から 大切にするがいい 104 00:07:46,610 --> 00:07:50,480 この時 ラインハルトは 奇妙な感触にとらわれていた 105 00:07:50,480 --> 00:07:53,790 それは幾多の戦場を 駆け抜けてきた者だけが持つ 106 00:07:53,790 --> 00:07:57,490 危険を感じ取る独特の感覚で あったかもしれない 107 00:08:00,560 --> 00:08:03,460 どうぞ 中庭へおいでください 108 00:08:03,460 --> 00:08:07,960 ささやかですが 昼食の用意が整えてあります 109 00:08:18,540 --> 00:08:21,480 いい中庭でしょう ヒルダ姉さん 110 00:08:21,480 --> 00:08:23,480 えっ… ええ 111 00:08:23,480 --> 00:08:27,150 ああ ヒルダ姉さんは 来たことがありますね 112 00:08:27,150 --> 00:08:29,520 でも このことは 知らないでしょう 113 00:08:29,520 --> 00:08:32,430 この石畳みの下は 地下室になっていて 114 00:08:32,430 --> 00:08:35,960 そこには ゼッフル粒子が充満していて 115 00:08:35,960 --> 00:08:41,600 陛下を死の世界にお迎えしようと 待ち構えているんですよ 116 00:08:41,600 --> 00:08:45,470 お静かに! 117 00:08:45,470 --> 00:08:49,240 皇帝陛下 全宇宙の支配者にして 118 00:08:49,240 --> 00:08:51,480 全人類の統治者 119 00:08:51,480 --> 00:08:54,210 貴族とは名ばかりの 貧家に生まれて 120 00:08:54,210 --> 00:08:57,420 玉座の主にまで成り上がった 当代の偉人たる 121 00:08:57,420 --> 00:08:59,490 ラインハルト陛下 122 00:08:59,490 --> 00:09:02,390 並びに忠良なる臣下の諸君 123 00:09:02,390 --> 00:09:05,530 この起爆スイッチを 押されたくなかったら 124 00:09:05,530 --> 00:09:07,530 何とぞ お静かに 125 00:09:10,100 --> 00:09:13,500 ハインリッヒ あなたは… 126 00:09:13,500 --> 00:09:17,870 ヒルダ姉さん あなたを 巻き込むのは本意ではなかった 127 00:09:17,870 --> 00:09:21,370 できれば皇帝に ついてきてほしくなかった 128 00:09:30,180 --> 00:09:33,750 でも いまさら あなた1人を逃がそうとしても 129 00:09:33,750 --> 00:09:36,150 承知しないでしょうね 130 00:09:41,860 --> 00:09:46,360 おじ上が悲しむだろうけど しかたがない 131 00:09:50,040 --> 00:09:52,670 男爵は何やら演説したいようだ 132 00:09:52,670 --> 00:09:57,180 させてやれ 時間だけは稼がなくてはな 133 00:09:57,180 --> 00:10:00,780 陛下 ご感想はいかがですか? 134 00:10:00,780 --> 00:10:05,050 ここで卿に殺されるなら 余の命数も それまでだ 135 00:10:05,050 --> 00:10:06,990 惜しむべき何ものもない 136 00:10:06,990 --> 00:10:08,960 即位から わずか14日 137 00:10:08,960 --> 00:10:11,560 これほど短命の王朝も 類があるまい 138 00:10:11,560 --> 00:10:13,790 ことさら 余が望んだわけではないが 139 00:10:13,790 --> 00:10:16,700 この一つで 歴史に名が残るかもしれぬな 140 00:10:16,700 --> 00:10:21,200 不名誉な名だが 後世の評価を 気にしてもしかたがない 141 00:10:23,470 --> 00:10:28,070 卿が余を殺す理由も いまさら知ってもはじまらん 142 00:10:30,780 --> 00:10:33,410 ハインリッヒは 陛下が命乞いをすることを 143 00:10:33,410 --> 00:10:35,350 期待していたんだわ 144 00:10:35,350 --> 00:10:37,350 自分の無力さの代償を 145 00:10:37,350 --> 00:10:41,150 陛下にひざを屈せさせることで 満たそうとしたのね 146 00:10:41,150 --> 00:10:43,890 でも ハインリッヒは 陛下を知らない 147 00:10:43,890 --> 00:10:48,730 脅迫者に屈するくらいなら 死を選ぶ方だということを 148 00:10:48,730 --> 00:10:52,430 ハインリッヒ お願い まだ間に合うわ 149 00:10:52,430 --> 00:10:54,370 スイッチを私によこして 150 00:10:54,370 --> 00:10:57,040 ああ ヒルダ姉さん 151 00:10:57,040 --> 00:10:59,940 あなたでも 困ることがあるんですね 152 00:10:59,940 --> 00:11:03,440 僕の見るあなたは いつも さっそうとしていて 153 00:11:03,440 --> 00:11:06,950 まぶしいくらい 生気にあふれていた 154 00:11:06,950 --> 00:11:10,580 なのに今 そんな暗い顔をしていると 155 00:11:10,580 --> 00:11:12,980 失望を禁じ得ないな 156 00:11:20,230 --> 00:11:22,660 静かに! 157 00:11:22,660 --> 00:11:25,560 静かに!あと ほんの数分だ 158 00:11:25,560 --> 00:11:29,940 ほんの数分だけ 僕の手に 宇宙を握らせておいてくれ 159 00:11:29,940 --> 00:11:34,270 この ほんの数分のためにだけ 僕は生きてきた 160 00:11:34,270 --> 00:11:37,180 いや 違う 死なずにきたんだ 161 00:11:37,180 --> 00:11:40,380 もう少しだけ 死なせずにおいてくれ 162 00:11:45,790 --> 00:11:48,250 あれは… 163 00:11:48,250 --> 00:11:51,220 カイザー ラインハルト陛下に対し奉り 164 00:11:51,220 --> 00:11:54,490 ふていな暗殺の企てが なされております 165 00:11:54,490 --> 00:11:56,830 なぜ それが卿に分かったのか? 166 00:11:56,830 --> 00:12:00,170 地球教という 宗教団体があることを 167 00:12:00,170 --> 00:12:02,500 閣下はご存じと思いますが 168 00:12:02,500 --> 00:12:07,310 私は同盟にいた当時から 彼らと関係がありました 169 00:12:07,310 --> 00:12:12,010 彼らの中で陰謀が企まれ 私の知るところとなったのです 170 00:12:12,010 --> 00:12:15,880 このことを人に告げれば 命はないと脅迫されましたが 171 00:12:15,880 --> 00:12:19,420 陛下に対する私の忠誠心が… 172 00:12:19,420 --> 00:12:23,060 分かっている で 刺客の名は? 173 00:12:23,060 --> 00:12:25,830 ハインリッヒ・ フォン・キュンメル男爵 174 00:12:25,830 --> 00:12:30,600 何?トリューニヒト氏を 第2応接室へお連れせよ 175 00:12:30,600 --> 00:12:33,500 一件が落着するまで そこに居ていただく 176 00:12:33,500 --> 00:12:36,170 身辺に誰も近づけるな 177 00:12:36,170 --> 00:12:38,500 誤解のないように 申し上げておきますが 178 00:12:38,500 --> 00:12:42,140 私は地球教の宗旨に 賛同していたことは一度もなく 179 00:12:42,140 --> 00:12:46,010 彼らと一時 共同歩調をとったのは 状況のなせる業で 180 00:12:46,010 --> 00:12:48,580 自分が望んでのことでは ないことを! 181 00:12:48,580 --> 00:12:50,520 了解している 182 00:12:50,520 --> 00:12:53,020 キュンメル男爵邸に テレビ電話を入れてみろ 183 00:12:53,020 --> 00:12:56,860 シュトライト中将ないし キスリング准将を呼び出すのだ 184 00:12:56,860 --> 00:13:00,230 帝都周辺の 憲兵隊の配置図を出せ 185 00:13:00,230 --> 00:13:02,730 キュンメル男爵邸に もっとも近い場所にいる隊の 186 00:13:02,730 --> 00:13:06,030 指揮官は誰か? パウマン准将の部隊ならば 187 00:13:06,030 --> 00:13:08,930 キュンメル邸に1キロあまりのところに 駐在しております 188 00:13:08,930 --> 00:13:11,270 よし ただちに連絡をとれ 189 00:13:11,270 --> 00:13:13,710 閣下 キュンメル邸 応答がありません 190 00:13:13,710 --> 00:13:17,940 うん 事態は明白だ 地球教の拠点はどこか? 191 00:13:17,940 --> 00:13:22,280 地球教団のオーディン支部 カッセル街19番地 192 00:13:22,280 --> 00:13:24,820 こちらは ラフト准将の部隊が近い 193 00:13:24,820 --> 00:13:27,150 すぐに連絡して向かわせるんだ 194 00:13:27,150 --> 00:13:29,090 パウマン准将が出ます 195 00:13:29,090 --> 00:13:31,020 配備小隊 急げ! 196 00:13:31,020 --> 00:13:34,260 そろったか? 車両は使うな 197 00:13:34,260 --> 00:13:36,900 音で相手に こちらの動きを気取られる 198 00:13:36,900 --> 00:13:39,330 最小限の装備で現場まで走れ 199 00:13:39,330 --> 00:13:42,730 靴を脱いで 足音も立てずに走るんだ 200 00:13:48,470 --> 00:13:50,470 発射! 201 00:13:55,210 --> 00:13:58,680 撃ち方やめ! 202 00:13:58,680 --> 00:14:00,620 突入せよ! 203 00:14:00,620 --> 00:14:02,920 抵抗する者は 射殺しても構わんが 204 00:14:02,920 --> 00:14:05,420 責任者は生かして捕らえよ! 205 00:14:17,970 --> 00:14:20,670 もう逃げられんぞ 降伏しろ! 206 00:14:23,780 --> 00:14:25,780 小隊長! 207 00:14:57,240 --> 00:15:02,010 地球教徒の死者は124名 うち28名は自殺です 208 00:15:02,010 --> 00:15:05,850 逮捕者は66名ですが うち重傷者が14名おります 209 00:15:05,850 --> 00:15:08,490 逃亡者はおりません 責任者は? 210 00:15:08,490 --> 00:15:12,020 支部長たるゴドウィン大主教を 軽傷で捕らえておりますので 211 00:15:12,020 --> 00:15:14,530 前後の事情は 聞き出せるかと思います 212 00:15:14,530 --> 00:15:16,860 うん わが方の損害は? 213 00:15:16,860 --> 00:15:19,830 死亡18 負傷42 214 00:15:19,830 --> 00:15:23,230 だが問題は キュンメル邸の方だ 215 00:15:55,100 --> 00:15:57,440 陛下 皇帝陛下 216 00:15:57,440 --> 00:16:01,040 そのペンダントは よほど貴重な物のようですね 217 00:16:01,040 --> 00:16:06,850 どうか私にも見せて 触らせていただけませんか? 218 00:16:06,850 --> 00:16:10,050 断る! 私は見たいのです 219 00:16:10,050 --> 00:16:12,050 卿には関係ない物だ 220 00:16:12,050 --> 00:16:14,850 お見せなさい 陛下 陛下! 221 00:16:23,600 --> 00:16:26,170 誰が この場の支配者であるか 222 00:16:26,170 --> 00:16:28,700 陛下は お忘れのようですね 223 00:16:28,700 --> 00:16:31,600 お渡しなさい 最後の命令です 224 00:16:31,600 --> 00:16:33,600 嫌だ 225 00:16:49,990 --> 00:16:52,560 乱暴しないで! 226 00:16:52,560 --> 00:16:55,460 ハインリッヒ! 227 00:16:55,460 --> 00:17:00,300 あなたはバカよ 僕は何かして死にたかった 228 00:17:00,300 --> 00:17:05,000 どんな悪いことでも どんなバカなことでもいい 229 00:17:05,000 --> 00:17:09,700 何かして死にたかった それだけなんだ 230 00:17:12,340 --> 00:17:16,980 キュンメル男爵家は 僕の代で終わる 231 00:17:16,980 --> 00:17:21,820 僕の病気からではなく 僕の愚かさによってだ 232 00:17:21,820 --> 00:17:24,420 僕の病気は すぐに忘れられても 233 00:17:24,420 --> 00:17:28,420 愚かさは 幾人かが 記憶していてくれるだろう 234 00:17:47,210 --> 00:17:51,910 陛下はご無事 犯人は死に 起爆スイッチは確保した 235 00:18:08,400 --> 00:18:12,800 陛下をお守りしろ! 他にも賊が潜んでいるかもしれん 236 00:18:14,970 --> 00:18:19,340 「地球は わが母 地球を わが手に」 237 00:18:19,340 --> 00:18:22,750 あの地球教徒か 地球教? 238 00:18:22,750 --> 00:18:25,680 近年 帝国・同盟を問わず 239 00:18:25,680 --> 00:18:29,290 勢力を拡大させつつある 宗教団体だ 240 00:18:29,290 --> 00:18:33,590 卿は地球を知っているか? たしか 人類発祥の地でしたね 241 00:18:33,590 --> 00:18:36,060 歴史で習ったことがあります 242 00:18:36,060 --> 00:18:41,400 何にしても 私たちの祖先も 知らないような大昔の話でしょう 243 00:18:41,400 --> 00:18:44,240 地球教徒ですと? そのようだ 244 00:18:44,240 --> 00:18:46,870 他に賊は? いないようです 245 00:18:46,870 --> 00:18:50,240 そうか 大事に至らなくてよかった 246 00:18:50,240 --> 00:18:53,850 先ほどは お互いに冷や汗をかいたが 247 00:18:53,850 --> 00:18:57,580 ときに 陛下の あのペンダントは一体何なのだ? 248 00:18:57,580 --> 00:19:00,920 さあ 小官は存じませんが 249 00:19:00,920 --> 00:19:03,890 ところで地下の ゼッフル粒子も気になります 250 00:19:03,890 --> 00:19:06,860 とりあえず 陛下には ノイエ・サンスーシに 251 00:19:06,860 --> 00:19:09,390 お帰りいただこうと思いますが 252 00:19:09,390 --> 00:19:11,790 そうだな そうしよう 253 00:19:17,000 --> 00:19:21,640 皇帝陛下 ご無事で何よりでございました 254 00:19:21,640 --> 00:19:25,510 ですが このような ふていな陰謀を事前に察知できず 255 00:19:25,510 --> 00:19:29,380 陛下の玉体を かかる危険に さらす結果になりましたのは 256 00:19:29,380 --> 00:19:31,750 ひとえに小官の罪でございます 257 00:19:31,750 --> 00:19:34,450 いや 卿はよくやった 258 00:19:34,450 --> 00:19:37,360 すでに陰謀の本拠地である 地球教の支部とやらを 259 00:19:37,360 --> 00:19:39,730 制圧したというではないか 260 00:19:39,730 --> 00:19:43,400 罪など謝さずともよい 恐れ入ります 261 00:19:43,400 --> 00:19:46,370 とこで陛下 すでに死亡したとはいえ 262 00:19:46,370 --> 00:19:48,900 キュンメル男爵は大逆の罪人 263 00:19:48,900 --> 00:19:51,600 死後の処置を いかに取りましょうか? 264 00:19:53,740 --> 00:19:57,380 ケスラー 卿が命を狙われたとする 265 00:19:57,380 --> 00:20:01,250 犯人を捕らえた後 その犯人が所持している凶器を 266 00:20:01,250 --> 00:20:03,350 卿は処分するか? 267 00:20:06,620 --> 00:20:08,890 ただちに地球教徒どもを尋問し 268 00:20:08,890 --> 00:20:12,890 事の真相を明らかにした上で 処罰を与えます 269 00:20:14,790 --> 00:20:19,530 ラインハルトは キュンメル男爵の罪は 問わないことを明言した 270 00:20:19,530 --> 00:20:22,800 これは とりもなおさず 男爵の親族である 271 00:20:22,800 --> 00:20:26,440 マリーンドルフ伯やヒルダへの 連座の罪も及ばないことを 272 00:20:26,440 --> 00:20:30,640 意味したが 2人は自主的に謹慎している 273 00:20:30,640 --> 00:20:35,480 権力を握るための戦いには それなりの充足感があったが 274 00:20:35,480 --> 00:20:41,290 権力を守るための戦いは なんと むなしいことか 275 00:20:41,290 --> 00:20:44,920 お前とともに 強大な敵と戦うのは楽しかった 276 00:20:44,920 --> 00:20:49,360 だが 自分がもっとも強大な 存在になってしまった今 277 00:20:49,360 --> 00:20:54,530 俺は時々 自分自身を 打ち砕いてしまいたくなる 278 00:20:54,530 --> 00:20:59,370 世の中は もっと強大な敵に 満ちていてよいはずなのに 279 00:20:59,370 --> 00:21:02,770 お前が生きていたら もう少し俺は自分の赴く先を 280 00:21:02,770 --> 00:21:06,080 見つけやすかったはずなのだ 281 00:21:06,080 --> 00:21:08,980 そうだろう?キルヒアイス 282 00:21:08,980 --> 00:21:11,720 ラインハルトの意を受けた 憲兵隊によって 283 00:21:11,720 --> 00:21:15,250 地球教団の生存者は 過酷に取り調べられた 284 00:21:15,250 --> 00:21:17,790 自白剤の使用も ためらわれなかったのは 285 00:21:17,790 --> 00:21:20,560 事が大逆罪で あったためもあるが 286 00:21:20,560 --> 00:21:22,490 あたかも殉教を望んでいるような 287 00:21:22,490 --> 00:21:26,230 地球教徒の かたくなな 態度によるところも大きい 288 00:21:26,230 --> 00:21:28,700 特定宗教に対する狂信ほど 289 00:21:28,700 --> 00:21:32,500 それと無縁な人間の反発と 嫌悪をそそるものはない 290 00:21:32,500 --> 00:21:35,410 結果として得られた情報は 少なかった 291 00:21:35,410 --> 00:21:37,840 それは この暗殺計画の立案は 292 00:21:37,840 --> 00:21:40,480 地球教の本部において 成されたもので 293 00:21:40,480 --> 00:21:43,880 オーディン支部は 単にその実行に 当たっていたにすぎないことを 294 00:21:43,880 --> 00:21:45,850 物語っていた 295 00:21:45,850 --> 00:21:50,620 7月10日 その結果を踏まえて 御前会議が召集された 296 00:21:50,620 --> 00:21:53,290 地球への派兵を 検討するためである 297 00:21:53,290 --> 00:21:58,030 まず内国安全保障局長 ハイドリッヒ・ラングが発言し 298 00:21:58,030 --> 00:22:01,530 地球教の正体についての調査に なお万全を期すため 299 00:22:01,530 --> 00:22:03,540 時間的な猶予を求めた 300 00:22:03,540 --> 00:22:08,170 これは一面には国内の治安に 関する内国安全保障局と 301 00:22:08,170 --> 00:22:12,640 憲兵隊との対立意識から 出たものといえた 302 00:22:12,640 --> 00:22:16,080 フッ う遠なことを言うな 303 00:22:16,080 --> 00:22:18,980 地球教とやらの反逆の意思は 明らかであるのに 304 00:22:18,980 --> 00:22:21,890 いまさら 一体何の調査か? 305 00:22:21,890 --> 00:22:24,790 余は ことさらに 宗教を否定するつもりもないが 306 00:22:24,790 --> 00:22:28,790 奴らの方から共存を望まぬと いうのであれば是非もない 307 00:22:28,790 --> 00:22:32,300 この際は奴ら自身の信仰に 殉じさせてやるのが 308 00:22:32,300 --> 00:22:35,000 最大の慈悲というものだろう 309 00:22:38,400 --> 00:22:42,770 陛下のお言葉どおり 地球教徒との共存は望めません 310 00:22:42,770 --> 00:22:46,350 この際 反徒には 相応の報いをくれて 311 00:22:46,350 --> 00:22:50,120 新王朝の意向と意思を 内外に示すべきでありましょう 312 00:22:50,120 --> 00:22:53,990 意を示すべし… か? さようです 313 00:22:53,990 --> 00:22:55,950 つきましては どうか その任は 314 00:22:55,950 --> 00:23:00,090 小官に お任せいただきたく存じます 315 00:23:00,090 --> 00:23:02,430 辺境の一惑星を威圧するのに 316 00:23:02,430 --> 00:23:05,730 シュワルツ・ランツェンレイターを 動かしたとあっては 317 00:23:05,730 --> 00:23:09,130 帝国軍が かなえの軽重を問われそうだな 318 00:23:09,130 --> 00:23:12,900 今回は控えよう ビッテンフェルト 319 00:23:12,900 --> 00:23:15,910 はあ ワーレン 320 00:23:15,910 --> 00:23:18,180 はっ 卿に命じる 321 00:23:18,180 --> 00:23:21,150 旗下の艦隊を率いて 太陽系に赴き 322 00:23:21,150 --> 00:23:23,980 地球教団の本拠を制圧せよ 323 00:23:23,980 --> 00:23:27,390 御意 教祖ないし 教団組織の長は 324 00:23:27,390 --> 00:23:29,350 捕らえて帝都に護送せよ 325 00:23:29,350 --> 00:23:32,860 幹部どもは逮捕が不可能であれば 殺しても構わぬ 326 00:23:32,860 --> 00:23:36,660 だが教徒以外には 害の及ばぬよう心せよ 327 00:23:36,660 --> 00:23:42,070 もっとも教徒でない者が 地球にいるとも思えぬが 328 00:23:42,070 --> 00:23:45,940 大任をお与えいただき きょうくの極みでございます 329 00:23:45,940 --> 00:23:49,810 必ず地球教の暴徒どもを滅ぼし 首領を捕らえ 330 00:23:49,810 --> 00:23:55,950 陛下の尊厳と法秩序の何たるかを 思い知らせます 331 00:23:55,950 --> 00:24:00,820 こうして 地球への武力制裁が決定された 332 00:24:00,820 --> 00:24:03,590 1時間後に大気圏に突入する 333 00:24:03,590 --> 00:24:06,790 着陸すれば 俺の仕事の半分は終わりだ 334 00:24:06,790 --> 00:24:11,360 まっ 地球滞在中は あまり危険や 不運と仲よくならないでくれ 335 00:24:11,360 --> 00:24:14,370 死体を運ぶ仕事は 陰気になっていけねえ 336 00:24:14,370 --> 00:24:16,500 コーネフという姓の奴は 337 00:24:16,500 --> 00:24:19,840 どうして こうも 性格が悪い奴ばかりなんだよ 338 00:24:19,840 --> 00:24:23,110 お前さんたちは 巡礼の地球教徒ということになる 339 00:24:23,110 --> 00:24:26,080 不本意だろうが そうでもない者が 地球に行くなんて 340 00:24:26,080 --> 00:24:28,080 不自然極まるからな 341 00:24:28,080 --> 00:24:31,480 分かっている うん? 342 00:24:31,480 --> 00:24:36,120 船長 今現在の地球の人口は どのくらいなのですか? 343 00:24:36,120 --> 00:24:40,860 1000万程度のはずだが 全員が地球教徒でしょうか? 344 00:24:40,860 --> 00:24:43,130 さあ そこまでは知らんが 345 00:24:43,130 --> 00:24:45,830 もっとも 政教一致体制のようだからな 346 00:24:45,830 --> 00:24:47,900 新教の自由などないだろうし 347 00:24:47,900 --> 00:24:52,240 教徒でなければ 生きていけないんじゃないのかな 348 00:24:52,240 --> 00:24:56,070 宗教なんてのは 権力者にとっては便利なもんで 349 00:24:56,070 --> 00:24:59,950 民衆を支配するのに こんな 効率のいい道具はないからな 350 00:24:59,950 --> 00:25:01,880 その地球教の教主は 351 00:25:01,880 --> 00:25:04,220 グランド・ビショップという 老人だそうですが 352 00:25:04,220 --> 00:25:06,150 会ったことはありますか? 353 00:25:06,150 --> 00:25:10,020 そんな奥の院をのぞけるほど 俺は大物じゃねえよ 354 00:25:10,020 --> 00:25:13,890 もっとも機会があったとしても 会いたいとは思わんがね 355 00:25:13,890 --> 00:25:17,100 これは自慢で言うんだが 年寄りのお説教を聞いて 356 00:25:17,100 --> 00:25:20,000 愉快になったことなど 一度もないね 357 00:25:20,000 --> 00:25:22,570 そのグランド・ ビショップとやらいう老人には 358 00:25:22,570 --> 00:25:25,100 きっと美人の娘か孫娘がいるぜ 359 00:25:25,100 --> 00:25:27,840 そうでしょうか そうに決まっている 360 00:25:27,840 --> 00:25:31,210 そして敵方の勇者と 恋に落ちるのさ 361 00:25:31,210 --> 00:25:33,210 フン ポプラン中佐は 362 00:25:33,210 --> 00:25:36,620 子ども向けテレビアニメの 脚本家になれそうだ 363 00:25:36,620 --> 00:25:39,520 もっとも 最近の子どもは スレてるからな 364 00:25:39,520 --> 00:25:42,420 そんなパターンでは 感激せんだろうな 365 00:25:42,420 --> 00:25:45,320 パターンこそ永遠の真理なんだ 知らんのか 366 00:25:45,320 --> 00:25:50,760 でも厳格な宗教の教主が結婚して 娘なんかがいたりしたら 367 00:25:50,760 --> 00:25:54,670 教団組織が存立しますかね 368 00:25:54,670 --> 00:25:58,500 そうだ そうだ それにしても 俺が思うに 369 00:25:58,500 --> 00:26:01,340 地球教徒やら称する連中が 愛しているのは 370 00:26:01,340 --> 00:26:04,880 地球という惑星 そのものではないな 371 00:26:04,880 --> 00:26:06,810 …と 言いますと? 372 00:26:06,810 --> 00:26:08,810 奴らは きっと地球をダシにして 373 00:26:08,810 --> 00:26:12,950 自分たちの先祖が持っていた 特権を回復したいだけさ 374 00:26:12,950 --> 00:26:15,350 本当に地球そのものを 愛していたら 375 00:26:15,350 --> 00:26:18,220 戦争や権力闘争に 巻き込まれるようなことを 376 00:26:18,220 --> 00:26:20,660 するものか 377 00:26:20,660 --> 00:26:23,190 ユリアン・ミンツらを乗せた アンデューティネス号が 378 00:26:23,190 --> 00:26:26,100 地球に到着したのは7月10日 379 00:26:26,100 --> 00:26:29,300 くしくも帝国において 地球への武力制裁が 380 00:26:29,300 --> 00:26:32,100 決定されたその日であった 381 00:26:41,510 --> 00:26:44,010 メルカッツ提督生存の噂 382 00:26:44,010 --> 00:26:47,450 それが事実とすれば ヤン・ウェンリーが知らぬはずはない 383 00:26:47,450 --> 00:26:50,350 帝国軍の幹部たちが抱く 動乱の予感 384 00:26:50,350 --> 00:26:54,560 一方 ユリアンは 地球教の本部潜入に成功する 385 00:26:54,560 --> 00:26:59,390 次回 銀河英雄伝説 第58話 「訪問者」 386 00:26:59,390 --> 00:27:02,690 銀河の歴史が また1ページ