1 00:01:55,200 --> 00:01:58,940 あの下には信徒たちの遺体が 埋もれているんですね 2 00:01:58,940 --> 00:02:02,840 教団にとって 信徒の命ほど安いものはない 3 00:02:02,840 --> 00:02:07,180 権力者にとっての国民 用兵家にとっての兵士と同じさ 4 00:02:07,180 --> 00:02:10,580 怒るには値するが 驚くには及ばんよ 5 00:02:12,520 --> 00:02:15,390 ヤン提督は違うと言いたそうだな 6 00:02:15,390 --> 00:02:17,620 ヤンを人間として 好きになるのはいい 7 00:02:17,620 --> 00:02:19,860 俺だって奴が好きだ 8 00:02:19,860 --> 00:02:22,630 用兵家として尊敬するのも 当然だろう 9 00:02:22,630 --> 00:02:26,530 だが用兵家という職業自体は 罰当たりな存在だ 10 00:02:26,530 --> 00:02:28,870 ヤン自身は それを わきまえているだろうから 11 00:02:28,870 --> 00:02:31,300 お前さんがムキになることはない 12 00:02:31,300 --> 00:02:33,700 お前さんにも そのことを承知しておいて 13 00:02:33,700 --> 00:02:37,100 軍人に対する批判を 許容してもらいたいね 14 00:02:39,080 --> 00:02:41,680 ユリアンという奴も 不思議な奴だな 15 00:02:41,680 --> 00:02:44,950 俺自身も含めて あいつに関わる年長者は 16 00:02:44,950 --> 00:02:48,820 いつの間にか あいつの 後見人の役割を引き受けてしまう 17 00:02:48,820 --> 00:02:51,720 なぜなんだかな? 人徳でしょう 18 00:02:51,720 --> 00:02:54,660 人徳?ハッ 奴はまだ修業中さ 19 00:02:54,660 --> 00:02:58,400 恋愛の10や20 やらなくて 一人前と言えるものか 20 00:02:58,400 --> 00:03:01,200 もうすぐ出発だ 少しは休め 21 00:03:16,880 --> 00:03:20,650 リンザー中佐によれば 地球教の本拠を攻略するのに 22 00:03:20,650 --> 00:03:23,390 少なからず 協力してくれたそうだな 23 00:03:23,390 --> 00:03:27,590 はい 理不尽にも地球教徒に 捕らわれておりましたので 24 00:03:27,590 --> 00:03:32,400 なかば自分たちの意趣返し 喜んで協力させていただきました 25 00:03:32,400 --> 00:03:36,570 何か礼をもって功に報いたいが 望みはないか? 26 00:03:36,570 --> 00:03:40,040 私ども一同が つつがなく フェザーンに帰れますなら 27 00:03:40,040 --> 00:03:43,510 この上 何の望みも ありません… あっ 28 00:03:43,510 --> 00:03:47,810 フェザーン人らしく 欲をかいてみせたほうがいいぞ 29 00:03:47,810 --> 00:03:50,710 どうした? 商売上で損害を被ったのなら 30 00:03:50,710 --> 00:03:54,550 補償してやってもよい 遠慮せずに申し出ることだ 31 00:03:54,550 --> 00:03:56,820 ありがとうございます 損害額は 32 00:03:56,820 --> 00:03:59,360 計算してみませんと しかとは分かりません 33 00:03:59,360 --> 00:04:02,960 後日 改めて提出させて いただきたいと思いますが 34 00:04:02,960 --> 00:04:06,200 さもあろう だが我々は 間もなく この地を発って 35 00:04:06,200 --> 00:04:08,630 帝都に戻らねばならんが… 36 00:04:08,630 --> 00:04:10,900 つきましては 私どもにもオーディンまで 37 00:04:10,900 --> 00:04:13,400 同行をお許し いただけませんでしょうか? 38 00:04:13,400 --> 00:04:16,740 私はあいにくと まだ帝都を 見たことがありませんので 39 00:04:16,740 --> 00:04:19,440 この際 帝都見物が できればと思います 40 00:04:19,440 --> 00:04:22,050 幸い 帰りは 急ぎの荷物もございませんし 41 00:04:22,050 --> 00:04:26,220 そんなことなら たやすいことだ 部下に手配させよう 42 00:04:26,220 --> 00:04:28,320 ありがとうございます 43 00:04:34,020 --> 00:04:36,230 思い切ったことを言い出したな 44 00:04:36,230 --> 00:04:38,560 前にヤン提督が おっしゃったんです 45 00:04:38,560 --> 00:04:41,000 異なる価値観に 触れてみることも大切だって 46 00:04:41,000 --> 00:04:43,800 だから実際に帝都には 行ってみたかったんです 47 00:04:43,800 --> 00:04:46,770 帝国軍と一緒なら怪しまれずに 入国できるでしょうし 48 00:04:46,770 --> 00:04:49,470 いい機会です そりゃそうだ 49 00:04:49,470 --> 00:04:53,070 オーディンになら帝国美人が たくさんいるだろうしな 50 00:04:55,110 --> 00:05:00,320 宇宙歴799年 新帝国歴1年7月30日 51 00:05:00,320 --> 00:05:04,290 地球教殲滅の報告が 帝都オーディンにもたらされた 52 00:05:04,290 --> 00:05:06,460 だが その報告に前後して 53 00:05:06,460 --> 00:05:10,360 惑星ハイネセンでの 一連の混乱についての情報も入り 54 00:05:10,360 --> 00:05:13,960 帝国の重臣たちの間に 波紋を呼んでいた 55 00:05:13,960 --> 00:05:16,730 公式報告に続いて ラッツェル大佐から 56 00:05:16,730 --> 00:05:20,240 旧知のミュラーの元に 急報が入っていた 57 00:05:20,240 --> 00:05:23,970 するとレンネンカンプ提督が 弁務官として公正を欠いたと 58 00:05:23,970 --> 00:05:25,910 卿は主張するのだな? 59 00:05:25,910 --> 00:05:29,280 国家の重臣に対し また大恩ある上司に対し 60 00:05:29,280 --> 00:05:31,550 非礼の極みとは思いますが 61 00:05:31,550 --> 00:05:33,480 レンネンカンプ提督の なさりようは 62 00:05:33,480 --> 00:05:36,220 あえて平地に 乱を起こすものでありました 63 00:05:36,220 --> 00:05:39,590 卿はそれを 公式の場で証言できるか? 64 00:05:39,590 --> 00:05:42,190 軍法会議でも裁判でも 65 00:05:42,190 --> 00:05:44,190 うむ 66 00:05:46,660 --> 00:05:49,570 なるほど そういう裏の事情があったのか 67 00:05:49,570 --> 00:05:52,470 レンネンカンプの なんたる心の狭さか 68 00:05:54,500 --> 00:05:56,640 この日 カイザー・ラインハルトは 69 00:05:56,640 --> 00:05:59,410 軽い発熱もあって あえて出席せず 70 00:05:59,410 --> 00:06:03,210 自由な討論の結果が 奏上されることになっていた 71 00:06:03,210 --> 00:06:06,050 常になく 最初に発言を求めたミュラーが 72 00:06:06,050 --> 00:06:08,920 ラッツェル大佐の訴えを披露した 73 00:06:08,920 --> 00:06:13,390 事は帝国の名誉 特に施政の公正さに関わります 74 00:06:13,390 --> 00:06:15,960 帝国や同盟の枠に こだわることなく 75 00:06:15,960 --> 00:06:19,160 万人の納得し得る結論を 出していただきたい 76 00:06:19,160 --> 00:06:21,100 小官の意見を申し上げれば 77 00:06:21,100 --> 00:06:25,000 まず無責任な密告により 事態の悪化を招いた者どもの 78 00:06:25,000 --> 00:06:29,540 責任を明らかにすべきだと 考えます 79 00:06:29,540 --> 00:06:32,810 ラッツェル大佐とやらが 正しいように思われる 80 00:06:32,810 --> 00:06:36,050 皇帝陛下の威信は まず恥知らずの密告者どもを 81 00:06:36,050 --> 00:06:38,580 処断することによってこそ 守られよう 82 00:06:38,580 --> 00:06:41,520 ヤン・ウェンリーの行動は 密告者どもの無法に対する 83 00:06:41,520 --> 00:06:46,290 正当防衛であるとすれば 情状を十分に くむべきだろう 84 00:06:46,290 --> 00:06:50,090 レンネンカンプ提督に対して いささか酷な発言のようだ 85 00:06:50,090 --> 00:06:52,800 国家の安全のため 彼はヤン・ウェンリーを 86 00:06:52,800 --> 00:06:56,070 後日の災いにならぬよう 除こうとしたのだ 87 00:06:56,070 --> 00:06:59,840 忠誠心ゆえの やむを得ざる 謀略とは取れぬかな? 88 00:06:59,840 --> 00:07:02,310 謀略によって国が立つか! 89 00:07:02,310 --> 00:07:04,640 信義によってこそ国は立つ 90 00:07:04,640 --> 00:07:07,340 少なくとも そう志向するのでなければ 91 00:07:07,340 --> 00:07:10,150 ゴールデンバウム王朝と 何ら変わらぬ 92 00:07:10,150 --> 00:07:14,020 何をもって兵士や民衆に 新王朝の存立する意義を説くのか 93 00:07:14,020 --> 00:07:17,220 敵ながらヤン・ウェンリーは 名将と呼ぶに値する 94 00:07:17,220 --> 00:07:20,920 それを礼節をもって遇せず 密告と謀略をもって除くなど 95 00:07:20,920 --> 00:07:22,990 後世にどう弁解するつもりだ! 96 00:07:22,990 --> 00:07:25,860 立派な発言だ ミッターマイヤー元帥 97 00:07:25,860 --> 00:07:29,130 2年前 リヒテンラーデ侯爵を 粛正する企てに 98 00:07:29,130 --> 00:07:31,400 加担した お人とも思えぬ 99 00:07:31,400 --> 00:07:33,900 今にして良心に痛みを覚えるか 100 00:07:37,140 --> 00:07:40,680 リヒテンラーデ侯の粛正は いわば互角の戦いだった 101 00:07:40,680 --> 00:07:45,050 一歩遅れていれば 処刑場の羊と なっていたのは我々のほうだ 102 00:07:45,050 --> 00:07:47,820 先手を打っただけのことで 恥じる必要はない 103 00:07:47,820 --> 00:07:49,750 だが今回の場合はどうか 104 00:07:49,750 --> 00:07:53,190 退役して平凡な市民生活を 送っている一軍人を 105 00:07:53,190 --> 00:07:56,560 無実の罪によって 陥れようとしているのではないか 106 00:07:56,560 --> 00:07:59,430 保身を図る 同盟の恥知らずどもの犯罪に 107 00:07:59,430 --> 00:08:01,360 なぜ我々が与せねばならぬ 108 00:08:01,360 --> 00:08:06,200 軍務尚書は いかなる哲学のもとに かかる醜い行いを肯定なさるのか 109 00:08:06,200 --> 00:08:08,940 まさに! そのとおり 110 00:08:08,940 --> 00:08:13,180 ヤン・ウェンリーと同盟政府との 仲が修復しがたいとすれば 111 00:08:13,180 --> 00:08:17,710 かえって彼と我々 帝国軍との間に よしみが結ばれるかもしれぬ 112 00:08:17,710 --> 00:08:21,020 彼にいたずらな軍事行動に 出ぬように呼びかけておいて 113 00:08:21,020 --> 00:08:24,320 早急に調査官を派遣し 解明に当たるべきだろう 114 00:08:24,320 --> 00:08:28,190 私が その任を引き受けて ハイネセンへ赴いてもよいが 115 00:08:28,190 --> 00:08:31,090 卿らは何か誤解しているようだ 116 00:08:31,090 --> 00:08:33,560 私が問題にしている ヤン・ウェンリーの罪とは 117 00:08:33,560 --> 00:08:36,070 密告の有無に関わるものではない 118 00:08:36,070 --> 00:08:39,640 彼が部下と共に 皇帝陛下の 代理人たる高等弁務官を 119 00:08:39,640 --> 00:08:41,670 拉致し 逃亡したことだ 120 00:08:41,670 --> 00:08:44,470 この事実を犯罪と言わず 罰せずして 121 00:08:44,470 --> 00:08:47,180 帝国と陛下の威信が保たれようか 122 00:08:47,180 --> 00:08:49,180 その点に思いを致してほしい 123 00:08:49,180 --> 00:08:51,410 言うのは心苦しいが 124 00:08:51,410 --> 00:08:54,850 それも密告などを 軽々しく信用して 無実の者を 125 00:08:54,850 --> 00:08:57,350 少なくとも 証拠もなしに処断しようとした 126 00:08:57,350 --> 00:09:00,120 レンネンカンプの 自ら求めたところだろう 127 00:09:00,120 --> 00:09:03,560 威信を保つ道は 事実を隠匿することにはなく 128 00:09:03,560 --> 00:09:05,500 事実を明らかにし 非があれば 129 00:09:05,500 --> 00:09:08,100 それを正すことにこそ あるのではないか 130 00:09:08,100 --> 00:09:12,440 レンネンカンプ上級大将を 任用なさったのは 恐れ多くも 131 00:09:12,440 --> 00:09:15,910 皇帝陛下であらせられます 司令長官閣下 132 00:09:15,910 --> 00:09:18,640 レンネンカンプ閣下を 批判なさることは 133 00:09:18,640 --> 00:09:23,910 神聖不可侵なる皇帝陛下の声望に 傷をつけることになりますぞ 134 00:09:23,910 --> 00:09:28,180 その辺をどうか ご考慮いただきたいものですな 135 00:09:28,180 --> 00:09:30,420 黙れ 下衆! ん? 136 00:09:30,420 --> 00:09:33,090 貴様は司令長官の正論を 封じるのに 137 00:09:33,090 --> 00:09:37,330 自らの見識ではなく 皇帝陛下の 御名をもってしようというのか 138 00:09:37,330 --> 00:09:39,260 虎の威を借る狐めが! 139 00:09:39,260 --> 00:09:43,030 そもそも貴様は内務省の 一局長に過ぎぬ身でありながら 140 00:09:43,030 --> 00:09:45,670 何のゆえをもって 上級大将以上の者しか 141 00:09:45,670 --> 00:09:48,640 出席を許されぬ この会議に 顔を並べているのか 142 00:09:48,640 --> 00:09:53,410 あまつさえ元帥同士の討論に 割り込むとは増長も極まる 143 00:09:53,410 --> 00:09:59,080 今すぐ出ていけ!それとも 自分の足で出ていくのは嫌か 144 00:09:59,080 --> 00:10:02,080 会議が終わるまで外に出ておれ 145 00:10:23,970 --> 00:10:27,640 私はこれほど 侮辱を受けたことはございません 146 00:10:27,640 --> 00:10:31,410 いえ 私だけならともかく 軍務尚書閣下にまで 147 00:10:31,410 --> 00:10:35,280 あれは罵倒を浴びせたも 同然ではありませんか 148 00:10:35,280 --> 00:10:38,190 そういう論法は ロイエンタール元帥だけでなく 149 00:10:38,190 --> 00:10:40,160 私もあまり好かんな 150 00:10:40,160 --> 00:10:42,160 いや… 151 00:10:42,160 --> 00:10:45,500 卿の出席について 他の了解を取らずにいたのは 152 00:10:45,500 --> 00:10:47,530 確かに私の不注意だった 153 00:10:47,530 --> 00:10:52,570 それに内務尚書や憲兵総監も 卿が私に近づくのを好まぬようだ 154 00:10:52,570 --> 00:10:55,200 お気になさるとは 閣下らしくもない 155 00:10:55,200 --> 00:10:58,840 嫌われるのは構わぬが 足を引っ張られては困る 156 00:10:58,840 --> 00:11:01,740 私も心することにいたします 157 00:11:01,740 --> 00:11:07,050 それにしてもロイエンタール元帥の いかにも挑戦的な言動 158 00:11:07,050 --> 00:11:12,590 後日のためにもクギを刺して おくべきではありませんか? 159 00:11:12,590 --> 00:11:14,520 ロイエンタールは建国の功臣 160 00:11:14,520 --> 00:11:18,260 皇帝陛下の信頼も レンネンカンプとは比較にならぬ 161 00:11:18,260 --> 00:11:21,030 証拠もなしに 他者をおとしめるの愚は 162 00:11:21,030 --> 00:11:23,270 レンネンカンプという 反面教師によって 163 00:11:23,270 --> 00:11:25,200 卿も学んだであろう 164 00:11:25,200 --> 00:11:28,540 わ… 分かりました 証拠を探すことにいたしましょう 165 00:11:28,540 --> 00:11:30,840 揺るぎのない証拠を 166 00:11:44,020 --> 00:11:48,020 余は これほど体質が 虚弱だったのだろうか 167 00:11:48,020 --> 00:11:51,530 恐れながら 陛下は お働きすぎでございます 168 00:11:51,530 --> 00:11:54,030 これほど戦争と政務に 精励なさっては 169 00:11:54,030 --> 00:11:56,900 多少の熱ぐらいは 出ないわけがございません 170 00:11:56,900 --> 00:11:59,640 私なら とうに重病に なっております 171 00:11:59,640 --> 00:12:03,210 それにしても この頃 よく疲れを感じるのだ 172 00:12:03,210 --> 00:12:06,040 あまり真面目に お仕事をなさいますから 173 00:12:06,040 --> 00:12:09,910 おや?それでは お前は 余に怠けろと言うのか 174 00:12:09,910 --> 00:12:12,380 陛下 ご無礼をお許しください 175 00:12:12,380 --> 00:12:14,980 でも強い炎は早く燃え尽きると 176 00:12:14,980 --> 00:12:17,050 亡くなった父から 言われたことがあります 177 00:12:17,050 --> 00:12:20,220 本当に少し楽をなさってください 178 00:12:20,220 --> 00:12:23,460 エミール お前はまだ分かるまい 179 00:12:23,460 --> 00:12:25,390 恐ろしいのは 燃え尽きることではない 180 00:12:25,390 --> 00:12:29,200 それを成し得ぬまま 空しく くすぶり続けることなのだ 181 00:12:29,200 --> 00:12:31,900 いっそ 早くお妃様を お迎えになって 182 00:12:31,900 --> 00:12:33,870 家庭を持たれてはいかがです? 183 00:12:33,870 --> 00:12:37,770 余一人でも大変なのに 皇妃だの皇子だのがいては 184 00:12:37,770 --> 00:12:42,350 警備する者たちの負担が 重くなって かなうまいな 185 00:12:42,350 --> 00:12:45,950 陛下 軍務尚書閣下が お見えでございます 186 00:12:45,950 --> 00:12:49,590 軍最高幹部会議で 一応の結論が出ましたので 187 00:12:49,590 --> 00:12:52,560 ご裁可を頂きたいとの ことでございます 188 00:12:52,560 --> 00:12:56,330 よかろう 隣の談話室へ通せ 189 00:12:56,330 --> 00:13:00,060 レンネンカンプの軽挙妄動を 批判する声が意外に強く 190 00:13:00,060 --> 00:13:04,230 事件の真相を究明すべしという 主張が大勢を占めました 191 00:13:04,230 --> 00:13:08,570 ただ同盟の秩序維持能力の 欠如が明らかであるからには 192 00:13:08,570 --> 00:13:12,340 いつでも軍を動かし得る準備を 整えておくべきでありましょう 193 00:13:12,340 --> 00:13:16,050 レンネンカンプを登用したのは 余の誤りであった 194 00:13:16,050 --> 00:13:19,680 わずか100日も地位を 全うすることが かなわぬとはな 195 00:13:19,680 --> 00:13:22,020 余が鎖を持ち それにつながれていてこそ 196 00:13:22,020 --> 00:13:24,950 能力を発揮できる者も いるということか 197 00:13:24,950 --> 00:13:28,790 ですが これで同盟を 完全征服する大義名分が 198 00:13:28,790 --> 00:13:30,730 できたではありませんか 199 00:13:30,730 --> 00:13:32,930 差し出口をたたくな! 200 00:13:35,060 --> 00:13:38,730 差し当たりシュタインメッツに 高等弁務官職を代行させ 201 00:13:38,730 --> 00:13:43,570 レンネンカンプの身柄返還に関し ヤン・ウェンリーと交渉させよう 202 00:13:43,570 --> 00:13:47,440 いずれにせよレンネンカンプ自身の証言を 聞く必要もある 203 00:13:47,440 --> 00:13:50,180 ヤン・ウェンリーの処断は そのあとでよかろう 204 00:13:50,180 --> 00:13:54,780 同盟政府の動向には十分注意し もし妨害をたくらむようであれば 205 00:13:54,780 --> 00:13:58,990 シュタインメッツに 必要な対抗処置を取らせるがよい 206 00:13:58,990 --> 00:14:01,090 御意 207 00:14:05,230 --> 00:14:08,900 それとも俺は 内心で期待していたのだろうか 208 00:14:08,900 --> 00:14:11,270 レンネンカンプが失敗することを 209 00:14:11,270 --> 00:14:14,240 そうかもしれない レンネンカンプの失敗によって 210 00:14:14,240 --> 00:14:16,670 争乱が生じたと知らされた時 211 00:14:16,670 --> 00:14:21,180 確かに俺の全身を高揚感が貫いた 212 00:14:21,180 --> 00:14:25,050 俺は好戦的な皇帝として 後世に知られるのだろうか 213 00:14:25,050 --> 00:14:29,890 だが今更 生き方を 変えられるはずもない 214 00:14:29,890 --> 00:14:33,720 そうだ 俺は流血を好むのではない 215 00:14:33,720 --> 00:14:37,230 堂々たる意志と 知略の衝突を好むのだ 216 00:14:37,230 --> 00:14:42,600 それだけが俺に生の充実を 教えてくれるのだから 217 00:14:42,600 --> 00:14:44,600 そうだろう? 218 00:14:53,210 --> 00:14:56,150 8月1日 ワーレン艦隊は 219 00:14:56,150 --> 00:14:59,950 調査と事後処理の部隊のみを 残して 地球をあとにし 220 00:14:59,950 --> 00:15:02,850 帝都オーディンへの帰途についた 221 00:15:02,850 --> 00:15:05,690 ユリアンらを乗せた アンデューティネス号も 222 00:15:05,690 --> 00:15:07,790 それに同行する 223 00:15:14,760 --> 00:15:18,200 例のディスクか? 唯一の土産です 224 00:15:18,200 --> 00:15:20,600 もっとも地球教が 壊滅した今となっては 225 00:15:20,600 --> 00:15:22,670 あまり価値がないかもしれません 226 00:15:22,670 --> 00:15:26,740 でも ヤン提督の判断材料の 1つになればいいと思います 227 00:15:26,740 --> 00:15:30,980 そうだな それにしても 意外にあっけなかったな 地球教も 228 00:15:30,980 --> 00:15:33,750 ええ 229 00:15:33,750 --> 00:15:36,750 本当に終わったんだろうか 230 00:15:52,600 --> 00:15:54,940 ヤン提督の一行が こちらに向かっているのは 231 00:15:54,940 --> 00:15:58,140 間違いないと思われます 我々のほうからは 232 00:15:58,140 --> 00:16:00,180 動かないほうがよいと 思われますが 233 00:16:00,180 --> 00:16:02,750 うむ ところで 234 00:16:02,750 --> 00:16:06,280 エルウィン・ヨーゼフ陛下の行方は まだ知れぬか? 235 00:16:06,280 --> 00:16:08,220 はい 申し訳ありません 236 00:16:08,220 --> 00:16:11,590 お聞き苦しいながら 弁解をさせていただければ 237 00:16:11,590 --> 00:16:14,890 このような状況では 調査も ままなりませずに… 238 00:16:14,890 --> 00:16:18,490 分かっているのだ 無理な注文だということはな 239 00:16:18,490 --> 00:16:20,490 だが… 240 00:16:23,000 --> 00:16:26,670 ゴールデンバウム王朝の復活など もはや望めぬ 241 00:16:26,670 --> 00:16:32,070 だが そのための道具として 利用された1人の子供の行く末を 242 00:16:32,070 --> 00:16:34,710 利用した側の大人の責任として 243 00:16:34,710 --> 00:16:37,610 見届けねばならんのだ はい 244 00:16:37,610 --> 00:16:40,950 ヤン提督に この戦力を引き渡すことと 245 00:16:40,950 --> 00:16:43,350 エルウィン・ヨーゼフ陛下のこと 246 00:16:43,350 --> 00:16:47,350 この2つが私の人生最後の仕事だ 247 00:17:25,690 --> 00:17:30,330 ヤン・ウェンリーという名優には 自己の限界を極めてもらいたい 248 00:17:30,330 --> 00:17:33,370 どうも本人に 名優の自覚がなさそうで 249 00:17:33,370 --> 00:17:36,140 舞台に追い上げるほうが ひと苦労だがな 250 00:17:36,140 --> 00:17:41,110 出来の悪い生徒に悩まされる 教師の心境だろ? 251 00:17:41,110 --> 00:17:44,250 実は俺は教師になろうと 思ったことがある 252 00:17:44,250 --> 00:17:46,250 宿題を出されるのは嫌いだが… 253 00:17:46,250 --> 00:17:49,420 出すのは好きなんだろ? えっ?アハハ 254 00:17:49,420 --> 00:17:51,350 宿題は山積みだ 255 00:17:51,350 --> 00:17:55,220 帝国にも同盟にも属さない 第三勢力と言えば聞こえはいいが 256 00:17:55,220 --> 00:17:57,790 軍事力だけで それが維持できるわけじゃない 257 00:17:57,790 --> 00:18:01,500 補給は?組織は?対外交渉は? 258 00:18:01,500 --> 00:18:05,030 時間が欲しい いくらなんでも早すぎた 259 00:18:05,030 --> 00:18:08,840 それにレンネンカンプの死を 公表するタイミングも問題だ 260 00:18:08,840 --> 00:18:11,510 下手をすると 帝国軍の攻撃を呼ぶことになる 261 00:18:11,510 --> 00:18:16,180 それにしても貴官は 乏しい情報と 変化の激しい状況から 262 00:18:16,180 --> 00:18:19,920 よく政府の悪辣な企みを 看破できたものだ 263 00:18:19,920 --> 00:18:23,850 さあ あるいは政府はあそこまでは 考えていなかったかもしれん 264 00:18:23,850 --> 00:18:28,460 俺の妄想に過ぎなかった ということも あり得るな 265 00:18:28,460 --> 00:18:31,260 おい 貴官 今更… 266 00:18:31,260 --> 00:18:35,160 そう 今更 事実の真偽を 詮索したところで始まらん 267 00:18:35,160 --> 00:18:40,370 それに俺が同盟政府の悪意と 陰謀を信じているのは確かだ 268 00:18:40,370 --> 00:18:45,010 あの時も今もな だから俺は別に 貴官をだましたわけじゃないぞ 269 00:18:45,010 --> 00:18:47,910 あおりはしたがな 270 00:18:47,910 --> 00:18:50,550 こんなことになるんだったら イゼルローン要塞を 271 00:18:50,550 --> 00:18:52,480 手放すんじゃなかったな 272 00:18:52,480 --> 00:18:56,890 難攻不落の要塞を そのまま 民主共和制の根拠地として 273 00:18:56,890 --> 00:18:59,360 やがて帝国の中で 自治権を認めさせることも 274 00:18:59,360 --> 00:19:03,030 できたかもしれない 簡単ではないだろうが 275 00:19:03,030 --> 00:19:05,760 後悔しているのか? こうなったことを 276 00:19:05,760 --> 00:19:09,330 とんでもない 俺は30にもならぬ青二才の身で 277 00:19:09,330 --> 00:19:11,730 閣下などと 呼ばれるようになったのです 278 00:19:11,730 --> 00:19:14,240 これもヤン提督の 旗下にいたおかげ 279 00:19:14,240 --> 00:19:19,070 あるいは そのせいです 責任は取っていただかないとね 280 00:19:19,070 --> 00:19:21,010 自治権か 281 00:19:21,010 --> 00:19:24,510 かつて帝国内で自治権を確保した フェザーン人たちの 282 00:19:24,510 --> 00:19:28,250 英知と機略に あやかりたいものだ 283 00:19:28,250 --> 00:19:31,220 夫人のほうは 何をやっているんだ?ずっと 284 00:19:31,220 --> 00:19:35,720 我々とメルカッツ独立艦隊の データを整理しているようですよ 285 00:19:35,720 --> 00:19:39,260 ヤン提督が いつでも 作戦立案ができるようにと 286 00:19:39,260 --> 00:19:42,800 なるほど 人には向き不向きがあるからな 287 00:19:42,800 --> 00:19:46,400 料理などに精を出すより そのほうが亭主のためだろう 288 00:19:46,400 --> 00:19:48,770 問題は その亭主のほうだな 289 00:19:48,770 --> 00:19:51,140 せっかく舞台に 押し上げてやったのに 290 00:19:51,140 --> 00:19:54,840 いまだ明確な方針も出さずに 昼寝ばかりしているようじゃ 291 00:19:54,840 --> 00:19:58,580 観客からブーイングが 出ようというものだが 292 00:19:58,580 --> 00:20:01,780 こんな事態に巻き込まれたと すねているんじゃないか? 293 00:20:01,780 --> 00:20:04,420 フェザーン… ボリス・コーネフを介して 294 00:20:04,420 --> 00:20:08,190 独立商人たちの力を 借りられないだろうか 295 00:20:08,190 --> 00:20:12,060 あの夫妻には 正当防衛意識はあるが 296 00:20:12,060 --> 00:20:15,360 その先を考えていないのが 問題だな 297 00:20:15,360 --> 00:20:18,230 もっと野心を持ってもらわないと 298 00:20:18,230 --> 00:20:22,710 それにはユリアンらの地球からの 帰還を迎えなくてはならないし 299 00:20:22,710 --> 00:20:25,640 そのためにも 結局 根拠地が必要になる 300 00:20:25,640 --> 00:20:27,640 メルカッツ提督と合流し 301 00:20:27,640 --> 00:20:31,150 指揮系統を一本化した共和軍を 作るのが第一だが 302 00:20:31,150 --> 00:20:34,250 行き着く問題は やはりそれだな 303 00:20:36,950 --> 00:20:41,660 しかしまあ 反乱部隊などと 大層に呼ばれているが 304 00:20:41,660 --> 00:20:45,760 俺の見るところ 単なる家出息子の集団に過ぎんね 305 00:20:48,500 --> 00:20:52,500 フレデリカ 紅茶を1杯 306 00:20:55,300 --> 00:21:00,040 2ヵ月 たった2ヵ月 予定どおりなら 307 00:21:00,040 --> 00:21:03,840 あと5年は働かないで 生活できるはずだったのにな 308 00:21:05,850 --> 00:21:07,850 ああ… 309 00:21:07,850 --> 00:21:10,390 大本営をフェザーンに移す 310 00:21:10,390 --> 00:21:13,290 オーディンでは同盟領に遠すぎる 311 00:21:13,290 --> 00:21:16,190 余の代理として オーディンを統べる役は 312 00:21:16,190 --> 00:21:19,190 国務尚書マリーンドルフ伯に 委ねる 313 00:21:19,190 --> 00:21:22,560 他の閣僚のうち 軍務尚書と工部尚書は 314 00:21:22,560 --> 00:21:26,000 余と共にフェザーンに その執務室を移すこと 315 00:21:26,000 --> 00:21:29,840 上級大将以上の 最高級武官も同様である 316 00:21:29,840 --> 00:21:32,270 ただし憲兵総監と 317 00:21:32,270 --> 00:21:35,940 首都防衛司令官を兼ねる ケスラー上級大将 318 00:21:35,940 --> 00:21:37,880 新たに後方総司令官として 319 00:21:37,880 --> 00:21:42,150 旧帝国領の軍権を掌握する メックリンガー上級大将 320 00:21:42,150 --> 00:21:47,660 地球討伐より帰還途上の ワーレン上級大将の3名は除く 321 00:21:47,660 --> 00:21:49,990 移動は年内の完遂を目標とし 322 00:21:49,990 --> 00:21:53,900 余自身は9月17日に帝都を発する 323 00:21:53,900 --> 00:21:56,530 それに先立ち ミッターマイヤー元帥が 324 00:21:56,530 --> 00:21:59,270 8月30日までに進発 325 00:21:59,270 --> 00:22:02,100 他の提督たちは余と同行すること 326 00:22:02,100 --> 00:22:05,140 戦いの予兆に高揚しておられる 327 00:22:05,140 --> 00:22:09,540 この方の人生には やはり敵手が必要なのかしら 328 00:22:14,380 --> 00:22:16,450 あるいは この方はあまりに早く 329 00:22:16,450 --> 00:22:19,220 頂点を極められて しまったのかもしれない 330 00:22:19,220 --> 00:22:22,520 いいえ それとも 5世紀ほど昔に生まれて 331 00:22:22,520 --> 00:22:26,400 ルドルフ大帝のように 巨大で 全否定の対象となり得るような 332 00:22:26,400 --> 00:22:29,630 敵手と出会えば よかったのかもしれない 333 00:22:29,630 --> 00:22:31,600 フロイライン 謹慎している間に 334 00:22:31,600 --> 00:22:34,000 少し字体が 固くなったのではないか? 335 00:22:34,000 --> 00:22:37,300 あっ はい 申し訳ございません 336 00:22:40,780 --> 00:22:43,580 最後に付け加えてもらおう 337 00:22:43,580 --> 00:22:47,980 「なお このフェザーン移転は 一時的なものにあらず」とな 338 00:22:52,390 --> 00:22:57,030 8月8日 カイザー・ラインハルトの 布告が発せられた 339 00:22:57,030 --> 00:23:01,630 フェザーンへの遷都の意向が 公にされたのは これが最初である 340 00:23:01,630 --> 00:23:05,000 同時にそれは 帝国と同盟の中間に位置する 341 00:23:05,000 --> 00:23:07,270 フェザーンの立地を考えれば 342 00:23:07,270 --> 00:23:10,840 同盟領の完全併呑を 前提にしたものであることは 343 00:23:10,840 --> 00:23:13,340 おのずから明らかであった 344 00:23:16,180 --> 00:23:18,580 フェザーンか なるほど 345 00:23:18,580 --> 00:23:21,480 あの方のお考えは 我々とは次元が違う 346 00:23:21,480 --> 00:23:25,150 確かに かの地は新領土を 併せ統治するにふさわしい 347 00:23:25,150 --> 00:23:27,160 うむ 348 00:23:27,160 --> 00:23:29,760 あの女はどうするだろう 349 00:23:29,760 --> 00:23:33,660 あの女 エルフリーデは 350 00:23:33,660 --> 00:23:36,930 それにしても陛下の誤りは レンネンカンプではなく 351 00:23:36,930 --> 00:23:38,970 オーベルシュタインを 用いたことだ 352 00:23:38,970 --> 00:23:42,740 今回のことも裏で奴が 糸を引いているのではないか 353 00:23:42,740 --> 00:23:45,640 奴め 自分では 忠臣のつもりかもしれんが 354 00:23:45,640 --> 00:23:49,380 このままだと奴と波長の合わぬ 人材を次々と排除して 355 00:23:49,380 --> 00:23:52,180 ついには王朝の土台に ヒビを入れるぞ 356 00:23:52,180 --> 00:23:54,180 そうだな 俺もそう思う 357 00:23:54,180 --> 00:23:57,920 ことに気になるのは皇帝陛下と オーベルシュタインの間に 358 00:23:57,920 --> 00:24:00,190 この頃 亀裂が見られることだ 359 00:24:00,190 --> 00:24:03,990 もし奴と波長が合わなくなった時 どうなるか 360 00:24:03,990 --> 00:24:07,860 我ながら この心配は奇妙だな なろうことなら俺自身 361 00:24:07,860 --> 00:24:11,470 何者の下にもつかない地位を 望んでいるのではなかったのか? 362 00:24:11,470 --> 00:24:13,840 いや だがそれには やり方がある 363 00:24:13,840 --> 00:24:15,770 マイン・カイザーともあろう方が 364 00:24:15,770 --> 00:24:18,470 オーベルシュタインごときの 傀儡に成り下がったのでは 365 00:24:18,470 --> 00:24:21,810 興ざめも はなはだしいというものだ 366 00:24:21,810 --> 00:24:24,250 この年 8月13日 367 00:24:24,250 --> 00:24:27,820 イゼルローン回廊に近い 1つの恒星系自治体が 368 00:24:27,820 --> 00:24:31,750 帝国に屈した同盟からの 分離独立を宣言した 369 00:24:31,750 --> 00:24:33,950 エル・ファシルである 370 00:26:42,320 --> 00:26:45,220 同盟への復帰の可能性を 考えるヤンは 371 00:26:45,220 --> 00:26:49,730 独立を宣言したエル・ファシルの 招きに応じることをためらう 372 00:26:49,730 --> 00:26:53,560 その間にも帝国軍は 大本営をフェザーンに移し 373 00:26:53,560 --> 00:26:57,970 同盟領再侵攻の準備を 着々と整えつつあった 374 00:26:57,970 --> 00:27:03,770 次回「銀河英雄伝説」 第65話「すべての旗に背いて」 375 00:27:03,770 --> 00:27:07,170 銀河の歴史が また1ページ