1 00:01:33,200 --> 00:01:35,700 オーディンを訪れていた ユリアンらは 2 00:01:35,700 --> 00:01:38,110 カイザー・ラインハルトの 演説を聞き 3 00:01:38,110 --> 00:01:40,910 ヤン・ウェンリーの 置かれた事態を知ると 4 00:01:40,910 --> 00:01:43,380 直ちに同盟領に戻ろうとしたが 5 00:01:43,380 --> 00:01:47,480 その矢先に 思いもよらぬ事態に 巻き込まれていた 6 00:01:51,690 --> 00:01:54,920 どうだった? 7 00:01:54,920 --> 00:01:57,730 宿泊したホテルで 盗難事件が起こり 8 00:01:57,730 --> 00:02:00,630 ユリアンらの荷物も 盗まれてしまったのだ 9 00:02:00,630 --> 00:02:03,230 別にユリアンらを 狙ったものではなく 10 00:02:03,230 --> 00:02:07,840 単純な窃盗事件ではあるのだが 盗まれた荷物の中に 11 00:02:07,840 --> 00:02:11,410 地球教本部で手に入れた 記録ディスクが入っていたことが 12 00:02:11,410 --> 00:02:13,740 事態を複雑にしていた 13 00:02:13,740 --> 00:02:15,680 万一のことを考えると 14 00:02:15,680 --> 00:02:18,710 帝国の官憲の手に 委ねるわけにもいかず 15 00:02:18,710 --> 00:02:20,850 慣れない土地で 独自に 16 00:02:20,850 --> 00:02:24,190 不慣れな捜査をすることの 困難さを考えると 17 00:02:24,190 --> 00:02:27,490 絶望感を覚えずには いられなかった 18 00:02:32,960 --> 00:02:38,700 この間にも帝国軍は続々と 同盟領への侵入を果たしている 19 00:02:38,700 --> 00:02:42,200 その中団を固める エルンスト・フォン・アイゼナッハは 20 00:02:42,200 --> 00:02:45,810 極端に無口で 「沈黙提督」の異名を持つ 21 00:02:45,810 --> 00:02:51,250 そのために 厳格で気難しいとの評判である 22 00:02:51,250 --> 00:02:55,120 いいか 提督が指を一度鳴らしたら コーヒーを持参すること 23 00:02:55,120 --> 00:02:57,190 決して4分以上かけないように 24 00:02:57,190 --> 00:03:01,590 指を二度鳴らしたらウイスキーだ くれぐれも間違えんようにな 25 00:03:06,260 --> 00:03:08,260 3分50秒後 26 00:03:15,970 --> 00:03:18,870 以来 この出征中 アイゼナッハは 27 00:03:18,870 --> 00:03:23,470 1杯のコーヒーと2杯のコーヒーに 不自由しなくなった 28 00:03:33,360 --> 00:03:35,360 これは… 29 00:03:37,990 --> 00:03:40,300 憲兵くずれ? そう 30 00:03:40,300 --> 00:03:44,300 新帝国になってから 憲兵隊の綱紀粛正が進んで 31 00:03:44,300 --> 00:03:47,400 クビにされた奴らが たくさんいるのさ 32 00:03:47,400 --> 00:03:49,340 大概は汚職をしたり 33 00:03:49,340 --> 00:03:52,540 市民に恐喝まがいに たかっていたような連中だが 34 00:03:52,540 --> 00:03:56,410 そういった奴らほど 裏の世界にも通じているからな 35 00:03:56,410 --> 00:03:59,950 しかし どうやって? 36 00:03:59,950 --> 00:04:02,850 国家としてのフェザーンが 滅びたからといって 37 00:04:02,850 --> 00:04:05,850 フェザーン商人が 絶滅したわけじゃない 38 00:04:05,850 --> 00:04:08,460 このオーディンは 最大の市場だからな 39 00:04:08,460 --> 00:04:12,460 裏にも表にもフェザーンの勢力は 張り巡らされているのさ 40 00:04:12,460 --> 00:04:17,030 なるほど さすがは 元 弁務官事務所の書記官ですな 41 00:04:17,030 --> 00:04:19,740 嫌なことを思い出させるなよ 42 00:04:19,740 --> 00:04:23,040 それはそうと ポプランの野郎は どこへ行ったんだ? 43 00:04:25,370 --> 00:04:29,850 なんだ あれきり帰ってないのか? お気楽な野郎だな 44 00:04:29,850 --> 00:04:32,550 何者だ 貴様! イヤーッ 45 00:04:32,550 --> 00:04:34,480 またか! 違うの やめて 46 00:04:34,480 --> 00:04:37,280 誰なんだ あいつは! 違うんだってば… 47 00:04:41,820 --> 00:04:43,760 待て! 48 00:04:43,760 --> 00:04:46,030 あなた やめて! 49 00:04:46,030 --> 00:04:48,800 亭主が帰ってくるとはな 50 00:04:48,800 --> 00:04:52,070 この間男 待て! 野郎 戦場に出てこい 51 00:04:52,070 --> 00:04:55,000 そうしたら相手になってやらあ… うわあ! 52 00:04:55,000 --> 00:04:57,900 とはいうものの ここは自重 自重 53 00:05:00,480 --> 00:05:04,880 まったく ただでさえ厄介な時に 余計なトラブルを起こしやがって 54 00:05:04,880 --> 00:05:08,080 まあ そう言うなって せっかくオーディンまで来たんだから 55 00:05:08,080 --> 00:05:11,850 やっぱり出会いは大切にしないと なあ? 56 00:05:11,850 --> 00:05:14,390 えっ… まあ 57 00:05:14,390 --> 00:05:17,290 人は運命には逆らえませんから 58 00:05:17,290 --> 00:05:19,760 まったく お前らは… 59 00:05:19,760 --> 00:05:23,060 とにかく これ以上 厄介なことが起こらないうちに 60 00:05:23,060 --> 00:05:25,670 出発した方が よさそうですね 61 00:05:25,670 --> 00:05:28,940 それはいいが ハイネセンに 戻っても仕方がないだろう 62 00:05:28,940 --> 00:05:31,740 どうする ユリアン? それだ 63 00:05:31,740 --> 00:05:35,680 ヤンの居所が分からないでは 目的地の定めようがない 64 00:05:35,680 --> 00:05:37,680 ましてフェザーンまではともかく 65 00:05:37,680 --> 00:05:41,420 同盟領に入るには 帝国軍の目を盗まなくちゃならん 66 00:05:41,420 --> 00:05:44,250 あちこち訪ね歩くってわけには いかんぞ 67 00:05:44,250 --> 00:05:47,090 目的地は はっきりしています え? 68 00:05:47,090 --> 00:05:49,020 ヤン提督が 今 どこにいらっしゃるかは 69 00:05:49,020 --> 00:05:51,030 僕にも分かりませんが 70 00:05:51,030 --> 00:05:53,860 いずれ必ず行かれる所は 分かっています 71 00:05:53,860 --> 00:05:58,430 どこだ?それは それは… 72 00:05:58,430 --> 00:06:03,310 自由惑星同盟軍 総参謀長 チュン・ウー・チェン大将は 73 00:06:03,310 --> 00:06:06,580 老病のビュコック司令長官に 代わって 74 00:06:06,580 --> 00:06:10,450 帝国軍迎撃の準備を 急速に整えていたが 75 00:06:10,450 --> 00:06:14,080 同時に相反する課題も こなさなくてはならなかった 76 00:06:14,080 --> 00:06:16,020 この日 彼が呼び寄せたのは 77 00:06:16,020 --> 00:06:19,520 その目的のために 欠かせぬ人物たちだった 78 00:06:29,430 --> 00:06:32,730 遠路ご苦労だった まあ かけてください 79 00:06:40,580 --> 00:06:44,450 わざわざ小官らを それぞれの 任地から呼び寄せられたのは 80 00:06:44,450 --> 00:06:49,750 どのような ご意図からでしょうか 総参謀長閣下 81 00:06:49,750 --> 00:06:55,090 貴官らも 先の カイザー・ラインハルトの布告は聞いたと思う 82 00:06:55,090 --> 00:06:58,860 あの中で述べられた事情は ほぼ 事実に即していると言っていい 83 00:06:58,860 --> 00:07:02,730 そのような事情でヤン提督らは ハイネセンを脱出して 84 00:07:02,730 --> 00:07:07,040 現在は いずこかに潜伏中だ 85 00:07:07,040 --> 00:07:09,100 そこで肝心の用件だ 86 00:07:09,100 --> 00:07:13,940 ヤン提督を捜し出し この書類を彼に手渡してほしい 87 00:07:13,940 --> 00:07:17,840 それは? 譲渡契約書だよ 88 00:07:25,220 --> 00:07:27,160 見てのとおりだ 89 00:07:27,160 --> 00:07:32,930 我が宇宙艦隊のうちから5560隻を ヤン・ウェンリー氏に譲渡する 90 00:07:32,930 --> 00:07:35,400 貴官らには書類とともに 商品そのものも 91 00:07:35,400 --> 00:07:37,370 運搬してもらいたい 92 00:07:37,370 --> 00:07:42,140 法令上の手続きは 終了しているから心配いらない 93 00:07:42,140 --> 00:07:46,840 ですが わざわざこのような書類を 作る必要があるのですか 94 00:07:46,840 --> 00:07:51,180 形式も度が過ぎるように 小官には思われますが 95 00:07:51,180 --> 00:07:53,180 分からないかね? 96 00:07:57,020 --> 00:07:59,120 無論 ジョークだよ 97 00:08:01,890 --> 00:08:04,830 ジョークとおっしゃるなら それで結構ですが 98 00:08:04,830 --> 00:08:08,960 帝国軍に対して 戦力を糾合せねばならない時に 99 00:08:08,960 --> 00:08:11,870 これだけの艦艇と物資を 割いたのでは 100 00:08:11,870 --> 00:08:15,640 帝国軍の侵攻に 対処し得ないのではありませんか 101 00:08:15,640 --> 00:08:18,840 どうせ糾合しても対処し得ないよ 102 00:08:21,440 --> 00:08:23,810 と おっしゃいましても戦わずして 103 00:08:23,810 --> 00:08:27,020 首都を明け渡す おつもりはないでしょう 閣下 104 00:08:27,020 --> 00:08:29,380 そう そんなつもりはない 105 00:08:29,380 --> 00:08:33,290 ビュコック長官と私は 多少の 悪あがきをしてみるつもりでいる 106 00:08:33,290 --> 00:08:36,690 しかし それでは 自殺行為ではありませんか 107 00:08:36,690 --> 00:08:40,560 いっそ総参謀長閣下も ビュコック司令長官閣下も 108 00:08:40,560 --> 00:08:43,470 小官らと同行なさっては いかがです? 109 00:08:43,470 --> 00:08:45,700 めったなことを言うものではない 110 00:08:45,700 --> 00:08:48,940 第一 我々自身 行くと決めたわけではないのだぞ 111 00:08:48,940 --> 00:08:51,540 私は そのつもりだがね 112 00:08:53,610 --> 00:08:57,510 行ってもらえるかね フィッシャー提督 113 00:08:57,510 --> 00:08:59,750 喜んで 閣下 114 00:08:59,750 --> 00:09:03,080 ムライ中将 本心を偽っている余裕はない 115 00:09:03,080 --> 00:09:07,380 時間を浪費することなく 最善の道を行くとしよう 116 00:09:22,440 --> 00:09:24,940 彼らは承知したかね? 117 00:09:24,940 --> 00:09:30,650 はい スール少佐とともに 早速 出発準備にかからせました 118 00:09:30,650 --> 00:09:33,950 何から何まで 貴官に任せてしまって 119 00:09:33,950 --> 00:09:36,280 苦労をかけるな 120 00:09:36,280 --> 00:09:42,520 何をおっしゃいます 司令長官あっての宇宙艦隊です 121 00:09:42,520 --> 00:09:47,800 ランテマリオ会戦で敗れた時 わしは死ぬべき身だった 122 00:09:47,800 --> 00:09:51,170 貴官に説得されて 永らえることになったが 123 00:09:51,170 --> 00:09:56,300 結局のところ 命日が半年ほど 移動するだけのことだったな 124 00:09:56,300 --> 00:10:00,180 今となってみれば 少し出過ぎた マネだったかもしれません 125 00:10:00,180 --> 00:10:02,240 お許しください いや 126 00:10:02,240 --> 00:10:06,110 おかげで多少は 女房孝行ができたが 127 00:10:06,110 --> 00:10:08,620 貴官こそ 妻子はどうする? 128 00:10:08,620 --> 00:10:14,190 ご心配なく ムライ中将らに託して ヤンの元へ送ることにしました 129 00:10:14,190 --> 00:10:18,130 私はこれでもエゴイストでして 家族のことが気がかりなんです 130 00:10:18,130 --> 00:10:20,130 それはよかった 131 00:10:40,320 --> 00:10:44,220 ヤン・ウェンリーは 何かと欠点の多い男ですが 132 00:10:44,220 --> 00:10:48,060 何者も非難し得ない美点を 1つ持っています 133 00:10:48,060 --> 00:10:51,490 それは民主国家の軍隊が 存在する意義は 134 00:10:51,490 --> 00:10:57,000 民間人の生命を守ることにあると いう建前を本気で信じ込んでいて 135 00:10:57,000 --> 00:11:00,470 しかも一度ならず 実行しているということです 136 00:11:00,470 --> 00:11:03,000 そう 貴官の言うとおりだ 137 00:11:03,000 --> 00:11:04,940 エル・ファシルでも そうだった 138 00:11:04,940 --> 00:11:08,380 イゼルローン要塞を放棄する時も そうだった 139 00:11:08,380 --> 00:11:11,780 1人として民間人に 犠牲を出しておらん 140 00:11:11,780 --> 00:11:17,620 歴史はヤンをカイザー・ラインハルトに匹敵する 戦争芸術家として記憶するだろう 141 00:11:17,620 --> 00:11:23,890 だが それ以上に後世に向かって 語らねばならぬことがある 142 00:11:23,890 --> 00:11:27,160 もっとも その役目は わしらが負うものではない 143 00:11:27,160 --> 00:11:30,870 人はそれぞれ 負うべきものが異なるしな 144 00:11:30,870 --> 00:11:34,070 はい ですが ヤンの その美点が 145 00:11:34,070 --> 00:11:37,310 彼自身の負うべき役目に どんな関わりを持ってくるか… 146 00:11:37,310 --> 00:11:40,940 いや 貴官の言いたいことは 分かるつもりだ 147 00:11:40,940 --> 00:11:42,880 ヤンが敗北するとしたら 148 00:11:42,880 --> 00:11:47,080 それはカイザー・ラインハルトの 偉大な天才によってではない 149 00:11:47,080 --> 00:11:50,880 ヤン自身の 理想へのこだわりによってだ 150 00:11:52,890 --> 00:11:54,820 バーミリオン会戦の時 151 00:11:54,820 --> 00:12:00,630 ヤンは政府の停戦命令を 無視すべきだったのだ 152 00:12:00,630 --> 00:12:02,560 言ってはならんことだが 153 00:12:02,560 --> 00:12:06,060 彼自身のために そうすべきだったのだ 154 00:12:09,340 --> 00:12:13,210 当のヤンたちは補給基地 ダヤン・ハーンを引き払い 155 00:12:13,210 --> 00:12:17,410 各地を転々としながら 物資と人員を補充していたが 156 00:12:17,410 --> 00:12:20,910 さすがに それも 限界に達しつつあった 157 00:12:24,550 --> 00:12:29,690 おい 金がないぞ これから どうするか決めてくれ 158 00:12:29,690 --> 00:12:33,630 さしあたり 手元には 魔法のランプはないんですがね 159 00:12:33,630 --> 00:12:37,100 だろうと思って 1つ提案を持ってきた 160 00:12:37,100 --> 00:12:40,370 お前さんの悪友の ボリス・コーネフの人脈を使って 161 00:12:40,370 --> 00:12:45,070 旧フェザーン商人から 今後の資金を 借りたらどうかと思うんだが 162 00:12:45,070 --> 00:12:47,880 借りた金は 返さなくてはなりませんが 163 00:12:47,880 --> 00:12:51,080 現在では返す方策が 立ちようがないでしょう 164 00:12:51,080 --> 00:12:53,850 なに 借りてしまえば こちらのものだ 165 00:12:53,850 --> 00:12:57,720 しかし第一 我々のような流亡の私兵集団に 166 00:12:57,720 --> 00:13:01,660 資金を提供するなど 投機の対象にもならないでしょう 167 00:13:01,660 --> 00:13:05,560 利にさといフェザーン人が 承知するとも思えませんね 168 00:13:05,560 --> 00:13:07,800 いや 俺たちが将来 169 00:13:07,800 --> 00:13:11,600 カイザー・ラインハルトを 打倒する可能性ありと見なせば 170 00:13:11,600 --> 00:13:15,340 連中は必ず 将来に備えて投資してくる 171 00:13:15,340 --> 00:13:18,070 そして一度 投資すれば それを無駄にしないためにも 172 00:13:18,070 --> 00:13:21,310 続けて投資せざるを得なくなる 173 00:13:21,310 --> 00:13:25,080 まず最初の投資が その後の呼び水にもなるわけだ 174 00:13:25,080 --> 00:13:28,520 それは分かりますが 可能性だけを言い立てても 175 00:13:28,520 --> 00:13:31,790 フェザーン人を たらし込むことができますかね 176 00:13:31,790 --> 00:13:35,560 美人局の成功は 女性の魅力次第だな 177 00:13:35,560 --> 00:13:37,560 女性の魅力? 178 00:13:43,100 --> 00:13:46,000 フェザーン人を迷わせる 色香ある美女 179 00:13:46,000 --> 00:13:50,510 つまりイゼルローン要塞だ そのとおり 180 00:13:50,510 --> 00:13:53,310 そのためにも エル・ファシルへ行くか 181 00:14:00,820 --> 00:14:05,390 その頃 同盟の命運を その舌先にかけた政府特使 182 00:14:05,390 --> 00:14:08,890 オーデッツの一行は フェザーンに到着していた 183 00:14:08,890 --> 00:14:11,830 しかしミッターマイヤーが 予想したとおり 184 00:14:11,830 --> 00:14:14,360 カイザー・ラインハルトは 一顧だにせず 185 00:14:14,360 --> 00:14:17,060 面会すら実現しなかった 186 00:14:43,060 --> 00:14:47,330 確かに それが功を奏すれば 帝国軍は分裂し 187 00:14:47,330 --> 00:14:51,600 うまくすれば内戦に突入して 外征どころではなくなるだろう 188 00:14:51,600 --> 00:14:54,540 だが その情報は確かなのか? 189 00:14:54,540 --> 00:14:56,770 これは異なことを おっしゃられる 190 00:14:56,770 --> 00:15:01,610 事が事実であろうとなかろうと 要はウワサを立てることです 191 00:15:01,610 --> 00:15:06,450 それが権力者の耳に届けば 必ずや疑心暗鬼を生じましょう 192 00:15:06,450 --> 00:15:08,450 権力者というものは常に 193 00:15:08,450 --> 00:15:12,120 潜在的な部下の謀反の脅威を 感じているもの 194 00:15:12,120 --> 00:15:15,760 ましてやローエングラム王朝は 急速に勃興し 195 00:15:15,760 --> 00:15:18,330 まだ その基盤は脆弱そのものです 196 00:15:18,330 --> 00:15:22,200 隙の生じる可能性は 大きいと申せましょう 197 00:15:22,200 --> 00:15:24,670 なるほど… 198 00:15:24,670 --> 00:15:28,400 あとは そのウワサにどれだけの 真実味が与えられるかが 199 00:15:28,400 --> 00:15:31,940 鍵でしょうな 特使殿はキャスター出身とか? 200 00:15:31,940 --> 00:15:35,180 世論操作は お手のものと聞いておりますが 201 00:15:35,180 --> 00:15:38,580 よかろう やってみて損はない 202 00:15:46,590 --> 00:15:50,360 見たかよ あっと言う間に 工事が進んで 俺たちのフェザーンが 203 00:15:50,360 --> 00:15:53,330 どんどんと帝国カラーに 塗り替えられていくじゃねえか 204 00:15:53,330 --> 00:15:58,530 吸収され 消化され 次は排泄される番さ 205 00:15:58,530 --> 00:16:01,940 文明人の知恵が 野蛮人の暴力に負けたんだ 206 00:16:01,940 --> 00:16:05,210 相手が暴力に訴えることを 洞察できなかったとは 207 00:16:05,210 --> 00:16:08,010 大した知恵だよな 何だと! 208 00:16:08,010 --> 00:16:10,310 なんだ やるか! やめろ やめろ 209 00:16:10,310 --> 00:16:13,710 フェザーン人同士が争っても つまらんぞ 210 00:16:15,780 --> 00:16:18,650 これというのも 右を見ても左を見ても 211 00:16:18,650 --> 00:16:21,560 帝国人の不愉快な面ばかりが 目につくからだ 212 00:16:21,560 --> 00:16:23,490 これじゃ イラつきたくもなるさ 213 00:16:23,490 --> 00:16:26,390 それにしても わずか1年足らずの間に 214 00:16:26,390 --> 00:16:29,060 何という変わりようだ それさ 215 00:16:29,060 --> 00:16:33,500 あのカイザーの構想力と実行力は 認めざるを得んじゃないか 216 00:16:33,500 --> 00:16:36,400 俺たちは負けたんだ それを認めた上で 217 00:16:36,400 --> 00:16:40,310 前向きに考えようじゃないか どうしようって言うんだ? 218 00:16:40,310 --> 00:16:44,450 元々フェザーン人の長所は 与えられた状況の中で 219 00:16:44,450 --> 00:16:47,080 最大の利益を 上げることにあったはずだ 220 00:16:47,080 --> 00:16:49,980 その意味じゃ これは むしろチャンスじゃないか 221 00:16:49,980 --> 00:16:52,950 そうさ 豪商たちの既得権は失われ 222 00:16:52,950 --> 00:16:55,690 みんなが同じスタートラインに 立ったんだぜ 223 00:16:55,690 --> 00:17:00,090 しかも建設ラッシュと同盟領への 侵攻に伴う軍事物資の調達で 224 00:17:00,090 --> 00:17:02,360 特需ってやつが きてるじゃないか 225 00:17:02,360 --> 00:17:04,700 これは ひと旗 揚げるチャンスだぜ 226 00:17:04,700 --> 00:17:10,400 そうは言ってもな そこまでは割り切れんな 227 00:17:10,400 --> 00:17:14,040 12月2日 この作戦における最初の砲火は 228 00:17:14,040 --> 00:17:17,140 ミッターマイヤー艦隊によって 放たれた 229 00:17:25,150 --> 00:17:29,390 この惑星ルジアーナにおける 同盟軍 造兵工廠では 230 00:17:29,390 --> 00:17:34,160 バーラトの和約に抵触しない 巡航艦や 駆逐艦が建造されていたが 231 00:17:34,160 --> 00:17:37,570 それ以上に その地理上の位置と生産力は 232 00:17:37,570 --> 00:17:40,870 戦略上 看過できないものであった 233 00:17:42,840 --> 00:17:46,070 閣下 敵は間もなく 衛星軌道にまで達しますぞ 234 00:17:46,070 --> 00:17:50,910 分かっておる 航行できる艦は 一隻残らず発進させよ 235 00:17:50,910 --> 00:17:54,620 兵員も できる限り収容してな 閣下… 236 00:17:54,620 --> 00:17:59,120 いいか 貴官が指揮を執って 直ちに この宙域を離脱するのだ 237 00:17:59,120 --> 00:18:01,390 そして ヤン・ウェンリー提督と合流し 238 00:18:01,390 --> 00:18:04,230 その指揮に従え え… 239 00:18:04,230 --> 00:18:06,830 艦隊指令部も承知している 240 00:18:06,830 --> 00:18:10,130 これが私からの最後の命令だ それでは閣下は… 241 00:18:10,130 --> 00:18:15,440 私は ここで最大限の抵抗を試みて 多少なりとも時間を稼ぐ 242 00:18:15,440 --> 00:18:20,270 その間に離脱するのだ いいな? 閣下… 243 00:18:20,270 --> 00:18:22,770 行け 時間がない 244 00:18:34,360 --> 00:18:38,660 全対空砲火 開け 敵艦を一隻たりとも通すな! 245 00:19:15,000 --> 00:19:16,960 同盟軍は激しく抵抗し 246 00:19:16,960 --> 00:19:22,840 司令官 バウンスゴール技術中将以下 残った全員が玉砕した 247 00:19:22,840 --> 00:19:27,910 離脱した艦も帝国軍の追撃を 受けて 数多くの犠牲を出したが 248 00:19:27,910 --> 00:19:31,780 およそ半数は脱出に成功し 兵員と物資を集めながら 249 00:19:31,780 --> 00:19:36,620 ヤンのイレギュラーズに合流すべく エル・ファシルへ向かうことになる 250 00:19:36,620 --> 00:19:39,290 このようにヤンが エル・ファシルに向かうのは 251 00:19:39,290 --> 00:19:42,820 いわば当然の帰結と 誰もが考えていた 252 00:19:42,820 --> 00:19:45,360 だが実際にヤン・イレギュラーズが 253 00:19:45,360 --> 00:19:47,860 エル・ファシル星系に 姿を現したのは 254 00:19:47,860 --> 00:19:50,400 12月9日のことである 255 00:19:50,400 --> 00:19:52,330 実のところ ヤンは 256 00:19:52,330 --> 00:19:56,970 エル・ファシルの独立革命政府と 合流するのは本意ではなかった 257 00:19:56,970 --> 00:20:01,510 成算もなく 情熱のままに激発した エル・ファシルの行為は 258 00:20:01,510 --> 00:20:05,680 むしろ暴挙に類するものと ヤンには思えたからである 259 00:20:05,680 --> 00:20:08,020 だが現実問題として 260 00:20:08,020 --> 00:20:11,990 反帝国の共和主義者を 糾合するための第一歩として 261 00:20:11,990 --> 00:20:15,760 またイゼルローン要塞攻略の 足がかりとして 262 00:20:15,760 --> 00:20:19,060 本拠地が 必要となっていたのだった 263 00:20:28,340 --> 00:20:31,240 お久しぶりですな 覚えていてくださると 264 00:20:31,240 --> 00:20:33,910 うれしいのだが あっ はあ… 265 00:20:33,910 --> 00:20:36,480 11年前 当時のヤン中尉が 266 00:20:36,480 --> 00:20:41,680 この星から民間人を脱出させた時 協力させていただいた者です 267 00:20:41,680 --> 00:20:43,650 そりゃ どうも 268 00:20:43,650 --> 00:20:46,890 失礼ですが ドクター・ロムスキーではありませんか? 269 00:20:46,890 --> 00:20:51,730 そうですが… ヤン夫人ですな あっ もしかして 270 00:20:51,730 --> 00:20:54,960 はい 私も当時 この惑星にいました 271 00:20:54,960 --> 00:20:58,830 体を壊していた母を ドクターには 何度か診ていただきましたわ 272 00:20:58,830 --> 00:21:05,410 覚えていますよ そうですか あの時の女の子が そうですか 273 00:21:05,410 --> 00:21:08,010 悪い人ではなさそうだが 274 00:21:08,010 --> 00:21:10,010 さあ さあ 275 00:21:19,620 --> 00:21:23,020 ああ これだ これだから嫌だったんだ 276 00:21:23,020 --> 00:21:25,460 革命政権の連中としては 277 00:21:25,460 --> 00:21:28,830 あなたの名声を最大限に 活用したいところでしょうからな 278 00:21:28,830 --> 00:21:30,770 まあ 仕方がないでしょう 279 00:21:30,770 --> 00:21:34,100 第一 民主共和政治の 理念から言っても 280 00:21:34,100 --> 00:21:37,140 情報公開は大原則ですからね 281 00:21:37,140 --> 00:21:41,740 秘密や非公開がいいなら 専制国家に くみすることです 282 00:21:41,740 --> 00:21:45,940 せいぜい愛想よく カメラに 手でも振ってやることですな 283 00:21:52,450 --> 00:21:55,820 ヤン元帥が この地に来られたことは 284 00:21:55,820 --> 00:21:59,730 言うなれば 我々エル・ファシル革命政府こそが 285 00:21:59,730 --> 00:22:04,600 民主共和政治の王道を目指す 正統の政権であることの 286 00:22:04,600 --> 00:22:06,600 何よりの証しと言えましょう 287 00:22:06,600 --> 00:22:11,340 かつて このエル・ファシルからヤン提督の 奇跡の伝説が始まりました 288 00:22:11,340 --> 00:22:15,980 そしてまた このエル・ファシルから 新たな伝説が始まるのです 289 00:22:15,980 --> 00:22:18,680 それでは改めて ご紹介いたしましょう 290 00:22:18,680 --> 00:22:23,680 ミラクル・ヤン 魔術師ヤン ヤン・ウェンリー元帥です 291 00:22:32,730 --> 00:22:36,130 ヤン・ウェンリーです どうぞ よろしく 292 00:22:55,750 --> 00:22:59,190 提督 我々の新たな政府には 293 00:22:59,190 --> 00:23:01,960 新たな名称が 必要であると思いますが 294 00:23:01,960 --> 00:23:04,430 当然ですね そこで 295 00:23:04,430 --> 00:23:07,330 明日にでも 正式に発表したいのですが 296 00:23:07,330 --> 00:23:11,870 「自由惑星同盟正統政府」 というのはいかがでしょう? 297 00:23:11,870 --> 00:23:13,870 あっ… 298 00:23:18,670 --> 00:23:21,510 お気に召しませんか? 299 00:23:21,510 --> 00:23:23,480 いや そうではありませんが 300 00:23:23,480 --> 00:23:27,310 国家的正統性に こだわる必要は ないのではありませんか 301 00:23:27,310 --> 00:23:31,750 ゼロから出発することをこそ 強調するべきだと思いますが 302 00:23:31,750 --> 00:23:35,990 そうです 第一 「正統政府」という名は縁起が悪い 303 00:23:35,990 --> 00:23:40,390 「銀河帝国正統政府」という 近来の 悪例があるではありませんか 304 00:23:40,390 --> 00:23:44,990 確かに不吉ですな 他の名前を考えましょう 305 00:23:48,500 --> 00:23:51,040 この程度で ウンザリしないでくださいよ 306 00:23:51,040 --> 00:23:55,380 将来 もっと高い山が出てくるに 決まってるんですからね 307 00:23:55,380 --> 00:23:57,410 分かってるよ 308 00:23:57,410 --> 00:24:04,120 かくしてヤン・イレギュラーズは エル・ファシル革命予備軍となった 309 00:24:04,120 --> 00:24:07,520 総司令官 ヤン・ウェンリー元帥 310 00:24:07,520 --> 00:24:12,490 参謀長 ウィリバルト・ヨアヒム・フォン・メルカッツ上級大将 311 00:24:12,490 --> 00:24:16,830 後方勤務部長 アレックス・キャゼルヌ中将 312 00:24:16,830 --> 00:24:22,430 その最初の作戦行動は イゼルローン要塞の再奪取である 313 00:26:36,740 --> 00:26:39,510 ようやくヤンと再会した ユリアンを加えて 314 00:26:39,510 --> 00:26:43,210 イゼルローン要塞 再奪取の準備が進められる 315 00:26:43,210 --> 00:26:45,750 だが その間にも 帝国軍の侵攻は続き 316 00:26:45,750 --> 00:26:47,680 これを迎え撃つべく 317 00:26:47,680 --> 00:26:52,020 ビュコック率いる 最後の同盟艦隊が出撃した 318 00:26:52,020 --> 00:26:58,860 次回「銀河英雄伝説」 第69話「イゼルローン再奪取作戦」 319 00:26:58,860 --> 00:27:02,160 銀河の歴史が また1ページ