1 00:01:31,800 --> 00:01:36,670 宇宙歴800年 新帝国歴2年2月27日 2 00:01:36,670 --> 00:01:40,570 朝食を終えかけたばかりの 帝国軍統帥本部総長 3 00:01:40,570 --> 00:01:43,240 オスカー・フォン・ ロイエンタール元帥は 4 00:01:43,240 --> 00:01:46,450 ナイトハルト・ミュラー上級大将の 突然の訪問を 5 00:01:46,450 --> 00:01:49,050 宿舎に迎えることとなる 6 00:02:02,300 --> 00:02:05,330 ちょうどよいところへ来た 付き合わんか? 7 00:02:05,330 --> 00:02:08,200 あ… いえ 結構です 8 00:02:08,200 --> 00:02:11,600 そうか では かけて待っていてもらおうか 9 00:02:33,260 --> 00:02:37,160 カイザーが大本営への出頭を 求めておいでです 10 00:02:42,370 --> 00:02:47,140 ロイエンタール元帥に 不穏の気配があるとの報告書が 11 00:02:47,140 --> 00:02:50,510 軍務尚書オーベルシュタイン元帥 12 00:02:50,510 --> 00:02:54,850 ラング内国安全保障局長の 連名のみであったなら 13 00:02:54,850 --> 00:02:58,650 あるいは 一笑に付されたかもしれない 14 00:02:58,650 --> 00:03:02,520 だが それが 司法尚書ブルックドルフの名で 15 00:03:02,520 --> 00:03:08,090 出された物であったことが 事態を深刻にしていた 16 00:03:08,090 --> 00:03:11,400 ブルックドルフは 大審院判事時代に 17 00:03:11,400 --> 00:03:13,900 ベーネミュンデ事件の 処理を手がけ 18 00:03:13,900 --> 00:03:16,270 その際にラインハルトの知己を得 19 00:03:16,270 --> 00:03:19,740 その処理能力と 厳正な政治姿勢を評価されて 20 00:03:19,740 --> 00:03:23,410 新王朝の司法尚書に 登用されていた 21 00:03:23,410 --> 00:03:26,310 それだけに ラインハルトの信頼も厚く 22 00:03:26,310 --> 00:03:29,680 恣意的に国家の重臣を 陥れるようなことはないと 23 00:03:29,680 --> 00:03:31,680 思われたからである 24 00:03:33,650 --> 00:03:37,460 そもそも事件の発端は 同盟の特使として 25 00:03:37,460 --> 00:03:41,290 フェザーンに赴いたオーデッツが ばらまいた噂であった 26 00:03:41,290 --> 00:03:46,670 それに内国安全保障局長ラングが 飛びついたのである 27 00:03:46,670 --> 00:03:51,270 ブルックドルフ自身は噂などを 軽々に信じはしなかったが 28 00:03:51,270 --> 00:03:54,640 ラングからの要請を受ける形で フェザーンに赴き 29 00:03:54,640 --> 00:03:58,140 ロイエンタールの 身辺調査に乗り出した 30 00:03:58,140 --> 00:04:02,380 ブルックドルフ自身 法と秩序を守るべき立場からして 31 00:04:02,380 --> 00:04:07,220 ロイエンタールの漁色家ぶりを快く思って いなかったのも確かではあったが 32 00:04:07,220 --> 00:04:10,760 今回のロイエンタール元帥弾劾に 荷担したのは 33 00:04:10,760 --> 00:04:15,300 あくまで公人としての 立場からであった 34 00:04:15,300 --> 00:04:18,230 政府高官の綱紀粛正を 図るとともに 35 00:04:18,230 --> 00:04:22,500 軍部独裁の傾向が強い ローエングラム王朝において 36 00:04:22,500 --> 00:04:26,900 軍部に対する司法省の立場を 確立しても おきたかったのである 37 00:04:30,240 --> 00:04:32,180 そして調査の結果 38 00:04:32,180 --> 00:04:35,050 いささか拍子抜けするほど容易に 39 00:04:35,050 --> 00:04:36,980 エルフリーデ・フォン・ コールラウシュという 40 00:04:36,980 --> 00:04:41,450 女性の存在を突き止めてしまった 41 00:04:41,450 --> 00:04:43,860 ロイエンタール元帥は自宅に 42 00:04:43,860 --> 00:04:47,530 故リヒテンラーデ候の一族を かくまっておられる 43 00:04:47,530 --> 00:04:50,430 これは明らかに 陛下の御意に背くもの 44 00:04:50,430 --> 00:04:54,430 大逆に類するといっても 過言ではありません 45 00:04:54,430 --> 00:04:58,170 馬脚をあらわすといっても あまりにあっけなさすぎるな 46 00:04:58,170 --> 00:05:02,810 ロイエンタール元帥を陥れようとする 何者かの工作ではないのか? 47 00:05:02,810 --> 00:05:05,580 何者かと申しますと? 48 00:05:05,580 --> 00:05:10,180 例えば… いや 予断をもって当たるのはよそう 49 00:05:10,180 --> 00:05:13,120 とにかく この者から 直接 事情を聞いてみよう 50 00:05:13,120 --> 00:05:15,490 構わんだろうな 局長 51 00:05:15,490 --> 00:05:18,490 もちろんでございます 閣下 52 00:05:27,030 --> 00:05:29,940 聴取の結果 その女は 53 00:05:29,940 --> 00:05:33,670 ロイエンタール元帥の子を 身ごもっておることが判明した 54 00:05:33,670 --> 00:05:39,010 そして そのことを女から 告げられた時 元帥はそれを祝福し 55 00:05:39,010 --> 00:05:42,380 「この子のために より高きを目指そう」と言った 56 00:05:42,380 --> 00:05:44,320 と女は証言している 57 00:05:44,320 --> 00:05:47,150 正式な報告書が提出されたのち 58 00:05:47,150 --> 00:05:50,060 ラングは ロイエンタール弾劾の権限を 59 00:05:50,060 --> 00:05:52,530 司法尚書から もぎとった 60 00:05:52,530 --> 00:05:55,330 ロイエンタール元帥は明らかに 61 00:05:55,330 --> 00:05:58,230 陛下の御意に背いております しかしながら 62 00:05:58,230 --> 00:06:01,800 成文化された法律に反して おるわけではございませんから 63 00:06:01,800 --> 00:06:05,240 司法省が法によって 裁くわけにはまいりますまい 64 00:06:05,240 --> 00:06:08,610 僭越ながら このような時のためにこそ 65 00:06:08,610 --> 00:06:11,810 我ら内国安全保障局がございます 66 00:06:11,810 --> 00:06:15,210 何とぞ お任せくださいますよう 67 00:06:17,750 --> 00:06:21,250 結果的にはブルックドルフは その信頼度を 68 00:06:21,250 --> 00:06:24,350 ラングによって 利用されたわけである 69 00:06:28,660 --> 00:06:30,900 惑星ハイネセンにおきまして 70 00:06:30,900 --> 00:06:36,200 本総長 ロイエンタール元帥が 拘禁されたよしにございます 71 00:06:39,410 --> 00:06:41,670 ラング は? 72 00:06:41,670 --> 00:06:44,070 私を失望させるな 73 00:06:46,310 --> 00:06:51,890 卿の任務は 国内の敵を監視して 王朝を安泰せしめることにある 74 00:06:51,890 --> 00:06:54,790 私怨をもって建国の元勲を誣告し 75 00:06:54,790 --> 00:06:57,620 かえって王朝の基礎を 弱めたりしては 76 00:06:57,620 --> 00:07:01,960 不忠の甚だしいものになろう 心得ておくことだ 77 00:07:01,960 --> 00:07:06,960 心得ております 尚書閣下 どうぞ ご懸念なきように 78 00:07:11,000 --> 00:07:15,240 その日の朝9時 出勤したミッターマイヤーは 79 00:07:15,240 --> 00:07:19,240 そこで初めて ロイエンタール拘禁の報に接する 80 00:07:27,690 --> 00:07:29,920 どこへお出かけです?閣下 81 00:07:29,920 --> 00:07:32,590 知れたことだ ロイエンタールに会う 82 00:07:32,590 --> 00:07:35,030 いえ なりません 閣下 83 00:07:35,030 --> 00:07:37,400 このような事実が 明らかとなった時期に 84 00:07:37,400 --> 00:07:39,430 ロイエンタール元帥と お会いになっては 85 00:07:39,430 --> 00:07:41,800 無用の疑惑を 招くことになりましょう 86 00:07:41,800 --> 00:07:44,170 賢しげに忠告するな! 87 00:07:44,170 --> 00:07:47,410 俺には一ミクロンの 後ろ暗いところもない 88 00:07:47,410 --> 00:07:50,310 陛下の廷臣同士 年来の友人同士が会って 89 00:07:50,310 --> 00:07:52,650 何が悪い 誰をはばかる 90 00:07:52,650 --> 00:07:54,950 そこをどけ!バイエルライン 91 00:07:57,480 --> 00:08:00,920 閣下 バイエルライン提督の 言うとおりです 92 00:08:00,920 --> 00:08:02,990 閣下が公明正大であられても 93 00:08:02,990 --> 00:08:07,690 見る者のレンズが歪んでいれば 映る像も おのずと歪みます 94 00:08:07,690 --> 00:08:10,700 ロイエンタール元帥の 不名誉な嫌疑が晴れさえすれば 95 00:08:10,700 --> 00:08:14,470 いつ閣下がお会いになられても そしる者はおりますまい 96 00:08:14,470 --> 00:08:18,470 どうか ここは ご自重くださいますよう 97 00:08:30,950 --> 00:08:34,520 俺は帝国元帥の称号を賜り 98 00:08:34,520 --> 00:08:38,960 帝国宇宙艦隊司令長官という 過分な地位もいただいた 99 00:08:38,960 --> 00:08:41,900 だが どれほど 高い地位に就こうとも 100 00:08:41,900 --> 00:08:44,330 友人と会うことすら ままならぬでは 101 00:08:44,330 --> 00:08:46,430 一庶民にも劣るではないか 102 00:08:51,440 --> 00:08:53,370 あの時 陛下は 103 00:08:53,370 --> 00:08:56,240 いまだローエングラム侯爵の 身分であられたが 104 00:08:56,240 --> 00:08:59,650 リヒテンラーデ一族の男どもを 死刑に処すること 105 00:08:59,650 --> 00:09:03,150 女どもを流刑に付することは 確かに お命じになられた 106 00:09:03,150 --> 00:09:05,750 だが配所に流された女どもを 107 00:09:05,750 --> 00:09:09,190 永劫に よそへ移してはならぬとは おっしゃらなかった 108 00:09:09,190 --> 00:09:12,130 ロイエンタールは 決して御意に背いたのではない 109 00:09:12,130 --> 00:09:14,230 そうではないか! 110 00:09:20,230 --> 00:09:22,170 いずれにしても ロイエンタール元帥は 111 00:09:22,170 --> 00:09:27,570 軍部の重鎮であり 国家の元勲であられます 112 00:09:27,570 --> 00:09:31,440 無責任な噂を信じて 処罰を下されるようなことは 113 00:09:31,440 --> 00:09:36,440 カイザー・ラインハルト陛下は 決してなさいますまい 114 00:09:46,330 --> 00:09:49,760 自分ことオスカー・フォン・ ロイエンタールが 115 00:09:49,760 --> 00:09:53,330 武力と権力に任せて 略奪 暴行をこととし 116 00:09:53,330 --> 00:09:56,570 人民を害しているなどと 噂されるのであれば 117 00:09:56,570 --> 00:09:59,270 これは自分にとって 最大の恥辱である 118 00:09:59,270 --> 00:10:02,740 だが反逆して玉座を狙うと 言われるのは 119 00:10:02,740 --> 00:10:06,840 むしろ乱世の武人にとって 誇りとするところ 120 00:10:09,150 --> 00:10:11,880 しかしながら カイザー・ラインハルト陛下が 121 00:10:11,880 --> 00:10:15,320 先王朝において 元帥府を開設されて以来 122 00:10:15,320 --> 00:10:17,320 自分は一日の例外もなく 123 00:10:17,320 --> 00:10:20,890 陛下が覇業を成されるに 微力を尽くしてきた 124 00:10:20,890 --> 00:10:24,830 その点について いささかも やましいところはない 125 00:10:24,830 --> 00:10:29,370 笑うべきは 自分を誹謗する者の正体である 126 00:10:29,370 --> 00:10:33,040 内務省内国安全保障局長 ラングとは何者か 127 00:10:33,040 --> 00:10:37,910 先年 上級大将以上の武官のみが 出席を許される会議において 128 00:10:37,910 --> 00:10:40,310 資格もなく出席し 129 00:10:40,310 --> 00:10:43,680 あまつさえ発言までもなした 不心得者である 130 00:10:43,680 --> 00:10:47,550 その時 自分に退出を命ぜられて 不満を抱き 131 00:10:47,550 --> 00:10:51,020 私情をもって 不当な告発をなしたのであろう 132 00:10:51,020 --> 00:10:55,030 その間の事情に ご留意いただきたい 133 00:10:55,030 --> 00:10:58,670 閣下のご主張は承りました いかがです? 134 00:10:58,670 --> 00:11:02,540 陛下に直接お会いして 弁明なさいますか 135 00:11:02,540 --> 00:11:06,410 弁明という言葉は意に沿わぬな 136 00:11:06,410 --> 00:11:09,280 だが陛下に直接お会いして 137 00:11:09,280 --> 00:11:11,610 我が意のあるところを 知っていただければ 138 00:11:11,610 --> 00:11:14,810 讒訴する者どもに つけ入られる隙もなくなろう 139 00:11:14,810 --> 00:11:17,050 お手数だがミュラー上級大将 140 00:11:17,050 --> 00:11:20,820 しかるべく 取り計らっていただけようか 141 00:11:20,820 --> 00:11:23,460 元帥が そうお考えなら 問題はありません 142 00:11:23,460 --> 00:11:27,060 すぐにも陛下に その旨をお伝えいたしましょう 143 00:11:31,030 --> 00:11:33,930 カイザー・ラインハルトが ロイエンタール元帥を 144 00:11:33,930 --> 00:11:37,730 自ら審問するに至ったのは その日の午後である 145 00:11:54,250 --> 00:11:57,890 ロイエンタール元帥 はっ! 146 00:11:57,890 --> 00:12:01,460 卿が 故リヒテンラーデ候の 一族に連なる女を 147 00:12:01,460 --> 00:12:04,260 私邸に置いているという 告発は事実か? 148 00:12:04,260 --> 00:12:06,730 事実です 陛下 149 00:12:06,730 --> 00:12:09,000 陛下 ロイエンタールは 150 00:12:09,000 --> 00:12:12,410 その女に逆恨みされ 生命を脅かされたのです 151 00:12:12,410 --> 00:12:14,970 非礼を承知で あえて申し上げますが 152 00:12:14,970 --> 00:12:17,340 どうか前後の事情をお考えの上 153 00:12:17,340 --> 00:12:21,640 ロイエンタールの軽挙を お許しくださいますよう… 154 00:12:26,590 --> 00:12:29,020 陛下 マイン・カイザー 155 00:12:29,020 --> 00:12:32,390 小官は軍務尚書 オーベルシュタイン元帥及び 156 00:12:32,390 --> 00:12:36,600 内国安全保障局長 ラングの方をこそ弾劾します 157 00:12:36,600 --> 00:12:38,600 ヤン・ウェンリー一党が イゼルローンに拠って 158 00:12:38,600 --> 00:12:41,430 帝国と公然と 敵対しようとしている今 159 00:12:41,430 --> 00:12:44,700 陛下の主席幕僚たる ロイエンタール元帥を誹謗するとは 160 00:12:44,700 --> 00:12:47,070 軍の統一と団結を損ね 161 00:12:47,070 --> 00:12:50,840 結果として利敵行為に 類するものではありませんか 162 00:12:50,840 --> 00:12:53,750 ミッターマイヤー そのくらいにしておけ 163 00:12:53,750 --> 00:12:56,450 卿の口は 大軍を叱咤するためにあるもの 164 00:12:56,450 --> 00:12:59,450 他人を非難するのは似合わぬ 165 00:13:05,530 --> 00:13:07,630 マイン・カイザー 166 00:13:10,800 --> 00:13:12,730 マイン・カイザーよ 167 00:13:12,730 --> 00:13:16,700 リヒテンラーデ候の一族の 端に連なる者と知りながら 168 00:13:16,700 --> 00:13:19,140 エルフリーデ・フォン・ コールラウシュなる女を 169 00:13:19,140 --> 00:13:22,940 私邸に置きましたのは我が不明 170 00:13:22,940 --> 00:13:26,210 軽率さは深く悔いるところです しかしながら 171 00:13:26,210 --> 00:13:29,150 それをもって陛下に対する 叛意の表れとみなされるのは 172 00:13:29,150 --> 00:13:33,950 不本意の至り 誓って そのようなことはございません 173 00:13:33,950 --> 00:13:37,320 では その女が 身ごもったことを告げた時 174 00:13:37,320 --> 00:13:39,260 それを祝福して 「その子のために」 175 00:13:39,260 --> 00:13:42,160 「より高きを目指そう」と 語ったというのは? 176 00:13:42,160 --> 00:13:44,530 そちらは完全な虚偽です 177 00:13:44,530 --> 00:13:47,970 あの女が妊娠したことを 私は存じませんでした 178 00:13:47,970 --> 00:13:51,370 存じておれば 即座に堕胎させておりました 179 00:13:51,370 --> 00:13:54,010 この点 疑う余地はございません 180 00:13:54,010 --> 00:13:56,040 なぜ そう断言できる? 181 00:13:56,040 --> 00:14:00,140 私には人の親となる 資格がないからです 陛下 182 00:14:09,560 --> 00:14:12,730 いまだローエングラムの 家名を継がぬ頃 183 00:14:12,730 --> 00:14:16,530 余は卿から 忠誠を誓約されたことがあったな 184 00:14:18,560 --> 00:14:22,660 あの夜のことを覚えているか? ロイエンタール元帥 185 00:14:32,380 --> 00:14:38,380 それは5年前 帝国歴486年 5月2日のことである 186 00:14:44,960 --> 00:14:49,460 金髪さん 赤毛さん お客さまですよ 187 00:15:10,180 --> 00:15:14,020 帝国軍少将 オスカー・フォン・ ロイエンタールと申します 188 00:15:14,020 --> 00:15:18,620 夜分申し訳ないが ミューゼル大将にお目にかかりたい 189 00:15:25,730 --> 00:15:30,000 この時 ロイエンタールは 親友であるミッターマイヤーが 190 00:15:30,000 --> 00:15:33,510 ブラウンシュヴァイク公ら 門閥貴族の差し金によって 191 00:15:33,510 --> 00:15:37,340 不当に拘禁され 生命の危機にある事情を説明し 192 00:15:37,340 --> 00:15:40,340 ラインハルトの 助力を請うたのである 193 00:15:43,020 --> 00:15:46,450 つまり卿は ミッターマイヤー少将の命を救うのに 194 00:15:46,450 --> 00:15:51,090 私の力を借りたいというのだな 左様です 195 00:15:51,090 --> 00:15:56,430 知己でもない私に 帝国最大の権門と事を構えろと? 196 00:15:56,430 --> 00:15:59,470 左様です 閣下 代償は? 197 00:15:59,470 --> 00:16:03,040 ミッターマイヤー及び 私の忠誠と協力 198 00:16:03,040 --> 00:16:07,270 加えて他の下級貴族や 平民出身の士官たちの名望 199 00:16:07,270 --> 00:16:09,540 以上で ご不満ですか? 200 00:16:09,540 --> 00:16:11,510 いや 不満どころか 201 00:16:11,510 --> 00:16:13,780 名だたるロイエンタール ミッターマイヤー 202 00:16:13,780 --> 00:16:16,350 両少将の忠誠を 得られるというなら 203 00:16:16,350 --> 00:16:18,450 これ以上の喜びはない 204 00:16:20,890 --> 00:16:23,490 それにしても 卿が それほどまでして 205 00:16:23,490 --> 00:16:28,430 僚友を助けたい理由は何だ? 何が卿に危険を冒させる? 206 00:16:28,430 --> 00:16:30,860 彼は気持ちのいい男です 207 00:16:30,860 --> 00:16:33,300 ああいう男が一人いなくなると 208 00:16:33,300 --> 00:16:36,870 その分 世の中から 生気が失せてしまいます 209 00:16:36,870 --> 00:16:38,970 フン… 210 00:16:42,340 --> 00:16:45,040 もし私が断ったら? 211 00:16:45,040 --> 00:16:47,110 そうは思いません 212 00:16:47,110 --> 00:16:50,780 そうかな 私にとっては卿らの好意より 213 00:16:50,780 --> 00:16:52,820 ブラウンシュヴァイク公の 歓心のほうが 214 00:16:52,820 --> 00:16:56,120 よい買い物であるように 思えるのだがな 215 00:16:56,120 --> 00:16:59,620 本心でおっしゃっているとは 思えません 216 00:17:08,700 --> 00:17:12,670 卿は現在の ゴールデンバウム王朝について 217 00:17:12,670 --> 00:17:14,670 どう思う? 218 00:17:18,180 --> 00:17:21,480 5世紀にわたった ゴールデンバウム王朝という 219 00:17:21,480 --> 00:17:25,920 老いさらばえた体には 膿がたまり続けてきたのです 220 00:17:25,920 --> 00:17:29,320 これを治療するには 外科手術が必要です 221 00:17:31,520 --> 00:17:33,460 手術さえ成功すれば 222 00:17:33,460 --> 00:17:37,160 患者が死んでも やむを得ないでしょう この際は 223 00:17:37,160 --> 00:17:39,930 どのみち誰でも 不死ではいられません 224 00:17:39,930 --> 00:17:43,270 あのルドルフ大帝ですら… 225 00:17:43,270 --> 00:17:47,740 よく分かった ロイエンタール少将 私は全力を挙げて 226 00:17:47,740 --> 00:17:52,740 卿とミッターマイヤー少将の 期待に応えさせてもらおう 227 00:18:01,620 --> 00:18:05,320 あの夜のことを覚えているか? ロイエンタール元帥 228 00:18:05,320 --> 00:18:10,160 忘れたことはございません 陛下 一日といえども 229 00:18:10,160 --> 00:18:12,130 では よい 230 00:18:12,130 --> 00:18:16,900 近日中に処分を決する 宿舎において指示を待て 231 00:18:16,900 --> 00:18:21,100 それまで卿の職務は ミュラー上級大将に代行させる 232 00:18:29,180 --> 00:18:33,050 まだロイエンタール閣下の身が 確実に安全になったとは 233 00:18:33,050 --> 00:18:36,620 残念ながら断言できん 234 00:18:36,620 --> 00:18:39,960 今のところ陛下は 古い友誼をご信頼あって 235 00:18:39,960 --> 00:18:42,460 寛大な気分で いらっしゃるようだが 236 00:18:42,460 --> 00:18:44,960 今後は どちらに天秤が傾くか 237 00:18:44,960 --> 00:18:48,270 閣下 僭越ながら申し上げます 238 00:18:48,270 --> 00:18:52,240 コールラウシュとか申す女を 軍務尚書から お引き渡しいただき 239 00:18:52,240 --> 00:18:55,570 ロイエンタール閣下と 対決させるべきでありましょう 240 00:18:55,570 --> 00:18:58,010 さすれば その女が ロイエンタール閣下を 241 00:18:58,010 --> 00:19:01,380 陥れようとした事実が 判明いたしましょう 242 00:19:01,380 --> 00:19:05,050 そう簡単に事は運ばんぞ レッケンドルフ少佐 243 00:19:05,050 --> 00:19:06,990 と申しますと? 244 00:19:06,990 --> 00:19:09,890 軍務尚書の人となりは 卿も知っていよう 245 00:19:09,890 --> 00:19:12,120 ひとたび その女を手に入れた以上 246 00:19:12,120 --> 00:19:17,120 どのような供述をさせるも 軍務尚書のほしいままではないか 247 00:19:24,770 --> 00:19:27,110 失礼いたします 宇宙艦隊司令部 248 00:19:27,110 --> 00:19:29,040 フォルカー・アクセル・フォン・ ビューロー大将閣下が 249 00:19:29,040 --> 00:19:32,850 お見えであります ビューローが? 250 00:19:32,850 --> 00:19:36,720 3年前 ハンス・エドアルド・ ベルゲングリューンと 251 00:19:36,720 --> 00:19:39,080 フォルカー・アクセル・フォン・ ビューローは 252 00:19:39,080 --> 00:19:41,990 ともにジーク・フリード・ キルヒアイスの旗下にあって 253 00:19:41,990 --> 00:19:44,690 勇名を競い合った中である 254 00:19:48,760 --> 00:19:51,360 キルヒアイスが 不慮の死を遂げたあと 255 00:19:51,360 --> 00:19:54,730 その幕僚たちは 分散して各地に配属された 256 00:19:54,730 --> 00:19:59,430 だが ともに死線を越えてきた 記憶は風化するものではない 257 00:20:02,470 --> 00:20:06,880 ミッターマイヤー元帥も 全面的に 協力すると約束しておられる 258 00:20:06,880 --> 00:20:09,780 「カイザーは恐らく 寛大なご処置を賜るだろうから」 259 00:20:09,780 --> 00:20:11,720 「決して動揺することのないよう」 260 00:20:11,720 --> 00:20:14,320 そう おっしゃっておられた 261 00:20:14,320 --> 00:20:16,260 ありがたいことだ 262 00:20:16,260 --> 00:20:20,830 先刻も ご自身がカイザーのご不興を 買うやもしれぬ危険を冒して 263 00:20:20,830 --> 00:20:23,630 ロイエンタール元帥を 擁護してくだすった 264 00:20:23,630 --> 00:20:27,170 ミッターマイヤー閣下には 感謝に堪えぬとお伝えしてくれ 265 00:20:27,170 --> 00:20:29,100 ああ 266 00:20:29,100 --> 00:20:32,970 だがな ビューロー 3年前を覚えているだろう 267 00:20:32,970 --> 00:20:37,810 キルヒアイス提督が 亡くなられた いきさつを 268 00:20:37,810 --> 00:20:41,310 旧帝国歴488年9月 269 00:20:41,310 --> 00:20:44,220 ラインハルトを狙った 暗殺者の銃火は 270 00:20:44,220 --> 00:20:46,850 本来 キルヒアイスの肉体ではなく 271 00:20:46,850 --> 00:20:49,860 銃口によって 阻まれるはずであった 272 00:20:49,860 --> 00:20:53,130 その日まで彼一人が ラインハルトの傍らで 273 00:20:53,130 --> 00:20:56,860 武器の所持を 許されていたのだから 274 00:20:56,860 --> 00:20:59,230 武器の所持を 不公平な特権とみなして 275 00:20:59,230 --> 00:21:02,940 廃止すべく進言したのは オーベルシュタインである 276 00:21:02,940 --> 00:21:05,670 それを容れたラインハルトにも 責任はあるが 277 00:21:05,670 --> 00:21:10,240 自らを悔いる彼に比べ 冷然たる オーベルシュタインの方に 278 00:21:10,240 --> 00:21:13,850 キルヒアイスの旧部下たちは 憤りを禁じ得ずに 279 00:21:13,850 --> 00:21:16,050 今日に至っているのだった 280 00:21:18,450 --> 00:21:21,650 俺は軍務尚書の余計な差し出口で 281 00:21:21,650 --> 00:21:24,660 上官たる キルヒアイス提督を失った 282 00:21:24,660 --> 00:21:27,990 彼は若いが誠の名将だった 283 00:21:27,990 --> 00:21:32,160 わずか2~3年の間に 同じオーベルシュタイン元帥のおかげで 284 00:21:32,160 --> 00:21:35,170 2度まで上官を 失うようなことがあっては 285 00:21:35,170 --> 00:21:39,070 俺の人生は悲惨で 滑稽極まるものとなるだろう 286 00:21:39,070 --> 00:21:42,840 おい ベルゲングリューン 分かっている ビューロー 287 00:21:42,840 --> 00:21:45,840 俺の責務は ロイエンタール元帥をなだめて 288 00:21:45,840 --> 00:21:49,350 激発させぬことだ 全力を挙げて そう務めよう 289 00:21:49,350 --> 00:21:53,750 だが元帥が犯した罪よりも 過大な 罰を被るようなことがあれば 290 00:21:53,750 --> 00:21:55,950 俺は看過し得ぬ 291 00:22:09,540 --> 00:22:13,910 軍務尚書は あるいは 諸将の反感や敵意といったものを 292 00:22:13,910 --> 00:22:16,310 自分自身の身に集中させることで 293 00:22:16,310 --> 00:22:19,510 カイザーの盾と なっているのかもしれんな 294 00:22:27,920 --> 00:22:33,120 もっとも俺の読みが うがちすぎ ということも あり得るがな 295 00:22:37,700 --> 00:22:41,400 ロイエンタールの件 卿らの意見を聞こう 296 00:22:44,970 --> 00:22:47,910 ロイエンタール元帥が 陛下の功臣であり 297 00:22:47,910 --> 00:22:51,740 国家の元勲であることは 万人の知るところです 298 00:22:51,740 --> 00:22:55,650 もし流言を信じて 功臣を 疎かにするようなことがあれば 299 00:22:55,650 --> 00:23:00,450 人心は動揺して 自分たち自身の 地位にも不安を抱きましょう 300 00:23:00,450 --> 00:23:06,060 陛下 どうかご明察あって 公正なるご処置を賜らんことを 301 00:23:06,060 --> 00:23:07,990 ほう 余がロイエンタールを 302 00:23:07,990 --> 00:23:11,030 処断したがっているように 見えるか? 303 00:23:11,030 --> 00:23:14,730 この時 ヒルダは 常になく即答を避けた 304 00:23:14,730 --> 00:23:18,200 ヒルダは前年の バーミリオン星域会戦の前後に 305 00:23:18,200 --> 00:23:20,440 ミッターマイヤーと ロイエンタールに 306 00:23:20,440 --> 00:23:23,710 惑星ハイネセンを直撃するように 依頼したが 307 00:23:23,710 --> 00:23:28,810 その時 感じた茫漠とした不安を 拭い去れないままにいたのである 308 00:23:40,160 --> 00:23:42,900 この時期 カイザー・ ラインハルトの命を受けた 309 00:23:42,900 --> 00:23:46,130 後方総司令官 メックリンガー上級大将は 310 00:23:46,130 --> 00:23:51,700 既にオーディンを発して イゼルローン回廊に向かっている 311 00:23:51,700 --> 00:23:55,010 イゼルローン要塞を奪取した ヤン・ウェンリーの行動を 312 00:23:55,010 --> 00:23:58,280 攻防 いずれにしても 掣肘しなくてはならない 313 00:23:58,280 --> 00:24:02,450 ヤンが帝国領方面に 軍を動かすとすれば それを防ぎ 314 00:24:02,450 --> 00:24:07,720 逆に旧同盟領方面に動くとすれば その後方を扼す 315 00:24:07,720 --> 00:24:12,290 更にカイザー・ラインハルトによる 親征が現実のものとなった時には 316 00:24:12,290 --> 00:24:15,190 背後からヤンを挟撃するのである 317 00:24:15,190 --> 00:24:19,630 激発し 感情に任せて 大軍を動かしたように見えながら 318 00:24:19,630 --> 00:24:22,030 カイザー・ラインハルトは 広大な宇宙の 319 00:24:22,030 --> 00:24:25,600 全域における軍事的情勢を 視野に収めている 320 00:24:25,600 --> 00:24:28,210 そして それは イゼルローン要塞にある 321 00:24:28,210 --> 00:24:31,710 ヤン・ウェンリーの既に 洞察するところであった 322 00:26:39,710 --> 00:26:43,010 突如 ハイネセンポリスに 起こった大火は 市街だけでなく 323 00:26:43,010 --> 00:26:45,910 ロイエンタールへの 疑惑をも焼き尽くすのか 324 00:26:45,910 --> 00:26:49,780 ノイエラント総督に任じられる ロイエンタール だが その人事は 325 00:26:49,780 --> 00:26:52,680 ヤン・ウェンリー一党を 討ってのちに発効する 326 00:26:52,680 --> 00:26:57,160 カイザー・ラインハルトの英気は 既にイゼルローンに向かっていた 327 00:26:57,160 --> 00:27:02,030 次回「銀河英雄伝説」 第76話「祭りの前」 328 00:27:02,030 --> 00:27:05,230 銀河の歴史が また1ページ