1 00:01:31,300 --> 00:01:34,700 帝都オーディンを出立する前日 メックリンガーは 2 00:01:34,700 --> 00:01:38,440 ケスラー ワーレンの僚友2人と 夕食をともにしていた 3 00:01:38,440 --> 00:01:42,040 卿の収集家ぶりも 堂に入ってきたな 4 00:01:44,810 --> 00:01:48,450 これはオリジナルか? 残念ながらレプリカだ 5 00:01:48,450 --> 00:01:52,220 オリジナルは リップシュタット戦役の時に焼失している 6 00:01:52,220 --> 00:01:56,090 あの時 卿は手早く 貴族連合軍のため込んだ美術品を 7 00:01:56,090 --> 00:02:00,060 戦火から守って回っていたが 守りきれない物もあったか 8 00:02:00,060 --> 00:02:02,730 何しろ膨大な量だったからな 9 00:02:02,730 --> 00:02:05,730 そのうち卿は既存の芸術に飽きて 10 00:02:05,730 --> 00:02:10,240 カイザーやヤン・ウェンリーの戦歴を 収集し始めるのではないか? 11 00:02:10,240 --> 00:02:12,810 ヤン・ウェンリーが 魔術を弄するまで 12 00:02:12,810 --> 00:02:15,840 イゼルローン要塞は 難攻不落だったはずだ 13 00:02:15,840 --> 00:02:19,610 ところが彼は要塞を まるでフライングボールのボールのように 14 00:02:19,610 --> 00:02:22,580 簡単に所有者を 変えるものにしてしまったんだ 15 00:02:22,580 --> 00:02:26,120 あれを芸術と言うなら まさに あれ以上のものはない 16 00:02:26,120 --> 00:02:30,290 だが あれを模倣し得る者が 他にいるとも思えんな 17 00:02:30,290 --> 00:02:33,160 されては たまらん 18 00:02:33,160 --> 00:02:37,670 にしても思えば 敵ながら称賛に値する男だ 19 00:02:37,670 --> 00:02:40,570 あの寡兵をもって 我が帝国の全軍を 20 00:02:40,570 --> 00:02:43,470 奔命に疲れさせるとはな 21 00:02:43,470 --> 00:02:45,870 そのヤン・ウェンリー一党に対して 22 00:02:45,870 --> 00:02:49,310 我が軍が 圧倒的優位を誇ることは疑いない 23 00:02:49,310 --> 00:02:51,880 しかしながら軍事力の配置状況に 24 00:02:51,880 --> 00:02:54,350 いささか 問題があるのではないかな 25 00:02:54,350 --> 00:02:57,150 というと? カイザーと軍の主力は 26 00:02:57,150 --> 00:03:01,520 ほとんどフェザーンから 旧同盟領にかけて展開している 27 00:03:01,520 --> 00:03:04,760 この上 私が イゼルローン方面に出動し 28 00:03:04,760 --> 00:03:08,160 ワーレン提督にも 近々に出動が命じられるとなれば 29 00:03:08,160 --> 00:03:12,030 旧帝国領に残留するのは ケスラー提督 30 00:03:12,030 --> 00:03:14,500 卿だけということになる 31 00:03:14,500 --> 00:03:17,400 うーん 実際 俺自身 不安でな 32 00:03:17,400 --> 00:03:21,080 カイザーが大本営をフェザーンに 移されるのはよいとして 33 00:03:21,080 --> 00:03:24,080 このオーディンを どうなさるおつもりなのか 34 00:03:24,080 --> 00:03:27,450 陛下にとって 大事な方もおられるのに 35 00:03:27,450 --> 00:03:30,320 陛下の姉君のことか? そうだ 36 00:03:30,320 --> 00:03:34,190 グリューネワルト太后妃殿下 あの方だ 37 00:03:34,190 --> 00:03:37,020 カイザーと太后妃は あの時以来 ずっと 38 00:03:37,020 --> 00:03:39,760 お会いになっておらぬのだったな 39 00:03:39,760 --> 00:03:41,760 うーん… 40 00:03:46,900 --> 00:03:50,470 誠に不吉かつ 不敬を極める想像ではあるが 41 00:03:50,470 --> 00:03:52,440 いまだ皇妃も皇子もないまま 42 00:03:52,440 --> 00:03:55,310 陛下が この世を 去られるようなことがあれば 43 00:03:55,310 --> 00:03:58,980 新生ローエングラム王朝を 崩壊の危機から救うのは 44 00:03:58,980 --> 00:04:01,380 グリューネワルト太后妃かも しれんのだ 45 00:04:01,380 --> 00:04:03,720 このままオーディンの兵力が 減少すれば 46 00:04:03,720 --> 00:04:05,720 自然 警備力も低下する 47 00:04:05,720 --> 00:04:08,560 太后妃の安全に 完全を期すためにも 48 00:04:08,560 --> 00:04:12,930 フェザーンにお移りいただければ それに越したことはないのだが 49 00:04:12,930 --> 00:04:15,630 しかし それは順序が逆だな 50 00:04:15,630 --> 00:04:18,830 まずカイザーに 皇妃を立てていただくべきだろう 51 00:04:18,830 --> 00:04:23,040 そうすれば王朝の存続に 何ら問題はない 52 00:04:23,040 --> 00:04:26,710 まさに それこそが最大の問題だな 53 00:04:26,710 --> 00:04:30,980 そうだ 問題といえば カール・ブラッケのことがあった 54 00:04:30,980 --> 00:04:33,750 ブラッケ民政尚書が カイザーに対して 55 00:04:33,750 --> 00:04:36,150 何か含むところでも あるというのか? 56 00:04:36,150 --> 00:04:38,090 不満をもらしている 57 00:04:38,090 --> 00:04:41,920 「連年 みだりに兵を動かし 戦役に国費を費やし」 58 00:04:41,920 --> 00:04:46,630 「死者を増やすこと度が過ぎる」と 先日 部下にもらしたそうだ 59 00:04:46,630 --> 00:04:49,430 まあ いささか 酒も入っていたようだが 60 00:04:49,430 --> 00:04:52,870 国庫はいまだ 十分に安定しているはずだが? 61 00:04:52,870 --> 00:04:57,610 戦役をやめて内治に務めれば より安定するはずだというのだ 62 00:04:57,610 --> 00:05:01,810 正論ではあるが 俺としては ブラッケの不用意な発言が 63 00:05:01,810 --> 00:05:05,750 反皇帝派を利する方が 問題に思えるがな 64 00:05:05,750 --> 00:05:09,480 んー 想像の翼を広げてみれば 65 00:05:09,480 --> 00:05:11,990 背後に不穏な意思を 有する者がいて 66 00:05:11,990 --> 00:05:15,360 ブラッケを代理人に 仕立てているのかもしれんな 67 00:05:15,360 --> 00:05:19,290 今すぐ彼の処置を云々するのも 暴挙というものだが 68 00:05:19,290 --> 00:05:21,700 いずれにしても ブラッケ民政尚書は 69 00:05:21,700 --> 00:05:23,960 陛下が任命したもうた閣僚で 70 00:05:23,960 --> 00:05:26,370 俺などが どうこうできるものではない 71 00:05:26,370 --> 00:05:29,700 背後に誰か… そう 例えば 72 00:05:29,700 --> 00:05:33,510 あの地球教徒どもが いたとしてもな 73 00:05:33,510 --> 00:05:37,480 考えてみれば地球教徒の 狂信者どもに生存者がおり 74 00:05:37,480 --> 00:05:41,550 報復を謀っているとすれば 俺とワーレン提督とは 75 00:05:41,550 --> 00:05:46,390 奴らの暗殺リストのトップに 名を連ねていること間違いないな 76 00:05:46,390 --> 00:05:50,390 では「死なばもろともに」と いうことになるか 77 00:05:58,300 --> 00:06:02,140 さてと 俺は ひと足先に失礼させてもらおう 78 00:06:02,140 --> 00:06:05,410 部下から 例のヨブ・ トリューニヒトの動向に関して 79 00:06:05,410 --> 00:06:07,440 報告を受けねばならんのでな 80 00:06:07,440 --> 00:06:12,010 憲兵総監と帝都防衛司令官の 兼務も大儀そうだな 81 00:06:12,010 --> 00:06:14,750 忙しいのは構わんが どうせなら 82 00:06:14,750 --> 00:06:18,620 卿らのように 星の大海を行く 任務につきたいものだ 83 00:06:18,620 --> 00:06:22,560 あんなつまらぬ男の 監視などではなくな 84 00:06:22,560 --> 00:06:26,890 宇宙歴800年 新帝国歴2年3月1日 85 00:06:26,890 --> 00:06:29,130 ロイエンタール元帥に 対する処分は 86 00:06:29,130 --> 00:06:31,430 いまだ決定をみていない 87 00:06:31,430 --> 00:06:34,340 エミール 今日はもう用はないから 88 00:06:34,340 --> 00:06:37,240 お前も休むがよい はい 陛下 89 00:06:37,240 --> 00:06:39,240 そうさせていただきます 90 00:06:48,820 --> 00:06:50,920 あ… 91 00:07:16,910 --> 00:07:18,950 何事か?キスリング 92 00:07:18,950 --> 00:07:22,580 今 調べさせております いずれにしましても 陛下 93 00:07:22,580 --> 00:07:26,520 安全な場所へ ご案内いたしますゆえ お急ぎを 94 00:07:26,520 --> 00:07:30,760 エミール 着替えを手伝ってくれ 陛下! 95 00:07:30,760 --> 00:07:33,230 皇帝が寝間着で 逃げ出したとあっては 96 00:07:33,230 --> 00:07:36,230 同盟人の笑い話に供されるだろう 97 00:07:52,010 --> 00:07:55,620 現場はどうなってるんだ 状況報告はまだか! 98 00:07:55,620 --> 00:07:57,620 詳細 急げ 99 00:08:19,940 --> 00:08:22,040 陛下 こちらへ 100 00:08:47,270 --> 00:08:50,670 陛下 危のうございます これがテロだとすれば 101 00:08:50,670 --> 00:08:53,440 混乱に乗じた 狙撃の可能性がございます 102 00:08:53,440 --> 00:08:56,440 どうか御身を お隠しくださいますよう 103 00:09:16,560 --> 00:09:19,160 援軍はまだか? 急げ! 104 00:09:48,200 --> 00:09:51,870 翌 早朝 火災はようやく収まった 105 00:09:51,870 --> 00:09:57,540 被害者の救恤と並行して 被害実態の調査が開始された 106 00:09:57,540 --> 00:10:01,410 消失面積 1800万平方メートル以上 107 00:10:01,410 --> 00:10:05,110 死者及び行方不明者は 5500名を超え 108 00:10:05,110 --> 00:10:11,050 うち およそ半数を 地理不案内の帝国軍兵士が占めた 109 00:10:11,050 --> 00:10:13,750 このため同盟軍の残党による 110 00:10:13,750 --> 00:10:18,660 テロを目的とした放火であるとの 見方が当初から強かった 111 00:10:18,660 --> 00:10:22,130 しかしながら 実際には組織的な蜂起はなく 112 00:10:22,130 --> 00:10:25,030 混乱に乗じた暴動は 各所に見られたが 113 00:10:25,030 --> 00:10:28,270 ことごとく初期の段階で 鎮圧されていた 114 00:10:28,270 --> 00:10:30,700 これはミッターマイヤー ミュラーらの 115 00:10:30,700 --> 00:10:33,070 沈着な指揮ぶりもさることながら 116 00:10:33,070 --> 00:10:35,510 ロイエンタールが 周密に配慮していた 117 00:10:35,510 --> 00:10:37,880 緊急事態処理の マニュアルによって 118 00:10:37,880 --> 00:10:40,210 帝国軍が効率的に出動し 119 00:10:40,210 --> 00:10:43,720 要所を押さえて 動揺しなかったからであった 120 00:10:43,720 --> 00:10:48,560 一方で同盟の歴史的建造物の 多くが灰燼に帰したため 121 00:10:48,560 --> 00:10:53,390 勝ち誇った帝国軍が 炎によって 旧弊を一掃しようとしたのだと 122 00:10:53,390 --> 00:10:56,200 まことしやかに噂する者もあった 123 00:10:56,200 --> 00:10:59,700 だが調査の結果 この大火の原因は 124 00:10:59,700 --> 00:11:03,570 旧同盟軍が鉱山開発用に 民間に払い下げた 125 00:11:03,570 --> 00:11:07,470 ゼッフル粒子発生装置が 誤作動したためと分かった 126 00:11:07,470 --> 00:11:10,210 つまるところ これは失火であったが 127 00:11:10,210 --> 00:11:15,380 民心の安定のためには 犯人が必要であった 128 00:11:15,380 --> 00:11:18,020 憲兵副総監ブレンターノ大将が 129 00:11:18,020 --> 00:11:20,820 いくつかの犯人候補の 中から選んだのは 130 00:11:20,820 --> 00:11:23,720 憂国騎士団の残党であった 131 00:11:23,720 --> 00:11:27,590 調査の結果 憂国騎士団と 地球教団の間に 132 00:11:27,590 --> 00:11:31,260 資金や人員の面で 関係があったことが判明すると 133 00:11:31,260 --> 00:11:34,030 容赦のない弾圧が加えられた 134 00:11:34,030 --> 00:11:37,240 憂国騎士団や 地球教団に関係していた者 135 00:11:37,240 --> 00:11:40,540 2万4600名が 検挙の対象となったが 136 00:11:40,540 --> 00:11:44,240 実際に検挙された者は 2万名に満たなかった 137 00:11:53,650 --> 00:11:56,660 うち5200名が抵抗して射殺され 138 00:11:56,660 --> 00:12:00,790 1000名が逃亡したからである 139 00:12:00,790 --> 00:12:03,500 こうしてハイネセンの 治安は回復したが 140 00:12:03,500 --> 00:12:09,300 都市の復興は 後日の重大な 課題として残されることとなった 141 00:12:09,300 --> 00:12:12,710 3月19日 ロイエンタール元帥の処分が 142 00:12:12,710 --> 00:12:15,340 カイザーから発表される 143 00:12:15,340 --> 00:12:18,680 ロイエンタールには 先日の大火に伴う混乱を 144 00:12:18,680 --> 00:12:21,150 最小限にとどめた功績があり 145 00:12:21,150 --> 00:12:25,090 恐らく 極めて軽い処分となるで あろうことが予想されてはいた 146 00:12:25,090 --> 00:12:27,920 だがラインハルトの次の一言が 147 00:12:27,920 --> 00:12:31,460 一瞬 諸将の心に霜を降らせた 148 00:12:31,460 --> 00:12:36,360 ロイエンタール元帥 卿の統帥本部総長の職を解く 149 00:12:44,770 --> 00:12:46,770 代わって卿に命じる 150 00:12:46,770 --> 00:12:49,540 我が帝国の ノイエ・ラントの総督として 151 00:12:49,540 --> 00:12:52,280 惑星ハイネセンに駐留し 152 00:12:52,280 --> 00:12:57,450 旧同盟領全域の政治及び軍事を ことごとく掌管せよ 153 00:12:57,450 --> 00:13:00,320 ノイエ・ラント総督は 地位と待遇において 154 00:13:00,320 --> 00:13:03,120 各省の尚書に匹敵するものであり 155 00:13:03,120 --> 00:13:06,490 皇帝に対してのみ 責任を負うものとする 156 00:13:06,490 --> 00:13:09,530 ロイエンタールは 統帥本部総長 就任以前に 157 00:13:09,530 --> 00:13:11,970 彼が指揮していた艦隊を与えられ 158 00:13:11,970 --> 00:13:14,600 更にクナップシュタイン グリルパルツァーの両艦隊を 159 00:13:14,600 --> 00:13:16,540 旗下に収めることとなった 160 00:13:16,540 --> 00:13:20,070 その結果 彼は艦艇3万5800隻 161 00:13:20,070 --> 00:13:25,880 将兵522万6400名という大軍を 統率する身となったのである 162 00:13:25,880 --> 00:13:27,810 カイザー・ラインハルト自身に次ぐ 163 00:13:27,810 --> 00:13:33,590 これは銀河帝国において 第2の強大な武力集団であった 164 00:13:33,590 --> 00:13:37,460 統帥本部は余が自ら これを統括する 165 00:13:37,460 --> 00:13:40,230 幕僚総監を置いて 余を補佐させるが 166 00:13:40,230 --> 00:13:44,200 この職には シュタインメッツ上級大将をあてる 167 00:13:44,200 --> 00:13:47,000 ノイエ・ラント総督府が 成立するからには 168 00:13:47,000 --> 00:13:49,900 ガンダルヴァ星系に駐屯する 卿の任務も 169 00:13:49,900 --> 00:13:52,200 完了したものと みなしてよいだろう 170 00:13:55,640 --> 00:14:00,150 実は この席をラインハルトは最初 ヒルダのために用意したのだが 171 00:14:00,150 --> 00:14:03,620 一兵も指揮したことがない身では 諸将にはばかりがあるとして 172 00:14:03,620 --> 00:14:06,920 ヒルダが固辞したのであった 173 00:14:06,920 --> 00:14:10,660 ルッツ上級大将は イゼルローン要塞失陥の責から 174 00:14:10,660 --> 00:14:14,390 前線を退き フェザーン警備司令官に任ずる 175 00:14:14,390 --> 00:14:17,400 代わってオーディンより ワーレン上級大将を召還し 176 00:14:17,400 --> 00:14:20,630 戦列に参加させる ただし 177 00:14:20,630 --> 00:14:24,000 ただし以上の人事のうち ノイエ・ラントに関わる者は 178 00:14:24,000 --> 00:14:26,370 イゼルローン要塞にある ヤン・ウェンリー一党を 179 00:14:26,370 --> 00:14:29,270 屈服させたのちに 発効するものである 180 00:14:32,750 --> 00:14:34,680 諸勢力が妄動せぬうちに 181 00:14:34,680 --> 00:14:37,180 余はヤン・ウェンリーと その一党を討つ 182 00:14:37,180 --> 00:14:41,190 彼に時を貸せば その戦力が強化されるだけでなく 183 00:14:41,190 --> 00:14:44,990 余と余の誇る軍隊とが 一個人の奇略を恐れて 184 00:14:44,990 --> 00:14:48,800 宇宙統一の責務を怠ったと 喧伝されるであろう 185 00:14:48,800 --> 00:14:51,400 ここに宣言する 余はヤン・ウェンリーを 186 00:14:51,400 --> 00:14:54,270 余の前にひざまずかせぬ限り オーディンはおろか 187 00:14:54,270 --> 00:14:56,370 フェザーンにも帰らぬことを 188 00:14:58,440 --> 00:15:01,740 ジーク・カイザー・ラインハルト 189 00:15:01,740 --> 00:15:05,450 ジーク・カイザー・ラインハルト! 190 00:15:05,450 --> 00:15:09,120 ジーク・カイザー・ラインハルト 191 00:15:09,120 --> 00:15:12,420 ジーク・カイザー・ラインハルト! 192 00:15:24,970 --> 00:15:30,500 陛下 彼女をどうなさいますか? 193 00:15:30,500 --> 00:15:32,870 ロイエンタール元帥の 私邸にいたという 194 00:15:32,870 --> 00:15:35,610 リヒテンラーデ候の 一族の女性です 195 00:15:35,610 --> 00:15:40,850 ああ 妊娠していると聞いたが 中絶させれば問題なかろう 196 00:15:40,850 --> 00:15:44,220 妊娠して 既に7ヵ月ということです 197 00:15:44,220 --> 00:15:47,650 この時期になっての中絶は 危険が大きすぎます 198 00:15:47,650 --> 00:15:50,490 では どうしたらよいと フロイラインは思う? 199 00:15:50,490 --> 00:15:52,730 お許しを得て申し上げます 200 00:15:52,730 --> 00:15:56,130 最善であるか 必ずしも自信はございませんが 201 00:15:56,130 --> 00:16:00,430 ロイエンタール元帥の私邸から どこかの施設へ彼女を移し 202 00:16:00,430 --> 00:16:04,340 出産ののち 生まれた子供は 養子に出してはいかがでしょうか 203 00:16:04,340 --> 00:16:08,510 今すぐフェザーンから元の流刑地へ 戻すというわけにはいかぬかな? 204 00:16:08,510 --> 00:16:10,440 宇宙船のワープが 205 00:16:10,440 --> 00:16:14,980 この時期の胎児に及ぼす 悪影響を考えますと… 206 00:16:14,980 --> 00:16:17,680 分かった フロイラインに任せる 207 00:16:21,820 --> 00:16:24,060 もう この方の関心は 208 00:16:24,060 --> 00:16:27,660 ヤン・ウェンリーとの戦いに 向いてしまっているのだわ 209 00:16:27,660 --> 00:16:31,330 ヤン・ウェンリーを討ち 完全に宇宙を統一なさったら 210 00:16:31,330 --> 00:16:35,040 オーディンへ戻って 姉君にお会いになれますわね 211 00:16:35,040 --> 00:16:38,040 出すぎたことを 言わないでもらおう フロイライン 212 00:16:38,040 --> 00:16:40,770 あなたには関係のないことだ 213 00:16:40,770 --> 00:16:43,570 はい 申し訳ございません 214 00:16:47,180 --> 00:16:51,720 カイザー・ラインハルトと ロイエンタールの亀裂は修復したみたいね 215 00:16:51,720 --> 00:16:56,260 粛清するどころか 旧同盟領の総督に任じるなんて 216 00:16:56,260 --> 00:16:59,290 あなたの工作は逆効果も いいところだったのじゃない? 217 00:16:59,290 --> 00:17:02,000 確かに修復したかに見えるな 218 00:17:02,000 --> 00:17:05,570 だがカイザーがロイエンタールに 与えた地位と戦力は 219 00:17:05,570 --> 00:17:08,300 一臣下には巨大すぎるものだ 220 00:17:08,300 --> 00:17:12,710 少なくとも軍務尚書 オーベルシュタインなどは そう思うだろう 221 00:17:12,710 --> 00:17:15,910 亀裂は隠れただけで 決して消えてはいない 222 00:17:15,910 --> 00:17:18,310 あなたが広げにかかるしね 223 00:17:18,310 --> 00:17:23,080 いま一つ カイザーの弱点は あの お美しい姉君だ 224 00:17:23,080 --> 00:17:26,050 グリューネワルト太后妃が 害されるようなことがあれば 225 00:17:26,050 --> 00:17:28,360 カイザーは逆上する 226 00:17:28,360 --> 00:17:32,230 英雄も名君も消え去って 激情家の小僧だけが残る 227 00:17:32,230 --> 00:17:34,890 そうなれば御しやすいと 思ってるわけ? 228 00:17:34,890 --> 00:17:38,900 少なくとも逆上する以前よりはな 229 00:17:38,900 --> 00:17:42,370 でも果たして成功するかしらね 230 00:17:42,370 --> 00:17:45,940 成功しなくてもよいのだ たとえ未遂でも 231 00:17:45,940 --> 00:17:50,110 そのような暴挙が企図された というだけで十分に効果がある 232 00:17:50,110 --> 00:17:55,750 金髪の小僧も 前進と上昇だけが 奴の人生ではないと悟るだろう 233 00:17:55,750 --> 00:17:59,620 奴の権勢は 拡大の一方で空洞化しつつある 234 00:17:59,620 --> 00:18:04,490 奴は膨張する 風船の上に立っているのだ 235 00:18:04,490 --> 00:18:09,060 姉が刺客に狙われたとあれば カイザー・ラインハルトは 236 00:18:09,060 --> 00:18:12,570 ノイエ・ラントを放っておいて 姉に会いに戻るだろう 237 00:18:12,570 --> 00:18:15,970 その時 カイザーと隙を生じた ロイエンタール元帥が 238 00:18:15,970 --> 00:18:18,910 堕天使となる誘惑に 耐えていかれるかな 239 00:18:18,910 --> 00:18:21,570 どうせ あなたが 扇動するんでしょう 240 00:18:21,570 --> 00:18:25,350 必要性がどうこう言う前に 火の気が少しでもあるところに 241 00:18:25,350 --> 00:18:28,110 油をまくのが好きなのだから 242 00:18:28,110 --> 00:18:30,050 もしかしてハイネセンの大火も 243 00:18:30,050 --> 00:18:32,820 あなたの 仕組んだことじゃなくって? 244 00:18:32,820 --> 00:18:36,690 いや 高く評価してもらって 恐縮だが あれは偶然だ 245 00:18:36,690 --> 00:18:39,130 あまり方々に火を放ちすぎると 246 00:18:39,130 --> 00:18:42,530 消化する前に 自分自身が焼死することになる 247 00:18:42,530 --> 00:18:47,430 だが ひとたび発生した火災だ できれば有効に利用したいものだ 248 00:18:47,430 --> 00:18:50,300 あなたは 廃物利用の名人ですものね 249 00:18:50,300 --> 00:18:53,640 道具箱には いろいろしまってあるし 250 00:18:53,640 --> 00:18:55,910 幼帝エルウィン・ヨーゼフ2世 251 00:18:55,910 --> 00:18:59,350 ランズベルク伯 シューマッハ元大佐 252 00:18:59,350 --> 00:19:02,820 フェザーンの地球教徒… どうだ?ドミニク 253 00:19:02,820 --> 00:19:05,020 ひとつ 私の子供を産んでみないか 254 00:19:08,190 --> 00:19:10,860 あなたに殺させるために? 255 00:19:10,860 --> 00:19:12,960 ごめん被るわ 256 00:19:19,230 --> 00:19:21,170 そうではない ドミニク 257 00:19:21,170 --> 00:19:24,900 私を殺させるためにさ 258 00:19:24,900 --> 00:19:29,680 宇宙歴800年 新帝国歴2年3月23日 259 00:19:29,680 --> 00:19:32,580 ビッテンフェルト ファーレンハイトの両提督は 260 00:19:32,580 --> 00:19:36,920 旗下の艦隊を率いて イゼルローン方面に向けて進発した 261 00:19:36,920 --> 00:19:38,850 ミッターマイヤー ロイエンタール 262 00:19:38,850 --> 00:19:42,260 ミュラー アイゼナッハ シュタインメッツらの諸将も 263 00:19:42,260 --> 00:19:45,990 大遠征軍の進発準備を 完璧に整えつつある 264 00:19:45,990 --> 00:19:49,230 フェザーン回廊を通って 旧同盟領を縦断し 265 00:19:49,230 --> 00:19:52,630 イゼルローン回廊を通って 帝国本土へ帰還する 266 00:19:52,630 --> 00:19:54,700 構想といい 実行力といい 267 00:19:54,700 --> 00:19:57,470 ラインハルト以外の 何者もなし得ぬであろう 268 00:19:57,470 --> 00:20:00,110 壮麗を極めた作戦であった 269 00:20:00,110 --> 00:20:04,110 余は呪われた 生まれつきかもしれぬ 270 00:20:04,110 --> 00:20:06,510 え? 271 00:20:06,510 --> 00:20:09,250 平和よりも戦いを好むのだ 272 00:20:09,250 --> 00:20:13,050 流血によってしか 人生を彩り得なくなっている 273 00:20:13,050 --> 00:20:16,290 あるいは他に やりようがあるのかもしれぬのに 274 00:20:16,290 --> 00:20:19,130 でも それは陛下が宇宙の統一を 275 00:20:19,130 --> 00:20:21,730 願っていらっしゃるからでは ありませんか? 276 00:20:21,730 --> 00:20:24,630 統一が成れば 自然に平和になります 277 00:20:24,630 --> 00:20:26,630 それにお飽きになったら本当に 278 00:20:26,630 --> 00:20:31,140 別の銀河系へいらっしゃれば よろしいではありませんか 279 00:20:31,140 --> 00:20:35,440 お前は優しい子だな よく余のことを思ってくれる 280 00:20:35,440 --> 00:20:40,040 余は余のことを思ってくれる者を 幸せにしてやりたいのだが 281 00:20:42,050 --> 00:20:44,150 よっ 282 00:20:46,650 --> 00:20:49,660 やれやれ 帝国軍大将とも あろうお方が 283 00:20:49,660 --> 00:20:52,860 芝生で逆立ちですか? 284 00:20:52,860 --> 00:20:56,230 そういうところは 昔と少しも変わらないのね 285 00:20:56,230 --> 00:21:00,100 変わりましたよ 心外だな 286 00:21:00,100 --> 00:21:03,600 変わりましたよ 姉上 287 00:21:03,600 --> 00:21:06,510 あの頃のように 自分の愛情と熱意が 288 00:21:06,510 --> 00:21:11,340 その対象となる人々の幸せを 約束すると信じることが 289 00:21:11,340 --> 00:21:13,980 できなくなりました 290 00:21:13,980 --> 00:21:19,290 ラインハルト様 宇宙を手にお入れください 291 00:21:19,290 --> 00:21:22,320 疲れたら 私のところへ いらっしゃい 292 00:21:22,320 --> 00:21:25,520 でも あなたは まだ疲れてはいけません 293 00:21:34,300 --> 00:21:37,840 ラインハルトは かつて立てた誓約を守るため 294 00:21:37,840 --> 00:21:41,810 決戦の場となるであろう イゼルローン回廊へ向かう 295 00:21:41,810 --> 00:21:44,380 一方 そのイゼルローンでは 296 00:21:44,380 --> 00:21:46,850 ラインハルトの 壮麗な意図を察して 297 00:21:46,850 --> 00:21:49,750 ヤン・ウェンリーも 怠惰の衣を脱ぎ捨て 298 00:21:49,750 --> 00:21:53,620 迎撃作戦の立案にかかっていた 299 00:21:53,620 --> 00:21:57,220 彼の部下たちも 伊達と酔狂の全てを懸けて 300 00:21:57,220 --> 00:22:01,320 司令官の作戦に従うべく 用意を整えている 301 00:23:59,080 --> 00:24:01,310 巨大なイゼルローン要塞も 302 00:24:01,310 --> 00:24:03,780 内部に充満する 人的エネルギーによって 303 00:24:03,780 --> 00:24:06,090 飽和状態に達するようで 304 00:24:06,090 --> 00:24:08,450 この生死を懸けた お祭り騒ぎを 305 00:24:08,450 --> 00:24:12,750 ユリアン・ミンツは のちに 細部まで思い出すことができた 306 00:24:17,160 --> 00:24:21,630 どのような別れが また どれほどの流血が彼らを待つのか 307 00:24:21,630 --> 00:24:24,900 それらを承知してはいても イゼルローン回廊は 308 00:24:24,900 --> 00:24:28,110 ヤン艦隊にとって 祭りの広場だった 309 00:24:28,110 --> 00:24:30,610 せいぜい陽気に 賑やかに 310 00:24:30,610 --> 00:24:34,810 彼らにしか成し得ない祭りを 楽しもうではないか 311 00:26:08,340 --> 00:26:11,910 宇宙歴800年 新帝国歴2年3月 312 00:26:11,910 --> 00:26:14,850 ラインハルト・フォン・ローエングラムと ヤン・ウェンリーは 313 00:26:14,850 --> 00:26:19,490 イゼルローン要塞からエル・ファシル星域に かけての解放回廊を巡って 314 00:26:19,490 --> 00:26:24,090 バーミリオン会戦以来 初めて 直接に戦火を交えようとしている 315 00:26:24,090 --> 00:26:27,960 それが彼ら両名にとって 最大の衝撃をもたらすことを 316 00:26:27,960 --> 00:26:31,960 彼ら自身も いまだ予測し得なかった 317 00:26:40,240 --> 00:26:44,610 ついに帝国軍は その強大な力を イゼルローンへと向けた 318 00:26:44,610 --> 00:26:47,610 最大の敵手たる ヤン・ウェンリーを討つために 319 00:26:47,610 --> 00:26:50,720 だが その足元で いくつかの陰謀が交錯し 320 00:26:50,720 --> 00:26:55,120 フェザーンでは帝国の要人を狙った 爆弾テロが発生した 321 00:26:55,120 --> 00:27:00,330 次回「銀河英雄伝説」 第77話「風は回廊へ」 322 00:27:00,330 --> 00:27:03,830 銀河の歴史が また1ページ