1 00:01:14,740 --> 00:01:19,210 宇宙暦800年 新帝国暦2年5月20日 2 00:01:19,210 --> 00:01:22,950 ようやく睡魔を満足させた ヤン艦隊の幕僚たちは 3 00:01:22,950 --> 00:01:25,450 カイザー・ラインハルトからの 申し入れについて 4 00:01:25,450 --> 00:01:28,350 討議できる状態になった 5 00:01:31,930 --> 00:01:35,530 最初にカイザー・ラインハルトを 回廊に引きずり込む 6 00:01:35,530 --> 00:01:38,930 次に会談のテーブルに 引きずり出す 7 00:01:38,930 --> 00:01:41,370 これが最初からの 狙いだったわけだから 8 00:01:41,370 --> 00:01:44,270 会談の申し入れを拒む理由はない 9 00:01:44,270 --> 00:01:47,580 しかし帝国軍が 我々に勝ち得ないからといって 10 00:01:47,580 --> 00:01:50,310 即 和平を求めるとも思えない 11 00:01:50,310 --> 00:01:53,810 ここは やはり罠である可能性も 考えるべきだろう 12 00:01:53,810 --> 00:01:56,350 講和をエサに ヤン提督をおびき出して 13 00:01:56,350 --> 00:01:58,650 謀殺するつもりではないか? 14 00:01:58,650 --> 00:02:01,460 いや その可能性は薄いと思う 15 00:02:01,460 --> 00:02:03,390 ん? 16 00:02:03,390 --> 00:02:05,630 理由はカイザーの人となりだ 17 00:02:05,630 --> 00:02:07,560 あのプライドの高い金髪の坊やが 18 00:02:07,560 --> 00:02:10,130 お得意の戦争で 勝てないからといって 19 00:02:10,130 --> 00:02:14,630 謀殺という手段に訴えるとは 想像しにくいな 20 00:02:17,740 --> 00:02:20,570 カイザーがそうでも その幕僚たちの中には 21 00:02:20,570 --> 00:02:23,780 いささか異なる価値観を 持った連中もいるでしょうよ 22 00:02:23,780 --> 00:02:27,110 多量の流血を見て しかも勝ち得なかった 23 00:02:27,110 --> 00:02:30,620 カイザーの戦争の天才としての 面目は失墜したはずで 24 00:02:30,620 --> 00:02:33,990 忠誠心過多 判断力過少の奴らが 25 00:02:33,990 --> 00:02:39,430 何か試みるということも あり得ると思いますがね 26 00:02:39,430 --> 00:02:42,960 いずれにしても 提督は会見に出向かれるだろう 27 00:02:42,960 --> 00:02:45,900 その時 僕も同行できるだろうか 28 00:02:45,900 --> 00:02:48,900 それにしても 戦いを好むカイザーが 29 00:02:48,900 --> 00:02:52,710 なぜ急に会見を 申し込む気になったのだろう 30 00:02:52,710 --> 00:02:56,610 ラインハルトが突然 ヤンとの会見を申し込んだことは 31 00:02:56,610 --> 00:03:00,310 帝国軍の中でも 驚きをもって迎えられた 32 00:03:00,310 --> 00:03:03,350 再三にわたり 今回の親征に反対していた 33 00:03:03,350 --> 00:03:06,050 ヒルデガルド・フォン・ マリーンドルフにしても 34 00:03:06,050 --> 00:03:10,660 そうした事態を期待してはいたが 予測してはいなかったのである 35 00:03:10,660 --> 00:03:13,560 あれほど正面から 軍事力を衝突させて 36 00:03:13,560 --> 00:03:16,900 ヤンを膝下に ねじ伏せることに 固執されたのに 37 00:03:16,900 --> 00:03:18,870 まさか発熱されたことによって 38 00:03:18,870 --> 00:03:22,540 弱気になられたわけでも あるまいし 39 00:03:22,540 --> 00:03:25,240 キルヒアイスが いさめに来たのだ 40 00:03:27,270 --> 00:03:30,180 キルヒアイスが言ったのだ 41 00:03:30,180 --> 00:03:33,080 「もう これ以上 ヤン・ウェンリーと争うのは」 42 00:03:33,080 --> 00:03:35,920 「およしください」と フッ 43 00:03:35,920 --> 00:03:38,920 あいつは死んでまで俺に意見する 44 00:03:41,720 --> 00:03:45,590 分かったよ キルヒアイス お前はいつもそうだ 45 00:03:45,590 --> 00:03:48,430 俺より たった2ヵ月 早く生まれただけなのに 46 00:03:48,430 --> 00:03:51,800 年上ぶって いつも俺のケンカを止める 47 00:03:51,800 --> 00:03:54,640 今の俺は お前より年上なんだぞ 48 00:03:54,640 --> 00:03:57,270 お前は年を取らないからな 49 00:03:57,270 --> 00:04:02,140 だけど分かった ヤン・ウェンリーと話し合ってみよう 50 00:04:02,140 --> 00:04:05,350 あくまで話し合ってみるだけだ 51 00:04:05,350 --> 00:04:08,650 決裂しないとは約束できないぞ 52 00:04:10,650 --> 00:04:13,690 結局 誰にもできなかったことを 53 00:04:13,690 --> 00:04:17,560 死者の霊だけが可能にしたのね 54 00:04:17,560 --> 00:04:19,760 でも それでは… 55 00:04:21,930 --> 00:04:23,930 それでもビッテンフェルトなどは 56 00:04:23,930 --> 00:04:27,100 決裂と決まるまでは 手を出さんだろうが 57 00:04:27,100 --> 00:04:29,940 ファーレンハイトとシュタインメッツの 部下たちの中には 58 00:04:29,940 --> 00:04:33,340 上官の敵を討ちたがっている者が 多くてな 59 00:04:33,340 --> 00:04:35,980 抑えるのに苦労をする 60 00:04:35,980 --> 00:04:38,610 何も敵を倒すばかりが策でもない 61 00:04:38,610 --> 00:04:42,080 イゼルローン回廊に 封じ込めてしまえばいいのだ 62 00:04:42,080 --> 00:04:45,990 連中がヤン・ウェンリー一人の才能と 人望によって統一されている以上 63 00:04:45,990 --> 00:04:47,990 そのまま気長に待って 64 00:04:47,990 --> 00:04:52,760 ヤンが老いて死ぬのを待つという 方法すら取り得るではないか 65 00:04:52,760 --> 00:04:55,700 だが その意味では帝国も同じか 66 00:04:55,700 --> 00:04:58,900 カイザーがお倒れになれば 指導者を失う 67 00:04:58,900 --> 00:05:02,170 ヤン・ウェンリーの基本戦略も そこにあるわけだが 68 00:05:02,170 --> 00:05:05,570 その前に まさか ご病気になられるとはな 69 00:05:07,580 --> 00:05:10,340 医者どもは 単なる過労だと言い立てるが… 70 00:05:10,340 --> 00:05:14,840 カイザーは 病で倒れるような方ではない 71 00:05:16,850 --> 00:05:20,850 カイザー・ラインハルトの武人と しての矜持は信用し得るとしても 72 00:05:20,850 --> 00:05:24,090 新帝国軍全てが ミッターマイヤー元帥のように 73 00:05:24,090 --> 00:05:26,430 信義の人というわけではあるまい 74 00:05:26,430 --> 00:05:30,800 謀殺というより 戦死した将兵の 復讐を図る者の暴発が 75 00:05:30,800 --> 00:05:33,400 抑えきれないということも 考え得る 76 00:05:33,400 --> 00:05:35,470 でしたら まず僭越ですが 77 00:05:35,470 --> 00:05:39,340 僕が提督の代理として カイザー・ラインハルトの元へ赴きます 78 00:05:39,340 --> 00:05:43,480 そして細部まで 条件やら提案やらを聞いてきて 79 00:05:43,480 --> 00:05:47,180 改めて提督が会談の場へ いらっしゃれば よろしいでしょう 80 00:05:47,180 --> 00:05:49,850 いや それはダメだねユリアン 81 00:05:49,850 --> 00:05:52,890 対等の立場で会談を求めてきた カイザーに対して 82 00:05:52,890 --> 00:05:55,120 礼を失することになる 83 00:05:55,120 --> 00:05:57,690 もし それでカイザーが感情を害し 84 00:05:57,690 --> 00:06:00,360 会談の要望を 捨てることにでもなれば 85 00:06:00,360 --> 00:06:03,960 和平の機会は永遠に 失われてしまうかもしれない 86 00:06:03,960 --> 00:06:07,770 そして今 帝国軍と 再び正面から戦えば 87 00:06:07,770 --> 00:06:10,040 まず勝算はない 88 00:06:10,040 --> 00:06:14,240 そうだな 将兵の疲労も 回復してはいないし 89 00:06:14,240 --> 00:06:16,210 第一 イゼルローンの生産規模では 90 00:06:16,210 --> 00:06:19,080 補給物資を調えるのに 時間がかかる 91 00:06:19,080 --> 00:06:22,950 更に決定的なのは 戦死者の 補充がきかないってことだ 92 00:06:22,950 --> 00:06:27,760 まして我々は フィッシャー中将を失った 93 00:06:27,760 --> 00:06:30,390 作戦を立てるだけでは勝てない 94 00:06:30,390 --> 00:06:34,930 それを完全に実行する能力が 艦隊になくては どうしようもない 95 00:06:34,930 --> 00:06:40,570 ここで会談の申し入れを 拒否したら自殺行為だよ 96 00:06:40,570 --> 00:06:44,240 まあ いいだろう カイザーから 会談を申し込ませたことは 97 00:06:44,240 --> 00:06:47,140 我々の実質的な勝利を意味する 98 00:06:47,140 --> 00:06:49,940 それに勇気づけられて フェザーンや旧同盟領で 99 00:06:49,940 --> 00:06:52,750 反帝国のゲリラ活動でも 起きてくれれば 100 00:06:52,750 --> 00:06:55,280 我々の立場は更に有利になる 101 00:06:55,280 --> 00:06:58,080 過剰な期待は禁物だがな 102 00:07:00,490 --> 00:07:05,830 さて そこで ヤンと同行する随員だが 103 00:07:05,830 --> 00:07:09,530 副官でもあるヤン夫人は 当然 同行するべきところだが 104 00:07:09,530 --> 00:07:11,470 あいにく風邪を引き込んでいて 105 00:07:11,470 --> 00:07:14,800 今日の会議にも 出られないくらいだからな 106 00:07:14,800 --> 00:07:18,510 かくいう俺も戦力の補充に 専念せねばならんから 107 00:07:18,510 --> 00:07:20,570 今回は遠慮しておく 108 00:07:20,570 --> 00:07:24,610 万が一に備えて やはり 優秀な護衛が必要でしょうな 109 00:07:24,610 --> 00:07:26,580 貴官はダメだ こんな時に 110 00:07:26,580 --> 00:07:30,080 要塞防御指揮官が 留守にしてどうする 111 00:07:30,080 --> 00:07:34,020 あの… 小官は? 112 00:07:34,020 --> 00:07:39,260 お前さんはヤンがいない間の 艦隊を預かる責任があるだろう 113 00:07:39,260 --> 00:07:43,800 うんうん それなら 責任のない小官が 114 00:07:43,800 --> 00:07:48,540 間違っても空戦の機会はないと 思うから 中佐の出番はないよ 115 00:07:48,540 --> 00:07:51,410 ヒヒヒ… 116 00:07:51,410 --> 00:07:53,810 ここは やはり常識豊かな者が… 117 00:07:53,810 --> 00:07:57,080 残って お目付け役を していただくということで 118 00:07:57,080 --> 00:08:00,480 司令部からは 小官が同行しましょう 119 00:08:03,820 --> 00:08:07,620 結局 高級士官の随員は 3名だけであった 120 00:08:07,620 --> 00:08:10,060 副参謀長のパトリチェフ少将 121 00:08:10,060 --> 00:08:12,760 ローゼンリッターの ブルームハルト中佐 122 00:08:12,760 --> 00:08:16,160 かつてビュコック元帥の 副官であったスール少佐である 123 00:08:16,160 --> 00:08:18,100 ブルームハルトは護衛役 124 00:08:18,100 --> 00:08:21,940 スールはビュコックじいさんの 代理として選ばれたのさ 125 00:08:21,940 --> 00:08:23,940 パトリチェフは? 126 00:08:23,940 --> 00:08:27,240 あれは引き立て役 それ以外に 何があるっていうんだよ 127 00:08:27,240 --> 00:08:30,480 引き立て役なら お前さんでも よかったじゃないか 128 00:08:30,480 --> 00:08:33,380 ケッ どうせ俺は トラブルメーカーですからね 129 00:08:33,380 --> 00:08:37,320 それにしても意外だったのは ユリアンを連れていかないことだな 130 00:08:37,320 --> 00:08:39,950 ユリアンを連れていったら どっちが随員だか 131 00:08:39,950 --> 00:08:44,050 分からなくなるからだろう ハハハ… 132 00:08:46,730 --> 00:08:50,160 ユリアン 留守を頼むよ 133 00:08:50,160 --> 00:08:53,700 「お任せください」と 申し上げたいところですけど 134 00:08:53,700 --> 00:08:56,200 僕はお供できないのが残念です 135 00:08:56,200 --> 00:09:01,070 僕ではお役に立てませんか? パトリチェフ少将より 136 00:09:01,070 --> 00:09:03,480 フフッ バカだな 137 00:09:03,480 --> 00:09:06,380 私は ずっと お前を頼りにしてきたよ 138 00:09:06,380 --> 00:09:09,780 6年前 お前が体より 大きなトランクを引きずって 139 00:09:09,780 --> 00:09:14,190 私の家に来た時から ずっと頼りにしてきたさ 140 00:09:14,190 --> 00:09:16,590 ありがとうございます でも… 141 00:09:18,560 --> 00:09:22,360 私が行けないのだったら 代わりにお前に行ってもらうよ 142 00:09:22,360 --> 00:09:25,730 私がいるから私は行く それだけのことさ 143 00:09:25,730 --> 00:09:29,340 はい とにかく吉報をお待ちします お気をつけて 144 00:09:29,340 --> 00:09:31,970 うん ところでユリアン はい? 145 00:09:31,970 --> 00:09:34,240 正直なところ キャゼルヌの娘と 146 00:09:34,240 --> 00:09:37,140 シェーンコップの娘と どっちが好みなんだ? 147 00:09:37,140 --> 00:09:41,850 お前の決断次第で 私も覚悟を 決めなくちゃならんからな 148 00:09:41,850 --> 00:09:44,320 提督! ヒュー! 149 00:09:44,320 --> 00:09:47,690 ハハハ… 150 00:09:47,690 --> 00:09:52,530 この時期 遠くフェザーンにある 軍務尚書オーベルシュタイン元帥から 151 00:09:52,530 --> 00:09:56,400 1つの提案がラインハルトの元に 具申されてきた 152 00:09:56,400 --> 00:09:58,770 それは和平提案を装って 153 00:09:58,770 --> 00:10:01,370 ヤン・ウェンリーを イゼルローンからおびき出すという 154 00:10:01,370 --> 00:10:03,300 ありがちな謀略であったが 155 00:10:03,300 --> 00:10:05,310 更に辛辣だったのは 156 00:10:05,310 --> 00:10:07,910 ただヤンを呼びつけても 来ないであろうから 157 00:10:07,910 --> 00:10:13,550 重臣を誰か1人 使者の名目で 人質に出すという点であった 158 00:10:13,550 --> 00:10:16,580 油断したヤンが帝国軍の元に やってきたところを殺して 159 00:10:16,580 --> 00:10:18,720 後の憂いを断つ 160 00:10:18,720 --> 00:10:21,620 当然 人質となった者は ヤンの部下たちによって 161 00:10:21,620 --> 00:10:23,560 殺害されるであろうから 162 00:10:23,560 --> 00:10:28,030 その報復を名目として 指導者なきヤン一党を制圧すれば 163 00:10:28,030 --> 00:10:31,900 全宇宙はローエングラム王朝の もとに統一される 164 00:10:31,900 --> 00:10:34,330 だが犠牲となることを承知で 165 00:10:34,330 --> 00:10:38,210 人質になりにいく重臣が いるだろうか 166 00:10:38,210 --> 00:10:43,910 使者として他に候補者なき場合は 臣が その任に当たりましょう 167 00:10:43,910 --> 00:10:46,880 だが なぜか 賞賛する気にはなれんな 168 00:10:46,880 --> 00:10:49,180 あのオーベルシュタインと 無理心中などという 169 00:10:49,180 --> 00:10:51,120 死に方をさせられたのでは 170 00:10:51,120 --> 00:10:54,590 ヤン・ウェンリーも 浮かばれんだろうよ 171 00:10:54,590 --> 00:10:58,990 第一 奴が人質になったところで ヤンが信用するものか 172 00:10:58,990 --> 00:11:02,600 いや いっそ奴のやりたいように させてやればよいのさ 173 00:11:02,600 --> 00:11:06,930 ただしオーベルシュタインが ヤンの一党に殺害されたあと 174 00:11:06,930 --> 00:11:10,470 俺たちが その復讐を してやる義務もないはずだ 175 00:11:10,470 --> 00:11:12,970 そのとおりだ ヤン・ウェンリーよりも 176 00:11:12,970 --> 00:11:16,280 むしろ あのオーベルシュタインが いなければ 宇宙は平和 177 00:11:16,280 --> 00:11:18,210 ローエングラム王朝も安泰 178 00:11:18,210 --> 00:11:22,220 万事めでたしめでたしと いうものさ 179 00:11:22,220 --> 00:11:25,490 いずれにせよ このような不名誉な提案を 180 00:11:25,490 --> 00:11:28,390 陛下がお取り上げにならなくて よかったというものだな 181 00:11:28,390 --> 00:11:30,790 うむ 182 00:11:30,790 --> 00:11:33,630 5月25日 ヤン・ウェンリーは 183 00:11:33,630 --> 00:11:36,860 カイザー・ラインハルトとの 2度目の会談に応じるため 184 00:11:36,860 --> 00:11:39,200 イゼルローン要塞を離れる 185 00:11:39,200 --> 00:11:41,640 ユリシーズじゃないんですか? 186 00:11:41,640 --> 00:11:43,570 戦艦で行くのも剣呑だし 187 00:11:43,570 --> 00:11:46,170 レダⅡは2年前に 査問会に呼びつけられた時に 188 00:11:46,170 --> 00:11:48,110 乗っていった船だ 189 00:11:48,110 --> 00:11:51,780 まあ とにかくあの時は 無事に帰ってこられたのだから 190 00:11:51,780 --> 00:11:53,980 縁起としては悪くないだろ 191 00:11:55,980 --> 00:11:58,050 なんですか あの団体さんは 192 00:11:58,050 --> 00:12:00,620 革命政府の代表団だ 193 00:12:00,620 --> 00:12:03,390 政府としては 交渉の主導権を握りたいらしい 194 00:12:03,390 --> 00:12:06,430 あきれた 何を勘違いしてるんだか 195 00:12:06,430 --> 00:12:09,100 今回の会談は カイザー・ラインハルトが 196 00:12:09,100 --> 00:12:11,900 ヤン提督に個人的に 申し込んだようなもので 197 00:12:11,900 --> 00:12:15,900 革命政府なんか カイザーの眼中にないでしょうに 198 00:12:15,900 --> 00:12:20,540 だがな 事が政治的な話になれば ヤンには交渉権限はない 199 00:12:20,540 --> 00:12:22,940 これは原則的な事実だ 200 00:12:22,940 --> 00:12:25,810 それに政府に断りなく 会談に応じてしまったことを 201 00:12:25,810 --> 00:12:29,650 ヤンが気に病んでいてな なるべく 政府の顔を立てたいんだろ 202 00:12:29,650 --> 00:12:32,890 こちらの随員を最小限にしたのも そのためさ 203 00:12:32,890 --> 00:12:35,290 やれやれ いつもながら… 204 00:12:42,000 --> 00:12:45,870 フレデリカ ちょっと 宇宙一の美男子に会ってくるよ 205 00:12:45,870 --> 00:12:49,370 2週間ぐらいで帰ってくる 気をつけて行ってらしてね 206 00:12:49,370 --> 00:12:51,300 あ ちょっと… 髪が乱れてるわ 207 00:12:51,300 --> 00:12:53,870 ああ… いいよ そんなこと 208 00:12:53,870 --> 00:12:59,170 ダメです 宇宙で2番目の 美男子にお会いになるんだから 209 00:13:04,250 --> 00:13:06,250 それじゃ 210 00:13:14,030 --> 00:13:16,160 バイバイ 211 00:13:16,160 --> 00:13:18,500 ねえ ママ 212 00:13:18,500 --> 00:13:21,900 ママとパパも あんなことしたことある? 213 00:13:24,400 --> 00:13:26,540 むろん ありますとも 214 00:13:26,540 --> 00:13:29,440 今はしないのね? いい?シャルロット 215 00:13:29,440 --> 00:13:31,380 あなたは1年生の時に 教わったことを 216 00:13:31,380 --> 00:13:33,910 4年生になっても習おうとは 思わないでしょ? 217 00:13:33,910 --> 00:13:36,010 それと同じよ 218 00:13:41,690 --> 00:13:44,990 こうしてユリアンはヤンと別れた 219 00:13:44,990 --> 00:13:48,660 後日 どれほどユリアンは 苦悩したことだろう 220 00:13:48,660 --> 00:13:51,570 ラインハルトという太陽を 直視したために 221 00:13:51,570 --> 00:13:54,670 他の星の存在に 気づかなかったのである 222 00:13:57,740 --> 00:14:02,010 ヤンの委託を受けてフェザーン方面を 駆け回っていたボリス・コーネフが 223 00:14:02,010 --> 00:14:05,510 イゼルローンとの交信可能宙域まで たどり着いたのは 224 00:14:05,510 --> 00:14:08,380 ヤンが要塞を出立した 3日後のことである 225 00:14:08,380 --> 00:14:11,080 ヤンはまだ生きてるか? 226 00:14:11,080 --> 00:14:14,960 お前さんの冗談が水準に 達していたことは一度もないが 227 00:14:14,960 --> 00:14:18,190 今度のときたら 海溝の底に沈んでいるな 228 00:14:18,190 --> 00:14:20,130 あいにくと死に神は バカンス中らしくて 229 00:14:20,130 --> 00:14:22,560 元帥は のうのうと生きているよ 230 00:14:22,560 --> 00:14:25,030 冗談を言っている場合じゃない! 231 00:14:25,030 --> 00:14:27,470 精神病院を脱走した アンドリュー・フォークが 232 00:14:27,470 --> 00:14:30,240 ヤンの暗殺を企てて こっちに向かったんだ 233 00:14:30,240 --> 00:14:32,240 何! 234 00:14:34,110 --> 00:14:36,480 アンドリュー・フォークの低能め 235 00:14:36,480 --> 00:14:41,110 4年前にアムリッツァで 2000万人殺したくせに まだ不足か 236 00:14:41,110 --> 00:14:45,990 殺したければ自分を殺せ それが文明と環境のためだ 237 00:14:45,990 --> 00:14:49,690 奴にとっては生涯かけた 大事業なのだろうさ 238 00:14:49,690 --> 00:14:52,590 ヤン・ウェンリーを 凌駕するというのはな 239 00:14:52,590 --> 00:14:56,500 実績で及ばなければ 当の競争相手を殺すという境地に 240 00:14:56,500 --> 00:14:58,500 ようやく達したわけだ 241 00:14:58,500 --> 00:15:01,300 これはフォーク一人の 策謀でしょうか 242 00:15:01,300 --> 00:15:04,940 何者かが 彼を自由にしたのだとすれば… 243 00:15:04,940 --> 00:15:09,240 すぐにヤン提督を追いかけて 連れ戻そう 万事それからだ 244 00:15:09,240 --> 00:15:12,710 多数で追うと 帝国軍に要らぬ 疑念を持たせることもあるから 245 00:15:12,710 --> 00:15:15,220 少数でいい 246 00:15:15,220 --> 00:15:17,580 こうして混乱を収拾し得ぬまま 247 00:15:17,580 --> 00:15:21,320 6隻の戦艦がヤンを追って イゼルローンを発進した 248 00:15:21,320 --> 00:15:24,320 事は内密にな 特に… 249 00:15:24,320 --> 00:15:27,830 病床のヤン夫人には 知られないように注意しろ 250 00:15:27,830 --> 00:15:30,100 はっ! 251 00:15:30,100 --> 00:15:32,100 頼むぞ 252 00:15:38,440 --> 00:15:40,370 提督 253 00:15:40,370 --> 00:15:44,010 5月31日 23時50分 254 00:15:44,010 --> 00:15:46,410 ロムスキーらとの 食事を済ませたヤンは 255 00:15:46,410 --> 00:15:49,920 就寝までのひと時を 三次元チェスで過ごしていた 256 00:15:49,920 --> 00:15:53,690 チェックメイト ああ またやられた 257 00:15:53,690 --> 00:15:57,420 我ながら こんなに弱いとは 思わなんだ 258 00:15:57,420 --> 00:16:00,330 ユリアン どうしているか 259 00:16:00,330 --> 00:16:04,000 イゼルローン要塞との連絡は 途絶したままか? 260 00:16:04,000 --> 00:16:07,370 はっ 電磁嵐の影響だけでも ないようで 261 00:16:07,370 --> 00:16:11,240 帝国軍が戦闘中にジャマーでも まいたのでしょうか 262 00:16:11,240 --> 00:16:13,570 うーん 263 00:16:13,570 --> 00:16:17,580 さて気分がよくなったところで 今夜はもう休むとするか 264 00:16:17,580 --> 00:16:20,010 勝ち逃げですか!あ あの… 265 00:16:20,010 --> 00:16:22,750 明晩にでも リターンマッチをお願いしますよ 266 00:16:22,750 --> 00:16:26,350 いいとも また もんでやるよ じゃ 267 00:16:28,290 --> 00:16:33,060 あの噂は本当だったか 何がです? 268 00:16:33,060 --> 00:16:35,130 今回の随員の人選 269 00:16:35,130 --> 00:16:38,770 実はヤン提督が三次元チェスで 勝てそうな相手だけを 270 00:16:38,770 --> 00:16:42,070 選んだという あっ?あ… 271 00:16:57,150 --> 00:16:59,620 艦長 帝国軍より入電です 272 00:16:59,620 --> 00:17:01,720 ん? 273 00:17:07,690 --> 00:17:10,660 閣下 お休みのところ 申し訳ありません 274 00:17:10,660 --> 00:17:15,100 帝国軍より入電で 元同盟軍准将アンドリュー・フォークが 275 00:17:15,100 --> 00:17:17,540 収容先の精神病院を脱走 276 00:17:17,540 --> 00:17:21,040 閣下の暗殺を謀って 武装商船を強奪し 277 00:17:21,040 --> 00:17:25,410 この宙域に向かっているとの ことです 278 00:17:25,410 --> 00:17:30,010 閣下? すぐ行く 詳しい話はそちらで 279 00:17:38,530 --> 00:17:41,090 警戒態勢を発令しました 280 00:17:41,090 --> 00:17:43,930 帝国軍からは その後 当方の護衛のために 281 00:17:43,930 --> 00:17:46,870 駆逐艦2隻を派遣したとの 連絡がありましたが 282 00:17:46,870 --> 00:17:50,700 なにぶん通信状態が 芳しくありませんので… 283 00:17:50,700 --> 00:17:54,910 ああ 導眠剤を飲んだせいで 眠くてね 284 00:17:54,910 --> 00:17:57,710 レーダーに反応! 警告のあった武装商船のようです 285 00:17:57,710 --> 00:17:59,710 戦闘用意 286 00:18:04,380 --> 00:18:06,320 撃て! 287 00:18:06,320 --> 00:18:08,690 応戦しろ 主砲 発射用意 288 00:18:08,690 --> 00:18:11,490 武装商船の後方に2隻の帝国艦 289 00:18:11,490 --> 00:18:13,490 何? 290 00:18:16,900 --> 00:18:20,100 おお! 帝国艦が発砲 291 00:18:24,370 --> 00:18:26,370 なぜだ! 292 00:18:31,010 --> 00:18:32,980 帝国艦より入電! 293 00:18:32,980 --> 00:18:34,980 どうします? 294 00:18:34,980 --> 00:18:37,480 よし つなげ 295 00:18:37,480 --> 00:18:40,690 テロリストは処理しました ご安心いただきたい 296 00:18:40,690 --> 00:18:44,520 ついては 我々が閣下を カイザーの元へご案内するにつき 297 00:18:44,520 --> 00:18:47,390 ぜひ直接のご挨拶を させていただきたいのですが 298 00:18:47,390 --> 00:18:50,300 我々の代表はロムスキー議長だ 299 00:18:50,300 --> 00:18:52,930 議長のご判断に従う 300 00:18:52,930 --> 00:18:57,340 ロムスキーの判断は 紳士としての 節度にかなうものだった 301 00:18:57,340 --> 00:19:02,180 すなわち相手の申し出を受け 接舷を許可したのである 302 00:19:02,180 --> 00:19:05,450 アンドリュー・フォークがね 303 00:19:05,450 --> 00:19:08,180 陰気で尊大で嫌な野郎でしたな 304 00:19:08,180 --> 00:19:10,120 秀才だったのですが 305 00:19:10,120 --> 00:19:13,790 現実のほうが彼に 歩み寄ってくれなかったのですな 306 00:19:13,790 --> 00:19:16,320 方程式や公式で 解決できる問題なら 307 00:19:16,320 --> 00:19:19,030 手際よく片づけたに 違いありませんが 308 00:19:19,030 --> 00:19:21,930 マニュアルのない世界では 生きられなかったらしい 309 00:19:21,930 --> 00:19:25,630 わざわざ接舷する必要が ありますかね 310 00:19:30,370 --> 00:19:33,270 ヤン提督は? 待機させております 311 00:19:33,270 --> 00:19:36,580 今回のことでも 独断専行が目につきますので 312 00:19:36,580 --> 00:19:41,010 ここは外交 渉外の優先権は 我々 政府にあることを 313 00:19:41,010 --> 00:19:43,480 はっきりさせておくべきだと 思いまして 314 00:19:43,480 --> 00:19:45,480 うーむ 315 00:19:51,160 --> 00:19:54,160 いないぞ 気づかれたか? 316 00:19:54,160 --> 00:19:56,960 ヤン・ウェンリーはどこにいる 317 00:19:56,960 --> 00:20:00,370 あなた方が何を求めているのかは 知らないが 318 00:20:00,370 --> 00:20:03,370 銃を突きつけるとは非礼でしょう 319 00:20:03,370 --> 00:20:05,570 まず銃をしまいなさい 320 00:20:16,650 --> 00:20:21,550 慌てるな!奴らの後を追えば ヤン・ウェンリーの元へたどり着ける 321 00:20:27,290 --> 00:20:29,890 おう… うわわ… 322 00:20:34,670 --> 00:20:37,370 伏せててください!提督 323 00:20:45,980 --> 00:20:48,680 逃げてください 提督! 提督! 324 00:20:58,560 --> 00:21:00,560 うわあああ! 325 00:21:09,270 --> 00:21:11,270 うっ!うう… 326 00:21:13,410 --> 00:21:15,410 逃げてください! 327 00:21:48,910 --> 00:21:52,210 よせよ 痛いじゃないかね 328 00:22:07,330 --> 00:22:10,030 ヤンはこの奥だ 重い 動かん 329 00:22:22,280 --> 00:22:24,480 未確認艦 急速接近 330 00:22:30,120 --> 00:22:32,820 レダⅡに強行接舷 始動! 331 00:22:58,650 --> 00:23:01,880 ヤン提督はどこにいる 332 00:23:01,880 --> 00:23:03,820 言え! 333 00:23:03,820 --> 00:23:07,090 もはや この世のどこにもおらぬ 334 00:23:07,090 --> 00:23:09,090 こいつ! 335 00:23:13,460 --> 00:23:17,430 ユリアン!提督を救いに行け 俺もこいつらを掃討してから行く 336 00:23:17,430 --> 00:23:20,770 了解 337 00:23:20,770 --> 00:23:23,770 大丈夫 ユリシーズは強運の船だ 338 00:23:23,770 --> 00:23:26,310 実際 レダⅡを 発見できたじゃないか 339 00:23:26,310 --> 00:23:30,310 希望は通じる 努力は絶対 報われる 340 00:23:39,450 --> 00:23:43,220 どこが安全かな… 341 00:23:43,220 --> 00:23:47,620 それにしても フレデリカやユリアンを 同行させなくてよかった 342 00:23:50,400 --> 00:23:52,400 ヤン提督! 343 00:23:59,570 --> 00:24:04,470 ヤン提督!ユリアンです どこにいらっしゃいますか 344 00:24:12,050 --> 00:24:14,050 ん? 345 00:24:15,920 --> 00:24:17,920 ヤン・ウェンリー提督… 346 00:24:22,260 --> 00:24:24,960 動脈叢を撃ち抜かれたな 347 00:24:30,000 --> 00:24:32,800 殺した!殺した! 348 00:24:44,050 --> 00:24:46,850 随分と血が出るものだな 349 00:24:46,850 --> 00:24:50,220 もっとも 私が今まで 流させてきた量に比べれば 350 00:24:50,220 --> 00:24:52,420 ささやかなものだが… 351 00:25:05,610 --> 00:25:09,610 こんな所で… 我ながら情けない 352 00:25:12,250 --> 00:25:14,980 奇妙だな 353 00:25:14,980 --> 00:25:17,720 血がこれだけ流れ出せば 354 00:25:17,720 --> 00:25:20,820 体重は軽くなっているはずなのに 355 00:25:23,820 --> 00:25:28,060 なんで こんなに体が重いんだ… 356 00:25:28,060 --> 00:25:31,460 あれ?うっ… 357 00:25:34,770 --> 00:25:37,670 ああ… 358 00:25:37,670 --> 00:25:40,070 ああ うっ… 359 00:25:44,140 --> 00:25:47,040 どうも格好がよくないな 360 00:25:52,350 --> 00:25:58,050 やれやれ 「ミラクル・ヤン」が 「血まみれヤン」になってしまった 361 00:26:00,090 --> 00:26:04,330 ごめん フレデリカ 362 00:26:04,330 --> 00:26:07,170 ごめん ユリアン 363 00:26:07,170 --> 00:26:10,070 ごめん みんな… 364 00:26:15,580 --> 00:26:19,180 ヤン提督! 365 00:26:19,180 --> 00:26:25,950 宇宙歴800年 6月1日 2時55分 366 00:26:25,950 --> 00:26:31,950 ヤン・ウェンリーの時は 33歳で停止した 367 00:26:36,300 --> 00:26:38,870 ヤン・ウェンリーは死んだ 368 00:26:38,870 --> 00:26:43,340 だが 歴史は変わらずに 時を刻んでいる 369 00:26:43,340 --> 00:26:48,510 残された者たちにとって 戦いは いまだ続いていく 370 00:26:48,510 --> 00:26:54,210 ヤンが歴史に残した足跡を 意味あるものにするためにも 371 00:26:54,210 --> 00:27:00,020 次回「銀河英雄伝説」 第83話「祭りの後」 372 00:27:00,020 --> 00:27:03,620 銀河の歴史が また1ページ