1 00:00:02,060 --> 00:00:06,230 新銀河帝国皇帝ラインハルト・ フォン・ローエングラムは 2 00:00:06,230 --> 00:00:10,100 フェザーン自治領に続いて 自由惑星同盟を併呑し 3 00:00:10,100 --> 00:00:12,830 ほぼ全宇宙を手中に収めた 4 00:00:12,830 --> 00:00:16,700 唯一 イゼルローン要塞に 立てこもって抵抗を続ける 5 00:00:16,700 --> 00:00:19,170 ヤン・ウェンリー一党を覆滅すべく 6 00:00:19,170 --> 00:00:23,040 イゼルローン回廊に軍を進める カイザー・ラインハルト 7 00:00:23,040 --> 00:00:25,780 激戦の末に カイザー・ラインハルトは 8 00:00:25,780 --> 00:00:29,120 ヤン・ウェンリーとの 講和のテーブルにつこうとする 9 00:00:29,120 --> 00:00:32,790 だが2人の会見は 地球教徒の残党による 10 00:00:32,790 --> 00:00:36,460 ヤン暗殺という 事態の前に頓挫する 11 00:00:36,460 --> 00:00:39,490 最大の好敵手を失った カイザー・ラインハルトは 12 00:00:39,490 --> 00:00:44,200 失意のうちに軍を引き 新帝都フェザーンへと凱旋した 13 00:00:44,200 --> 00:00:47,100 カイザー・ラインハルトが 戦意を失った今 14 00:00:47,100 --> 00:00:49,440 当面の軍事衝突は起こり得ず 15 00:00:49,440 --> 00:00:53,040 宇宙に安寧の時代が 訪れたかに見えた 16 00:00:53,040 --> 00:00:57,010 しかし加速を続ける歴史は 停滞を許さず 17 00:00:57,010 --> 00:01:00,710 再び銀河に動乱の気配が 忍び寄っていた 18 00:02:34,480 --> 00:02:38,880 宇宙歴800年 新帝国歴2年8月 19 00:02:41,720 --> 00:02:45,220 新帝都フェザーンに帰着した カイザー・ラインハルトは 20 00:02:45,220 --> 00:02:48,620 宿敵であったヤン・ウェンリーの 死による喪失感から 21 00:02:48,620 --> 00:02:50,660 逃れようとしているがごとく 22 00:02:50,660 --> 00:02:54,760 再び政務に精励し始めていた 23 00:02:54,760 --> 00:02:58,570 新宮殿ルーヴェンブルン 建設計画の再開は 24 00:02:58,570 --> 00:03:01,470 今は見合わせたほうが よいのではないか? 25 00:03:01,470 --> 00:03:05,670 度重なる出兵が国庫に 負担をかけていることでもあるし 26 00:03:05,670 --> 00:03:09,640 皇帝の権威と権力を 巨大な建造物によって象徴させる 27 00:03:09,640 --> 00:03:13,410 前王朝の悪癖を 踏襲しようとも思わぬ 28 00:03:13,410 --> 00:03:17,190 元々 余がそれほど強く 望んだものでもないし 29 00:03:17,190 --> 00:03:20,090 余は別にホテル暮らしでも 不都合はない 30 00:03:20,090 --> 00:03:22,360 お言葉ではございますが 31 00:03:22,360 --> 00:03:26,090 皇帝陛下があまりに ご質素な生活をなさっては 32 00:03:26,090 --> 00:03:30,100 臣下の者たちが 余裕ある生活を送れませぬ 33 00:03:30,100 --> 00:03:34,170 願わくば そのあたりを ご考慮いただけますよう 34 00:03:34,170 --> 00:03:37,070 なるほど そういうものか 35 00:03:39,870 --> 00:03:43,570 分かった 少し考えよう ははあ 36 00:03:45,780 --> 00:03:48,480 政治と戦争以外のことに 37 00:03:48,480 --> 00:03:51,050 奇妙に疎いところがある ラインハルトは 38 00:03:51,050 --> 00:03:55,890 その意味では 普通の24歳の青年であった 39 00:03:55,890 --> 00:04:00,230 ローエングラム伯爵家の 家名を継いでより4年7ヵ月 40 00:04:00,230 --> 00:04:05,070 至尊の冠を頭上に戴いてより 1年あまりが経過しているが 41 00:04:05,070 --> 00:04:08,840 その間 征戦と経略の日々に 埋めつくされ 42 00:04:08,840 --> 00:04:14,040 人並みの生活感覚などは著しく 欠落していると言わざるを得ない 43 00:04:24,050 --> 00:04:26,390 やはりフェザーン回廊の両端に 44 00:04:26,390 --> 00:04:30,020 イゼルローン要塞クラスの 軍事拠点を建設するのが 45 00:04:30,020 --> 00:04:34,620 帝都防衛の観点からも 最も望ましい形と考えます 46 00:04:53,310 --> 00:04:58,110 このような嵐の夜は決まって あの日のことを思い出す 47 00:05:01,290 --> 00:05:04,790 早いものだ あれから5年か 48 00:05:09,560 --> 00:05:12,470 それは宇宙歴795年 49 00:05:12,470 --> 00:05:17,100 旧帝国歴486年 5月のことであった 50 00:05:17,100 --> 00:05:21,540 その時 ミッターマイヤーは 軍刑務所に不当に収監されており 51 00:05:21,540 --> 00:05:24,150 生命の危機にさらされていた 52 00:05:24,150 --> 00:05:28,980 民間女性を暴行と略奪の揚げ句に 殺害した貴族階級の部下を 53 00:05:28,980 --> 00:05:31,920 その場で処刑したことが 問題とされたからである 54 00:05:31,920 --> 00:05:34,790 その行為自体は 正当なものであったが 55 00:05:34,790 --> 00:05:38,660 処刑された部下が 当時の帝国最大の権門であった 56 00:05:38,660 --> 00:05:41,360 ブラウンシュヴァイク公の 一族であったことが 57 00:05:41,360 --> 00:05:43,430 ミッターマイヤーの不幸であった 58 00:05:43,430 --> 00:05:46,000 そのミッターマイヤーを 救出するために 59 00:05:46,000 --> 00:05:50,000 親友であるロイエンタールが 当時 実力をつけつつあった 60 00:05:50,000 --> 00:05:55,410 ラインハルト・フォン・ミューゼル大将に 援助を求めたのである 61 00:05:55,410 --> 00:05:57,350 卿は現在の 62 00:05:57,350 --> 00:06:01,950 ゴールデンバウム王朝について どう思う? 63 00:06:01,950 --> 00:06:04,520 それはラインハルトにとって 64 00:06:04,520 --> 00:06:06,450 キルヒアイス以外の 第三者に対して 65 00:06:06,450 --> 00:06:10,420 初めて明かされた 野望の一端であった 66 00:06:10,420 --> 00:06:14,330 それに対するロイエンタールの答えに 満足したラインハルトは 67 00:06:14,330 --> 00:06:17,830 ミッターマイヤーの救出を 約したのである 68 00:06:34,480 --> 00:06:36,850 毒殺でも恐れているのかね? 69 00:06:36,850 --> 00:06:39,520 俺はそんな柔弱な男じゃない 70 00:06:39,520 --> 00:06:43,160 では なぜ食事を残すのだ 71 00:06:43,160 --> 00:06:45,760 太ると女房に嫌われる 72 00:06:47,830 --> 00:06:53,130 フッ ロイエンタールが任せろと 請け合ってくれたからには 73 00:06:53,130 --> 00:06:56,600 最大限の努力をしてくれることは 疑いはない 74 00:06:56,600 --> 00:06:58,700 だが… 75 00:07:06,250 --> 00:07:09,720 はじめまして ミッターマイヤー少将閣下 76 00:07:09,720 --> 00:07:13,590 私は内務省 社会秩序維持局の 職員でして 77 00:07:13,590 --> 00:07:15,590 普段は共和主義者どもや 78 00:07:15,590 --> 00:07:19,690 不敬罪を犯した者どもの 取り調べに当たっております 79 00:07:21,860 --> 00:07:26,230 取り調べと申しましても 麻酔なしで歯を抜いたり 80 00:07:26,230 --> 00:07:30,070 死なない程度に手足の肉を そぎ取ったりと 81 00:07:30,070 --> 00:07:34,670 そういう方面の技術をもって 奉職しておるわけです 82 00:07:36,840 --> 00:07:39,610 もっとも私自身は この技術は 83 00:07:39,610 --> 00:07:42,580 一つの芸術であると 自負しております 84 00:07:42,580 --> 00:07:46,690 その辺を理解してくださる方も 大勢いらっしゃいまして 85 00:07:46,690 --> 00:07:49,590 時には こうして 職場以外で技量の披瀝を 86 00:07:49,590 --> 00:07:52,160 求められることが多いのですよ 87 00:07:52,160 --> 00:07:58,730 まあ 趣味と実益と申しましょうか ハハハ… 88 00:07:58,730 --> 00:08:03,200 趣味の部分としては 身分の 高い方ほど素材として望ましい 89 00:08:03,200 --> 00:08:08,440 普段 偉そうにしている人が 私の前で泣き叫んで助けを請う 90 00:08:08,440 --> 00:08:12,210 その姿を見るのが 何よりも楽しみで 91 00:08:12,210 --> 00:08:15,080 その点 平民出身でありながら 92 00:08:15,080 --> 00:08:18,950 27歳で帝国軍少将の 地位にあるような方は 93 00:08:18,950 --> 00:08:21,520 最高の素材と言えましょう 94 00:08:21,520 --> 00:08:24,720 ほら はいつくばって 許しを請え! 95 00:08:29,200 --> 00:08:33,030 ほう 悲鳴を上げられないのは さすがですな 96 00:08:33,030 --> 00:08:36,900 貴族の若さまや 坊ちゃま方とは ものが違う 97 00:08:36,900 --> 00:08:40,610 だが それだけ楽しみも 多いというものです 98 00:08:40,610 --> 00:08:44,850 門地もなしに 20代で提督と呼ばれるような方が 99 00:08:44,850 --> 00:08:49,780 いつ自尊心をかなぐり捨てて 助けてくれと わめき立てるか 100 00:08:49,780 --> 00:08:53,620 その一変する瞬間が それは甘美なものなのですよ 101 00:08:53,620 --> 00:08:56,320 理解していただけますかな? 102 00:08:56,320 --> 00:08:58,330 よく しゃべる奴だな 103 00:08:58,330 --> 00:09:00,630 減らず口を! 104 00:09:11,570 --> 00:09:14,670 卑しい平民にふさわしい 戦いぶりだな 105 00:09:19,880 --> 00:09:22,250 これは若さま方 106 00:09:22,250 --> 00:09:26,520 このような卑しい場所に わざわざ お運びにならずとも 107 00:09:26,520 --> 00:09:30,860 フッ なかなか 優遇されているではないか 108 00:09:30,860 --> 00:09:33,790 ミッターマイヤー少将 109 00:09:33,790 --> 00:09:37,260 豚のくせに 人間の言葉をしゃべるなよ 110 00:09:37,260 --> 00:09:41,440 人間のほうが赤面するからな 111 00:09:41,440 --> 00:09:43,440 この! 112 00:09:59,820 --> 00:10:02,320 どうだ 思い知ったか 113 00:10:02,320 --> 00:10:06,930 礼儀知らずの平民が いいざまだな 114 00:10:06,930 --> 00:10:09,230 誰が思い知るか 115 00:10:09,230 --> 00:10:11,970 貴様に本物の誇りがあるなら 116 00:10:11,970 --> 00:10:15,840 俺の手錠を外して 五分の条件で やり合ってみろ 117 00:10:15,840 --> 00:10:19,270 それとも怖いか 怖いのだろう 118 00:10:19,270 --> 00:10:23,140 臆病者め 先祖の勇名が泣くぞ 119 00:10:23,140 --> 00:10:26,410 よし 平民め 望みを叶えてやる 120 00:10:26,410 --> 00:10:29,250 誰か 奴の手錠を外してやれ 121 00:10:29,250 --> 00:10:31,520 いや… しかし… 122 00:10:31,520 --> 00:10:33,620 貸せ 123 00:10:41,300 --> 00:10:45,700 さあ これでもう文句は言わせんぞ 124 00:10:45,700 --> 00:10:49,900 確かにな 文句は言わんよ 卿は立派だ 125 00:11:07,720 --> 00:11:10,520 撃ち殺せ! そいつを殺してしまえ! 126 00:11:24,200 --> 00:11:26,700 き… 貴様 ミューゼル 127 00:11:39,720 --> 00:11:44,930 思えば あの嵐の夜に ロイエンタールが訪ねてこなければ 128 00:11:44,930 --> 00:11:49,560 我ら4人の紐帯は生まれなかった 卿らとの出会いが 129 00:11:49,560 --> 00:11:53,430 余に大地の軛からの離脱を 決意させたのだ 130 00:11:53,430 --> 00:11:56,140 ブラウンシュヴァイク公らの 差し金と 131 00:11:56,140 --> 00:11:58,710 当時の軍幹部どもの厄介払いで 132 00:11:58,710 --> 00:12:02,180 我々は まとめて最前線に送られた 133 00:12:02,180 --> 00:12:04,550 だが それは結果的に 134 00:12:04,550 --> 00:12:08,880 我らに武勲を立てる場を 与えてくれるものだった 135 00:12:08,880 --> 00:12:11,620 惑星レグニッツァ上空の遭遇戦 136 00:12:11,620 --> 00:12:14,320 そして第4次ティアマト会戦と 137 00:12:14,320 --> 00:12:17,020 かくかくたる武勲を挙げた 我らの実力を 138 00:12:17,020 --> 00:12:19,830 軍の上層部も 認めざるを得なくなり 139 00:12:19,830 --> 00:12:24,830 余はローエングラム伯爵家の 門地と 上級大将の位を手に入れた 140 00:12:27,870 --> 00:12:32,710 それは現在に至る階梯をのぼる 大きな一歩だった 141 00:12:32,710 --> 00:12:37,310 余とキルヒアイスの力だけでは 今日の新帝国はなかったであろう 142 00:12:37,310 --> 00:12:39,250 身に余るお言葉です 143 00:12:39,250 --> 00:12:42,550 我が友の分も合わせて お礼申し上げます 144 00:12:46,790 --> 00:12:50,120 嵐は 145 00:12:50,120 --> 00:12:53,120 いつまで続くのであろうな 146 00:13:02,170 --> 00:13:04,710 新帝国の首都たるフェザーンから 147 00:13:04,710 --> 00:13:09,080 5000光年を隔てた旧同名首都星 ハイネセンにおいては 148 00:13:09,080 --> 00:13:11,810 カイザー・ラインハルトの 全権代理人である 149 00:13:11,810 --> 00:13:15,020 ノイエ・ラント総督 オスカー・ フォン・ロイエンタールによる 150 00:13:15,020 --> 00:13:17,480 施政が始まっている 151 00:13:17,480 --> 00:13:20,090 ロイエンタールが 単なる武人ではなく 152 00:13:20,090 --> 00:13:23,060 有能で強力な 行政官でもあることは 153 00:13:23,060 --> 00:13:26,430 当時 誰も疑う者はいなかった 154 00:13:26,430 --> 00:13:30,860 まず彼は522万6400名に達する 155 00:13:30,860 --> 00:13:35,140 ノイエラント治安軍の 指揮権を握っており それを背景に 156 00:13:35,140 --> 00:13:39,010 いくらでも武断的な行政を 断行し得たにもかかわらず 157 00:13:39,010 --> 00:13:42,910 柔軟で弾力性に富んだ 施政を行っていた 158 00:13:42,910 --> 00:13:46,180 ああ… 159 00:13:46,180 --> 00:13:51,450 民主共和政とやらの迂遠さは しばしば民衆をいらだたせる 160 00:13:51,450 --> 00:13:54,890 迅速さという一点で 奴らを満足させれば 161 00:13:54,890 --> 00:13:58,090 民主共和政とやらに こだわることはあるまい 162 00:14:00,490 --> 00:14:04,360 ロイエンタールの政治感覚が 非凡であった一例は 163 00:14:04,360 --> 00:14:08,040 それまで自由惑星同盟の 統治下にあって放置されてきた 164 00:14:08,040 --> 00:14:11,810 いくつかの不公正を ドラスティックに是正したことである 165 00:14:11,810 --> 00:14:15,280 古い権力体制下における 腐敗を弾劾することは 166 00:14:15,280 --> 00:14:20,250 新体制にとっては自己の正義を 宣伝する絶好の材料であった 167 00:14:20,250 --> 00:14:23,780 反政府勢力やジャーナリズムに 指弾されながら 168 00:14:23,780 --> 00:14:27,450 法の摘発を受けずにきた 利権政治家や汚職官僚 169 00:14:27,450 --> 00:14:33,230 軍需産業経営者など600人余りが 総督府の手で一網打尽に逮捕され 170 00:14:33,230 --> 00:14:36,460 民衆は快哉の声を 上げたものである 171 00:14:36,460 --> 00:14:39,200 一方で報道管制などは行わず 172 00:14:39,200 --> 00:14:43,600 不敬罪を唯一の例外として 言論の自由も保障した 173 00:14:47,940 --> 00:14:52,380 そんな中 ノイエ・ラント総督府 高等参事官として 174 00:14:52,380 --> 00:14:55,020 ヨブ・トリューニヒトが 着任したのである 175 00:14:55,020 --> 00:14:57,250 かつてトリューニヒトが 元首を務めた 176 00:14:57,250 --> 00:14:59,690 自由惑星同盟は既になく 177 00:14:59,690 --> 00:15:03,360 その瓦解を軍事面で 最後まで支え続けた 178 00:15:03,360 --> 00:15:06,730 アレクサンドル・ビュコック ヤン・ウェンリーの両元帥も 179 00:15:06,730 --> 00:15:09,400 この世にない にもかかわらず 180 00:15:09,400 --> 00:15:12,070 トリューニヒトだけが 傷つくことなく生き残り 181 00:15:12,070 --> 00:15:14,840 再び故国の土を踏んだのである 182 00:15:14,840 --> 00:15:18,410 当然のことながら ジャーナリズムは攻撃の矛先を 183 00:15:18,410 --> 00:15:20,770 トリューニヒトに 向けることになる 184 00:15:20,770 --> 00:15:26,550 どのツラ下げて ここへやってきた 祖国を枯れ死させた宿り木が 185 00:15:26,550 --> 00:15:30,520 ロイエンタール元帥は 銀河帝国で随一の重臣 186 00:15:30,520 --> 00:15:33,720 そして最高の名将でいらっしゃる 187 00:15:33,720 --> 00:15:36,620 私ごときが貧しい知恵を お貸しする必要など 188 00:15:36,620 --> 00:15:40,230 ございませんでしょうが 閣下のお役に立てるのは 189 00:15:40,230 --> 00:15:42,960 光栄のいたりです 190 00:15:42,960 --> 00:15:45,270 この時 ロイエンタールは 191 00:15:45,270 --> 00:15:49,970 トリューニヒトの巧言令色の底にたゆたう 危険なものの影を察知した 192 00:15:49,970 --> 00:15:53,870 少なくとも ロイエンタール自身はそう思った 193 00:16:03,480 --> 00:16:05,550 トリューニヒトを監視しておけ 194 00:16:05,550 --> 00:16:10,260 俺が思うに 奴は何か よからぬことをたくらんでいる 195 00:16:10,260 --> 00:16:12,630 ご命令とあれば そういたしますが 196 00:16:12,630 --> 00:16:17,460 トリューニヒトなどに拘泥なさる必要は ないのではありますまいか 197 00:16:17,460 --> 00:16:22,440 それは俺も承知している だが視点を変えて考えてみろ 198 00:16:22,440 --> 00:16:25,570 ヤン・ウェンリーは倒れたが 奴は生きている 199 00:16:25,570 --> 00:16:30,510 恐らく奴は宿主を次々と 食い潰していく種類の宿り木だ 200 00:16:30,510 --> 00:16:34,350 生きている限りはな なるほど 201 00:16:34,350 --> 00:16:38,050 閣下 あるいは 無用の言かとは存じますが 202 00:16:38,050 --> 00:16:41,860 ご注意を 喚起しておきたいことがあります 203 00:16:41,860 --> 00:16:45,630 言ってみろ 卿が 俺の補佐役となって以来 204 00:16:45,630 --> 00:16:48,400 無用のことを 聞かされた覚えはないが 205 00:16:48,400 --> 00:16:50,330 はっ 206 00:16:50,330 --> 00:16:52,770 トリューニヒトごときと 閣下の御身とを 207 00:16:52,770 --> 00:16:55,670 どうか お引き換えになりませんよう 208 00:16:55,670 --> 00:17:00,610 閣下はローエングラム王朝の 重鎮として帝国を支える御身 209 00:17:00,610 --> 00:17:04,380 ご自重くださいますよう 切に望むところであります 210 00:17:04,380 --> 00:17:08,550 自重したからこそ トリューニヒトを監視させるのだ 211 00:17:08,550 --> 00:17:10,950 だが忠告は ありがたく受けておこう 212 00:17:10,950 --> 00:17:15,490 はっ そもそも 明敏であらせられるカイザーが 213 00:17:15,490 --> 00:17:17,860 トリューニヒトなどを 信任されたもう 214 00:17:17,860 --> 00:17:20,760 そのことこそが 小官には不思議でなりません 215 00:17:20,760 --> 00:17:23,230 小官ごとき凡人には 考えもつかない 216 00:17:23,230 --> 00:17:26,130 ご深慮が おありなのかもしれませんが 217 00:17:26,130 --> 00:17:29,040 そうではあるまい は? 218 00:17:29,040 --> 00:17:31,470 カイザーとて トリューニヒトのような男が 219 00:17:31,470 --> 00:17:34,440 存在するだけでも 許せないに違いない 220 00:17:34,440 --> 00:17:36,980 だが いかに専制国家とはいえ 221 00:17:36,980 --> 00:17:40,850 嫌いだからという理由だけで 殺すわけにもいかぬ 222 00:17:40,850 --> 00:17:44,720 せいぜい生き恥をさらさせ 旧同盟市民に対する 223 00:17:44,720 --> 00:17:47,520 帝国の盾として 使おうというのであろう 224 00:17:47,520 --> 00:17:50,920 だがトリューニヒトを 勝手に殺すわけにいかぬのは 225 00:17:50,920 --> 00:17:54,660 俺とて同じこと 陛下のお考えはともかく 226 00:17:54,660 --> 00:17:58,400 オーベルシュタインあたりは 俺にトリューニヒトを害させて 227 00:17:58,400 --> 00:18:03,170 その上で責任を問うてくる ぐらいのことは やるかもしれん 228 00:18:03,170 --> 00:18:06,410 閣下? 229 00:18:06,410 --> 00:18:11,680 いずれにせよトリューニヒトは カイザーより勅任をこうむった男 230 00:18:11,680 --> 00:18:15,180 罪ありとしても 俺が一存で 処断するわけにはいかぬ 231 00:18:15,180 --> 00:18:17,980 さしあたり監視を怠るな 232 00:18:17,980 --> 00:18:20,520 そう長い期間が必要とも思えぬが 233 00:18:20,520 --> 00:18:23,320 とりあえずのことだ はっ 234 00:18:49,420 --> 00:18:51,820 ん? あ! 235 00:19:05,530 --> 00:19:08,630 エヴァ! あ… 236 00:19:12,310 --> 00:19:15,410 ウォルフ あなた お元気でした? 237 00:19:17,540 --> 00:19:19,780 あまり元気ではないよ 238 00:19:19,780 --> 00:19:23,420 エヴァの料理を 長いこと食べられなかったからな 239 00:19:23,420 --> 00:19:25,850 味覚の水準が低下してしまったよ 240 00:19:25,850 --> 00:19:27,790 まあ その代わり 241 00:19:27,790 --> 00:19:31,660 お世辞の水準は 上昇なさったみたいね 242 00:19:31,660 --> 00:19:37,030 ミッターマイヤー夫妻にとって およそ1年ぶりの再会であった 243 00:19:37,030 --> 00:19:40,530 エヴァンゼリン・ ミッターマイヤーは夫に伴われて 244 00:19:40,530 --> 00:19:42,570 フェザーンに到着した その足で 245 00:19:42,570 --> 00:19:46,110 大本営に カイザー・ラインハルトを訪ねた 246 00:19:46,110 --> 00:19:49,510 フラウ・ミッターマイヤー よく来てくださった 247 00:19:51,750 --> 00:19:55,680 あなたのご主人は余にとって 信頼に値する戦友だ 248 00:19:55,680 --> 00:20:01,420 ご主人を旗下に持ち得たことは 余の幸福だと思っている 249 00:20:01,420 --> 00:20:04,060 恐れ入ります 陛下 250 00:20:04,060 --> 00:20:06,960 主人にとっては 陛下のもとにあることが 251 00:20:06,960 --> 00:20:10,360 人生で最大の幸福だと存じます 252 00:20:14,700 --> 00:20:19,410 その会見はラインハルトのほうから 望んだものであった 253 00:20:19,410 --> 00:20:23,280 その前夜 またしても ラインハルトの発熱があり 254 00:20:23,280 --> 00:20:26,850 心配したヒルダらの側近は 中止を勧めたが 255 00:20:26,850 --> 00:20:32,650 朝になって熱が下がったラインハルトが 希望を通したものであった 256 00:20:32,650 --> 00:20:37,790 最初は ややぎこちなく 始まった談話も急速に親和を深め 257 00:20:37,790 --> 00:20:43,260 ラインハルトはミッターマイヤー夫妻との 時間の共有を好ましいものに思い 258 00:20:43,260 --> 00:20:48,760 2人のなれ初めや結婚の事情に ついて聞いた話の数々を楽しんだ 259 00:20:50,770 --> 00:20:56,410 で その時ミッターマイヤー元帥は どんな花を持っていったのだ? 260 00:20:56,410 --> 00:20:59,180 あ… いや 261 00:20:59,180 --> 00:21:02,080 それが お恥ずかしい次第で ございまして… 262 00:21:12,160 --> 00:21:16,160 すぐそこだ 車を使うまでもあるまい 263 00:21:24,300 --> 00:21:29,140 そういえば 俺がエヴァと 結婚したのは24の時だったが 264 00:21:29,140 --> 00:21:32,480 陛下も今年 24歳におなりになった 265 00:21:32,480 --> 00:21:36,850 その気がおありなら 陛下の周囲は花園も同様なのにな 266 00:21:36,850 --> 00:21:38,790 もったいないことだ 267 00:21:38,790 --> 00:21:42,060 マリーンドルフ伯爵の ご令嬢のこと? 268 00:21:42,060 --> 00:21:44,820 彼女だけとも限らないがね 269 00:21:44,820 --> 00:21:47,390 むろん 俺にその権限があったら 270 00:21:47,390 --> 00:21:53,200 やはり彼女を皇妃になさるよう カイザーに申し上げるだろうが 271 00:21:53,200 --> 00:21:55,540 俺は単なる軍人だ 272 00:21:55,540 --> 00:22:00,040 政治やカイザーの私生活にまで 気を病んでいては際限がない 273 00:22:02,140 --> 00:22:05,110 俺は ただ陛下のご命令を忠実に 274 00:22:05,110 --> 00:22:09,880 完璧に遂行することだけを 考えていればいいのだ 275 00:22:09,880 --> 00:22:12,790 さあ あそこがこれからの新居だ 276 00:22:12,790 --> 00:22:18,330 小さな家だが大本営にも近いし 2人で住むには十分だろう 277 00:22:18,330 --> 00:22:20,330 ええ 278 00:22:23,300 --> 00:22:27,030 そうだ それだけを考えよう 279 00:22:27,030 --> 00:22:30,830 それでいいのだよな? ロイエンタール 280 00:22:36,240 --> 00:22:39,540 あなた 急ぎましょ 嵐が来るわ 281 00:23:08,170 --> 00:23:11,510 あの時はミッターマイヤーがいて 282 00:23:11,510 --> 00:23:13,550 ロイエンタールがいて 283 00:23:13,550 --> 00:23:15,850 キルヒアイスがいた 284 00:23:50,120 --> 00:23:52,920 この時のオスカー・フォン・ ロイエンタールは 285 00:23:52,920 --> 00:23:56,660 いわば宇宙第2の実力者であった 286 00:23:56,660 --> 00:23:59,630 帝国中央の兵権が オーベルシュタイン 287 00:23:59,630 --> 00:24:03,930 ミッターマイヤー両元帥に 二分されていることを考えると 288 00:24:03,930 --> 00:24:06,700 ノイエ・ラントに 限定されているとはいえ 289 00:24:06,700 --> 00:24:09,570 ロイエンタールの軍事独裁権力は 290 00:24:09,570 --> 00:24:14,770 帝国の重臣たちの中にあって 最強かつ最大のものであった 291 00:24:20,210 --> 00:24:24,780 この強大な権限と実力とが いずれの方向を志向するか 292 00:24:24,780 --> 00:24:26,720 この段階においては 293 00:24:26,720 --> 00:24:30,620 ロイエンタール自身にすら 明瞭ではなかった 294 00:26:08,320 --> 00:26:11,090 全人類のうち ほんの一握りが 295 00:26:11,090 --> 00:26:14,690 立てこもる場所となってしまった イゼルローン要塞 296 00:26:14,690 --> 00:26:18,230 そこはまさに 宇宙の辺境と言ってよかった 297 00:26:18,230 --> 00:26:22,740 だがユリアンは むしろ 辺境に身を置くことの誇りを胸に 298 00:26:22,740 --> 00:26:25,940 苦難の道を歩みだそうとしていた 299 00:26:25,940 --> 00:26:32,050 次回「銀河英雄伝説」 第88話「辺境にて」 300 00:26:32,050 --> 00:26:34,850 銀河の歴史が また1ページ