1 00:01:35,100 --> 00:01:37,330 惑星ウルヴァシーにおける変事は 2 00:01:37,330 --> 00:01:39,270 むろん 惑星ハイネセンにある 3 00:01:39,270 --> 00:01:44,480 オスカー・フォン・ロイエンタールの すぐに知るところとなった 4 00:01:44,480 --> 00:01:47,680 彼に自失の時間があったにせよ 長くもなく 5 00:01:47,680 --> 00:01:50,680 他者に見せもしなかった 6 00:01:50,680 --> 00:01:52,850 とにかく一刻も早く 7 00:01:52,850 --> 00:01:55,450 カイザーご一行を 捜し出して保護せよ 8 00:01:55,450 --> 00:01:59,260 それと グリルパルツァー大将は 至急 ウルヴァシーに赴き 9 00:01:59,260 --> 00:02:03,260 現地の治安を回復して 事情を明らかにすること 10 00:02:08,730 --> 00:02:12,600 ロイエンタールとしては 他に命令を出しようがない 11 00:02:12,600 --> 00:02:15,070 彼がカイザーの身を 確保していれば 12 00:02:15,070 --> 00:02:17,980 とにかく弁明も議論もできる 13 00:02:17,980 --> 00:02:20,740 ひとたび カイザーが フェザーンに戻ってからでは 14 00:02:20,740 --> 00:02:23,310 ロイエンタールは罪人として 呼び出され 15 00:02:23,310 --> 00:02:25,680 処断されるのみであろう 16 00:02:25,680 --> 00:02:28,120 カイザーに処断されることは ともかく 17 00:02:28,120 --> 00:02:31,020 身に覚えのないことで 罪人扱いされるのは 18 00:02:31,020 --> 00:02:34,390 ロイエンタールの矜持が 許さなかった 19 00:02:34,390 --> 00:02:37,130 まして 彼とカイザーの間には 20 00:02:37,130 --> 00:02:41,500 不快な人物が立ちはだかるに 違いないのだから 21 00:02:41,500 --> 00:02:45,840 続いてロイエンタールの元へ 更なる凶報が もたらされたのは 22 00:02:45,840 --> 00:02:49,040 その直後のことである 23 00:02:49,040 --> 00:02:51,140 は… 24 00:02:59,680 --> 00:03:02,590 ん?ルッツが死んだ? 25 00:03:02,590 --> 00:03:07,220 それはロイエンタールにとっての退路が 断たれたことを意味していた 26 00:03:07,220 --> 00:03:10,190 少なくとも ロイエンタールには そう思えた 27 00:03:10,190 --> 00:03:13,430 総督閣下 いかがなさいますか? 28 00:03:13,430 --> 00:03:16,000 聞いてのとおりだ ベルゲングリューン 29 00:03:16,000 --> 00:03:18,440 俺はローエングラム王朝における 30 00:03:18,440 --> 00:03:21,240 最初の叛逆者ということに なったらしい 31 00:03:21,240 --> 00:03:25,210 ですが総督閣下 確かに 前例なき不祥事ではあっても 32 00:03:25,210 --> 00:03:27,510 閣下のあずかり知らぬこと 33 00:03:27,510 --> 00:03:30,410 皇帝陛下に事情を ご説明になれば… 34 00:03:30,410 --> 00:03:34,150 どうにもならんよ! 閣下 35 00:03:34,150 --> 00:03:36,420 第一 無実である俺がなぜ 36 00:03:36,420 --> 00:03:40,620 必死に かつ卑屈に 弁解せねばならないのか! 37 00:03:44,160 --> 00:03:46,830 バカバカしい そのような目に遭うために 38 00:03:46,830 --> 00:03:49,230 今日まで カイザーの下で 戦ってきたのか! 39 00:03:51,270 --> 00:03:53,600 閣下… 40 00:03:53,600 --> 00:03:57,240 いや カイザーに 頭を下げるのは構わぬ 41 00:03:57,240 --> 00:04:00,640 臣下として当然のことだ だが… 42 00:04:08,820 --> 00:04:14,120 叛逆者になるのは一向に構わん だが 叛逆者に仕立てられるのは 43 00:04:14,120 --> 00:04:18,130 ご免被りたいものだ は… 44 00:04:18,130 --> 00:04:21,330 ところで ベルゲングリューン 卿はどうする? 45 00:04:21,330 --> 00:04:23,270 どうすると おっしゃいますと? 46 00:04:23,270 --> 00:04:25,870 卿がカイザーに 忠誠を尽くすつもりなら 47 00:04:25,870 --> 00:04:28,770 今 ここで俺を殺せ でないと 48 00:04:28,770 --> 00:04:31,540 俺はカイザーにとって 災いとなるだろう 49 00:04:31,540 --> 00:04:34,950 いや 既にそう なり果てているか 50 00:04:34,950 --> 00:04:38,420 小官の取るべき道はひとつ 閣下とともに 51 00:04:38,420 --> 00:04:42,020 武器を携えることなく カイザーの下へ参上し 52 00:04:42,020 --> 00:04:45,920 閣下が陰謀に無関係であることを 申し上げるだけです 53 00:04:45,920 --> 00:04:48,790 ベルゲングリューン 俺は1度 カイザーから 54 00:04:48,790 --> 00:04:52,430 叛逆の嫌疑を受けた 2度はたくさんだ 55 00:04:52,430 --> 00:04:55,930 俺だけではない カイザーも そうお思いだろう 56 00:04:55,930 --> 00:04:58,970 嫌疑が事実でない以上 2度が3度でも 57 00:04:58,970 --> 00:05:01,310 カイザーの誤解を 解くべきでしょう 58 00:05:01,310 --> 00:05:05,310 労を惜しむべきことでは ないはずです 59 00:05:05,310 --> 00:05:07,780 ベルゲングリューン カイザーの下へ 60 00:05:07,780 --> 00:05:10,150 身一つで参上するのはよい 61 00:05:10,150 --> 00:05:13,550 だが その途上 あるいはその直前に 62 00:05:13,550 --> 00:05:16,520 軍務尚書なり内務次官なりに 謀殺されないと 63 00:05:16,520 --> 00:05:19,890 言い切れるか? ああ… 64 00:05:19,890 --> 00:05:23,730 俺は軍務尚書の 粛清リストに名を記して 65 00:05:23,730 --> 00:05:28,530 後世 憫笑される死に方をするなど 絶対に耐えられぬ 66 00:05:28,530 --> 00:05:30,830 それくらいなら いっそ… 67 00:05:36,170 --> 00:05:40,840 いずれにしても 俺が不当に 陥れられることがあるとしたら 68 00:05:40,840 --> 00:05:44,620 フェザーンで 内務次官とかいう 人間のフリをした害虫めの 69 00:05:44,620 --> 00:05:48,490 参画した結果に違いないのだ しかし… 70 00:05:48,490 --> 00:05:51,760 たとえ事実と異なっても 一向に構わん 71 00:05:51,760 --> 00:05:55,730 俺が そう思いたがって いるのだから そう思わせてくれ 72 00:05:55,730 --> 00:05:59,500 ヤン・ウェンリーのような 用兵の芸術家にならともかく 73 00:05:59,500 --> 00:06:02,100 奴ごときの手で鎖をはめられて 74 00:06:02,100 --> 00:06:06,100 おめおめと余生を送るのでは この身が哀れすぎる 75 00:06:11,340 --> 00:06:13,880 トリューニヒトはどうしている? 76 00:06:13,880 --> 00:06:17,880 はっ あの男に ご用が おありなのですか?閣下 77 00:06:17,880 --> 00:06:22,650 奴にも使い道があった ろくな使い道ではないがな 78 00:06:22,650 --> 00:06:25,990 嫌な用だからこそ 先に済ませてしまおう 79 00:06:25,990 --> 00:06:27,990 奴を呼んでくれ 80 00:06:29,960 --> 00:06:33,060 民事長官に 話を通さねばなりませんが 81 00:06:33,060 --> 00:06:35,970 どういたしましょうか? ああ… 82 00:06:35,970 --> 00:06:41,770 いや その必要はない エルスハイマーとは あとで話す 83 00:06:41,770 --> 00:06:43,870 はっ 84 00:06:49,310 --> 00:06:52,550 ヤン・ウェンリーならば 平和の時代には 85 00:06:52,550 --> 00:06:56,420 平和な生き方ができただろうが それを果たせずに終わった 86 00:06:56,420 --> 00:06:59,860 平和を無為と感じ それに耐える力がない者だけが 87 00:06:59,860 --> 00:07:01,790 生き残ったとすれば 88 00:07:01,790 --> 00:07:06,530 造物主とは 公平であるのかもしれん 89 00:07:06,530 --> 00:07:09,830 悪意に満ちているという 点においては 90 00:07:27,820 --> 00:07:33,920 お前は 私たち夫婦を不幸に するために生まれてきたのだ 91 00:07:58,380 --> 00:08:01,720 それとも俺には 家庭を持って 92 00:08:01,720 --> 00:08:04,320 平和で安楽に暮らすことも できたのだろうか 93 00:08:07,860 --> 00:08:12,200 ロイエンタール家は俺で終わりさ 94 00:08:12,200 --> 00:08:14,500 ありがたいことに兄弟もいない 95 00:08:14,500 --> 00:08:17,600 後世に迷惑の種を残さずに済む 96 00:08:23,740 --> 00:08:27,480 ミッターマイヤーのところは 望んでいるにもかかわらず 97 00:08:27,480 --> 00:08:29,750 子供が生まれないというのに 98 00:08:29,750 --> 00:08:32,550 由ないことを口にしたものだ 99 00:08:34,550 --> 00:08:36,520 それが分かっているのに 100 00:08:36,520 --> 00:08:41,290 素直にわびることも できないような俺だった 101 00:08:41,290 --> 00:08:43,490 奥方に差し上げてくれ 102 00:08:46,630 --> 00:08:49,600 そんな時も 何も言わなくても ミッターマイヤーは 103 00:08:49,600 --> 00:08:52,800 分かってくれた 今回も… 104 00:08:56,270 --> 00:08:59,180 だが 事態は変化する 105 00:08:59,180 --> 00:09:04,280 望みもしない この俺に 子供が生まれるというではないか 106 00:09:06,750 --> 00:09:11,350 叛逆も 俺が望まなくとも 訪れる事態かもしれん 107 00:09:46,490 --> 00:09:48,490 お前は… 108 00:09:50,630 --> 00:09:53,930 お前は生まれてくるべきでは なかった 109 00:10:42,880 --> 00:10:48,520 お前は生まれてくるべきでは なかった 110 00:10:48,520 --> 00:10:51,460 少年時代が幸福に思えるとしたら 111 00:10:51,460 --> 00:10:56,230 それは自分自身の正体を 知らずにいることができるからだ 112 00:10:56,230 --> 00:10:58,230 え? 113 00:11:03,070 --> 00:11:05,570 それは酔っ払うということか それとも 114 00:11:05,570 --> 00:11:07,940 酔いがさめるということか どちらかな 115 00:11:07,940 --> 00:11:09,870 さあな いずれにしても 116 00:11:09,870 --> 00:11:13,810 酔ったまま死ねるほうが 幸福だろうよ 117 00:11:13,810 --> 00:11:17,580 「酔う」ということには 「誰かを愛する」とか 118 00:11:17,580 --> 00:11:20,050 「誰かに忠誠を尽くす」とか いったことも 119 00:11:20,050 --> 00:11:23,920 含まれているかもしれない 120 00:11:23,920 --> 00:11:28,790 俺は貴族社会を憎み 滅びて しまえばいいと思ってはいた 121 00:11:28,790 --> 00:11:32,630 だが この手で滅ぼしてやろうと までは考えなかった 122 00:11:32,630 --> 00:11:36,170 いや 考えられなかったのだ 123 00:11:36,170 --> 00:11:40,500 あの方が 俺より 9歳も若いあの方が 124 00:11:40,500 --> 00:11:45,340 ゴールデンバウム王朝の打倒と 簒奪を志していると知った時 125 00:11:45,340 --> 00:11:49,110 俺が受けた衝撃は 小さなものではなかった 126 00:11:49,110 --> 00:11:53,950 偉人と凡庸の徒では かくも 志の大きさに差があるものか 127 00:11:53,950 --> 00:11:59,720 そう思い あの方に賭けたのだ マイン・カイザーに 128 00:11:59,720 --> 00:12:05,660 ミッターマイヤー 卿ともう一度 酒を酌み交わしたかったな 129 00:12:05,660 --> 00:12:10,360 俺は自分自身の手で その資格を損ねてしまったが 130 00:13:08,430 --> 00:13:11,230 ミッターマイヤー 我が友 131 00:13:11,230 --> 00:13:14,160 ウォルフ・デア・シュトルム 卿はきっと 132 00:13:14,160 --> 00:13:17,670 俺のために身命を投げ出して 弁護してくれるだろう 133 00:13:17,670 --> 00:13:20,500 だが… 134 00:13:20,500 --> 00:13:25,900 卿の善意を上回る悪意が 俺とカイザーとに働きかけている 135 00:13:31,080 --> 00:13:33,850 俺は自分の矜持のため 136 00:13:33,850 --> 00:13:36,750 戦わざるを得ない 137 00:13:36,750 --> 00:13:40,320 私を倒すだけの 自信と覚悟があるなら 138 00:13:40,320 --> 00:13:43,230 いつでも挑んできて構わないぞ 139 00:13:43,230 --> 00:13:47,100 ご冗談を 140 00:13:47,100 --> 00:13:50,970 戦うからには 俺は全知全能を尽くす 141 00:13:50,970 --> 00:13:54,840 勝利を得るためには 最大限に努力する 142 00:13:54,840 --> 00:13:58,310 そうでなくては カイザーに対して 143 00:13:58,310 --> 00:14:01,210 礼を失することになろう 144 00:14:10,350 --> 00:14:12,720 フフフ… 145 00:14:12,720 --> 00:14:15,520 ハハハ… 146 00:14:23,370 --> 00:14:26,000 ロイエンタール元帥叛逆の報は 147 00:14:26,000 --> 00:14:29,610 銀河帝国軍の 名だたる名将たちを驚愕させたが 148 00:14:29,610 --> 00:14:32,510 一方で奇妙な得心も存在する 149 00:14:32,510 --> 00:14:36,380 ロイエンタールの地位と才幹は その野心にふさわしい 150 00:14:36,380 --> 00:14:39,980 そう思わせるものも 確かに存在した 151 00:14:39,980 --> 00:14:42,890 無論 信じない者もいる というより 152 00:14:42,890 --> 00:14:45,760 「信じたがらない者」と 言うべきであろう 153 00:14:45,760 --> 00:14:49,160 そのような ざれ言は 今年の霜と同じく 154 00:14:49,160 --> 00:14:51,230 春先に消えてしまったと 思っていたが 155 00:14:51,230 --> 00:14:53,360 そうではなかったらしいな 156 00:14:53,360 --> 00:14:57,070 貴様も 夏に雪を降らせて喜ぶ輩か! 157 00:14:57,070 --> 00:15:01,470 あの時は単なるウワサでしたが 今回は事実です 158 00:15:01,470 --> 00:15:04,510 ロイエンタール元帥が 事件に無関係であるにしても 159 00:15:04,510 --> 00:15:09,610 カイザーの御身の安全に対する 責任は いかがなりましょうか 160 00:15:19,790 --> 00:15:21,860 ミッターマイヤーは私情を抑え 161 00:15:21,860 --> 00:15:26,660 宇宙艦隊司令長官としての責務を 果たすことに全力を尽くした 162 00:15:26,660 --> 00:15:31,660 何よりもカイザー・ラインハルトの 身の安全の保護が急務である 163 00:15:37,640 --> 00:15:41,110 間違いだ 間違いであってくれ 164 00:15:41,110 --> 00:15:44,920 ロイエンタール! 165 00:15:44,920 --> 00:15:47,020 ん? 166 00:15:57,230 --> 00:16:00,560 総督閣下には ご機嫌うるわしゅう 167 00:16:00,560 --> 00:16:03,560 急のお召しと伺いましたが 168 00:16:11,780 --> 00:16:15,780 卿に少し用があってな 役立ってもらいたい 169 00:16:15,780 --> 00:16:18,210 なんなりとお申しつけください 170 00:16:18,210 --> 00:16:20,210 うむ 171 00:16:26,990 --> 00:16:31,760 ところで 以前から尋ねてみたいと 思っていたことがあるのだが 172 00:16:31,760 --> 00:16:35,030 卿は こう主張するのでは あるまいな 173 00:16:35,030 --> 00:16:39,770 「自分が これまで他人の非難を 被るような行動を続けてきたのは」 174 00:16:39,770 --> 00:16:43,140 「民主共和政治の 健全な発展を促すため」 175 00:16:43,140 --> 00:16:48,910 「後世に対して警鐘を鳴らすのが 目的であった」と 176 00:16:48,910 --> 00:16:51,780 さすがはロイエンタール元帥 177 00:16:51,780 --> 00:16:54,780 私の本意を 見抜いていただけるとは 178 00:16:54,780 --> 00:16:57,420 ありがたいことです 何? 179 00:16:57,420 --> 00:17:01,960 冗談ですよ 私には 殉教者を気取る趣味はありません 180 00:17:01,960 --> 00:17:07,430 私が行動してきたのは 残念ながら 自分自身の福祉のためです 181 00:17:07,430 --> 00:17:12,100 こやつは民主共和政を腐食させ その骨をしゃぶり尽くした 182 00:17:12,100 --> 00:17:18,010 同じように今 専制政治をも 餌食にしようとしている 183 00:17:18,010 --> 00:17:21,680 このドブネズミを適当な場所に 監禁しておけ 184 00:17:21,680 --> 00:17:24,580 ネズミの分際で 人間の言葉らしきものを 185 00:17:24,580 --> 00:17:29,850 ペラペラとしゃべりたてるが 耳を貸す必要はない 186 00:17:29,850 --> 00:17:33,720 道具として役立てるから それまで餓死させぬように 187 00:17:33,720 --> 00:17:36,720 エサをやるのを忘れんようにな 188 00:17:47,740 --> 00:17:51,310 閣下… イゼルローン要塞に使者を送れ 189 00:17:51,310 --> 00:17:53,240 そして伝えるのだ 190 00:17:53,240 --> 00:17:56,510 「イゼルローン回廊を 帝国軍が通過しようとする時」 191 00:17:56,510 --> 00:17:58,450 「それを阻止してくれたら」 192 00:17:58,450 --> 00:18:03,790 「旧同盟領全域の支配権を 彼らにくれてやる」とな 193 00:18:03,790 --> 00:18:07,120 は… 驚くことはない 194 00:18:07,120 --> 00:18:10,460 俺が欲するのは帝国の支配権だ 195 00:18:10,460 --> 00:18:15,830 旧同盟領など 共和主義者の 残党どもにくれてやる 196 00:18:15,830 --> 00:18:18,870 閣下 いずれにしても 197 00:18:18,870 --> 00:18:22,440 軍事上の不利を 自ら招くことはないからな 198 00:18:22,440 --> 00:18:26,010 策は打っておくとしよう もし奴らが望むなら 199 00:18:26,010 --> 00:18:28,910 民主政治の裏切り者 ヨブ・トリューニヒトの 200 00:18:28,910 --> 00:18:32,320 首なり生身なりを 付録につけてやってもよい 201 00:18:32,320 --> 00:18:34,320 そのことも忘れずに 202 00:18:45,700 --> 00:18:47,630 オスカー・フォン・ ロイエンタールは 203 00:18:47,630 --> 00:18:50,300 雄材大略とも言うべき 偉才であって 204 00:18:50,300 --> 00:18:53,670 大軍の指揮官としても 広大な領土の総督としても 205 00:18:53,670 --> 00:18:57,110 宰相としても その才幹に不足はなかった 206 00:18:57,110 --> 00:18:59,040 ただ この時代 たった一つ 207 00:18:59,040 --> 00:19:01,680 彼にふさわしくない地位が あったように思われる 208 00:19:01,680 --> 00:19:07,050 それは発足したばかりの新帝国の 皇帝という地位である 209 00:19:07,050 --> 00:19:10,920 考えてみると 第3代辺りの皇帝としては 210 00:19:10,920 --> 00:19:12,920 ロイエンタールほど卓越した 211 00:19:12,920 --> 00:19:17,430 才幹と器局の所有者は いなかったのではなかろうか 212 00:19:17,430 --> 00:19:22,630 彼は前政権の政策を継承して 長所を伸ばし 短所を改め 213 00:19:22,630 --> 00:19:26,000 綱紀を粛正して 国家組織を再生させ 214 00:19:26,000 --> 00:19:29,240 武力反乱を鎮圧して 帝権と人民を守り 215 00:19:29,240 --> 00:19:34,440 強大な指導力によって 揺るぎない 集権的統一を維持しただろう 216 00:19:34,440 --> 00:19:37,710 彼はゴールデンバウム王朝の 皇帝たちの大部分より 217 00:19:37,710 --> 00:19:41,920 偉大な君主となったに違いない 218 00:19:41,920 --> 00:19:44,950 しかし 彼の帝国において 219 00:19:44,950 --> 00:19:47,860 首都はなお オーディンで あり続けるだろう 220 00:19:47,860 --> 00:19:50,730 彼と同時代に 比類ない天才によって 221 00:19:50,730 --> 00:19:54,360 宇宙の中枢をフェザーンに 移転させた若者がいる 222 00:19:54,360 --> 00:19:56,870 それを思えば ロイエンタールは 223 00:19:56,870 --> 00:20:00,740 創業の時代に生まれた 守成の人であった 224 00:20:00,740 --> 00:20:04,170 創業の人たるラインハルト・ フォン・ローエングラムと 225 00:20:04,170 --> 00:20:06,440 時代を同じくしたことは 226 00:20:06,440 --> 00:20:08,780 オスカー・フォン・ ロイエンタールにとって 227 00:20:08,780 --> 00:20:12,180 不幸なことであったろうか それとも… 228 00:20:17,350 --> 00:20:21,090 ユリアン・ミンツはあえて そこまでしか記していない 229 00:20:21,090 --> 00:20:24,390 何より この時点では ロイエンタールの謀反と 230 00:20:24,390 --> 00:20:27,100 カイザー・ラインハルトの 行方不明という状況しか 231 00:20:27,100 --> 00:20:29,100 伝わっていないこともあったが 232 00:20:29,100 --> 00:20:32,570 彼自身 理屈では 言い表せない真実を 233 00:20:32,570 --> 00:20:37,310 その事件の中に 見出していたからかもしれない 234 00:20:37,310 --> 00:20:40,780 事件以降 行方不明になっていた カイザー一行は 235 00:20:40,780 --> 00:20:43,610 ひたすらフェザーンへの帰路を 急いでいた 236 00:20:43,610 --> 00:20:45,920 敵味方の区別が分からぬ中 237 00:20:45,920 --> 00:20:50,550 一切の通信を封鎖したままの 逃避行である 238 00:20:50,550 --> 00:20:54,320 途中 通信の傍受によって ルッツの死を知ったラインハルトは 239 00:20:54,320 --> 00:20:56,620 しばし無言であった 240 00:21:01,460 --> 00:21:04,430 ルッツを帝国元帥に叙する 241 00:21:04,430 --> 00:21:06,600 彼は嫌がるだろうが 242 00:21:06,600 --> 00:21:09,340 余との約束を 守らなかった者に対する 243 00:21:09,340 --> 00:21:11,340 これは罰だ 244 00:21:21,520 --> 00:21:24,390 一方 ロイエンタールから 事件の収拾と 245 00:21:24,390 --> 00:21:27,260 真相調査を命じられた グリルパルツァーは 246 00:21:27,260 --> 00:21:32,360 10月中にウルヴァシーを制圧し 治安を回復するのに成功した 247 00:21:56,290 --> 00:21:58,890 それはかなり 武断的な方法であって 248 00:21:58,890 --> 00:22:03,530 武器放棄 原隊復帰の命令に 即座に従わなかった将兵のうち 249 00:22:03,530 --> 00:22:08,260 2000名以上が戦闘と即時銃殺に よって死亡している 250 00:22:08,260 --> 00:22:11,670 その後 グリルパルツァーは カイザーを危機に陥れた事件の 251 00:22:11,670 --> 00:22:13,740 全容を解明に当たったのだが 252 00:22:13,740 --> 00:22:17,740 これが容易に 結論の出ることではなかった 253 00:22:31,020 --> 00:22:35,860 基地司令官ヴィンクラー中将は 行方不明で 死体も発見されず 254 00:22:35,860 --> 00:22:40,860 その消息については 明確な証言を 得ることはできなかった 255 00:22:44,570 --> 00:22:48,000 近来 麻薬中毒の症状が 見られたことが 256 00:22:48,000 --> 00:22:50,670 軍医のカルテによって 確認されたが 257 00:22:50,670 --> 00:22:54,540 能力と閲歴を買われて 重責を担った高級士官が 258 00:22:54,540 --> 00:22:59,140 なぜ中毒者に落ちたかについては 捜査の糸が途切れてしまう 259 00:23:02,290 --> 00:23:06,960 兵士たちの証言も 混乱を極めていた 260 00:23:06,960 --> 00:23:10,830 ルッツ ミュラーの両提督が 地球教団によって洗脳され 261 00:23:10,830 --> 00:23:13,530 皇帝陛下に 害を加えようとしたので 262 00:23:13,530 --> 00:23:15,770 我々は上官の命令によって 263 00:23:15,770 --> 00:23:19,270 陛下を救出し奉るために 出動したのです 264 00:23:23,310 --> 00:23:26,210 ただ 死者のうちに 地球教の経典や 265 00:23:26,210 --> 00:23:29,510 紋章を所持していた者が 10名以上も発見され 266 00:23:29,510 --> 00:23:32,420 どうやら地球教の陰謀らしいと 思われた 267 00:23:32,420 --> 00:23:35,350 ところが グリルパルツァーは なぜか その事実を 268 00:23:35,350 --> 00:23:38,450 その時点で 公表しようとしなかった 269 00:23:44,660 --> 00:23:47,960 事件以降 行方不明になっていた カイザー一行が 270 00:23:47,960 --> 00:23:51,500 出動したワーレン艦隊によって 発見 保護されたのは 271 00:23:51,500 --> 00:23:54,500 10月29日になってからである 272 00:24:03,050 --> 00:24:06,850 ルッツの死と 3週間以上の逃避行は 273 00:24:06,850 --> 00:24:10,490 カイザー・ラインハルトの矜持を いたく傷つけた 274 00:24:10,490 --> 00:24:13,390 ウルヴァシーにおいては むしろ事件の首謀者が 275 00:24:13,390 --> 00:24:15,320 ロイエンタールであるという 観察を 276 00:24:15,320 --> 00:24:18,230 否定したがっていた ラインハルトであったが 277 00:24:18,230 --> 00:24:21,230 もはや その寛容は姿を消していた 278 00:24:21,230 --> 00:24:24,730 宇宙暦800年 新帝国暦2年 279 00:24:24,730 --> 00:24:27,200 ユリアン・ミンツが慨嘆したように 280 00:24:27,200 --> 00:24:29,440 歴史は加速度をつけて 281 00:24:29,440 --> 00:24:32,940 悲劇への坂を 下り落ちようとしている 282 00:26:07,970 --> 00:26:11,440 カイザー・ラインハルトは ロイエンタール討伐の命を 283 00:26:11,440 --> 00:26:14,110 あえてミッターマイヤーに下した 284 00:26:14,110 --> 00:26:17,010 苦渋の選択を迫られた ミッターマイヤーは 285 00:26:17,010 --> 00:26:20,880 せめて事件の元凶となった ラングの排除を図る 286 00:26:20,880 --> 00:26:25,420 一方その頃 ヒルダは 体調の異常を自覚していた 287 00:26:25,420 --> 00:26:31,790 次回「銀河英雄伝説」 第94話「叛逆は英雄の特権」 288 00:26:31,790 --> 00:26:34,490 銀河の歴史が また1ページ