1 00:01:32,250 --> 00:01:36,770 宇宙暦800年 新帝国暦2年11月1日 2 00:01:36,770 --> 00:01:36,920 カイザー・ラインハルトと 随員たちは 宇宙暦800年 新帝国暦2年11月1日 3 00:01:36,920 --> 00:01:39,270 カイザー・ラインハルトと 随員たちは 4 00:01:39,270 --> 00:01:42,710 ワーレン艦隊に守られて フェザーン回廊に入り 5 00:01:42,710 --> 00:01:45,110 ミッターマイヤーに迎えられた 6 00:01:56,320 --> 00:02:00,720 司令長官に話がある 卿らは しばらく下がってくれ 7 00:02:10,470 --> 00:02:13,410 ミッターマイヤー はっ 8 00:02:13,410 --> 00:02:16,280 卿を残した理由は了解していよう 9 00:02:16,280 --> 00:02:19,080 ロイエンタールは当代の名将だ 10 00:02:19,080 --> 00:02:23,020 彼に勝利し得る者は 帝国全軍に ただ2名 11 00:02:23,020 --> 00:02:26,420 余と卿しかおらぬ 12 00:02:26,420 --> 00:02:29,920 ゆえに卿を残した 意味は分かろうな 13 00:02:31,960 --> 00:02:34,860 酷なることは十分に承知している 14 00:02:34,860 --> 00:02:39,370 卿とロイエンタールは 10年以上に わたる親友であったからな 15 00:02:39,370 --> 00:02:44,070 ゆえに今回に限り 余の命令を 拒絶する権利を与える 16 00:02:44,070 --> 00:02:47,940 卿に対して あるいはかえって 侮辱になるかもしれんが 17 00:02:47,940 --> 00:02:51,280 お待ちください 陛下 18 00:02:51,280 --> 00:02:54,180 今日までの我が武勲 全てを差し出して 19 00:02:54,180 --> 00:02:57,050 陛下にご翻意いただきたく 存じます 20 00:02:57,050 --> 00:02:59,950 お聞き入れいただけませんか? 翻意? 21 00:02:59,950 --> 00:03:03,220 翻意とは何か ミッターマイヤー 22 00:03:03,220 --> 00:03:06,130 卿は何か 誤解しているのではないか 23 00:03:06,130 --> 00:03:09,630 翻意すべきは余ではない ロイエンタールであろう 24 00:03:09,630 --> 00:03:13,800 彼が余に背いたのであって 余が彼に背いたのではないぞ 25 00:03:13,800 --> 00:03:16,600 あえて申し上げます ロイエンタールは 26 00:03:16,600 --> 00:03:19,540 陛下に背き申し上げたのでは ございますまい 27 00:03:19,540 --> 00:03:24,110 彼の忠誠心と功績は 私などとは比較になりません 28 00:03:24,110 --> 00:03:26,650 どうか彼に弁明の機会を お与えください 29 00:03:26,650 --> 00:03:30,980 機会だと?余がルッツの献身で ウルヴァシーを脱してより 30 00:03:30,980 --> 00:03:35,220 ワーレンに救われるまで どれだけの 時間があったと思うのだ 31 00:03:35,220 --> 00:03:37,890 ロイエンタールが 身の潔白を主張する気なら 32 00:03:37,890 --> 00:03:40,790 100回ほども それが できたはずではないか 33 00:03:40,790 --> 00:03:43,700 恐れながら 陛下 この2月に 34 00:03:43,700 --> 00:03:48,130 ロイエンタール元帥が中傷された時には 彼をお信じになって 35 00:03:48,130 --> 00:03:50,700 微動だになさらなかったでは ございませんか 36 00:03:50,700 --> 00:03:53,610 余が襲撃され ルッツが命を失ったのも 37 00:03:53,610 --> 00:03:55,710 何者かの中傷か! 38 00:03:59,210 --> 00:04:03,780 余が望んで ロイエンタールを討つと思うか 39 00:04:03,780 --> 00:04:06,690 確かに 彼にも 弁明したいことはあろう 40 00:04:06,690 --> 00:04:09,560 卿らの友誼の深さには 及ぶはずもないが 41 00:04:09,560 --> 00:04:12,590 余と彼の間にも友誼はあった 42 00:04:12,590 --> 00:04:15,230 だが それなら なぜロイエンタールは 43 00:04:15,230 --> 00:04:17,730 余の前に釈明に現れぬ? 44 00:04:17,730 --> 00:04:21,530 余が屈辱的な逃避行を行う間 彼は何をしていた 45 00:04:21,530 --> 00:04:24,000 謝罪文の一通も よこさぬではないか 46 00:04:24,000 --> 00:04:26,710 ルッツの死を悼む一文も ないではないか 47 00:04:26,710 --> 00:04:30,310 これで どうやって誠意を 認めさせるつもりなのだ 48 00:04:36,880 --> 00:04:39,850 陛下 申し上げにくいことながら 49 00:04:39,850 --> 00:04:42,620 ロイエンタールが 御前に参上せぬのは 50 00:04:42,620 --> 00:04:45,220 その途中で 何者かに 妨害されることを 51 00:04:45,220 --> 00:04:49,190 恐れるからでございます 何者かとは誰のことだ 52 00:04:49,190 --> 00:04:51,930 誹謗とお受け取りに なられるでしょうが 53 00:04:51,930 --> 00:04:54,470 軍務尚書 オーベルシュタイン元帥と 54 00:04:54,470 --> 00:04:57,370 内務省次官ラングの 両名でございます 55 00:04:57,370 --> 00:05:02,210 彼らが余の意思を無視して ロイエンタールを妨害するというのか 56 00:05:02,210 --> 00:05:04,780 陛下 お願いでございます 57 00:05:04,780 --> 00:05:08,050 私が申しました両名を 現職より更迭し 58 00:05:08,050 --> 00:05:13,850 もってロイエンタールに対する和解の 意思表示としていただけませんか 59 00:05:13,850 --> 00:05:15,890 陛下に そうお約束いただければ 60 00:05:15,890 --> 00:05:18,620 小官は 我が身命に代えましても 61 00:05:18,620 --> 00:05:22,430 ロイエンタールを説得して 陛下の御前に ひざまずかせます 62 00:05:22,430 --> 00:05:26,800 一時の迷妄 どうかまげて ご寛恕を願いあげとうございます 63 00:05:26,800 --> 00:05:31,470 本末転倒は承知しておりますが 他に方法がございません 64 00:05:31,470 --> 00:05:34,670 余は そこまで譲歩せねば ならぬのか 65 00:05:34,670 --> 00:05:37,580 背いた臣下を討つのではなく 呼び戻すために 66 00:05:37,580 --> 00:05:40,610 余の重臣を更迭しろと卿は言うか 67 00:05:40,610 --> 00:05:43,050 この国の玉座にある者は誰か 68 00:05:43,050 --> 00:05:45,950 余か それともロイエンタールか 69 00:05:45,950 --> 00:05:50,660 陛下 私は軍務尚書とは 不仲ではございますが 70 00:05:50,660 --> 00:05:54,930 それゆえに更迭すべしと 申し上げるのではございません 71 00:05:54,930 --> 00:05:58,800 軍務尚書を一時的に更迭しても 再び その地位に就け 72 00:05:58,800 --> 00:06:00,770 名誉を回復することが かないましょう 73 00:06:00,770 --> 00:06:03,640 ですが 今この時機を逃しましては 74 00:06:03,640 --> 00:06:08,810 ロイエンタールが陛下の下へ帰参する 機会は永遠に失われましょう 75 00:06:08,810 --> 00:06:13,480 卿の理論はそれとして 軍務尚書が納得すると思うか? 76 00:06:13,480 --> 00:06:16,780 軍務尚書のみに 不名誉を 負わせはいたしません 77 00:06:16,780 --> 00:06:20,190 小官も宇宙艦隊司令長官の 座を退きます 78 00:06:20,190 --> 00:06:22,750 さすれば 軍務尚書の不快感も 79 00:06:22,750 --> 00:06:25,020 いささかは 慰められるかと存じます 80 00:06:25,020 --> 00:06:27,930 何をバカな!卿の去った後に 81 00:06:27,930 --> 00:06:31,160 何人をもって 宇宙艦隊を指揮させるか 82 00:06:31,160 --> 00:06:36,540 余は現存する三元帥を全て 軍中枢から失わねばならぬのか 83 00:06:36,540 --> 00:06:41,270 宇宙艦隊はミュラー上級大将に 委ねて不安はございません 84 00:06:41,270 --> 00:06:44,540 軍務尚書は 私が申し上げるのは僭越ながら 85 00:06:44,540 --> 00:06:47,510 ケスラーなり メックリンガーなりが 任に堪えましょう 86 00:06:47,510 --> 00:06:50,150 何のご心配も要りません 87 00:06:50,150 --> 00:06:54,990 卿は30代もまだ前半で 退役生活に入りたいと言うのか 88 00:06:54,990 --> 00:06:57,890 我が軍最高の勇将が かのヤン・ウェンリーの 89 00:06:57,890 --> 00:07:02,230 人生観にならうとは 思わなかったぞ 90 00:07:02,230 --> 00:07:04,700 卿の意見は覚えておこう 91 00:07:04,700 --> 00:07:07,430 それはそれとして 余の命令はどうなった? 92 00:07:07,430 --> 00:07:09,840 卿の返答をまだ聞いてはおらんぞ 93 00:07:09,840 --> 00:07:14,440 受けるか受けぬか 受けぬなら 余が自身で出向くまでのことだが 94 00:07:21,950 --> 00:07:25,050 勅命 謹んでお受けいたします 95 00:07:28,520 --> 00:07:31,420 カイザー・ラインハルトの フェザーン帰還と前後して 96 00:07:31,420 --> 00:07:34,060 オスカー・フォン・ ロイエンタール元帥から 97 00:07:34,060 --> 00:07:37,960 帝国政府宛てと称して 一文が送られてきた 98 00:07:37,960 --> 00:07:42,230 カイザー・ラインハルトにではなく 帝国政府宛てとしたところが 99 00:07:42,230 --> 00:07:46,100 発信者の心情の 単純ならざる一面を表していたが 100 00:07:46,100 --> 00:07:48,670 ラインハルトには それも不快であった 101 00:07:48,670 --> 00:07:52,240 更に不快であったのは その内容である 102 00:07:52,240 --> 00:07:55,210 「皇帝陛下の不予による 衰弱に乗じて」 103 00:07:55,210 --> 00:07:58,350 「軍務尚書 オーベルシュタイン元帥と」 104 00:07:58,350 --> 00:08:01,720 「内務次官ラングの両名が 国政を壟断し」 105 00:08:01,720 --> 00:08:05,420 「カイザーを無視して ほしいままに粛清を行っている」 106 00:08:05,420 --> 00:08:07,990 「自分 オスカー・フォン・ ロイエンタールは」 107 00:08:07,990 --> 00:08:10,860 「それを看過し得ず 必要とあれば」 108 00:08:10,860 --> 00:08:14,430 「実力をもって 彼らの専横を 排するつもりである」 109 00:08:14,430 --> 00:08:17,300 いつ余が オーベルシュタインや ラングごときに 110 00:08:17,300 --> 00:08:19,810 国政の壟断を許したか! 111 00:08:19,810 --> 00:08:22,210 仮にロイエンタールの 言うとおりだとしたら 112 00:08:22,210 --> 00:08:26,610 そもそも彼がノイエ・ラント総督に なり得る道理がないではないか 113 00:08:26,610 --> 00:08:28,680 反逆を正当化するために そこまで余を 114 00:08:28,680 --> 00:08:31,380 おとしめる必要があるのか! 115 00:08:31,380 --> 00:08:34,290 ロイエンタールの側とすれば ラインハルト自身に 116 00:08:34,290 --> 00:08:38,090 特に失政がない以上 君側の奸を弾劾するのは 117 00:08:38,090 --> 00:08:40,990 反逆者としては 当然の論法であった 118 00:08:40,990 --> 00:08:43,900 だが 他者に服従し 他者から支配されることを 119 00:08:43,900 --> 00:08:46,370 最も嫌悪するラインハルトである 120 00:08:46,370 --> 00:08:49,770 矜持を傷つけられた怒りは 激しく深刻で 121 00:08:49,770 --> 00:08:52,170 しかも当然のものであった 122 00:08:58,910 --> 00:09:01,610 ワーレンとビッテンフェルトに 連絡を取ってくれ 123 00:09:01,610 --> 00:09:05,950 今回の出征では 彼らに両翼を 固めてもらうことになるだろう 124 00:09:05,950 --> 00:09:09,520 はっ ところで ミュラー提督は? 125 00:09:09,520 --> 00:09:12,560 ミュラーは まだ完全に 負傷が癒えておらぬし 126 00:09:12,560 --> 00:09:15,930 彼には陛下の側近に いてもらわねばなるまい 127 00:09:15,930 --> 00:09:18,330 それに 俺が敗れた時 128 00:09:18,330 --> 00:09:21,370 彼は陛下をお守りする 最後の盾になる 129 00:09:21,370 --> 00:09:23,800 今回は残ってもらおう 130 00:09:23,800 --> 00:09:27,510 ではミュラー上級大将の 出番は来ませんな 131 00:09:27,510 --> 00:09:30,510 閣下がお負けになるはずは ありませんから 132 00:09:34,950 --> 00:09:38,650 俺はロイエンタールの奴に 負けてやりたい 133 00:09:38,650 --> 00:09:41,190 閣下! いや 134 00:09:41,190 --> 00:09:43,620 こいつは俺の うぬぼれも いいところだな 135 00:09:43,620 --> 00:09:45,560 全知全能をあげても 136 00:09:45,560 --> 00:09:48,660 俺はロイエンタールに 勝てはしないだろうに 137 00:09:51,460 --> 00:09:54,970 小官は そうは思いませんが 138 00:09:54,970 --> 00:09:59,810 卿がどう考えるかは卿の自由だが 俺はロイエンタールに遠く及ばぬ 139 00:09:59,810 --> 00:10:03,070 閣下 それは… 及ばぬのだ 140 00:10:03,070 --> 00:10:06,980 俺は単なる軍人 ロイエンタールはそうではない 141 00:10:06,980 --> 00:10:08,980 あいつは… 142 00:10:11,150 --> 00:10:14,920 閣下のおっしゃることが 仮に ご謙遜でないとしても 143 00:10:14,920 --> 00:10:18,860 閣下はあえてロイエンタール元帥と 戦われるおつもりでしょう 144 00:10:18,860 --> 00:10:22,860 カイザーのご親征などという 事態を招かぬように 145 00:10:26,000 --> 00:10:29,300 カイザーの御手を 汚してはならんのだ 146 00:10:32,240 --> 00:10:36,210 バイエルラインは 上官の 言わんとするところを理解した 147 00:10:36,210 --> 00:10:40,310 カイザー・ラインハルトが親征して ロイエンタールを討伐するとなると 148 00:10:40,310 --> 00:10:43,780 カイザーの手は 反逆者の血に汚れる 149 00:10:43,780 --> 00:10:46,590 これまで将兵たちの マイン・カイザーとして 150 00:10:46,590 --> 00:10:49,790 完全無欠の偶像であった ラインハルトへの信仰心に 151 00:10:49,790 --> 00:10:51,720 曇りが生じることになる 152 00:10:51,720 --> 00:10:55,590 それはヤン・ウェンリーに対して 勝利し得なかったことなどと 153 00:10:55,590 --> 00:11:00,100 比較しようもない亀裂を 将来に もたらすのではないだろうか 154 00:11:00,100 --> 00:11:03,130 ミッターマイヤーは 自己の感情をねじ伏せて 155 00:11:03,130 --> 00:11:05,870 それを阻止せねば ならないのだった 156 00:11:05,870 --> 00:11:09,370 ロイエンタールと俺と 双方が倒れても 157 00:11:09,370 --> 00:11:11,640 銀河帝国は存続し得る 158 00:11:11,640 --> 00:11:14,550 だがカイザーに 万が一のことがあれば 159 00:11:14,550 --> 00:11:19,180 せっかく招来した統一と平和は 一朝にして ついえるだろう 160 00:11:19,180 --> 00:11:22,420 勝てぬとしても 負けるわけにはいかんのだ 161 00:11:22,420 --> 00:11:24,690 閣下 それは困ります 162 00:11:24,690 --> 00:11:29,230 仮に閣下とロイエンタール元帥とが ともに倒れるようなことがあれば 163 00:11:29,230 --> 00:11:32,730 あのオーベルシュタイン元帥 ひとりが専横をふるっても 164 00:11:32,730 --> 00:11:35,630 阻む人がいなくなって しまうではありませんか 165 00:11:35,630 --> 00:11:39,500 なに ロイエンタールと俺が 同時に消えてしまって 166 00:11:39,500 --> 00:11:42,310 現存する元帥が奴一人になれば 167 00:11:42,310 --> 00:11:45,210 自動的に奴も 引退するかもしれんさ 168 00:11:45,210 --> 00:11:48,010 何しろ 国にナンバー2は 必要ないというのが 169 00:11:48,010 --> 00:11:52,350 奴の持論だからな 閣下 ご冗談にしても… 170 00:11:52,350 --> 00:11:55,250 まあ 仮定の話はやめよう 171 00:11:55,250 --> 00:11:58,090 ビッテンフェルトとワーレンに 連絡を取ってくれ 172 00:11:58,090 --> 00:12:00,190 はっ 173 00:12:04,230 --> 00:12:07,630 オーベルシュタインはいい だが いま一人 174 00:12:07,630 --> 00:12:10,300 奴は… 奴だけは許せぬ 175 00:12:10,300 --> 00:12:13,240 俺は出陣に先立って 陛下の御ため 176 00:12:13,240 --> 00:12:16,240 害虫を 駆除してさしあげねばなるまい 177 00:12:19,010 --> 00:12:22,980 ついに あのロイエンタールめが 馬脚をあらわしましたぞ 178 00:12:22,980 --> 00:12:25,520 ああ いやいや 軍務尚書閣下には 179 00:12:25,520 --> 00:12:27,890 既に ご存じのことでございましたな 180 00:12:27,890 --> 00:12:30,720 しかしながら 皇帝陛下に対し奉り 181 00:12:30,720 --> 00:12:33,460 なんたる不忠 なんたる不敬 182 00:12:33,460 --> 00:12:35,390 なればこそ 私はかねてより 183 00:12:35,390 --> 00:12:38,900 「ロイエンタール元帥には 不穏のたくらみあり」と 184 00:12:38,900 --> 00:12:40,830 申し上げてきたのでございます 185 00:12:40,830 --> 00:12:43,170 カイザーには それをお取りあげにならず 186 00:12:43,170 --> 00:12:46,770 無念のほぞを かんでおりましたが かくのごとき事態に至って 187 00:12:46,770 --> 00:12:49,610 私の正しさが… ラング 188 00:12:49,610 --> 00:12:51,540 はっ 閣下 189 00:12:51,540 --> 00:12:54,410 私は今回の ノイエ・ラントの不祥事で 190 00:12:54,410 --> 00:12:58,220 ロイエンタール元帥の元へ 特使として赴くかもしれん 191 00:12:58,220 --> 00:13:00,920 ほう それはそれは ご苦労さまでございますな 192 00:13:00,920 --> 00:13:05,220 危険もおありでしょうに 別に同情してもらう必要はない 193 00:13:05,220 --> 00:13:08,520 卿も同行するのだからな え? 194 00:13:10,760 --> 00:13:12,730 そ… そんな しかし 195 00:13:12,730 --> 00:13:15,430 いつでも 出発できるようにしておけ 196 00:13:15,430 --> 00:13:18,340 私のほうは既に準備ができている 197 00:13:18,340 --> 00:13:23,740 わ… 私はロイエンタール元帥の 前に出たら 即座に殺されます 198 00:13:23,740 --> 00:13:27,650 何しろ元帥は なぜか私を 憎んでおられますから 199 00:13:27,650 --> 00:13:31,550 私以上に卿のほうが 憎まれているとも思えんがな 200 00:13:31,550 --> 00:13:35,350 で… ですが 私は内務省の所属で ございますから 201 00:13:35,350 --> 00:13:38,820 まず内務尚書閣下の ご裁可をいただきませんと 202 00:13:38,820 --> 00:13:41,130 何事も勝手にはできません 203 00:13:41,130 --> 00:13:44,030 一端 省のほうに戻って 相談してまいりますので 204 00:13:44,030 --> 00:13:46,630 今日は これにて失礼を 205 00:13:53,410 --> 00:13:55,440 冗談ではない オーベルシュタインが 206 00:13:55,440 --> 00:13:59,010 ロイエンタールに害されるのは 一向に構わないし 207 00:13:59,010 --> 00:14:01,950 俺の将来の栄達にとっては 障害の一つが減って 208 00:14:01,950 --> 00:14:04,350 むしろ望ましいくらいだ 209 00:14:04,350 --> 00:14:07,720 2人が同時に消えてくれたら こんなありがたいことはない 210 00:14:07,720 --> 00:14:10,090 だが 俺まで 巻き込まれてたまるか! 211 00:14:10,090 --> 00:14:14,830 何としても 同行などせんで よいようにしなくては 212 00:14:14,830 --> 00:14:17,160 ん? 213 00:14:17,160 --> 00:14:20,170 ミ… ミッターマイヤー元帥 214 00:14:20,170 --> 00:14:24,000 ほう 今をときめく内務次官閣下は 215 00:14:24,000 --> 00:14:26,970 小官ごときの名を ご存じでいらっしゃったか 216 00:14:26,970 --> 00:14:29,110 光栄の極み 217 00:14:29,110 --> 00:14:32,910 軍務尚書閣下にご用なら 執務室においでですが 218 00:14:32,910 --> 00:14:36,880 用があるのは卿に対してだ 内務次官! 219 00:14:36,880 --> 00:14:41,120 それとも内国安全保障局長と お呼びすればいいかな 220 00:14:41,120 --> 00:14:43,620 いずれにしても 生前の地位など 221 00:14:43,620 --> 00:14:47,620 これから先の卿には 必要のないものだろう 222 00:14:54,270 --> 00:14:58,370 いいか そこを動くなよ 俺が行くまで 223 00:15:00,370 --> 00:15:02,310 あ… 224 00:15:02,310 --> 00:15:04,810 だ… 誰か… 225 00:15:13,250 --> 00:15:16,150 うああ… 226 00:15:16,150 --> 00:15:19,090 ん? 227 00:15:19,090 --> 00:15:22,360 ケスラー 228 00:15:22,360 --> 00:15:25,030 おやめなさい ミッターマイヤー元帥 229 00:15:25,030 --> 00:15:29,830 ラング次官は 皇帝陛下の臣僚ですぞ 230 00:15:29,830 --> 00:15:31,770 ミッターマイヤー元帥 231 00:15:31,770 --> 00:15:34,640 たとえ武勲において 比類なき閣下であっても 232 00:15:34,640 --> 00:15:37,840 軍務省内において 私闘に及ぶとあらば 233 00:15:37,840 --> 00:15:40,150 憲兵総監たる小官の職権によって 234 00:15:40,150 --> 00:15:43,750 これを阻止せざるを得ませんが ご承知の上か 235 00:15:43,750 --> 00:15:47,320 私闘?憲兵総監の おっしゃりようは不本意だが 236 00:15:47,320 --> 00:15:50,520 私闘というのであれば そう見られても構わぬ 237 00:15:50,520 --> 00:15:53,460 あのラングという 人間の皮をかぶったシロアリを 238 00:15:53,460 --> 00:15:55,490 これ以上 のさばらせていては 239 00:15:55,490 --> 00:15:58,030 安心して出征することも できぬからな 240 00:15:58,030 --> 00:15:59,960 この際 言っておくが… 241 00:15:59,960 --> 00:16:03,540 ラングの非道をただすには 法をもってする 242 00:16:03,540 --> 00:16:08,240 でなければローエングラム王朝の よって立つ礎が崩れますぞ 243 00:16:08,240 --> 00:16:12,110 重臣中の重臣 宿将中の宿将であるあなたに 244 00:16:12,110 --> 00:16:15,150 そのことが お分かりに ならぬはずはありますまい 245 00:16:15,150 --> 00:16:17,750 立派なご意見だが 憲兵総監 246 00:16:17,750 --> 00:16:20,190 そこで震えている シロアリめに対して 247 00:16:20,190 --> 00:16:24,590 法は常に無力だったではないか! 俺は罰せられてもよいのだ 248 00:16:24,590 --> 00:16:28,030 こいつに相応の報いを くれてやることさえできればな 249 00:16:28,030 --> 00:16:32,000 落ち着かれよ 元帥 明敏な閣下らしくもない 250 00:16:32,000 --> 00:16:34,900 閣下に万一のことがあれば 一体 誰が 251 00:16:34,900 --> 00:16:38,500 ゴールデン・ルーヴェの栄光を守る 責任者となるのか 252 00:16:38,500 --> 00:16:42,070 疾風ウォルフともあろうお人が 私情にかられて 253 00:16:42,070 --> 00:16:46,910 一国を担う重責を ないがしろになさるか! 254 00:16:46,910 --> 00:16:49,610 カイザーは名君であらせられます 255 00:16:49,610 --> 00:16:51,850 ラング次官に罪状あらば 256 00:16:51,850 --> 00:16:56,590 必ず帝権と国法をもって それを正されるでしょう 257 00:16:56,590 --> 00:16:59,860 どうか 元帥 小官をご信用あって 258 00:16:59,860 --> 00:17:02,590 閣下の任務をお果たしください 259 00:17:02,590 --> 00:17:05,530 分かった 卿にお任せする 260 00:17:05,530 --> 00:17:07,730 見苦しいところをお目にかけた 261 00:17:07,730 --> 00:17:11,430 騒ぎを起こした罪は いずれ償わせていただく 262 00:17:17,710 --> 00:17:21,450 うう… 憲兵総監殿 助かった 263 00:17:21,450 --> 00:17:24,850 しかし ミッターマイヤー元帥の罪は… 264 00:17:40,800 --> 00:17:43,430 フロイライン・マリーンドルフ 265 00:17:43,430 --> 00:17:45,840 陛下 おかえりなさいませ 266 00:17:45,840 --> 00:17:49,640 ご無事なお姿を拝見できて うれしゅうございます 267 00:17:49,640 --> 00:17:53,410 うん 心配かけた 268 00:17:53,410 --> 00:17:55,510 ルッツが死んだ 269 00:18:02,790 --> 00:18:06,960 これで余のために 幾人が死んだのであろう 270 00:18:06,960 --> 00:18:10,400 3年前に 余は もはや失って惜しむべき人間など 271 00:18:10,400 --> 00:18:13,130 一人も残っていないと 思っていた 272 00:18:13,130 --> 00:18:16,030 それなのに 今年だけでも ファーレンハイト 273 00:18:16,030 --> 00:18:18,940 シュタインメッツ ルッツの3人 274 00:18:18,940 --> 00:18:23,370 余の愚かさに対する罰としても 重すぎるではないか 275 00:18:23,370 --> 00:18:27,710 元帥方は陛下を罰する 運命の道具ではありません 276 00:18:27,710 --> 00:18:30,650 あの方たちが 陛下をお恨み申し上げながら 277 00:18:30,650 --> 00:18:33,150 ヴァルハラへ旅立ったとは 思いません 278 00:18:33,150 --> 00:18:36,050 どうぞ ご自分を お責めになりませんよう 279 00:18:36,050 --> 00:18:39,420 分かっているつもりだが… 280 00:18:39,420 --> 00:18:41,660 フロイラインは元気だったか? 281 00:18:41,660 --> 00:18:45,460 はい 陛下 おかげさまで 282 00:18:45,460 --> 00:18:50,440 ロイエンタールが帝国政府宛てと 称して通信文を送ってきたが 283 00:18:50,440 --> 00:18:53,600 フロイラインはご存じか? はい 284 00:18:53,600 --> 00:18:56,140 ロイエンタールが オーベルシュタインとラングの 285 00:18:56,140 --> 00:18:59,340 排除を主張するのは ヒルダにも理解できた 286 00:18:59,340 --> 00:19:02,380 廷臣たちの共感を ある程度 期待するからには 287 00:19:02,380 --> 00:19:05,750 政略上も戦略上も当然であった 288 00:19:05,750 --> 00:19:09,090 だが そのことがラインハルトの 矜持を一層 傷つけ 289 00:19:09,090 --> 00:19:11,990 事態を抜き差しならぬものに してしまったことも 290 00:19:11,990 --> 00:19:14,590 今のヒルダには分かっていた 291 00:19:14,590 --> 00:19:17,400 病で衰弱しているなどと 決めつけられては 292 00:19:17,400 --> 00:19:21,900 若いカイザーの烈気の炎に 強風を吹き込んだも同然である 293 00:19:21,900 --> 00:19:24,770 また 仮に彼らが 処断されたところで 294 00:19:24,770 --> 00:19:28,070 ロイエンタールが 兵を収めるとも思われなかった 295 00:19:28,070 --> 00:19:30,540 それはバーミリオン会戦のおりに 296 00:19:30,540 --> 00:19:32,940 ミッターマイヤーと ロイエンタールをして 297 00:19:32,940 --> 00:19:35,550 同盟の首都星ハイネセンを 突かしめた時以来 298 00:19:35,550 --> 00:19:41,090 抱いていた懸念が現実のものと なったとの思いが強いためである 299 00:19:41,090 --> 00:19:43,650 恐れながら 申し上げたく思います 300 00:19:43,650 --> 00:19:47,030 軍務尚書オーベルシュタイン元帥閣下は ともかく 301 00:19:47,030 --> 00:19:51,560 ラング内務次官は 国家に対しても 陛下に対しても 302 00:19:51,560 --> 00:19:54,030 功より罪が多うございます 303 00:19:54,030 --> 00:19:57,740 彼の所業や人となりが 反感を抱かれていること 304 00:19:57,740 --> 00:19:59,700 陛下はご存じで いらっしゃいましょう 305 00:19:59,700 --> 00:20:02,170 フロイラインに 言われるまでもない 306 00:20:02,170 --> 00:20:06,110 ラングとやらが小人であることは 余も承知している 307 00:20:06,110 --> 00:20:09,950 だがネズミが1匹 倉庫の穀物を 食い荒らすとしても 308 00:20:09,950 --> 00:20:11,950 被害は知れたものだし 309 00:20:11,950 --> 00:20:14,690 その程度の生息を 許し得ないようでは 310 00:20:14,690 --> 00:20:17,520 銀河帝国も狭すぎるではないか 311 00:20:17,520 --> 00:20:22,360 ラング次官に代わる有能な官僚や 在野の人材は いくらでもおります 312 00:20:22,360 --> 00:20:26,600 彼を更迭なされば差し当たり ロイエンタール元帥にとって 313 00:20:26,600 --> 00:20:31,400 挙兵の口実は1つなくなります 提督方も納得なさいましょう 314 00:20:31,400 --> 00:20:33,440 だが ラングには罪はない 315 00:20:33,440 --> 00:20:36,340 嫌われているからといって 罰するわけにはいかぬ 316 00:20:36,340 --> 00:20:40,440 いえ 陛下 彼には 歴然たる罪がございます 317 00:20:45,050 --> 00:20:48,720 これをご覧いただけますか 318 00:20:48,720 --> 00:20:52,460 それは先のフェザーン代理総督 ニコラス・ボルテックが 319 00:20:52,460 --> 00:20:55,290 工部尚書シルヴァーベルヒの 爆殺に関し 320 00:20:55,290 --> 00:20:58,260 共犯として逮捕され 獄中で変死した事件が 321 00:20:58,260 --> 00:21:02,070 ラングの仕組んだ えん罪で ある旨を報告したものであった 322 00:21:02,070 --> 00:21:05,040 これはフロイラインが指示して 行わせたことか? 323 00:21:05,040 --> 00:21:08,210 違います 亡くなったルッツ元帥が 324 00:21:08,210 --> 00:21:13,680 生前 ラング次官の跳梁ぶりを見て 国を損なうものと危機感を抱き 325 00:21:13,680 --> 00:21:16,610 ケスラー上級大将に 調査を依頼なさったのです 326 00:21:16,610 --> 00:21:20,220 ルッツが… そうか 327 00:21:20,220 --> 00:21:22,150 はあ… 328 00:21:22,150 --> 00:21:25,560 ルッツは よく余を 見捨てずにいてくれたものだ 329 00:21:25,560 --> 00:21:29,460 それどころか命をなげうって 余を救ってくれた 330 00:21:31,860 --> 00:21:35,200 余は愚かだった 小人の権利を守って 331 00:21:35,200 --> 00:21:39,300 有能な忠臣に不満と不安を 抱かせていたとはな 332 00:21:41,670 --> 00:21:44,880 ロイエンタールに対しては もう遅いかもしれぬ 333 00:21:44,880 --> 00:21:49,580 だが 今からでもルッツの忠誠を 無にしないような処置を取ろう 334 00:21:49,580 --> 00:21:51,780 それでよいか フロイライン? 335 00:22:05,430 --> 00:22:09,130 うっ… 336 00:22:09,130 --> 00:22:11,330 うう… 337 00:22:19,780 --> 00:22:22,810 まさか たった一夜のことで… 338 00:22:22,810 --> 00:22:26,550 でも それ以外は考えられないわ 339 00:22:26,550 --> 00:22:28,590 ヒルダは戸惑っていた 340 00:22:28,590 --> 00:22:31,390 ただ 戸惑いながらも決心していた 341 00:22:31,390 --> 00:22:35,690 このことを今 ラインハルトに 告げてはならないと 342 00:22:41,030 --> 00:22:43,230 しばらく帰れないよ 343 00:22:45,340 --> 00:22:47,940 あなた ウォルフ 344 00:22:47,940 --> 00:22:51,240 私はロイエンタール元帥を 尊敬しています 345 00:22:51,240 --> 00:22:54,610 それは あの方が あなたの親友でいらっしゃるから 346 00:22:54,610 --> 00:22:57,580 でも あの方が あなたの敵におなりなら 347 00:22:57,580 --> 00:23:00,980 私は無条件で あの方を憎むことができます 348 00:23:10,160 --> 00:23:13,360 ご無事で帰っていらして ウォルフ 349 00:23:13,360 --> 00:23:16,870 そうしたら ご褒美に毎日 あなたのお好きな 350 00:23:16,870 --> 00:23:19,840 ブイヨン・フォンデュを 作ってさしあげるわ 351 00:23:19,840 --> 00:23:23,240 太ったら困るな 週に1度にしてくれ 352 00:23:36,020 --> 00:23:38,820 心配しなくてもいいよ エヴァ 353 00:23:41,190 --> 00:23:46,830 第一 まだ必ず戦うことになるとは 決まっていないからね 354 00:23:46,830 --> 00:23:49,370 陛下はラング次官を 逮捕なさったし 355 00:23:49,370 --> 00:23:53,600 それでロイエンタールの気も 済むかもしれないのだから 356 00:23:53,600 --> 00:23:55,640 だから 祈るとしたら 357 00:23:55,640 --> 00:23:59,780 「戦わずに済むように」と そう祈ってほしいな 358 00:23:59,780 --> 00:24:04,520 ぜひそうしておくれ エヴァ うん… 359 00:24:04,520 --> 00:24:09,050 宇宙暦800年 新帝国暦2年11月14日 360 00:24:09,050 --> 00:24:12,360 フェザーン回廊はウォルフガング・ ミッターマイヤー元帥の 361 00:24:12,360 --> 00:24:16,360 指揮する帝国軍宇宙艦隊の 艦艇によって埋め尽くされる 362 00:24:16,360 --> 00:24:22,830 その数 4万2770隻 将兵 460万8900名 363 00:24:22,830 --> 00:24:25,670 元帥の指揮下に入る上級大将は 364 00:24:25,670 --> 00:24:28,970 ビッテンフェルトとワーレンの 両名であった 365 00:26:07,970 --> 00:26:11,410 宣戦布告が なされたわけではなかった 366 00:26:11,410 --> 00:26:15,010 だが ロイエンタールと ミッターマイヤーの対決は 367 00:26:15,010 --> 00:26:16,950 もはや誰にも 止めることのできない 368 00:26:16,950 --> 00:26:19,450 既定の事実のようであった 369 00:26:19,450 --> 00:26:21,790 それでも あえて ミッターマイヤーは 370 00:26:21,790 --> 00:26:26,620 ロイエンタールに 最後の説得を試みるのだが… 371 00:26:26,620 --> 00:26:32,330 次回「銀河英雄伝説」 第95話「双璧相撃つ!」 372 00:26:32,330 --> 00:26:35,330 銀河の歴史が また1ページ