1 00:01:31,800 --> 00:01:34,140 総督府で ロイエンタールを待っていたのは 2 00:01:34,140 --> 00:01:36,540 軟禁を解かれた エルスハイマーであった 3 00:01:36,640 --> 00:01:41,680 このルッツの義弟は 何より ロイエンタールの顔色に驚いた 4 00:01:41,780 --> 00:01:44,480 「我が事成らず」だ 5 00:01:44,580 --> 00:01:47,320 卿に合わせる顔も本来ないが 6 00:01:47,420 --> 00:01:51,190 おめおめ生きて帰ってきた 7 00:01:51,290 --> 00:01:53,960 ご運が お悪うございましたな 8 00:01:54,060 --> 00:01:56,760 いや もう一度やっても 同じことだろう 9 00:01:56,860 --> 00:02:00,860 俺の才幹と器量は この辺りが限界だったらしい 10 00:02:03,200 --> 00:02:07,640 民事長官 一つ頼みがあるのだが 聞いてもらえるだろうか 11 00:02:07,740 --> 00:02:09,580 伺いましょう 12 00:02:09,680 --> 00:02:14,410 総督府に入って 政務と事務の 全権を掌握してほしい 13 00:02:14,510 --> 00:02:19,250 俺が勝手に始めたことの後始末を 押しつけるのは心苦しいが 14 00:02:19,350 --> 00:02:24,760 誰の手になるにせよ 統治者の 責任は おろそかにできんだろう 15 00:02:24,860 --> 00:02:26,760 承知いたしました 16 00:02:37,440 --> 00:02:39,910 トリューニヒトを呼んでくれ 17 00:02:40,010 --> 00:02:42,810 あの男に会うのは 不快そのものだが 18 00:02:42,910 --> 00:02:45,610 死の不快さに 耐える練習にはなるだろう 19 00:03:13,340 --> 00:03:16,280 元気そうで何よりだ 高等参事官 20 00:03:16,380 --> 00:03:19,340 総督閣下のおかげを持ちまして 21 00:03:19,440 --> 00:03:21,310 見てのとおりのザマだ 22 00:03:21,410 --> 00:03:24,520 俺は専制政治の陥穽に落ち込んで 23 00:03:24,620 --> 00:03:26,450 不毛な反乱を起こし 24 00:03:26,550 --> 00:03:29,760 誰からも賞賛されぬ死を 遂げようとしている 25 00:03:29,860 --> 00:03:32,490 卿の信奉していた 民主主義とやらでは 26 00:03:32,590 --> 00:03:35,360 このような悲劇とは無縁なのかな 27 00:03:35,460 --> 00:03:38,400 民主主義も 大したことはありませんぞ 28 00:03:38,500 --> 00:03:42,000 私を ご覧くださることですな 元帥 29 00:03:42,100 --> 00:03:45,040 私のような人間が権力を握って 30 00:03:45,140 --> 00:03:48,770 他人に対する生殺与奪を ほしいままにする 31 00:03:48,870 --> 00:03:52,640 これが民主主義の欠陥でなくて 何だというのですか 32 00:03:52,740 --> 00:03:57,480 奇妙だな 卿は民主主義を 憎んでいるように聞こえる 33 00:03:57,580 --> 00:04:00,950 卿は権力を欲して それを獲得するのに 34 00:04:01,050 --> 00:04:03,860 民主主義の制度を 最大限に利用したのだろう 35 00:04:03,960 --> 00:04:06,760 民主主義こそ卿の恩人ではないか 36 00:04:06,860 --> 00:04:09,560 悪しざまに言うこともあるまい 37 00:04:09,660 --> 00:04:13,430 専制政治が 私に権力を与えてくれるなら 38 00:04:13,530 --> 00:04:17,870 今度は専制政治が 私の恩人になるでしょうな 39 00:04:17,970 --> 00:04:22,110 私は民主主義を賛美する以上の 真摯さをもって 40 00:04:22,210 --> 00:04:25,380 専制主義を信奉しますとも 41 00:04:25,480 --> 00:04:28,610 すると卿は ローエングラム王朝においても 42 00:04:28,710 --> 00:04:31,480 宰相となって 権力を掌握するつもりか 43 00:04:31,580 --> 00:04:35,090 カイザーさえ そうお望みなら 44 00:04:35,190 --> 00:04:38,790 そして自由惑星同盟を 枯れ死させたように 45 00:04:38,890 --> 00:04:43,460 ローエングラム王朝も 枯れ死させるというわけか 46 00:04:43,560 --> 00:04:45,400 そのためには あえて 47 00:04:45,500 --> 00:04:48,670 地球教に利用されることも 辞さないというのだな 48 00:04:48,770 --> 00:04:52,540 違います 地球教を私が利用したのです 49 00:04:52,640 --> 00:04:57,180 私は何でも利用します 宗教でも 制度でも カイザーでも 50 00:04:57,280 --> 00:05:01,350 そう あなたが反旗を翻した あのカイザー 51 00:05:01,450 --> 00:05:04,750 才能はあっても 人間として完成に ほど遠い 52 00:05:04,850 --> 00:05:07,650 未熟な あの坊やもね 53 00:05:07,750 --> 00:05:11,020 金髪の坊やの尊大な天才ぶりには 54 00:05:11,120 --> 00:05:14,730 閣下も さぞ笑止な思いを なさったことでしょうな 55 00:05:14,830 --> 00:05:16,730 ん? 56 00:05:37,050 --> 00:05:40,550 貴様が民主共和政治を 愚弄しようと 57 00:05:40,650 --> 00:05:44,420 国家を食い潰そうと 市民をたぶらかそうと 58 00:05:44,520 --> 00:05:47,430 そんなことは 俺の関知するところではない 59 00:05:47,530 --> 00:05:50,900 だが… だが その汚らわしい舌で 60 00:05:51,000 --> 00:05:54,470 カイザーの尊厳に 汚物をなすりつけることは許さん 61 00:05:54,570 --> 00:05:57,670 俺は貴様ごときに 侮辱されるような お方に 62 00:05:57,770 --> 00:06:00,870 お仕えしていたのではないし 背いたのでもない 63 00:06:10,720 --> 00:06:13,320 どこまでも不愉快な奴だったが 64 00:06:13,420 --> 00:06:18,790 俺が生涯の最後に殺した人間が 武器を持っていなかったとは 65 00:06:18,890 --> 00:06:22,090 不名誉なマネを 俺にさせてくれたものだ 66 00:06:44,650 --> 00:06:48,420 邪魔をせんでほしいな 67 00:06:48,520 --> 00:06:52,420 俺は死ぬのではなく 死んでいく 68 00:06:52,520 --> 00:06:56,160 その過程を 結構 楽しんでいるところだ 69 00:06:56,260 --> 00:06:59,130 俺の最後の楽しみを妨げんでくれ 70 00:06:59,230 --> 00:07:04,330 久しぶりね やっぱりお前は 大逆の罪人になったわ 71 00:07:07,410 --> 00:07:10,840 リヒテンラーデ一族の生き残りか 72 00:07:10,940 --> 00:07:15,180 お前が自分自身の野心に つまづいて 敗れて 73 00:07:15,280 --> 00:07:17,620 みじめに死ぬところを 見物に来たのよ 74 00:07:17,720 --> 00:07:20,120 そいつは ご苦労だった 75 00:07:22,920 --> 00:07:27,460 もう少しだけ待っているがいい 望みがかなう 76 00:07:27,560 --> 00:07:32,960 どうせなら俺も 女性の望みをかなえてやりたい 77 00:07:33,060 --> 00:07:36,440 それにしても ここまで 誰に連れてきてもらったのだ? 78 00:07:36,540 --> 00:07:39,340 親切な人に 名は? 79 00:07:39,440 --> 00:07:41,270 お前の知ったことではないわ 80 00:07:41,370 --> 00:07:45,280 そうだな 確かに 俺の知ったことではないな 81 00:07:45,380 --> 00:07:47,280 オギャア ん? 82 00:08:01,430 --> 00:08:03,330 俺の子か? 83 00:08:09,170 --> 00:08:11,670 お前の息子よ その子を 84 00:08:11,770 --> 00:08:14,570 俺に見せるために来たのか 85 00:08:17,540 --> 00:08:19,940 これから どうするつもりだ 86 00:08:22,050 --> 00:08:26,180 古代の偉そうな奴が 偉そうに言った言葉がある 87 00:08:26,280 --> 00:08:29,390 「死ぬにあたって 幼い子供を託し得るような」 88 00:08:29,490 --> 00:08:34,990 「友人を持つことが かなえば 人生最上の幸福だ」と 89 00:08:37,230 --> 00:08:39,500 ウォルフガング・ ミッターマイヤーに会って 90 00:08:39,600 --> 00:08:41,430 その子の将来を頼むがいい 91 00:08:41,530 --> 00:08:46,030 それが その子にとって 最良の人生を保障することになる 92 00:08:48,270 --> 00:08:51,580 この女と自分の組み合わせよりも 93 00:08:51,680 --> 00:08:55,210 はるかに人の親となるべき 資格に優れた夫婦がいる 94 00:08:55,310 --> 00:08:58,480 なのに 彼らには子が生まれず 95 00:08:58,580 --> 00:09:01,450 自分たちには子が生まれた 96 00:09:01,550 --> 00:09:04,790 生命の誕生は よほど無能な 97 00:09:04,890 --> 00:09:10,460 あるいは冷笑的な存在によって つかさどられているに違いない 98 00:09:10,560 --> 00:09:13,700 殺すなら今のうちに殺すのだな 99 00:09:13,800 --> 00:09:17,370 でないと永久に その機会を失う 100 00:09:17,470 --> 00:09:20,970 武器がないなら俺の銃を使え 101 00:10:04,380 --> 00:10:08,880 俺には もう殺される価値すら なくなったとみえる 102 00:10:17,030 --> 00:10:21,670 閣下 あの女の方は 出ていかれました 103 00:10:21,770 --> 00:10:24,900 あの… この赤ちゃんを ミッターマイヤー元帥に 104 00:10:25,000 --> 00:10:28,310 お渡ししてくれとのことでしたが 105 00:10:28,410 --> 00:10:31,740 どうしたら よろしいでしょう 106 00:10:31,840 --> 00:10:36,580 やれやれ 母親が去って子供が残る 107 00:10:36,680 --> 00:10:38,850 二世代にわたって そうだ 108 00:10:38,950 --> 00:10:42,650 お前は父親に似すぎているようだ 109 00:10:42,750 --> 00:10:45,860 すまんが ミッターマイヤーが来るまで 110 00:10:45,960 --> 00:10:48,290 抱いてやっていてくれ はっ 111 00:10:48,390 --> 00:10:52,600 ああ それと そこの棚に ウイスキーが入っている 112 00:10:52,700 --> 00:10:55,200 グラスを2個 出してくれないか 113 00:10:59,100 --> 00:11:02,370 どうしたことか 俺らしくもない 114 00:11:02,470 --> 00:11:06,080 オスカー・フォン・ ロイエンタールともあろう男が 115 00:11:06,180 --> 00:11:10,920 「あの人も死ぬ時は 善人になって死にました」などと 116 00:11:11,020 --> 00:11:14,590 言われるような死に方をするのか 117 00:11:14,690 --> 00:11:17,920 バカバカしいが それも よいかもしれない 118 00:11:18,020 --> 00:11:21,430 「人それぞれの生 それぞれの死」だ 119 00:11:21,530 --> 00:11:26,670 だが せめて俺が敬愛した ごく少数の人々には 120 00:11:26,770 --> 00:11:29,670 より美しい死が訪れんことを 121 00:11:36,240 --> 00:11:40,110 遅いじゃないか ミッターマイヤー… 122 00:11:40,210 --> 00:11:43,880 卿が来るまで 生きているつもりだったのに 123 00:11:43,980 --> 00:11:46,480 間に合わないじゃないか 124 00:11:46,580 --> 00:11:51,480 「疾風ウォルフ」などという 大層な あだ名に恥ずかしいだろう… 125 00:12:05,040 --> 00:12:08,540 マイン・カイザー 126 00:12:08,640 --> 00:12:11,540 ミッターマイヤー 127 00:12:11,640 --> 00:12:14,750 ジーク… 128 00:12:14,850 --> 00:12:16,750 死… 129 00:12:27,260 --> 00:12:29,960 元帥… ロイエンタール閣下… 130 00:12:37,900 --> 00:12:40,810 12月16日16時51分 131 00:12:40,910 --> 00:12:44,040 オスカー・フォン・ ロイエンタールは33歳 132 00:12:44,140 --> 00:12:46,910 常に彼と反対側の陣営にいた ヤン・ウェンリーと 133 00:12:47,010 --> 00:12:50,610 同じ年に生まれ 同じ年に死んだ 134 00:12:54,650 --> 00:12:59,090 「新帝国暦2年12月 第二次ランテマリオ会戦において」 135 00:12:59,190 --> 00:13:01,990 「オスカー・フォン・ ロイエンタール敗死す」 136 00:13:02,090 --> 00:13:07,130 歴史年表は そう記すが 当事者には別の見解があった 137 00:13:07,230 --> 00:13:10,030 表面的には 互角に見えるかもしれないが 138 00:13:10,130 --> 00:13:12,870 俺にはワーレンと ビッテンフェルトがいた 139 00:13:12,970 --> 00:13:15,640 ロイエンタールには 誰もいなかった 140 00:13:15,740 --> 00:13:19,510 いずれが勝者の名に値するか 議論の余地もない 141 00:13:19,610 --> 00:13:22,050 後にミッターマイヤーは そう語り 142 00:13:22,150 --> 00:13:26,750 「第二次ランテマリオ会戦の勝者」と 呼ばれるたびに それを訂正した 143 00:13:29,290 --> 00:13:31,720 ハイネセンに着到した ミッターマイヤーは 144 00:13:31,820 --> 00:13:34,230 エルスハイマーと リッチェルの出迎えを受け 145 00:13:34,330 --> 00:13:38,500 彼らの口から親友の死を聞いた 146 00:13:38,600 --> 00:13:41,170 次いでヨブ・トリューニヒトの 死を知らされた時 147 00:13:41,270 --> 00:13:45,040 その死因を聞くより早く 吐息して言った 148 00:13:45,140 --> 00:13:48,510 ロイエンタールが カイザーの御ために 149 00:13:48,610 --> 00:13:52,510 ノイエ・ラントの大掃除を していってくれたのだな 150 00:14:11,230 --> 00:14:13,130 銃を下ろせ 151 00:14:15,670 --> 00:14:18,470 総督の親友にして カイザーの代理人たる方に 152 00:14:18,570 --> 00:14:22,570 銃を向けるとは何事か 礼節をわきまえよ 153 00:14:43,660 --> 00:14:46,560 ロイエンタール元帥は ミッターマイヤー元帥を 154 00:14:46,660 --> 00:14:48,700 ずっと待っておいででした 155 00:14:48,800 --> 00:14:50,700 でも とうとう… 156 00:15:01,950 --> 00:15:03,850 さあ 157 00:15:40,620 --> 00:15:42,790 閣下 ベルゲングリューン大将が 158 00:15:42,890 --> 00:15:45,520 ん? 159 00:15:45,620 --> 00:15:47,860 キルヒアイス元帥も亡くなった 160 00:15:47,960 --> 00:15:49,890 ロイエンタール元帥も 161 00:15:49,990 --> 00:15:52,830 ヴァルハラへ赴いて お二人に お目にかかる以外 162 00:15:52,930 --> 00:15:55,100 もはや楽しみはない 163 00:15:55,200 --> 00:15:57,340 待て ベルゲングリューン 早まるな 164 00:15:57,440 --> 00:15:59,740 ミッターマイヤー元帥も カイザーに寛大な ご処置を 165 00:15:59,840 --> 00:16:01,670 お願いしてくださると おっしゃっておられる 166 00:16:01,770 --> 00:16:03,910 だから早まるな 167 00:16:04,010 --> 00:16:06,880 ビューロー 皇帝陛下にお伝えしてくれ 168 00:16:06,980 --> 00:16:11,380 「忠臣 名将を相次いで失われ さぞ ご寂寥のことでしょう」 169 00:16:11,480 --> 00:16:15,250 「次はミッターマイヤー元帥の 番ですか」と 170 00:16:15,350 --> 00:16:19,760 「功に報いるに罰をもってして 王朝の繁栄があるとお思いなら」 171 00:16:19,860 --> 00:16:22,760 「これからも そうなさい」と 172 00:16:27,630 --> 00:16:29,830 (銃声) 173 00:16:32,500 --> 00:16:35,400 ベルゲングリューン ベルゲングリューン 174 00:16:41,850 --> 00:16:46,380 宇宙暦800年 新帝国暦2年12月16日 175 00:16:46,480 --> 00:16:49,920 ロイエンタール元帥反逆事件は 終結する 176 00:16:50,020 --> 00:16:51,860 ウォルフガング・ ミッターマイヤーは 177 00:16:51,960 --> 00:16:55,260 「年内に決着をつける」という 予告を実現させた 178 00:17:09,210 --> 00:17:13,610 戦後処理についてはワーレンが ハイネセンに残留して これに当たり 179 00:17:13,710 --> 00:17:17,120 ミッターマイヤーは 即日 ハイネセンを出立して 180 00:17:17,220 --> 00:17:19,620 フェザーンへの帰途に 就くことになった 181 00:17:33,200 --> 00:17:38,800 あれを見たか 俺は一生 この光景を忘れられないだろう 182 00:17:38,900 --> 00:17:41,600 ウォルフ・デア・シュトルムが 泣いているぜ… 183 00:17:43,810 --> 00:17:47,480 カイザー・ラインハルトは 内戦の終結を見越して 184 00:17:47,580 --> 00:17:50,950 シャーテンブルク宙域から フェザーン本星に戻る途中 185 00:17:51,050 --> 00:17:54,490 ロイエンタールの訃報を聞いた 186 00:17:54,590 --> 00:17:56,420 俺自身が戦ってこそ 187 00:17:56,520 --> 00:18:00,290 ロイエンタールを 満足させてやれたのだろうか 188 00:18:00,390 --> 00:18:04,630 この述懐には ラインハルト自身も 気づき得ない欺瞞がある 189 00:18:04,730 --> 00:18:06,560 戦いたかったのは誰でもない 190 00:18:06,660 --> 00:18:09,300 ラインハルト自身だったのでは ないか 191 00:18:09,400 --> 00:18:13,670 はく奪した元帥号を ロイエンタールに返してやってくれ 192 00:18:13,770 --> 00:18:17,980 ロイエンタールを総督に任じたのは 余の誤りであったかもしれぬが 193 00:18:18,080 --> 00:18:21,380 元帥に叙したことは 誤りであったとは思えぬ 194 00:18:36,060 --> 00:18:38,800 陛下 ご気分はいかがですか 195 00:18:38,900 --> 00:18:42,500 まあまあだ それより お前のやけどは もういいのか 196 00:18:44,700 --> 00:18:49,110 まあまあでございます 陛下 そうか 197 00:18:49,210 --> 00:18:51,540 この時期 相変わらず ラインハルトは 198 00:18:51,640 --> 00:18:54,350 間欠的な発熱に襲われている 199 00:18:54,450 --> 00:18:57,280 それでも政務に 支障を来すことがなかったのは 200 00:18:57,380 --> 00:19:00,280 ラインハルトの勤勉さを 示すものであったが 201 00:19:00,380 --> 00:19:02,820 人々が事態の深刻さを 認識するのを 202 00:19:02,920 --> 00:19:05,660 遅らせることにもなった 203 00:19:05,760 --> 00:19:07,890 ルッツ提督の婚約者の方が 204 00:19:07,990 --> 00:19:10,760 遺族年金の受け取りを 謝絶された由 205 00:19:10,860 --> 00:19:14,670 陛下には せっかくのご厚意を 拒否されたようにお感じになり 206 00:19:14,770 --> 00:19:16,670 ご不快かもしれませぬが 207 00:19:16,770 --> 00:19:19,570 かの女性は看護婦の仕事を持ち 208 00:19:19,670 --> 00:19:22,240 自立心に富んだ 得がたい女性であり 209 00:19:22,340 --> 00:19:26,510 だからこそ ルッツ提督の お心を引いたものと存じます 210 00:19:26,610 --> 00:19:28,950 ここは それをご尊重なさって 211 00:19:29,050 --> 00:19:31,980 年金を基に ルッツ提督のお名前を冠した 212 00:19:32,080 --> 00:19:35,050 従軍看護婦の育成基金を設立され 213 00:19:35,150 --> 00:19:39,550 彼女にも その運営に参画させるが よろしいかと存じます 214 00:19:42,290 --> 00:19:44,930 ラインハルトの 求婚に対する答えを 215 00:19:45,030 --> 00:19:46,900 ヒルダは まだしてはいない 216 00:19:47,000 --> 00:19:51,500 だが公務における助言は いささかの曇りも衰えも見せず 217 00:19:51,600 --> 00:19:54,110 ラインハルトを満足させていた 218 00:19:54,210 --> 00:19:57,580 そして その存在が 日に日に大きくなっていることを 219 00:19:57,680 --> 00:20:00,080 ラインハルト自身も自覚していた 220 00:20:06,980 --> 00:20:11,460 しばらく会っていないが フロイライン・マリーンドルフは元気だろうか 221 00:20:11,560 --> 00:20:15,430 彼女がいてくれないと 大本営の事務が滞って困る 222 00:20:15,530 --> 00:20:19,500 そのヒルダは既に 妊娠4ヵ月に達しようとしていた 223 00:20:19,600 --> 00:20:23,800 ほう 私がおじいちゃんになるのかね 224 00:20:26,070 --> 00:20:31,780 ヒルダ 私は来年早々にも 国務尚書職を辞するつもりだよ 225 00:20:31,880 --> 00:20:34,410 お父さま どうして そんな… 226 00:20:34,510 --> 00:20:37,320 お父さまは 国務尚書としての大任を 227 00:20:37,420 --> 00:20:39,380 立派に果たしていらっしゃるわ 228 00:20:39,480 --> 00:20:42,090 カイザーのご不興を 買ったわけでもないのに 229 00:20:42,190 --> 00:20:44,020 どうして そんなことを おっしゃるの? 230 00:20:44,120 --> 00:20:46,390 こういうことだよ ヒルダ 231 00:20:46,490 --> 00:20:50,060 たとえ お前が 陛下との結婚を拒んだとしても 232 00:20:50,160 --> 00:20:52,500 赤ん坊を産めば結局のところ 233 00:20:52,600 --> 00:20:55,900 カイザーの世継ぎの 母親ということになる 234 00:20:56,000 --> 00:20:58,300 私は その祖父というわけだ 235 00:20:58,400 --> 00:21:01,610 そんな立場にある者が 宰相級の地位にあって 236 00:21:01,710 --> 00:21:04,880 よい結果のあった例は 一つもないからね 237 00:21:04,980 --> 00:21:08,410 それは そうかもしれませんけど 238 00:21:08,510 --> 00:21:12,880 でも誰をもって お父様の後任に充てますの? 239 00:21:12,980 --> 00:21:16,620 そうだな 私なら ミッターマイヤー元帥を推すがね 240 00:21:16,720 --> 00:21:18,990 え?でも あの方は 241 00:21:19,090 --> 00:21:22,190 純粋な武人であって 政治家ではありませんけど 242 00:21:22,290 --> 00:21:25,060 私に務まったのだ ミッターマイヤー元帥に 243 00:21:25,160 --> 00:21:30,470 務まらないわけはない というのは冗談だがね 244 00:21:30,570 --> 00:21:34,340 ヒルダ 彼は軍務尚書より むしろ国務尚書として 245 00:21:34,440 --> 00:21:39,580 閣僚の首座を占めるに ふさわしい人物だと私は思うが 246 00:21:39,680 --> 00:21:42,480 お前の考えは どうかね 247 00:21:42,580 --> 00:21:48,590 確かに元帥ほど 見識と信義と 公正さに富んだ人は稀有ですわ 248 00:21:48,690 --> 00:21:52,460 ただカイザーが その人事を 承知されるかどうかは 249 00:21:52,560 --> 00:21:54,460 別の問題でしょうが 250 00:21:58,100 --> 00:22:01,330 このような扱いをして ただで済むと思うな 251 00:22:01,430 --> 00:22:05,670 いずれ俺が地位を回復した時 思い知らせてくれるぞ 252 00:22:05,770 --> 00:22:07,610 卿がこれまで犯罪容疑者を 253 00:22:07,710 --> 00:22:10,340 どのように遇してきたか 記憶があるとすれば 254 00:22:10,440 --> 00:22:14,050 あまり強情を張らぬ方がよいと 分かるだろう 255 00:22:14,150 --> 00:22:16,680 卿が独占してきた 効果的な尋問法を 256 00:22:16,780 --> 00:22:19,680 卿自身の体で 試してやってもよいのだぞ 257 00:22:27,490 --> 00:22:30,960 ロイエンタールは… 258 00:22:31,060 --> 00:22:33,260 ロイエンタールめは どうなった! 259 00:22:35,670 --> 00:22:38,570 亡くなった 反乱も鎮圧された 260 00:22:40,600 --> 00:22:44,500 ハハ… ハハハ… 261 00:22:47,610 --> 00:22:50,180 ラングは1時間あまりも笑い続け 262 00:22:50,280 --> 00:22:52,920 その後 せきを切ったように 自白を始めた 263 00:22:53,020 --> 00:22:56,920 それは自白というより 自己弁護と 責任転嫁の融合物であって 264 00:22:57,020 --> 00:22:59,060 全ての罪を アドリアン・ルビンスキーに 265 00:22:59,160 --> 00:23:00,990 負わせる内容であった 266 00:23:01,090 --> 00:23:03,890 更に軍務尚書 パウル・フォン・ オーベルシュタイン元帥の 267 00:23:03,990 --> 00:23:05,860 責任についても言及し 268 00:23:05,960 --> 00:23:10,300 彼が暗黙の了解を与えなければ 自分は何事も なし得ず 269 00:23:10,400 --> 00:23:13,600 まず軍務尚書の責任を 問うべきだと主張した 270 00:23:13,700 --> 00:23:17,880 ケスラーはオーベルシュタインに関する部分は 表面上 無視しておいて 271 00:23:17,980 --> 00:23:20,780 ルビンスキーの行方を追うことに 専念した 272 00:23:20,880 --> 00:23:24,150 だがラングの供述に基づいて 急襲された隠れ家から 273 00:23:24,250 --> 00:23:26,550 ルビンスキーの姿は 既に消えていた 274 00:23:26,650 --> 00:23:29,320 結果的にラングは 沈黙によってルビンスキーに 275 00:23:29,420 --> 00:23:32,690 逃亡する時間的余裕を 作ってやったことになる 276 00:23:32,790 --> 00:23:37,530 それと前後して ラングの妻が 夫の釈放を求めて嘆願に訪れた 277 00:23:37,630 --> 00:23:42,370 夫は私にも子供たちにも優しい 善良な人間です 278 00:23:42,470 --> 00:23:45,370 世間で言われているような 者ではありません 279 00:23:45,470 --> 00:23:49,170 ラング夫人 あなたのご主人が 告発されているのは 280 00:23:49,270 --> 00:23:52,510 よき夫で 優しい父親だからではありません 281 00:23:52,610 --> 00:23:56,380 私事で非があったゆえに 獄に下されたわけでもありません 282 00:23:56,480 --> 00:23:59,280 誤解なさらぬように 283 00:23:59,380 --> 00:24:02,480 ケスラーは そう応じたが 面会だけは許した 284 00:24:13,460 --> 00:24:17,230 面会後 帰っていく ラング夫人の姿を見送りながら 285 00:24:17,330 --> 00:24:20,140 ケスラーは人間に備わった 2つの面について 286 00:24:20,240 --> 00:24:22,570 思いを致さざるを得なかった 287 00:24:22,670 --> 00:24:24,840 公人と私人の2つの顔 288 00:24:24,940 --> 00:24:28,480 家庭人としてはラインハルトや ロイエンタールより 289 00:24:28,580 --> 00:24:33,080 ラングの方が はるかにまともで あるのに違いなかったのだから 290 00:24:37,620 --> 00:24:39,520 ミッターマイヤー元帥が 291 00:24:39,620 --> 00:24:44,400 あえて自分の手で 親友を討った意味が分かるか 292 00:24:44,500 --> 00:24:48,830 さあ 小官などには 一向に分かりませんが 293 00:24:48,930 --> 00:24:52,700 尚書閣下には いかがお考えですか 294 00:24:52,800 --> 00:24:57,340 うむ もしカイザーがご自分の手で ロイエンタールをお討ちになれば 295 00:24:57,440 --> 00:24:59,980 事の是非はともかく ミッターマイヤーは 296 00:25:00,080 --> 00:25:03,850 どうしてもカイザーに対する 反感を禁じ得ないだろう 297 00:25:03,950 --> 00:25:07,720 君臣の間に亀裂を生じ ひいては それが拡大して 298 00:25:07,820 --> 00:25:10,720 取り返しのつかないことに なるやもしれぬ 299 00:25:10,820 --> 00:25:13,420 はあ だが 300 00:25:13,520 --> 00:25:16,390 自分が指揮官として ロイエンタールを討てば 301 00:25:16,490 --> 00:25:19,160 友の敵は すなわち自分自身 302 00:25:19,260 --> 00:25:22,800 カイザーを お恨みする筋はないと そう考えたのだ 303 00:25:22,900 --> 00:25:26,600 彼は そういう男だ そう お考えになるについては 304 00:25:26,700 --> 00:25:28,570 何か証拠が おありですか 305 00:25:28,670 --> 00:25:33,380 私の勝手な解釈だ 真実が どうかは知らぬ 306 00:25:33,480 --> 00:25:36,710 それにしても… 307 00:25:36,810 --> 00:25:40,810 それにしても 私も口数の多くなったものだ 308 00:25:42,750 --> 00:25:46,960 それ以降 オーベルシュタインは ロイエンタールの反乱について 309 00:25:47,060 --> 00:25:50,490 一言の感想も もらすことはなかった 310 00:25:50,590 --> 00:25:52,500 こうして討伐軍の帰還を除いて 311 00:25:52,600 --> 00:25:55,170 ロイエンタールの反乱は ほぼ落着した 312 00:25:55,270 --> 00:25:58,870 だが それが再び安寧の時代の 到来を意味するのか 313 00:25:58,970 --> 00:26:01,770 断定できる者は 誰もいなかった 314 00:27:37,030 --> 00:27:39,840 ロイエンタール元帥反乱事件が 解決し 315 00:27:39,940 --> 00:27:43,070 銀河に再び 安寧が訪れたかに見えた 316 00:27:43,170 --> 00:27:46,480 帝国ではヒルダが ラインハルトの求婚を受諾し 317 00:27:46,580 --> 00:27:50,110 帝国には明るい未来が開けると 誰もが思っていた 318 00:27:50,210 --> 00:27:52,780 だが一方のイゼルローンでは… 319 00:27:52,880 --> 00:27:56,650 更に地球教 ルビンスキー それぞれの思惑は? 320 00:27:56,750 --> 00:28:02,560 次回「銀河英雄伝説」 第99話「未来への助走」 321 00:28:02,660 --> 00:28:04,760 銀河の歴史が また1ページ