1 00:01:32,100 --> 00:01:34,770 姉君をお呼びしましょうか 2 00:01:34,770 --> 00:01:36,710 カイザー・ラインハルトの熱は 3 00:01:36,710 --> 00:01:39,750 宇宙暦801年 新帝国暦3年 4 00:01:39,750 --> 00:01:43,050 2月22日になって ようやく下がった 5 00:01:43,050 --> 00:01:47,020 いや カイザーリンが 傍らにいてくれればいい 6 00:01:47,020 --> 00:01:50,890 わざわざ足を 運んでいただくには及ばぬ 7 00:01:50,890 --> 00:01:53,260 やはりお呼びいたしましょう 8 00:01:53,260 --> 00:01:55,190 フェザーンに いらっしゃるのですから 9 00:01:55,190 --> 00:01:57,260 ラインハルトの姉 アンネローゼは 10 00:01:57,260 --> 00:01:59,700 いまだフェザーンに滞在している 11 00:01:59,700 --> 00:02:03,370 ラインハルトの発熱が知らされる とアンネローゼは1度 12 00:02:03,370 --> 00:02:05,370 シュテッヒパルム・シュロスを 訪れたが 13 00:02:05,370 --> 00:02:08,070 弟には会わずヒルダを慰め 14 00:02:08,070 --> 00:02:10,910 励まして 宿舎に帰っていたのである 15 00:02:10,910 --> 00:02:14,850 22日の夜 改めて皇妃の使者が 彼女のもとを訪れ 16 00:02:14,850 --> 00:02:16,850 翌23日 17 00:02:24,460 --> 00:02:27,290 姉上 どうか そのまま 18 00:02:27,290 --> 00:02:30,590 アンネローゼは病床の ラインハルトに面会した 19 00:02:43,510 --> 00:02:45,580 カイザーリン・ヒルデガルド 20 00:02:45,580 --> 00:02:49,980 カイザーはあなたのものです あなた お一人のものです 21 00:02:49,980 --> 00:02:52,450 どうか お離しにならないよう 22 00:02:52,450 --> 00:02:55,660 そして見捨てないでやって くださいましね 23 00:02:55,660 --> 00:02:58,190 アンネローゼ様 24 00:02:58,190 --> 00:03:01,030 お心遣い本当に感謝します 25 00:03:01,030 --> 00:03:04,230 でも弟が私のものであったのは 26 00:03:04,230 --> 00:03:06,970 ずっと昔のことです 27 00:03:06,970 --> 00:03:09,200 3年半前 弟は 28 00:03:09,200 --> 00:03:13,410 私に見放されたと 思ったかもしれません 29 00:03:13,410 --> 00:03:16,410 そんな… アンネローゼ様 30 00:03:16,410 --> 00:03:19,250 いえ きっとそう思ったでしょう 31 00:03:19,250 --> 00:03:24,350 私は弟が慰めを欲していることを 無論 知っていました 32 00:03:24,350 --> 00:03:27,950 でも同時に別のことも 分かっていたのです 33 00:04:20,910 --> 00:04:23,440 今の この結果をアンネローゼ様は 34 00:04:23,440 --> 00:04:25,380 願っていたのだろうか 35 00:04:25,380 --> 00:04:29,250 この方の願いは かなえられたのだろうか 36 00:04:29,250 --> 00:04:31,220 ねえ ヒルダさん 37 00:04:31,220 --> 00:04:33,650 お分かりいただけるでしょうか 38 00:04:33,650 --> 00:04:37,360 弟は過去を私と共有しています 39 00:04:37,360 --> 00:04:39,290 でも弟の未来は 40 00:04:39,290 --> 00:04:41,860 あなたと共有されるものです 41 00:04:41,860 --> 00:04:44,060 いえ あなたたちと 42 00:04:48,630 --> 00:04:51,540 カイザー・ラインハルトの 親征は中止されたが 43 00:04:51,540 --> 00:04:53,470 ノイエ・ラントにおける混乱や 44 00:04:53,470 --> 00:04:55,410 イゼルローン革命軍に 対する処置を 45 00:04:55,410 --> 00:04:58,040 放任しておくわけには いかなかった 46 00:04:58,040 --> 00:05:01,280 そこで2月25日 カイザー・ラインハルトは 47 00:05:01,280 --> 00:05:04,180 軍務尚書 オーベルシュタイン元帥に対して 48 00:05:04,180 --> 00:05:08,050 カイザーの全権代理として 惑星ハイネセンへ赴き 49 00:05:08,050 --> 00:05:11,250 現地の秩序破壊行為に 対処するよう命じた 50 00:05:13,730 --> 00:05:15,960 オーベルシュタインの 旗下に配属されて 51 00:05:15,960 --> 00:05:18,460 ともにハイネセンに赴く 実戦指揮官の人事が 52 00:05:18,460 --> 00:05:21,870 発表されたのは翌26日である 53 00:05:21,870 --> 00:05:24,140 何で俺が オーベルシュタインの指揮を 54 00:05:24,140 --> 00:05:26,440 戦場で受けねばならんのだ 55 00:05:26,440 --> 00:05:28,810 俺は自分の失敗には責任を取るが 56 00:05:28,810 --> 00:05:31,680 奴の失敗まで 引き受ける気はないぞ 57 00:05:31,680 --> 00:05:34,510 奴は軍務省のデスクの前で 生きてきたのだから 58 00:05:34,510 --> 00:05:38,980 死ぬ時も デスクの前で死ねばいいのさ 59 00:05:38,980 --> 00:05:41,920 もし ジークフリード・ キルヒアイスが生きていたら 60 00:05:41,920 --> 00:05:45,320 こんな不愉快な人事とも 無縁でいられただろうよ 61 00:05:45,320 --> 00:05:48,190 いい奴ほど早く死ぬ 62 00:05:48,190 --> 00:05:50,130 この人事をミッターマイヤーは 63 00:05:50,130 --> 00:05:54,570 シャーテンブルク要塞 建設予定宙域からの帰途で聞いた 64 00:05:54,570 --> 00:05:58,100 オーベルシュタインが ノイエ・ラントへ? 65 00:05:58,100 --> 00:06:00,110 そうか 勅命とあらば 66 00:06:00,110 --> 00:06:04,210 俺が口出しする筋ではないな しかし… 67 00:06:04,210 --> 00:06:07,110 気の毒なのは ノイエ・ラントの住民だな 68 00:06:07,110 --> 00:06:11,450 オーベルシュタインのことだから かなりの締めつけをするだろう 69 00:06:11,450 --> 00:06:13,690 それは それとして 対イゼルローンの 70 00:06:13,690 --> 00:06:15,620 実戦指揮は どうするのだ 71 00:06:15,620 --> 00:06:18,460 ビッテンフェルト ミュラー 両提督が 72 00:06:18,460 --> 00:06:21,560 オーベルシュタイン元帥の 指揮下に入られるとのことです 73 00:06:24,260 --> 00:06:28,130 さてさて 誰が 一番損な役回りだろうか 74 00:06:28,130 --> 00:06:30,070 難しいところです 75 00:06:30,070 --> 00:06:32,970 ビッテンフェルト提督を 使う立場の軍務尚書も 76 00:06:32,970 --> 00:06:34,970 楽ではないでしょうな 77 00:06:37,810 --> 00:06:41,080 これで元帥と上級大将8名のうち 78 00:06:41,080 --> 00:06:44,720 半数がハイネセンに 集まることになるのか 79 00:06:44,720 --> 00:06:47,220 オーベルシュタインはともかく 他の3人とは 80 00:06:47,220 --> 00:06:49,520 また再会したいものだ 81 00:06:49,520 --> 00:06:53,730 この時期 惑星ハイネセンは 熱狂の渦の中にあった 82 00:06:53,730 --> 00:06:58,060 イゼルローン軍が帝国軍に対して 勝利を収めたとの情報が 83 00:06:58,060 --> 00:07:01,100 帝国軍の報道管制の 網を食い破って 84 00:07:01,100 --> 00:07:04,500 ハイネセンの市民たちのもとに もたらされたためである 85 00:07:04,500 --> 00:07:08,840 自由と民主共和政治と ヤン・ウェンリー万歳 86 00:07:08,840 --> 00:07:12,580 故人が聞けば 閉口して 肩をすくめたことであろうが 87 00:07:12,580 --> 00:07:15,450 ハイネセンの市民たちは 真剣であった 88 00:07:15,450 --> 00:07:19,290 この時期 ヤン・ウェンリーの 名を借りた地下抵抗組織が 89 00:07:19,290 --> 00:07:23,190 40以上も存在したと推定される 90 00:07:23,190 --> 00:07:26,060 これらの状況のため イゼルローン回廊から 91 00:07:26,060 --> 00:07:27,990 撤退したワーレン提督は 92 00:07:27,990 --> 00:07:30,760 興奮した市民との衝突を警戒して 93 00:07:30,760 --> 00:07:32,700 ガンダルヴァ星域にとどまり 94 00:07:32,700 --> 00:07:35,070 フェザーンからの 派遣部隊が到着するのを 95 00:07:35,070 --> 00:07:37,900 待つことにしたほどであった 96 00:07:37,900 --> 00:07:40,870 一方 当事者たる イゼルローン要塞では 97 00:07:40,870 --> 00:07:44,240 一時の勝利の興奮を 既に冷ましている 98 00:07:44,240 --> 00:07:48,110 局地的な戦闘の勝利に いつまでも いい気でいられるほど 99 00:07:48,110 --> 00:07:51,350 彼らの境遇は 甘美なものではなかった 100 00:07:51,350 --> 00:07:53,820 カリン この前はおめでとう 101 00:07:53,820 --> 00:07:56,560 戦果にではなくて 生還したことによ 102 00:07:56,560 --> 00:07:59,330 ありがとうございます フレデリカさん 103 00:07:59,330 --> 00:08:02,230 そういえば カリンは いくつだったかしら 104 00:08:02,230 --> 00:08:04,160 17歳になりました 105 00:08:04,160 --> 00:08:06,730 そう それはすごいわね 106 00:08:06,730 --> 00:08:10,140 私が17歳の時は 士官学校の下級生で 107 00:08:10,140 --> 00:08:13,340 カリキュラムをこなすのに 精いっぱいだったわ 108 00:08:13,340 --> 00:08:16,010 あなたみたいに 実戦の経験もなかったし 109 00:08:16,010 --> 00:08:19,880 本当に子供だったと思うわ あなたと比べたら 110 00:08:19,880 --> 00:08:23,750 私だって子供です 自分で よく分かっています 111 00:08:23,750 --> 00:08:25,680 人に言われると しゃくだけど 112 00:08:25,680 --> 00:08:28,290 自分では分かっているんです 113 00:08:28,290 --> 00:08:31,620 カリンはフレデリカに対しては 素直になれた 114 00:08:31,620 --> 00:08:34,130 そして同じように 他の何人かに対して 115 00:08:34,130 --> 00:08:36,660 素直になれたらいい とも思っていた 116 00:08:36,660 --> 00:08:40,300 イゼルローンに来たころは そんなことを考えもしなかった 117 00:08:40,300 --> 00:08:42,230 心境が変化したのは 118 00:08:42,230 --> 00:08:45,000 彼女の成長であるのか 妥協であるのか 119 00:08:45,000 --> 00:08:48,870 それも彼女には はっきりとは分からないのだった 120 00:08:48,870 --> 00:08:51,740 ヤン未亡人は 本当によくやってくれているがね 121 00:08:51,740 --> 00:08:53,710 一つ 分からんのは 122 00:08:53,710 --> 00:08:57,580 ヤンの遺体を あのままに しておくつもりなのかってことだ 123 00:08:57,580 --> 00:08:59,590 本人に聞いてみたんだが 124 00:08:59,590 --> 00:09:01,950 はっきりとした答えは 得られなかった 125 00:09:01,950 --> 00:09:04,620 フレデリカさんは ご主人の遺体を 126 00:09:04,620 --> 00:09:06,990 ハイネセンに埋めたいと 思ってらっしゃるのよ 127 00:09:06,990 --> 00:09:09,660 ハイネセンに? イゼルローンは 128 00:09:09,660 --> 00:09:12,230 ヤンさんが 生きて眠っていた場所であって 129 00:09:12,230 --> 00:09:15,130 死んで眠る場所じゃないと そう思ってらっしゃるんでしょ 130 00:09:15,130 --> 00:09:17,370 無理もないことですわ 131 00:09:17,370 --> 00:09:20,170 それは まあ 彼女の気持ちは分かるが 132 00:09:20,170 --> 00:09:22,440 ハイネセンに ヤンを埋葬するなんて 133 00:09:22,440 --> 00:09:25,240 いつのことになるやら 見当もつかんぞ 134 00:09:25,240 --> 00:09:27,680 そうですか? え? 135 00:09:27,680 --> 00:09:30,150 おい オルタンス お前 また何やら 136 00:09:30,150 --> 00:09:32,480 予言でもしようというんじゃ あるまいな 137 00:09:32,480 --> 00:09:34,750 予言て なあに? うん? 138 00:09:34,750 --> 00:09:37,760 それは何だ その… 139 00:09:37,760 --> 00:09:39,890 例えば こうよ 140 00:09:39,890 --> 00:09:43,530 あなたが大きくなった時 男の人に 141 00:09:43,530 --> 00:09:46,730 「私はあのことを知ってるわよ」と 言っておやりなさい 142 00:09:46,730 --> 00:09:49,330 みんな必ずギクリとするでしょう 143 00:09:49,330 --> 00:09:51,770 これが母さんの予言よ 144 00:09:51,770 --> 00:09:54,370 あのな おい 145 00:09:54,370 --> 00:09:56,910 今日の夕食は チーズフォンデュですよ 146 00:09:56,910 --> 00:09:59,610 ガーリックブレッドと オニオンサラダを添えますからね 147 00:09:59,610 --> 00:10:04,020 お酒はビールとワイン どっちにします? 148 00:10:04,020 --> 00:10:06,850 ワインがいい 149 00:10:06,850 --> 00:10:10,420 確かにイゼルローンは 要塞としては難攻不落だが 150 00:10:10,420 --> 00:10:13,790 孤立して恒久的な 政治体制を維持する場所としては 151 00:10:13,790 --> 00:10:16,300 ふさわしくないかもしれん 152 00:10:16,300 --> 00:10:18,360 一つには人口構成の男女比が 153 00:10:18,360 --> 00:10:20,970 著しくバランスを欠く 154 00:10:20,970 --> 00:10:24,340 それに何より 戦略上の要衝にあるということは 155 00:10:24,340 --> 00:10:28,540 それだけで過剰な警戒を 寄せられることにもなる 156 00:10:28,540 --> 00:10:32,410 ヤン自身も言っていたように イゼルローンに拘泥しすぎることは 157 00:10:32,410 --> 00:10:34,410 共和政府と革命軍の首に 158 00:10:34,410 --> 00:10:37,320 鎖をかけることになりはしないか 159 00:10:37,320 --> 00:10:41,790 ユリアンは その辺りを どう切り抜けるだろうか 160 00:10:41,790 --> 00:10:44,690 そのイゼルローン要塞に オーベルシュタイン元帥が 161 00:10:44,690 --> 00:10:49,030 ハイネセンに派遣されるという 情報がもたらされた 162 00:10:49,030 --> 00:10:50,960 オーベルシュタインといえば 163 00:10:50,960 --> 00:10:54,830 帝国印 絶対零度のカミソリ そんな印象だったな 164 00:10:54,830 --> 00:10:57,270 おや?面識がおありで? 165 00:10:57,270 --> 00:10:59,870 いやいや そういえば 166 00:10:59,870 --> 00:11:02,740 俺が帝国にいた ご幼少のみぎり 167 00:11:02,740 --> 00:11:04,680 お袋と町を歩いていたら 168 00:11:04,680 --> 00:11:08,510 向こう側から目つきの悪い 陰気そうなガキが歩いてきたので 169 00:11:08,510 --> 00:11:11,080 思い切り 舌を出してやったことがある 170 00:11:11,080 --> 00:11:14,590 まあ 思えば あいつが オーベルシュタインだったかもしれんな 171 00:11:14,590 --> 00:11:17,190 あの時 石でも ぶつけといてやればよかった 172 00:11:19,190 --> 00:11:21,830 そうですね 多分 相手のほうも 173 00:11:21,830 --> 00:11:25,360 似たような感想を 持ったんじゃありませんか 174 00:11:25,360 --> 00:11:27,300 どうして そう思う? 175 00:11:27,300 --> 00:11:30,970 いえ 私だって お袋の腹の中にいた時は 176 00:11:30,970 --> 00:11:32,910 帝国の人間でしたからね 177 00:11:32,910 --> 00:11:36,780 何だ そりゃ 冗談はさておき 178 00:11:36,780 --> 00:11:39,040 オーベルシュタイン元帥 というのは 179 00:11:39,040 --> 00:11:41,050 なかなかに冷徹な軍官僚で 180 00:11:41,050 --> 00:11:43,420 権謀術数に長けている 181 00:11:43,420 --> 00:11:47,650 彼が来たからには単純な力技では かかってこないだろう 182 00:11:47,650 --> 00:11:49,590 何を仕掛けてくるか 183 00:11:49,590 --> 00:11:52,560 見当もつかんな 184 00:11:52,560 --> 00:11:55,730 ユリアン もしオーベルシュタインが 185 00:11:55,730 --> 00:11:58,960 惑星ハイネセンを 放棄してみせたら どうする 186 00:11:58,960 --> 00:12:03,400 それは… そんな可能性がありますかね 187 00:12:03,400 --> 00:12:05,670 戦略的な必然性で言うなら 188 00:12:05,670 --> 00:12:09,840 帝国軍にとってはハイネセンを 死守する理由はないさ 189 00:12:09,840 --> 00:12:11,780 1度 共和勢力に委ねても 190 00:12:11,780 --> 00:12:15,650 いつでも大軍をもって取り返せる イゼルローンとは違って 191 00:12:15,650 --> 00:12:18,550 難攻不落というわけでは ないからな 192 00:12:18,550 --> 00:12:21,090 なるほど むしろ我々を 193 00:12:21,090 --> 00:12:23,990 イゼルローン要塞から誘い出す エサに使ったほうが 194 00:12:23,990 --> 00:12:26,230 有効というわけですか 195 00:12:26,230 --> 00:12:28,860 帝国軍が支配権を投げ出したら 196 00:12:28,860 --> 00:12:30,800 ハイネセンの市民は喜んで我々を 197 00:12:30,800 --> 00:12:33,070 呼び寄せようとするでしょうし 198 00:12:33,070 --> 00:12:36,440 我々は それを 無視するわけにはいかないだろう 199 00:12:36,440 --> 00:12:39,000 そうなれば大軍の中にノコノコと 200 00:12:39,000 --> 00:12:40,940 出ていかざるを得なくなる 201 00:12:40,940 --> 00:12:43,840 自殺行為と承知の上でな 202 00:12:43,840 --> 00:12:46,450 何とか先手を打つしか ないでしょう 203 00:12:46,450 --> 00:12:48,680 敵が何か手を打ってくる前に 204 00:12:48,680 --> 00:12:51,980 こちらから動くんです ふと思いついたんだが 205 00:12:51,980 --> 00:12:55,190 例の地球教の ディスクに記録された陰謀 206 00:12:55,190 --> 00:12:58,720 あれが何らかの 交渉材料にならないかな 207 00:12:58,720 --> 00:13:00,760 帝国軍に教えてやって 208 00:13:00,760 --> 00:13:03,960 教授料に惑星一つよこせとでも 言ってやるか 209 00:13:06,470 --> 00:13:09,900 まあ 情報一つと 惑星を交換するような 210 00:13:09,900 --> 00:13:12,270 カイザー・ラインハルトでは ないでしょうが 211 00:13:12,270 --> 00:13:15,670 誇り高いカイザーに 融和なり譲歩なりを求めるには 212 00:13:15,670 --> 00:13:20,080 それ相応の取引材料が 必要なのは確かです 213 00:13:20,080 --> 00:13:23,820 その材料は何だと考えるね 司令官は 214 00:13:23,820 --> 00:13:28,020 それは やはり軍事力による 一定の勝利ではないでしょうか 215 00:13:28,020 --> 00:13:31,390 よし決まった やはり先制攻撃だ 216 00:13:31,390 --> 00:13:33,760 気楽でいいな お前さんは 217 00:13:33,760 --> 00:13:38,360 いい女を落とすには まず こちらから声をかけることさ 218 00:13:38,360 --> 00:13:42,070 はいはい そうは言ってもイゼルローンから 219 00:13:42,070 --> 00:13:44,340 遠く打って出るわけには いきません 220 00:13:44,340 --> 00:13:48,040 具体的にどうするかは もう少し様子を見ないと 221 00:13:50,140 --> 00:13:54,650 それにしても 地球には 僕の心を引くものは何もなかった 222 00:13:54,650 --> 00:13:56,580 あそこにあるのは過去であって 223 00:13:56,580 --> 00:13:58,520 未来ではないと思った 224 00:13:58,520 --> 00:14:01,720 未来が存在する場所は 地球ではなくて… 225 00:14:03,790 --> 00:14:06,390 3月14日 カイザー・ラインハルトは 226 00:14:06,390 --> 00:14:10,630 25歳の誕生日を迎えた 227 00:14:10,630 --> 00:14:14,330 カイザーの誕生日は 帝国にとって重要な祝日であり 228 00:14:14,330 --> 00:14:18,770 軍の将兵には 休暇と一時金が下賜された 229 00:14:18,770 --> 00:14:20,710 さすがに カイザーの体調を考慮して 230 00:14:20,710 --> 00:14:23,210 園遊会は中止されたが 231 00:14:23,210 --> 00:14:26,240 アンネローゼから リンデン ウォールフラワー 232 00:14:26,240 --> 00:14:29,450 イチョウを描いた 高名な画家の絵が贈られた 233 00:14:29,450 --> 00:14:31,380 これは それぞれ夫婦愛 234 00:14:31,380 --> 00:14:34,320 愛情の絆 長寿を意味する植物で 235 00:14:34,320 --> 00:14:36,590 アンネローゼの弟夫妻に対する 236 00:14:36,590 --> 00:14:39,520 心遣いが伺われた 237 00:14:39,520 --> 00:14:42,030 ラインハルトが 病床から離れたころ 238 00:14:42,030 --> 00:14:45,130 一層 病状を 悪化させている病人もいる 239 00:14:48,630 --> 00:14:53,470 お前がそれほど 感傷的な女だとは思わなかったな 240 00:14:53,470 --> 00:14:57,940 何のこと? エルフリーデという女のことだ 241 00:14:57,940 --> 00:14:59,880 わざわざロイエンタールの 死に目に 242 00:14:59,880 --> 00:15:02,280 会わせてやったそうじゃないか 243 00:15:05,220 --> 00:15:08,190 あの女は今 どこにいるのだ 244 00:15:08,190 --> 00:15:10,490 さあ どこかしらね 245 00:15:13,730 --> 00:15:16,660 あんたが焦る理由は 分かっているわ 246 00:15:16,660 --> 00:15:19,660 健康に 自信がなくなってきたものね 247 00:15:19,660 --> 00:15:22,500 だからといって今 一部の流通や 248 00:15:22,500 --> 00:15:24,700 通信を混乱させたところで 249 00:15:24,700 --> 00:15:28,110 どんな効果があるのかしら 250 00:15:28,110 --> 00:15:32,040 航路局の件は完全に失敗だったし 251 00:15:32,040 --> 00:15:35,810 切り札がなくても勝負しなけりゃ ならん時があるんだ 252 00:15:35,810 --> 00:15:37,750 今年が その時だ 253 00:15:37,750 --> 00:15:40,450 お前は どう思っているか知らんが 254 00:15:40,450 --> 00:15:43,360 確かにあんたは衰弱してるわね 255 00:15:43,360 --> 00:15:46,890 そんな陳腐なセリフを 吐く人間じゃなかったのに 256 00:15:46,890 --> 00:15:49,460 表現力が乏しくなったわ 257 00:15:49,460 --> 00:15:52,060 以前は もう少し気の利いたことが 258 00:15:52,060 --> 00:15:54,060 言えた人なのにね 259 00:15:55,930 --> 00:15:58,770 もう何年になるかしら 260 00:15:58,770 --> 00:16:01,770 あのころは2人とも まだ若かった 261 00:16:01,770 --> 00:16:05,110 あなたは自治領主府の いち書記官 262 00:16:05,110 --> 00:16:07,450 私は歌と踊りの才能だけで 263 00:16:07,450 --> 00:16:11,120 社会の上部に よじ登るつもりだった 264 00:16:11,120 --> 00:16:14,620 ルパートを売ったように 俺も売るつもりか 265 00:16:16,790 --> 00:16:20,660 ルパートは彼なりに 正面から戦って死んだわ 266 00:16:20,660 --> 00:16:23,660 あんたは どうかしら カイザー・ラインハルトと 267 00:16:23,660 --> 00:16:26,500 正面から戦う気があるの? 268 00:16:26,500 --> 00:16:28,730 あんたが死んだ後 あんたが 269 00:16:28,730 --> 00:16:32,040 カイザー・ラインハルトに対して どう振る舞ったか 270 00:16:32,040 --> 00:16:35,270 戦ったのか それとも 足をすくおうとしただけか 271 00:16:35,270 --> 00:16:37,210 他人が決めてくれるわ 272 00:16:37,210 --> 00:16:41,410 そして あんたは その評価に 抗議することもできないのよ 273 00:16:43,980 --> 00:16:46,220 3月20日 オーベルシュタインらが 274 00:16:46,220 --> 00:16:49,250 惑星ハイネセンに到着する 275 00:16:49,250 --> 00:16:52,560 俺は死ぬことなど少しも怖くない 276 00:16:52,560 --> 00:16:56,090 だがオーベルシュタインの 巻き添えになるのは ご免被る 277 00:16:56,090 --> 00:16:59,300 奴と同行してヴァルハラへ 行くことにでもなったら 278 00:16:59,300 --> 00:17:02,900 俺は奴をワルキューレの車から 突き落としてやるからな 279 00:17:02,900 --> 00:17:06,640 閣下 お声が大きすぎます 280 00:17:06,640 --> 00:17:09,540 ビッテンフェルト家には 代々の家訓がある 281 00:17:09,540 --> 00:17:11,480 「他人を褒める時は大きな声で」 282 00:17:11,480 --> 00:17:14,350 「けなす時はより大きな声で」 というのだ 283 00:17:14,350 --> 00:17:16,980 俺は その家訓を守っているだけだ 284 00:17:16,980 --> 00:17:21,590 分かりました 分かりましたから 285 00:17:21,590 --> 00:17:24,490 ハクション ハクション 286 00:17:24,490 --> 00:17:27,760 オーベルシュタインは そのまま ロイエンタールが使用していた 287 00:17:27,760 --> 00:17:31,260 総督府へ向かったが ビッテンフェルトとミュラーは 288 00:17:31,260 --> 00:17:33,200 それぞれ空港近くのホテルに 289 00:17:33,200 --> 00:17:37,040 仮司令部を置き 軍務尚書と同行しなかった 290 00:17:37,040 --> 00:17:41,570 オーベルシュタインのほうでも 特に両提督の同行を求めなかった 291 00:17:41,570 --> 00:17:44,440 彼が早急に 手をつけようとしていた問題は 292 00:17:44,440 --> 00:17:46,380 両提督の作戦指揮能力を 293 00:17:46,380 --> 00:17:49,810 必要とする類のものでは なかったからである 294 00:17:49,810 --> 00:17:52,250 翌21日からハイネセンは 295 00:17:52,250 --> 00:17:54,990 急激で苛烈な変化にさらされた 296 00:17:54,990 --> 00:17:57,890 軍務尚書直属の 陸戦部隊が出動して 297 00:17:57,890 --> 00:18:02,160 いわゆる危険人物を 強引に連行し始めたのである 298 00:18:02,160 --> 00:18:06,130 かつて同盟政府の 人的資源委員長を務めたホアン・ルイ 299 00:18:06,130 --> 00:18:08,270 ヤン・ウェンリー元帥の司令部で 300 00:18:08,270 --> 00:18:11,100 参謀長の要職にあったムライ中将 301 00:18:11,100 --> 00:18:14,310 旧同盟軍で第二艦隊 第一艦隊の 302 00:18:14,310 --> 00:18:16,940 司令官を歴任したパエッタ中将 303 00:18:16,940 --> 00:18:19,210 国立自治大学の元学長で 304 00:18:19,210 --> 00:18:22,780 歴代政権のブレーンを務めた オリベイラ博士など 305 00:18:22,780 --> 00:18:26,550 5000名を超える人々が 一挙に収監されてしまった 306 00:18:26,550 --> 00:18:30,190 およそ自由惑星同盟で 重要な公職にあった者は 307 00:18:30,190 --> 00:18:32,160 根こそぎ捕らわれたことになる 308 00:18:32,160 --> 00:18:36,290 これが世にいう 「オーベルシュタインの草刈り」である 309 00:18:36,290 --> 00:18:38,730 オーベルシュタインは 何を考えているのか 310 00:18:38,730 --> 00:18:40,770 俺にはさっぱり理解できん 311 00:18:40,770 --> 00:18:44,040 卿には分かるか? いや 分かりません 312 00:18:44,040 --> 00:18:47,840 俺が思うにだ 民主共和主義者とかいう奴らには 313 00:18:47,840 --> 00:18:50,140 言いたいことを 言わせておけばいいのさ 314 00:18:50,140 --> 00:18:52,710 どうせ口で言っていることの 1パーセントも 315 00:18:52,710 --> 00:18:55,610 実行できるわけではないからな 316 00:18:55,610 --> 00:18:59,120 政治犯や思想犯を獄に下せば 317 00:18:59,120 --> 00:19:02,850 その分 一般刑事犯の 収監能力が低下します 318 00:19:02,850 --> 00:19:06,690 かえって この惑星の治安を 損なう恐れもあるでしょうな 319 00:19:06,690 --> 00:19:09,460 まったくだ 力で押さえつけるだけで 320 00:19:09,460 --> 00:19:12,030 治安維持ができると 考えているとすれば 321 00:19:12,030 --> 00:19:15,300 オーベルシュタインも 存外に芸がないというものだ 322 00:19:15,300 --> 00:19:17,640 しかし治安維持に関しては 323 00:19:17,640 --> 00:19:20,470 我々に異議を唱える 権限もありません 324 00:19:20,470 --> 00:19:22,840 ここはイゼルローン要塞の 攻略準備に 325 00:19:22,840 --> 00:19:24,840 専念することにしましょう 326 00:19:24,840 --> 00:19:27,680 ワーレン提督も 今日にもガンダルヴァ星域から 327 00:19:27,680 --> 00:19:29,610 到着されますし 328 00:19:29,610 --> 00:19:33,250 そうだな だが まさか オーベルシュタインのやつ 329 00:19:33,250 --> 00:19:35,650 実戦にまで 口を出すつもりではあるまいな 330 00:19:35,650 --> 00:19:37,690 それは何とも 331 00:19:37,690 --> 00:19:41,430 戦いになったら 俺は俺のやり方で やらせてもらうぞ 332 00:19:41,430 --> 00:19:44,330 オーベルシュタインの 指図は受けん 333 00:19:44,330 --> 00:19:46,930 こうして3月の末に至るまで 334 00:19:46,930 --> 00:19:49,830 軍務尚書と3人の艦隊司令官は 335 00:19:49,830 --> 00:19:53,710 同じ惑星上にありながら ほとんど顔を合わせることもなく 336 00:19:53,710 --> 00:19:56,140 互いの責務を果たしていた 337 00:19:56,140 --> 00:19:59,640 その三提督が そろって オーベルシュタインのもとを訪れたのは 338 00:19:59,640 --> 00:20:02,250 4月1日 午前のことである 339 00:20:02,250 --> 00:20:05,120 軍務尚書に伺いたいことがある 340 00:20:05,120 --> 00:20:07,850 伺おう ビッテンフェルト提督 341 00:20:07,850 --> 00:20:11,720 ただし手短に かつ理論的に願いたい 342 00:20:11,720 --> 00:20:14,160 では単刀直入に伺おう 343 00:20:14,160 --> 00:20:16,760 我が軍の内外に流れる噂によれば 344 00:20:16,760 --> 00:20:20,930 軍務尚書が多数の政治犯 思想犯を収監する理由は 345 00:20:20,930 --> 00:20:23,470 奴らを人質にして イゼルローン軍に 346 00:20:23,470 --> 00:20:25,400 開城を迫るためだという 347 00:20:25,400 --> 00:20:27,370 戦力に勝る我が軍が 348 00:20:27,370 --> 00:20:30,810 そのような卑劣な手段に 訴えるとは信じたくはないが 349 00:20:30,810 --> 00:20:33,310 この際 軍務尚書ご自身の口から 350 00:20:33,310 --> 00:20:35,850 真偽のほどを伺いたい いかに 351 00:20:35,850 --> 00:20:39,080 噂に基づいて 批判されるとは心外だ 352 00:20:39,080 --> 00:20:41,020 では事実ではないのだな 353 00:20:41,020 --> 00:20:43,620 そうは言っておらん 354 00:20:43,620 --> 00:20:46,120 すると やはり 人質の生命を盾にして 355 00:20:46,120 --> 00:20:48,920 イゼルローンの開城を求めると おっしゃるのか 356 00:20:51,560 --> 00:20:54,270 軍事的ロマン主義者の 血生臭い夢想は 357 00:20:54,270 --> 00:20:56,200 この際 無益だ 358 00:20:56,200 --> 00:20:59,470 百万の将兵の生命を 新たに損なうより 359 00:20:59,470 --> 00:21:03,210 1万たらずの政治犯を 無血開城の具にするほうが 360 00:21:03,210 --> 00:21:06,180 いくらかでも マシな選択と 信じる次第である 361 00:21:06,180 --> 00:21:09,150 常勝不敗の帝国軍の名誉は どうなるか 362 00:21:09,150 --> 00:21:11,450 名誉? イゼルローンごとき 363 00:21:11,450 --> 00:21:13,420 俺の艦隊だけでも落としてみせる 364 00:21:13,420 --> 00:21:17,190 ましてミュラーもワーレンもいる 4万隻の大軍だ 365 00:21:17,190 --> 00:21:19,720 そのような 姑息な手段を用いずとも 366 00:21:19,720 --> 00:21:22,630 実力をもって イゼルローンを開城させ得ること 367 00:21:22,630 --> 00:21:24,560 万に一つも疑いない 368 00:21:24,560 --> 00:21:29,700 実績なき者の大言壮語を戦略の 基幹に据えるわけにはいかぬ 369 00:21:29,700 --> 00:21:33,270 もはや武力のみで 事態の解決を図る段階ではない 370 00:21:33,270 --> 00:21:36,140 実績がないだと! 371 00:21:36,140 --> 00:21:38,410 カイザー・ラインハルト陛下の 御もとにあって 372 00:21:38,410 --> 00:21:41,280 幾度も戦場を往来し 陛下の御ために 373 00:21:41,280 --> 00:21:43,950 雄敵を ことごとく倒してきた我らだ 374 00:21:43,950 --> 00:21:46,220 何をもって実績なしと放言するか 375 00:21:46,220 --> 00:21:49,120 卿らの実績とやらは よく承知している 376 00:21:49,120 --> 00:21:52,320 卿ら3名 合わせて ヤン・ウェンリー1人に 377 00:21:52,320 --> 00:21:55,130 幾度 勝利の美酒を 飲ませるに至ったか 378 00:21:55,130 --> 00:21:57,060 私だけでなく敵軍も… 379 00:21:57,060 --> 00:21:59,060 貴様! 380 00:22:03,840 --> 00:22:05,840 提督 よせ 381 00:22:08,310 --> 00:22:10,240 よせ 382 00:22:10,240 --> 00:22:12,180 閣下 383 00:22:12,180 --> 00:22:14,850 ミュラー提督 はっ 384 00:22:14,850 --> 00:22:17,880 ビッテンフェルト提督が 謹慎している間 385 00:22:17,880 --> 00:22:20,550 シュワルツ・ランツェンレイターの 指揮監督は 386 00:22:20,550 --> 00:22:23,350 卿に委ねる よろしいな 387 00:22:23,350 --> 00:22:26,930 お言葉ですが軍務尚書 小官はともかく 388 00:22:26,930 --> 00:22:30,200 シュワルツ・ランツェンレイターの 将兵が承知しますまい 389 00:22:30,200 --> 00:22:32,130 彼らにとって司令官とは 390 00:22:32,130 --> 00:22:35,030 ビッテンフェルト提督 ただ1人のはずですから 391 00:22:35,030 --> 00:22:38,300 これはミュラー提督らしからぬ 不見識だ 392 00:22:38,300 --> 00:22:41,840 シュワルツ・ランツェンレイターは 帝国軍の いち部隊 393 00:22:41,840 --> 00:22:44,640 ビッテンフェルト提督の 私兵ではあるまい 394 00:22:47,750 --> 00:22:50,620 軍務尚書は ご自信を お持ちのようだが 395 00:22:50,620 --> 00:22:53,550 人質を盾に 開城を迫るような手段を 396 00:22:53,550 --> 00:22:57,190 誇り高いカイザーが ご承知になるでしょうか 397 00:22:57,190 --> 00:23:00,830 我らに艦隊を率いさせ この地まで派遣なさったからには 398 00:23:00,830 --> 00:23:04,260 カイザーの御意は 堂々たる正面決戦にあること 399 00:23:04,260 --> 00:23:06,200 明らかではありませんか 400 00:23:06,200 --> 00:23:08,830 軍務尚書はあえて それを無視なさると? 401 00:23:08,830 --> 00:23:10,770 そのカイザーの誇りが 402 00:23:10,770 --> 00:23:13,670 イゼルローン回廊に 数百万将兵の白骨を 403 00:23:13,670 --> 00:23:17,410 朽ちさせる結果を生んだ 404 00:23:17,410 --> 00:23:20,210 一昨年 ヤン・ウェンリーが ハイネセンを脱して 405 00:23:20,210 --> 00:23:23,520 イゼルローンに寄った時 この策を用いていれば 406 00:23:23,520 --> 00:23:26,920 数百万の人命が 損なわれずに済んだのだ 407 00:23:26,920 --> 00:23:29,190 帝国はカイザーの私物ではなく 408 00:23:29,190 --> 00:23:31,890 帝国軍はカイザーの私兵ではない 409 00:23:31,890 --> 00:23:34,260 カイザーが個人的な誇りのために 410 00:23:34,260 --> 00:23:38,130 将兵を無為に死なせてよいという 法がどこにある 411 00:23:38,130 --> 00:23:40,700 それでは ゴールデンバウム王朝の時代と 412 00:23:40,700 --> 00:23:44,100 何ら変わらぬではないか 413 00:23:44,100 --> 00:23:47,340 軍務尚書の主張は恐らく正しい 414 00:23:47,340 --> 00:23:49,270 だが その正しさゆえに 415 00:23:49,270 --> 00:23:51,980 人々の憎悪を 買うことになるだろう 416 00:23:51,980 --> 00:23:55,850 私は皇帝陛下の代理人として 卿らを指揮する 417 00:23:55,850 --> 00:23:58,750 勅命によってである 異存があるなら 418 00:23:58,750 --> 00:24:01,420 カイザーに対して 言上すべきであろう 419 00:24:01,420 --> 00:24:03,350 完全な正論だ 420 00:24:03,350 --> 00:24:06,320 だが先に 痛烈にカイザー批判を口にし 421 00:24:06,320 --> 00:24:08,690 その舌の根も乾かぬうちに 422 00:24:08,690 --> 00:24:11,600 今度はカイザーの名を借りて 自己の立場を強化したと 423 00:24:11,600 --> 00:24:13,570 取れなくもない 424 00:24:13,570 --> 00:24:17,140 いや 間違いなく三提督は そう取ったに違いない 425 00:24:17,140 --> 00:24:19,070 これは… 426 00:24:19,070 --> 00:24:22,440 要件は済んだ お三方に引き取っていただけ 427 00:24:22,440 --> 00:24:25,040 フェルナー少将 はっ 428 00:24:27,380 --> 00:24:30,850 このようにして 惑星ハイネセンの状況は 429 00:24:30,850 --> 00:24:34,350 誰も想像しない方向へと 進んでいった 430 00:26:07,410 --> 00:26:11,280 オーベルシュタインと3名の 上級大将の間に生じた対立は 431 00:26:11,280 --> 00:26:14,220 カイザー・ラインハルトに 深刻な命題を突きつけた 432 00:26:14,220 --> 00:26:17,960 正々堂々と戦って 百万人の血を流すことと 433 00:26:17,960 --> 00:26:20,990 最小限の犠牲で 平和と統一を実現することの 434 00:26:20,990 --> 00:26:23,260 どちらが歴史に貢献するか 435 00:26:23,260 --> 00:26:27,500 ユリアンもまた この問いに 答えなくてはならなかったが 436 00:26:27,500 --> 00:26:30,700 次回 銀河英雄伝説 第104話 437 00:26:30,700 --> 00:26:33,140 「平和へ、流血経由」 438 00:26:33,140 --> 00:26:35,540 銀河の歴史が また1ページ