1 00:01:34,200 --> 00:01:37,590 カイザー・ラインハルトから オーベルシュタイン元帥に対しては 2 00:01:37,590 --> 00:01:41,490 逮捕した政治犯たちを虐待しない ように指示が出されていた 3 00:01:41,490 --> 00:01:44,990 だが それに先だって 一つの破局が生じた 4 00:01:44,990 --> 00:01:47,790 4月16日の深夜のことである 5 00:01:50,500 --> 00:01:53,240 ハイネセンポリス郊外の ラグプール刑務所には 6 00:01:53,240 --> 00:01:56,140 5000人あまりの政治犯が 収容されていたが 7 00:01:56,140 --> 00:01:59,140 ここで暴動が発生したのである 8 00:01:59,140 --> 00:02:01,340 一人も逃がすな 急げ 9 00:02:08,720 --> 00:02:12,590 暴動の拡大に伴い ハイネセンポリスに駐留する帝国軍が 10 00:02:12,590 --> 00:02:17,430 鎮圧に出動したが ここで一つの混乱が生じた 11 00:02:17,430 --> 00:02:22,060 我ら シュワルツ・ランツェンレイターも 暴動鎮圧に出動する 12 00:02:22,060 --> 00:02:24,260 急げ! はっ 13 00:02:38,110 --> 00:02:41,020 何?シュワルツ・ ランツェンレイターが? 14 00:02:41,020 --> 00:02:43,950 はっ 出動した模様です 15 00:02:43,950 --> 00:02:45,950 暴動の混乱に乗じて 16 00:02:45,950 --> 00:02:50,390 ビッテンフェルト提督の身柄の 奪還を図るものではないかと 17 00:02:50,390 --> 00:02:53,000 軽々には判断できん 18 00:02:53,000 --> 00:02:57,770 だが その危険がある以上 勝手に行動させるわけにはいかん 19 00:02:57,770 --> 00:03:01,240 道路を封鎖して 押し戻せ はっ! 20 00:03:01,240 --> 00:03:05,470 この時点でビッテンフェルトは いまだ軟禁を解かれておらず 21 00:03:05,470 --> 00:03:08,110 軍務尚書直属の憲兵隊としては 22 00:03:08,110 --> 00:03:12,710 シュワルツ・ランツェンレイターの 動きに警戒をせねばならなかった 23 00:03:28,860 --> 00:03:30,800 これは何のマネか? 24 00:03:30,800 --> 00:03:35,640 これより先は憲兵隊の管轄である お引き取り願いたい 25 00:03:35,640 --> 00:03:38,610 目と鼻の先にて 暴動が起きておるのだ 26 00:03:38,610 --> 00:03:40,610 黙って見ておれるか! 27 00:03:40,610 --> 00:03:43,950 治安の維持は憲兵隊の役割である 28 00:03:43,950 --> 00:03:46,010 門外漢の出る幕はない 29 00:03:46,010 --> 00:03:49,380 フン 門外漢とは片腹痛し 30 00:03:49,380 --> 00:03:51,750 暴徒は武装しておると いうではないか 31 00:03:51,750 --> 00:03:56,260 我らは宇宙艦隊とはいえ 陸戦隊は歴戦の勇士ぞろい 32 00:03:56,260 --> 00:03:59,630 実戦ではデスクワークばかりの 憲兵隊などより 33 00:03:59,630 --> 00:04:03,830 はるかに ものの役に立つわ 黙って そこを通せ 34 00:04:03,830 --> 00:04:06,740 何と言われようと 通すわけにはいかぬ 35 00:04:06,740 --> 00:04:10,070 道理の分からぬ奴だ 通さぬというなら 36 00:04:10,070 --> 00:04:12,740 無理にでも押し通るが それでもよいか! 37 00:04:12,740 --> 00:04:15,640 是非もなし 38 00:04:15,640 --> 00:04:18,550 おのれ 39 00:04:18,550 --> 00:04:20,550 ん? 40 00:04:27,260 --> 00:04:30,260 一触即発の危機は 軍務省官房長 41 00:04:30,260 --> 00:04:34,160 フェルナー少将の的確な判断と 指示によって回避された 42 00:04:59,720 --> 00:05:01,660 とにかく囚人を逃がすな 43 00:05:01,660 --> 00:05:04,560 シュワルツ・ランツェンレイターや 他の部隊の手前 44 00:05:04,560 --> 00:05:07,600 我らの持ち場から 逃亡者を出すわけにはゆかん 45 00:05:07,600 --> 00:05:11,400 しかしながら暴徒の数が多過ぎ 我らだけでは… 46 00:05:11,400 --> 00:05:16,600 やむを得ん 抵抗する者 逃亡を図る者は射殺せよ 47 00:05:22,610 --> 00:05:26,380 射殺とは短慮だ 政治犯を虐待しては 48 00:05:26,380 --> 00:05:29,280 イゼルローンとの交渉材料に ならんではないか 49 00:05:29,280 --> 00:05:35,390 しかし混成部隊ゆえに 指揮 命令の統制が取れません 50 00:05:35,390 --> 00:05:37,360 いったん全部隊を撤退させ 51 00:05:37,360 --> 00:05:40,930 周辺を固めて逃亡を許さず 降伏させるように… 52 00:05:40,930 --> 00:05:43,430 あっ… 53 00:05:43,430 --> 00:05:45,730 うっ ああ… 54 00:05:47,900 --> 00:05:49,910 待て 味方だ 55 00:05:49,910 --> 00:05:53,140 閣下 閣下! 56 00:05:53,140 --> 00:05:55,840 フェルナーの負傷によって 鎮圧作戦の指揮を 57 00:05:55,840 --> 00:05:59,480 統括する者がいなくなり 混乱に拍車がかかった 58 00:05:59,480 --> 00:06:02,750 各部隊は味方からの非難を 回避するために 59 00:06:02,750 --> 00:06:06,850 より強圧的に鎮圧に当たり 多くの犠牲者を出した 60 00:06:08,990 --> 00:06:14,930 政治犯の側は死者1084名 重軽傷者3109名 61 00:06:14,930 --> 00:06:20,240 無傷の残留者317名 他は逃亡または行方不明 62 00:06:20,240 --> 00:06:26,140 帝国軍の側は死者158名 重軽傷者907名 63 00:06:26,140 --> 00:06:29,480 フェルナーは医療部隊も 待機させていたのだが 64 00:06:29,480 --> 00:06:32,150 彼自身の負傷によって 命令が届かず 65 00:06:32,150 --> 00:06:35,050 刑務所を前に 3時間も動けずにいた 66 00:06:35,050 --> 00:06:39,950 そのため大量出血による死者を 数百人は救い損ねたのである 67 00:06:44,360 --> 00:06:46,660 翌17日の夜が明けても 68 00:06:46,660 --> 00:06:52,230 事態は収拾されるどころか 拡大の様相を見せた 69 00:06:52,230 --> 00:06:55,000 ラグプール刑務所の暴動に 呼応するように 70 00:06:55,000 --> 00:06:57,840 市街地の各所で放火や爆発が生じ 71 00:06:57,840 --> 00:07:01,940 住宅地でも火の手が上がって 一時 騒然となった 72 00:07:08,150 --> 00:07:12,990 市民を家に帰せ パニックを拡大させるな 73 00:07:12,990 --> 00:07:14,990 ん? 74 00:07:17,690 --> 00:07:20,730 あっ 75 00:07:20,730 --> 00:07:22,860 狙撃です 閣下 76 00:07:22,860 --> 00:07:25,630 危険ですから 装甲車にお戻りください 77 00:07:25,630 --> 00:07:30,470 構わん それより 何者が狙撃したのか 直ちに調べよ 78 00:07:30,470 --> 00:07:34,240 緊急事態だ 軍務尚書閣下は どこにおられる? 79 00:07:34,240 --> 00:07:38,410 軍務尚書閣下は ただ今 誰ともお会いになりません 80 00:07:38,410 --> 00:07:42,050 ラグプールだけではない 各所でテロが発生し 81 00:07:42,050 --> 00:07:46,660 本格的な反帝国暴動に 発展するおそれもあるのだ 82 00:07:46,660 --> 00:07:51,490 ラグプールではフェルナー少将が 事態の収拾に当たっております 83 00:07:51,490 --> 00:07:55,860 市内の混乱に関しては ミュラー閣下に これをお渡しして 84 00:07:55,860 --> 00:07:59,500 各所を抑えていただくように とのことであります 85 00:07:59,500 --> 00:08:01,470 では勝手にやらせてもらう 86 00:08:01,470 --> 00:08:06,970 事態が収拾してから改めて伺うと 軍務尚書には伝えていただきたい 87 00:08:16,550 --> 00:08:20,490 こうして予想以上に 混乱と犠牲を拡大させながらも 88 00:08:20,490 --> 00:08:25,560 9時40分 刑務所は 帝国軍によって完全に制圧された 89 00:08:25,560 --> 00:08:30,330 死者の中には旧同盟軍 第一艦隊司令パエッタ中将 90 00:08:30,330 --> 00:08:34,200 国立自治大学 オリベイラ学長らの 名が含まれていたが 91 00:08:34,200 --> 00:08:36,570 シトレ元帥 ムライ中将らは 92 00:08:36,570 --> 00:08:39,570 負傷しながらも 生命は無事であった 93 00:08:42,280 --> 00:08:45,250 このように犠牲者のリストを 見るまでもなく 94 00:08:45,250 --> 00:08:49,380 元々 収監されていた政治犯の 平均年齢は高く 95 00:08:49,380 --> 00:08:53,560 暴動が自然発生する可能性は 少ないように思われる 96 00:08:53,560 --> 00:08:57,860 また刑務所内に持ち込まれた 武器の存在を考え合わせても 97 00:08:57,860 --> 00:09:01,660 何者かが策謀した結果では ないかと考えられた 98 00:09:01,660 --> 00:09:06,500 「何者か」 帝国軍の高級士官たちの 脳裏に浮かんだのは 99 00:09:06,500 --> 00:09:09,600 例外なく地球教の名であった 100 00:09:13,840 --> 00:09:18,210 事件が地球教の陰謀とすれば その目的とするところは 101 00:09:18,210 --> 00:09:22,520 帝国軍とイゼルローンとの修好を 妨害することにある 102 00:09:22,520 --> 00:09:25,920 とおっしゃいますと? 考えてもみろ 103 00:09:25,920 --> 00:09:29,160 この事件が不正確に イゼルローンに伝わったとすれば 104 00:09:29,160 --> 00:09:34,800 帝国軍が政治犯を大量虐殺したと 誤解されないとも限らない 105 00:09:34,800 --> 00:09:38,800 せっかくカイザーが名誉ある 対話を行おうとされている時に 106 00:09:38,800 --> 00:09:43,140 すべてが無駄になってしまう それでは? 107 00:09:43,140 --> 00:09:45,970 生存者の中に イゼルローンの関係者がいれば 108 00:09:45,970 --> 00:09:50,310 事態を正確に伝えるのに 役立ってもらえるかもしれん 109 00:09:50,310 --> 00:09:52,580 負傷者のリストを当たってくれ 110 00:09:52,580 --> 00:09:54,550 はっ! 111 00:09:54,550 --> 00:09:57,420 こうしてミュラーは 負傷者リストの中に 112 00:09:57,420 --> 00:09:59,790 ムライの名を 見いだすことになるが 113 00:09:59,790 --> 00:10:02,290 ムライはまだ 意識が回復しておらず 114 00:10:02,290 --> 00:10:06,630 彼をイゼルローンとの修好に 役立たせることはできなかった 115 00:10:06,630 --> 00:10:08,860 やがて混乱が収拾され 116 00:10:08,860 --> 00:10:13,470 軍務尚書の直属部隊が 病院の管理と監視に乗り出すと 117 00:10:13,470 --> 00:10:17,770 ミュラーの越権行為は 挫折を余儀なくされるのである 118 00:10:19,880 --> 00:10:21,810 同じ4月17日 119 00:10:21,810 --> 00:10:25,180 フレデリカ・グリーンヒル・ヤンと ユリアン・ミンツを代表とする 120 00:10:25,180 --> 00:10:27,680 イゼルローン共和政府の 幹部たちは 121 00:10:27,680 --> 00:10:32,990 既に回廊を出て 帝国軍の 哨戒宙域へ進入しつつあった 122 00:10:32,990 --> 00:10:36,630 周辺宙域に帝国軍の反応なし 123 00:10:36,630 --> 00:10:38,560 どういうことだ これは 124 00:10:38,560 --> 00:10:41,860 全く無防備じゃないか 125 00:10:41,860 --> 00:10:45,830 こんなことなら 艦隊主力を 伴ってくるんだった 126 00:10:45,830 --> 00:10:47,970 単純すぎるな 127 00:10:47,970 --> 00:10:52,910 ここは悪辣なワナの存在を 警戒するべきだろう 128 00:10:52,910 --> 00:10:55,280 いや しかし… 129 00:10:55,280 --> 00:10:59,450 現に索敵可能な範囲内に 敵の姿がない以上 130 00:10:59,450 --> 00:11:01,950 これはチャンスと言うべきだろう 131 00:11:01,950 --> 00:11:03,890 どう思う?司令官 132 00:11:03,890 --> 00:11:07,720 結論を出すには 情報が少な過ぎます 133 00:11:07,720 --> 00:11:12,530 とりあえず前進速度を落として 様子を見ましょう 134 00:11:12,530 --> 00:11:15,030 情報の収集に努めた一行は 135 00:11:15,030 --> 00:11:18,230 ようやくラグプール刑務所の 暴動によって 136 00:11:18,230 --> 00:11:21,140 収容されていた政治犯の多数が 死傷し 137 00:11:21,140 --> 00:11:25,840 ハイネセンは戒厳令も同様の 情勢にあることを察知した 138 00:11:28,510 --> 00:11:31,410 いったん イゼルローン要塞へ戻ろう 139 00:11:31,410 --> 00:11:33,780 このままハイネセンに 行ったのでは 140 00:11:33,780 --> 00:11:38,220 混乱に乗じて 謀殺してくださいと 言わんばかりだ 141 00:11:38,220 --> 00:11:42,220 自ら求めて 虎口に 飛び込むことはない 142 00:11:52,330 --> 00:11:54,870 命令は直ちに実行に移されたが 143 00:11:54,870 --> 00:11:57,770 巡航艦の1隻が 動力部に異常をきたし 144 00:11:57,770 --> 00:12:02,970 修理のために手間取るうちに カレンダーが翌18日へと変わった 145 00:12:07,380 --> 00:12:12,320 ザグレウスの修理 完了しました 船外作業班も間もなく撤収します 146 00:12:12,320 --> 00:12:17,020 よし 直ちにイゼルローン要塞に 向けて発進 147 00:12:21,260 --> 00:12:27,140 敵影発見 俯角24度 8時の方向 数 およそ100 148 00:12:27,140 --> 00:12:29,570 なんだ やっぱりいるんでやんの 149 00:12:29,570 --> 00:12:31,870 敵艦より入電 150 00:12:31,870 --> 00:12:34,810 「停船せよ しからざれば攻撃す」 151 00:12:34,810 --> 00:12:37,080 懐かしいフレーズだぜ 152 00:12:37,080 --> 00:12:40,880 心配するな この艦は 強運のユリシーズだ 153 00:12:40,880 --> 00:12:43,620 だからこそ旗艦にしたんだからな 154 00:12:43,620 --> 00:12:45,550 しかし これまでの戦歴で 155 00:12:45,550 --> 00:12:48,960 手持ちの強運を 使い果たしてるんじゃないか? 156 00:12:48,960 --> 00:12:54,260 おや?いつから運命に一定の量が あるという説になったんです? 157 00:12:54,260 --> 00:12:57,100 なに お前さんの言い分を 聞いてると 158 00:12:57,100 --> 00:13:01,440 「運命にだって言いたいことは あるだろう」と思えてきてな 159 00:13:01,440 --> 00:13:06,340 そらそら たちの悪い運命が 軍艦に変装して近づいてきますぞ 160 00:13:06,340 --> 00:13:09,480 それがどうした! 161 00:13:09,480 --> 00:13:12,980 こう見えても 20代で将官に昇進した 162 00:13:12,980 --> 00:13:15,950 旧同盟軍でも稀有な人物である 163 00:13:15,950 --> 00:13:20,460 同盟が自壊してしまったので 自称革命家になってしまったが 164 00:13:20,460 --> 00:13:23,360 同盟が存続していれば 30代のうちに 165 00:13:23,360 --> 00:13:25,730 元帥たり得ていたかもしれない 166 00:13:25,730 --> 00:13:29,160 そうであればヤン・ウェンリーとは やや色彩の異なる 167 00:13:29,160 --> 00:13:32,830 あるいは より剛柔の均整のとれた 元帥の名が 168 00:13:32,830 --> 00:13:37,230 同盟軍元帥列伝に 記載されることになったであろう 169 00:13:56,060 --> 00:13:58,390 お前さんがユリアン・ミンツか? 170 00:13:58,390 --> 00:14:02,190 ダスティ・アッテンボローだ よろしくな 171 00:14:10,440 --> 00:14:14,310 僕はこの人たちの 思い出話など したくはない 172 00:14:14,310 --> 00:14:20,120 この人たちと思い出話をしたい そのためにも… 173 00:14:20,120 --> 00:14:22,050 4月17日 174 00:14:22,050 --> 00:14:26,650 ミッターマイヤー アイゼナッハ メックリンガーらを従えて 175 00:14:26,650 --> 00:14:30,090 惑星ハイネセンへの途上にある カイザー・ラインハルトも 176 00:14:30,090 --> 00:14:33,730 ハイネセンポリスでの 一連の事件を聞いた 177 00:14:33,730 --> 00:14:36,530 軍務尚書は何をしていた! 178 00:14:36,530 --> 00:14:39,400 共和主義者どもを 塀の中に閉じ込めて 179 00:14:39,400 --> 00:14:41,840 それでよしとでも思ったか 180 00:14:41,840 --> 00:14:45,140 彼らを人質に取ることの是非を おいても 181 00:14:45,140 --> 00:14:49,840 彼らを殺傷したのでは 人質たるの 役をなさないであろうが 182 00:14:51,850 --> 00:14:53,950 御意… 183 00:15:06,330 --> 00:15:10,500 今回の遠征には 特に6名の軍医が同行している 184 00:15:10,500 --> 00:15:14,900 ラインハルト自身は 自分が病人と 見られることを嫌ったが 185 00:15:14,900 --> 00:15:17,810 皇妃と大公妃の 望んだことであると言われれば 186 00:15:17,810 --> 00:15:19,810 拒否しようもなかった 187 00:15:22,310 --> 00:15:25,510 「カイザーの衰弱が 目に見えるものであったら」 188 00:15:25,510 --> 00:15:28,720 「私たちは むろん それに気づいたであろう」 189 00:15:28,720 --> 00:15:31,720 「だがカイザーの美と精彩は 少なくとも表面上は」 190 00:15:31,720 --> 00:15:34,820 「いささかの衰えも見せなかった」 191 00:15:34,820 --> 00:15:38,760 「これまでもしばしば発熱 病臥が 繰り返されていたので」 192 00:15:38,760 --> 00:15:41,600 「旧王朝の当時に比して 私たちも」 193 00:15:41,600 --> 00:15:46,270 「カイザーの病臥にいつの間にか 慣らされていたようであった」 194 00:15:46,270 --> 00:15:49,170 「たとえ発熱しても カイザーの明晰さが」 195 00:15:49,170 --> 00:15:53,340 「損なわれたようには 見えなかったということもある」 196 00:15:53,340 --> 00:15:57,110 のちにそう記したのは メックリンガー上級大将であるが 197 00:15:57,110 --> 00:16:01,810 この時点では彼も事態の 深刻さには気づいていなかった 198 00:16:04,850 --> 00:16:07,460 敵艦 更に接近 199 00:16:07,460 --> 00:16:10,360 まだまだ もっと引きつけろ 200 00:16:10,360 --> 00:16:12,630 楽しんでませんか? 201 00:16:12,630 --> 00:16:15,630 12隻 対 100隻では役不足だが 202 00:16:15,630 --> 00:16:17,770 どうせなら 敵が取り逃がしたことを 203 00:16:17,770 --> 00:16:21,640 悔しがる状況を 作ってやろうと思ってな 204 00:16:21,640 --> 00:16:24,410 いい性格をしておいでだ 205 00:16:24,410 --> 00:16:27,110 このままでは半包囲されます よし! 206 00:16:27,110 --> 00:16:30,010 全艦 全速で回廊に逃げ込め 207 00:16:37,120 --> 00:16:40,520 敵艦 急速に回廊に撤退します 208 00:16:40,520 --> 00:16:44,390 逃がすな 追え! 209 00:16:44,390 --> 00:16:47,200 逃がさんぞ ぜ… 前方! 210 00:16:47,200 --> 00:16:50,500 回廊内に反応多数 大艦隊です 211 00:16:50,500 --> 00:16:52,500 何! 212 00:16:58,240 --> 00:17:01,610 数 およそ1万2000 213 00:17:01,610 --> 00:17:05,050 バ… バカな イゼルローン軍のほぼ全軍が 214 00:17:05,050 --> 00:17:08,850 出口付近に潜んでいたのか いかがいたします?司令官 215 00:17:08,850 --> 00:17:12,350 決まっている 撤退だ! 勝負になるか 216 00:17:12,350 --> 00:17:15,860 帝国軍 撤退していきます 217 00:17:15,860 --> 00:17:20,130 ひと安心だな これからどうする 司令官 218 00:17:20,130 --> 00:17:22,960 ひとまず ハイネセン行きは中止です 219 00:17:22,960 --> 00:17:27,600 しばらく この辺りで 様子を見ましょう 220 00:17:27,600 --> 00:17:32,140 安全を考えて フレデリカをいったん 要塞に帰したユリアンらは 221 00:17:32,140 --> 00:17:38,980 改めて臨戦態勢のまま 前方の 旧同盟領を見据えることとなった 222 00:17:38,980 --> 00:17:42,920 一方 惑星ハイネセンでは カイザーの到着に先立ち 223 00:17:42,920 --> 00:17:48,320 オーベルシュタインが 一つの行事を行おうとしていた 224 00:17:48,320 --> 00:17:50,560 カイザーが臨御あそばす前に 225 00:17:50,560 --> 00:17:53,900 ハイネセンのホコリを 払っておこうか 226 00:17:53,900 --> 00:17:57,770 4月29日になって そのオーベルシュタインが称した 227 00:17:57,770 --> 00:18:01,500 ハイネセンのチリ払いの内容が 公表された 228 00:18:01,500 --> 00:18:05,310 帝国軍は本日 前のフェザーン自治領主にして 229 00:18:05,310 --> 00:18:09,040 逃亡中の国事犯 アドリアン・ルビンスキーを 230 00:18:09,040 --> 00:18:13,610 潜伏先のハイネセンポリス市内にて 逮捕 拘禁せり 231 00:18:13,610 --> 00:18:16,450 かの者は 帝都フェザーンに送還され 232 00:18:16,450 --> 00:18:19,950 裁判ののち 刑に服することになろう 233 00:18:19,950 --> 00:18:23,960 いかにしてルビンスキーの 潜伏場所を察知し得たのか 234 00:18:23,960 --> 00:18:28,330 発表はともかくとして 我らには 知らせてもよいのではないか 235 00:18:28,330 --> 00:18:30,600 小官は存じません 236 00:18:30,600 --> 00:18:33,800 フン 237 00:18:33,800 --> 00:18:37,670 それは気の遠くなるような 作業の成果だったのです 238 00:18:37,670 --> 00:18:39,910 ラグナロック作戦 当時から 239 00:18:39,910 --> 00:18:43,180 ルビンスキーの居所は 探索しておりましたが 240 00:18:43,180 --> 00:18:47,380 今年に入ってから 全宇宙の医療機関のカルテから 241 00:18:47,380 --> 00:18:50,120 実在しない患者の名を割り出し 242 00:18:50,120 --> 00:18:52,690 それをしらみつぶしに 当たった結果 243 00:18:52,690 --> 00:18:55,920 その存在を突き止めたのです 244 00:18:55,920 --> 00:18:59,790 ルビンスキーは 悪性の脳腫瘍を患っているそうで 245 00:18:59,790 --> 00:19:02,630 長くて あと1年の命とか 246 00:19:02,630 --> 00:19:06,570 気が焦って 証拠を残したのでしょうか 247 00:19:06,570 --> 00:19:09,400 5月2日 カイザー・ラインハルトは 248 00:19:09,400 --> 00:19:13,010 惑星ハイネセンに降り立つ 249 00:19:13,010 --> 00:19:17,010 直前に宇宙を驚倒させた ルビンスキーの逮捕に関して 250 00:19:17,010 --> 00:19:21,720 ラインハルトは無関心であった 251 00:19:21,720 --> 00:19:26,050 再び仮の大本営に指定された 国立美術館では 252 00:19:26,050 --> 00:19:28,590 軍務尚書 オーベルシュタイン元帥と 253 00:19:28,590 --> 00:19:33,890 ビッテンフェルト上級大将が カイザーの到着を待っていた 254 00:19:54,820 --> 00:19:57,620 カイザーに謁見がかなった ビッテンフェルトは 255 00:19:57,620 --> 00:20:00,020 自分の罪を謝した 256 00:20:00,020 --> 00:20:02,620 軍務尚書との間に 隙を生じ 257 00:20:02,620 --> 00:20:06,290 帝国軍内部に不和があると 外部に見られた点について 258 00:20:06,290 --> 00:20:09,200 自分の罪をわびたのであった 259 00:20:09,200 --> 00:20:11,270 だが それだけでは済まず 260 00:20:11,270 --> 00:20:14,770 ビッテンフェルトは オーベルシュタインの非を鳴らした 261 00:20:14,770 --> 00:20:17,970 帝国軍の諸将が ヤン・ウェンリーに敗れたことを 262 00:20:17,970 --> 00:20:21,710 嘲弄した非礼を弾劾したのである 263 00:20:21,710 --> 00:20:24,650 ビッテンフェルトが 怒ることはない 264 00:20:24,650 --> 00:20:27,150 余自身もヤン・ウェンリーに対して 265 00:20:27,150 --> 00:20:31,850 戦術上の勝利を収めることが ついに かなわなかったのだからな 266 00:20:31,850 --> 00:20:35,120 余はそれを残念には思うが 恥じてはおらぬ 267 00:20:35,120 --> 00:20:37,060 ビッテンフェルトは 恥じておるのか? 268 00:20:37,060 --> 00:20:39,960 はっ あ… いえ 269 00:20:39,960 --> 00:20:42,860 では目くじらを 立てることもあるまい 270 00:20:42,860 --> 00:20:46,600 この件はこれまでとする 両者ともよいな? 271 00:20:46,600 --> 00:20:48,600 はっ! 272 00:20:52,410 --> 00:20:54,910 陛下がお変わりになられた 273 00:20:54,910 --> 00:20:59,150 以前ならば お叱りを受けて当然のところだが 274 00:20:59,150 --> 00:21:03,580 これは帝国にとって 吉であるのか凶であるのか 275 00:21:03,580 --> 00:21:06,250 改めてイゼルローンの 共和主義者たちに 276 00:21:06,250 --> 00:21:10,160 ハイネセンに来るよう申し伝えよ カイザーの招請だ 277 00:21:10,160 --> 00:21:13,530 ミュラー 卿の名をもって それを執り行え 278 00:21:13,530 --> 00:21:17,400 御意のごとくいたしますが もし彼らが拒絶した場合には 279 00:21:17,400 --> 00:21:20,100 いかがいたしましょうか マイン・カイザー 280 00:21:20,100 --> 00:21:23,670 いかがする?その時は奴らこそが 281 00:21:23,670 --> 00:21:28,340 流血と混乱に対する 責任を負うことになろうよ 282 00:21:28,340 --> 00:21:31,250 オーベルシュタイン はっ 283 00:21:31,250 --> 00:21:35,050 余がイゼルローンの共和主義者たちと 会見するとなれば 284 00:21:35,050 --> 00:21:38,450 それを阻害しようと 毒虫どもが蠢動するであろう 285 00:21:38,450 --> 00:21:42,320 奴らを駆除するについて 卿の力量を期待しておくが 286 00:21:42,320 --> 00:21:44,320 それでよかろうな 287 00:21:52,500 --> 00:21:54,940 ではひとまず解散せよ 288 00:21:54,940 --> 00:21:57,710 本日の夕食は 卿らと共にしたい 289 00:21:57,710 --> 00:22:00,680 1830に再び参集せよ 290 00:22:00,680 --> 00:22:02,680 はっ! 291 00:22:10,280 --> 00:22:13,780 これで終幕かな? ん? 292 00:22:16,090 --> 00:22:20,260 マイン・カイザーがイゼルローンの 共和主義者どもと会見なさる 293 00:22:20,260 --> 00:22:22,930 それで何がしかの 妥協案が成立して 294 00:22:22,930 --> 00:22:27,770 宇宙には平和が到来する 結構なことだと思いたいが… 295 00:22:27,770 --> 00:22:30,670 卿はそうは考えぬのだな? 296 00:22:30,670 --> 00:22:36,180 俺が思うにだ 季節の変わり目には 必ず嵐があるものだ 297 00:22:36,180 --> 00:22:40,080 それも 変わったと思い込んだ後に 大きなやつがな 298 00:22:40,080 --> 00:22:42,950 そうは思われぬか 元帥は 299 00:22:42,950 --> 00:22:45,290 嵐がな… 300 00:22:45,290 --> 00:22:48,160 イゼルローンの兵力は 1万を超える程度だ 301 00:22:48,160 --> 00:22:51,660 全宇宙を巻き込む嵐を 起こせるとも思えぬが 302 00:22:51,660 --> 00:22:55,860 では地球教辺りが 嵐の主因となるのであろうか 303 00:22:58,170 --> 00:23:01,640 それは卿の予測ではなく 願望ではないか 304 00:23:01,640 --> 00:23:04,170 そうかもしれん もっとも 305 00:23:04,170 --> 00:23:06,910 卿一人の願望では ないかもしれんが 306 00:23:06,910 --> 00:23:10,210 5月上旬 ナイトハルト・ミュラーによる 307 00:23:10,210 --> 00:23:15,050 イゼルローン共和政府に対する 交渉が開始された 308 00:23:15,050 --> 00:23:19,220 更にカイザー・ラインハルトの名で 5月20日をもって 309 00:23:19,220 --> 00:23:22,190 ラグプール刑務所に 収容されていた全ての政治犯を 310 00:23:22,190 --> 00:23:24,860 釈放する旨が布告されると 311 00:23:24,860 --> 00:23:27,760 それまでの軍務尚書への 怒りと反感は 312 00:23:27,760 --> 00:23:33,170 カイザーへの好意的評価へと 自然な変化を遂げた 313 00:23:33,170 --> 00:23:36,470 あるいは軍務尚書は そこまで計算して 314 00:23:36,470 --> 00:23:39,310 全ての事を運んだのだろうか 315 00:23:39,310 --> 00:23:42,210 だとしてもカイザーは ここまで譲歩したのだ 316 00:23:42,210 --> 00:23:46,110 これ以上の譲歩は望めないだろう 317 00:23:46,110 --> 00:23:51,050 ここは改めてハイネセンに赴き カイザーとの対話に臨むべきだ 318 00:23:51,050 --> 00:23:55,190 たとえオーベルシュタイン元帥の巧みな 政略にハマったのだとしても 319 00:23:55,190 --> 00:23:57,960 他に選択肢はない 320 00:23:57,960 --> 00:24:02,800 ハイネセンへ行きましょう 虜囚としてではなく 使節として 321 00:24:02,800 --> 00:24:08,440 現在の状況では それが望み得る最高の立場です 322 00:24:08,440 --> 00:24:12,440 ユリアンの決断によって 歴史は再び平和への道を 323 00:24:12,440 --> 00:24:15,080 歩み始めるかと思われた 324 00:24:15,080 --> 00:24:18,610 だが流血と混乱は 依然 やむことはなく 325 00:24:18,610 --> 00:24:23,410 次の事件は惑星フェザーンで 発生することになる 326 00:24:26,090 --> 00:24:29,990 シュテッヒパルム・シュロス 炎上事件である 327 00:26:08,020 --> 00:26:10,990 誰もがイゼルローンの動向に 注目する中 328 00:26:10,990 --> 00:26:14,730 カイザー・ラインハルトと 帝国軍主力の留守を狙って 329 00:26:14,730 --> 00:26:16,960 変事はフェザーンで起こった 330 00:26:16,960 --> 00:26:21,140 地球教徒の残党が 身重の皇妃 ヒルダの殺害を企てて 331 00:26:21,140 --> 00:26:23,200 仮皇宮を襲ったのだ 332 00:26:23,200 --> 00:26:27,710 急ぎ駆けつけたケスラーの眼前で 333 00:26:27,710 --> 00:26:33,080 次回「銀河英雄伝説」 第106話「柊館炎上」 334 00:26:33,080 --> 00:26:35,380 銀河の歴史が また1ページ