1 00:02:56,678 --> 00:02:58,613 宇宙暦799年 2 00:02:58,613 --> 00:03:02,617 帝国暦490年5月5日 22時40分 3 00:03:02,617 --> 00:03:06,054 ヤン艦隊の砲列が ラインハルト・ フォン・ローエングラムの旗艦 4 00:03:06,054 --> 00:03:09,924 ブリュンヒルトを まさに その射程内に捕えようとしていた 5 00:03:09,924 --> 00:03:12,827 閣下 首都星ハイネセンより 緊急通信です 6 00:03:12,827 --> 00:03:15,230 うん? 7 00:03:15,230 --> 00:03:17,165 無条件降伏だと? 8 00:03:17,165 --> 00:03:19,167 どういうつもりだ ハイネセンのやつらは! 9 00:03:19,167 --> 00:03:22,003 我々は まさに勝ちつつある いや 勝っている! 10 00:03:22,003 --> 00:03:25,573 帝国軍の喉に手をかけて 絞めあげてる最中なのに 11 00:03:25,573 --> 00:03:28,173 なんだって 今 戦闘を停止せねばならんのだ! 12 00:03:30,178 --> 00:03:33,481 どういうことか? 同盟軍は 前進を止めました 13 00:03:33,481 --> 00:03:37,352 それだけではなく 停戦を申し出ております 14 00:03:37,352 --> 00:03:40,588 司令官!お話しがあります 15 00:03:40,588 --> 00:03:42,824 君の言いたいことは 分かってるつもりだ 16 00:03:42,824 --> 00:03:46,528 だから 何も言わないでくれ 分かっておいでなら 17 00:03:46,528 --> 00:03:49,731 今一度 確認しておきましょう さあ! 18 00:03:49,731 --> 00:03:52,667 政府の命令など無視して 全面攻撃を命令なさい! 19 00:03:52,667 --> 00:03:55,937 そうすれば あなたは3つのものを 手に入れることができる 20 00:03:55,937 --> 00:04:00,275 ローエングラム公の命と 宇宙と 未来の歴史とをね 21 00:04:00,275 --> 00:04:03,645 決心なさい! あなたは このまま前進するだけで 22 00:04:03,645 --> 00:04:06,345 歴史の本道を歩くことになるんだ 23 00:04:10,919 --> 00:04:13,355 うん その手もあるね 24 00:04:13,355 --> 00:04:16,658 だけど 私のサイズに 合った服じゃなさそうだ 25 00:04:16,658 --> 00:04:18,927 全軍に 後退するように伝達してくれ 26 00:04:18,927 --> 00:04:21,427 グリーンヒル少佐 はい 閣下 27 00:04:24,566 --> 00:04:26,566 はあ… 28 00:04:28,870 --> 00:04:32,273 バカげている なぜ 急に こんなことになるのだ 29 00:04:32,273 --> 00:04:34,676 あと1歩で やつらは勝てたではないか! 30 00:04:34,676 --> 00:04:37,112 目前の勝利を 放棄すべき正当な理由が 31 00:04:37,112 --> 00:04:40,982 何か あったと言うのか! その理由は 3日前の 32 00:04:40,982 --> 00:04:44,382 エリューセラ星域での出来事に 端を発していた 33 00:04:47,822 --> 00:04:50,425 接近中の未確認航行物体に告ぐ 34 00:04:50,425 --> 00:04:52,994 こちらは帝国軍 ミッターマイヤー艦隊である 35 00:04:52,994 --> 00:04:55,930 ただちに停船せよ しからざれば攻撃する 36 00:04:55,930 --> 00:04:59,030 我は味方なり 司令官との面会を請う 37 00:05:01,169 --> 00:05:04,906 フロイライン・マリーンドルフ どうして ここへ? 38 00:05:04,906 --> 00:05:08,143 うん… すると今から バーミリオン星系に向かっても 39 00:05:08,143 --> 00:05:10,979 間に合わないと そう おっしゃるのですな? 40 00:05:10,979 --> 00:05:13,882 ええ 疾風ウォルフの 快足をもってしても 41 00:05:13,882 --> 00:05:17,752 ローエングラム公を お救い するのに間に合わないでしょう 42 00:05:17,752 --> 00:05:20,355 では どうせよと おっしゃるのです? 43 00:05:20,355 --> 00:05:23,725 フロイラインには 代案が おありと推測しますが 44 00:05:23,725 --> 00:05:25,727 ここからバーミリオン星系まで 45 00:05:25,727 --> 00:05:29,097 1隻の船ならともかく 艦隊が移動するとなると 46 00:05:29,097 --> 00:05:32,500 ゆうに4日はかかるでしょう 今日が5月2日ですから 47 00:05:32,500 --> 00:05:35,069 到着するのは5月6日になります 48 00:05:35,069 --> 00:05:39,374 私は ここに来る前にバーミリオン の戦況を確かめてまいりましたが 49 00:05:39,374 --> 00:05:42,277 同盟軍の攻勢は 尋常なものではありませんでした 50 00:05:42,277 --> 00:05:44,245 おそらく このまま推移すれば 51 00:05:44,245 --> 00:05:46,714 5月6日になって 戦場に到着しても 52 00:05:46,714 --> 00:05:49,217 すでに勝敗は決しているでしょう 53 00:05:49,217 --> 00:05:51,186 ところが ここから同盟首都 54 00:05:51,186 --> 00:05:53,788 惑星ハイネセンまでは 2日の距離にあります 55 00:05:53,788 --> 00:05:56,224 しかも同盟軍は バーミリオンでの戦いに 56 00:05:56,224 --> 00:05:58,159 すべての戦力を投入し 57 00:05:58,159 --> 00:06:01,963 おそらく首都星といえども 無防備な状態にあるでしょう 58 00:06:01,963 --> 00:06:04,732 これを突いて一挙に 同盟政府を降伏させ 59 00:06:04,732 --> 00:06:09,337 彼らから 前線のヤン提督に 戦闘停止を命令させるのです 60 00:06:09,337 --> 00:06:12,140 なるほど 戦場において救援するだけが 61 00:06:12,140 --> 00:06:14,409 援軍の在り方ではない というわけですか 62 00:06:14,409 --> 00:06:18,680 実は 私はローエングラム公に この提案を推して拒否されました 63 00:06:18,680 --> 00:06:21,382 戦って 勝つことにこそ意味があると 64 00:06:21,382 --> 00:06:24,018 それは 正しい価値観だと思いますが 65 00:06:24,018 --> 00:06:26,254 負ければ すべてが 無に帰してしまいます 66 00:06:26,254 --> 00:06:28,857 負けるとお考えですか ローエングラム公が 67 00:06:28,857 --> 00:06:31,693 はい 今回 このまま事態が進めば 68 00:06:31,693 --> 00:06:34,295 ローエングラム公は 生涯 最初で最後の 69 00:06:34,295 --> 00:06:36,798 ご経験を なさることになるでしょう 70 00:06:36,798 --> 00:06:38,766 その点については分かりました 71 00:06:38,766 --> 00:06:41,636 ですが フロイライン 今ひとつ問題があります 72 00:06:41,636 --> 00:06:45,507 つまり ヤン・ウェンリーが 政府の 停戦命令に従うかどうかです 73 00:06:45,507 --> 00:06:48,409 彼にしてみれば 勝利を目前にしているのに 74 00:06:48,409 --> 00:06:51,379 なにゆえ それを捨てて 停戦しなければならないのか 75 00:06:51,379 --> 00:06:53,882 しかも 一方で政府が 崩壊してしまえば 76 00:06:53,882 --> 00:06:57,752 彼自身が政治権力をも やすやすと 手に入れることができるのに 77 00:06:57,752 --> 00:07:01,723 そうではありませんか? それは私も考えました 78 00:07:01,723 --> 00:07:04,225 ですけど やはり ヤン・ウェンリーへの停戦命令は 79 00:07:04,225 --> 00:07:06,294 有効であろうと判断します 80 00:07:06,294 --> 00:07:08,596 彼が もし権力を握ろうとするなら 81 00:07:08,596 --> 00:07:11,132 これまでに 幾度も機会がありました 82 00:07:11,132 --> 00:07:13,535 でも 彼は その機会の すべてを見逃し 83 00:07:13,535 --> 00:07:17,872 辺境守備の 一軍人に甘んじてきたのです 84 00:07:17,872 --> 00:07:19,807 おそらくヤン・ウェンリーは 権力よりも 85 00:07:19,807 --> 00:07:22,710 貴重なものがあることを 理念ではなく皮膚で感じている 86 00:07:22,710 --> 00:07:24,712 人物なのではないかと思います 87 00:07:24,712 --> 00:07:27,649 それは 称賛すべき気質とは 思いますけれど 88 00:07:27,649 --> 00:07:30,952 卑劣を承知で この際は利用するしかありません 89 00:07:30,952 --> 00:07:34,522 ですが あるいは彼は 急に権力への欲望に目覚めて 90 00:07:34,522 --> 00:07:37,158 政府の命令を 無視するかもしれませんぞ 91 00:07:37,158 --> 00:07:39,794 なにしろ 今回の機会は 過去に例がないほど 92 00:07:39,794 --> 00:07:42,030 大きくて魅力的なものですからな 93 00:07:42,030 --> 00:07:44,465 ええ ありえないとは申せません 94 00:07:44,465 --> 00:07:47,302 ですが それでは 私の提案は無益なもので 95 00:07:47,302 --> 00:07:50,538 採用するに値しないと お考えでしょうか? 96 00:07:50,538 --> 00:07:53,241 いや 分かりました フロイライン・マリーンドルフ 97 00:07:53,241 --> 00:07:55,176 あなたの策に従いましょう 98 00:07:55,176 --> 00:07:58,613 どうも 他に手がなさそうだ ありがとうございます 99 00:07:58,613 --> 00:08:01,349 ご決断に心から感謝いたしますわ 100 00:08:01,349 --> 00:08:03,785 ですが 小官1人でというわけには まいりません 101 00:08:03,785 --> 00:08:05,720 理由は お分かりかと思いますが 102 00:08:05,720 --> 00:08:08,590 ええ ローエングラム公を お救いしに向かわず 103 00:08:08,590 --> 00:08:10,992 単独で ハイネセンを攻めたとなれば 104 00:08:10,992 --> 00:08:14,329 政治的野心を疑われることにも なりかねませんから 105 00:08:14,329 --> 00:08:16,264 で… どなたを同行者として 106 00:08:16,264 --> 00:08:18,967 功績を 分かち合われるおつもりですの? 107 00:08:18,967 --> 00:08:21,636 となりの星系にいて 連絡も取りやすく 108 00:08:21,636 --> 00:08:24,472 力量も信頼に値する男 109 00:08:24,472 --> 00:08:27,675 オスカー・フォン・ ロイエンタールです 110 00:08:27,675 --> 00:08:29,611 フロイラインには 異存がおありですか? 111 00:08:29,611 --> 00:08:33,915 いえ 当然のご人選と思います 112 00:08:33,915 --> 00:08:36,651 というわけだ 113 00:08:36,651 --> 00:08:39,053 ロイエンタール提督は どう お考えでしょう 114 00:08:39,053 --> 00:08:40,989 もしかして 帝国軍同士が 115 00:08:40,989 --> 00:08:44,926 相討つことになるのでは ありませんか? 116 00:08:44,926 --> 00:08:48,663 卿は 意外に文学的想像力が豊かだな 117 00:08:48,663 --> 00:08:51,065 ロイエンタールは俺の友人だし 118 00:08:51,065 --> 00:08:53,001 俺は物分かりの悪いやつと 119 00:08:53,001 --> 00:08:56,537 10年も友人づきあいができるほど 温和な人間ではない 120 00:08:56,537 --> 00:08:59,874 卿が想像の翼を羽ばたかせるのは 自由だが 121 00:08:59,874 --> 00:09:03,277 無用な誤解を招くがごとき言動は 慎めよ 122 00:09:03,277 --> 00:09:06,547 はっ すみません 出過ぎたことを申しました 123 00:09:06,547 --> 00:09:09,050 我が隊に第一級臨戦態勢を敷け 124 00:09:09,050 --> 00:09:11,919 なぜでありますか? 常に敵の奇襲に備えるのは 125 00:09:11,919 --> 00:09:13,888 武人として当然のことではないか 126 00:09:13,888 --> 00:09:16,224 ここは敵国のただ中であって 127 00:09:16,224 --> 00:09:19,560 故郷の小学校の裏庭ではない! 教師の目を盗んで 128 00:09:19,560 --> 00:09:22,163 昼寝を楽しんでいるような わけにはいかんのだ! 129 00:09:22,163 --> 00:09:24,699 はっ あ… 失礼しました ただちに! 130 00:09:24,699 --> 00:09:29,099 我ながら どうも度が 過ぎているとは思わんでもないが 131 00:09:33,241 --> 00:09:35,743 隣接する ミッターマイヤー艦隊のうち 132 00:09:35,743 --> 00:09:37,779 バイエルライン少将の部隊が 133 00:09:37,779 --> 00:09:40,581 妙に 厳重な警戒体制を敷いています 134 00:09:40,581 --> 00:09:45,186 何か敵の伏兵の情報でも あったのでしょうか 135 00:09:45,186 --> 00:09:48,586 ミッターマイヤー提督より入電! 映像を出せ 136 00:09:51,392 --> 00:09:53,695 なるほど もし 俺がこの提案を 137 00:09:53,695 --> 00:09:56,597 拒否するだけでなく 妨害する動きをするなら 138 00:09:56,597 --> 00:09:58,966 一戦も辞さぬということか 139 00:09:58,966 --> 00:10:01,769 ミッターマイヤーの 指図ではなさそうだな 140 00:10:01,769 --> 00:10:07,041 バイエルラインの青二才が 勝手にやってることか… 141 00:10:07,041 --> 00:10:10,378 私は愚行の極みを しているのではないかしら 142 00:10:10,378 --> 00:10:13,281 尋常ならざる 野心と才能の持ち主に 143 00:10:13,281 --> 00:10:15,583 わざわざ 絶好の機会が存在することを 144 00:10:15,583 --> 00:10:18,219 教えてしまったのではないかしら 145 00:10:18,219 --> 00:10:20,188 今から 戦場まで主君を救いに行っても 146 00:10:20,188 --> 00:10:23,057 間に合わないとなれば 野心のない者さえ 147 00:10:23,057 --> 00:10:25,960 不敵な意思を 芽生えさせるであろうに 148 00:10:25,960 --> 00:10:30,765 もし 反転しなかったら どうなるかか… 149 00:10:30,765 --> 00:10:33,634 帝国軍の双璧といわれる 2人のうち 150 00:10:33,634 --> 00:10:36,037 私が この提案を持ちかける相手に 151 00:10:36,037 --> 00:10:38,473 あえて ロイエンタール提督ではなく 152 00:10:38,473 --> 00:10:40,942 ミッターマイヤー提督を 選んだのは 153 00:10:40,942 --> 00:10:45,913 潜在的に この危険を 感じていたからではなかったの? 154 00:10:45,913 --> 00:10:48,349 分かった 卿が言うなら 私も 155 00:10:48,349 --> 00:10:51,018 フロイライン・マリーンドルフの 提案に従おう 156 00:10:51,018 --> 00:10:54,455 ただちに全部隊に ハイネセンへの侵攻を指示するが 157 00:10:54,455 --> 00:10:57,492 細部の検討をするため そちらに出向かせてもらおう 158 00:10:57,492 --> 00:11:01,229 無論 艦隊を 合流させてからのことだがな 159 00:11:01,229 --> 00:11:03,865 ミッターマイヤーのほうを 呼び寄せでもしたら 160 00:11:03,865 --> 00:11:05,800 人質にでもするつもりかと 161 00:11:05,800 --> 00:11:07,735 血の気の多い バイエルラインあたりが 162 00:11:07,735 --> 00:11:11,038 過激な反応を するかもしれんからな 163 00:11:11,038 --> 00:11:14,338 無理をする必要はない 今はな 164 00:11:16,844 --> 00:11:18,813 ミッターマイヤーと ロイエンタール 165 00:11:18,813 --> 00:11:21,382 帝国軍の双璧とうたわれる両名が 166 00:11:21,382 --> 00:11:24,285 合計3万隻にもおよぶ 艦隊を率いて 167 00:11:24,285 --> 00:11:27,588 自由惑星同盟の 首都星ハイネセンに襲来したのは 168 00:11:27,588 --> 00:11:30,124 5月5日のことである 169 00:11:30,124 --> 00:11:32,827 私は銀河帝国軍 上級大使の 170 00:11:32,827 --> 00:11:34,862 ウォルフガング・ ミッターマイヤーである 171 00:11:34,862 --> 00:11:37,799 首都の上空は すでに我が軍の制圧下にある 172 00:11:37,799 --> 00:11:42,236 私は自由惑星同盟政府に対して 全面講和を要求する 173 00:11:42,236 --> 00:11:46,007 ただちに全ての軍事活動を停止し 武装を解除せよ 174 00:11:46,007 --> 00:11:47,942 しからざれば 首都星ハイネセンに対して 175 00:11:47,942 --> 00:11:50,244 無差別攻撃を加えるであろう 176 00:11:50,244 --> 00:11:53,915 返答まで3時間の猶予を与えるが 177 00:11:53,915 --> 00:11:56,615 その前に 余興をひとつ見せてやろう 178 00:12:02,623 --> 00:12:04,623 ウワーッ! 179 00:12:07,361 --> 00:12:09,361 おい… 180 00:12:11,666 --> 00:12:14,402 これでいいでしょう 権力者という者は 181 00:12:14,402 --> 00:12:18,306 一般市民の家が炎上したところで 眉ひとつ動かしませんが 182 00:12:18,306 --> 00:12:22,910 政府関係の建物が破壊されると 血の気を失うものですから 183 00:12:22,910 --> 00:12:25,413 市民にはできるだけ 害を及ぼしたくないと 184 00:12:25,413 --> 00:12:29,213 お考えですのね まあ 私も平民の出ですから 185 00:12:31,219 --> 00:12:34,255 提督 今 ひとつ 通達していただけません? 186 00:12:34,255 --> 00:12:37,692 降伏すれば 最高責任者の罪は問わないと 187 00:12:37,692 --> 00:12:41,162 彼らの決断に ひとつの方向を 示すと思うのですけれど 188 00:12:41,162 --> 00:12:44,599 それも筋からいえば 情けない話ですな 189 00:12:44,599 --> 00:12:46,901 ですが おっしゃるとおり 効果があるでしょう 190 00:12:46,901 --> 00:12:48,901 そう 伝えましょう 191 00:12:51,873 --> 00:12:55,409 結論を言おう 帝国軍の要求を受け入れる 192 00:12:55,409 --> 00:12:59,080 無差別攻撃を明言されては そうするしかあるまい 193 00:12:59,080 --> 00:13:01,148 議長! 私は正式に 194 00:13:01,148 --> 00:13:04,619 リコールでも されたのかね? そうではないはずだ 195 00:13:04,619 --> 00:13:08,489 とすれば 戦争終結の決定を下す 責任と資格が 196 00:13:08,489 --> 00:13:10,558 私の手中にあるということだ 197 00:13:10,558 --> 00:13:15,263 その責任を その資格において 果たすだけのことだよ 198 00:13:15,263 --> 00:13:17,198 どうか やめてください 199 00:13:17,198 --> 00:13:19,433 共和政治の制度を悪用して 200 00:13:19,433 --> 00:13:23,337 その精神と歴史を おとしめる権利はあなたにはない 201 00:13:23,337 --> 00:13:25,806 あなた1人で アーレ・ハイネセン以来 202 00:13:25,806 --> 00:13:28,175 2世紀半におよぶ 民主国家の成果を 203 00:13:28,175 --> 00:13:31,679 台無しにしてしまう つもりなんですか? 204 00:13:31,679 --> 00:13:35,049 ずいぶんと偉そうなことを 言うものだね アイランズ君 205 00:13:35,049 --> 00:13:38,252 君は忘れたかもしれないが 私は よく覚えているよ 206 00:13:38,252 --> 00:13:40,488 どうにかして 閣僚になりたいと 207 00:13:40,488 --> 00:13:45,326 私の所へ 高価な銀の壺を持参した 夜のことをね 208 00:13:45,326 --> 00:13:47,561 それに君が どういう企業から どれだけ 209 00:13:47,561 --> 00:13:49,864 献金や リベートを受け取っているか 210 00:13:49,864 --> 00:13:53,334 選挙資金を分配されたとき そのうちの何割をため込んで 211 00:13:53,334 --> 00:13:55,269 別荘を買うのに回したか 212 00:13:55,269 --> 00:13:58,906 公費を使った旅行に 奥さん以外の 女性を連れていったことが 213 00:13:58,906 --> 00:14:00,841 何度あるか? 214 00:14:00,841 --> 00:14:03,644 私は みんな知っているんだ 215 00:14:03,644 --> 00:14:06,547 おっしゃるとおり 私は三流の政治業者です 216 00:14:06,547 --> 00:14:08,516 現在の地位に つくことができたのも 217 00:14:08,516 --> 00:14:11,385 あなたのおかげです あなたには恩義がある 218 00:14:11,385 --> 00:14:14,722 だからこそ あなたが亡国の為政者として 219 00:14:14,722 --> 00:14:17,992 歴史に悪名を残すのを 見逃すわけにはいかないんです! 220 00:14:17,992 --> 00:14:20,027 どうか考え直してください 221 00:14:20,027 --> 00:14:23,431 降伏を拒否すれば 我々はここで 死ぬかもしれませんが 222 00:14:23,431 --> 00:14:27,301 その間に ヤン提督が ローエングラム公をうち滅ぼし 223 00:14:27,301 --> 00:14:31,072 同盟は救われるんです ローエングラム公が死ねば 224 00:14:31,072 --> 00:14:33,007 帝国軍が本国へ帰り 225 00:14:33,007 --> 00:14:35,643 彼らが 次の覇権をめぐって争う間に 226 00:14:35,643 --> 00:14:39,246 ヤン提督が国防体制を 立て直してくれるでしょう 227 00:14:39,246 --> 00:14:42,183 私たちの次の政治指導者が 彼と協力して… 228 00:14:42,183 --> 00:14:45,619 フンッ ヤン・ウェンリーか 考えてもみたまえ 229 00:14:45,619 --> 00:14:49,056 ヤン・ウェンリーの愚か者が かつて この惑星を守っていた 230 00:14:49,056 --> 00:14:51,559 「アルテミスの首飾り」を 破壊しなければ 231 00:14:51,559 --> 00:14:55,296 我々は侵略者から 自分自身を 守ることができたのだぞ 232 00:14:55,296 --> 00:14:57,331 こうなったのも ヤン・ウェンリーのせいだ 233 00:14:57,331 --> 00:15:01,469 何が 名将だ!先の見えない とんだ愚か者ではないか! 234 00:15:01,469 --> 00:15:05,072 「アルテミスの首飾り」 「イゼルローン要塞」 235 00:15:05,072 --> 00:15:07,575 あなたがたは まだ気づかないのですかな? 236 00:15:07,575 --> 00:15:09,510 ハードウエアが いかに強大でも 237 00:15:09,510 --> 00:15:12,780 それを使う人間が 肝心なのだということに 238 00:15:12,780 --> 00:15:16,484 こうなる危険性を ヤンはずっと 指摘しておったではないですか 239 00:15:16,484 --> 00:15:20,354 それに取りあわず こうした事態に 至らしめたのは誰です? 240 00:15:20,354 --> 00:15:22,723 しかも そうした最悪の状況の中で 241 00:15:22,723 --> 00:15:26,494 起死回生を図ろうとしている ヤンの妨害にしかならない 242 00:15:26,494 --> 00:15:28,429 あえて行おうというのですか? 243 00:15:28,429 --> 00:15:32,233 自分たち自身の 身の安全と引き換えに 244 00:15:32,233 --> 00:15:36,103 要するに 同盟は命数を使い果たしたのです 245 00:15:36,103 --> 00:15:38,139 政治家は権力をもてあそび 246 00:15:38,139 --> 00:15:40,441 軍人は アムリッツァに見られるように 247 00:15:40,441 --> 00:15:42,777 投機的な冒険にのめり込んで 248 00:15:42,777 --> 00:15:46,113 いや 市民すら政治を 一部の政治業者に委ね 249 00:15:46,113 --> 00:15:50,351 それに参加しようとしなかった! 民主主義を口で唱えながら 250 00:15:50,351 --> 00:15:53,254 それを 維持する努力を怠ったのです 251 00:15:53,254 --> 00:15:56,957 専制政治が倒れるのは 君主と重臣の罪だが 252 00:15:56,957 --> 00:16:01,295 民主政治が崩壊するのは すべての市民の責任ですからな 253 00:16:01,295 --> 00:16:03,631 演説は それで終わりかね? 254 00:16:03,631 --> 00:16:06,634 そう 演説すべきときは すでに終わった 255 00:16:06,634 --> 00:16:09,770 もはや行動のときだ 256 00:16:09,770 --> 00:16:11,739 よろしいかな? トリューニヒト議長 257 00:16:11,739 --> 00:16:14,575 わしは力ずくでも あなたを止めてみせますぞ 258 00:16:14,575 --> 00:16:17,078 司令! それではクーデターと同じだ! 259 00:16:17,078 --> 00:16:19,113 おい… なんだ? 260 00:16:19,113 --> 00:16:21,113 な… なっ 261 00:16:23,584 --> 00:16:27,388 地球教徒 なっ… 262 00:16:27,388 --> 00:16:29,788 彼らを監禁してくれたまえ 263 00:16:33,294 --> 00:16:36,230 一体 首都はどうなってるんだ! 帝国軍に攻められて 264 00:16:36,230 --> 00:16:40,034 降伏したのさ 全面降伏 城下の盟ってやつだ 265 00:16:40,034 --> 00:16:42,436 両手をあげて助けてくれ! ていうわけさ 266 00:16:42,436 --> 00:16:44,371 じゃ… 同盟はどうなるんだ? 267 00:16:44,371 --> 00:16:47,274 どうなる? 帝国の一部になるだけさ 268 00:16:47,274 --> 00:16:49,977 形だけの自治くらいは 認めてもらえるかもしれんが 269 00:16:49,977 --> 00:16:53,447 それこそ形だけ しかも そう長いことじゃなかろうよ 270 00:16:53,447 --> 00:16:55,382 その先は? 知るか! 271 00:16:55,382 --> 00:16:58,219 ローエングラム公に聞け! 金髪の小僧に! 272 00:16:58,219 --> 00:17:01,255 やつが これから俺たちの ご主人様になるんだからな! 273 00:17:01,255 --> 00:17:03,824 俺たちは正義だったはずだ! あん? 274 00:17:03,824 --> 00:17:06,393 なんだって 暗黒の専制勢力に対して 275 00:17:06,393 --> 00:17:08,362 正義が 膝をつかねばならないんだ! 276 00:17:08,362 --> 00:17:10,865 世の中 間違っている! 277 00:17:10,865 --> 00:17:12,933 これは 政府の利敵行為だ 278 00:17:12,933 --> 00:17:15,703 そうだ!政府は我々を裏切った! 279 00:17:15,703 --> 00:17:18,372 政府こそが 国民と信頼と期待を裏切ったんだ 280 00:17:18,372 --> 00:17:20,708 やつらは売国奴だ! あんなやつらの命令に 281 00:17:20,708 --> 00:17:22,643 従う必要はない! そうだ! 282 00:17:22,643 --> 00:17:25,312 そのとおりだ まったくだ! だが… 283 00:17:25,312 --> 00:17:27,815 ハイネセンには 俺の家族がいるんだ 284 00:17:27,815 --> 00:17:31,152 もし降伏を拒否して 無差別攻撃を受けていたら 285 00:17:31,152 --> 00:17:34,722 政府が降伏を 承知してくれたからこそ 家族は… 286 00:17:34,722 --> 00:17:38,058 貴様… 何を言っとるかー! 287 00:17:38,058 --> 00:17:41,562 ヤン提督にお願いしよう 真の正義を貫いてくれと 288 00:17:41,562 --> 00:17:44,465 理不尽な停戦命令に 従わないでほしいと! 289 00:17:44,465 --> 00:17:46,400 そうだ!そうしよう そうだ! 290 00:17:46,400 --> 00:17:48,702 ヤン提督に よし ヤン提督だ! 291 00:17:48,702 --> 00:17:51,302 ミラクル・ヤンに頼もう! ようし! 292 00:17:56,110 --> 00:17:58,045 シェーンコップ中将 293 00:17:58,045 --> 00:18:00,548 よう わざわざ 会いに来てくれたからには 294 00:18:00,548 --> 00:18:03,784 期待していいのかな? お前さんも俺と同意見で 295 00:18:03,784 --> 00:18:08,184 ヤン提督は 停戦命令なんぞ 無視すべきだと思っているっと 296 00:18:10,558 --> 00:18:14,161 お気持ちは よく分かります でも もし そんなことをしたら 297 00:18:14,161 --> 00:18:16,864 悪い前例が残ります 軍司令官が 298 00:18:16,864 --> 00:18:18,899 自分自身の判断を よりどころにして 299 00:18:18,899 --> 00:18:21,702 政府の命令を 無視することが許されるなら 300 00:18:21,702 --> 00:18:26,207 民主政治は最も重要なことを… 国民の代表が軍事力を 301 00:18:26,207 --> 00:18:29,410 コントロールするという機能を 果たせなくなります 302 00:18:29,410 --> 00:18:32,713 ヤン提督に そんな前例が 作れると思いますか? 303 00:18:32,713 --> 00:18:34,782 それでは聞くがな もし政府が 304 00:18:34,782 --> 00:18:37,885 無抵抗の 民衆を虐殺するように命令したら 305 00:18:37,885 --> 00:18:40,854 軍人は それに 従わねばならんと思うのかね? 306 00:18:40,854 --> 00:18:43,090 そんなことは無論許されません 307 00:18:43,090 --> 00:18:45,659 そんな非人道的な 軍人という以前に 308 00:18:45,659 --> 00:18:47,661 人間としての 尊厳を問われるようなときには 309 00:18:47,661 --> 00:18:50,464 まず 人間で あらねばならないと思います 310 00:18:50,464 --> 00:18:52,766 そのときは 政府の命令であっても 311 00:18:52,766 --> 00:18:54,702 背かなくてはならないでしょう 312 00:18:54,702 --> 00:18:57,571 でも だからこそ それ以外の場合には 313 00:18:57,571 --> 00:19:00,541 民主国家の軍人として 行動しなくてはならないときには 314 00:19:00,541 --> 00:19:03,377 政府の命令には 従うべきだと思います 315 00:19:03,377 --> 00:19:06,647 でなければ 例え人道のために立ったとしても 316 00:19:06,647 --> 00:19:09,883 恣意によるものだと そしられるでしょう 317 00:19:09,883 --> 00:19:12,586 坊や… いや ユリアン・ミンツ中尉 318 00:19:12,586 --> 00:19:14,521 お前さんの言うことは まったく正しい 319 00:19:14,521 --> 00:19:17,424 だが その程度の理屈は 俺にも分かっているんだ 320 00:19:17,424 --> 00:19:20,194 分かっていて なお 言わずにはいられないのさ 321 00:19:20,194 --> 00:19:22,263 ええ… よく分かります 322 00:19:22,263 --> 00:19:25,165 ヤン提督には 何より まず政治的野心がない 323 00:19:25,165 --> 00:19:27,334 政治の才能もないかもしれない 324 00:19:27,334 --> 00:19:30,237 だがヨブ・トリューニヒトのように 国家を私物化し 325 00:19:30,237 --> 00:19:32,806 政治権力をアクセサリーにし 326 00:19:32,806 --> 00:19:35,376 自分に期待した市民を 裏切るようなマネは 327 00:19:35,376 --> 00:19:37,311 ヤン提督には できんだろう 328 00:19:37,311 --> 00:19:39,913 ええ… ヤン提督の能力は 329 00:19:39,913 --> 00:19:42,182 歴史上の 大政治家たちに比較すれば 330 00:19:42,182 --> 00:19:44,118 取るに 足らないものかもしれないが 331 00:19:44,118 --> 00:19:48,956 この際 比較の対象は ヨブ・トリューニヒト1人でいいんだ 332 00:19:48,956 --> 00:19:51,492 そう思います 僕も そう思います 333 00:19:51,492 --> 00:19:53,427 でもトリューニヒト議長は 334 00:19:53,427 --> 00:19:56,063 市民多数の意思で 元首に選ばれたんです 335 00:19:56,063 --> 00:19:59,533 それが錯覚だったとしても その錯覚を 是正するのは 336 00:19:59,533 --> 00:20:01,902 市民自身ではなくては いけないんです 337 00:20:01,902 --> 00:20:05,773 例え どんなに時間がかかっても 職業軍人が武力によって 338 00:20:05,773 --> 00:20:09,376 市民の誤りを正そうとしては いけないんです そうなったら 339 00:20:09,376 --> 00:20:12,313 2年前の旧国軍事会議の クーデターと同じです 340 00:20:12,313 --> 00:20:16,150 軍隊が国民を指導し 支配することになってしまいます 341 00:20:16,150 --> 00:20:18,385 銀河帝国は和平の代償として 342 00:20:18,385 --> 00:20:21,322 ヤン提督の命を 要求するかもしれない 343 00:20:21,322 --> 00:20:24,191 政府が それに応じて ヤン提督に死を命じたら 344 00:20:24,191 --> 00:20:28,062 そのときはどうする? 唯々諾々として それに従うのかね 345 00:20:28,062 --> 00:20:30,431 そんなことはさせません 絶対に! 346 00:20:30,431 --> 00:20:33,167 だが 政府の命令には 従わねばならんのだろう? 347 00:20:33,167 --> 00:20:36,470 それは提督の問題です これは僕の問題です 348 00:20:36,470 --> 00:20:38,939 僕はローエングラム公に屈服した 政府の命令になど 349 00:20:38,939 --> 00:20:41,809 従う気ありません 僕が従うのは 350 00:20:41,809 --> 00:20:44,311 ヤン・ウェンリー提督 ただ お一人の命令です 351 00:20:44,311 --> 00:20:46,547 提督が停戦を受け入れられたから 352 00:20:46,547 --> 00:20:48,482 僕も 受け入れねばならないんです 353 00:20:48,482 --> 00:20:50,484 ユリアン 失礼な言いぐさだが 354 00:20:50,484 --> 00:20:53,921 お前さん 大人になったな 俺も お前さんに見習って 355 00:20:53,921 --> 00:20:55,923 受け入れるべきは 受け入れるとしよう 356 00:20:55,923 --> 00:20:58,559 だが どうしても 譲れないところもある 357 00:20:58,559 --> 00:21:02,059 それもまた お前さんの言うとおりだがな 358 00:21:04,264 --> 00:21:08,969 そうか… ローエングラム公は ご無事か? 359 00:21:08,969 --> 00:21:11,038 フロイライン・マリーンドルフ 360 00:21:11,038 --> 00:21:14,308 あなたの知謀は 一個艦隊の武力に勝る 361 00:21:14,308 --> 00:21:16,643 どうか 今後も ローエングラム公のために 362 00:21:16,643 --> 00:21:19,179 よき知謀を 発揮していただきたいものです 363 00:21:19,179 --> 00:21:23,484 恐れ入ります 両提督の ご協力があってこそですわ 364 00:21:23,484 --> 00:21:26,053 お二方とも ローエングラム公の両翼として 365 00:21:26,053 --> 00:21:28,589 公を助けてさしあげてください 366 00:21:28,589 --> 00:21:31,091 正直に申して ここまで うまくいくとは 367 00:21:31,091 --> 00:21:33,827 思いませんでしたな お見事です 368 00:21:33,827 --> 00:21:36,797 同盟政府のやつらも 存外ふがいない 369 00:21:36,797 --> 00:21:41,301 まったく 同盟の権力者どもが 自己の命をものともせず 370 00:21:41,301 --> 00:21:43,237 要求を拒否したらどうしようかと 371 00:21:43,237 --> 00:21:45,506 私も内心思っておりました 372 00:21:45,506 --> 00:21:50,177 こんなことを言うのも妙ですが 情けない連中ですな 373 00:21:50,177 --> 00:21:52,913 1億人が 1世紀かけて築き上げたものを 374 00:21:52,913 --> 00:21:56,183 たった1人が 1日で壊して しまうことができるのですわ 375 00:21:56,183 --> 00:21:59,953 国が滅びるときとは こういうものですかな… 376 00:21:59,953 --> 00:22:02,189 「ゴールデンバウム朝銀河帝国」 「フェザーン」 377 00:22:02,189 --> 00:22:04,124 そして「自由惑星同盟」 378 00:22:04,124 --> 00:22:08,095 我々は 宇宙を分割支配した 3大勢力が滅びるところを 379 00:22:08,095 --> 00:22:11,665 目の当たりにしたわけです 誰かの いいぐさではないですが 380 00:22:11,665 --> 00:22:15,365 後世の歴史家が さぞ うらやましがることでしょうな 381 00:22:18,505 --> 00:22:21,375 停戦は致し方ありますまい 政府の決定ですから 382 00:22:21,375 --> 00:22:24,711 ですが もし あなたがた自由惑星同盟軍が 383 00:22:24,711 --> 00:22:26,647 自己保身のために メルカッツ提督を 384 00:22:26,647 --> 00:22:28,682 スケープゴートにしようと 考えているなら 385 00:22:28,682 --> 00:22:31,885 小官は そのようなエゴイズムを 感受する気はありませんぞ! 386 00:22:31,885 --> 00:22:34,254 シュナイダー! いや メルカッツ提督 387 00:22:34,254 --> 00:22:38,559 中佐の言うことはもっともです ああ… 388 00:22:38,559 --> 00:22:42,429 メルカッツ提督には 艦を降りていただきます 389 00:22:42,429 --> 00:22:44,498 私には未来を 予知することはできません 390 00:22:44,498 --> 00:22:47,568 ですが シュナイダー中佐が言ったように 391 00:22:47,568 --> 00:22:50,471 同盟政府が あなたを帝国軍に差し出して 392 00:22:50,471 --> 00:22:52,906 媚を売ることは 十分に考えられます 393 00:22:52,906 --> 00:22:54,842 私は同盟の人間で 394 00:22:54,842 --> 00:22:57,511 政府の愚行に つきあわねばなりません 395 00:22:57,511 --> 00:22:59,446 しかし あなたに そんな義務はない 396 00:22:59,446 --> 00:23:01,949 沈みかけた船から 退去していただかねば 397 00:23:01,949 --> 00:23:04,618 私が困ります 398 00:23:04,618 --> 00:23:09,790 戦艦を何隻か お連れください 無論 燃料や食料も人員もです 399 00:23:09,790 --> 00:23:12,025 ひとたび敗者の位置に立てば 400 00:23:12,025 --> 00:23:14,995 同盟軍が以前と同水準の武力を 保有することは 401 00:23:14,995 --> 00:23:16,997 論外となるでしょう 402 00:23:16,997 --> 00:23:19,867 いずれ 帝国軍の手で破壊されるものなら 403 00:23:19,867 --> 00:23:22,135 隠しておいても よろしいと思います 404 00:23:22,135 --> 00:23:25,005 戦闘で破壊されたか 自爆したか 405 00:23:25,005 --> 00:23:29,276 そう報告しておけば 確認することは困難ですからね 406 00:23:29,276 --> 00:23:31,845 ありがたいお話です ヤン提督 407 00:23:31,845 --> 00:23:34,748 ですが あなたが残って 責任を お取りになるのに 408 00:23:34,748 --> 00:23:39,486 私だけが逃亡して 身の安全を 図れるとお思いですか? 409 00:23:39,486 --> 00:23:43,657 そう おっしゃると思っていました ですが メルカッツ提督 410 00:23:43,657 --> 00:23:47,094 私は あなたに楽をしていただこう とは思っていないのです 411 00:23:47,094 --> 00:23:49,897 実は もっと ふらちなことを考えていまして 412 00:23:49,897 --> 00:23:54,535 後日のために 同盟軍の一部を それも 最も濃いエッセンスを 413 00:23:54,535 --> 00:23:58,005 保存していただこうと 思っているのですよ 414 00:23:58,005 --> 00:24:01,675 つまり 大昔の ロビンフッドの伝説で言えば 415 00:24:01,675 --> 00:24:05,575 「動くシャーウッドの森」を 率いていただきたいのです 416 00:24:07,481 --> 00:24:10,150 その話 乗った! 417 00:24:10,150 --> 00:24:13,720 自由惑星同盟の自由とは 自主独立ということだ 418 00:24:13,720 --> 00:24:17,624 帝国の属領に成り下がった同盟に 俺は なんの未練もない 419 00:24:17,624 --> 00:24:21,194 自尊心のない女に 魅力がないのと同じでね 420 00:24:21,194 --> 00:24:23,997 メルカッツ提督に ついていかせてもらおう 421 00:24:23,997 --> 00:24:28,001 シェーンコップ閣下の ご許可をいただければ私も 422 00:24:28,001 --> 00:24:30,170 私も亡命者の子です 423 00:24:30,170 --> 00:24:32,506 いまさら帝国の下風には立てない 424 00:24:32,506 --> 00:24:35,275 メルカッツ提督の お供をさせていただきます 425 00:24:35,275 --> 00:24:38,912 ですが 私としては いつか必ず ヤン提督に 426 00:24:38,912 --> 00:24:40,847 私どもの 総指揮をとっていただきたい 427 00:24:40,847 --> 00:24:42,783 あなたが いらっしゃるかぎり 428 00:24:42,783 --> 00:24:46,153 ローゼンリッター連隊は あなたに忠誠を誓うものです 429 00:24:46,153 --> 00:24:48,455 軍閥化の第一歩だな 430 00:24:48,455 --> 00:24:51,358 国家や政府ではなく 個人に忠誠を誓うとはな 431 00:24:51,358 --> 00:24:54,227 困ったものだ 432 00:24:54,227 --> 00:24:57,264 そう言われるキャゼルヌ中将は どうなさるのです? 433 00:24:57,264 --> 00:25:00,767 私は残る というより残らざるをえん 434 00:25:00,767 --> 00:25:04,371 将官が大量に消えては 帝国軍の疑惑を招くだろう 435 00:25:04,371 --> 00:25:07,674 ヤン司令官とともに 処置を待つさ 436 00:25:07,674 --> 00:25:10,077 我々も そうせざるをえんでしょうな 437 00:25:10,077 --> 00:25:14,377 肝心のメルカッツ提督の ご意向はいかがですかな? 438 00:25:18,585 --> 00:25:22,389 私は亡命してきたとき あなたに すべてを委ねた 439 00:25:22,389 --> 00:25:24,324 そうせよと言われるのなら 440 00:25:24,324 --> 00:25:27,227 喜んで あなたの ご希望に従いましょう 441 00:25:27,227 --> 00:25:30,130 ありがとうございます ご苦労をおかけする 442 00:25:30,130 --> 00:25:33,367 さあて! そうと決まったら 早速 準備だ 443 00:25:33,367 --> 00:25:36,269 グズグズしてると 帝国軍の 他の艦隊が駆けつけてきて 444 00:25:36,269 --> 00:25:39,269 姿をくらますどころでは なくなるからな 445 00:25:50,350 --> 00:25:54,021 ごめん フレデリカ 446 00:25:54,021 --> 00:25:58,725 他人がこんなことをしたら バカに違いないと私も思うだろう 447 00:25:58,725 --> 00:26:02,596 だけど 私は結局 こんな生き方しかできないんだ 448 00:26:02,596 --> 00:26:04,965 かえって私の好きな連中に 449 00:26:04,965 --> 00:26:07,868 迷惑をかけると 分かっているのにな 450 00:26:07,868 --> 00:26:09,803 私には分かりません 451 00:26:09,803 --> 00:26:13,040 あなたの なせることが 正しいのかどうか 452 00:26:13,040 --> 00:26:15,776 でも 私に分かっていることがあります 453 00:26:15,776 --> 00:26:17,844 それは あなたのなさることが 454 00:26:17,844 --> 00:26:21,081 私は どうしようもなく 好きだということです 455 00:26:21,081 --> 00:26:23,081 あっ… 456 00:26:30,724 --> 00:26:34,424 私は勝利を譲られた… というわけか 457 00:26:36,530 --> 00:26:39,199 情けない話だな 458 00:26:39,199 --> 00:26:41,568 私は 本来 自分のものではない勝利を 459 00:26:41,568 --> 00:26:45,472 譲ってもらったのか… まるで乞食のように 460 00:26:45,472 --> 00:26:49,042 フンッ フッフッフ… 461 00:26:49,042 --> 00:26:50,977 宇宙暦799年 462 00:26:50,977 --> 00:26:54,848 帝国暦490年5月5日 22時40分 463 00:26:54,848 --> 00:26:56,783 足かけ12日間に渡った 464 00:26:56,783 --> 00:26:59,219 バーミリオン聖域会戦が終結した 465 00:26:59,219 --> 00:27:02,889 帝国軍の艦艇損傷率87.2% 466 00:27:02,889 --> 00:27:05,392 将兵の死傷率72% 467 00:27:05,392 --> 00:27:08,428 同盟軍の損傷率81.6% 468 00:27:08,428 --> 00:27:11,064 死傷率73.7% 469 00:27:11,064 --> 00:27:14,935 両軍合わせて 250万人の命が失われた 470 00:27:14,935 --> 00:27:16,935 まさに死闘であった 471 00:27:21,608 --> 00:27:24,077 停戦によって 初めて対面する両雄 472 00:27:24,077 --> 00:27:26,079 ヤンを自らの陣営に招く ラインハルト 473 00:27:26,079 --> 00:27:28,081 同盟を征服したラインハルトは 474 00:27:28,081 --> 00:27:30,584 帝国に帰り ついに皇帝に即位する 475 00:27:30,584 --> 00:27:32,519 次回 銀河英雄伝説 476 00:27:32,519 --> 00:27:35,088 第54話 「皇帝ばんざい!」 477 00:27:35,088 --> 00:27:37,023 ひとつの時代が終わり 478 00:27:37,023 --> 00:27:40,523 銀河は 新たな伝説の幕開きを迎える 479 00:30:18,852 --> 00:30:21,655 バーミリオン会戦の勝者が いずれであったのか 480 00:30:21,655 --> 00:30:24,124 歴史家の評価の 分かれるところである 481 00:30:24,124 --> 00:30:26,559 戦略的には帝国軍の勝利だが 482 00:30:26,559 --> 00:30:29,129 戦術的には同盟軍の勝利 483 00:30:29,129 --> 00:30:31,097 戦場では同盟軍が勝利し 484 00:30:31,097 --> 00:30:34,301 戦場以外では帝国軍が勝利した 485 00:30:34,301 --> 00:30:36,236 さまざまな見解が示されたが 486 00:30:36,236 --> 00:30:41,541 いずれも 万人を納得させるだけの 説得力を有するには至っていない 487 00:30:41,541 --> 00:30:43,476 当事者たちの心境は明白で 488 00:30:43,476 --> 00:30:46,980 双方とも 自分を勝利者だとは みなしていなかった 489 00:30:46,980 --> 00:30:48,949 あるいは 過大評価かもしれないが 490 00:30:48,949 --> 00:30:53,586 2人とも 相手の成功した面を 誰よりも高く評価しており 491 00:30:53,586 --> 00:30:57,986 むしろ コンプレックスの存在すら 自覚していたのである 492 00:31:00,961 --> 00:31:03,930 すでに各地に散っていた 帝国艦隊が再集結し 493 00:31:03,930 --> 00:31:06,900 その総数は およそ4万隻に達します 494 00:31:06,900 --> 00:31:10,971 メルカッツ提督に 早めに 離脱していただいて 正解でしたね 495 00:31:10,971 --> 00:31:13,640 結局 どのくらい 落ちのびさせたんです? 496 00:31:13,640 --> 00:31:16,876 60隻 1万1千820名 497 00:31:16,876 --> 00:31:19,279 公式記録では みんな 戦死者だ 498 00:31:19,279 --> 00:31:23,850 ささやかな数ですな 外の帝国軍の大群に比べれば 499 00:31:23,850 --> 00:31:26,453 我々に残された艦艇で まともに戦えるのは 500 00:31:26,453 --> 00:31:28,455 3千隻あるかないかだ 501 00:31:28,455 --> 00:31:31,291 連中の気が変わって 戦闘再開となったら 502 00:31:31,291 --> 00:31:33,226 今度こそ ひとたまりもない 503 00:31:33,226 --> 00:31:36,262 4万隻の敵艦に囲まれて 紅茶を飲むのは 504 00:31:36,262 --> 00:31:39,032 結構 おつな気分だな 505 00:31:39,032 --> 00:31:40,967 で どうなさるんです? 506 00:31:40,967 --> 00:31:42,967 うん… 507 00:32:01,054 --> 00:32:03,656 あれがヤン・ウェンリーか 508 00:32:03,656 --> 00:32:06,359 失望しているんじゃないかな 509 00:32:06,359 --> 00:32:09,329 小官は ナイトハルト・ミュラーと申します 510 00:32:09,329 --> 00:32:13,133 同盟軍最高の知将たる閣下に お会いできて光栄です 511 00:32:13,133 --> 00:32:15,969 ああ… とんでもない こちらこそ 512 00:32:15,969 --> 00:32:20,473 貴官が 銀河系の私たちと 同じ側に生まれておいでであれば 513 00:32:20,473 --> 00:32:24,344 私は あなたのもとへ 傭兵を学びに伺ったでしょう 514 00:32:24,344 --> 00:32:27,047 そうならなかったことが残念です 515 00:32:27,047 --> 00:32:29,883 恐縮です 私は あなたにこそ 516 00:32:29,883 --> 00:32:32,719 銀河系の こちら側に 生まれていただきたかった 517 00:32:32,719 --> 00:32:36,689 そうすれば 私はいまごろ 家で 昼寝をしていられたでしょうに 518 00:32:36,689 --> 00:32:40,293 うまくいかないものですな まったく 519 00:32:40,293 --> 00:32:42,293 どうぞ ご案内します 520 00:33:04,484 --> 00:33:06,484 あっ… 521 00:33:18,998 --> 00:33:22,469 卿には ぜひ会ってみたいと 長いこと思っていた 522 00:33:22,469 --> 00:33:25,738 ようやく 望みが かなったというわけだ 523 00:33:25,738 --> 00:33:27,738 恐れ入ります 524 00:33:45,959 --> 00:33:49,629 卿とは いろいろと因縁がある 3年前になるが 525 00:33:49,629 --> 00:33:52,198 アスターテの会戦を 覚えているか? 526 00:33:52,198 --> 00:33:54,701 閣下から 通信文をいただきました 527 00:33:54,701 --> 00:33:57,337 「再戦の日まで壮健なれ」と 528 00:33:57,337 --> 00:34:00,573 おかげさまで 悪運強く 生きながらえております 529 00:34:00,573 --> 00:34:03,143 私は卿から返信をもらえなかった 530 00:34:03,143 --> 00:34:06,746 ああ… 非礼のかぎり 申し訳ありません 531 00:34:06,746 --> 00:34:09,346 その借りを 返せというわけではないが 532 00:34:12,018 --> 00:34:16,356 どうだ 私に仕えないか? あっ… 533 00:34:16,356 --> 00:34:18,958 卿は元帥号を授与されたそうだが 534 00:34:18,958 --> 00:34:23,229 私も卿に報いるに 帝国元帥の称号をもってしよう 535 00:34:23,229 --> 00:34:27,867 今日では こちらのほうが より 実質的なものであるはずだが 536 00:34:27,867 --> 00:34:31,371 身に余る光栄ですが 辞退させていただきます 537 00:34:31,371 --> 00:34:33,873 なぜだ? 私は おそらく 538 00:34:33,873 --> 00:34:36,509 閣下のお役には立てないと 思いますので 539 00:34:36,509 --> 00:34:38,478 謙遜か? それとも 540 00:34:38,478 --> 00:34:41,981 私は 主君としての 魅力に欠けると言いたいのか? 541 00:34:41,981 --> 00:34:45,385 そんなことはありません! 542 00:34:45,385 --> 00:34:49,355 私が帝国に生を受けていれば 閣下のお誘いを受けずとも 543 00:34:49,355 --> 00:34:52,959 進んで閣下の旗下に はせ参じていたことでしょう 544 00:34:52,959 --> 00:34:57,330 ですが 私は 帝国人とは 違う水を飲んで育ちました 545 00:34:57,330 --> 00:35:01,730 飲みなれぬ水を飲むと 体を壊す恐れがあると聞きます 546 00:35:04,103 --> 00:35:07,941 その水が かならずしも 卿に合っているとは思えぬ 547 00:35:07,941 --> 00:35:10,443 武勲の巨大さに比べ 報われぬこと 548 00:35:10,443 --> 00:35:13,980 掣肘を受けることが あまりに多くはないか? 549 00:35:13,980 --> 00:35:17,650 私自身は 十分に 報われていると思っております 550 00:35:17,650 --> 00:35:20,853 それに この水の味が 私は好きなのです 551 00:35:20,853 --> 00:35:23,890 卿の忠誠心は 民主主義の上にのみある 552 00:35:23,890 --> 00:35:26,459 と そういうことなのだな? 553 00:35:26,459 --> 00:35:28,995 はあ まあ… 554 00:35:28,995 --> 00:35:31,898 民主主義とは それほどよいものかな? 555 00:35:31,898 --> 00:35:34,801 銀河連邦の民主共和政は 行きつくところ 556 00:35:34,801 --> 00:35:39,706 ルドルフによる銀河帝国を 生み出す 苗床となったではないか 557 00:35:39,706 --> 00:35:43,343 それに卿の愛してやまぬ… ことと思うが 558 00:35:43,343 --> 00:35:45,678 祖国を私の手に売り渡したのは 559 00:35:45,678 --> 00:35:48,648 同盟の国民多数が 自らの意志によって選んだ 560 00:35:48,648 --> 00:35:50,650 元首自身だ 561 00:35:50,650 --> 00:35:53,486 民主共和政とは 人民が自由意志によって 562 00:35:53,486 --> 00:35:57,290 自分たちの 制度と精神を おとしめる政体のことか? 563 00:35:57,290 --> 00:36:00,059 失礼ですが 閣下のおっしゃりようは 564 00:36:00,059 --> 00:36:02,395 火事の原因になるからという 理由で 565 00:36:02,395 --> 00:36:05,665 火そのものを 否定なさるものの ように思われます 566 00:36:05,665 --> 00:36:08,034 ふん… そうかもしれぬが 567 00:36:08,034 --> 00:36:11,037 では 専制政治も 同じことではないのか? 568 00:36:11,037 --> 00:36:13,473 ときに暴君が 出現するからといって 569 00:36:13,473 --> 00:36:17,477 強力な指導性を持った政治の功を 否定することはできまい 570 00:36:17,477 --> 00:36:20,747 私は否定できます どの様にだ? 571 00:36:20,747 --> 00:36:25,585 人民を害する権利は 人民自身にしかないからです 572 00:36:25,585 --> 00:36:29,122 言い換えますと ルドルフ・フォン・ゴールデンバウムや 573 00:36:29,122 --> 00:36:31,057 また それより はるかに小者ながら 574 00:36:31,057 --> 00:36:33,893 ヨブ・トリューニヒトなどを 政権につけたのは 575 00:36:33,893 --> 00:36:37,764 確かに 人民自身です 他人を責めようがありません 576 00:36:37,764 --> 00:36:40,266 まさに肝心なのは その点であって 577 00:36:40,266 --> 00:36:43,670 専制政治の罪とは 人民が政治の失敗を 578 00:36:43,670 --> 00:36:46,873 他人のせいにできる という点につきるのです 579 00:36:46,873 --> 00:36:48,875 その罪の大きさに比べれば 580 00:36:48,875 --> 00:36:52,178 100人の名君の 善政の功も小さなものです 581 00:36:52,178 --> 00:36:56,115 まして 閣下 あなたのように 聡明な君主の出現が 582 00:36:56,115 --> 00:36:58,618 極めて稀なものであることを 思えば 583 00:36:58,618 --> 00:37:02,221 功罪は明らかなように 思えるのですが 584 00:37:02,221 --> 00:37:05,525 卿の主張は大胆でもあり 斬新でもあるが 585 00:37:05,525 --> 00:37:07,927 極端な気もするな 586 00:37:07,927 --> 00:37:10,697 私としては にわかに首肯はしかねるが 587 00:37:10,697 --> 00:37:13,599 それによって 卿は 私を説得することを 588 00:37:13,599 --> 00:37:17,470 試みているわけなのか? いや そうではないのです 589 00:37:17,470 --> 00:37:20,473 あっ… 私は あなたの主張に対して 590 00:37:20,473 --> 00:37:22,975 アンチテーゼを 提出しているにすぎません 591 00:37:22,975 --> 00:37:25,712 ひとつの正義に対して 逆の方向に 592 00:37:25,712 --> 00:37:27,947 同じだけの質と量を持った正義が 593 00:37:27,947 --> 00:37:31,484 かならず 存在するのではないかと 私は思っていますので 594 00:37:31,484 --> 00:37:33,453 それを 申し上げてみただけのことです 595 00:37:33,453 --> 00:37:37,190 正義は絶対でなく ひとつでさえ ないというのだな? 596 00:37:37,190 --> 00:37:39,158 それが卿の信念というわけか 597 00:37:39,158 --> 00:37:41,461 いや 私がそう思っているだけで 598 00:37:41,461 --> 00:37:43,963 信念というほどのことでは ありません 599 00:37:43,963 --> 00:37:47,433 あるいは宇宙には 唯一無二の真理が存在し 600 00:37:47,433 --> 00:37:51,137 それを解明する方程式が あるかもしれないとも思いますが 601 00:37:51,137 --> 00:37:54,874 ただ それに届くほど 私の手は長くないのです 602 00:37:54,874 --> 00:37:58,778 だとしたら 私の手は卿よりも さらに短い 603 00:37:58,778 --> 00:38:01,614 私は真理など必要としなかった 604 00:38:01,614 --> 00:38:06,219 自分の望むところのものを 自由にするだけの力が必要だった 605 00:38:06,219 --> 00:38:10,757 逆に言えば 嫌いなやつの命令を 聞かずに済むだけの力がな 606 00:38:10,757 --> 00:38:14,327 卿は そう思ったことはないか? 嫌いなやつはいないのか? 607 00:38:14,327 --> 00:38:17,964 私が嫌いなのは 自分だけ安全な所に隠れて 608 00:38:17,964 --> 00:38:22,635 戦争を賛美し 愛国心を強調し 他人を戦場に駆り立てて 609 00:38:22,635 --> 00:38:26,072 後方で安楽な生活を 送るような輩です 610 00:38:26,072 --> 00:38:28,007 こういう連中と 同じ旗のもとにいるのは 611 00:38:28,007 --> 00:38:30,009 耐え難い苦痛です 612 00:38:30,009 --> 00:38:33,813 あなたは違う つねに陣頭に立っておいでです 613 00:38:33,813 --> 00:38:36,816 失礼な申し上げようながら 感嘆を禁じえません 614 00:38:36,816 --> 00:38:40,520 なるほど その点だけは 私を認めてくれるのだな 615 00:38:40,520 --> 00:38:42,520 素直に喜んでおこう 616 00:38:45,358 --> 00:38:48,795 私には友人がいた その友人と2人で 617 00:38:48,795 --> 00:38:51,664 宇宙を手に入れることを 成約しあったとき 618 00:38:51,664 --> 00:38:53,733 同時に こうも誓ったものだ 619 00:38:53,733 --> 00:38:56,169 卑劣な大貴族どものマネはすまい 620 00:38:56,169 --> 00:38:59,269 かならず陣頭に立って戦い 勝利を得ようと 621 00:39:01,574 --> 00:39:05,812 私は その友人のために いつでも犠牲になるつもりだった 622 00:39:05,812 --> 00:39:10,650 だが… 実際には犠牲になったのは いつも彼のほうだった 623 00:39:10,650 --> 00:39:13,553 私は それに甘えて 甘えきって 624 00:39:13,553 --> 00:39:17,353 ついには 彼の命まで 私のために失わせてしまった 625 00:39:19,492 --> 00:39:21,627 その友人が今 生きていたら 626 00:39:21,627 --> 00:39:25,427 私は生きた卿ではなく 卿の死体と対面していたはずだ 627 00:39:27,967 --> 00:39:30,970 はあ… 卿らの首都を占領している 628 00:39:30,970 --> 00:39:34,807 我が軍の指揮官から 先刻 報告が届いた 629 00:39:34,807 --> 00:39:39,345 卿の上官にあたる 宇宙艦隊 司令長官が申し出てきたそうだ 630 00:39:39,345 --> 00:39:41,948 軍部の責任は すべて 自分が取るゆえ 631 00:39:41,948 --> 00:39:44,717 他の者の罪は 問わないでほしいと 632 00:39:44,717 --> 00:39:47,620 ビュコック司令長官らしい おっしゃりようです 633 00:39:47,620 --> 00:39:50,857 ですが そのような申し出は 退けてくださるよう 634 00:39:50,857 --> 00:39:52,792 閣下にお願いします 635 00:39:52,792 --> 00:39:55,261 長官一人に 責任をとらせるのでは 636 00:39:55,261 --> 00:39:58,164 私たちに かい性が なさすぎるというものです 637 00:39:58,164 --> 00:40:01,434 ヤン提督 私は復しゅう者ではない 638 00:40:01,434 --> 00:40:04,337 帝国の大貴族どもにとっては そうであったが 639 00:40:04,337 --> 00:40:08,541 卿らに対しては あくまで互角の 敵視であったと思っている 640 00:40:08,541 --> 00:40:11,410 軍部の最高責任者たる 統合作戦本部長を 641 00:40:11,410 --> 00:40:14,914 収監するのは やむを得ないが 戦火が収まってのち 642 00:40:14,914 --> 00:40:18,414 なお 無用な血を流すのは 私の好むところではない 643 00:40:20,486 --> 00:40:24,790 ところで 卿を自由の身にしたら 卿は今後どうするか? 644 00:40:24,790 --> 00:40:26,790 退役します あっ… 645 00:40:35,535 --> 00:40:38,404 民主共和政とは 人民が自由意思によって 646 00:40:38,404 --> 00:40:42,304 自分たちの 制度と精神を おとしめる政体のことか? 647 00:41:06,065 --> 00:41:12,271 ジーク・カイザー・ラインハルト! ジーク・カイザー・ラインハルト! 648 00:41:12,271 --> 00:41:15,671 ジーク・カイザー・ラインハルト! おおー! 649 00:41:17,977 --> 00:41:20,713 ジーク・カイザー・ラインハルト! 650 00:41:20,713 --> 00:41:25,413 ジーク・カイザー・ラインハルト! ジーク・カイザー… 651 00:41:37,964 --> 00:41:40,566 亡命政権はどうしたか 652 00:41:40,566 --> 00:41:44,570 首相であった レムシャイド伯は 我が軍に私邸を包囲されて自殺 653 00:41:44,570 --> 00:41:49,208 ほかの閣僚は軍務尚書を除いて 全員 逮捕 拘禁してありますが 654 00:41:49,208 --> 00:41:51,143 軍務尚書たるメルカッツは 655 00:41:51,143 --> 00:41:54,046 バーミリオンで 戦死したとの報告が入っている 656 00:41:54,046 --> 00:41:56,015 ほう 問題は 657 00:41:56,015 --> 00:41:59,218 彼らに たてまつられた 幼帝の行方です 658 00:41:59,218 --> 00:42:02,922 帝国からの 誘拐の実行犯である ランズベルク伯アルフレッドが 659 00:42:02,922 --> 00:42:04,924 いずこかへ 連れ去ったもようなのです 660 00:42:04,924 --> 00:42:07,259 捜索の網を広げておりますが 661 00:42:07,259 --> 00:42:09,929 かまわぬ どこへなりと行かせるがいい 662 00:42:09,929 --> 00:42:11,931 滅びるときに 滅び損ねたものは 663 00:42:11,931 --> 00:42:14,900 国でも人でも みじめに朽ち果てていくだけだ 664 00:42:14,900 --> 00:42:17,970 ゴールデンバウム家 再興の夢を 見たいというのであれば 665 00:42:17,970 --> 00:42:22,274 いつまでも ベッドに潜り込んで 現実から目をそらしておればよい 666 00:42:22,274 --> 00:42:25,511 そんなやつらに なぜ こちらが 真剣につきあわねばならぬ 667 00:42:25,511 --> 00:42:27,446 ですが 閣下 放置しておけば 668 00:42:27,446 --> 00:42:30,416 今後 なんらかの火種に ならぬともかぎりません 669 00:42:30,416 --> 00:42:33,252 捜索は お続けになられるべきでしょう 670 00:42:33,252 --> 00:42:35,821 ああ だが 憲兵隊では追い切れまい 671 00:42:35,821 --> 00:42:40,059 司法権の問題も含めて 同盟領の 今後の支配を どのようにするか 672 00:42:40,059 --> 00:42:44,296 卿が中心になって随行してきた 行政専門家の意見を取りまとめよ 673 00:42:44,296 --> 00:42:46,296 御意 674 00:42:51,671 --> 00:42:54,040 すぐに引っ越すにしても とりあえずは 675 00:42:54,040 --> 00:42:56,542 住めるようにはしないと 中尉 676 00:42:56,542 --> 00:42:59,979 どこに置きましょうか? ああ 奥の書斎へ運んでよ 677 00:42:59,979 --> 00:43:02,982 分かりました あれはなんだ?一体? 678 00:43:02,982 --> 00:43:06,752 なんだって おっしゃっても… あれはルイ・マシュンゴ少尉です 679 00:43:06,752 --> 00:43:09,722 そいつは分かっている なぜ あいつまでここにいるんだ? 680 00:43:09,722 --> 00:43:11,724 僕がフェザーンに赴任するとき 681 00:43:11,724 --> 00:43:14,493 護衛をするよう 提督が お命じになったでしょう 682 00:43:14,493 --> 00:43:18,130 そのあと 新たな命令もないので 律儀に守っているんですよ 683 00:43:18,130 --> 00:43:20,132 じゃあ あいつも地球に行くのか? 684 00:43:20,132 --> 00:43:22,732 人は誰も 運命には逆らえませんから 685 00:43:27,173 --> 00:43:31,844 以上の様な点から 同盟を 形式の上でも完全に滅亡させ 686 00:43:31,844 --> 00:43:36,382 直接 支配下に置くことは 時期尚早との意見が多ございます 687 00:43:36,382 --> 00:43:38,317 卿自身はどう思う? 688 00:43:38,317 --> 00:43:42,188 小官も賛成でございます 軍備を放棄させたうえで 689 00:43:42,188 --> 00:43:47,026 形式上の主権を認め 完全併呑は先に伸ばすべきかと 690 00:43:47,026 --> 00:43:49,695 うん ですが 同盟の財政を 691 00:43:49,695 --> 00:43:52,998 さらに悪化させる処置は とっておくべきかと存じます 692 00:43:52,998 --> 00:43:55,334 何しろ 軍事支出が激減する分 693 00:43:55,334 --> 00:43:58,804 財政は健全化するものですから 何も彼らをして 694 00:43:58,804 --> 00:44:02,108 第二のフェザーンたらしめる 必要はありますまい 695 00:44:02,108 --> 00:44:04,477 当然だな 安全保障税なり 696 00:44:04,477 --> 00:44:07,480 駐留艦隊の費用負担なり させればよい 697 00:44:07,480 --> 00:44:12,218 方針としては それでよい 具体的な条約案の作成を急がせよ 698 00:44:12,218 --> 00:44:14,854 はっ 699 00:44:14,854 --> 00:44:17,890 ここなんかどうかしら? どれどれ 700 00:44:17,890 --> 00:44:20,259 うーん フレモント街か ええ 701 00:44:20,259 --> 00:44:22,828 場所も悪くないし 部屋数も多いから 702 00:44:22,828 --> 00:44:25,364 ユリアンたちが帰ってきても 十分に住めますわ 703 00:44:25,364 --> 00:44:27,299 うん いいんじゃないかな 704 00:44:27,299 --> 00:44:30,202 じゃ 申し込んでみますわ 705 00:44:30,202 --> 00:44:33,105 よう お二人さん おそろいで式の相談か? 706 00:44:33,105 --> 00:44:35,107 家探しですよ 退役すると 707 00:44:35,107 --> 00:44:37,543 この官舎も 追い出されてしまいますからね 708 00:44:37,543 --> 00:44:41,413 その件だがな お前さんたちと シェーンコップ アッテンボロー 709 00:44:41,413 --> 00:44:44,817 それにビュコック長官の 退役願いは受理されたがな 710 00:44:44,817 --> 00:44:46,886 俺も含めて ほかのは却下されたよ 711 00:44:46,886 --> 00:44:49,755 事後処理などで 事務仕事が増えますからね 712 00:44:49,755 --> 00:44:52,091 先輩にやめられると 困るんでしょう 713 00:44:52,091 --> 00:44:54,593 ロックウェル大将が 統合作戦本部長に 714 00:44:54,593 --> 00:44:56,829 格上げされるのでね 空席になる 715 00:44:56,829 --> 00:45:00,833 後方勤務本部長代理をやれとさ 宇宙艦隊のほうは? 716 00:45:00,833 --> 00:45:04,136 チュン・ウーチェン総参謀長が 長官代理だ 717 00:45:04,136 --> 00:45:07,439 もっとも 戦艦も空母も 放棄させられるらしいからな 718 00:45:07,439 --> 00:45:10,676 宇宙艦隊といっても 形だけになってしまうが 719 00:45:10,676 --> 00:45:13,345 やはり そうなりましたか こうなると いよいよ 720 00:45:13,345 --> 00:45:16,245 例の「シャーウッドの森」が 意味を持ってくるが 721 00:45:18,684 --> 00:45:20,619 なんにせよ どんな条件がつけられるか 722 00:45:20,619 --> 00:45:25,457 正式発表は 明日の条約調印後になるがな 723 00:45:25,457 --> 00:45:31,230 宇宙暦799年 帝国暦490年 5月25日 724 00:45:31,230 --> 00:45:34,967 帝国と同盟の 正式な停戦条約が結ばれる 725 00:45:34,967 --> 00:45:37,970 首都星ハイネセンの所属する 恒星の名をとって 726 00:45:37,970 --> 00:45:40,706 「バーラトの和約」と呼ばれる この条約が 727 00:45:40,706 --> 00:45:45,144 事実上の降伏文書であることは 誰の目にも明らかだった 728 00:45:45,144 --> 00:45:49,615 この条約調印の直後 ヨブ・トリューニヒト最高評議会議長は 729 00:45:49,615 --> 00:45:53,452 敗戦の責任を取ると称して 辞任を宣言した 730 00:45:53,452 --> 00:45:55,721 この条約の屈辱的内容と 731 00:45:55,721 --> 00:46:00,192 停戦に至った経緯を知った 同盟の市民たちの憤激と憎悪は 732 00:46:00,192 --> 00:46:02,928 帝国軍よりも むしろ 彼らを裏切った 733 00:46:02,928 --> 00:46:05,631 トリューニヒトへと向けられた 734 00:46:05,631 --> 00:46:11,203 「第1条 自由惑星同盟の名称と 主権の存続に関しては 735 00:46:11,203 --> 00:46:14,740 銀河帝国の同意によって これを保障する」か 736 00:46:14,740 --> 00:46:17,476 皮肉なものさ 今まで 公式には 737 00:46:17,476 --> 00:46:20,479 辺境の反乱勢力と されていたわけだからな 738 00:46:20,479 --> 00:46:25,251 で… その反乱勢力の 頭目の地位につくのかね? 739 00:46:25,251 --> 00:46:27,720 トリューニヒトは 投げ出してしまったし 740 00:46:27,720 --> 00:46:30,623 アイランズは 病床に伏してしまった 741 00:46:30,623 --> 00:46:32,591 誰かが政権を 執らなければならない 742 00:46:32,591 --> 00:46:35,361 そうでないと その7条にある 743 00:46:35,361 --> 00:46:39,231 「皇帝の代理人たる高等弁務官」か そう 744 00:46:39,231 --> 00:46:42,768 その弁務官が 実質上の執政官になってしまう 745 00:46:42,768 --> 00:46:47,039 誰かが 国内をまとめて 弁務官に介入させる口実を与えず 746 00:46:47,039 --> 00:46:50,709 同盟の自主性を 守っていかねばならないんだ 747 00:46:50,709 --> 00:46:52,745 そのとおりだとは思うがね 748 00:46:52,745 --> 00:46:56,448 これじゃ首に縄をかけられて つま先で かろうじて 749 00:46:56,448 --> 00:46:58,484 地面についているような もんじゃないかね 750 00:46:58,484 --> 00:47:01,086 こっから生き延びるのは 至難の業だぞ 751 00:47:01,086 --> 00:47:04,957 それでも いや だからこそ やらねばならん 752 00:47:04,957 --> 00:47:07,927 同盟の最後の命脈を保つために 753 00:47:07,927 --> 00:47:10,763 同盟に割譲させる 3つの星系のうち 754 00:47:10,763 --> 00:47:14,633 ガンダルヴァ星系の惑星 ウルヴァシーに駐留艦隊を置き 755 00:47:14,633 --> 00:47:17,870 その司令官にシュタインメッツを あてるのはよいとして 756 00:47:17,870 --> 00:47:20,239 問題は高等弁務官職かと 757 00:47:20,239 --> 00:47:23,909 高等弁務官は 行政能力も重要であるし 758 00:47:23,909 --> 00:47:26,178 場合によっては 反抗や抵抗の鎮圧に 759 00:47:26,178 --> 00:47:28,480 武力をもって臨むこともあろう 760 00:47:28,480 --> 00:47:32,284 ロイエンタールならば 十分に その職責に耐えられると思うが 761 00:47:32,284 --> 00:47:35,888 御意ですが ロイエンタール ミッターマイヤー両提督は 762 00:47:35,888 --> 00:47:39,758 本国にあって実戦部隊を 統括せねばなりますまい 763 00:47:39,758 --> 00:47:42,061 ならば レンネンカンプをあてよう 764 00:47:42,061 --> 00:47:45,497 恐れながら レンネンカンプは 軍人の型にはまりすぎて 765 00:47:45,497 --> 00:47:47,466 思考が硬直しがちです 766 00:47:47,466 --> 00:47:50,336 特にヤン・ウェンリーに 敗北を強いられているため 767 00:47:50,336 --> 00:47:52,871 同盟に対する態度が 柔軟を欠くものに 768 00:47:52,871 --> 00:47:55,774 なるのではないかと 懸念されますが 769 00:47:55,774 --> 00:47:58,544 レンネンカンプが失敗すれば 切り捨てる 770 00:47:58,544 --> 00:48:02,448 その際 同盟にも責任があれば その罪も問う それだけのことだ 771 00:48:02,448 --> 00:48:04,948 何を思い患うか 772 00:48:08,554 --> 00:48:11,457 閣下が高等弁務官職に ロイエンタール提督を 773 00:48:11,457 --> 00:48:13,459 あてることに 反対なさったのは 774 00:48:13,459 --> 00:48:16,762 何か別の理由がおありと お見受けしましたが 775 00:48:16,762 --> 00:48:19,631 猛獣というものは はっ? 776 00:48:19,631 --> 00:48:23,035 ひとたび野に放てば 危険極まる存在となる 777 00:48:23,035 --> 00:48:26,435 目の届くところで 鎖につないでおくべきものなのだ 778 00:48:28,407 --> 00:48:31,977 ヨブ・トリューニヒト前議長が 面会を申し込んでおりますが 779 00:48:31,977 --> 00:48:34,747 会わぬ! と おっしゃいましても 780 00:48:34,747 --> 00:48:37,983 私は地上で 最大の権力を得たはずなのに 781 00:48:37,983 --> 00:48:40,586 会いたくもない男と 会わねばならないのか 782 00:48:40,586 --> 00:48:42,888 閣下… できることなら 783 00:48:42,888 --> 00:48:46,258 やつのようなクズは 復しゅう心に たけり狂う民衆の中に 784 00:48:46,258 --> 00:48:48,193 放り込んでやりたいくらいなのだ 785 00:48:48,193 --> 00:48:51,430 お気持ちは分かりますが 最高責任者の罪は 786 00:48:51,430 --> 00:48:53,899 不問に伏すと 制約してしまいました 787 00:48:53,899 --> 00:48:56,168 お心にそまぬことと 思いますけれど 788 00:48:56,168 --> 00:48:59,605 それを破棄されては 帝国は制約を守らぬもの 789 00:48:59,605 --> 00:49:03,609 和約も当てにならぬと 不信を買うことになりましょう 790 00:49:03,609 --> 00:49:06,278 チッ! 791 00:49:06,278 --> 00:49:08,547 それで やつは何を求めているのか? 792 00:49:08,547 --> 00:49:13,318 生命と財産の保障 そして 帝国本土における居住権です 793 00:49:13,318 --> 00:49:17,189 何か地位を頂ければ 閣下の おんために働くと申しております 794 00:49:17,189 --> 00:49:20,159 裏切った国民とともに 生活するだけの厚顔さは 795 00:49:20,159 --> 00:49:22,394 さすがにないとみえるな 796 00:49:22,394 --> 00:49:26,365 帝国領であれば 私の 庇護が受けられるというわけか 797 00:49:26,365 --> 00:49:28,534 よし 要求は認めてやる 798 00:49:28,534 --> 00:49:30,469 認めてやるから 会う必要はあるまい 799 00:49:30,469 --> 00:49:34,406 帰らせろ! 承知いたしました 800 00:49:34,406 --> 00:49:37,406 フロイライン! はい? 801 00:49:39,812 --> 00:49:41,747 フロイライン・マリーンドルフ 802 00:49:41,747 --> 00:49:44,116 私は心の狭い男だ 803 00:49:44,116 --> 00:49:47,352 あなたに命を救ってもらったと 分かっているのに 804 00:49:47,352 --> 00:49:50,652 今は礼を言う気になれぬ 少し時間を貸してくれ 805 00:49:53,792 --> 00:49:56,495 こちらこそ 出過ぎたマネをいたしまして 806 00:49:56,495 --> 00:49:59,364 どんな お叱りを受けても 当然のところですのに 807 00:49:59,364 --> 00:50:02,267 そんな風におっしゃられては 赤面のいたりです 808 00:50:02,267 --> 00:50:05,604 ただ ご寛容に甘えまして お願いいたします 809 00:50:05,604 --> 00:50:09,374 ミッターマイヤー ロイエンタール お二方の功績に対しましては 810 00:50:09,374 --> 00:50:12,277 どうか 十分に 報いてやってくださいますよう 811 00:50:12,277 --> 00:50:14,377 ああ そうしよう 812 00:50:20,152 --> 00:50:22,287 俺は これでも ヤン・ウェンリーとは 813 00:50:22,287 --> 00:50:25,891 無二の親友なんだ! それを証明するものがない以上 814 00:50:25,891 --> 00:50:28,694 通すわけにはだな… ああ すまないが 815 00:50:28,694 --> 00:50:31,330 通してやってくれないか 古い友人なんだ 816 00:50:31,330 --> 00:50:33,398 おお 817 00:50:33,398 --> 00:50:38,103 親父さんの葬式以来だから 16年… いや 17年になるかな 818 00:50:38,103 --> 00:50:40,973 えらく疎遠な 無二の親友もいたもんだ 819 00:50:40,973 --> 00:50:43,842 しょうがないだろう ああでも言わなきゃ 820 00:50:43,842 --> 00:50:46,745 おお! お前さんがユリアン・ミンツか 821 00:50:46,745 --> 00:50:49,648 マリネスクから話は聞いてるよ ボリス・コーネフだ 822 00:50:49,648 --> 00:50:51,884 よろしくな こちらこそ 823 00:50:51,884 --> 00:50:54,686 ユリアンを助けてくれて 礼を言う 824 00:50:54,686 --> 00:50:57,589 ベリョースカ号だったな 君の船の人たちには 825 00:50:57,589 --> 00:51:01,493 ずいぶん世話になったようだ その功績はマリネスクのもので 826 00:51:01,493 --> 00:51:04,096 俺が礼を 言われるようなものじゃないが 827 00:51:04,096 --> 00:51:06,598 問題は その俺の船だ 828 00:51:06,598 --> 00:51:09,234 同盟政府は あってなきがごとしだし 829 00:51:09,234 --> 00:51:12,037 まさか 帝国軍に 訴えるわけにもいかんしな 830 00:51:12,037 --> 00:51:14,940 まあ その点は 私がなんとかしよう 831 00:51:14,940 --> 00:51:18,810 ただ その代わり ひとつ 私の頼みを聞いてくれないか? 832 00:51:18,810 --> 00:51:21,380 なんだ? ユリアンと もう一人 833 00:51:21,380 --> 00:51:24,650 旅に出たがっていてね その面倒を見てほしいんだ 834 00:51:24,650 --> 00:51:26,685 乗組員として 旅? 835 00:51:26,685 --> 00:51:28,987 どこへ行こうってんだ? 知っているだろう 836 00:51:28,987 --> 00:51:31,087 地球さ 837 00:51:36,728 --> 00:51:40,432 総代主教陛下 ラインハルト・フォン・ローエングラムが 838 00:51:40,432 --> 00:51:43,969 自由惑星同盟を征服いたしました 839 00:51:43,969 --> 00:51:46,271 それで その後どうなっておる 840 00:51:46,271 --> 00:51:48,874 征服地にとどまらず レンネンカンプなる者を 841 00:51:48,874 --> 00:51:53,579 監視役に残し 自分は帝国本土へ 帰還したよしにございます 842 00:51:53,579 --> 00:51:57,349 その際に 例のトリューニヒト なる者を伴いましたとか 843 00:51:57,349 --> 00:52:01,086 あの男 結構 役に立ったようじゃな 844 00:52:01,086 --> 00:52:03,055 それで そのまま帝国でも 彼奴を 845 00:52:03,055 --> 00:52:06,358 カゴの中のくさったリンゴ として使うのか? 846 00:52:06,358 --> 00:52:10,696 いえ 帝国におきましては 別の者を用意してございます 847 00:52:10,696 --> 00:52:13,298 役に立つことは確かであろうな? 848 00:52:13,298 --> 00:52:17,169 重い病人ではございますが あと半年も持ちましたら 849 00:52:17,169 --> 00:52:19,738 我らの目的は達せられましょう 850 00:52:19,738 --> 00:52:22,441 ではよい そなたに任せる 851 00:52:22,441 --> 00:52:24,509 フェザーンのほうは どうなっておるか? 852 00:52:24,509 --> 00:52:27,279 はっ フェザーンに関しましては 853 00:52:27,279 --> 00:52:30,048 いささか 不確定の要素が多すぎます 854 00:52:30,048 --> 00:52:33,418 ルビンスキーとの 連絡はとれているのであろうな? 855 00:52:33,418 --> 00:52:36,021 一応は ですが あの男 856 00:52:36,021 --> 00:52:38,257 どうにも 心の底がしれません 857 00:52:38,257 --> 00:52:42,127 単に服従の精神が疑われるに とどまりません 858 00:52:42,127 --> 00:52:45,697 恐ろしく不貞な野心を 抱いておるように思われます 859 00:52:45,697 --> 00:52:49,268 ご用心のほどを そんなことは承知の上じゃ 860 00:52:49,268 --> 00:52:51,670 我らの 手のひらの上で踊るかぎり 861 00:52:51,670 --> 00:52:55,540 どんな形で舞おうとも 意に介するには及ばぬ 862 00:52:55,540 --> 00:52:57,509 はあ それより 863 00:52:57,509 --> 00:53:00,379 あの不祥者の デグスビイの件じゃ 864 00:53:00,379 --> 00:53:03,115 彼奴が死にましたのは 確実でございますが 865 00:53:03,115 --> 00:53:08,487 問題は死ぬ前に 秘密をもらしたや いなやでございます 866 00:53:08,487 --> 00:53:12,357 ジーク・カイザー・ラインハルト! ジーク・カイザー… 867 00:53:12,357 --> 00:53:14,359 宇宙暦799年 868 00:53:14,359 --> 00:53:17,729 帝国暦490年6月20日 869 00:53:17,729 --> 00:53:21,600 わずか1歳8ヵ月の女帝 カザリン・ケートヘンの親権者 870 00:53:21,600 --> 00:53:25,904 ユルゲン=オファー・フォン・ペグニッツ公爵は 女帝の退位と帝位を 871 00:53:25,904 --> 00:53:30,475 ローエングラム公ラインハルトに 譲るという宣言書に署名した 872 00:53:30,475 --> 00:53:34,112 6月22日 新皇帝ラインハルトの即位 873 00:53:34,112 --> 00:53:36,112 および戴冠の日である 874 00:53:45,590 --> 00:53:50,562 だが そこには ラインハルトが もっとも欲する2人の姿がない 875 00:53:50,562 --> 00:53:53,162 あっ ああ… 876 00:54:13,985 --> 00:54:16,285 おお… 877 00:54:18,757 --> 00:54:28,133 ジーク・カイザー・ラインハルト! ジーク・カイザー・ラインハルト… 878 00:54:28,133 --> 00:54:32,003 宇宙暦799年 新帝国暦1年 879 00:54:32,003 --> 00:54:35,903 ローエングラム王朝が ここに始まる 880 00:54:41,313 --> 00:54:44,349 宇宙暦799年 新帝国暦1年 881 00:54:44,349 --> 00:54:48,086 銀河帝国では 皇帝ラインハルトの 戴冠式が行われ 882 00:54:48,086 --> 00:54:50,055 新たな時代が幕を明けた 883 00:54:50,055 --> 00:54:52,591 一方のヤンも ささやかな儀式をへて 884 00:54:52,591 --> 00:54:55,494 新婚という 新たな時代を迎えていた 885 00:54:55,494 --> 00:54:58,263 安定の時期が 訪れたかに見える銀河系 886 00:54:58,263 --> 00:55:01,700 だが 動乱の火種は 各地にくすぶっていた 887 00:55:01,700 --> 00:55:04,736 次回 銀河英雄伝説 第55話 888 00:55:04,736 --> 00:55:07,272 「儀式から再び幕は上がり…」 889 00:55:07,272 --> 00:55:10,372 銀河の歴史が また1ページ 890 00:59:30,035 --> 00:59:32,470 宇宙歴799年 891 00:59:32,470 --> 00:59:38,710 帝国歴490年改め 新帝国歴1年6月22日 892 00:59:38,710 --> 00:59:42,480 ラインハルト・フォン・ローエングラムは 新たな帝位につき 893 00:59:42,480 --> 00:59:45,680 皇帝ラインハルト1世となった 894 00:59:50,121 --> 00:59:53,458 ジーク・カイザー・ラインハルト! 895 00:59:53,458 --> 00:59:56,094 ジーク・ノイエ・ライヒ! 896 00:59:56,094 --> 00:59:59,297 ジーク・カイザー・ラインハルト! 897 00:59:59,297 --> 01:00:01,733 ジーク・ノイエ・ライヒ! 898 01:00:01,733 --> 01:00:05,203 ジーク・カイザー・ラインハルト! 899 01:00:05,203 --> 01:00:07,603 ジーク・ノイエ・ライヒ! 900 01:00:19,184 --> 01:00:21,419 マリーンドルフ伯 901 01:00:21,419 --> 01:00:23,354 陛下 902 01:00:23,354 --> 01:00:27,692 今日はご苦労だな どうだ? 国務尚書としての初仕事は 903 01:00:27,692 --> 01:00:31,296 恐れ入ります 何分にも 初めてのことでございますので 904 01:00:31,296 --> 01:00:34,232 いかがなものでございますか 式典も饗宴も 905 01:00:34,232 --> 01:00:36,801 簡素にせよとのことで ございましたので 906 01:00:36,801 --> 01:00:40,071 このように取り計らいましたが 907 01:00:40,071 --> 01:00:44,008 これでよい 旧帝国のごとき盛大な祝宴など 908 01:00:44,008 --> 01:00:47,212 国家予算の浪費以外の 何物でもない 909 01:00:47,212 --> 01:00:50,882 国家である以上 儀式や式典なども やらぬわけにはいかぬが 910 01:00:50,882 --> 01:00:53,785 必要以上に華美であることもない 911 01:00:53,785 --> 01:00:57,155 その意味では この祝典が今後の範となろう 912 01:00:57,155 --> 01:01:00,525 これからも卿には いろいろと 任せると思うが よしなに 913 01:01:00,525 --> 01:01:02,525 はっ 914 01:01:07,432 --> 01:01:10,935 お父様 お疲れですか? 915 01:01:10,935 --> 01:01:14,272 ヒルダか いや 疲れてはいないよ 916 01:01:14,272 --> 01:01:18,372 今晩はよく眠れそうだがね このままいけばな 917 01:01:22,013 --> 01:01:24,916 ああ 一品だ 410年物かな 918 01:01:24,916 --> 01:01:28,787 さあ どうでしょう フフフ… 919 01:01:28,787 --> 01:01:30,722 何ですの お父様 920 01:01:30,722 --> 01:01:34,526 いや お前は昔から こういうことには無関心だったな 921 01:01:34,526 --> 01:01:37,796 昔って 子供の頃から ワインに興味を持つようでも 922 01:01:37,796 --> 01:01:39,731 お困りになるでしょ? 923 01:01:39,731 --> 01:01:43,434 ああ いやいや ワインに限らず 他の貴族の令嬢方が 924 01:01:43,434 --> 01:01:46,704 興味を持つような物には 一切 無関心だったろう 925 01:01:46,704 --> 01:01:50,675 宝石とかドレスとか 競走馬とか花とか 926 01:01:50,675 --> 01:01:55,146 あら 花は詳しいですわ それに馬も 927 01:01:55,146 --> 01:01:57,916 お前のは どの山に何が咲いていたとか 928 01:01:57,916 --> 01:02:00,685 自分で歩き回って 身に着けた知識だろう 929 01:02:00,685 --> 01:02:02,720 それに馬も 競馬を楽しむのではなく 930 01:02:02,720 --> 01:02:04,989 自分で乗るためのものだ 931 01:02:04,989 --> 01:02:07,592 全てに専門知識を 持たなければならないわけでは 932 01:02:07,592 --> 01:02:12,096 ありませんでしょう?宝石にも ワインにも専門家がいますから 933 01:02:12,096 --> 01:02:15,800 要は信頼するに足る専門家を 見分ける目ですわ 934 01:02:15,800 --> 01:02:20,071 もっともだ だがお前は 子供の頃から そんなことを言って 935 01:02:20,071 --> 01:02:22,841 他の令嬢方とも付き合わないし 936 01:02:22,841 --> 01:02:26,177 正直言って 私は結構 心配したのだよ 937 01:02:26,177 --> 01:02:30,982 もっとも それが幸いして 今 こうしているのかもしれんがな 938 01:02:30,982 --> 01:02:33,751 で どうかな? その目にかなう人物はいたかな 939 01:02:33,751 --> 01:02:35,687 おからかいになって 940 01:02:35,687 --> 01:02:38,590 閣僚をお選びになるのは 陛下ご自身ですわ 941 01:02:38,590 --> 01:02:41,492 何人かは 推薦もいたしましたけれど 942 01:02:41,492 --> 01:02:44,095 ところでハインリッヒがな 943 01:02:44,095 --> 01:02:47,498 あのとおりの病身ゆえに 式典には出られないが 944 01:02:47,498 --> 01:02:51,269 できれば屋敷に陛下の行幸を 仰ぎたいと言っておった 945 01:02:51,269 --> 01:02:55,640 どうだ?お前からも 陛下にお願いしてみてくれんか 946 01:02:55,640 --> 01:02:58,243 そうね お願いしてみましょう 947 01:02:58,243 --> 01:03:02,343 無理かもしれないけれど ハインリッヒがどうしてもと言うなら 948 01:03:06,384 --> 01:03:09,287 さて 949 01:03:09,287 --> 01:03:14,125 私はまだ仕事が残っているんで 後でな 950 01:03:14,125 --> 01:03:18,529 帝国での その即位式典に先立つ6月10日 951 01:03:18,529 --> 01:03:23,629 自由惑星同盟の一角でも ささやかな儀式が行われた 952 01:03:25,937 --> 01:03:28,273 なんだ まだ支度してないのか 953 01:03:28,273 --> 01:03:30,642 中将からもおっしゃってください 954 01:03:30,642 --> 01:03:33,544 提督ったら 堅苦しい礼服は嫌だって 955 01:03:33,544 --> 01:03:38,049 この後に及んで ごねてるのか? あきれた奴だな 956 01:03:38,049 --> 01:03:40,652 だって こんな形式張った格好は… 957 01:03:40,652 --> 01:03:42,954 そいつはお前さんが悪い 958 01:03:42,954 --> 01:03:45,890 退役する前に結婚しておけば 軍服で済んだのに 959 01:03:45,890 --> 01:03:49,661 グズグズしていたからだ 諦めて さっさと支度しろ 960 01:03:49,661 --> 01:03:53,531 こんなところで花嫁を待たせると 一生の弱みになるぞ 961 01:03:53,531 --> 01:03:56,034 はあ 現役の時だと 962 01:03:56,034 --> 01:03:58,636 政府のお偉方とか 呼ばなくちゃいけなくなったり 963 01:03:58,636 --> 01:04:01,539 つまらないスピーチを 長々と聞かされたりするでしょ? 964 01:04:01,539 --> 01:04:04,442 せっかく身内だけで 質素にやろうと思ってたのに 965 01:04:04,442 --> 01:04:07,712 まあ帝国軍の手前 あまりヒソヒソとやりすぎても 966 01:04:07,712 --> 01:04:11,316 要らぬ疑惑を招くかもしれん 監視の目もあるんだ 967 01:04:11,316 --> 01:04:13,618 みっともなくない程度の 格好はしてくれよ 968 01:04:13,618 --> 01:04:17,088 はいはい 体のいいさらしもんだな 969 01:04:17,088 --> 01:04:19,023 こんなもんでいいんでしょ? 970 01:04:19,023 --> 01:04:22,927 こうして見ると お前さん まだ軍服の方が似合ってたんだな 971 01:04:22,927 --> 01:04:26,798 うん? まあ今更 仕方がない 972 01:04:26,798 --> 01:04:30,969 ほら せめて髪をとかせ 上着のボタンをかけろ 973 01:04:30,969 --> 01:04:33,269 世話の焼ける奴だ 974 01:04:42,013 --> 01:04:45,213 おめでとう 975 01:04:54,192 --> 01:04:58,392 花嫁 花婿というよりは 姫君と従者だな 976 01:05:01,599 --> 01:05:05,470 ところでユリアン お前さんたち このまま出発するんだって? 977 01:05:05,470 --> 01:05:10,108 ええ 宇宙港でコーネフ船長たちが 待機してくれていますから 978 01:05:10,108 --> 01:05:13,978 そうだ 船長が新しい船の お礼が言いたいって言ってました 979 01:05:13,978 --> 01:05:15,913 いい船のようですね 980 01:05:15,913 --> 01:05:20,385 軍の輸送艦として造られたのを 今回の帝国との条約で 981 01:05:20,385 --> 01:05:23,988 廃棄処分になる船のリストに 潜り込ませたんだ 982 01:05:23,988 --> 01:05:27,525 書類上は一度 廃棄処分に なってるが全くの新品だからな 983 01:05:27,525 --> 01:05:29,861 ボリス・コーネフも文句はあるまい 984 01:05:29,861 --> 01:05:32,797 それより船の名前は 決まったのか? 985 01:05:32,797 --> 01:05:36,100 船長はベリョースカ号の名前を つけたかったようですけど 986 01:05:36,100 --> 01:05:39,003 そりゃマズいぞ 余計な注意を引きかねん 987 01:05:39,003 --> 01:05:43,508 ええ それでヤン提督がつけた 名前がアンデューティネス号 988 01:05:43,508 --> 01:05:45,810 アンデューティネス? 989 01:05:45,810 --> 01:05:50,081 「親不孝」か 家出息子が乗るには ピッタリだ あいつらしいな 990 01:05:50,081 --> 01:05:52,817 家出じゃありません ちょっと旅に出るだけで 991 01:05:52,817 --> 01:05:54,752 すぐ帰ってきますよ 992 01:05:54,752 --> 01:05:58,322 ああ 本当に無事に帰ってこいよ 993 01:05:58,322 --> 01:06:00,622 シャルロットが待ってるからな 994 01:06:10,535 --> 01:06:14,806 それにしても せっかく 軍隊という牢獄から脱出しながら 995 01:06:14,806 --> 01:06:18,242 結婚という別の牢獄に 志願して入るとは 996 01:06:18,242 --> 01:06:20,945 あなたも物好きな人ですな 997 01:06:20,945 --> 01:06:26,417 独身生活10年で悟り得ぬことが 1週間の結婚生活で悟れるものさ 998 01:06:26,417 --> 01:06:30,388 よき哲学者の誕生を期待しよう 999 01:06:30,388 --> 01:06:34,559 しかし私が思うに ヤン先輩の生涯最大の戦果は 1000 01:06:34,559 --> 01:06:38,996 今度の花嫁ですよ これこそ奇跡の名にふさわしい 1001 01:06:38,996 --> 01:06:42,934 本来なら先輩なんぞの所へ 降嫁する人じゃありませんからね 1002 01:06:42,934 --> 01:06:46,637 提督 よく こんな人たちを率いて 勝ってこられましたね 1003 01:06:46,637 --> 01:06:48,573 裏切り者ぞろいじゃありませんか 1004 01:06:48,573 --> 01:06:51,609 私の人格は かくて陶冶されたのさ 1005 01:06:51,609 --> 01:06:54,212 はいはい よく言うよ 1006 01:06:54,212 --> 01:06:57,548 ほらほら花婿さん 花嫁さんを ほっといちゃダメじゃない 1007 01:06:57,548 --> 01:07:00,785 おわびのキス! 1008 01:07:00,785 --> 01:07:04,985 キス キス キス… 1009 01:07:18,035 --> 01:07:20,335 お幸せに 1010 01:07:31,282 --> 01:07:33,551 提督たち どうしてるかな? 1011 01:07:33,551 --> 01:07:36,988 中尉 こちらでしたか すぐブリッジに上がってください 1012 01:07:36,988 --> 01:07:39,690 帝国軍の臨検です 1013 01:07:39,690 --> 01:07:42,593 停船せよ しからざれば攻撃する 1014 01:07:42,593 --> 01:07:45,429 停船せよ 停船せよ 1015 01:07:45,429 --> 01:07:48,833 しからざれば攻撃する 停船せよ 1016 01:07:48,833 --> 01:07:51,802 ああ ユリアン どうする?逃げるか 1017 01:07:51,802 --> 01:07:56,674 この先 何回も検問はあるでしょう そのたびに過敏に反応していては 1018 01:07:56,674 --> 01:07:59,510 かえって注意を引いて しまうことになりかねません 1019 01:07:59,510 --> 01:08:03,214 まあ書類上の不備は ないはずですから大丈夫でしょう 1020 01:08:03,214 --> 01:08:07,552 ホントか?お前ら この前 帝国軍の駆逐艦を分捕って 1021 01:08:07,552 --> 01:08:11,152 刑事犯として指名手配 されてるんじゃないのか? 1022 01:08:19,697 --> 01:08:21,997 お役目ご苦労さまです 1023 01:08:25,236 --> 01:08:28,239 船長は? 私です 1024 01:08:28,239 --> 01:08:30,708 船内に妙齢の婦人がいるか? 1025 01:08:30,708 --> 01:08:34,445 は?いえ あいにく 1026 01:08:34,445 --> 01:08:38,382 武器 麻薬 それに商品としての 人間は積載しておらんだろうな 1027 01:08:38,382 --> 01:08:41,986 むろんです 私どもは善良な商人でして 1028 01:08:41,986 --> 01:08:43,921 常に法に従っております 1029 01:08:43,921 --> 01:08:47,792 ご不審な点がございましたら 心ゆくまでお調べください 1030 01:08:47,792 --> 01:08:52,697 うん よし 協力ご苦労 1031 01:08:52,697 --> 01:08:55,666 何なんだ あれは 「占領した敵国の領内で」 1032 01:08:55,666 --> 01:08:58,436 「臨検する権利を 行使してみたかった」 1033 01:08:58,436 --> 01:09:00,404 そんなところじゃないんですか 1034 01:09:00,404 --> 01:09:03,274 「妙齢の婦人はいるか?」だと? いたらどうするってんだ 1035 01:09:03,274 --> 01:09:06,110 むっつりスケベ野郎 駐留軍のシュタインメッツ司令は 1036 01:09:06,110 --> 01:09:09,814 軍律には厳しいと聞いています むやみなことはしないでしょう 1037 01:09:09,814 --> 01:09:12,750 分かるもんか!上層部はともかく 1038 01:09:12,750 --> 01:09:15,353 下っ端まで徹底できているとは 限らねえぞ 1039 01:09:15,353 --> 01:09:18,353 まったく ろくなもんじゃねえよ 1040 01:09:24,061 --> 01:09:29,267 新設する工部省は 運輸 通信 建設 生産 1041 01:09:29,267 --> 01:09:31,202 及び社会資本の整備 1042 01:09:31,202 --> 01:09:34,438 これらを総括して 新帝国の国力そのものを 1043 01:09:34,438 --> 01:09:37,708 増大させていくためのものだ 1044 01:09:37,708 --> 01:09:39,710 シルヴァーベルヒ 卿に問うが 1045 01:09:39,710 --> 01:09:42,546 その長たる者には どのような資質が必要かな? 1046 01:09:42,546 --> 01:09:45,583 まず全体を見渡す政治的な構想力 1047 01:09:45,583 --> 01:09:49,720 実行面での行政処理能力と 組織管理能力 1048 01:09:49,720 --> 01:09:52,390 この3者でしょうな うん 1049 01:09:52,390 --> 01:09:55,192 で 卿自身はそれを備えているか? 1050 01:09:55,192 --> 01:09:59,730 少なくとも 2つは備えているつもりです 1051 01:09:59,730 --> 01:10:04,035 よかろう 工部省を卿に任せよう はあ? 1052 01:10:04,035 --> 01:10:06,704 卿を工部尚書に 任ずると言っている 1053 01:10:06,704 --> 01:10:09,607 私をですか? 不満か? 1054 01:10:09,607 --> 01:10:13,511 ああ いえ とんでもない ただ意外だったもので 1055 01:10:13,511 --> 01:10:18,015 いきなり尚書とは… いえ 謹んで拝命いたします 1056 01:10:18,015 --> 01:10:21,352 ついては卿にもう1つ 非公式な役職を与える 1057 01:10:21,352 --> 01:10:24,889 いずれ計画の公表後に 公式のものとするが 1058 01:10:24,889 --> 01:10:28,793 帝国首都建設長官として フェザーンへの遷都を実現せよ 1059 01:10:28,793 --> 01:10:33,397 遷都… なるほど 1060 01:10:33,397 --> 01:10:37,101 カイザー・ラインハルトが フェザーンへの遷都の意思を示したのは 1061 01:10:37,101 --> 01:10:40,738 これが最初である それは自由惑星同盟領を 1062 01:10:40,738 --> 01:10:44,141 完全に併合した場合 新帝国の版図は 1063 01:10:44,141 --> 01:10:47,712 フェザーンが その中心地に なることを見越してのことである 1064 01:10:47,712 --> 01:10:52,912 すなわち同盟をいずれ完全に 消滅させる意思の表れである 1065 01:10:56,387 --> 01:11:01,025 アンデューティネス号は ポリスーン星域の放棄された補給基地 1066 01:11:01,025 --> 01:11:03,928 ダヤン・ハーンに向かっていた 1067 01:11:03,928 --> 01:11:07,231 ここでメルカッツが率いる 秘密の温存艦隊と 1068 01:11:07,231 --> 01:11:09,531 接触することになっていた 1069 01:11:29,253 --> 01:11:32,022 ポプラン中佐 やあ お若いの 1070 01:11:32,022 --> 01:11:35,626 どうだ? 恋人の1ダースぐらいはできたか 1071 01:11:35,626 --> 01:11:39,397 いずれ何ダースでも だけど今のところは空席です 1072 01:11:39,397 --> 01:11:42,299 かい性なしめ で どうだ 1073 01:11:42,299 --> 01:11:46,103 我らが元帥閣下はフレデリカ姫と 華燭の典を挙げたのか? 1074 01:11:46,103 --> 01:11:49,473 ええ ささやかに 1075 01:11:49,473 --> 01:11:52,977 我らが元帥閣下は 数多くの奇跡を起こしたが 1076 01:11:52,977 --> 01:11:56,313 最たるものはフレデリカ姫の ハートを射止めたことだな 1077 01:11:56,313 --> 01:12:00,251 もっとも物好きな姫の方が 的の前に飛び出したんだろうが 1078 01:12:00,251 --> 01:12:04,054 イゼルローンの他の色男たちは 一体 何をやってたんでしょうね 1079 01:12:04,054 --> 01:12:06,123 まったくだな マシュンゴ 1080 01:12:06,123 --> 01:12:08,826 人は運命には逆らえませんから 1081 01:12:08,826 --> 01:12:12,563 何だそりゃ それにしても お前さんまで地球に行くとはな 1082 01:12:12,563 --> 01:12:17,163 付き合いのいいことだ 人は運命に逆らえませんから 1083 01:12:22,673 --> 01:12:27,311 よく来てくれた ミンツ中尉 ヤン元帥はお元気かな? 1084 01:12:27,311 --> 01:12:31,182 現在 我々は 60隻の艦艇を所有している 1085 01:12:31,182 --> 01:12:34,752 60隻という数字は 集団としては それなりのものだが 1086 01:12:34,752 --> 01:12:37,221 戦力としては ほとんど意味がない 1087 01:12:37,221 --> 01:12:40,458 ヤン提督は あの状況では 帝国軍の目をごまかしうる 1088 01:12:40,458 --> 01:12:42,760 最大級の数をそろえてくださった 1089 01:12:42,760 --> 01:12:45,729 誠に感謝しているが 力は数だ 1090 01:12:45,729 --> 01:12:50,634 現状では100隻単位の巡航艦隊と どうにか戦える程度の力しかない 1091 01:12:50,634 --> 01:12:53,337 ヤン提督が 君をよこされたについては 1092 01:12:53,337 --> 01:12:56,340 何らかのお考えが あってのことと思うが 1093 01:12:56,340 --> 01:12:59,143 それについて ヤン提督より伝言がありました 1094 01:12:59,143 --> 01:13:02,746 口頭でお伝えします 1095 01:13:02,746 --> 01:13:04,748 バーラトの和約 第5条によって 1096 01:13:04,748 --> 01:13:08,185 同盟軍は保有するところの 戦艦及び宇宙母艦の 1097 01:13:08,185 --> 01:13:10,588 全てを破棄しなくては ならなくなりました 1098 01:13:10,588 --> 01:13:15,125 処分の一環として7月16日に レサヴィク星系の空間で 1099 01:13:15,125 --> 01:13:19,029 1820隻の艦が 爆破されることになっています 1100 01:13:19,029 --> 01:13:23,300 ゆえにメルカッツ独立艦隊の 善処を期待する とのことです 1101 01:13:23,300 --> 01:13:25,236 以上 ご報告を終わります 1102 01:13:25,236 --> 01:13:28,806 なるほど 善処か よく分かった 1103 01:13:28,806 --> 01:13:32,977 それでどうかな?ヤン提督は 今後の事態の変化について 1104 01:13:32,977 --> 01:13:35,980 どのような見通しを 持っておいでだろうか 1105 01:13:35,980 --> 01:13:39,683 提督はお心のうちを 全ては語ってくださいませんが 1106 01:13:39,683 --> 01:13:43,554 あのまま隠者として 一生を終わられるとは思えません 1107 01:13:43,554 --> 01:13:47,091 終わりたいとは考えてるだろうな 1108 01:13:47,091 --> 01:13:50,961 現在は待つ時期だと ヤン提督は 考えておられるようです 1109 01:13:50,961 --> 01:13:53,864 一度おっしゃいました 「野に火を放つのに」 1110 01:13:53,864 --> 01:13:56,166 「わざわざ雨期を選んでする 必要はない」 1111 01:13:56,166 --> 01:14:00,037 「いずれ必ず 乾期が来るのだから」とです 1112 01:14:00,037 --> 01:14:03,541 ユリアン 確か帝国から 派遣された弁務官は 1113 01:14:03,541 --> 01:14:06,143 レンネンカンプだったな? そうです 1114 01:14:06,143 --> 01:14:08,078 中佐は人となりをご存じですか? 1115 01:14:08,078 --> 01:14:10,981 私よりメルカッツ閣下の方が お詳しいさ 1116 01:14:10,981 --> 01:14:13,050 いかがです?閣下 1117 01:14:13,050 --> 01:14:16,887 優秀な… そう 優秀といってよい軍人だ 1118 01:14:16,887 --> 01:14:20,591 上には忠実だし 部下には公平だ 1119 01:14:20,591 --> 01:14:25,591 だが軍隊から一歩でも外にある 風景は見えないかもしれない 1120 01:14:41,045 --> 01:14:45,316 ハイネセンへの駐留は 装甲擲弾兵4個連隊 1121 01:14:45,316 --> 01:14:48,552 軽装陸戦兵12個連隊で十分だ 1122 01:14:48,552 --> 01:14:52,423 僭越ながら閣下 それだけの兵力では いささか… 1123 01:14:52,423 --> 01:14:55,859 同盟の奴らが私を害せると 思うなら やってみるがいい 1124 01:14:55,859 --> 01:14:58,529 私は不死身ではないが 私の死はすなわち 1125 01:14:58,529 --> 01:15:01,829 同盟にとっても 滅亡を意味するのだ 1126 01:15:04,401 --> 01:15:06,403 ユリアン君 1127 01:15:06,403 --> 01:15:09,873 待つ時間はどのくらいだと ヤン提督はおっしゃってた? 1128 01:15:09,873 --> 01:15:12,276 はい 5~6年はかかるだろうと 1129 01:15:12,276 --> 01:15:15,779 5~6年か そうだな そのぐらいの時間は必要だろう 1130 01:15:15,779 --> 01:15:20,084 そのぐらい経てばローエングラム王朝にも 隙ができるかもしれんな 1131 01:15:20,084 --> 01:15:22,987 その間 何も異変は起きないでしょうか? 1132 01:15:22,987 --> 01:15:26,790 うーん これは予測というより 願望になるが 1133 01:15:26,790 --> 01:15:31,629 何も起きてほしくないものだ 今までが事が多すぎたからな 1134 01:15:31,629 --> 01:15:34,832 それに我々としても 準備すべきことが残っている 1135 01:15:34,832 --> 01:15:37,735 いたずらに 新帝国に反旗を翻しても 1136 01:15:37,735 --> 01:15:40,971 1日の焦りが 2日の退歩に つながることを思えば 1137 01:15:40,971 --> 01:15:43,007 今 我々に一番必要なのは 1138 01:15:43,007 --> 01:15:46,777 何も起こらない時間 そのものなのかもしれない 1139 01:15:46,777 --> 01:15:50,748 今は何も起こってほしくない いや 起きてはならんのだ 1140 01:15:50,748 --> 01:15:52,883 それは分かるがね 1141 01:15:52,883 --> 01:15:54,885 反和平活動防止法 1142 01:15:54,885 --> 01:15:59,390 帝国との友好を阻害する活動を 禁止するのは まだいいとして 1143 01:15:59,390 --> 01:16:04,094 同盟憲章で保障されている言論 結社の自由を停止してしまうなど 1144 01:16:04,094 --> 01:16:06,096 民主政治の否定ではないかね? 1145 01:16:06,096 --> 01:16:08,098 そんなことは分かっている 1146 01:16:08,098 --> 01:16:10,868 だが これは一種の 緊急避難的処置だ 1147 01:16:10,868 --> 01:16:13,237 今の同盟は 首にロープをかけられて 1148 01:16:13,237 --> 01:16:15,773 つま先だけで立っているような ものだと言ったのは 1149 01:16:15,773 --> 01:16:19,410 君じゃなかったかね? その足元の踏み板を 1150 01:16:19,410 --> 01:16:22,680 帝国は機会さえあれば いつでも外してしまえるんだ 1151 01:16:22,680 --> 01:16:25,582 帝国による同盟の 完全併合をさせないためには 1152 01:16:25,582 --> 01:16:28,519 とにかく帝国に 口実を与えてはならない 1153 01:16:28,519 --> 01:16:31,355 これは大前提だ だとしても 1154 01:16:31,355 --> 01:16:35,526 自由と民主を侵しがたい原理だと 考えてる国民は多い 1155 01:16:35,526 --> 01:16:38,996 軍の内部にもな 彼らは納得するかな? 1156 01:16:38,996 --> 01:16:41,432 逆に帝国への反感を募らせて 1157 01:16:41,432 --> 01:16:44,034 暴発する方向へ 追い込むハメにならないか 1158 01:16:44,034 --> 01:16:47,738 私はそれが心配なんだ 1159 01:16:47,738 --> 01:16:50,138 とにかく よく考えてくれ 1160 01:16:55,279 --> 01:16:59,579 ああ 私だ ヤン退役元帥への 監視はどうなっているかね 1161 01:17:12,730 --> 01:17:14,965 あなた? あの車… 1162 01:17:14,965 --> 01:17:17,000 ああ ずっといますわ 1163 01:17:17,000 --> 01:17:21,105 湖で釣りをしていた時も 昨夜の山荘の外にも 1164 01:17:21,105 --> 01:17:24,842 監視されてるみたいですわね 1165 01:17:24,842 --> 01:17:28,645 帝国軍かな? 車は同盟軍情報部のものです 1166 01:17:28,645 --> 01:17:30,581 ほう なんで分かる? 1167 01:17:30,581 --> 01:17:34,818 ナンバーが情報部で使う偽造ナンバーの パターンに当てはまりますから 1168 01:17:34,818 --> 01:17:39,723 なるほど 君の記憶力が相変わらず さえているのは うれしいが 1169 01:17:39,723 --> 01:17:42,326 あまり歓迎できる事態じゃ なさそうだな 1170 01:17:42,326 --> 01:17:44,326 ええ 1171 01:17:56,740 --> 01:17:59,076 どうぞ 1172 01:17:59,076 --> 01:18:02,112 あっ どうしたんですか これは 1173 01:18:02,112 --> 01:18:04,915 俺も地球に行くのさ 中佐が? 1174 01:18:04,915 --> 01:18:09,153 心配するな メルカッツ提督の 許可はいただいてある 1175 01:18:09,153 --> 01:18:11,088 ところで地球には女はいるかな? 1176 01:18:11,088 --> 01:18:13,056 それは いると思います 1177 01:18:13,056 --> 01:18:17,461 おっと 俺が言っているのは 生物学上の女のことじゃない 1178 01:18:17,461 --> 01:18:20,898 成熟した 男の価値の分かる いい女のことだぞ 1179 01:18:20,898 --> 01:18:24,701 さあ そこまでは 僕には保証しかねます 1180 01:18:24,701 --> 01:18:27,571 へっ まあいいか 実のところ 1181 01:18:27,571 --> 01:18:31,975 生物学上の女であれば 文句は言わない という心境でな 1182 01:18:31,975 --> 01:18:34,545 なんせ ここは女っ気が少なすぎる 1183 01:18:34,545 --> 01:18:38,115 参加した時はそこまで 考えなかったのが不覚の極みだ 1184 01:18:38,115 --> 01:18:40,050 ご心労お察しします 1185 01:18:40,050 --> 01:18:42,686 あっ お前 かわいくないね 1186 01:18:42,686 --> 01:18:45,589 言うことが だんだん憎らしくなってくる 1187 01:18:45,589 --> 01:18:47,524 イゼルローンに 初めてやってきた頃は 1188 01:18:47,524 --> 01:18:50,093 陶器人形みたいに かわいかったがな 1189 01:18:50,093 --> 01:18:52,596 それにしても中佐が留守にしたら 1190 01:18:52,596 --> 01:18:55,065 残されたパイロットたちは どうなりますか? 1191 01:18:55,065 --> 01:18:57,601 コールドウェル大尉に任せるさ 1192 01:18:57,601 --> 01:19:00,871 奴も そろそろ指揮官として 独り立ちしていい頃だ 1193 01:19:00,871 --> 01:19:03,774 いつまでも俺に頼っていたんじゃ 成長がないからな 1194 01:19:03,774 --> 01:19:07,711 地球に美女がいなくても 僕を恨まないでくださいよ 1195 01:19:07,711 --> 01:19:11,582 男に飢えた美女が群れをなして いるよう お前さんも祈ってくれ 1196 01:19:11,582 --> 01:19:14,582 そうだ ちょっと付き合え 紹介したい奴がいるんだ 1197 01:19:22,059 --> 01:19:25,796 クロイツェル伍長 1198 01:19:25,796 --> 01:19:28,532 あいつは第2の オリビエ・ポプランは無理でも 1199 01:19:28,532 --> 01:19:32,135 第2のイワン・コーネフには なれるかもしれん 1200 01:19:32,135 --> 01:19:35,935 おい ヘルメットを取って挨拶しろ いつも話しているミンツ中尉だ 1201 01:19:42,512 --> 01:19:45,182 カーテローゼ・フォン・ クロイツェル伍長です 1202 01:19:45,182 --> 01:19:50,320 ミンツ中尉のおうわさは ポプラン中佐から よく伺っております 1203 01:19:50,320 --> 01:19:52,723 あ… よろしく 1204 01:19:52,723 --> 01:19:55,025 メカニックと打ち合わせが ありますので 1205 01:19:55,025 --> 01:19:56,960 失礼させていただいて よろしいでしょうか? 1206 01:19:56,960 --> 01:20:00,831 うん 1207 01:20:00,831 --> 01:20:04,301 なかなか美形だろ 言っておくが 俺は手を出していないぞ 1208 01:20:04,301 --> 01:20:07,070 15歳では まだ俺の守備範囲外だ 1209 01:20:07,070 --> 01:20:09,506 そんなことは聞いてませんよ 1210 01:20:09,506 --> 01:20:13,377 酒と女はな うまくなるには 醸成期間が必要なんだ 1211 01:20:13,377 --> 01:20:16,346 カリンも もう2年もすればな カリン? 1212 01:20:16,346 --> 01:20:18,348 カーテローゼの愛称さ どうだ? 1213 01:20:18,348 --> 01:20:21,852 生意気盛りの年齢同士 話が合うと思うんだが 1214 01:20:21,852 --> 01:20:24,721 先方は こちらを 問題にしていないようですよ 1215 01:20:24,721 --> 01:20:28,625 それに第一 そんなことしている 時間がありません 1216 01:20:28,625 --> 01:20:31,495 問題にさせるんだ! 時間も作るんだよ 1217 01:20:31,495 --> 01:20:33,964 お前さん せっかく いい顔に生まれついたのに 1218 01:20:33,964 --> 01:20:35,899 資源を死蔵してどうする 1219 01:20:35,899 --> 01:20:38,268 ヤン提督みたいに ボケっと座っていたら 1220 01:20:38,268 --> 01:20:40,337 美女が向こうから 近づいてくるなんて 1221 01:20:40,337 --> 01:20:43,840 そんなことを期待していたら 大間違いだからな 1222 01:20:43,840 --> 01:20:47,711 心がけておきます ところで名前から見ると 1223 01:20:47,711 --> 01:20:50,747 帝国からの亡命者らしいですね あの子 1224 01:20:50,747 --> 01:20:55,018 だろうと思うが 家族のことは ほとんど話さんのさ 1225 01:20:55,018 --> 01:20:59,923 事情があるのは間違いないが 知りたければ自分で聞くんだな 1226 01:20:59,923 --> 01:21:02,923 レッスン1だ 不肖の弟子よ 1227 01:21:08,565 --> 01:21:10,965 前にどこかで会ったかな 1228 01:21:32,856 --> 01:21:36,356 何よ あんな軟弱そうな奴 1229 01:21:39,396 --> 01:21:43,800 7月になるまでに戦艦奪取の 計画を立てておかねばならんな 1230 01:21:43,800 --> 01:21:45,736 はい 心得ております 1231 01:21:45,736 --> 01:21:50,307 私の役割はこれらの戦力を 維持し 温存して 1232 01:21:50,307 --> 01:21:52,909 後日に備えることだ 1233 01:21:52,909 --> 01:21:56,646 後日の対応は私ではなく もっと若くて 1234 01:21:56,646 --> 01:22:00,450 過去の陰影を引きずっていない 人物のために残るだろう 1235 01:22:00,450 --> 01:22:03,150 つまりヤン・ウェンリー提督ですか 1236 01:22:05,922 --> 01:22:08,825 宇宙歴799年 1237 01:22:08,825 --> 01:22:11,762 新帝国歴1年6月 1238 01:22:11,762 --> 01:22:15,499 歴史は 再び激動の時代に向けて 1239 01:22:15,499 --> 01:22:18,399 静かに動き出していた 1240 01:24:24,961 --> 01:24:27,731 その惑星は人類発祥の地であり 1241 01:24:27,731 --> 01:24:31,601 かつては人類社会に君臨し 栄華を極めていた 1242 01:24:31,601 --> 01:24:35,272 その栄光を取り戻そうと うごめく勢力のルーツを求めて 1243 01:24:35,272 --> 01:24:38,675 ユリアンは はるか辺境の惑星を 目指して旅をする 1244 01:24:38,675 --> 01:24:41,044 その惑星の名は地球 1245 01:24:41,044 --> 01:24:45,882 次回 「銀河英雄伝説」第56話 「地球へ」 1246 01:24:45,882 --> 01:24:47,882 銀河の歴史が また1ページ 1247 01:29:02,739 --> 01:29:07,544 僕らが向かっている地球 それは人類の発祥の地だ 1248 01:29:07,544 --> 01:29:10,280 だが今は歴史の中に埋もれ 1249 01:29:10,280 --> 01:29:14,150 忘れられた辺境の一惑星に 過ぎない 1250 01:29:14,150 --> 01:29:16,085 なぜ そうなったのか 1251 01:29:16,085 --> 01:29:19,289 学校の歴史の授業で 触れられた以上のことを 1252 01:29:19,289 --> 01:29:21,524 僕も よく知らない 1253 01:29:21,524 --> 01:29:27,797 この旅の時間を利用して 改めて振り返ってみようと思う 1254 01:29:27,797 --> 01:29:29,732 かつて人類は 地球という 1255 01:29:29,732 --> 01:29:33,036 ただ1つの惑星の表面で 生活していた 1256 01:29:33,036 --> 01:29:35,305 西暦2039年 1257 01:29:35,305 --> 01:29:39,209 当時 地球を二分する勢力であった ノーザン・コンドミニアムと 1258 01:29:39,209 --> 01:29:41,678 ユナイテッド・ステーツ・オブ・ ユーラブリカは 1259 01:29:41,678 --> 01:29:43,978 全面戦争に突入した 1260 01:29:58,895 --> 01:30:01,798 熱核兵器を使用した 十三日戦争によって 1261 01:30:01,798 --> 01:30:04,501 世界の主な大都市群は壊滅し 1262 01:30:04,501 --> 01:30:08,301 以後 90年にわたる 抗争と戦乱の時代が続いた 1263 01:30:10,306 --> 01:30:14,210 人類の総人口も10億にまで減少し 1264 01:30:14,210 --> 01:30:18,414 生き残った人々は 統一政体の樹立を願っていました 1265 01:30:18,414 --> 01:30:22,385 それは単に安定した社会秩序の 確立を望むというより 1266 01:30:22,385 --> 01:30:27,123 これ以上の戦争をなくすためには 従来の主権国家という考え方を 1267 01:30:27,123 --> 01:30:31,961 捨て去ろうとしたと 言えるのではないでしょうか 1268 01:30:31,961 --> 01:30:34,330 西暦2129年 1269 01:30:34,330 --> 01:30:38,968 そうした もくろみのもとに 地球統一政府が誕生する 1270 01:30:38,968 --> 01:30:42,171 統一政府の首都は オーストラリア大陸の東北部 1271 01:30:42,171 --> 01:30:47,010 太平洋に面したブリスベンに 定められ 再建は急速に進んだ 1272 01:30:47,010 --> 01:30:49,979 人々は熱狂的に 大小の事業に取り組み 1273 01:30:49,979 --> 01:30:53,650 都市を建設し 荒野を緑化した 1274 01:30:53,650 --> 01:30:56,619 更に宇宙という フロンティアに歩みを進め 1275 01:30:56,619 --> 01:31:00,957 西暦2166年には 木星の衛星 イオに 1276 01:31:00,957 --> 01:31:03,557 開発基地を建設するに至った 1277 01:31:05,595 --> 01:31:09,866 この当時 統一政府内において 最も活力的な部局は 1278 01:31:09,866 --> 01:31:12,735 宇宙省だったと言えるでしょう 1279 01:31:12,735 --> 01:31:15,538 その巨大な機構の本部は 月面に置かれ 1280 01:31:15,538 --> 01:31:17,473 2200年代の半ばには 1281 01:31:17,473 --> 01:31:20,910 その人口は首都ブリスベンを しのぐに至り 1282 01:31:20,910 --> 01:31:25,281 「ブリスベンは地球の首都だが ルナシティーは太陽系の首都だ」 1283 01:31:25,281 --> 01:31:27,984 とまで言われたのです 1284 01:31:27,984 --> 01:31:31,688 それから しばらくの間 人類の実質的な生存圏は 1285 01:31:31,688 --> 01:31:34,657 太陽系内部にとどまった 1286 01:31:34,657 --> 01:31:40,396 2253年には最初の恒星間探査船が アルファ・ケンタウリに発進したが 1287 01:31:40,396 --> 01:31:44,968 20年後になっても帰還せず 人々を落胆させた 1288 01:31:44,968 --> 01:31:49,372 もっとも当時の人類の総人口は まだ40億人であったから 1289 01:31:49,372 --> 01:31:54,944 太陽系内部だけでも 十分な 居住空間が確保されていたが 1290 01:31:54,944 --> 01:31:58,247 西暦2360年 1291 01:31:58,247 --> 01:32:02,118 アントネル・ヤノーシュ博士を 長とする 宇宙省技術陣は 1292 01:32:02,118 --> 01:32:06,956 ついに人類の夢であった 超光速航行を実現させた 1293 01:32:06,956 --> 01:32:09,759 ワープ航法は最初 その距離も短く 1294 01:32:09,759 --> 01:32:15,031 人体 特に女性の出産能力に 著しい悪影響が見られたが 1295 01:32:15,031 --> 01:32:19,331 2391年には 完全な実用化にこぎつけた 1296 01:32:21,304 --> 01:32:23,673 2402年 1297 01:32:23,673 --> 01:32:27,477 カノープス星系に 居住可能の惑星が発見され 1298 01:32:27,477 --> 01:32:30,279 恒星間移住時代を迎える 1299 01:32:30,279 --> 01:32:32,949 だが それは単一の権力体制に 1300 01:32:32,949 --> 01:32:36,819 亀裂が生じる第一歩でも あったのです 1301 01:32:36,819 --> 01:32:41,524 2404年に 第一次恒星移民団が進発した時 1302 01:32:41,524 --> 01:32:45,361 ブリスベンでは 統一政府の首脳たちが額を集め 1303 01:32:45,361 --> 01:32:49,666 あまりにも遠い入植地に どの程度の自治権を認めるか 1304 01:32:49,666 --> 01:32:53,569 延々と討議を続けていたのでした 1305 01:32:53,569 --> 01:32:56,072 (ノックの音) どうぞ 1306 01:32:56,072 --> 01:32:59,742 おっ なんだ なんだ 1人で隠れて何を見てるんだ 1307 01:32:59,742 --> 01:33:01,678 ポルノか? まさか 1308 01:33:01,678 --> 01:33:05,114 ちょっと地球について 予習していたんですよ 1309 01:33:05,114 --> 01:33:07,784 なんだ 不健全な奴だな 1310 01:33:07,784 --> 01:33:10,687 一緒に ご覧になります? 1311 01:33:10,687 --> 01:33:13,690 まあ他にやることもないしな 1312 01:33:13,690 --> 01:33:15,925 色っぽいシーンある? 1313 01:33:15,925 --> 01:33:18,261 ありません 1314 01:33:18,261 --> 01:33:21,698 最初は宇宙省航路局 航行安全部として 1315 01:33:21,698 --> 01:33:26,235 ささやかに発足した一機構が 宇宙省保安局に昇格し 1316 01:33:26,235 --> 01:33:29,272 省次官を長官とする 宇宙警備隊になり 1317 01:33:29,272 --> 01:33:34,944 ついに西暦2484年 宇宙軍の成立を見る 1318 01:33:34,944 --> 01:33:37,547 これは統一政府の成立以前に 1319 01:33:37,547 --> 01:33:41,184 天空の高みから弱小諸国を 強迫し 威圧した 1320 01:33:41,184 --> 01:33:43,152 ノーザン・コンドミニアム 宇宙軍とは 1321 01:33:43,152 --> 01:33:45,688 まったく異なる性格のもので 1322 01:33:45,688 --> 01:33:47,924 市民の航行の安全を確保し 1323 01:33:47,924 --> 01:33:51,394 犯罪と事故から 人権及び経済機構を守るための 1324 01:33:51,394 --> 01:33:54,597 治安システムであると 説明されました 1325 01:33:54,597 --> 01:33:58,301 歴史的に見て あらゆる軍隊が 平和防衛を唱えつつ 1326 01:33:58,301 --> 01:34:01,738 侵略と外征に 狂奔したものであるという事実を 1327 01:34:01,738 --> 01:34:05,608 この時代の人々もまた 忘れ去ってしまっていたのです 1328 01:34:05,608 --> 01:34:09,912 「軍隊とは一国内における 最強の暴力組織である」 1329 01:34:09,912 --> 01:34:12,482 という命題は 歴史を知る者にとって 1330 01:34:12,482 --> 01:34:14,417 いわば常識でしょう 1331 01:34:14,417 --> 01:34:17,854 しかも 全人類の統一国家においては 1332 01:34:17,854 --> 01:34:23,092 外敵は存在し得ないのですから 最小限の武力で事足りるはずです 1333 01:34:23,092 --> 01:34:26,963 であるにもかかわらず この宇宙軍は際限なく肥大化し 1334 01:34:26,963 --> 01:34:31,063 その組織内部は 著しい退廃を続けたのです 1335 01:34:33,169 --> 01:34:37,507 高級軍人とは 武装した貴族の 別名であるのか! 1336 01:34:37,507 --> 01:34:40,977 1つの例として 第4方面総監部に所属する 1337 01:34:40,977 --> 01:34:44,947 宇宙空母デキシーランドの艦長 アーノルド・F・バーチ大佐の 1338 01:34:44,947 --> 01:34:48,785 優雅な生活ぶりを 拝見するとしよう 1339 01:34:48,785 --> 01:34:53,055 彼の部屋は執務室 居間 寝室 バスルームから成り 1340 01:34:53,055 --> 01:34:55,958 総面積 240平米 1341 01:34:55,958 --> 01:34:59,328 ちなみに彼の部屋の下は 兵士たちの居室であって 1342 01:34:59,328 --> 01:35:02,198 同じ面積に 90名が詰め込まれている 1343 01:35:02,198 --> 01:35:06,068 労働力の面から言えば 艦長に副官がつくのは当然として 1344 01:35:06,068 --> 01:35:09,572 女性秘書1名 従卒6名 専用コック2名 1345 01:35:09,572 --> 01:35:13,009 専用看護婦1名が彼に仕えている 1346 01:35:13,009 --> 01:35:16,879 むろん彼らの給料は 国民の 租税の中から支払われるのだが 1347 01:35:16,879 --> 01:35:21,250 より悲しみを誘うのは 専用看護婦を必要とする病人が 1348 01:35:21,250 --> 01:35:23,619 一艦の指揮を 押しつけられているという 1349 01:35:23,619 --> 01:35:25,588 非人道的事実である 1350 01:35:25,588 --> 01:35:27,990 つまらん皮肉を言うな! そうだ そうだ 1351 01:35:27,990 --> 01:35:31,227 この告発は かえって非難の的となった 1352 01:35:31,227 --> 01:35:33,162 既に議会も言論界も 1353 01:35:33,162 --> 01:35:36,465 軍部の代弁者が 多数派を占めていたのである 1354 01:35:36,465 --> 01:35:39,101 また この頃になると恒星間航行も 1355 01:35:39,101 --> 01:35:43,372 技術と距離の壁を前にして ひとつの限界が見えてきていた 1356 01:35:43,372 --> 01:35:46,309 2480年 人類の生存圏は 1357 01:35:46,309 --> 01:35:50,580 地球を中心とする半径60光年の 球状に広がっていたが 1358 01:35:50,580 --> 01:35:53,983 2530年には半径84光年 1359 01:35:53,983 --> 01:35:56,886 2580年には91光年 1360 01:35:56,886 --> 01:36:02,792 2630年には94光年と 停滞の状況は明らかだった 1361 01:36:02,792 --> 01:36:05,528 そんな中にもかかわらず 軍隊だけが 1362 01:36:05,528 --> 01:36:08,998 肥大化を続けていたのだった 1363 01:36:08,998 --> 01:36:11,901 同時に経済的な不公平も 募っていた 1364 01:36:11,901 --> 01:36:15,872 資源の枯渇した地球は 既に第一次産業を放棄し 1365 01:36:15,872 --> 01:36:19,275 資本と金融のみによって 植民星の産業を支配し 1366 01:36:19,275 --> 01:36:22,478 利益と資源を 独占的に吸い上げていた 1367 01:36:22,478 --> 01:36:26,682 政治的には植民星には それぞれの 自治権が認められていたが 1368 01:36:26,682 --> 01:36:28,985 それは形だけのものに過ぎず 1369 01:36:28,985 --> 01:36:31,954 また あくまでも地球の 一部分としての権利であって 1370 01:36:31,954 --> 01:36:35,191 地球と対等の関係ではなかった 1371 01:36:35,191 --> 01:36:38,728 汎人類評議会という機構も 設けられてはいたが 1372 01:36:38,728 --> 01:36:41,631 代議員の7割は地球からの選出で 1373 01:36:41,631 --> 01:36:45,001 議決は7割の賛同を 必要としていたので 1374 01:36:45,001 --> 01:36:48,437 実質的には 地球以外の植民星からの動議が 1375 01:36:48,437 --> 01:36:51,807 可決されることは皆無だった 1376 01:36:51,807 --> 01:36:53,743 地球資本の圧力によって 1377 01:36:53,743 --> 01:36:56,512 単一作物の栽培を 強制された揚げ句 1378 01:36:56,512 --> 01:37:00,416 その作物を買いたたかれ 飢餓に瀕した植民星もあるのだ! 1379 01:37:00,416 --> 01:37:04,253 かくのごとき富の地球への偏在を 是正すべきではないのか! 1380 01:37:04,253 --> 01:37:07,156 そうだ! 是正しろ! 1381 01:37:07,156 --> 01:37:10,359 植民星の人民が貧困なのは 1382 01:37:10,359 --> 01:37:13,262 彼ら自身の無能さに原因がある 1383 01:37:13,262 --> 01:37:16,766 我々 地球市民に 罪があるなどというのは 1384 01:37:16,766 --> 01:37:22,571 自立心と向上心を欠く 奴隷的精神の表れでしかない! 1385 01:37:22,571 --> 01:37:25,441 当時 地球には 資源が欠けていました 1386 01:37:25,441 --> 01:37:29,312 そして地球人には 想像力が欠けていました 1387 01:37:29,312 --> 01:37:33,182 想像力の欠如するところ 地球の住人たちは傲然と 1388 01:37:33,182 --> 01:37:36,552 強者の論理を貫いたのです 1389 01:37:36,552 --> 01:37:40,089 強者の強者たるゆえんは 武力と富であった 1390 01:37:40,089 --> 01:37:43,793 資本主義の名の下に 地球は植民星の富を収奪し 1391 01:37:43,793 --> 01:37:46,829 それによって軍事力を強化した 1392 01:37:46,829 --> 01:37:50,099 いわば植民星の人々は 自分たちを監視し 1393 01:37:50,099 --> 01:37:54,370 弾圧する兵士たちを 養わされたのである 1394 01:37:54,370 --> 01:37:57,273 忍耐の極みに達した植民星側では 1395 01:37:57,273 --> 01:38:02,545 西暦2682年に至り 結束して 地球側に要求を突きつけた 1396 01:38:02,545 --> 01:38:05,414 第1に肥大化した軍備の縮小 1397 01:38:05,414 --> 01:38:10,319 第2に汎人類評議会の議席数を 人口に応じた配分に変えること 1398 01:38:10,319 --> 01:38:13,556 第3に地球資本による 植民星に対する 1399 01:38:13,556 --> 01:38:16,258 内政干渉をやめること 1400 01:38:16,258 --> 01:38:18,294 これに対して地球は まず 1401 01:38:18,294 --> 01:38:22,698 汎人類評議会の分担金の拠出を 停止することで応じたが 1402 01:38:22,698 --> 01:38:27,870 植民星の不満を抑えるべく 対策を講じる必要に迫られた 1403 01:38:27,870 --> 01:38:32,041 当時 反地球派の急先鋒は シリウス星系でした 1404 01:38:32,041 --> 01:38:34,677 地球はこれを 逆に利用することを考え 1405 01:38:34,677 --> 01:38:38,114 意図的に 怪情報を流し始めたのです 1406 01:38:38,114 --> 01:38:41,784 いわく「シリウスが事あるごとに 地球を非難するのは」 1407 01:38:41,784 --> 01:38:44,687 「平等を目指してなどではなく 地球に代わって」 1408 01:38:44,687 --> 01:38:47,957 「人類社会の支配者たらんとする 野心のためである」 1409 01:38:47,957 --> 01:38:51,527 「シリウスこそ 地球と各植民星の共通の敵であり」 1410 01:38:51,527 --> 01:38:53,863 「人類を脅かす存在なのである」 1411 01:38:53,863 --> 01:38:56,565 「シリウスは着々と国力を蓄え」 1412 01:38:56,565 --> 01:38:59,535 「軍備を増強し スパイ網を完成させつつある」 1413 01:38:59,535 --> 01:39:02,371 「シリウスに注意せよ」 1414 01:39:02,371 --> 01:39:05,141 俗に言う「シリウス脅威論」です 1415 01:39:05,141 --> 01:39:08,044 最初 地球は 悪意に満ちた喜びをもって 1416 01:39:08,044 --> 01:39:11,981 シリウスの虚像が拡大していくのを 見守っていました しかし 1417 01:39:11,981 --> 01:39:15,284 地球がシリウスの脅威を 誇大に宣伝していくうちに 1418 01:39:15,284 --> 01:39:17,686 計算外の効果が表れてきました 1419 01:39:17,686 --> 01:39:21,223 シリウス自身が 地球を凌駕せんとする実力と 1420 01:39:21,223 --> 01:39:24,126 意志の存在を 信じ始めてしまったのです 1421 01:39:24,126 --> 01:39:29,526 つまり うわさに乗せられる形で その気になってしまったのです 1422 01:39:31,600 --> 01:39:34,870 シリウスを仮想敵に仕立てる 地球の政略は 1423 01:39:34,870 --> 01:39:36,906 失笑すべき結果を生んだ 1424 01:39:36,906 --> 01:39:40,042 いくつかの植民星が 地球に対する反感のあまり 1425 01:39:40,042 --> 01:39:43,646 シリウスのほうに 身を寄せ始めたのである 1426 01:39:43,646 --> 01:39:47,583 「地球の専横に反対するには シリウスに頼るほかない」 1427 01:39:47,583 --> 01:39:52,922 そう思わせたのは 他ならぬ地球自身だったのです 1428 01:39:52,922 --> 01:39:57,093 かくして反地球陣営の 盟主の座についたシリウスに対し 1429 01:39:57,093 --> 01:40:00,062 地球は武力による懲罰を 加えることを決し 1430 01:40:00,062 --> 01:40:04,266 同時に反地球勢力を 一掃することを考えた 1431 01:40:04,266 --> 01:40:07,470 西暦2689年 1432 01:40:07,470 --> 01:40:12,608 地球はシリウスが各植民星の 警備隊を集めて合同訓練を行い 1433 01:40:12,608 --> 01:40:17,947 重火器の供与を約束したことを 口実に先制攻撃を仕掛けた 1434 01:40:17,947 --> 01:40:21,917 植民星連合軍は 宇宙に 飛び立つこともかなわずに敗北し 1435 01:40:21,917 --> 01:40:25,020 シリウスの主星 第6惑星ロンドリーナは 1436 01:40:25,020 --> 01:40:27,556 地球軍に制圧された 1437 01:40:27,556 --> 01:40:32,394 勝利を収めはしたものの 地球軍の綱紀の低下は著しかった 1438 01:40:32,394 --> 01:40:35,698 現地司令部によって 膨大な数字の操作が行われ 1439 01:40:35,698 --> 01:40:38,601 押収した物資の量は 過少に報告され 1440 01:40:38,601 --> 01:40:43,339 実数との差は高級士官たちの懐に しまいこまれた 1441 01:40:43,339 --> 01:40:46,742 一方 敵軍の戦死者数は 過大に報告され 1442 01:40:46,742 --> 01:40:50,746 実数60万人のところが 150万人に水増しされたが 1443 01:40:50,746 --> 01:40:52,882 それを もっともらしく見せるため 1444 01:40:52,882 --> 01:40:56,118 非戦闘員の大量虐殺が 行われたうえ 1445 01:40:56,118 --> 01:40:58,053 1人の死体を切断して 1446 01:40:58,053 --> 01:41:03,025 何人分もの死体に見せかける などという蛮行が平然と行われた 1447 01:41:03,025 --> 01:41:05,928 更には味方の戦死者を 過少に報告し 1448 01:41:05,928 --> 01:41:11,066 死者に対して送られてきた給料を 着服した士官まで実在する 1449 01:41:11,066 --> 01:41:13,369 これらの事実を告発したのは 1450 01:41:13,369 --> 01:41:17,106 現地に潜入して取材した 一報道記者であったが 1451 01:41:17,106 --> 01:41:19,041 告発を受けた軍法会議は 1452 01:41:19,041 --> 01:41:21,744 被告である地球軍士官の 証言のみを採用し 1453 01:41:21,744 --> 01:41:23,679 訴えを却下したばかりか 1454 01:41:23,679 --> 01:41:26,382 告発した記者の 売名行為と決めつけて 1455 01:41:26,382 --> 01:41:28,918 誣告罪で逆告訴した 1456 01:41:28,918 --> 01:41:31,320 この事件に味をしめた地球軍は 1457 01:41:31,320 --> 01:41:34,223 もはや軍人というより 盗賊集団と化して 1458 01:41:34,223 --> 01:41:38,093 次なる戦場を探し求めたのです 1459 01:41:38,093 --> 01:41:40,996 その戦場に選ばれたのが 惑星ロンドリーナの 1460 01:41:40,996 --> 01:41:44,500 経済の中心であった ラグランシティーであった 1461 01:41:44,500 --> 01:41:49,138 前回の戦闘で敗れた 植民星連合軍の敗残兵の一部が 1462 01:41:49,138 --> 01:41:53,042 武器を持ったままラグランシティーに 逃げ込んだのは事実であった 1463 01:41:53,042 --> 01:41:56,779 しかし地球軍が重視したのは このラグランシティーが 1464 01:41:56,779 --> 01:41:59,415 惑星ロンドリーナの 豊富な天然資源を 1465 01:41:59,415 --> 01:42:03,919 生産し 集散する 中心であったことである 1466 01:42:03,919 --> 01:42:06,522 地球軍は機械化野戦師団15個 1467 01:42:06,522 --> 01:42:10,259 空中攻撃師団4個 都市型戦闘師団6個をもって 1468 01:42:10,259 --> 01:42:15,397 ラグランシティーを完全包囲し 突入の態勢を整えた 1469 01:42:15,397 --> 01:42:18,100 時のラグラン市長 ジョセフ・マサーリックが 1470 01:42:18,100 --> 01:42:21,003 病身をおして 攻撃回避のために奔走し 1471 01:42:21,003 --> 01:42:25,741 地球軍内部にあっても 総司令部作戦局次長クレランボー中将ら 1472 01:42:25,741 --> 01:42:30,446 一部良識派の努力もあって 突入は2度にわたって延期された 1473 01:42:30,446 --> 01:42:34,083 しかし大兵力の包囲下に 置かれた市内において 1474 01:42:34,083 --> 01:42:37,519 敗残兵を引き渡すことによって 攻撃回避が図れると 1475 01:42:37,519 --> 01:42:40,823 短絡した一部勢力が 自警団を組織して 1476 01:42:40,823 --> 01:42:44,827 敗残兵狩りを始め 各所で銃撃戦が発生した 1477 01:42:44,827 --> 01:42:48,564 これを奇貨とした地球軍は 攻撃を開始する 1478 01:42:48,564 --> 01:42:53,202 この時 兵士に下された命令は 過激を極めた 1479 01:42:53,202 --> 01:42:56,605 「武器を所有し 抵抗する者は 射殺せよ」 1480 01:42:56,605 --> 01:42:59,174 「なお 武器を所有すると 疑われる者」 1481 01:42:59,174 --> 01:43:01,577 「抵抗の可能性ありと みなされる者」 1482 01:43:01,577 --> 01:43:04,780 「逃亡や隠匿のおそれがありと 判断される者も」 1483 01:43:04,780 --> 01:43:07,583 「これに準じて処置すべし」 1484 01:43:07,583 --> 01:43:11,453 これは事実上の無差別殺人を 扇動したものであった 1485 01:43:11,453 --> 01:43:13,389 市内に突入した地球軍は 1486 01:43:13,389 --> 01:43:16,325 公認された殺りくと破壊を ほしいままにし 1487 01:43:16,325 --> 01:43:19,228 黙認された暴行と略奪に熱中した 1488 01:43:19,228 --> 01:43:22,528 後の世に言う ブラッディ・ナイトの始まりである 1489 01:43:24,833 --> 01:43:28,704 市立美術館に収蔵されていた 絵画や宝石細工は強奪され 1490 01:43:28,704 --> 01:43:31,707 貴重な古書の類いは 価値を理解しない兵士たちに 1491 01:43:31,707 --> 01:43:34,977 火中に放り込まれた 1492 01:43:34,977 --> 01:43:38,547 市内北地区には ダイヤモンド原石の研磨工場 1493 01:43:38,547 --> 01:43:41,950 ゴールドやプラチナの 加工場などが集中しており 1494 01:43:41,950 --> 01:43:44,953 空から殺到した 第2空中攻撃師団と 1495 01:43:44,953 --> 01:43:48,424 陸から侵入した 第5都市型戦闘師団とで 1496 01:43:48,424 --> 01:43:53,395 獲物の奪い合いになり 醜悪な同士討ちが発生した 1497 01:43:53,395 --> 01:43:57,132 双方で1500人の死者が出たが その死体の中には 1498 01:43:57,132 --> 01:44:00,703 腹部を切り裂かれた痕跡の あるものが多数見られた 1499 01:44:00,703 --> 01:44:02,971 これは飲み込んだダイヤ原石を 1500 01:44:02,971 --> 01:44:06,442 胃を裂かれて強奪されたものと 推定された 1501 01:44:06,442 --> 01:44:10,346 これと同種の被害は民間人の間に その100倍も生じたが 1502 01:44:10,346 --> 01:44:14,683 中には軍用ナイフでアゴを裂かれて 金歯を抜き取られた老人や 1503 01:44:14,683 --> 01:44:16,618 耳ごとピアスを奪われたり 1504 01:44:16,618 --> 01:44:20,818 指ごと指輪を切り取られた 女性などが続出した 1505 01:44:24,360 --> 01:44:26,295 このブラッディ・ナイトの10時間で 1506 01:44:26,295 --> 01:44:30,866 地球軍によって殺害された ラグラン市民は90万人を超え 1507 01:44:30,866 --> 01:44:33,702 破壊と略奪によって 与えられた損害は 1508 01:44:33,702 --> 01:44:36,271 150億クレジットにも及んだ 1509 01:44:36,271 --> 01:44:40,709 だが地球軍は当初 この事実を否定した 1510 01:44:40,709 --> 01:44:43,078 ラグラン市において虐殺や略奪が 1511 01:44:43,078 --> 01:44:46,081 行われたという事実は 一切 存在しない 1512 01:44:46,081 --> 01:44:50,819 地球軍の名誉を傷つけようとする 反逆者による ねつ造である 1513 01:44:50,819 --> 01:44:53,722 その3日後 軍部の発表は一転する 1514 01:44:53,722 --> 01:44:56,125 虐殺と略奪は確かにあった 1515 01:44:56,125 --> 01:44:59,595 ただし至って小規模で 死者は2万人程度である 1516 01:44:59,595 --> 01:45:01,897 しかも その加害者は 地球軍ではなく 1517 01:45:01,897 --> 01:45:04,733 同市に潜伏した 反地球派ゲリラであり 1518 01:45:04,733 --> 01:45:07,469 事件後 自らの犯罪を 地球軍になすりつけ 1519 01:45:07,469 --> 01:45:11,073 反地球運動に利用しようと したものである すなわち 1520 01:45:11,073 --> 01:45:15,677 同市には依然 ゲリラが 潜伏していると思われる 1521 01:45:15,677 --> 01:45:20,115 わずか3日で 公式見解が 180度変わった理由については 1522 01:45:20,115 --> 01:45:22,651 ついに述べられなかった 1523 01:45:22,651 --> 01:45:27,890 地球軍は任務の完璧を期すとして 敗残兵の再掃討作戦を行い 1524 01:45:27,890 --> 01:45:30,626 更に35万人の犠牲者を出した 1525 01:45:30,626 --> 01:45:32,928 だが この蛮行の中から 1526 01:45:32,928 --> 01:45:37,332 植民諸惑星にとっての 希望が生まれる 1527 01:45:37,332 --> 01:45:40,936 当時 25歳の放送記者であった カーレ・パルムグレンは 1528 01:45:40,936 --> 01:45:44,640 軍隊の検問に遭って 所持品検査を拒否したことから 1529 01:45:44,640 --> 01:45:48,040 銃で乱打され 重傷を負った 1530 01:45:50,045 --> 01:45:53,549 液体ロケット燃料をかけて 焼かれる死体の山の中で 1531 01:45:53,549 --> 01:45:55,484 意識を取り戻したパルムグレンは 1532 01:45:55,484 --> 01:45:59,188 その煙に紛れて逃亡に成功した 1533 01:45:59,188 --> 01:46:03,125 金属ラジウム鉱山の会計係で 労働組合の書記を務めていた 1534 01:46:03,125 --> 01:46:06,462 23歳のウィンスロー・ ケネス・タウンゼントは 1535 01:46:06,462 --> 01:46:09,898 アパートの窓から 軍隊の行進を 見下ろしていたところを 1536 01:46:09,898 --> 01:46:11,900 酔った兵士によって狙撃され 1537 01:46:11,900 --> 01:46:14,736 彼のそばにいた母親を殺された 1538 01:46:14,736 --> 01:46:17,172 訴えを無視されたうえに かえって 1539 01:46:17,172 --> 01:46:20,075 母親殺しの罪を着せられた タウンゼントは 1540 01:46:20,075 --> 01:46:23,579 鉱山に逃げ込んで姿を消した 1541 01:46:23,579 --> 01:46:26,448 医科大学の付属施設で 薬草学を学んでいた 1542 01:46:26,448 --> 01:46:28,517 20歳のジョリオ・フランクールは 1543 01:46:28,517 --> 01:46:32,221 恋人を暴行した地球軍兵士を 殴り倒したために 1544 01:46:32,221 --> 01:46:34,723 逃亡者たることを余儀なくされた 1545 01:46:34,723 --> 01:46:40,395 脱出に成功したのち 恋人が自殺したことを彼は知った 1546 01:46:40,395 --> 01:46:42,898 政治にも革命にも関心を持たず 1547 01:46:42,898 --> 01:46:47,302 音楽学校で作曲を勉強していた 19歳のチャオ・ユイルンは 1548 01:46:47,302 --> 01:46:52,174 地球軍の無差別射撃で 親代わりに 育ててくれた兄夫婦を殺され 1549 01:46:52,174 --> 01:46:55,644 3歳の おいを抱いて脱出した 1550 01:46:55,644 --> 01:46:58,347 この4人が 最初に一堂に会したのは 1551 01:46:58,347 --> 01:47:01,650 翌 西暦2691年2月 1552 01:47:01,650 --> 01:47:04,853 中立地帯であった プロキシマ系第5惑星 1553 01:47:04,853 --> 01:47:07,556 プロセルピナであったと 伝えられる 1554 01:47:07,556 --> 01:47:12,461 4人の役割分担は まさに 適材適所の模範と言えましょう 1555 01:47:12,461 --> 01:47:18,166 パルムグレンは理念と言論によって 反地球統一戦線の象徴となり 1556 01:47:18,166 --> 01:47:24,439 タウンゼントは行政処理能力によって その経済基盤を整えたのです 1557 01:47:24,439 --> 01:47:28,043 またフランクールは 反地球戦線の実戦部隊である 1558 01:47:28,043 --> 01:47:30,779 ブラック・フラッグ・フォースの 総司令官として 1559 01:47:30,779 --> 01:47:35,617 烏合の衆でしかなかった革命派を 精強な軍隊に再編成したのです 1560 01:47:35,617 --> 01:47:39,555 チャオは 情報 謀略 破壊工作を担当し 1561 01:47:39,555 --> 01:47:43,225 彼ら4人が反地球戦線で 主導権を握るために 1562 01:47:43,225 --> 01:47:45,761 旧主導部を追放したのを手始めに 1563 01:47:45,761 --> 01:47:49,631 当時 地球艦隊を指揮していた 3提督を共倒れさせるなど 1564 01:47:49,631 --> 01:47:53,569 辛らつな策略に その手腕を振るったのです 1565 01:47:53,569 --> 01:47:55,737 西暦2703年 1566 01:47:55,737 --> 01:47:58,740 こうして弱体化した地球軍を フランクールの指揮する 1567 01:47:58,740 --> 01:48:01,543 ブラック・フラッグ・フォースが 撃破した 1568 01:48:01,543 --> 01:48:05,847 第二次ヴェガ星域会戦においては 2万隻の地球軍が 1569 01:48:05,847 --> 01:48:07,783 わずか6000隻の ブラック・フラッグ・フォースに 1570 01:48:07,783 --> 01:48:11,520 敗れるなどして翌2704年には 1571 01:48:11,520 --> 01:48:14,957 地球は太陽系すら 維持できなくなっていた 1572 01:48:14,957 --> 01:48:17,426 アステロイドベルトを 最後の防衛線として 1573 01:48:17,426 --> 01:48:19,461 抵抗を続ける地球に対し 1574 01:48:19,461 --> 01:48:23,599 反地球戦線は 2ヵ月にわたって 補給を完全に断ち 1575 01:48:23,599 --> 01:48:27,169 餓死寸前になったところに 全面攻撃をかけた 1576 01:48:27,169 --> 01:48:30,439 それはラグランシティーの惨劇を 規模を100倍にして 1577 01:48:30,439 --> 01:48:32,507 繰り返したものだったと 言えるでしょう 1578 01:48:32,507 --> 01:48:36,345 ただし前回の 被害者と加害者の立場は 1579 01:48:36,345 --> 01:48:39,147 逆転していましたが 1580 01:48:39,147 --> 01:48:43,885 この時の攻撃は地球の地形まで だいぶ変えてしまったほどで 1581 01:48:43,885 --> 01:48:47,823 総人口も10億人くらいまで 減ってしまったらしい 1582 01:48:47,823 --> 01:48:49,825 詳しいんですね 1583 01:48:49,825 --> 01:48:52,494 なに コーネフ船長の受け売りさ 1584 01:48:52,494 --> 01:48:54,730 奴は地球教徒の巡礼団を運んで 1585 01:48:54,730 --> 01:48:57,466 何度も地球に 行ってるらしいからな 1586 01:48:57,466 --> 01:49:00,802 だが ここに確立されたかに見えた シリウスの時代は 1587 01:49:00,802 --> 01:49:07,142 一瞬のことでしかなかった シリウス戦役終結2年後の西暦2706年 1588 01:49:07,142 --> 01:49:09,911 革命と解放の象徴であった パルムグレンが 1589 01:49:09,911 --> 01:49:12,914 42歳の若さで病死したのだ 1590 01:49:12,914 --> 01:49:17,219 私が今 死んだら 新体制は接着剤を失う 1591 01:49:17,219 --> 01:49:21,019 あと5年でいい 死に神に待ってもらえたら… 1592 01:49:23,025 --> 01:49:25,894 パルムグレンの死後 3ヵ月と経たずして 1593 01:49:25,894 --> 01:49:28,330 彼の懸念は現実のものとなった 1594 01:49:28,330 --> 01:49:31,833 首相となったタウンゼントと 国防相フランクールの間に 1595 01:49:31,833 --> 01:49:34,302 亀裂が生じたのだ 1596 01:49:34,302 --> 01:49:38,173 当初は旧体制下の財閥を 新体制の経済システムに 1597 01:49:38,173 --> 01:49:41,109 組み込むかどうかの 意見の相違であったものが 1598 01:49:41,109 --> 01:49:43,445 やがて感情的対立となり 1599 01:49:43,445 --> 01:49:48,283 次第に修復不可能なものへと 変わっていった 1600 01:49:48,283 --> 01:49:51,887 フランクールはクーデターによる 政権奪取を計画したが 1601 01:49:51,887 --> 01:49:54,489 その情報は 直前にタウンゼント側に漏れ 1602 01:49:54,489 --> 01:49:57,389 まさに秒単位の差で失敗した 1603 01:49:59,761 --> 01:50:01,830 チャオ・ユイルンは ラグラン市に帰って 1604 01:50:01,830 --> 01:50:03,965 音楽学校を開いていた 1605 01:50:03,965 --> 01:50:07,569 本人は既に こうした権力闘争に 興味を失っていたが 1606 01:50:07,569 --> 01:50:10,138 謀略面における彼の過去の実績は 1607 01:50:10,138 --> 01:50:13,809 タウンゼントを恐れさせるに 十分だった 1608 01:50:13,809 --> 01:50:16,244 タウンゼントは 危険の芽を摘む意味で 1609 01:50:16,244 --> 01:50:20,015 チャオの謀殺を図る 1610 01:50:20,015 --> 01:50:23,018 こうしてタウンゼントは 自己の正義を実現させる 1611 01:50:23,018 --> 01:50:25,520 独裁権力を手中にした 1612 01:50:25,520 --> 01:50:28,420 しかし翌2707年 1613 01:50:30,358 --> 01:50:33,161 地上車に撃ち込まれた 中性子爆弾によって 1614 01:50:33,161 --> 01:50:36,665 永遠に その権力の座から 追われるのである 1615 01:50:36,665 --> 01:50:40,469 新秩序はタウンゼント個人に よって支えられていた 1616 01:50:40,469 --> 01:50:42,471 彼の死後 ブラック・フラッグ・フォースが 1617 01:50:42,471 --> 01:50:44,940 いくつかに分裂して 抗争を繰り返し 1618 01:50:44,940 --> 01:50:49,177 再び1世紀近い混乱の時代を 迎えるのである 1619 01:50:49,177 --> 01:50:54,649 建設途上で崩壊した 脱地球的な 宇宙秩序が再構築されるのは 1620 01:50:54,649 --> 01:50:58,353 およそ1世紀後 西暦2801年 1621 01:50:58,353 --> 01:51:01,890 銀河連邦の成立を 待たねばならない 1622 01:51:01,890 --> 01:51:05,327 結局 こうした人類社会の 混乱の中で 1623 01:51:05,327 --> 01:51:10,065 地球は忘れ去られた存在になって いってしまったというわけですね 1624 01:51:10,065 --> 01:51:13,068 周りは忘れても 地球に住んでいる奴らは 1625 01:51:13,068 --> 01:51:16,505 かつての栄光を 忘れちゃいないのかもしれん 1626 01:51:16,505 --> 01:51:19,374 旧帝国の貴族どもも そうだが 1627 01:51:19,374 --> 01:51:22,344 一度得た特権や何かは 取り戻すのが当然の権利だと 1628 01:51:22,344 --> 01:51:24,579 思うもんらしいからな 1629 01:51:24,579 --> 01:51:30,819 そこに800年余りの歳月が加わって どんな怨念が育っていることやら 1630 01:51:30,819 --> 01:51:34,389 脅かさないでくださいよ 1631 01:51:34,389 --> 01:51:37,325 さてと そろそろメシの時間だ ワードルームへ上がろうぜ 1632 01:51:37,325 --> 01:51:40,262 ええ 1633 01:51:40,262 --> 01:51:43,098 その時は冗談で済んでいた 1634 01:51:43,098 --> 01:51:45,834 だが実際に地球に行ってみて 1635 01:51:45,834 --> 01:51:48,737 それが真実を突いていたことを 1636 01:51:48,737 --> 01:51:53,637 僕たちは苦い思いと共に 知らされるのだった 1637 01:54:07,475 --> 01:54:10,211 カイザー・ラインハルトは 最初の臨御の栄を 1638 01:54:10,211 --> 01:54:13,548 キュンメル男爵に与え その屋敷へと出向く 1639 01:54:13,548 --> 01:54:16,451 だが そこにはラインハルトを 亡きものにしようという 1640 01:54:16,451 --> 01:54:19,354 地球教の陰謀が待ち構えていた 1641 01:54:19,354 --> 01:54:24,526 次回 「銀河英雄伝説」 第57話 「キュンメル事件」 1642 01:54:24,526 --> 01:54:27,126 銀河の歴史が また1ページ