1 00:04:33,767 --> 00:04:38,572 明けて宇宙暦801年 新帝国暦3年6月1日 2 00:04:38,572 --> 00:04:41,475 その日は ヤン・ウェンリーが 不慮の死を遂げてから 3 00:04:41,475 --> 00:04:43,844 正確に1年後にあたる 4 00:04:43,844 --> 00:04:46,280 これは単なる偶然に 過ぎないのだが 5 00:04:46,280 --> 00:04:51,018 両軍の首脳たちにとっては 感慨を 呼び起こすもととなったであろう 6 00:04:51,018 --> 00:04:54,321 午前0時を過ぎた頃 メックリンガーの判断で 7 00:04:54,321 --> 00:04:58,121 ミッターマイヤーとミュラーが ブリュンヒルトに呼ばれた 8 00:05:00,060 --> 00:05:02,860 変異性劇症膠原病? 9 00:05:04,899 --> 00:05:07,801 変異性とは 具体的にどういうことなのか 10 00:05:07,801 --> 00:05:11,605 説明していただこう 11 00:05:11,605 --> 00:05:16,777 そ… それが 膠原病の一種で あることは確かなのですが 12 00:05:16,777 --> 00:05:18,812 類を見ない奇病で… 13 00:05:18,812 --> 00:05:24,151 発熱による消耗を繰り返すという 症状だけが分かっておりますが 14 00:05:24,151 --> 00:05:28,989 病名すら仮称に過ぎず 治療法も 無論 確立されてはおりません 15 00:05:28,989 --> 00:05:31,358 治療法も分からん? 16 00:05:31,358 --> 00:05:35,229 まさか不治なのではあるまいな 17 00:05:35,229 --> 00:05:37,164 わ… 分かりません 18 00:05:37,164 --> 00:05:40,167 これから先 研究を進めませんことには… 19 00:05:40,167 --> 00:05:42,536 研究だと! 20 00:05:42,536 --> 00:05:45,539 ああ… よせ ミュラー 21 00:05:45,539 --> 00:05:47,975 医師たちを責めるな 22 00:05:47,975 --> 00:05:50,878 余も模範的な患者ではなかった 23 00:05:50,878 --> 00:05:54,648 医師たちにとっては 扱いにくかったことだろう 24 00:05:54,648 --> 00:05:59,086 医師にかかって必ず助かる ものなら 病気で死ぬ者はおるまい 25 00:05:59,086 --> 00:06:03,590 元々 期待してはいなかった 責めるな 26 00:06:03,590 --> 00:06:08,190 で あとどれぐらいの間 余は生きていられるのだ? 27 00:06:11,298 --> 00:06:13,698 それすらも分からぬのか 28 00:06:15,669 --> 00:06:20,269 俺は戦いにではなく 病に倒れるのか 29 00:06:28,315 --> 00:06:32,920 人にはふさわしき生と死… か 30 00:06:32,920 --> 00:06:38,125 ご報告します 敵軍の動向が おかしゅうございます 31 00:06:38,125 --> 00:06:41,028 イゼルローン方面へ 逃走を図るように思えますが 32 00:06:41,028 --> 00:06:44,064 どのように対処いたしましょうか 33 00:06:44,064 --> 00:06:46,533 それどころではない 34 00:06:46,533 --> 00:06:50,404 帰りたければ帰らせろ こちらは… 35 00:06:50,404 --> 00:06:54,174 いや ビッテンフェルトが 戦い足りずにいる 36 00:06:54,174 --> 00:06:56,243 奴に追撃させてやれ 37 00:06:56,243 --> 00:07:00,748 このまま終わったのでは 欲求不満がたまるだろう 38 00:07:00,748 --> 00:07:02,683 心得た! 39 00:07:02,683 --> 00:07:06,286 艦列を整えて 時計と逆回りに急進して 40 00:07:06,286 --> 00:07:09,486 敵軍の帰路を断つ 急げ! 41 00:07:14,995 --> 00:07:19,299 やはりカイザーは病が篤いのか 42 00:07:19,299 --> 00:07:21,368 帝国軍は名将ぞろいなのに 43 00:07:21,368 --> 00:07:24,838 その反応が僕の予測の範囲を 超えないというのは 44 00:07:24,838 --> 00:07:30,277 やはり彼らが容易ならざる状況に 置かれているということでしょう 45 00:07:30,277 --> 00:07:32,877 だからこその好機だ 行くぞ 46 00:07:34,948 --> 00:07:38,548 あとは頼みます 了解 47 00:07:46,927 --> 00:07:49,863 ちょうど1年前に ヤン提督が失われ 48 00:07:49,863 --> 00:07:53,734 今またカイザー・ラインハルトが 病に倒れるというのか 49 00:07:53,734 --> 00:07:57,104 宇宙はどれほど 輝きを失ってしまうのだろう 50 00:07:57,104 --> 00:08:00,641 いや あるいは むしろそれがよいのかもしれない 51 00:08:00,641 --> 00:08:04,511 英雄や天才が必要とされる 動乱の時代が過ぎて 52 00:08:04,511 --> 00:08:09,383 調整と協力と秩序が重んじられる 安定の時代が来ようとしている 53 00:08:09,383 --> 00:08:11,385 ヤン提督はおっしゃった 54 00:08:11,385 --> 00:08:15,155 「1人の天才より 凡人の衆知こそよし」と 55 00:08:15,155 --> 00:08:17,157 カイザー・ラインハルトは 言ったという 56 00:08:17,157 --> 00:08:21,795 「平和とは無能が悪徳とされない 幸福な時代だ」と 57 00:08:21,795 --> 00:08:24,665 それでよいのかもしれない だが 58 00:08:24,665 --> 00:08:28,535 その時代が到来するに先立って 僕は会わなくてはならない 59 00:08:28,535 --> 00:08:31,535 カイザー・ラインハルトに 60 00:08:34,108 --> 00:08:36,877 1時を過ぎた時点で イゼルローン軍は 61 00:08:36,877 --> 00:08:39,913 回廊方面へ 撤退を開始したように見えた 62 00:08:39,913 --> 00:08:42,516 だが これはアッテンボローと メルカッツが 63 00:08:42,516 --> 00:08:45,853 それぞれに創意を凝らした 擬態であった 64 00:08:45,853 --> 00:08:50,224 その動きを遮断すべく急進した シュワルツ・ランツェンレイターだけでなく 65 00:08:50,224 --> 00:08:53,994 つられて 帝国軍の前衛までが 急速に前進し 66 00:08:53,994 --> 00:08:56,697 その陣形は大きく乱れた 67 00:08:56,697 --> 00:09:00,367 前衛を預かるミッターマイヤーが 大本営を動けず 68 00:09:00,367 --> 00:09:03,570 司令官不在であったことも 大きかった 69 00:09:03,570 --> 00:09:09,243 前方に敵の集団 立ち塞がる形で展開しています 70 00:09:09,243 --> 00:09:13,080 それはユリアンが用意した 無人艦隊であった 71 00:09:13,080 --> 00:09:17,480 敵は手薄だ 動きも鈍い 一気に突破するぞ! 72 00:09:38,272 --> 00:09:40,908 何! 1時40分 73 00:09:40,908 --> 00:09:45,312 無人艦隊の自爆に巻き込まれた シュワルツ・ランツェンレイターは混乱に陥り 74 00:09:45,312 --> 00:09:49,116 イゼルローン軍に対して 隙をさらけ出した 75 00:09:49,116 --> 00:09:51,351 しまった!俺としたことが 76 00:09:51,351 --> 00:09:53,620 みすみす陽動に 乗ってしまったのか 77 00:09:53,620 --> 00:09:55,720 敵艦 接近 78 00:10:04,765 --> 00:10:08,635 ダメです これでは ブリュンヒルトが危険で攻撃できません 79 00:10:08,635 --> 00:10:11,135 お… おのれ 巧妙な 80 00:10:32,726 --> 00:10:37,397 突入されたぞ! 総旗艦に敵兵の侵入を許すとは… 81 00:10:37,397 --> 00:10:42,369 不逞な反乱軍め! 一兵たりとも生かして帰さん! 82 00:10:42,369 --> 00:10:47,908 バカめ!旗艦の中だ 重火器の使用など許さん 83 00:10:47,908 --> 00:10:51,778 マットへーファー 卿が防御の指揮を執れ 84 00:10:51,778 --> 00:10:54,982 はっ! 85 00:10:54,982 --> 00:10:56,950 これは… どうした? 86 00:10:56,950 --> 00:10:59,953 ユリアン・ミンツです ヤン・ウェンリーの後継者の 87 00:10:59,953 --> 00:11:04,658 何?よし 俺が行ってくる 88 00:11:04,658 --> 00:11:09,396 待て!卿ら2人とも 介入することを許さぬ 89 00:11:09,396 --> 00:11:12,096 このまま放置しておけ 90 00:11:14,334 --> 00:11:18,572 お言葉ながら マイン・カイザー 敵兵の侵入は 91 00:11:18,572 --> 00:11:22,943 陛下の御身を目的としてのこと 疑いようもございません 92 00:11:22,943 --> 00:11:26,380 まして ミュラー提督が イゼルローン軍司令官の姿を 93 00:11:26,380 --> 00:11:28,315 確認しております 94 00:11:28,315 --> 00:11:31,985 放置しておくわけに まいりますまい 95 00:11:31,985 --> 00:11:37,457 ヤン・ウェンリーの精神的な遺産を 継承したと称するほどの男なら 96 00:11:37,457 --> 00:11:42,929 先人に智は及ばずとも 勇において いささかは非凡なところがあろう 97 00:11:42,929 --> 00:11:45,832 ヤンの後継者の名は何と言ったか 98 00:11:45,832 --> 00:11:48,735 ユリアン・ミンツと申します 陛下 99 00:11:48,735 --> 00:11:52,639 そのミンツなる者が 余の兵士たちの抵抗を排して 100 00:11:52,639 --> 00:11:57,077 余の元に至り得たならば 少なくともその勇を認め 101 00:11:57,077 --> 00:12:00,947 対等の立場で 要求を受諾してやってもよい 102 00:12:00,947 --> 00:12:02,883 マイン・カイザー であれば… 103 00:12:02,883 --> 00:12:08,021 だが いわゆる専制君主の慈悲や その臣下の助力がなければ 104 00:12:08,021 --> 00:12:10,924 ここへ至る力もないというのでは 105 00:12:10,924 --> 00:12:14,494 何を要求する資格もあるまい 106 00:12:14,494 --> 00:12:19,894 全ては その者が 余の前に姿を現してからのことだ 107 00:12:22,636 --> 00:12:25,572 元帥 いかがいたしましょうか 108 00:12:25,572 --> 00:12:28,442 陛下の御意に従うしかあるまい 109 00:12:28,442 --> 00:12:30,911 ですが これからの数十分間に 110 00:12:30,911 --> 00:12:33,814 無用な血が 流れることになりますぞ 111 00:12:33,814 --> 00:12:37,384 あとは ミュラー提督と旧知の 共和主義者が 112 00:12:37,384 --> 00:12:40,253 一刻も早く 陛下の御前に たどり着くことを 113 00:12:40,253 --> 00:12:42,255 祈るしかあるまいな 114 00:12:42,255 --> 00:12:46,159 尋常ではないにせよ とにかく会見がかなえば 115 00:12:46,159 --> 00:12:49,329 流血はそれで最後ということに なるかもしれん 116 00:12:49,329 --> 00:12:52,733 やむを得ませんか 117 00:12:52,733 --> 00:12:56,570 カイザーは共和主義者たちが 求めるものの価値を 118 00:12:56,570 --> 00:13:00,374 流血によって証明させようと なさっているのかもしれないな 119 00:13:00,374 --> 00:13:04,911 だとすれば カイザーの魂の なんと熾烈なることよ 120 00:13:04,911 --> 00:13:07,814 敵に対しても その価値観が 中途半端であることを 121 00:13:07,814 --> 00:13:10,014 許さないのだから 122 00:13:12,119 --> 00:13:15,021 元帥 ユリアン・ミンツはともかく 123 00:13:15,021 --> 00:13:19,259 他の敵兵が ここに 乱入してくるやもしれません 124 00:13:19,259 --> 00:13:22,596 その時は… 125 00:13:22,596 --> 00:13:24,896 カイザーを頼む 126 00:13:27,434 --> 00:13:31,934 その時は この身を挺して カイザーを守りまいらせる 127 00:13:43,216 --> 00:13:45,752 来たぞ!親衛隊らしい 128 00:13:45,752 --> 00:13:47,821 「おいであそばした」と言うべきさ 129 00:13:47,821 --> 00:13:51,558 何しろ皇帝陛下の親衛隊で いらっしゃるからな 130 00:13:51,558 --> 00:13:55,095 ノイエ・サンスーシーの 着飾ったマネキン人形たちさ 131 00:13:55,095 --> 00:13:57,364 ハハハ そうそう 132 00:13:57,364 --> 00:14:02,102 でもカイザー・ラインハルトは ノイエ・サンスーシーの住人ではありません 133 00:14:02,102 --> 00:14:04,037 語呂がよきゃいいさ 134 00:14:04,037 --> 00:14:07,441 こらあ ノイエ・サンスーシーの オカマ野郎ども! 135 00:14:07,441 --> 00:14:11,745 さっさと宮殿に戻って 舞踏会の警備でもしてやがれ 136 00:14:11,745 --> 00:14:15,415 貴様らの持ってる銃は 貴婦人の スカートをまくり上げるためにしか 137 00:14:15,415 --> 00:14:18,215 使い物にならない飾りだろ! 138 00:14:26,059 --> 00:14:28,662 ブリュンヒルトに群がる 無礼な狼どもを 139 00:14:28,662 --> 00:14:30,597 砲撃で一掃してやれ! 140 00:14:30,597 --> 00:14:35,001 無理です!撃てばブリュンヒルトにも 当たってしまいます 141 00:14:35,001 --> 00:14:39,239 おのれ… よし こうなったら他の反乱軍どもを 142 00:14:39,239 --> 00:14:42,042 せめて俺の手で壊滅させてくれる 143 00:14:42,042 --> 00:14:45,879 共和主義者どもが勝ち誇って ブリュンヒルトから出てきても 144 00:14:45,879 --> 00:14:48,815 奴らが帰る家をなくしてくれるぞ 145 00:14:48,815 --> 00:14:51,785 全艦 反転して突撃! 146 00:14:51,785 --> 00:14:54,485 一人も生かして帰すな! 147 00:14:59,292 --> 00:15:03,730 2時10分 シュワルツ・ランツェンレイターの 熱狂的な突進の前に 148 00:15:03,730 --> 00:15:07,634 イゼルローン軍の体勢は 一挙に崩れた 149 00:15:07,634 --> 00:15:10,504 帝国軍の左翼を担う アイゼナッハ艦隊は 150 00:15:10,504 --> 00:15:13,740 シュワルツ・ランツェンレイターに 同調しなかった 151 00:15:13,740 --> 00:15:17,377 だがアイゼナッハが 無言のうちに下した指令は 152 00:15:17,377 --> 00:15:21,248 あるいはビッテンフェルトより 辛辣であったかもしれない 153 00:15:21,248 --> 00:15:24,851 6時から9時の方向に 扇形に展開し 154 00:15:24,851 --> 00:15:30,056 シュワルツ・ランツェンレイターに追われた敵が 逃げ崩れてくるところを狙い撃つ 155 00:15:30,056 --> 00:15:32,959 なまじ戦場に入り込めば 混戦になって 156 00:15:32,959 --> 00:15:36,363 かえってイゼルローン軍を 有利にするかもしれない 157 00:15:36,363 --> 00:15:39,933 アイゼナッハの その判断は正しく ビッテンフェルトは 158 00:15:39,933 --> 00:15:44,333 思う存分 その破壊力を 発揮できることになった 159 00:15:46,773 --> 00:15:50,277 踏みとどまれ! 砲撃を集中させろ 160 00:15:50,277 --> 00:15:53,077 ひるむな!突き破れ! 161 00:15:57,584 --> 00:16:01,922 閣下 もはや数の上で 防御線を維持できません 162 00:16:01,922 --> 00:16:04,824 やむを得んな いったん後退を… 163 00:16:04,824 --> 00:16:06,924 直撃 来ます! 164 00:16:10,730 --> 00:16:12,730 あっ! 165 00:16:16,403 --> 00:16:18,403 うわっ! 166 00:16:25,679 --> 00:16:28,982 閣下… 167 00:16:28,982 --> 00:16:30,982 メルカッツ提督 168 00:16:38,124 --> 00:16:41,861 閣下… 閣下! 169 00:16:41,861 --> 00:16:47,601 ユリアンたちは ブリュンヒルトに 突入できただろうか? 170 00:16:47,601 --> 00:16:53,106 どうやら成功したようです それより閣下 脱出のご用意を 171 00:16:53,106 --> 00:16:58,445 成功したか では思い残すこともないな 172 00:16:58,445 --> 00:17:01,748 閣下! 173 00:17:01,748 --> 00:17:06,353 カイザー・ラインハルトとの 戦いで死ねるのだ 174 00:17:06,353 --> 00:17:12,826 満足して死にかけている人間を 今更 呼び戻さんでくれんかね 175 00:17:12,826 --> 00:17:18,932 またこの先 いつ こういう機会が来るか分からん 176 00:17:18,932 --> 00:17:20,867 お許しください 閣下 177 00:17:20,867 --> 00:17:25,038 私は閣下に かえってご迷惑を 強いたかもしれません 178 00:17:25,038 --> 00:17:28,975 なに そう嘆くような 人生でもあるまい 179 00:17:28,975 --> 00:17:33,346 何と言ったかな… そう 伊達と酔狂で 180 00:17:33,346 --> 00:17:37,684 カイザー・ラインハルトと 戦えたのだからな 181 00:17:37,684 --> 00:17:40,353 卿にも苦労をかけたが 182 00:17:40,353 --> 00:17:45,091 これからは自由に身を処してくれ 183 00:17:45,091 --> 00:17:48,728 ウィリバルト・ヨアヒム・フォン・ メルカッツは63歳 184 00:17:48,728 --> 00:17:53,099 その軍歴はラインハルトとヤンの 両者のそれを合して 185 00:17:53,099 --> 00:17:55,568 2倍した年数に匹敵する 186 00:17:55,568 --> 00:17:57,937 だが それも過去のものとなり 187 00:17:57,937 --> 00:18:00,940 副官 ベルンハルト・フォン・ シュナイダーに看取られて 188 00:18:00,940 --> 00:18:03,240 彼は息を引き取った 189 00:18:06,579 --> 00:18:09,482 メルカッツ提督が…! 190 00:18:09,482 --> 00:18:11,682 そうか… 191 00:18:22,028 --> 00:18:24,928 心配かね クロイツェル伍長 192 00:18:38,478 --> 00:18:44,117 ユリアン ここは俺たちが防ぐ お前さんはカイザーに会え 193 00:18:44,117 --> 00:18:47,987 会って話し合うなり 敬意を込めて首をはね飛ばすなり 194 00:18:47,987 --> 00:18:50,590 お前さんの判断で歴史を創るんだ 195 00:18:50,590 --> 00:18:52,926 そんな! 196 00:18:52,926 --> 00:18:56,196 事の軽重を誤るなよ ユリアン 197 00:18:56,196 --> 00:19:00,366 お前さんはカイザーに会って 対等の交渉を行うのが責務 198 00:19:00,366 --> 00:19:04,166 俺たちは そのための環境を 整えるのが役目だ 199 00:19:06,506 --> 00:19:08,508 俺はたった一つだけ ヤン提督に 200 00:19:08,508 --> 00:19:12,045 文句を言ってやりたいことが あるんだ 201 00:19:12,045 --> 00:19:16,316 昨年 ブルームハルトが 命懸けで提督を守ったのに 202 00:19:16,316 --> 00:19:18,885 提督は逃げ切れずに死んじまった 203 00:19:18,885 --> 00:19:24,090 あれだけは いくら ミラクル・ヤンでもドジが過ぎたな 204 00:19:24,090 --> 00:19:27,660 分かりました 205 00:19:27,660 --> 00:19:31,231 ポプラン マシュンゴ ユリアンと一緒に行け 206 00:19:31,231 --> 00:19:36,369 3人一緒なら どうにか一人前に 戦えるだろうからな 207 00:19:36,369 --> 00:19:41,207 そうさ ここはローゼンリッターの 占領地だからな 208 00:19:41,207 --> 00:19:46,045 お前さんたちみたいな 部外者にいられちゃ迷惑なんだよ 209 00:19:46,045 --> 00:19:48,047 そうだ そうだ 210 00:19:48,047 --> 00:19:52,819 聞いたとおりだ ローゼンリッターは排他的な集団でな 211 00:19:52,819 --> 00:19:57,323 よそ者は別の場所で 幸運を見つけてほしいとさ 212 00:19:57,323 --> 00:19:59,993 チェッ しょうがねえな 213 00:19:59,993 --> 00:20:04,864 中将 後でまたお会いしましょう 必ず生きて… 214 00:20:04,864 --> 00:20:07,267 無論 そのつもりさ 215 00:20:07,267 --> 00:20:10,804 もの分かりの悪い父親になって 娘の結婚を邪魔するという 216 00:20:10,804 --> 00:20:13,406 楽しみができたからな 217 00:20:13,406 --> 00:20:16,709 さあ さっさと行ってしまえよ 時間がない 218 00:20:16,709 --> 00:20:20,809 ええ では… お先に 219 00:20:23,383 --> 00:20:25,383 フッ 220 00:20:37,730 --> 00:20:40,066 ああ… 221 00:20:40,066 --> 00:20:42,068 ヒュー! 222 00:20:42,068 --> 00:20:45,038 お見事ですな シェーンコップ中将 223 00:20:45,038 --> 00:20:49,038 いや 一度やってみたかったのさ 子供の頃からな 224 00:20:57,617 --> 00:21:00,854 敵艦の中で トマホークを振るって戦うのは 225 00:21:00,854 --> 00:21:05,454 2年前のロイエンタール元帥を 追いつめた時以来ですな 226 00:21:08,194 --> 00:21:11,397 あの時 3分長く戦っていたら 227 00:21:11,397 --> 00:21:14,434 ロイエンタール提督の首は 俺のものだったさ 228 00:21:14,434 --> 00:21:18,671 そうしたら盾の表面に あのヘテロクロミアを 229 00:21:18,671 --> 00:21:21,671 宝石のように飾ってやったのにな 230 00:21:24,944 --> 00:21:26,944 ひ… 引け! 231 00:21:36,289 --> 00:21:39,092 敵ながら 称賛に値する男だ 232 00:21:39,092 --> 00:21:41,995 だが それにしても 味方も不甲斐ない 233 00:21:41,995 --> 00:21:44,898 いっそ 俺が迎撃の指揮を執ろうか 234 00:21:44,898 --> 00:21:47,800 元帥は陛下のおそばに あるべきでしょう 235 00:21:47,800 --> 00:21:50,703 しかし 防衛を ブリュンヒルトの司令部だけに 236 00:21:50,703 --> 00:21:52,972 任せてはおけん状況だ 237 00:21:52,972 --> 00:21:58,411 では私が大本営を代表して 艦橋へ赴き 指揮を執りましょう 238 00:21:58,411 --> 00:22:00,911 そうしてくれるか では 239 00:22:04,183 --> 00:22:07,487 エミール 軍服に着替える 手伝ってくれ 240 00:22:07,487 --> 00:22:10,290 いけません 陛下 お熱がありますのに 241 00:22:10,290 --> 00:22:12,992 お起きになっては いけません 242 00:22:12,992 --> 00:22:15,895 銀河帝国の皇帝ともあろう者が 243 00:22:15,895 --> 00:22:19,565 客人に会うのに 服装を整えぬわけにはゆくまい 244 00:22:19,565 --> 00:22:22,865 たとえ招かれざる客であってもな 245 00:22:24,837 --> 00:22:28,841 陛下の御意に従え エミール・ゼッレ 246 00:22:28,841 --> 00:22:32,041 陛下のお時間を ムダにしてはならん 247 00:22:56,269 --> 00:22:58,269 なっ… 248 00:23:00,540 --> 00:23:02,540 うっ 249 00:23:06,212 --> 00:23:08,281 マシュンゴ! 250 00:23:08,281 --> 00:23:10,281 うっ… 251 00:23:12,885 --> 00:23:15,285 チッ この! 252 00:23:18,057 --> 00:23:21,294 マシュンゴ! 253 00:23:21,294 --> 00:23:23,229 人は… 254 00:23:23,229 --> 00:23:27,029 運命には逆らえません… から… 255 00:23:37,477 --> 00:23:39,877 うおおーっ! 256 00:23:56,529 --> 00:24:00,366 ロイシュナー! ドルマン!ハルバッハ! 257 00:24:00,366 --> 00:24:03,269 誰かまだ図々しく 生き延びている奴はいないか 258 00:24:03,269 --> 00:24:05,204 いたら答えろ! 259 00:24:05,204 --> 00:24:10,910 ゼブリン!クラフト! クローネカー! 260 00:24:10,910 --> 00:24:12,910 ハア… 261 00:24:28,327 --> 00:24:30,327 うっ 262 00:24:37,103 --> 00:24:39,105 ああ… 263 00:24:39,105 --> 00:24:42,608 若いの 名を聞いておこうか 264 00:24:42,608 --> 00:24:45,845 知ってどうするつもりだ 反乱軍め 265 00:24:45,845 --> 00:24:48,748 なに ワルター・フォン・ シェーンコップに 266 00:24:48,748 --> 00:24:53,119 傷を負わせた奴の名を 知っておきたかっただけさ 267 00:24:53,119 --> 00:24:56,556 ク… クルト・ ジングフーベル軍曹だ 268 00:24:56,556 --> 00:25:02,756 そうか 正直に名乗った褒美に ひとつ芸を見せてやろう 269 00:25:09,135 --> 00:25:11,135 ああ… 270 00:25:24,951 --> 00:25:26,886 あ… 悪魔だ 271 00:25:26,886 --> 00:25:29,655 や… 奴は不死身か 272 00:25:29,655 --> 00:25:32,558 母さん… 母さん! 273 00:25:32,558 --> 00:25:36,863 さて 誰が名誉を背負うのだ? 274 00:25:36,863 --> 00:25:42,763 ワルター・フォン・シェーンコップが生涯で最後に 殺した相手 という名誉をな 275 00:25:45,972 --> 00:25:49,172 負債を返す時が来たようだな 276 00:25:56,048 --> 00:25:58,648 そこまでだ 反乱軍! 277 00:26:00,720 --> 00:26:02,820 行け ユリアン! 278 00:26:05,658 --> 00:26:07,858 貴様の相手は俺だ! 279 00:26:10,062 --> 00:26:15,462 フライング・ボールの反則王を 甘く見るなよ マネキン野郎が… 280 00:26:31,017 --> 00:26:34,817 最後に使った絵の具は 赤か… 281 00:26:51,037 --> 00:26:53,337 いい眺めだ 282 00:26:55,608 --> 00:26:59,478 何かを見上げて死ぬのは 趣味じゃない 283 00:26:59,478 --> 00:27:02,381 ワルター・フォン・ シェーンコップ 37歳 284 00:27:02,381 --> 00:27:04,984 死に臨んで言い残せり 285 00:27:04,984 --> 00:27:07,053 「我が墓碑に銘は要らじ」 286 00:27:07,053 --> 00:27:13,192 「ただ美女の涙のみ 我が魂を安らげん」と 287 00:27:13,192 --> 00:27:17,163 フッ どうもいま一つ 修辞が決まらんな 288 00:27:17,163 --> 00:27:22,363 アッテンボローの青二才に 代筆させたほうがマシか 289 00:27:26,739 --> 00:27:30,376 そうだ あの娘だ 290 00:27:30,376 --> 00:27:33,813 ローザライン・フォン・ クロイツェルといった 291 00:27:33,813 --> 00:27:38,451 ローザと呼んでほしいと 言っていたな… 292 00:27:38,451 --> 00:27:43,656 ワルター・フォン・シェーンコップが 絶命した正確な時間は不明である 293 00:27:43,656 --> 00:27:48,127 帝国貴族に生まれ 幼い頃に同盟に亡命して 294 00:27:48,127 --> 00:27:51,097 2度の祖国喪失を 味わった この男は 295 00:27:51,097 --> 00:27:54,597 37年の波乱の人生を閉じた 296 00:28:22,962 --> 00:28:24,964 ミュラー提督 297 00:28:24,964 --> 00:28:27,800 元帥… 元帥? 298 00:28:27,800 --> 00:28:31,671 ということは この人が ミッターマイヤー元帥か 299 00:28:31,671 --> 00:28:34,171 ならば ここが… 300 00:28:36,475 --> 00:28:41,175 来させろ まだその男は 余の元に到着していないぞ 301 00:28:47,119 --> 00:28:49,855 歩かなくては ヒザを… 302 00:28:49,855 --> 00:28:52,655 ヒザを折ってはいけないんだ 303 00:29:02,802 --> 00:29:07,606 民主共和主義者は 専制君主に対して 304 00:29:07,606 --> 00:29:12,006 絶対に ヒザを屈してはいけないんだ 305 00:29:15,681 --> 00:29:19,852 立ったままで御意を得ます カイザー・ラインハルト陛下 306 00:29:19,852 --> 00:29:21,787 卿の名を聞こうか 307 00:29:21,787 --> 00:29:24,690 ユリアン・ミンツと申します 陛下 308 00:29:24,690 --> 00:29:29,829 で 卿は余に何を提案するために ここまでやってきたのだ? 309 00:29:29,829 --> 00:29:35,234 陛下がお望みであれば 平和と共存を そうでない時は… 310 00:29:35,234 --> 00:29:37,670 そうでない時は? 311 00:29:37,670 --> 00:29:39,638 そうでないものを 312 00:29:39,638 --> 00:29:43,342 少なくとも 一方的な服従を 申し込むために 313 00:29:43,342 --> 00:29:45,845 ここに参上したのではありません 314 00:29:45,845 --> 00:29:48,881 ローエングラム王朝が… 315 00:29:48,881 --> 00:29:52,618 ローエングラム王朝が 病み疲れ 衰えた時 316 00:29:52,618 --> 00:29:55,388 それを治癒するために 必要な療法を 317 00:29:55,388 --> 00:29:59,358 陛下に教えてさしあげます 虚心にお聞きください 318 00:29:59,358 --> 00:30:02,962 そうしていただければ きっと分かっていただけます 319 00:30:02,962 --> 00:30:07,162 ヤン・ウェンリーが 陛下に何を望んでいたか… 320 00:30:09,135 --> 00:30:11,570 あっ 321 00:30:11,570 --> 00:30:16,075 大言を吐く奴だ 余に教えてやると? 322 00:30:16,075 --> 00:30:18,844 余の前にたどり着いて 気絶したのは 323 00:30:18,844 --> 00:30:21,547 これで2人目だな ミュラー 324 00:30:21,547 --> 00:30:24,450 御意… 医師を呼んでやれ 325 00:30:24,450 --> 00:30:28,187 余には無用のものだが この者には役立とう 326 00:30:28,187 --> 00:30:31,757 それと ミッターマイヤー この者の大言に免じて 327 00:30:31,757 --> 00:30:33,692 戦闘をやめさせよ 328 00:30:33,692 --> 00:30:35,628 ここまで生き残った者たちには 329 00:30:35,628 --> 00:30:38,664 最後まで生き残る資格が あろうから 330 00:30:38,664 --> 00:30:41,564 はっ! 軍医!軍医! 331 00:30:43,736 --> 00:30:48,574 私は宇宙艦隊司令長官 ミッターマイヤー元帥である 332 00:30:48,574 --> 00:30:51,544 皇帝陛下のご命令を伝える 333 00:30:51,544 --> 00:30:56,148 戦うのをやめよ 和平こそが陛下の御意である 334 00:30:56,148 --> 00:31:00,319 皇帝陛下のご命令である 戦うのをやめよ! 335 00:31:00,319 --> 00:31:03,519 和平こそが陛下の御意である 336 00:31:08,360 --> 00:31:13,999 宇宙暦801年 新帝国暦3年 6月1日 午前3時 337 00:31:13,999 --> 00:31:17,799 かくして 両軍の戦闘は終結した 338 00:32:53,065 --> 00:32:56,969 多くの犠牲の上に ようやく停戦が発効した 339 00:32:56,969 --> 00:33:02,241 今後のことについて話し合いを 持つ カイザー・ラインハルトとユリアン・ミンツ 340 00:33:02,241 --> 00:33:06,979 だが動乱の時代は まだ終幕を迎えてはいなかった 341 00:33:06,979 --> 00:33:11,884 瀕死のルビンスキーが 最後に打った手とは… 342 00:33:11,884 --> 00:33:17,990 次回「銀河英雄伝説」 第109話「黄金獅子旗に光なし」 343 00:33:17,990 --> 00:33:20,490 銀河の歴史が また1ページ 344 00:37:29,775 --> 00:37:34,479 宇宙暦801年 新帝国暦3年6月1日 345 00:37:34,479 --> 00:37:38,350 イゼルローン要塞に 講和成立の報がもたらされ 346 00:37:38,350 --> 00:37:42,850 およそ10万人の留守部隊は 歓呼の声に包まれた 347 00:37:47,559 --> 00:37:51,263 だが それもウィリバルト・ ヨアヒム・フォン・メルカッツ 348 00:37:51,263 --> 00:37:54,166 ワルター・フォン・シェーンコップ ルイ・マシュンゴら 349 00:37:54,166 --> 00:37:56,435 主だった戦死者の 名が伝えられると 350 00:37:56,435 --> 00:37:59,338 粛然とした雰囲気と悲嘆とに 変わっていった 351 00:37:59,338 --> 00:38:03,308 特にローゼンリッター連隊は 生存者 わずかに204名 352 00:38:03,308 --> 00:38:07,880 その全員が負傷するという 凄絶な終末を迎えていた 353 00:38:07,880 --> 00:38:12,851 シェーンコップがね あの男でも死ぬのかね 354 00:38:12,851 --> 00:38:16,989 総司令官より入電 355 00:38:16,989 --> 00:38:19,892 ユリアン あなたはズルかったわね 356 00:38:19,892 --> 00:38:25,097 ヤン提督が あの人が生きていたら きっとあなたを叱ったわ 357 00:38:25,097 --> 00:38:28,000 それはフレデリカを イゼルローン要塞に残して 358 00:38:28,000 --> 00:38:33,538 戦端を開いたことについて 非難の形をした謝意の表明だった 359 00:38:33,538 --> 00:38:36,441 すいません それが分かるユリアンも 360 00:38:36,441 --> 00:38:38,810 短く答えただけだった 361 00:38:38,810 --> 00:38:42,781 それで これからあなたは どうするの 予定を聞かせて 362 00:38:42,781 --> 00:38:46,551 残兵を統率して 惑星ハイネセンへ行きます 363 00:38:46,551 --> 00:38:48,520 帝国軍と同行して 364 00:38:48,520 --> 00:38:51,690 そこでカイザーと 会見することになるでしょう 365 00:38:51,690 --> 00:38:55,193 その時 僕はカイザーに 提案を行うつもりです 366 00:38:55,193 --> 00:38:57,763 どんなことを? 帝国軍に 367 00:38:57,763 --> 00:38:59,698 イゼルローン要塞を明け渡し 368 00:38:59,698 --> 00:39:03,568 代わりに惑星ハイネセンに 内政自治権を認めさせる 369 00:39:03,568 --> 00:39:08,373 そして いつかは帝国に憲法を 制定させ 議会を開設させて 370 00:39:08,373 --> 00:39:11,710 帝国全体を開明的な方向に 持っていく 371 00:39:11,710 --> 00:39:13,645 もちろん簡単ではないでしょう 372 00:39:13,645 --> 00:39:19,351 長い年月と不断の努力が 必要でしょうが 373 00:39:19,351 --> 00:39:23,221 もしそうなれば あの人もハイネセンに帰れるわね 374 00:39:23,221 --> 00:39:25,457 そういう表現で フレデリカは 375 00:39:25,457 --> 00:39:28,493 ユリアンの今後の 外交交渉方針を承認した 376 00:39:28,493 --> 00:39:31,363 イゼルローンは難攻不落にすぎる 377 00:39:31,363 --> 00:39:33,799 トールハンマーを含めた その強大さは 378 00:39:33,799 --> 00:39:37,336 帝国軍に必要以上の警戒を 抱かせるであろう 379 00:39:37,336 --> 00:39:41,340 これからは軍事力によらず 外交折衝によって身を守り 380 00:39:41,340 --> 00:39:44,710 帝国との共存を図るべきなのだ 381 00:39:44,710 --> 00:39:47,279 キャゼルヌ中将 お聞きのように 382 00:39:47,279 --> 00:39:50,615 イゼルローン要塞と 別れる日が来そうですわ 383 00:39:50,615 --> 00:39:53,118 事務的な処理をお任せして よろしいでしょうか 384 00:39:53,118 --> 00:39:56,788 ああ 任せておいていただこう ヤン夫人 385 00:39:56,788 --> 00:39:59,458 帝国軍が指先でホコリを探しても 386 00:39:59,458 --> 00:40:02,794 ケチのつけようがないほど 完璧に整理してやる 387 00:40:02,794 --> 00:40:04,863 お願いします 388 00:40:04,863 --> 00:40:08,233 ああ ヤン夫人 家内の言づけでね 389 00:40:08,233 --> 00:40:11,636 「今夜は夕食をご一緒にどうぞ」 ということだった 390 00:40:11,636 --> 00:40:15,507 ご迷惑かもしれんが 家内に逆らうと怖いよ 391 00:40:15,507 --> 00:40:17,943 19時にシャルロットを 迎えにやるからね 392 00:40:17,943 --> 00:40:22,043 ありがとうございます 遠慮なく伺わせていただきますわ 393 00:40:28,987 --> 00:40:31,687 この部屋ともお別れね 394 00:40:43,802 --> 00:40:48,702 ありがとう あなた 私の人生を豊かにしてくださって 395 00:40:59,151 --> 00:41:04,251 戦艦ユリシーズはついに生き残り その強運ぶりを証明した 396 00:41:06,992 --> 00:41:12,130 もっともこの時の機能は ほとんど 病院船に近いものであったが 397 00:41:12,130 --> 00:41:15,033 俺はうっかり死ぬことも できなくなったぜ 398 00:41:15,033 --> 00:41:17,569 地獄へ行ったら ワルター・フォン・シェーンコップが 399 00:41:17,569 --> 00:41:21,139 でかい面で魔女どもを はべらせているかと思うと 400 00:41:21,139 --> 00:41:23,408 行く気になれやせん 401 00:41:23,408 --> 00:41:28,246 だったら せいぜい長生きして こちらの世界で覇を唱えるんだな 402 00:41:28,246 --> 00:41:31,016 シェーンコップの不良中年が いなくなったら 403 00:41:31,016 --> 00:41:33,385 お前さんの天下だろうが 404 00:41:33,385 --> 00:41:39,191 「オリビエ・ポプラン 宇宙暦771年15月36日生まれ」 405 00:41:39,191 --> 00:41:43,728 「801年6月1日 美女たちの涙の海で溺死」 406 00:41:43,728 --> 00:41:46,131 「享年29歳」 407 00:41:46,131 --> 00:41:48,433 ちゃんと自分で 墓碑銘まで用意したのに 408 00:41:48,433 --> 00:41:51,269 死文になってしまって残念ですよ 409 00:41:51,269 --> 00:41:55,941 うん あっ お前 さてはもう誕生日を過ぎたな 410 00:41:55,941 --> 00:41:58,844 もう30歳になっただろう そうだろう 411 00:41:58,844 --> 00:42:02,681 うるさい人だな 俺が仮に30歳になったとしたら 412 00:42:02,681 --> 00:42:05,450 中将が何か得をするんですか 413 00:42:05,450 --> 00:42:07,752 得になることしか 喜ばないとしたら 414 00:42:07,752 --> 00:42:11,256 俺はまるで強欲な フェザーン商人じゃないか 415 00:42:11,256 --> 00:42:14,693 それはそうと 我らが 司令官殿はどこにいるんだ? 416 00:42:14,693 --> 00:42:19,393 父親を亡くした 傷心の女の子を 慰めに行きましたよ 417 00:42:27,405 --> 00:42:31,910 いとしい者よ 418 00:42:31,910 --> 00:42:35,680 あなたは 419 00:42:35,680 --> 00:42:42,154 私を愛するか 420 00:42:42,154 --> 00:42:49,461 ええ 私は愛します 421 00:42:49,461 --> 00:42:55,333 生命の終わりまで 422 00:42:55,333 --> 00:43:03,041 冬の女王が鈴を鳴らすと 423 00:43:03,041 --> 00:43:09,281 樹も草も枯れはてて 424 00:43:09,281 --> 00:43:17,022 太陽さえも眠りに 425 00:43:17,022 --> 00:43:22,427 落ちた 426 00:43:22,427 --> 00:43:30,702 それでも春になれば 427 00:43:30,702 --> 00:43:36,208 鳥たちは帰ってくる 428 00:43:36,208 --> 00:43:44,349 それでも春になれば 429 00:43:44,349 --> 00:43:50,622 鳥たちは帰ってくる 430 00:43:50,622 --> 00:43:52,622 カリン 431 00:43:58,797 --> 00:44:01,666 母が好きだったのよ この歌 432 00:44:01,666 --> 00:44:05,570 昔 ワルター・フォン・シェーンコップに 聞かせてやったんだって 433 00:44:05,570 --> 00:44:08,773 別れてからも よく1人で歌ったんだって 434 00:44:08,773 --> 00:44:11,343 カリン シェーンコップ中将は… 435 00:44:11,343 --> 00:44:15,847 知ってるわよ 何よ 5回や6回 殺されたって 436 00:44:15,847 --> 00:44:18,216 すぐに復活するような 顔してたくせに 437 00:44:18,216 --> 00:44:22,487 何で死んじゃうのよ あいつに 復讐してやるつもりだったのに 438 00:44:22,487 --> 00:44:24,723 復讐? そうよ 439 00:44:24,723 --> 00:44:27,292 私の産んだ赤ん坊を 目の前につきつけて 440 00:44:27,292 --> 00:44:31,596 「あんたの孫よ おじいちゃん」と 言ってやるつもりだったのに 441 00:44:31,596 --> 00:44:36,696 それがあの不良中年には 一番効果的な復讐だったのに 442 00:44:43,675 --> 00:44:48,513 お父さん お父さん 443 00:44:48,513 --> 00:44:50,713 お父さん… 444 00:44:55,587 --> 00:44:58,390 服を濡らしちゃった ごめんね 445 00:44:58,390 --> 00:45:01,326 すぐ乾くよ 446 00:45:01,326 --> 00:45:04,929 ねえ 私のこと好き? もしそうだったら 447 00:45:04,929 --> 00:45:08,900 黙ってうなずいたりしないで ハッキリおっしゃい 448 00:45:08,900 --> 00:45:10,900 好きだよ 449 00:45:13,438 --> 00:45:15,674 民主主義って 素敵ね 450 00:45:15,674 --> 00:45:17,609 どうして? だって 451 00:45:17,609 --> 00:45:20,512 伍長が中尉さんに 命令できるんだもの 452 00:45:20,512 --> 00:45:23,612 専制政治だったら こうはいかないわ 453 00:45:27,052 --> 00:45:29,521 将来2人が結婚した時 454 00:45:29,521 --> 00:45:32,724 6月1日は 忘れ得ぬ日になるだろう 455 00:45:32,724 --> 00:45:35,760 それは彼らの父親たちが 亡くなった日であり 456 00:45:35,760 --> 00:45:39,560 2人の新たな歴史が 始まった日でもあるのだった 457 00:45:42,734 --> 00:45:47,572 口紅がついてるぞ くちびるの右端に 458 00:45:47,572 --> 00:45:52,143 そうか ちゃんと儀式を済ませたか 結構 結構 459 00:45:52,143 --> 00:45:56,014 お人が悪いですよ 中将 しかし お前さん 460 00:45:56,014 --> 00:45:59,851 恋人が口紅をつけていないことも 知らなかったのか 461 00:45:59,851 --> 00:46:02,851 これから知るようにします 462 00:46:04,823 --> 00:46:09,260 ところで カイザーとはもう正式に 会見の予定が立ったのか 463 00:46:09,260 --> 00:46:11,196 いえ まだです 464 00:46:11,196 --> 00:46:15,700 何と言ってもカイザーの健康が もう少し回復してからでなければ 465 00:46:15,700 --> 00:46:18,203 それだがな カイザーの健康が 466 00:46:18,203 --> 00:46:21,005 確かに回復するという保証は あるのか 467 00:46:21,005 --> 00:46:23,005 死病だというが 468 00:46:25,310 --> 00:46:28,847 まあ悔いを残さないように 話し合ってくれよな 469 00:46:28,847 --> 00:46:31,383 ええ… しかしなんだな 470 00:46:31,383 --> 00:46:34,953 人間 いや人間の集団というやつは 471 00:46:34,953 --> 00:46:37,622 話し合えば 解決できる程度のことに 472 00:46:37,622 --> 00:46:40,859 何億リットルもの血を 流さなきゃならないのかな 473 00:46:40,859 --> 00:46:43,528 愚かしいと思いますか? さあな 474 00:46:43,528 --> 00:46:46,097 俺には論評する資格はない 475 00:46:46,097 --> 00:46:50,935 何しろ俺は伊達と酔狂で 血を 流してきた張本人の一人だからな 476 00:46:50,935 --> 00:46:56,307 確かに愚かなことかもしれません でも その愚かしさを失った時 477 00:46:56,307 --> 00:47:00,311 人類は進化を遂げることが できるのでしょうか 478 00:47:00,311 --> 00:47:02,480 さまざまな表現と態度で 479 00:47:02,480 --> 00:47:06,351 イゼルローン軍は 死者たちの記憶を弔った 480 00:47:06,351 --> 00:47:09,687 一方 帝国軍の方では事情が異なる 481 00:47:09,687 --> 00:47:12,323 主だった将帥に戦死者は 出なかったが 482 00:47:12,323 --> 00:47:17,061 代償と言うには巨大すぎる凶事が 彼らを襲っていた 483 00:47:17,061 --> 00:47:19,964 全軍の大元帥たる カイザー・ラインハルトが 484 00:47:19,964 --> 00:47:23,964 不治の病に冒されたことが 判明したのであるから 485 00:47:25,837 --> 00:47:29,507 なぜだ なぜオーベルシュタインの野郎が 死なないで 486 00:47:29,507 --> 00:47:31,443 カイザーが亡くなるんだ! 487 00:47:31,443 --> 00:47:34,078 この宇宙には 正義も真実もないのか 488 00:47:34,078 --> 00:47:37,916 大神オーディンは 貢ぎ物を むさぼるだけの役立たずか! 489 00:47:37,916 --> 00:47:39,918 騒ぐな ビッテンフェルト 490 00:47:39,918 --> 00:47:42,220 これが騒がずにいられるか 491 00:47:42,220 --> 00:47:45,089 理由があって 騒ぐなと言っているのだ 492 00:47:45,089 --> 00:47:49,794 第一に陛下は 確かにご病気では あるが 亡くなるとは限らぬ 493 00:47:49,794 --> 00:47:53,665 上級大将ともあろう者が 先頭に立って騒ぎ立てては 494 00:47:53,665 --> 00:47:56,334 兵士にたちに よからぬ影響があろう 495 00:47:56,334 --> 00:48:00,338 第二に カイザーリン及び アレク大公のことを考えろ 496 00:48:00,338 --> 00:48:04,742 あの方たちこそ 卿よりはるかに 悲しむ資格がおありなのだ 497 00:48:04,742 --> 00:48:07,111 それをわきまえた方がよいぞ 498 00:48:07,111 --> 00:48:12,484 なるほど そう言われると ひと言もない 俺が軽率だった 499 00:48:12,484 --> 00:48:16,754 ミッターマイヤーにはビッテンフェルトの率直さが うらやましかった 500 00:48:16,754 --> 00:48:21,493 彼自身 神の不公正を呪いたい 気持ちを胸の中に抑え込み 501 00:48:21,493 --> 00:48:25,293 まさに身を焼く思いに 苦しめられていたのだから 502 00:48:34,873 --> 00:48:39,410 キルヒアイス ロイエンタール そしてケンプ レンネンカンプ 503 00:48:39,410 --> 00:48:42,814 ファーレンハイト シュタインメッツ ルッツ… 504 00:48:42,814 --> 00:48:47,151 頼む 頼むから まだカイザーを ヴァルハラへお連れしないでくれ 505 00:48:47,151 --> 00:48:51,451 カイザーはまだ現世にこそ 必要なお方なのだ 506 00:48:54,392 --> 00:48:58,596 陛下!ラインハルト陛下! 507 00:48:58,596 --> 00:49:00,696 お待ちください 508 00:49:03,535 --> 00:49:05,535 陛下! 509 00:49:08,339 --> 00:49:10,339 あれは… 510 00:49:35,066 --> 00:49:39,466 陛下!陛下! 511 00:49:47,078 --> 00:49:50,915 らちもない… 512 00:49:50,915 --> 00:49:53,515 ヴァルハラ征服か… 513 00:50:00,525 --> 00:50:04,028 6月10日 銀河帝国軍の 大艦隊と共に 514 00:50:04,028 --> 00:50:07,832 ユリアンは惑星ハイネセンに 到着した 515 00:50:07,832 --> 00:50:10,802 ヤンの結婚式の夜 地球へ出発して以来 516 00:50:10,802 --> 00:50:13,802 ちょうど2年ぶりの 母星への帰還である 517 00:50:17,342 --> 00:50:20,211 ハイネセンも変わった 518 00:50:20,211 --> 00:50:24,082 と思うのは僕の見る目が 変わったからでしょうか 519 00:50:24,082 --> 00:50:28,953 少なくとも2年前は 宇宙の半分を 統治する中心地だったのが 520 00:50:28,953 --> 00:50:32,790 今や辺境の一惑星に 過ぎなくなりつつあるからな 521 00:50:32,790 --> 00:50:35,693 どいつもこいつも 不景気な面しやがって 522 00:50:35,693 --> 00:50:37,662 歴史の表舞台から消えていくのを 523 00:50:37,662 --> 00:50:40,665 受容しようと しているようじゃないか 524 00:50:40,665 --> 00:50:44,335 「自由 自主 自律 自尊」 525 00:50:44,335 --> 00:50:47,705 アーレ・ハイネセンが唱えた 民主共和政治の価値観は 526 00:50:47,705 --> 00:50:50,208 どこへ消えてしまったのでしょう 527 00:50:50,208 --> 00:50:54,912 深刻に疑いつつ ユリアンは まず入院中のムライを訪ねた 528 00:50:54,912 --> 00:50:58,883 そうか イゼルローンを 放棄することになりそうかね 529 00:50:58,883 --> 00:51:01,619 多分そうなると思います 530 00:51:01,619 --> 00:51:03,955 これからカイザーと 話し合いますが 531 00:51:03,955 --> 00:51:08,159 こちらの交換条件として これ以外には まずないでしょう 532 00:51:08,159 --> 00:51:11,062 時代の一つが終わったと いうことだな 533 00:51:11,062 --> 00:51:14,532 ささやかなものではあったが 君や私にとって 534 00:51:14,532 --> 00:51:18,202 イゼルローン時代というものは 確かにあった 535 00:51:18,202 --> 00:51:21,105 私などにとっては 最後のお務めだったが 536 00:51:21,105 --> 00:51:26,577 君らにとっては次の時代への ステップであってほしいな 537 00:51:26,577 --> 00:51:30,515 同日 ハイネセンに駐留した イゼルローン軍の処遇について 538 00:51:30,515 --> 00:51:33,217 ユリアンは ハイネセンの警備を担当する 539 00:51:33,217 --> 00:51:37,522 ワーレン上級大将との間に 交渉の席を持った 540 00:51:37,522 --> 00:51:40,258 卿とは 確か以前 会ったことがあるな 541 00:51:40,258 --> 00:51:42,293 それとも記憶違いかな 542 00:51:42,293 --> 00:51:44,829 いえ 記憶違いではありません 543 00:51:44,829 --> 00:51:47,799 ワーレン提督とは 地球でお目にかかりました 544 00:51:47,799 --> 00:51:50,702 地球教の本部でか 思い出したぞ 545 00:51:50,702 --> 00:51:53,204 申し訳ありません あの時は 546 00:51:53,204 --> 00:51:55,773 閣下を偽ることに なってしまいました 547 00:51:55,773 --> 00:51:58,576 なに 謝罪される筋のものでもない 548 00:51:58,576 --> 00:52:03,181 人それぞれ 立場があってのことだ 549 00:52:03,181 --> 00:52:08,553 それにしても お互い 随分多くの知己を失ったものだな 550 00:52:08,553 --> 00:52:11,823 ワーレンの言葉は ユリアンを粛然とさせた 551 00:52:11,823 --> 00:52:15,626 それはミュラーと会談した時に 一段と増幅された 552 00:52:15,626 --> 00:52:21,165 ヘル・ミンツ 卿と私とは どちらが幸福なのだろうか 553 00:52:21,165 --> 00:52:23,968 卿らはヤン・ウェンリー元帥が 亡くなられるまで 554 00:52:23,968 --> 00:52:25,937 そのことを知らなかった 555 00:52:25,937 --> 00:52:28,940 我々は 陛下が 亡くなられるについて 556 00:52:28,940 --> 00:52:31,609 心の準備をする期間を与えられた 557 00:52:31,609 --> 00:52:35,580 だが 卿らは悲しみが スタート地点から始まったのに 558 00:52:35,580 --> 00:52:38,015 我々はまずゴールを迎えて 559 00:52:38,015 --> 00:52:42,420 それからまた心の飢えを満たす ために出発しなくてはならない 560 00:52:42,420 --> 00:52:44,355 生き残った者は… 561 00:52:44,355 --> 00:52:48,159 そう 生き残った者にとって 旅は続く 562 00:52:48,159 --> 00:52:50,628 いつか死者たちと合流する日まで 563 00:52:50,628 --> 00:52:55,366 飛ぶことを許されず その日まで 歩き続けなければならない 564 00:52:55,366 --> 00:53:00,705 それにしても 帝国軍の提督たちと 心の交流を持ち得たことは 565 00:53:00,705 --> 00:53:03,608 喜ばしいことだと思う だが 566 00:53:03,608 --> 00:53:07,445 この事実も後世においては 批判の種になるかもしれない 567 00:53:07,445 --> 00:53:11,015 「大量殺戮者同士の 恥知らずな握手だ」と 568 00:53:11,015 --> 00:53:12,950 いや 後世はともかく 569 00:53:12,950 --> 00:53:16,554 戦死者の遺族からは 何と罵倒されても仕方がない 570 00:53:16,554 --> 00:53:19,457 でも 他に選択の道はなかったんだ 571 00:53:19,457 --> 00:53:25,263 今日の状況を作り出すために まず戦わねばならなかったんだ 572 00:53:25,263 --> 00:53:27,865 何をなさってるんです 船長 573 00:53:27,865 --> 00:53:31,402 複利計算 複利計算って 何の? 574 00:53:31,402 --> 00:53:36,040 これまでイゼルローンの連中に 提供した情報の代金さ 575 00:53:36,040 --> 00:53:39,477 代金を取るんですか? そりゃそうさ 576 00:53:39,477 --> 00:53:42,446 第一 無料奉仕なんぞを してもらったとあっては 577 00:53:42,446 --> 00:53:46,050 イゼルローンの連中も 気分が落ち着かんだろ 578 00:53:46,050 --> 00:53:47,985 そうでしょうかね 579 00:53:47,985 --> 00:53:50,655 少なくとも俺なら落ち着かん 580 00:53:50,655 --> 00:53:55,026 俺は誰かと違って 伊達や酔狂で 命を懸けてきたんじゃないぞ 581 00:53:55,026 --> 00:53:57,061 おや そうでしたかね 582 00:53:57,061 --> 00:53:59,463 そうさ 583 00:53:59,463 --> 00:54:01,532 決めた マリネスク 584 00:54:01,532 --> 00:54:05,269 イゼルローンの連中が この過酷なゲームに勝ち残ったら 585 00:54:05,269 --> 00:54:07,505 俺は情報を売買して 586 00:54:07,505 --> 00:54:10,708 新しい時代にふさわしい商人に なってやるぞ 587 00:54:10,708 --> 00:54:14,679 まあ何にしても 良質の製品を売って信用を得て 588 00:54:14,679 --> 00:54:17,882 事業を拡大するのは いいことです 589 00:54:17,882 --> 00:54:20,751 何 一般論を言ってるんだ 590 00:54:20,751 --> 00:54:25,351 それじゃ 早速イゼルローンの 連中の宿舎へ行ってくるかな 591 00:54:29,060 --> 00:54:31,329 何だ 幹部は留守か 592 00:54:31,329 --> 00:54:36,734 よう フェザーンの辣腕家 おたくのルビンスキー氏は元気か 593 00:54:36,734 --> 00:54:39,003 死ぬさ 何! 594 00:54:39,003 --> 00:54:41,606 病院関係者からの情報だ 595 00:54:41,606 --> 00:54:45,376 奴は脳腫瘍で元々 1年足らずの余命だというが 596 00:54:45,376 --> 00:54:47,845 カイザーがハイネセンに 帰着した前後から 597 00:54:47,845 --> 00:54:52,083 食事を拒否しているらしい もう時間の問題だな 598 00:54:52,083 --> 00:54:56,387 ハンストか?しかし そいつは 何だか奴らしくないな 599 00:54:56,387 --> 00:54:59,390 他人の食い物を奪ってでも 生き延びる奴じゃないか 600 00:54:59,390 --> 00:55:03,461 まったくだ だが余命幾ばくもないとなれば 601 00:55:03,461 --> 00:55:05,763 心境も変わるのだろうさ 602 00:55:05,763 --> 00:55:09,400 しかし まずい手だな 偉そうに言ってくれるね 603 00:55:09,400 --> 00:55:12,203 勝負するか? 望むところだ 604 00:55:12,203 --> 00:55:15,903 それは6月13日の 夜のことであった 605 00:55:39,263 --> 00:55:43,663 ああ!大変です ドクター ドクターを! 606 00:55:47,004 --> 00:55:49,807 心停止です ショックを 200で 607 00:55:49,807 --> 00:55:54,445 200 3 2 1 608 00:55:54,445 --> 00:55:59,283 そうです ルビンスキー本人が 自分で機器を外したようです 609 00:55:59,283 --> 00:56:02,853 はい はい そうです 危篤状態です 610 00:56:02,853 --> 00:56:05,053 あっ お待ちください 611 00:56:09,627 --> 00:56:12,129 今 死亡しました 612 00:56:12,129 --> 00:56:15,866 そうか 陰謀の巨魁も 最期はあっけないな 613 00:56:15,866 --> 00:56:18,769 これで宇宙も 少しは静かになるだろう 614 00:56:18,769 --> 00:56:24,709 ルビンスキー関連の書類は まとめて… ん?何だ! 615 00:56:24,709 --> 00:56:27,478 アドリアン・ルビンスキーの 脳波が停止したのは 616 00:56:27,478 --> 00:56:32,283 20時40分のことであり ほぼ同時に それは起こった 617 00:56:32,283 --> 00:56:35,186 それは地震ではなく ハイネセンポリスの地下で 618 00:56:35,186 --> 00:56:38,386 大規模な 人為的爆発が起きたのである 619 00:56:51,135 --> 00:56:55,973 のちに判明したことであるが ルビンスキーは自らの頭蓋骨の中に 620 00:56:55,973 --> 00:56:59,944 脳波による 極低周波爆弾の 制御装置を埋め込んでいて 621 00:56:59,944 --> 00:57:03,714 自分の死と同時に ハイネセンポリスの地下に設置した爆弾が 622 00:57:03,714 --> 00:57:06,714 作動するようにしていたのだった 623 00:57:10,554 --> 00:57:13,391 ルビンスキーの自殺は カイザー・ラインハルトが 624 00:57:13,391 --> 00:57:16,761 ハイネセンに滞在する時機を 狙って爆発を起こし 625 00:57:16,761 --> 00:57:20,361 カイザーを道連れにすることを 狙ったものであった 626 00:57:23,100 --> 00:57:25,100 逃げろ! 627 00:57:32,543 --> 00:57:34,478 消火の用意だ 急げ 急げ 628 00:57:34,478 --> 00:57:36,778 こっちにも来てください 629 00:57:40,184 --> 00:57:42,920 陛下 ご無礼を 630 00:57:42,920 --> 00:57:44,955 陛下 火が迫っております 631 00:57:44,955 --> 00:57:49,326 ここは危険ですので 直ちにご退去を 632 00:57:49,326 --> 00:57:52,963 ハイネセンで死なねば ならんとしたら ここで死ぬ 633 00:57:52,963 --> 00:57:55,833 避難民のように逃げ惑うのは嫌だ 634 00:57:55,833 --> 00:57:59,703 何をおっしゃるのです フェザーンではカイザーリンと皇子が 635 00:57:59,703 --> 00:58:02,940 陛下のお帰りを お待ちになっていらっしゃいます 636 00:58:02,940 --> 00:58:06,143 ご無事でお連れするのが 臣下としての責務なれば 637 00:58:06,143 --> 00:58:08,143 失礼つかまつる 638 00:58:10,981 --> 00:58:13,781 こうしてラインハルトは 危地を脱した 639 00:58:19,123 --> 00:58:22,626 この件に関して 芸術家提督メックリンガーが 640 00:58:22,626 --> 00:58:25,229 記述した文章が残されている 641 00:58:25,229 --> 00:58:30,000 「カイザーの身が無事であったのは ビッテンフェルトの功績であったが」 642 00:58:30,000 --> 00:58:34,939 「彼が芸術 ことに美術造形に 全く興味がなかったからこそ」 643 00:58:34,939 --> 00:58:37,741 「全てが迅速に 処理されたのであった」 644 00:58:37,741 --> 00:58:40,211 「もし美術品の消失を懸念したら」 645 00:58:40,211 --> 00:58:44,048 「万事が遅滞して 重大な結果を生じたであろう」 646 00:58:44,048 --> 00:58:47,318 「誠に幸運と言うべきである」 647 00:58:47,318 --> 00:58:50,221 それはビッテンフェルトの 功績を認めつつ 648 00:58:50,221 --> 00:58:53,491 彼が美術品の搬出に興味を示さず 649 00:58:53,491 --> 00:58:56,994 多くの貴重な絵画や彫刻が 焼失するに任せたことを 650 00:58:56,994 --> 00:58:59,063 暗に批判している 651 00:58:59,063 --> 00:59:03,534 ただ この夜 焼失したのは 美術品だけではなかった 652 00:59:03,534 --> 00:59:06,437 結局 市街は3日間にわたって 炎上を続け 653 00:59:06,437 --> 00:59:11,942 ようやく鎮火した時には 市街地の 30パーセントが焼失してしまっていた 654 00:59:11,942 --> 00:59:18,382 焼死 及び行方不明は5000人を超え 被災者は その500倍に達した 655 00:59:18,382 --> 00:59:22,887 この件が ルビンスキーの命を懸けた テロであることが判明したのは 656 00:59:22,887 --> 00:59:26,387 オーベルシュタインの命を受けた 憲兵隊の働きによる 657 00:59:29,093 --> 00:59:31,562 事件に際し オーベルシュタインは 658 00:59:31,562 --> 00:59:34,865 軍務省関係の書類を 整然と運び出させると 659 00:59:34,865 --> 00:59:39,069 憲兵隊を動かして 不審人物の検挙に当たらせた 660 00:59:39,069 --> 00:59:42,573 その際 検挙された者の中に ルビンスキーの情婦で 661 00:59:42,573 --> 00:59:44,909 共犯者として指名手配されていた 662 00:59:44,909 --> 00:59:47,378 ドミニク・サン・ピエールが いたのである 663 00:59:47,378 --> 00:59:51,081 そうか この一件はルビンスキーが カイザーに捧げる 664 00:59:51,081 --> 00:59:53,617 血まみれの花束か 665 00:59:53,617 --> 00:59:58,355 このような形で銀河帝国に対する 挑戦が終わるということは 666 00:59:58,355 --> 01:00:03,127 アドリアン・ルビンスキーにとって さぞ不本意だったことでしょう 667 01:00:03,127 --> 01:00:05,696 でも 私は同情しません 668 01:00:05,696 --> 01:00:10,534 同情されても喜ぶような人では ありませんでしたから 669 01:00:10,534 --> 01:00:12,903 エルフリーデ・フォン・ コールラウシュという 670 01:00:12,903 --> 01:00:16,840 女性の行方を知っているか? 671 01:00:16,840 --> 01:00:20,277 いいえ そうか 672 01:00:20,277 --> 01:00:24,377 オーベルシュタインは それ以上 追及しようとはしなかった 673 01:00:27,151 --> 01:00:30,387 ドミニクはその後 2ヵ月にわたって勾留され 674 01:00:30,387 --> 01:00:34,258 取り調べを受けたが 結局 起訴猶予となり 675 01:00:34,258 --> 01:00:37,358 釈放されたのち 消息を絶った 676 01:00:39,463 --> 01:00:41,465 ユリアン・ミンツと カイザー・ラインハルトの 677 01:00:41,465 --> 01:00:46,365 正式な会見が実現したのは 6月20日の午後のことであった 678 01:01:05,589 --> 01:01:08,525 卿は確か19歳と聞くが 679 01:01:08,525 --> 01:01:11,395 はい さようです 陛下 680 01:01:11,395 --> 01:01:16,567 19歳の折 余はまだ ゴールデンバウム王朝の大将であった 681 01:01:16,567 --> 01:01:20,204 姓もローエングラムではなく 「自分は何でもやれる」 682 01:01:20,204 --> 01:01:24,708 「友人と2人で 宇宙の全てを 征服できる」と思っていた 683 01:01:24,708 --> 01:01:27,444 陛下はそれを実現なさいました 684 01:01:27,444 --> 01:01:30,914 うむ 卿と初めて対面した時 685 01:01:30,914 --> 01:01:33,550 卿は大言壮語を吐いたな 686 01:01:33,550 --> 01:01:36,920 ローエングラム王朝のために よい策を献じると 687 01:01:36,920 --> 01:01:39,523 それについて 卿が大言を証明する機会を 688 01:01:39,523 --> 01:01:42,523 与えることにしたいのだが 689 01:01:57,308 --> 01:02:01,011 それで 卿は 銀河帝国が死病に侵されぬよう 690 01:02:01,011 --> 01:02:04,548 どのような薬を 調合してくれるのだ 691 01:02:04,548 --> 01:02:07,451 まず 陛下 憲法をお作りください 692 01:02:07,451 --> 01:02:11,355 次に議会をお開きください それで形が整います 693 01:02:11,355 --> 01:02:13,357 立憲政治という器が 694 01:02:13,357 --> 01:02:17,127 器を作った後には 酒をつがなくてはなるまい 695 01:02:17,127 --> 01:02:19,663 どのような酒がふさわしい 696 01:02:19,663 --> 01:02:23,267 酒はよい味を出すまでに 時間がかかります 697 01:02:23,267 --> 01:02:25,736 立憲政治に似合う人材が揃い 698 01:02:25,736 --> 01:02:30,574 それを最もよく運営するまでには 時間が必要でしょう 699 01:02:30,574 --> 01:02:34,445 その時間が カイザーにはないのだった 700 01:02:34,445 --> 01:02:38,148 卿が目的とするところは いささか違うだろう 701 01:02:38,148 --> 01:02:41,452 銀河帝国という器に 立憲政治という酒を 702 01:02:41,452 --> 01:02:45,089 つぐつもりではないのか 703 01:02:45,089 --> 01:02:48,025 そうなれば 民主思想とやらが 銀河帝国を 704 01:02:48,025 --> 01:02:52,830 乗っ取ってしまうことに なるやもしれぬな 705 01:02:52,830 --> 01:02:56,367 フッ 余はフェザーンに帰る 706 01:02:56,367 --> 01:02:59,603 余を待っていてくれる者たちが 幾人かいるのでな 707 01:02:59,603 --> 01:03:04,074 最後の旅をする価値があるだろう 708 01:03:04,074 --> 01:03:07,811 卿もフェザーンへ来るがよい よろしいのですか 陛下? 709 01:03:07,811 --> 01:03:11,682 その方がよい 余よりも むしろ次の支配者に 710 01:03:11,682 --> 01:03:15,085 卿の抱負と識見を 語っておくべきだろう 711 01:03:15,085 --> 01:03:18,956 カイザーリンは余よりはるかに 政治家としての識見に富む 712 01:03:18,956 --> 01:03:23,660 具体的なことは むしろ彼女と 話し合う方がよいだろう 713 01:03:23,660 --> 01:03:28,432 それはカイザー・ラインハルトにとって 最大の のろけではなかったかと 714 01:03:28,432 --> 01:03:31,769 後日になって ユリアンは思ったのだった 715 01:03:31,769 --> 01:03:34,671 その日はラインハルトが 疲労を見せたため 716 01:03:34,671 --> 01:03:37,408 会見は30分ほどで終了し 717 01:03:37,408 --> 01:03:40,644 ユリアンは 目的を達したという満足感を 718 01:03:40,644 --> 01:03:43,644 得られぬまま退出したのだった 719 01:03:48,085 --> 01:03:50,821 ゴールデン・ルーヴェが 720 01:03:50,821 --> 01:03:56,260 全宇宙を征服した覇王の旗が あんなにも力なく… 721 01:03:56,260 --> 01:03:59,196 これはもう最後まで事件が つきまとうぞ 722 01:03:59,196 --> 01:04:01,732 音もなく終幕とはいくまい 723 01:04:01,732 --> 01:04:04,668 予測ではなく 願望でしょう そいつは 724 01:04:04,668 --> 01:04:08,505 とにかく 俺はユリアンに くっついてフェザーンまで行く 725 01:04:08,505 --> 01:04:11,408 こうなれば最後の幕まで 見届けてやるさ 726 01:04:11,408 --> 01:04:13,410 軍務はどうするんです 727 01:04:13,410 --> 01:04:16,079 スーン・スールに任せるさ 728 01:04:16,079 --> 01:04:21,251 あいつは俺ほど独創性はないが 責任感は1.6倍ばかりあるからな 729 01:04:21,251 --> 01:04:23,187 ラオに手伝わせよう 730 01:04:23,187 --> 01:04:26,723 で エース殿は ハイネセンに残るのか? 731 01:04:26,723 --> 01:04:30,461 まさか 留守番は 子供の頃から嫌いでね 732 01:04:30,461 --> 01:04:32,529 聞くところでは ムライのおっさんは 733 01:04:32,529 --> 01:04:37,100 楽隠居してしまう気らしいが 俺たちは そうもいくまい 734 01:04:37,100 --> 01:04:40,037 幕が下りて 劇場の収支が 黒字になったことを 735 01:04:40,037 --> 01:04:43,874 確認するまでは ユリアンに付き合おうや 736 01:04:43,874 --> 01:04:46,143 その頃 ユリアンは シュナイダーから 737 01:04:46,143 --> 01:04:48,679 別れの挨拶を受けていた 738 01:04:48,679 --> 01:04:52,549 メルカッツ提督のご遺族の所へ いらっしゃるのですね 739 01:04:52,549 --> 01:04:57,120 そういうことだ メルカッツ提督は旅を終えられた 740 01:04:57,120 --> 01:05:01,920 そのことをご遺族の方たちに お伝えして 俺の旅も終わる 741 01:05:03,827 --> 01:05:05,762 またいつか会おう 742 01:05:05,762 --> 01:05:07,731 またいつか 必ず 743 01:05:07,731 --> 01:05:11,969 生きての別れであれば いつかまた会えるはずだ 744 01:05:11,969 --> 01:05:15,439 シュナイダーの旅が 実りある終わり方をするよう 745 01:05:15,439 --> 01:05:18,442 ユリアンは心から願った 746 01:05:18,442 --> 01:05:23,942 宇宙暦801年 新帝国暦3年6月27日 747 01:05:29,953 --> 01:05:33,657 銀河帝国皇帝 ラインハルト・ フォン・ローエングラムは 748 01:05:33,657 --> 01:05:37,094 修復を完了した総旗艦 ブリュンヒルトに搭乗して 749 01:05:37,094 --> 01:05:42,833 惑星ハイネセンを発し 帝都フェザーンへと向かった 750 01:05:42,833 --> 01:05:47,833 ラインハルトにとって 最後の恒星間飛行が始まる 751 01:07:22,633 --> 01:07:25,969 自ら終焉の地と定めた 惑星フェザーンに 752 01:07:25,969 --> 01:07:28,739 カイザー・ラインハルトは 帰ってきた 753 01:07:28,739 --> 01:07:31,675 皇妃ヒルダと 姉アンネローゼに見守られて 754 01:07:31,675 --> 01:07:36,113 今 ラインハルトは最期の時を 迎えようとしていた 755 01:07:36,113 --> 01:07:40,050 だが その安息は 地球教徒の 襲撃によって撃ち破られ 756 01:07:40,050 --> 01:07:42,586 居合わせたユリアンらは… 757 01:07:42,586 --> 01:07:48,125 次回「銀河英雄伝説」 最終話「夢、見果てたり」 758 01:07:48,125 --> 01:07:50,725 銀河の歴史も あと1ページ 759 01:11:59,276 --> 01:12:03,847 宇宙暦801年 新帝国暦3年7月8日 760 01:12:03,847 --> 01:12:07,450 ようやく治安の回復が見られる 惑星ハイネセンにおいて 761 01:12:07,450 --> 01:12:11,454 ルビンスキーの火祭りに巻き込まれて 負傷 入院していた人物の一人が 762 01:12:11,454 --> 01:12:13,757 身分証明書の偽造を発見されて 763 01:12:13,757 --> 01:12:17,160 憲兵隊の尋問を 受けることになった 764 01:12:17,160 --> 01:12:20,063 卿の名は? シューマッハ 765 01:12:20,063 --> 01:12:22,763 レオポルド・シューマッハ 766 01:12:25,468 --> 01:12:27,704 それは前王朝の幼帝 767 01:12:27,704 --> 01:12:30,473 エルウィン・ヨーゼフ二世 誘拐の実行犯として 768 01:12:30,473 --> 01:12:33,673 重要手配されている 国事犯の名であった 769 01:12:35,645 --> 01:12:39,182 照合の結果 本人に間違いないことが分かると 770 01:12:39,182 --> 01:12:42,152 病室は 本格的な 取り調べの場となったが 771 01:12:42,152 --> 01:12:45,288 シューマッハ自身が 供述を拒否しなかったので 772 01:12:45,288 --> 01:12:48,258 拷問も自白剤も使用されなかった 773 01:12:48,258 --> 01:12:51,895 その取り調べの中で シューマッハは 今年に入って 774 01:12:51,895 --> 01:12:54,364 エルウィン・ヨーゼフ二世の 死体とされたものは 775 01:12:54,364 --> 01:12:56,866 別人の死体だと語った 776 01:12:56,866 --> 01:12:58,802 どういうことだ? 777 01:12:58,802 --> 01:13:01,738 エルウィン・ヨーゼフ二世は 行方不明になったんだ 778 01:13:01,738 --> 01:13:06,042 昨年の3月に ランズベルク伯の 手から逃げ出してね 779 01:13:06,042 --> 01:13:08,745 その後はどうしているか 見当もつかないな 780 01:13:08,745 --> 01:13:10,680 では あの死体は? 781 01:13:10,680 --> 01:13:13,483 精神の均衡を失った ランズベルク伯が 782 01:13:13,483 --> 01:13:17,053 死体収容所から 同年齢の少年の遺体を盗み出して 783 01:13:17,053 --> 01:13:19,956 それをカイザーのものとして 扱っていたんだ 784 01:13:19,956 --> 01:13:23,226 ランズベルク伯が所持していた 幼帝の死の記録は 785 01:13:23,226 --> 01:13:26,229 全て彼の妄想が生んだ 創作に過ぎない 786 01:13:26,229 --> 01:13:30,967 もっとも帝国の治安当局が 完全に信じるほどの出来だ 787 01:13:30,967 --> 01:13:34,838 彼の生涯最高の 創作物であったのだろう 788 01:13:34,838 --> 01:13:37,307 それと もう一つ 789 01:13:37,307 --> 01:13:42,212 地球教の残党は まだカイザーの 命を狙うことを諦めてはいない 790 01:13:42,212 --> 01:13:45,081 俺がルビンスキーの線から 聞いた話では 791 01:13:45,081 --> 01:13:50,353 最後の実動集団が フェザーンに 潜入したということだ 792 01:13:50,353 --> 01:13:55,125 人数は30人に満たないはずで もう他の組織は壊滅している 793 01:13:55,125 --> 01:14:01,631 そいつらを処理すれば 地球教が 再起することはないだろう 794 01:14:01,631 --> 01:14:04,267 今後 どのように身を処すつもりか 795 01:14:04,267 --> 01:14:08,571 別に何もない できれば フェザーンのアッシニボイヤ渓谷で 796 01:14:08,571 --> 01:14:12,976 元の部下たちとやっていた 農場に戻りたい それだけだ 797 01:14:12,976 --> 01:14:16,980 後日のことになるが シューマッハの希望は達成されなかった 798 01:14:16,980 --> 01:14:21,284 2ヵ月後 恩赦によって 釈放された彼はフェザーンに帰ったが 799 01:14:21,284 --> 01:14:24,921 アッシニボイヤ渓谷の集団農場は 既に解体されて 800 01:14:24,921 --> 01:14:27,424 彼の元の部下たちも四散していた 801 01:14:27,424 --> 01:14:31,795 一時 彼はシュトライト中将の 推挙で帝国軍准将となるが 802 01:14:31,795 --> 01:14:35,432 宇宙海賊との戦闘中 行方不明となる 803 01:14:35,432 --> 01:14:38,968 シューマッハのもたらした情報は フェザーンに向けて航行中の 804 01:14:38,968 --> 01:14:41,968 オーベルシュタイン元帥に 伝えられた 805 01:14:52,148 --> 01:14:54,617 フェザーンへ向かう ブリュンヒルトの艦内で 806 01:14:54,617 --> 01:14:58,788 ユリアンは しばしばカイザー・ラインハルトと 面談する機会を得た 807 01:14:58,788 --> 01:15:02,659 ラインハルトはヤン・ウェンリーの 逸話を聞くことを好んだ 808 01:15:02,659 --> 01:15:07,263 無論 この間にも今後の政治に ついて真剣な討議がなされた 809 01:15:07,263 --> 01:15:10,166 イゼルローン要塞を 帝国軍に引き渡すこと 810 01:15:10,166 --> 01:15:12,969 ハイネセンを含むバーラト星域を 自治領として 811 01:15:12,969 --> 01:15:15,038 内政自治権を与えること 812 01:15:15,038 --> 01:15:17,841 この2点については 完全な合意を見た 813 01:15:17,841 --> 01:15:21,244 だが憲法の制定と 議会の開設については 814 01:15:21,244 --> 01:15:23,880 ラインハルトは慎重だった 815 01:15:23,880 --> 01:15:27,417 立憲政治とやらの 利点については考慮するが 816 01:15:27,417 --> 01:15:30,820 確約はできない 817 01:15:30,820 --> 01:15:34,290 余と卿とで 全てのことを 決めてしまっては 818 01:15:34,290 --> 01:15:37,994 のちの世代の人間が やるべきことがなくなってしまう 819 01:15:37,994 --> 01:15:43,800 そうなれば 余計なことを してくれたと恨まれるだろう 820 01:15:43,800 --> 01:15:46,769 冗談めかしてはいるが カイザー・ラインハルトは 821 01:15:46,769 --> 01:15:49,739 民主主義の存続を 無制限あるいは無原則に 822 01:15:49,739 --> 01:15:53,476 認めるつもりはないのだと いうことをユリアンは理解した 823 01:15:53,476 --> 01:15:56,079 ラインハルトは 病に衰弱したといっても 824 01:15:56,079 --> 01:15:59,682 為政者としての 冷静な現実感覚を失ってはおらず 825 01:15:59,682 --> 01:16:03,553 むしろユリアンらに 辛辣な試練を 与えようとしているのだ 826 01:16:03,553 --> 01:16:07,790 戦争に耐えて生き残った価値観が 平和の中で腐食しないか 827 01:16:07,790 --> 01:16:11,227 見届けてやるというのである 828 01:16:11,227 --> 01:16:16,065 7月18日 カイザー・ラインハルトの一行は フェザーンに到着した 829 01:16:16,065 --> 01:16:18,001 そのままカイザー・ラインハルトは 830 01:16:18,001 --> 01:16:21,638 皇妃と皇子が待つ ヴェルゼーデ仮皇宮に向かった 831 01:16:21,638 --> 01:16:25,909 それは かつてのゴールデンバウム王朝の 高等弁務官の邸宅だったが 832 01:16:25,909 --> 01:16:31,247 シュテッヒパルム・シュロスの炎上ののち 仮の皇宮に定められていた 833 01:16:31,247 --> 01:16:34,484 一方 ユリアンらも 仮皇宮から徒歩で10分ほどの 834 01:16:34,484 --> 01:16:36,753 ホテル・ベルンカステルに 投宿したが 835 01:16:36,753 --> 01:16:42,458 周辺を帝国軍陸戦兵に 警備されることとなった 836 01:16:42,458 --> 01:16:45,295 ま あのぐらいは大目に見てやるさ 837 01:16:45,295 --> 01:16:48,565 おや?万事に好戦的な アッテンボロー提督にしては 838 01:16:48,565 --> 01:16:50,500 お珍しいことで 839 01:16:50,500 --> 01:16:54,003 ケンカをするには 時と相手を選ばなくてはな 840 01:16:54,003 --> 01:16:58,508 帝国に議会ができるなら そっちで暴れた方が面白いだろう 841 01:16:58,508 --> 01:17:01,878 ところで この一件が済んだら お前さん どうするんだ 842 01:17:01,878 --> 01:17:05,715 そうだな 宇宙海賊も悪くないな 843 01:17:05,715 --> 01:17:07,750 とにかく 俺はもう ヤン・ウェンリーの下で 844 01:17:07,750 --> 01:17:11,187 服従心と忍耐心を使い果たした 845 01:17:11,187 --> 01:17:14,524 これから先 死ぬまで誰にも 頭を下げる気はないし 846 01:17:14,524 --> 01:17:17,527 誰の家につながれるのも ごめんこうむりたいね 847 01:17:17,527 --> 01:17:22,365 そういや 聞いたか ユリアン トリューニヒトのこと 848 01:17:22,365 --> 01:17:24,567 それはルビンスキーの死と 849 01:17:24,567 --> 01:17:28,104 ドミニクの告白によって 明らかになった事実であったが 850 01:17:28,104 --> 01:17:30,173 ヨブ・トリューニヒトが 目指していたのも 851 01:17:30,173 --> 01:17:33,509 帝国に立憲体制を 敷くことであったという 852 01:17:33,509 --> 01:17:35,778 動機も理念も大きく異なるが 853 01:17:35,778 --> 01:17:38,214 目指すところが 同じであったということに 854 01:17:38,214 --> 01:17:42,418 ユリアンは戦慄すら覚えていた 855 01:17:42,418 --> 01:17:46,689 7月25日 それまで 小康状態にあったラインハルトの容体が 856 01:17:46,689 --> 01:17:50,560 急激に悪化した 体温は40度を下らず 857 01:17:50,560 --> 01:17:54,297 しばしば意識を失い 脱水症状に陥った 858 01:17:54,297 --> 01:17:59,202 ヒルダとアンネローゼは 病人の 看護と乳児の世話を交代で行った 859 01:17:59,202 --> 01:18:02,872 どちらか1人であれば 過労で倒れていたことは疑いない 860 01:18:02,872 --> 01:18:05,842 翌26日 更に容体は悪化し 861 01:18:05,842 --> 01:18:09,112 11時50分に呼吸が一時停止した 862 01:18:09,112 --> 01:18:14,312 ただ これは20秒後に回復し 13時には意識も戻った 863 01:18:20,056 --> 01:18:22,959 どうだい 7月だというのに この気温は 864 01:18:22,959 --> 01:18:26,529 奇妙な天気だ カイザーは太陽の光まで 865 01:18:26,529 --> 01:18:29,432 あの世に持っていって しまうんじゃないのか 866 01:18:29,432 --> 01:18:32,335 16時20分 それまで軍務に従事していた 867 01:18:32,335 --> 01:18:35,305 帝国軍の将帥たちが招集された 868 01:18:35,305 --> 01:18:38,541 オーベルシュタイン ミッターマイヤーの 両元帥をはじめ 869 01:18:38,541 --> 01:18:40,476 ミュラー ビッテンフェルト ワーレン 870 01:18:40,476 --> 01:18:44,781 アイゼナッハ メックリンガー ケスラーの6名の上級大将が 871 01:18:44,781 --> 01:18:49,185 待機所に充てられた談話室に 招じ入れられた 872 01:18:49,185 --> 01:18:54,585 5分後 オーベルシュタインのみが 所用と称して退出している 873 01:19:02,732 --> 01:19:05,668 全宇宙を征服なさった覇王が 874 01:19:05,668 --> 01:19:09,972 地上に足止めされ 病室に閉じ込められている 875 01:19:09,972 --> 01:19:13,643 おいたわしい限りだ 876 01:19:13,643 --> 01:19:17,447 医師どもは何をしているのだ 役立たずの穀潰しどもが! 877 01:19:17,447 --> 01:19:19,382 手をつかねて陛下のお苦しみを 878 01:19:19,382 --> 01:19:22,018 放置したりすれば ただではおかんぞ! 879 01:19:22,018 --> 01:19:25,822 貴様一人わめくな! いつも貴様が逆上するものだから 880 01:19:25,822 --> 01:19:27,757 他の者が迷惑するではないか 881 01:19:27,757 --> 01:19:30,593 俺たちは 貴様の鎮静剤ではないぞ! 882 01:19:30,593 --> 01:19:32,593 何だと! 883 01:19:34,497 --> 01:19:36,497 あっ! うっ! 884 01:19:39,302 --> 01:19:43,039 カイザーご自身が 心身の苦痛に耐えていらっしゃる 885 01:19:43,039 --> 01:19:46,809 我々が7人がかりで 耐えられぬはずがなかろう 886 01:19:46,809 --> 01:19:51,909 「情けない臣下を持ったものだ」と カイザーがお嘆きになるぞ 887 01:19:54,650 --> 01:19:57,453 この時 意識を回復した ラインハルトが 888 01:19:57,453 --> 01:20:00,690 ヒルダに いくつかの遺言を 残していた 889 01:20:00,690 --> 01:20:03,593 6名の上級大将に 890 01:20:03,593 --> 01:20:06,996 帝国元帥の地位を与えること 891 01:20:06,996 --> 01:20:09,265 ただし それは余の死後 892 01:20:09,265 --> 01:20:14,103 摂政となった カイザーリンの名で行うよう 893 01:20:14,103 --> 01:20:17,940 18時30分 ミッターマイヤー元帥のみが呼び出され 894 01:20:17,940 --> 01:20:20,910 諸将は不吉な予感に 緊張を強いられた 895 01:20:20,910 --> 01:20:25,681 だがミッターマイヤーが呼ばれた理由は 一同が想像したものではなかった 896 01:20:25,681 --> 01:20:29,552 嵐の中を恐縮ですけど ミッターマイヤー元帥 897 01:20:29,552 --> 01:20:33,423 ここへ奥様とお子様を お連れくださいまし 898 01:20:33,423 --> 01:20:37,293 よろしいのですか 私の妻子などを連れてまいっても 899 01:20:37,293 --> 01:20:41,264 カイザーが そうお望みなのです どうか急いでください 900 01:20:41,264 --> 01:20:44,467 ただちに 901 01:20:44,467 --> 01:20:50,273 同時刻 ベルンカステル・ホテルにも カイザーの使者が訪れていた 902 01:20:50,273 --> 01:20:52,208 カイザーが卿らを仮皇宮に 903 01:20:52,208 --> 01:20:54,911 お呼びするようにと 仰せになりました 904 01:20:54,911 --> 01:20:58,811 悪天候の中 恐縮ですが お越しください 905 01:21:01,184 --> 01:21:03,252 …危ないのですか? 906 01:21:03,252 --> 01:21:05,552 どうか お急ぎを 907 01:21:07,690 --> 01:21:10,993 ヤン提督 僕はあなたの代理として 908 01:21:10,993 --> 01:21:15,832 この時代に冠絶した 巨大な個性の終焉を確かめます 909 01:21:15,832 --> 01:21:20,002 提督が来世においでなら どうか僕の目を通して 910 01:21:20,002 --> 01:21:23,002 歴史の重大な瞬間を 確認してください 911 01:21:28,177 --> 01:21:30,177 あっ 912 01:21:33,115 --> 01:21:36,352 グリューネワルト大公妃殿下で あらせられます 913 01:21:36,352 --> 01:21:41,924 あの人が… あの人がいたからこそ ローエングラム王朝が誕生し 914 01:21:41,924 --> 01:21:47,224 カイザー・ラインハルトという 巨星が宇宙に輝き得たのか 915 01:22:02,845 --> 01:22:06,645 夢を見ていました 姉上… 916 01:22:08,651 --> 01:22:11,554 アンネローゼは ラインハルトの瞳に 917 01:22:11,554 --> 01:22:14,490 今まで見たことのない 穏やかな 柔らかな光が 918 01:22:14,490 --> 01:22:16,893 たゆたっているのを見て取った 919 01:22:16,893 --> 01:22:20,463 それはアンネローゼに 弟の死を確信させた 920 01:22:20,463 --> 01:22:23,432 ラインハルトは 常に満たされない心を埋めるべく 921 01:22:23,432 --> 01:22:27,236 自らの身を焼きながら 戦ってきたのではなかったか 922 01:22:27,236 --> 01:22:29,238 ラインハルトの柔和さは 923 01:22:29,238 --> 01:22:34,410 彼の心身が焼き尽くされた 白い灰の温かさであるようだった 924 01:22:34,410 --> 01:22:39,749 まだ夢を見足りない? ラインハルト 925 01:22:39,749 --> 01:22:43,119 いえ もう十分に見ました 926 01:22:43,119 --> 01:22:48,858 誰も見たことのない夢を 十分すぎるほど 927 01:22:48,858 --> 01:22:51,827 アンネローゼは 自分自身の胸が張り裂ける音を 928 01:22:51,827 --> 01:22:53,996 聞いたように思った 929 01:22:53,996 --> 01:22:57,767 ラインハルトの烈気と鋭気が 和らげられた時 彼は死ぬ 930 01:22:57,767 --> 01:23:00,536 剣は剣以外に 存在する意義を持たない 931 01:23:00,536 --> 01:23:04,907 彼女はそのことを知っていた 932 01:23:04,907 --> 01:23:08,607 姉上 いろいろと ありがとうございました 933 01:23:10,646 --> 01:23:14,350 感謝の言葉など アンネローゼは聞きたくなかった 934 01:23:14,350 --> 01:23:16,786 若くして世を捨てた姉など 無視して 935 01:23:16,786 --> 01:23:20,690 星々の海に巨大な翼を 広げていってほしかった 936 01:23:20,690 --> 01:23:24,560 キルヒアイスの死後 それだけが アンネローゼの願いであり 937 01:23:24,560 --> 01:23:28,064 彼女と現世をつなぐ 細い糸であったのに 938 01:23:28,064 --> 01:23:30,864 姉上 これを… 939 01:23:32,868 --> 01:23:36,305 もう私には必要がなくなりました 940 01:23:36,305 --> 01:23:38,307 姉上に差し上げます 941 01:23:38,307 --> 01:23:42,845 そして キルヒアイスもお返しします 942 01:23:42,845 --> 01:23:47,545 ずっとお借りしっぱなしで 申し訳ありませんでした 943 01:23:49,619 --> 01:23:52,355 はっ! 944 01:23:52,355 --> 01:23:55,758 昏睡されただけです 945 01:23:55,758 --> 01:23:58,761 19時 風雨の中で 急報がもたらされた 946 01:23:58,761 --> 01:24:03,132 市外の液体水素タンクが 自爆テロで爆破され 犯人の遺体から 947 01:24:03,132 --> 01:24:06,035 地球教徒であることが 判明したというのである 948 01:24:06,035 --> 01:24:09,872 うろたえるな 火災や爆破事件を 起こして陽動するのは 949 01:24:09,872 --> 01:24:11,807 地球教どもの常套手段だ 950 01:24:11,807 --> 01:24:15,077 奴らの狙いは カイザーご一家以外にはない 951 01:24:15,077 --> 01:24:19,582 仮皇宮の守りのみ心がけよ はっ! 952 01:24:19,582 --> 01:24:22,985 小官が現場に出て 直接 指揮いたしたく思いますので 953 01:24:22,985 --> 01:24:25,788 失礼いたします 954 01:24:25,788 --> 01:24:30,326 19時50分 一度軍務省に戻っていた オーベルシュタイン元帥が 955 01:24:30,326 --> 01:24:32,995 再び仮皇宮に戻ってきた 956 01:24:32,995 --> 01:24:36,966 地球教徒の最後の残党が カイザーの命を絶つべく 957 01:24:36,966 --> 01:24:41,604 まもなく ここへ 侵入してくるだろう 958 01:24:41,604 --> 01:24:44,874 なぜ地球教徒が そのような暴挙に出るのだ 959 01:24:44,874 --> 01:24:49,078 いま少し待てば 彼らの手を 必要とせず 事態は変わるのに 960 01:24:49,078 --> 01:24:51,447 私が奴らをおびき寄せたのだ 961 01:24:51,447 --> 01:24:54,884 軍務尚書が? 情報を流したのだ 962 01:24:54,884 --> 01:24:59,655 陛下のご病状が回復に向かい ご健康になられたあかつきには 963 01:24:59,655 --> 01:25:02,858 地球教の信仰の対象たる 地球そのものを 964 01:25:02,858 --> 01:25:04,894 破壊なさるであろうと 965 01:25:04,894 --> 01:25:09,165 それを阻止するために 奴らは軽挙に出てきたのだ 966 01:25:09,165 --> 01:25:12,068 卿はカイザーの御身を おとりにしたというのか! 967 01:25:12,068 --> 01:25:14,637 いかに手段を選ぶ余裕が ないとはいえ 968 01:25:14,637 --> 01:25:17,106 それが臣下たる者のなすことか! 969 01:25:17,106 --> 01:25:19,975 カイザーは もはや ご逝去を免れぬ 970 01:25:19,975 --> 01:25:22,878 だがローエングラム王朝は続く 971 01:25:22,878 --> 01:25:27,717 王朝の将来に備え 地球教の狂信者どもを根絶する 972 01:25:27,717 --> 01:25:31,987 そのために 陛下に ご協力いただいただけのことだ 973 01:25:31,987 --> 01:25:33,923 んん… 974 01:25:33,923 --> 01:25:37,860 とにかく 地球教徒どもを 掃滅する方が先です 975 01:25:37,860 --> 01:25:40,262 指揮系統が分散しては かえって 976 01:25:40,262 --> 01:25:43,499 狂信者どもの術中に 陥るかもしれません 977 01:25:43,499 --> 01:25:49,071 我々もケスラー総監の 指示を受けて行動しましょう 978 01:25:49,071 --> 01:25:53,075 こうして20時から22時にかけて 仮皇宮の内外では 979 01:25:53,075 --> 01:25:56,575 無言のうちに 死闘が繰り広げられた 980 01:25:59,782 --> 01:26:02,351 銃声だ 始まったな 981 01:26:02,351 --> 01:26:04,787 行くか ええ 982 01:26:04,787 --> 01:26:07,387 君はここに残ってくれ 983 01:26:10,459 --> 01:26:12,394 僕たちは 地球教徒に 984 01:26:12,394 --> 01:26:15,297 感謝しなくては ならないのかもしれない 985 01:26:15,297 --> 01:26:18,768 地球教徒に対する 共通の憎悪によって 986 01:26:18,768 --> 01:26:22,338 銀河帝国と民主主義が 共存の道を見いだすことが 987 01:26:22,338 --> 01:26:24,406 できるのだとしたら 988 01:26:24,406 --> 01:26:30,146 カイザーを 守るために フェザーンで 地球教徒と 戦う… 989 01:26:30,146 --> 01:26:32,748 何だ? いくつかの文章を 990 01:26:32,748 --> 01:26:37,419 文節ごとに分解して バラバラに 組み合わせる言葉遊びがあるだろ 991 01:26:37,419 --> 01:26:40,756 あれを思い出すぜ こんな場所で こんなことをするなんて 992 01:26:40,756 --> 01:26:44,093 つい50日前には想像もしなかった 993 01:26:44,093 --> 01:26:47,363 生きていると退屈しないでいいな 994 01:26:47,363 --> 01:26:49,463 おい!あれを 995 01:26:51,333 --> 01:26:53,469 地球教徒だな 996 01:26:53,469 --> 01:26:56,138 撃たれて ここまで 逃げてきたようですね 997 01:26:56,138 --> 01:27:00,138 銃を借りておこう 武器がないと どうにもならん 998 01:27:18,194 --> 01:27:20,763 武器はそろったな 999 01:27:20,763 --> 01:27:22,963 爆発か? こっちです 1000 01:27:26,402 --> 01:27:31,740 やった!やったぞ! ついにカイザーを仕留めたぞ! 1001 01:27:31,740 --> 01:27:33,740 うっ! 1002 01:27:35,644 --> 01:27:39,444 どこへ行くつもりだ 地球教徒 1003 01:28:03,505 --> 01:28:05,975 殺す前に ぜひ聞きたいことがある 1004 01:28:05,975 --> 01:28:09,578 総大主教は? 総大主教はどこにいる! 1005 01:28:09,578 --> 01:28:12,014 総大主教? 1006 01:28:12,014 --> 01:28:15,784 フッ フハハ… 1007 01:28:15,784 --> 01:28:20,584 総大主教なら ほれ そこに転がっている 1008 01:28:33,002 --> 01:28:37,006 ハッ こいつが総大主教だと? 1009 01:28:37,006 --> 01:28:41,443 その男は 自分が総大主教だと 思い込んでいた 1010 01:28:41,443 --> 01:28:45,781 白痴だが 一種の暗記機械でな どういうことだ? 1011 01:28:45,781 --> 01:28:51,453 本物の総大主教は 地球で 巨大な岩盤の下に埋もれている 1012 01:28:51,453 --> 01:28:55,753 100万年も経てば 化石になって 発掘されるかもしれんな 1013 01:28:57,760 --> 01:29:01,430 総大主教の死は 信者どもには伏せてあった 1014 01:29:01,430 --> 01:29:03,933 その男が 身代わりを務めていたのだ 1015 01:29:03,933 --> 01:29:06,435 だが もはや信者といっても 1016 01:29:06,435 --> 01:29:10,072 今日ここを襲撃した20名が 最後だがな 1017 01:29:10,072 --> 01:29:14,410 思い出したぞ! 貴様はド・ヴィリエ大主教 1018 01:29:14,410 --> 01:29:17,610 貴様こそ ヤン提督の敵だ! 1019 01:29:24,386 --> 01:29:27,686 私を殺すとは愚かな… 1020 01:29:29,625 --> 01:29:32,394 ローエングラム王朝を 倒そうとする者は 1021 01:29:32,394 --> 01:29:34,430 我らだけではない 1022 01:29:34,430 --> 01:29:38,834 私ならば その情報を… 1023 01:29:38,834 --> 01:29:40,769 勘違いしないでほしいな 1024 01:29:40,769 --> 01:29:44,273 僕はローエングラム王朝の将来に 何の責任もない 1025 01:29:44,273 --> 01:29:48,043 僕が貴様を殺すのは ヤン・ウェンリーの敵だからだ 1026 01:29:48,043 --> 01:29:51,013 そう言ったのが 聞こえなかったのか 1027 01:29:51,013 --> 01:29:55,117 それに… パトリチェフ少将の敵! 1028 01:29:55,117 --> 01:29:57,152 ブルームハルト中佐の敵! 1029 01:29:57,152 --> 01:30:01,052 他のたくさんの人たちの敵だ! 1030 01:30:05,694 --> 01:30:09,365 貴様一人の命で償えるものか! 1031 01:30:09,365 --> 01:30:12,267 主演俳優一人で張り切らんでくれ 1032 01:30:12,267 --> 01:30:14,336 俺たちの出番が なかったじゃないか 1033 01:30:14,336 --> 01:30:16,536 こっちだ 急げ! 1034 01:30:18,674 --> 01:30:20,674 動くな! 1035 01:30:22,878 --> 01:30:24,878 卿らか… 1036 01:30:28,784 --> 01:30:33,122 卿らが? はい 地球教の大主教です 1037 01:30:33,122 --> 01:30:35,924 それより ラインハルト陛下は ご無事ですか 1038 01:30:35,924 --> 01:30:39,395 爆破されたのは 陛下のご病室ではない 1039 01:30:39,395 --> 01:30:41,930 連中は そう思い込んでいたようだが 1040 01:30:41,930 --> 01:30:44,867 それでは… 陛下はご無事だ 1041 01:30:44,867 --> 01:30:46,867 だが… 1042 01:30:59,214 --> 01:31:02,985 緊急の手術が必要です 至急に軍病院へお運びしろ! 1043 01:31:02,985 --> 01:31:04,920 無用だ 1044 01:31:04,920 --> 01:31:08,157 助からぬ者を 助けるふりをするのは 1045 01:31:08,157 --> 01:31:13,862 偽善であるだけでなく 技術と労力の浪費だ 1046 01:31:13,862 --> 01:31:16,765 ラーベナルトに伝えてもらいたい 1047 01:31:16,765 --> 01:31:21,370 私の遺言状は デスクの3番目の 引き出しに入っているから 1048 01:31:21,370 --> 01:31:24,306 遺漏なく執行すること 1049 01:31:24,306 --> 01:31:28,477 それと 犬には ちゃんと鳥肉をやってくれ 1050 01:31:28,477 --> 01:31:33,148 もう先が長くないから 好きなようにさせてやるように 1051 01:31:33,148 --> 01:31:36,752 それだけだ 1052 01:31:36,752 --> 01:31:40,989 ラーベナルトは我が家の執事だ 1053 01:31:40,989 --> 01:31:43,892 30秒後 その死が確認された 1054 01:31:43,892 --> 01:31:47,896 事実としてはオーベルシュタインが カイザーの 身代わりになったのであるが 1055 01:31:47,896 --> 01:31:51,266 それが 全てを計算した上での 殉死であったのか 1056 01:31:51,266 --> 01:31:53,869 単なる計算違いで あったのかについては 1057 01:31:53,869 --> 01:31:59,074 彼を知る者の意見は2つに分かれ しかも一方の意見を主張した者も 1058 01:31:59,074 --> 01:32:03,045 完全な自信を 持ち得なかったのである 1059 01:32:03,045 --> 01:32:05,781 いずれにしても 人々は オーベルシュタインの死に 1060 01:32:05,781 --> 01:32:09,585 いつまでも 関心を持っていられなかった 1061 01:32:09,585 --> 01:32:14,823 22時15分 ミッターマイヤーが 妻子を伴って仮皇宮に戻ってきた 1062 01:32:14,823 --> 01:32:19,323 途中 道路の冠水に阻まれて 立ち往生していたのである 1063 01:32:27,536 --> 01:32:31,336 よく来てくださった フラウ・ミッターマイヤー 1064 01:32:35,811 --> 01:32:38,046 帝国の支配権などより 1065 01:32:38,046 --> 01:32:40,982 親として 我が子 アレクサンデル・ジークフリードに 1066 01:32:40,982 --> 01:32:44,752 対等の友人を1人 残してやりたいと思ってな 1067 01:32:44,752 --> 01:32:50,692 勝手な願いだが 承知していただけるだろうか 1068 01:32:50,692 --> 01:32:54,262 フェリックス プリンツ・アレクに いや 1069 01:32:54,262 --> 01:32:58,733 カイザー・アレク陛下に 忠誠を誓約しなさい 1070 01:32:58,733 --> 01:33:00,833 ああっ 1071 01:33:08,910 --> 01:33:11,846 これはご無礼を 1072 01:33:11,846 --> 01:33:15,450 (2人の泣き声) 1073 01:33:15,450 --> 01:33:17,385 こ… これは… 1074 01:33:17,385 --> 01:33:20,088 よい ミッターマイヤー 1075 01:33:20,088 --> 01:33:22,088 はあ… 1076 01:33:26,327 --> 01:33:28,596 よい子だな フェリックス 1077 01:33:28,596 --> 01:33:32,196 これからもアレクと 仲よくしてやってくれ 1078 01:33:40,742 --> 01:33:45,542 軍務尚書が見えぬようだが あの男はどこにいる? 1079 01:33:47,815 --> 01:33:51,786 軍務尚書は やむを得ない理由で 座を外しております 1080 01:33:51,786 --> 01:33:53,988 ああ そうか 1081 01:33:53,988 --> 01:33:58,988 あの男のやることは いつも もっともな理由があるのだったな 1082 01:34:00,828 --> 01:34:04,399 カイザーリン あなたなら余より賢明に 1083 01:34:04,399 --> 01:34:07,969 宇宙を統治してゆけるだろう 1084 01:34:07,969 --> 01:34:11,339 立憲体制に移行するなら それもよし 1085 01:34:11,339 --> 01:34:16,044 いずれにしても 生ある者の中で 最も強大で賢明な者が 1086 01:34:16,044 --> 01:34:19,414 宇宙を支配すればよいのだ 1087 01:34:19,414 --> 01:34:23,685 もしアレクサンデル・ジークフリードが その力量を持たぬなら 1088 01:34:23,685 --> 01:34:29,490 ローエングラム王朝など あえて存続させる必要はない 1089 01:34:29,490 --> 01:34:33,194 全て あなたの思うとおりに やってくれれば 1090 01:34:33,194 --> 01:34:36,294 それ以上 望むことはない… 1091 01:34:45,840 --> 01:34:48,040 あ… ん… 1092 01:34:56,784 --> 01:35:01,322 宇宙を手に入れたら… 1093 01:35:01,322 --> 01:35:03,522 みんなで… 1094 01:35:08,830 --> 01:35:11,733 それは 新帝国暦3年 1095 01:35:11,733 --> 01:35:15,236 宇宙暦801年7月26日 1096 01:35:15,236 --> 01:35:18,973 23時29分のことである 1097 01:35:18,973 --> 01:35:22,276 ラインハルト・フォン・ ローエングラムは25歳 1098 01:35:22,276 --> 01:35:26,676 その治世は わずかに2年あまりであった 1099 01:35:33,421 --> 01:35:36,624 カイザーは 病死なさったのではありません 1100 01:35:36,624 --> 01:35:39,660 命数を使い果たして 亡くなったのです 1101 01:35:39,660 --> 01:35:42,563 病に倒れたのではありません 1102 01:35:42,563 --> 01:35:47,763 どうかそのことを 皆さん 忘れないでいただきとう存じます 1103 01:35:54,008 --> 01:35:56,808 星が落ちたよ カリン 1104 01:35:58,946 --> 01:36:01,582 ラインハルト陛下の国葬ののちに 1105 01:36:01,582 --> 01:36:05,286 ご長男 アレク大公殿下が 即位なさいます 1106 01:36:05,286 --> 01:36:07,989 つきましては 惑星ハイネセンを含む 1107 01:36:07,989 --> 01:36:11,526 バーラト星系に 内政自治権を認める件について 1108 01:36:11,526 --> 01:36:14,929 ラインハルト陛下と 帝国政府の名誉に懸けて 1109 01:36:14,929 --> 01:36:16,964 これを履行いたします 1110 01:36:16,964 --> 01:36:22,003 一方 イゼルローン要塞を 帝国軍に引き渡す件については… 1111 01:36:22,003 --> 01:36:24,806 どうぞご心配ないよう願います 1112 01:36:24,806 --> 01:36:28,543 私たちイゼルローン共和政府も 名誉に懸けて 1113 01:36:28,543 --> 01:36:33,214 必ずご生前のカイザーとの約束は 果たさせていただきます 1114 01:36:33,214 --> 01:36:39,020 それから 思想や立場に関わりなく この時代に生きた者として 1115 01:36:39,020 --> 01:36:43,357 カイザー・ラインハルト陛下の ご逝去にお悔やみを申し上げます 1116 01:36:43,357 --> 01:36:46,227 ヤン・ウェンリーも 同じ思いでおりましょう 1117 01:36:46,227 --> 01:36:51,027 かたじけない カイザーリンに よくお伝えしておきます 1118 01:36:58,406 --> 01:37:01,309 ね ユリアン とにかくバーラト星系は 1119 01:37:01,309 --> 01:37:04,212 民主主義の手に残るのね そう 1120 01:37:04,212 --> 01:37:07,682 たったそれだけなのね 考えてみると 1121 01:37:07,682 --> 01:37:10,218 そう たったこれだけ 1122 01:37:10,218 --> 01:37:12,720 たったこれだけのことが 実現するのに 1123 01:37:12,720 --> 01:37:17,191 500年の歳月と 数千億の人命が必要だったんだ 1124 01:37:17,191 --> 01:37:23,931 銀河連邦の末期に 市民たちが 政治への関心を失わなかったら 1125 01:37:23,931 --> 01:37:28,302 独裁者に 無制限の権力を 与えることが いかに危険か 1126 01:37:28,302 --> 01:37:31,205 彼らが気づいていたら そして 1127 01:37:31,205 --> 01:37:35,409 市民の権利より国家の利益が 優先されるような政治体制が 1128 01:37:35,409 --> 01:37:40,915 どれほど多くの人を不幸にするか 過去の歴史から学び得ていたら 1129 01:37:40,915 --> 01:37:43,818 これほどの犠牲を 払わずに済んだんだ 1130 01:37:43,818 --> 01:37:49,090 政治は それを軽んじる者に 必ず復讐するんだよ 1131 01:37:49,090 --> 01:37:52,960 ユリアン あんたは 政治指導者にはならないの? 1132 01:37:52,960 --> 01:37:57,431 ハイネセン臨時政府の代表になる とか そういうことはないの? 1133 01:37:57,431 --> 01:37:59,367 僕の予定表にはないね 1134 01:37:59,367 --> 01:38:03,371 あんたの予定は それじゃ どうなってるの? 1135 01:38:03,371 --> 01:38:06,741 軍人になって 専制主義の帝国と戦う 1136 01:38:06,741 --> 01:38:09,510 そしてその任務が終わったら… 1137 01:38:09,510 --> 01:38:11,445 終わったら? 1138 01:38:11,445 --> 01:38:14,982 歴史家になり ヤン提督の事跡を記録して 1139 01:38:14,982 --> 01:38:17,785 後世に残したい 1140 01:38:17,785 --> 01:38:22,623 後世の人々に より多くの判断と 考察の機会を与えるのが 1141 01:38:22,623 --> 01:38:27,395 この時代に生きた我々の 義務じゃないだろうか 1142 01:38:27,395 --> 01:38:31,799 よう ユリアン いつフェザーンを 出発することになりそうだ? 1143 01:38:31,799 --> 01:38:36,304 そうですね なんやかやで… 2週間というところでしょうか 1144 01:38:36,304 --> 01:38:39,207 そうか じゃあ それでお別れだな 1145 01:38:39,207 --> 01:38:42,610 俺はフェザーンに残るよ ポプラン中佐! 1146 01:38:42,610 --> 01:38:46,881 いや 何も言うな ユリアン そう決めたんだ 1147 01:38:46,881 --> 01:38:50,818 まあどうせフェザーンに 永住することもないだろうが 1148 01:38:50,818 --> 01:38:52,820 それがポプランらしい 1149 01:38:52,820 --> 01:38:56,190 それしか他にない この時代への決別の仕方なのだと 1150 01:38:56,190 --> 01:38:58,759 ユリアンは理解した 1151 01:38:58,759 --> 01:39:03,598 分かりました 盛大に お別れパーティーをやりましょうね 1152 01:39:03,598 --> 01:39:05,967 いいか 早死にするんじゃないぞ 1153 01:39:05,967 --> 01:39:10,338 何十年か経って お互いに 老人になったら再会しよう 1154 01:39:10,338 --> 01:39:12,306 そして 俺たちを 置いてきぼりにして 1155 01:39:12,306 --> 01:39:15,176 死んじまった奴らの 悪口を言い合おうぜ 1156 01:39:15,176 --> 01:39:17,176 素敵ですね 1157 01:39:20,014 --> 01:39:22,014 フッ 1158 01:39:32,193 --> 01:39:35,763 さあ アッテンボロー提督と いろいろ話し合って 1159 01:39:35,763 --> 01:39:38,463 予定を立てなきゃ うん 1160 01:39:44,038 --> 01:39:46,941 夜が明ければ忙しくなる 1161 01:39:46,941 --> 01:39:52,041 多忙な方がいい この喪失感を埋めるにはな 1162 01:39:54,248 --> 01:39:58,119 ファーター ハッ 1163 01:39:58,119 --> 01:40:01,989 ファーター ああ… 1164 01:40:01,989 --> 01:40:06,827 ミッターマイヤーは カイザーの心が この幼児の中に入り込んで 1165 01:40:06,827 --> 01:40:10,531 生まれて初めての言葉を 発しさせたように思えた 1166 01:40:10,531 --> 01:40:15,469 無論 それは錯覚に過ぎないが そう信じたかった 1167 01:40:15,469 --> 01:40:19,273 見えるか フェリックス あの星々が… 1168 01:40:19,273 --> 01:40:23,110 いつかお前も あの星々の世界に 旅立つのだろうか 1169 01:40:23,110 --> 01:40:27,415 その時 お前は一人で行くのか それとも… 1170 01:40:27,415 --> 01:40:31,285 あなた ウォルフ フェリックスがしゃべった 1171 01:40:31,285 --> 01:40:33,721 俺のことを「ファーター」と 呼んでくれたよ 1172 01:40:33,721 --> 01:40:36,157 あら まあ まあ… 1173 01:40:36,157 --> 01:40:38,157 さあ いらっしゃい 1174 01:40:45,633 --> 01:40:48,569 お前もか フェリックス 1175 01:40:48,569 --> 01:40:52,006 それは いつの時代 どこの世界でも 1176 01:40:52,006 --> 01:40:55,876 数限りなく繰り返されてきた 動作であったかもしれない 1177 01:40:55,876 --> 01:40:59,680 人は常に手の届き得ぬものを 追い続ける 1178 01:40:59,680 --> 01:41:03,918 その憧憬を 一身に表したのではなかろうか 1179 01:41:03,918 --> 01:41:06,718 中へ入りましょう あなた