1 00:00:03,795 --> 00:00:05,422 やっと見つけた 2 00:00:05,505 --> 00:00:08,258 小樽から ずっとアシㇼパを捜してきた 3 00:00:09,300 --> 00:00:10,260 私を? 4 00:00:10,343 --> 00:00:11,845 ん? 5 00:00:12,512 --> 00:00:15,807 あっちの森で狩りをしてる アイヌに会って聞いたんだ 6 00:00:18,184 --> 00:00:20,895 ねえ アイヌの女の子 見かけなかった? 7 00:00:20,979 --> 00:00:22,480 ん? 8 00:00:22,564 --> 00:00:26,401 顔に傷のある 和人の男と一緒のはずです 9 00:00:27,610 --> 00:00:30,196 ああ さっき見かけた子かな 10 00:00:30,780 --> 00:00:31,656 あっ 11 00:00:31,740 --> 00:00:35,577 そんなに遠くから来たのかって びっくりしてたよ 12 00:00:35,660 --> 00:00:38,288 みんな 一緒に コタンに遊びに来いって 13 00:00:38,371 --> 00:00:41,124 ヒグマが取れたらしいよ 行こう アシㇼパ 14 00:00:41,207 --> 00:00:44,377 行こう 杉元 ヒグマの鍋が食べられるぞ 15 00:00:44,461 --> 00:00:46,588 それより俺は街に出て 16 00:00:46,671 --> 00:00:49,090 インカㇻマッちゃんに おごってもらいたいな~ 17 00:00:49,883 --> 00:00:53,470 ダメだよ インカㇻマッは 俺の家族なんだから 18 00:00:54,429 --> 00:00:55,555 家族? 19 00:00:55,638 --> 00:00:57,182 うん インカㇻマッは 20 00:00:57,265 --> 00:00:59,768 オッパイ触っても怒らない お姉ちゃんで 21 00:00:59,851 --> 00:01:02,103 谷垣ニㇱパはヒモなんだ 22 00:01:02,187 --> 00:01:04,063 ですね 23 00:01:06,232 --> 00:01:08,318 なぜ ここに… 24 00:01:10,612 --> 00:01:11,738 ヒモ 25 00:01:11,821 --> 00:01:13,907 あっ あ いや… 26 00:02:38,950 --> 00:02:43,955 ~♪ 27 00:02:55,383 --> 00:02:56,217 んっ 28 00:02:58,052 --> 00:03:01,431 ああ 会えたか よく来たな 29 00:03:01,514 --> 00:03:04,517 もうじき カムイホプニレが始まる 30 00:03:04,601 --> 00:03:05,768 楽しんでくれ 31 00:03:05,852 --> 00:03:06,936 ん? 32 00:03:07,020 --> 00:03:11,107 カムイホプニレは“神の出発” という意味の儀式で 33 00:03:11,190 --> 00:03:13,776 狩りによって取ったヒグマを “送る”ものだ 34 00:03:14,569 --> 00:03:18,990 檻で育てた飼い熊を送る イオマンテとは また別の儀式だ 35 00:03:19,073 --> 00:03:21,701 オホホホホ~イ 36 00:03:21,784 --> 00:03:24,162 オホホホホ~イ 37 00:03:24,245 --> 00:03:27,123 オホホホホ~イ 38 00:03:27,206 --> 00:03:30,251 オホホホホ~イ 39 00:03:30,335 --> 00:03:32,337 オココㇰセという叫びだ 40 00:03:32,420 --> 00:03:36,090 火の神様に熊が取れたことを 知らせる意味もある 41 00:03:36,174 --> 00:03:37,926 カムイと呼ばれるのは 42 00:03:38,009 --> 00:03:43,181 人間ができないこと 役立つものや 災厄をもたらすものだ 43 00:03:43,932 --> 00:03:46,768 火は私たちの生活に欠かせない 44 00:03:46,851 --> 00:03:49,979 刃物は手で切れないものを きれいに切ってくれるから 45 00:03:50,063 --> 00:03:51,689 カムイが宿ってる 46 00:03:51,773 --> 00:03:54,359 木も山に座ってるカムイ 47 00:03:54,442 --> 00:03:59,614 天候や疫病などは 人間の力が及ばないからカムイだ 48 00:03:59,697 --> 00:04:04,619 でも決して人間よりも ものすごく偉い存在ではなくて 49 00:04:04,702 --> 00:04:07,080 私たちと対等と考えてる 50 00:04:07,705 --> 00:04:10,708 狩猟というのは 人間が取るんじゃなくて 51 00:04:10,792 --> 00:04:14,337 カムイのほうから弓矢に 当たりにくると考えられてきた 52 00:04:15,129 --> 00:04:19,091 人間に招待されて 肉や毛皮を与える代わりに 53 00:04:19,175 --> 00:04:23,638 カムイは人間しか作れない 酒やタバコなどが欲しい 54 00:04:23,721 --> 00:04:29,352 私たちはカムイを丁重に送り返し 人間の世界は いい所だと 55 00:04:29,435 --> 00:04:31,980 ほかのカムイにも 伝えてもらわなきゃならない 56 00:04:32,772 --> 00:04:37,318 ひどい扱いをすれば そのカムイは下りてこなくなる 57 00:04:37,944 --> 00:04:40,321 このあとヒグマの頭は家の外の 58 00:04:40,405 --> 00:04:43,241 イナウが たくさんある祭壇に 移動する 59 00:04:43,324 --> 00:04:48,246 木の削りかけであるイナウも 人間からカムイへの贈り物だ 60 00:04:48,830 --> 00:04:52,000 カムイは イナウを たくさん持っていると 61 00:04:52,083 --> 00:04:53,960 神の国で地位が高まる 62 00:04:54,043 --> 00:04:57,714 もらったイナウは 金や銀のイナウに変化して 63 00:04:57,797 --> 00:05:00,216 財宝になると言われている 64 00:05:00,300 --> 00:05:03,845 あっちの世界でも 金には価値があって 65 00:05:03,928 --> 00:05:07,140 たくさん持ってりゃ 幸せになれるってわけか 66 00:05:29,412 --> 00:05:30,246 ん? 67 00:05:31,456 --> 00:05:32,457 フッ 68 00:05:33,166 --> 00:05:36,294 何を考えているんだ チロンヌプ 69 00:05:36,377 --> 00:05:37,712 アシㇼパ 70 00:05:39,047 --> 00:05:43,634 お前に大事な話がある 俺はフチのことを伝えに追ってきた 71 00:05:59,984 --> 00:06:01,652 フチ 72 00:06:03,946 --> 00:06:07,283 そんなことを伝えに わざわざ小樽から来たのか? 73 00:06:07,366 --> 00:06:09,911 谷垣一等卒 74 00:06:09,994 --> 00:06:11,329 尾形上等兵 75 00:06:11,954 --> 00:06:15,958 本当は鶴見中尉の命令で 俺を監視しに来たのだろう? 76 00:06:16,042 --> 00:06:19,754 違う! 俺は もう 軍に関わる気はない 77 00:06:19,837 --> 00:06:23,883 世話になった ばあちゃんのもとに 孫娘を無事 帰す 78 00:06:23,966 --> 00:06:25,384 それが俺の役目だ 79 00:06:25,468 --> 00:06:27,720 どうだかな 80 00:06:27,804 --> 00:06:32,683 貴様は鶴見中尉を信奉し 山で3人の戦友を殺した男だ 81 00:06:32,767 --> 00:06:35,311 ん? 山で? 82 00:06:35,937 --> 00:06:38,648 谷垣と行動していた3人のことか? 83 00:06:38,731 --> 00:06:40,900 あいつらを殺したのはヒグマだ 84 00:06:40,983 --> 00:06:44,654 俺が その場にいたんだから 間違いない 85 00:06:45,279 --> 00:06:46,614 ヒグマ… 86 00:06:47,907 --> 00:06:52,578 フン ばあちゃんが二度と 孫と会えなくなる夢を見たって… 87 00:06:53,162 --> 00:06:57,208 たかが夢だろ 手紙でも送っておけよ 88 00:06:57,291 --> 00:06:58,584 夢というのは 89 00:06:58,668 --> 00:07:04,507 カムイが私たちに何か伝えたくて 見せるものと強く信じられてきた 90 00:07:04,590 --> 00:07:09,011 私は信じなくても フチは古い考え方のアイヌだから 91 00:07:09,804 --> 00:07:13,975 それにフチは昔 ある夢を見た 92 00:07:15,518 --> 00:07:19,522 自分の娘の周りに 熊が たくさん集まって 93 00:07:19,605 --> 00:07:21,566 “送っている”夢だった 94 00:07:22,775 --> 00:07:24,110 そのあと すぐに 95 00:07:24,193 --> 00:07:28,156 私の母は病気で亡くなったと フチが話していた 96 00:07:28,239 --> 00:07:32,243 だから なおさら 夢占いを信じてるんだ 97 00:07:32,326 --> 00:07:35,288 アシㇼパさん 一度 帰ろうか 98 00:07:36,038 --> 00:07:37,623 一度 顔を見せりゃ 99 00:07:37,707 --> 00:07:42,128 “孫娘とは二度と会えない”って フチが見た予言は無効だろ? 100 00:07:42,211 --> 00:07:43,546 元気になるさ 101 00:07:46,299 --> 00:07:48,176 我慢しなくっていいんだよ 102 00:07:51,762 --> 00:07:54,265 子供扱いするな 杉元 103 00:07:54,348 --> 00:07:58,060 私には どうしても 知りたいことがある 104 00:07:58,144 --> 00:08:02,899 知るべきことを知って 自分の未来のために前に進むんだ 105 00:08:04,317 --> 00:08:05,276 フッ 106 00:08:22,335 --> 00:08:24,629 おい 谷垣ニㇱパ 107 00:08:24,712 --> 00:08:29,509 その村田銃 気になってたんだが 二瓶鉄造のものじゃないか? 108 00:08:29,592 --> 00:08:32,303 あっ 二瓶を知ってるのか? 109 00:08:32,385 --> 00:08:36,097 10年以上前 ヒグマを一緒に狩った 110 00:08:36,182 --> 00:08:37,475 腕が よすぎて 111 00:08:37,558 --> 00:08:40,227 ヒグマが この土地から いなくなるかと思ったほどだ 112 00:08:42,395 --> 00:08:46,734 二瓶は山で死んだ この村田銃は俺が引き取った 113 00:08:46,817 --> 00:08:48,569 そうだったか 114 00:08:48,653 --> 00:08:52,782 しかし あんたには そんな古い銃 扱いにくいだろう 115 00:08:52,865 --> 00:08:56,953 二瓶鉄造が 俺を 兵士からマタギに戻してくれた 116 00:08:57,828 --> 00:09:02,959 獲物を撃つ時の心の持ち方を 忘れないために持つことにした 117 00:09:03,042 --> 00:09:06,921 “勝負は常に1発で決めろ”か? 118 00:09:07,004 --> 00:09:08,256 フッ 119 00:09:09,465 --> 00:09:13,844 その銃床に小さな7本の傷が あるだろう 120 00:09:14,428 --> 00:09:17,306 二瓶が俺に話してくれた 121 00:09:18,724 --> 00:09:23,271 俺には子供が たくさんいるが息子は1人だけでね 122 00:09:23,980 --> 00:09:27,733 これは その息子が 日清戦争で使っていた銃だ 123 00:09:27,817 --> 00:09:30,528 届けてくれた息子の戦友が 124 00:09:30,611 --> 00:09:35,324 “この銃床の傷は息子さんが 敵を撃つたびに刻んでいた”と 125 00:09:36,117 --> 00:09:38,995 7人目で刻むのをやめたのか 126 00:09:39,078 --> 00:09:42,373 7人目で あいつのほうが 死んだのか 127 00:09:42,456 --> 00:09:45,918 どちらにしろ 息子は楽しんで 人を撃つようなやつじゃない 128 00:09:46,002 --> 00:09:49,505 殺した責任をしょい込むような 甘ったれは 129 00:09:49,589 --> 00:09:51,132 兵士なんぞに ならないで 130 00:09:51,215 --> 00:09:54,802 俺と熊撃ちをしていれば よかったんだ 131 00:10:00,308 --> 00:10:01,601 ん? 132 00:10:03,769 --> 00:10:05,396 あっ お前 リュウか! 133 00:10:09,233 --> 00:10:10,067 リュウ 134 00:10:11,027 --> 00:10:13,029 ほんとだ リュウだ 135 00:10:13,112 --> 00:10:16,699 何で二瓶の犬が こんな所に… 136 00:10:16,782 --> 00:10:18,284 連れてきていたのか? 137 00:10:18,367 --> 00:10:19,368 いや… 138 00:10:19,452 --> 00:10:23,831 はっ もしかして リュウ お前 まさか… 139 00:10:24,665 --> 00:10:28,836 谷垣が持っていた二瓶の忘れ形見を ずっと追いかけて… 140 00:10:37,595 --> 00:10:40,473 リュウ~! お前 なんて けなげな… 141 00:10:40,556 --> 00:10:43,934 いだっ いでででで… 142 00:10:44,018 --> 00:10:46,562 とうっ! 痛えな クソ犬! 143 00:10:46,646 --> 00:10:47,980 あっち行けよ! 144 00:10:48,064 --> 00:10:49,899 リュウは忠犬だぜえ 145 00:10:49,982 --> 00:10:53,861 主人と敵対した相手は忘れてねえ 146 00:11:03,913 --> 00:11:05,831 谷垣は これからどうするんだ? 147 00:11:07,625 --> 00:11:11,504 アシㇼパが目的を果たすまで 俺も ついていく 148 00:11:12,880 --> 00:11:14,006 そうか 149 00:11:14,090 --> 00:11:18,135 アシㇼパ 街に出たら 俺がフチに電報を打とう 150 00:11:19,678 --> 00:11:20,554 分かった 151 00:11:20,638 --> 00:11:22,556 アハハハ… 152 00:11:22,640 --> 00:11:26,560 じゃっ 網走へ向けて 出発だな アシㇼパさん 153 00:11:28,312 --> 00:11:29,563 ああ! 154 00:11:30,439 --> 00:11:33,859 オホホホホ~イ! 155 00:11:35,820 --> 00:11:40,408 はぁ~ 鶴見中尉殿に叱られる 156 00:11:40,491 --> 00:11:45,204 白石由竹を逃がしたと聞いて さぞかし お怒りだっただろう 157 00:11:45,830 --> 00:11:47,289 どんな様子だった? 158 00:11:48,582 --> 00:11:49,875 月島軍曹 159 00:11:49,959 --> 00:11:54,839 鶴見中尉殿は 私のことを 何か言ってなかったか? 160 00:11:54,922 --> 00:11:56,590 あ~… 言わなくていい! 161 00:11:56,674 --> 00:11:58,175 分かってる 月島! 162 00:11:58,259 --> 00:12:01,345 きっと私は… 網走にでも行かされて 163 00:12:01,429 --> 00:12:04,181 犬童四郎助の監視でも やらされるのだー! 164 00:12:04,265 --> 00:12:06,058 ああ~っ! 165 00:12:06,142 --> 00:12:08,394 鯉登少尉 お気を確かに 166 00:12:08,477 --> 00:12:11,814 ほらほら 頼まれていた写真を 持ってきましたよ 167 00:12:11,897 --> 00:12:12,773 はっ 168 00:12:12,857 --> 00:12:16,527 おおっ よい よい よいではないか 月島! 169 00:12:17,111 --> 00:12:22,283 鶴見中尉殿のお顔に傷がないから 奉天会戦の前くらいか 170 00:12:23,200 --> 00:12:24,034 はぁ~ 171 00:12:24,743 --> 00:12:27,079 私は月島軍曹が羨ましい 172 00:12:27,163 --> 00:12:27,997 ん? 173 00:12:28,747 --> 00:12:31,459 あと ほんの少し 早く生まれていれば 174 00:12:31,542 --> 00:12:34,962 私も お供することができたのに 175 00:12:37,089 --> 00:12:39,383 いいぞ~ ピッタリだ 176 00:12:40,009 --> 00:12:42,678 月島 米を潰して のりを作ってくれ 177 00:12:43,262 --> 00:12:44,388 嫌です 178 00:12:45,473 --> 00:12:47,433 来てたのか 鯉登少尉 179 00:12:47,516 --> 00:12:49,852 キエエエーッ! 180 00:12:50,811 --> 00:12:52,188 やあ 181 00:12:52,938 --> 00:12:54,690 すんもはん! おいが とぼれんかったで 182 00:12:54,773 --> 00:12:56,108 白石をひっにがしてしまいもした! 183 00:12:56,192 --> 00:12:58,194 じゃっどん入れ墨だけは 事前に写しちょいもした 184 00:12:58,277 --> 00:12:59,987 じゃっちゅってん 許さるいわけじゃあいもはんどん! 185 00:13:00,654 --> 00:13:01,947 落ち着け 186 00:13:02,031 --> 00:13:04,950 早口の薩摩弁だと まったく聞き取れんぞ 187 00:13:05,034 --> 00:13:06,452 深呼吸しろ 188 00:13:09,538 --> 00:13:13,000 ひっにがしてしまいもしたどん 白石ん入れ墨は写しちょいもした 189 00:13:13,083 --> 00:13:14,126 分からん! 190 00:13:14,210 --> 00:13:15,586 月島! 191 00:13:15,669 --> 00:13:19,715 “白石に逃げられはしましたが 入れ墨は写しておきました”と言え 192 00:13:19,798 --> 00:13:21,008 アハッ 193 00:13:21,091 --> 00:13:23,385 白石の入れ墨は写してあるそうです 194 00:13:23,469 --> 00:13:24,929 どうして私にだけ 195 00:13:25,012 --> 00:13:28,140 早口の薩摩弁になるのだ? 鯉登少尉 196 00:13:28,224 --> 00:13:33,812 白石という男に利用価値があると 判断したから殺すなと命じたのだ 197 00:13:33,896 --> 00:13:39,527 それをみすみす敵の手に渡すとは 失望したぞ 鯉登少尉 198 00:13:39,610 --> 00:13:41,320 ぐっ ああ~ 199 00:13:42,613 --> 00:13:43,447 はっ 200 00:13:53,290 --> 00:13:56,252 ほほう 似合ってるじゃないか 201 00:13:56,335 --> 00:13:59,463 犬童に化けていた囚人の皮だな? 202 00:13:59,547 --> 00:14:02,716 確かに これは思わぬ収穫だったな 203 00:14:02,800 --> 00:14:05,636 情報を総合するに この刺青人皮は 204 00:14:05,719 --> 00:14:09,265 詐欺師の鈴川聖弘と見ていいだろう 205 00:14:09,348 --> 00:14:11,392 よくやったぞ 鯉登少尉 ん~ 206 00:14:12,268 --> 00:14:13,310 ただ… 207 00:14:14,186 --> 00:14:15,813 “せん”が甘いな 208 00:14:15,896 --> 00:14:17,273 があっ! 209 00:14:17,356 --> 00:14:19,191 すんもはん! すんもはん! 210 00:14:19,275 --> 00:14:21,777 そういうところだぞ 鯉登少尉 211 00:14:19,275 --> 00:14:21,777 すんもはん! すんもはん… 212 00:14:21,861 --> 00:14:23,237 すんもはん! すんもはん! 213 00:14:23,320 --> 00:14:25,906 お前は旭川での任務を外れろ 214 00:14:25,990 --> 00:14:27,867 うっ ああ~ 215 00:14:29,326 --> 00:14:31,370 これからは… はっ 216 00:14:32,580 --> 00:14:35,749 私の囚人狩りに参加するのだ 217 00:14:35,833 --> 00:14:37,334 はあっ 218 00:14:39,336 --> 00:14:40,421 あ… 219 00:14:43,883 --> 00:14:46,135 “精進いたします”と言ってます 220 00:14:47,553 --> 00:14:49,388 面倒くさい 221 00:14:49,471 --> 00:14:54,101 旭川で白石と杉元と共に 飛行船に乗っていたのは 222 00:14:54,184 --> 00:14:57,438 間違いなく 尾形百之助だったんだな? 223 00:14:58,439 --> 00:14:59,273 “はい” 224 00:15:00,441 --> 00:15:03,485 “尾形の父である 元第七師団長” 225 00:15:03,569 --> 00:15:05,362 “花沢幸次郎中将の自刃に 泥を塗る行為であります”と 226 00:15:05,362 --> 00:15:07,531 “花沢幸次郎中将の自刃に 泥を塗る行為であります”と 227 00:15:08,866 --> 00:15:13,621 “私の父ですら花沢中将の自刃を 第七師団の責任とした中央へ” 228 00:15:13,621 --> 00:15:14,663 “私の父ですら花沢中将の自刃を 第七師団の責任とした中央へ” 229 00:15:14,747 --> 00:15:16,957 “強い不信感を 持っているのに” 230 00:15:17,041 --> 00:15:19,126 “尾形は 一体 どういうつもりなのか”と 231 00:15:19,209 --> 00:15:21,420 鯉登少尉の父君は 232 00:15:21,503 --> 00:15:27,343 花沢中将と同じ薩摩の生まれで ご親友同士であったそうだな 233 00:15:28,177 --> 00:15:31,764 自刃は二〇三高地の 甚大な被害を 234 00:15:31,847 --> 00:15:36,810 中央が 全て花沢中将に なすりつけたのが原因だ 235 00:15:36,894 --> 00:15:42,149 尾形百之助も当然 父君の名誉と第七師団のために 236 00:15:42,232 --> 00:15:46,403 戦ってくれると 私は信じていたのだが… 237 00:15:50,699 --> 00:15:56,914 当時 父上は 近衛歩兵第一連隊長 陸軍中佐 238 00:15:56,997 --> 00:16:01,043 世間体を考えれば 浅草の芸者と その子供は 239 00:16:01,126 --> 00:16:03,587 疎ましく感じたでしょう 240 00:16:04,296 --> 00:16:07,299 本妻との間に男児が生まれると 241 00:16:07,383 --> 00:16:11,595 父上は ぱったり来なくなったと 祖母から聞きました 242 00:16:11,679 --> 00:16:17,601 祖母は母と まだ赤ん坊の俺を 茨城の実家に連れ戻した 243 00:16:18,310 --> 00:16:21,605 母は よくアンコウ鍋を 作ってくれました 244 00:16:21,689 --> 00:16:24,775 “西のフグに東のアンコウ”ってね 245 00:16:24,858 --> 00:16:30,030 地元の庶民的な鍋です 俺も好きで食べてました 246 00:16:30,739 --> 00:16:34,785 でもね それが毎日なんですよ 247 00:16:34,868 --> 00:16:39,206 冬の時期はね 母は毎日― 248 00:16:40,082 --> 00:16:42,668 アンコウ鍋を作ろうとするんです 249 00:16:43,419 --> 00:16:45,629 父上が おいしいと 言ってくれたから 250 00:16:45,713 --> 00:16:51,677 また食べに来てくれると信じて 毎日 毎日… 251 00:16:52,428 --> 00:16:54,888 頭が おかしくなってたんです 252 00:16:59,727 --> 00:17:02,062 俺は祖父の古い銃を 持ち出して 253 00:17:02,146 --> 00:17:05,273 畑へ行って鳥を撃った 254 00:17:08,986 --> 00:17:14,700 鳥があれば 母はアンコウ鍋を 作らないと思って 255 00:17:16,285 --> 00:17:22,540 でも いくら鳥を撃っても アンコウ鍋を作り続けるんです 256 00:17:24,251 --> 00:17:26,336 だから俺は 257 00:17:27,253 --> 00:17:29,882 祖父母が留守の時 258 00:17:29,965 --> 00:17:34,928 殺鼠剤をアンコウ鍋に入れて 母に食べさせた 259 00:17:38,265 --> 00:17:41,727 “少しでも母に対する愛情が 残っていれば” 260 00:17:41,810 --> 00:17:44,688 “父上は葬式に来てくれるだろう” 261 00:17:45,689 --> 00:17:50,778 “母は最後に愛した人に 会えるだろう”と 262 00:17:53,322 --> 00:17:54,323 でも… 263 00:17:57,242 --> 00:17:59,286 あなたは来なかった 264 00:17:59,870 --> 00:18:02,164 自分たちを捨てた恨みとでも 265 00:18:02,247 --> 00:18:04,708 言うつもりじゃあるまいな 266 00:18:06,085 --> 00:18:12,466 貴様も頭のおかしくなった母親が あわれで疎ましかったのだろう 267 00:18:12,549 --> 00:18:14,802 私と同じじゃ 268 00:18:14,885 --> 00:18:18,555 子供は親を選べません 269 00:18:19,181 --> 00:18:24,603 愛という言葉は神と同じくらい 存在が あやふやなものですが 270 00:18:24,686 --> 00:18:26,647 仮に あなたに愛情があれば 271 00:18:26,730 --> 00:18:30,442 母を見捨てることは なかったと思います 272 00:18:30,526 --> 00:18:35,155 愛情のない親が 交わってできる子供は 273 00:18:35,239 --> 00:18:39,034 何かが欠けた人間に 育つのですかねえ 274 00:18:39,118 --> 00:18:42,538 どんなに ご立派な地位の父親でも 275 00:18:43,997 --> 00:18:47,126 父上と本妻との間に 生まれた息子さん 276 00:18:47,960 --> 00:18:51,213 花沢勇作少尉が 高潔な人物だったことも 277 00:18:51,296 --> 00:18:53,590 証明してる気がします 278 00:18:54,174 --> 00:18:58,011 入隊して初めて会いましたが 面を食らいましたよ 279 00:18:58,929 --> 00:19:02,391 “規律が緩みますから”と 何度 注意しても 280 00:19:02,474 --> 00:19:05,102 部下の俺を“兄様”と呼ぶのです 281 00:19:05,185 --> 00:19:09,106 “一人っ子育ちで ずっと兄弟が欲しかった”と 282 00:19:09,189 --> 00:19:11,608 俺に まとわりつくのです 283 00:19:12,192 --> 00:19:13,902 あの屈託のない笑顔 284 00:19:15,070 --> 00:19:17,114 “ああ…” 285 00:19:17,197 --> 00:19:22,161 “これが両親から祝福されて 生まれた子供なのだ” 286 00:19:22,244 --> 00:19:25,164 …と心底 納得しました 287 00:19:25,747 --> 00:19:28,083 ところで花沢勇作少尉が 288 00:19:28,167 --> 00:19:30,961 二〇三高地で どうやって亡くなったか… 289 00:19:31,044 --> 00:19:31,920 うう… 290 00:19:32,504 --> 00:19:36,884 父上は本当のことを ご存じないはずだ 291 00:19:44,433 --> 00:19:47,853 俺が後頭部を撃ち抜きました 292 00:19:48,979 --> 00:19:52,232 少尉殿に対する 妬みからじゃありません 293 00:19:52,316 --> 00:19:56,695 父上を苦しませたいというのとも ちょっと違う 294 00:19:57,529 --> 00:20:01,033 ただ 1つ確かめてみたかった 295 00:20:01,658 --> 00:20:04,828 勇作さんの戦死を聞いた時 296 00:20:04,912 --> 00:20:08,123 父上は俺を思ったのか 297 00:20:08,999 --> 00:20:15,172 無視し続けた妾の息子が 急に いとおしくなったのではないかと 298 00:20:19,718 --> 00:20:24,473 祝福された道が俺にもあったのか 299 00:20:32,231 --> 00:20:34,316 貴様の言うとおり 300 00:20:35,317 --> 00:20:39,821 何かが欠けた人間 出来損ないのせがれじゃ 301 00:20:41,949 --> 00:20:44,201 呪われろ 302 00:21:06,598 --> 00:21:12,688 中央は第七師団に 自刃の責任をかぶせるだろう 303 00:21:12,771 --> 00:21:17,192 我々にとって厳しい時になるが 耐え忍ぶのだ 304 00:21:17,276 --> 00:21:22,364 外敵を作った第七師団は より結束が強くなる 305 00:21:22,447 --> 00:21:28,370 第七師団は ただ1人 残された 花沢中将のご令息を担ぎ上げる 306 00:21:28,453 --> 00:21:32,291 失った軍神を貴様の中に見るはずだ 307 00:21:32,374 --> 00:21:36,670 よくやったぞ 尾形百之助 308 00:21:39,298 --> 00:21:42,718 よくやった 309 00:21:44,761 --> 00:21:46,930 “たらし”めが 310 00:23:27,155 --> 00:23:32,953 ~♪