1 00:00:00,800 --> 00:00:03,600 ここは墓場 2 00:00:07,570 --> 00:00:10,073 貴様のな 3 00:00:28,591 --> 00:00:31,094 感謝するぜ 4 00:00:39,102 --> 00:00:42,146 お前と出会えた 5 00:00:42,146 --> 00:00:45,149 これまでの全てに! 6 00:03:11,587 --> 00:03:13,089 はっ! 7 00:03:20,638 --> 00:03:24,600 王は 極限まで時が圧縮され 8 00:03:24,600 --> 00:03:30,606 意識のみが 辛うじて捉える ネテロの残像を追いながら 9 00:03:30,606 --> 00:03:34,610 ある感情に支配されていた 10 00:03:41,701 --> 00:03:46,080 敵への惜しみなき称賛 11 00:03:53,129 --> 00:03:55,089 んっ! 12 00:04:03,139 --> 00:04:05,600 これだ 13 00:04:05,600 --> 00:04:11,105 両の手のひらを合わせ 攻撃への起点とする所作 14 00:04:11,105 --> 00:04:15,610 それのみが余の可動速度を はるかに上回る 15 00:04:18,112 --> 00:04:20,114 戦闘において 16 00:04:20,114 --> 00:04:23,659 命取りに近いはずの 無駄な振る舞いが 17 00:04:23,659 --> 00:04:27,622 余に勝る武器として 成立している矛盾 18 00:04:27,622 --> 00:04:31,125 何故 奴が これを体得するに至ったか 19 00:04:31,125 --> 00:04:34,086 考察することに意味はない 20 00:04:34,086 --> 00:04:39,091 到底 合理的な道筋では たどり着けない場所だからだ 21 00:04:39,091 --> 00:04:45,097 恐らくは 狂気にすら 近い感情に身を委ねたのだ 22 00:04:46,599 --> 00:04:50,603 5年… あるいは10年か 23 00:04:55,608 --> 00:04:58,611 それのみに没頭したのだ 24 00:05:20,591 --> 00:05:24,178 其のほうが 25 00:05:24,178 --> 00:05:29,100 己を高めんがため 捧げ続けた長き時 26 00:05:29,100 --> 00:05:33,104 その成果 しかと受け取った 27 00:05:34,105 --> 00:05:37,108 これだけ打って ほぼ無傷かい 28 00:05:37,108 --> 00:05:40,111 まっ 予想通りだがな 29 00:05:42,613 --> 00:05:45,116 いち個が 30 00:05:46,200 --> 00:05:50,580 修練の末 届き得る限界 31 00:05:50,580 --> 00:05:55,126 それを卓越した けうな事例といえよう 32 00:05:55,126 --> 00:05:57,086 あっ? 33 00:05:57,086 --> 00:06:01,090 あっぱれだ 褒めて遣わす 34 00:06:02,592 --> 00:06:05,636 虫が… 35 00:06:05,636 --> 00:06:10,141 上から もの言ってんじゃねえぞ! 36 00:06:12,101 --> 00:06:13,603 んっ! 37 00:06:26,657 --> 00:06:30,578 王の戦術は至極 単純であった 38 00:06:30,578 --> 00:06:33,122 攻め続けること 39 00:06:33,122 --> 00:06:36,584 ネテロが唯一 王に勝る技 40 00:06:36,584 --> 00:06:41,088 「百式観音」もダメージを ほとんど受けないのであれば 41 00:06:41,088 --> 00:06:43,090 恐るるに足らず 42 00:06:45,635 --> 00:06:51,098 しょせんは 傀儡の拳 型通りの動作しかできぬ 43 00:06:51,098 --> 00:06:55,603 既に見た掌打では 受けきれない 角度から攻撃すれば 44 00:06:55,603 --> 00:06:59,607 新たな掌打を 繰り出すしかない道理 45 00:07:01,609 --> 00:07:04,654 その組み合わせを全て検証し 46 00:07:04,654 --> 00:07:09,617 奴が さらに新しい掌打を 出さざるを得ない角度からの 47 00:07:09,617 --> 00:07:12,578 攻撃を導き出す 48 00:07:15,581 --> 00:07:21,587 とはいえ 奴の型は有限なれど その組み合わせは甚大 49 00:07:21,587 --> 00:07:25,091 無限に等しい数に及ぼう 50 00:07:28,177 --> 00:07:33,099 だが 個には 必ず特有の呼吸がある 51 00:07:33,099 --> 00:07:37,103 無意識のうちに 好む型 嫌う型があり 52 00:07:37,103 --> 00:07:41,607 おのずと その者 独自の流れを形作る 53 00:07:41,607 --> 00:07:44,610 呼吸の流れを つかめさえすれば 54 00:07:44,610 --> 00:07:49,156 幾多ある技の枝から 奴が どれを選択するかを探るは 55 00:07:49,156 --> 00:07:51,617 十分に可能! 56 00:07:51,617 --> 00:07:56,622 無数にそそり立つ針の穴から 正解を導き出し 57 00:07:56,622 --> 00:08:00,126 正確に糸の矢を貫き通し… 58 00:08:01,127 --> 00:08:03,587 その先の的を射抜くがごとく 59 00:08:03,587 --> 00:08:06,590 その作業は難事なれど… 60 00:08:07,675 --> 00:08:09,677 フッ んっ 61 00:08:09,677 --> 00:08:12,138 やって見せよう! 62 00:08:12,138 --> 00:08:15,099 余には叶う! 63 00:08:15,099 --> 00:08:18,602 老秋の兵士よ 頼むぞ 64 00:08:18,602 --> 00:08:24,108 頼むから その前に 精魂 果ててくれるなよ? 65 00:08:24,108 --> 00:08:27,153 フハハハ… 66 00:08:27,153 --> 00:08:31,615 笑うかよ まぁ わしも楽しんでるから 67 00:08:31,615 --> 00:08:33,617 お互いさまだ 68 00:08:33,617 --> 00:08:40,082 あらゆる角度からの掌撃にも 最短で体勢を立て直し 69 00:08:40,082 --> 00:08:42,626 反撃に転じて来よる 70 00:08:42,626 --> 00:08:45,629 掌の選択を誤れば その速度は 71 00:08:45,629 --> 00:08:50,593 次なる「百式」を繰り出すまでの 間をも奪うだろう 72 00:08:50,593 --> 00:08:54,597 気を抜けば 拝む その前に四肢もがれ 73 00:08:54,597 --> 00:08:57,600 勝負が決するということ… 74 00:08:59,101 --> 00:09:02,605 正確無比に 最善手を打ち続けるしかない 75 00:09:02,605 --> 00:09:05,107 根気の勝負 76 00:09:05,107 --> 00:09:10,613 それが尽きた時が 貴様の潮時 77 00:09:12,114 --> 00:09:16,619 …だと 思ってんだろ? アリの王よ! 78 00:09:16,619 --> 00:09:20,623 まぁ すぐに詰んでやろう 79 00:09:20,623 --> 00:09:25,127 詰めるもんなら詰んでみな 80 00:09:25,127 --> 00:09:28,631 「百式の零」を見せてやるぜ! 81 00:09:55,866 --> 00:10:00,871 数百 数千と重ねた打撃が わずかではあるが 82 00:10:00,871 --> 00:10:05,835 王の内部に 鈍い痛みを蓄えつつあった 83 00:10:05,835 --> 00:10:07,837 しかし… 84 00:10:13,884 --> 00:10:15,386 んっ! 85 00:10:20,850 --> 00:10:25,354 止血しろ そして余の名を言え 86 00:10:25,354 --> 00:10:30,442 貴様は よくやった 人間としてはな 87 00:10:39,368 --> 00:10:44,373 どうした? 早くせぬと失血で死ぬぞ 88 00:10:45,875 --> 00:10:47,877 笑わせんな 89 00:10:49,378 --> 00:10:50,880 ふん! 90 00:10:54,383 --> 00:10:56,385 ほう… 91 00:10:58,345 --> 00:11:01,348 誰が死ぬって? 92 00:11:01,348 --> 00:11:04,351 ラッキーパンチで調子に乗んなよ 93 00:11:04,351 --> 00:11:06,353 勝負は これからだ! 94 00:11:07,354 --> 00:11:10,357 全くもって感服する 95 00:11:10,357 --> 00:11:14,403 気力が いささかも 衰えていないのは驚異だ 96 00:11:14,403 --> 00:11:19,366 だが 貴様が脚を失ったのは 半ば必然 97 00:11:19,366 --> 00:11:21,368 悪手とは言えぬまでも 98 00:11:21,368 --> 00:11:24,872 正着ではない防御が招いた結果だ 99 00:11:26,373 --> 00:11:31,879 コムギとの対局が 予知のごとき先見を可能にした 100 00:11:32,838 --> 00:11:35,925 貴様が無意識に嫌う型 101 00:11:35,925 --> 00:11:40,346 その存在が 本来 無限であるはずの選択に 102 00:11:40,346 --> 00:11:42,848 しるべを示すのだ 103 00:11:44,850 --> 00:11:48,854 次は 左腕をもらう 104 00:11:54,360 --> 00:11:56,403 そこからの攻防は 105 00:11:56,403 --> 00:12:00,407 時間にして 1分に満たなかったが… 106 00:12:02,368 --> 00:12:04,870 これが… 107 00:12:04,870 --> 00:12:07,373 生涯最後! 108 00:12:07,373 --> 00:12:11,377 その覚悟で放った ネテロの「百式」は 109 00:12:11,377 --> 00:12:16,382 互いの力量 精神の高揚と相まって… 110 00:12:19,468 --> 00:12:24,890 千を超える 拳のやりとりとなって 111 00:12:24,890 --> 00:12:29,395 両者の間に 無数の火花を生んだ 112 00:12:31,897 --> 00:12:36,860 そして その瞬間は訪れた… 113 00:12:38,404 --> 00:12:41,448 わずかに現れる技の偏り 114 00:12:41,448 --> 00:12:44,410 癖や傾向 型と呼ぶには 115 00:12:44,410 --> 00:12:46,870 あまりに乏しい揺らぎ 116 00:12:46,870 --> 00:12:51,875 身を盾に ネテロの拳を 受け続けることで 王は 117 00:12:51,875 --> 00:12:55,879 その先に見える かすかな光を探し出し 118 00:12:55,879 --> 00:13:00,926 そして… たどり着いた 119 00:13:16,859 --> 00:13:20,362 これで 気が済んだであろう 120 00:13:22,364 --> 00:13:24,408 さぁ 述べよ 121 00:13:24,408 --> 00:13:26,410 余の名を 122 00:13:33,375 --> 00:13:35,377 フフフ… 123 00:13:35,377 --> 00:13:37,379 アリの王 124 00:13:38,839 --> 00:13:42,384 腕がなけりゃ 祈れねえとでも? 125 00:13:42,384 --> 00:13:43,886 ほう… 126 00:13:44,887 --> 00:13:49,433 祈りとは 心の所作 127 00:13:56,857 --> 00:14:00,861 心が正しく形を成せば 思いとなり 128 00:14:00,861 --> 00:14:04,365 思いこそが実を結ぶのだ 129 00:14:07,868 --> 00:14:10,913 「百式観音 零の掌」は 130 00:14:10,913 --> 00:14:14,416 敵背後から現われし観音が… 131 00:14:16,377 --> 00:14:19,880 有無を言わさぬ 慈愛の掌衣でもって 132 00:14:19,880 --> 00:14:23,342 対象を優しく包み込み… 133 00:14:30,933 --> 00:14:35,354 先日 キルアが数里も先から その殺気に気付き… 134 00:14:35,354 --> 00:14:38,357 やっぱ こっちはやめだ 135 00:14:38,357 --> 00:14:44,863 進路を変えたほどの 精神統一の業を経て蓄積した 136 00:14:44,863 --> 00:14:49,451 ネテロの渾身の全オーラを 137 00:14:49,451 --> 00:14:52,871 目も くらむ 恒星のごとき光弾に変え 138 00:14:52,871 --> 00:14:54,873 撃ち放つ 139 00:14:55,874 --> 00:14:58,377 無慈悲の 咆哮である 140 00:15:44,339 --> 00:15:48,385 あぁ… ハァ ハァ… 141 00:15:48,385 --> 00:15:53,974 あぁ… ハァ… あっ… 142 00:15:53,974 --> 00:16:01,899 ハァ ハァ… 143 00:16:01,899 --> 00:16:08,363 ハァ ハァ ハァ… 144 00:16:08,363 --> 00:16:12,367 ハァ ハァ… 145 00:16:12,367 --> 00:16:15,954 ハァ… 146 00:16:15,954 --> 00:16:22,377 ハァ ハァ ハァ ハァ… 147 00:16:22,377 --> 00:16:23,879 んっ? 148 00:16:31,386 --> 00:16:33,388 んっ… 149 00:16:33,388 --> 00:16:36,892 まさに 個の極致 150 00:16:54,868 --> 00:16:58,872 素晴らしい一撃であった 151 00:16:58,872 --> 00:17:01,875 「零」でさえも… 152 00:17:03,919 --> 00:17:06,880 余は アリの王として生を受け 153 00:17:06,880 --> 00:17:10,384 生命の頂点に立つことを許された 154 00:17:11,885 --> 00:17:16,390 それは種全体の 本能に基づく悲願であり 155 00:17:16,390 --> 00:17:20,352 種全体が 余のためだけに進化する 156 00:17:20,352 --> 00:17:24,439 我は 種全体の惜しみない奉仕の末 157 00:17:24,439 --> 00:17:26,942 たどり着いた 賜物 158 00:17:28,360 --> 00:17:31,863 お主は人間の いち個であって 王でなく 159 00:17:31,863 --> 00:17:36,368 余は 種の全てを 託された王であること 160 00:17:36,368 --> 00:17:39,871 それが勝敗を分かつ境 161 00:17:39,871 --> 00:17:43,417 長い進化の突端が 162 00:17:43,417 --> 00:17:48,422 全て余に集約されるよう 機能したキメラの生態に 163 00:17:49,840 --> 00:17:53,385 多様な個のありようを 許した人間が 164 00:17:53,385 --> 00:17:55,846 かなう道理などないのだ 165 00:17:55,846 --> 00:18:01,393 だが 繁殖に 人類を利することは なくなった 166 00:18:01,393 --> 00:18:03,353 人間の強い我が 167 00:18:03,353 --> 00:18:08,984 アリの統率を 著しく乱すことが分かった故 168 00:18:08,984 --> 00:18:11,361 貴様に免じ 169 00:18:11,361 --> 00:18:15,866 特区を設け 人類の永住を許可しよう 170 00:18:15,866 --> 00:18:18,368 食用にする人間も 171 00:18:18,368 --> 00:18:22,372 選定の際に数や質を考慮する 172 00:18:23,874 --> 00:18:28,879 貴様の孤独な戦いは 無駄ではなかったのだ 173 00:18:34,384 --> 00:18:38,889 もう決して 二度 言うことはないぞ 174 00:18:38,889 --> 00:18:41,892 余の名を言え 175 00:18:46,855 --> 00:18:49,858 フッ… フフ… 176 00:18:50,942 --> 00:18:54,946 フフフ… フッ 177 00:18:56,365 --> 00:18:58,867 俺は… 178 00:18:58,867 --> 00:19:01,370 一人じゃ ねえ 179 00:19:09,878 --> 00:19:14,383 人間をナメるなよ メルエム 180 00:19:15,884 --> 00:19:19,888 「メルエム」 それがお主の名だ… 181 00:19:23,892 --> 00:19:27,354 ネテロが王の名を告げた時 182 00:19:27,354 --> 00:19:31,400 王は その響きに浸る間もなく 183 00:19:31,400 --> 00:19:35,904 白旗を揚げたはずの 老人を見ていた 184 00:19:35,904 --> 00:19:39,866 何だ… こいつは… 185 00:19:48,875 --> 00:19:51,920 アリの王 メルエム 186 00:19:51,920 --> 00:19:55,424 お前さんは 何にも分かっちゃいねえよ 187 00:20:02,889 --> 00:20:07,394 人間の底すらない悪意を 188 00:20:08,353 --> 00:20:14,359 それは 王が初めて感じる恐怖だった 189 00:20:14,359 --> 00:20:16,403 全てを絞り尽くし 190 00:20:16,403 --> 00:20:20,365 死を待つのみであるはずの 老人の言葉が 191 00:20:20,365 --> 00:20:25,370 決して虚栄の類いではないと 思える根拠が 192 00:20:25,370 --> 00:20:29,374 その顔に表れていた 193 00:20:39,384 --> 00:20:42,387 あなたの心臓が 鼓動を止めれば 194 00:20:42,387 --> 00:20:44,389 これは作動します 195 00:20:51,897 --> 00:20:56,943 地獄があるなら また会おうぜ 196 00:21:00,363 --> 00:21:02,365 貴様は… 197 00:21:02,365 --> 00:21:05,368 そう 貴様は… 198 00:21:07,370 --> 00:21:12,876 詰んでいたのだ… 初めから 199 00:21:32,395 --> 00:21:36,858 その爆弾は 低予算で小型の上 200 00:21:36,858 --> 00:21:41,404 驚くほどの殺傷能力を誇り 201 00:21:41,404 --> 00:21:44,449 技術さえ確立してしまえば 202 00:21:44,449 --> 00:21:48,370 短期間での 大量生産が可能なことと 203 00:21:48,370 --> 00:21:52,874 爆煙の特異な姿から 204 00:21:52,874 --> 00:21:56,878 「ミニチュアローズ」 「貧者の薔薇」と呼ばれ 205 00:21:56,878 --> 00:22:00,340 独裁小国家に好まれた