1 00:00:07,140 --> 00:00:11,812 (源吾)すまねえ 過去のものまで遡って集めるのは苦労したろう 2 00:00:11,812 --> 00:00:16,316 (左門)まあな だが 七年前までは集めたぞ 3 00:00:16,316 --> 00:00:18,986 (寅次郎)番付 ですか? 4 00:00:18,986 --> 00:00:23,490 ああ でも 相撲じゃねえ 火消番付だ 5 00:00:23,490 --> 00:00:26,827 仲間を効率よく集めるには 引き抜くしかねえ 6 00:00:26,827 --> 00:00:29,329 (寅次郎)へえ~ (新之助)ほう… 7 00:00:29,329 --> 00:00:34,334 ぽっと出は必要ない 常に評価の高い火消を狙う 8 00:00:34,334 --> 00:00:36,670 よい考えですね➡ 9 00:00:36,670 --> 00:00:40,340 東の大関が大音勘九郎さんで➡ 10 00:00:40,340 --> 00:00:43,844 西が… もっと下だ 11 00:00:43,844 --> 00:00:47,514 三役を取るような奴は 簡単に鞍替えしねえし 12 00:00:47,514 --> 00:00:50,017 こっちが雇える金もない 13 00:00:50,017 --> 00:00:52,085 武士身分はもってのほか 14 00:00:52,085 --> 00:00:56,089 つまり 狙い目は町火消 (寅次郎・新之助)うん? 15 00:00:56,089 --> 00:00:59,860 なるほど では 古いものから… 16 00:00:59,860 --> 00:01:04,631 あれ? 東の大関 松永源吾って 17 00:01:04,631 --> 00:01:08,702 御頭!? そんなことはいいから探せ 18 00:01:08,702 --> 00:01:11,071 へえ~ 19 00:01:14,975 --> 00:01:19,646 (寅次郎)この方 もしかして 新之助さんの御父上ですか? 20 00:01:19,646 --> 00:01:21,715 ああ そのようですね 21 00:01:21,715 --> 00:01:24,151 どの番付にも載っている 22 00:01:24,151 --> 00:01:27,621 それだけ 鳥越殿は優れた火消だったんだ 23 00:01:34,227 --> 00:01:36,496 うん… (左門)源吾➡ 24 00:01:36,496 --> 00:01:39,833 この男はどうだろう? (三人)うん? 25 00:01:39,833 --> 00:01:44,905 (左門)七年前に十両 そこから毎年 着実に番付を上げ➡ 26 00:01:44,905 --> 00:01:48,375 今では西の前頭三枚目だ 27 00:01:49,509 --> 00:01:51,511 に組の甚助 28 00:01:51,511 --> 00:01:55,582 花纏の通り名を持つ纏持ちか 29 00:01:55,582 --> 00:01:57,551 いいかもな 30 00:01:58,585 --> 00:02:02,689 うん? (深雪)皆様 お勤めご苦労さまです 31 00:02:02,689 --> 00:02:04,691 おなかがへったでしょう? 32 00:02:04,691 --> 00:02:10,063 おお~ やった! ちょうどおなかがへっていたところなんですよ 33 00:02:14,968 --> 00:02:17,804 うわ~ うまそう~! ん… 34 00:02:17,804 --> 00:02:19,806 うん? 35 00:02:19,806 --> 00:02:21,875 へえ おお… 36 00:02:21,875 --> 00:02:27,481 お食事と先ほどの番茶三杯で 四十五文いただきます 37 00:02:27,481 --> 00:02:31,818 えっ 銭を取るのですか!? おいおい バカなことを言うな 38 00:02:31,818 --> 00:02:36,323 三百石いただいたとはいえ まだ支給前の身 39 00:02:36,323 --> 00:02:40,327 お代をいただかないと 私達も飢えてしまいます 40 00:02:40,327 --> 00:02:42,295 うっ うん… 41 00:02:43,997 --> 00:02:47,067 確かに ありがたく頂戴いたします 42 00:02:47,067 --> 00:02:50,003 では 俺もいただくとするか 43 00:02:50,003 --> 00:02:52,839 旦那様は四十文いただきます 44 00:02:52,839 --> 00:02:56,443 俺からも取るのか!? 45 00:02:56,443 --> 00:03:46,927 ♬~ 46 00:04:39,045 --> 00:04:41,381 というわけだ 47 00:04:41,381 --> 00:04:43,450 うちに来てくれねえか? 48 00:04:43,450 --> 00:04:48,221 (甚助)あの松永源吾が まだ火消をやっていたなんてな 49 00:04:49,890 --> 00:04:53,560 まっ そういう事情なら 移ってやってもいいぜ 50 00:04:53,560 --> 00:04:57,397 まことですか!? ただし 五十両いただく 51 00:04:57,397 --> 00:04:59,733 えっ!? バカ言うな 52 00:04:59,733 --> 00:05:04,738 相場は二十両がいいところだ そんなにもらう火消がどこにいる? 53 00:05:04,738 --> 00:05:09,075 だから 俺が その初めになるんだよ あ? 54 00:05:09,075 --> 00:05:11,077 (犬が吠える) ⚟止めろ! 55 00:05:11,077 --> 00:05:13,580 また来やがったな 56 00:05:13,580 --> 00:05:16,650 (彦弥)おい 甚助 金を返しやがれ! 57 00:05:16,650 --> 00:05:21,087 しつこいぜ 彦弥 お夏の借金は お前が立て替えたんだろう 58 00:05:21,087 --> 00:05:23,423 まだ何か用か! 59 00:05:23,423 --> 00:05:28,495 百歩譲って金は返さなくていい これ以上 お夏に関わるな! 60 00:05:28,495 --> 00:05:32,599 お前の指図を受けるいわれはねえ 俺は好きにするさ 61 00:05:32,599 --> 00:05:34,601 この野郎! 62 00:05:34,601 --> 00:05:38,038 おい! 誰か 金貸しの丹波屋まで行ってくれ 63 00:05:38,038 --> 00:05:42,542 お捜しの彦弥がここにいるってな へい! 64 00:05:42,542 --> 00:05:45,612 すまねえ 取り込み中になっちまった 65 00:05:45,612 --> 00:05:48,181 話は また今度ってことで 66 00:05:51,551 --> 00:05:53,887 (殴る音) ぐはっ! 67 00:05:53,887 --> 00:05:59,893 昔のなじみで商売道具の顔は 勘弁してやってんだ ありがたく思え 68 00:05:59,893 --> 00:06:03,563 腹をなでるな くすぐってえだろ 69 00:06:03,563 --> 00:06:07,400 おい 何事か知らんが 手荒なマネは… 70 00:06:07,400 --> 00:06:10,403 かまわねえでくれ こっちの話だ 71 00:06:10,403 --> 00:06:13,073 もうすぐ 丹波屋の連中が来ますぜ 72 00:06:13,073 --> 00:06:17,577 (甚助)腹くくれよ 丹波屋の取り立てはキツいぜ 73 00:06:17,577 --> 00:06:19,579 ん… くっ… 74 00:06:19,579 --> 00:06:22,549 うん… フン! 75 00:06:24,651 --> 00:06:28,421 ぐわっ! この野郎 待ちやがれ! 76 00:06:28,421 --> 00:06:30,357 ⚟待て待て! 77 00:06:30,357 --> 00:06:33,827 (犬が吠える) 78 00:06:35,362 --> 00:06:37,530 うん? 79 00:06:43,370 --> 00:06:46,206 まさか この距離を跳んだ!? 80 00:06:46,206 --> 00:06:48,208 彦弥… 81 00:06:48,208 --> 00:06:52,045 彦弥 もしかして! 知ってるのか? 82 00:06:52,045 --> 00:06:54,381 (新之助)山城座の彦弥➡ 83 00:06:54,381 --> 00:06:58,251 みんなから山彦って呼ばれてる 人気の軽業師です 84 00:07:00,887 --> 00:07:02,856 うん… 85 00:07:06,559 --> 00:07:11,064 御頭~ もう何日歩き回るんですか? 86 00:07:11,064 --> 00:07:14,401 何で そんなに 彦弥さんにこだわるんです? 87 00:07:14,401 --> 00:07:18,405 あいつは うちの組に必要だ どうしても欲しい 88 00:07:18,405 --> 00:07:23,076 えっ そうだったんですか!? 甚助さんじゃなく? 89 00:07:23,076 --> 00:07:26,246 ここだ うわっ 無視 90 00:07:27,147 --> 00:07:31,017 ごめんよ (お夏)いらっしゃい どうぞ 中へ 91 00:07:31,017 --> 00:07:36,523 すまない ここに お夏という娘がいると聞いてきたんだが 92 00:07:36,523 --> 00:07:39,526 (お夏) 私に何か御用でしょうか? 93 00:07:39,526 --> 00:07:42,195 あなたが お夏さん? はい 94 00:07:42,195 --> 00:07:45,865 実は 彦弥のことで ちょっと聞きたいことが 95 00:07:45,865 --> 00:07:50,203 はっ! 彦弥さんがどこにいるか ご存じなのですか!? 96 00:07:50,203 --> 00:07:54,207 無事なのですか!? ああ ちょっと お夏さん 落ち着いて 97 00:07:54,207 --> 00:07:56,543 俺達も捜しているんだ 98 00:07:56,543 --> 00:08:00,880 何やら借金取りに追われているようだから どうにか助けたいと思ってな 99 00:08:00,880 --> 00:08:03,216 (お夏が泣きだす) 100 00:08:03,216 --> 00:08:06,720 えっ あの… 大丈夫ですか? 101 00:08:06,720 --> 00:08:11,391 全て… 全て私のせいなのです 102 00:08:11,391 --> 00:08:13,560 (お夏が泣いている) ああ… 103 00:08:16,062 --> 00:08:18,064 私達は孤児で 104 00:08:18,064 --> 00:08:21,901 里親が見つかるまで お寺で育ったのです 105 00:08:21,901 --> 00:08:24,571 私が最初に この茶屋に引き取られ➡ 106 00:08:24,571 --> 00:08:27,907 次に彦弥さんが山城座に➡ 107 00:08:27,907 --> 00:08:32,512 甚助さんは なかなかもらい手がなくて 火消になったんです 108 00:08:32,512 --> 00:08:35,348 お前達 幼なじみなのか 109 00:08:35,348 --> 00:08:37,350 はい 110 00:08:37,350 --> 00:08:41,020 私達はそれからも 互いに連絡を取り合って 111 00:08:42,422 --> 00:08:47,694 (お夏)特に彦弥さんは うちの茶屋によく来てくれました 112 00:08:47,694 --> 00:08:49,763 《彦弥さん いらっしゃい》 113 00:08:49,763 --> 00:08:52,432 《よう 元気そうだな》 114 00:08:55,702 --> 00:08:59,773 《おう お夏 またキレイになったんじゃねえか?》 115 00:08:59,773 --> 00:09:03,209 《どうだ 俺と夫婦になる気はないか?》 116 00:09:03,209 --> 00:09:05,278 《また そんなこと言って》 117 00:09:05,278 --> 00:09:08,882 《誰にでも言ってるんでしょ? フン!》 118 00:09:08,882 --> 00:09:12,952 (お夏)そんなふうに いつも からかわれていたんですけど 119 00:09:12,952 --> 00:09:17,223 私にとって彦弥さんは 兄のような存在でした 120 00:09:18,558 --> 00:09:24,230 (お夏)昨年 私が甚助さんと一緒になる約束を したことを告げたときも 121 00:09:24,230 --> 00:09:26,299 《(足音)》 122 00:09:26,299 --> 00:09:30,236 《何だい? お夏 大事な話って…》 123 00:09:30,236 --> 00:09:32,505 《あのね 彦弥さん…》 124 00:09:35,742 --> 00:09:41,581 《お前のようなドジな女を好いてくれる男は あいつしかいねえだろうな》 125 00:09:41,581 --> 00:09:44,083 《よかったじゃねえか》 126 00:09:44,083 --> 00:09:46,252 《幸せになれよ》 127 00:09:49,155 --> 00:09:51,157 なるほど 128 00:09:51,157 --> 00:09:53,159 でも そのすぐあとに 129 00:09:53,159 --> 00:09:58,431 私達を育ててくれた和尚さんが 重い病だと分かって➡ 130 00:09:58,431 --> 00:10:01,101 医者にかかろうにも お金がない➡ 131 00:10:01,101 --> 00:10:05,605 甚助さんも 元から借金持ちで貸してもらえないと 132 00:10:05,605 --> 00:10:10,276 それで 私が丹波屋から 五両のお金を借りたのです 133 00:10:10,276 --> 00:10:13,279 お前さんは 病気の和尚に会ったのかい? 134 00:10:13,279 --> 00:10:18,785 あ… 流行病だから うつってはいけないと いつも甚助さん一人で 135 00:10:18,785 --> 00:10:20,787 そのことを 彦弥さんは? 136 00:10:20,787 --> 00:10:24,791 甚助さんが あいつには言うなと… 137 00:10:24,791 --> 00:10:28,795 怪しいな 返せると思ってたのかい? 138 00:10:28,795 --> 00:10:31,397 最初は利子も安かったのです 139 00:10:31,397 --> 00:10:34,467 それが いつの間にか 証文も書き換わっていて 140 00:10:34,467 --> 00:10:37,470 あれよあれよと三十両に… 141 00:10:37,470 --> 00:10:40,406 三十両!? そんな法外な! 142 00:10:40,406 --> 00:10:42,742 それが奴らの手だ 143 00:10:42,742 --> 00:10:47,413 借金のかたに 吉原に売られることになったのですが 144 00:10:47,413 --> 00:10:52,085 《(お夏)あ…》 《(彦弥)受け取ってくれ これで自由だ》 145 00:10:52,085 --> 00:10:54,921 《彦弥さん…》 146 00:10:54,921 --> 00:10:57,423 それが 十日ほど前の話で 147 00:10:57,423 --> 00:11:00,927 それ以来 彦弥さんには会えずじまいで 148 00:11:00,927 --> 00:11:04,998 心当たりも散々捜したのですが… 149 00:11:04,998 --> 00:11:07,433 三人が育った寺はどうだ? 150 00:11:07,433 --> 00:11:09,769 あっ すぐに行ってみたのですが 151 00:11:09,769 --> 00:11:14,607 丹波屋の連中が見張っていて 近づくこともできなくて 152 00:11:14,607 --> 00:11:17,677 彦弥さんも同じかと… 153 00:11:17,677 --> 00:11:21,614 あっ! 何か思い出しましたか? 154 00:11:21,614 --> 00:11:27,120 お寺の境内に 少し前まで一本の銀杏の木がありました 155 00:11:27,120 --> 00:11:30,890 そこで 子供の頃 彦弥さんに… 156 00:11:30,890 --> 00:11:33,893 《(彦弥)アハハハハハハ…➡》 157 00:11:33,893 --> 00:11:36,229 《アハハハ アハハハ…》 158 00:11:36,229 --> 00:11:39,566 《私ね 銀杏が大好きなの》 159 00:11:39,566 --> 00:11:42,235 《黄金色でキレイでしょ?》 160 00:11:42,235 --> 00:11:46,306 《おめえ 銀杏黄葉っていやあ 秋じゃねえか》 161 00:11:46,306 --> 00:11:50,243 《お夏って名前のくせに 変な奴だなあ》 162 00:11:50,243 --> 00:11:52,312 《ホントだね フフフッ》 163 00:11:52,312 --> 00:11:54,914 《(お夏と彦弥が笑う)》 164 00:11:54,914 --> 00:12:00,253 だが 少し前までってことは 今は その木は残ってねえんだろう? 165 00:12:00,253 --> 00:12:04,924 はい ただ それを私が懐かしがっていたら 166 00:12:04,924 --> 00:12:07,760 待乳山聖天に大銀杏がある 167 00:12:07,760 --> 00:12:12,098 秋になったら 甚助も連れて見に行こうぜって 168 00:12:12,098 --> 00:12:15,935 浅草の待乳山だな 行く価値はありそうだ 169 00:12:15,935 --> 00:12:20,273 新之助 お前は先に戻ってろ 分かりました 170 00:12:20,273 --> 00:12:22,275 松永様 私も… 171 00:12:22,275 --> 00:12:27,280 いや お前さんを巻き込むのは 彦弥も望んでないだろ 172 00:12:27,280 --> 00:12:32,285 大丈夫 悪いようにはしない ここは俺に任せてくれ 173 00:12:32,285 --> 00:12:34,287 はい 174 00:12:34,287 --> 00:12:36,956 (カラスが鳴く) 175 00:12:38,725 --> 00:12:40,693 彦弥だな 176 00:12:41,728 --> 00:12:44,230 甚助に頼まれたのか 177 00:12:44,230 --> 00:12:48,301 違う 拙者は新庄藩 火消方頭取 178 00:12:48,301 --> 00:12:51,237 松永源吾と申す者だ 179 00:12:51,237 --> 00:12:54,073 おぬしに たっての願いがあるのだ 180 00:12:54,073 --> 00:12:56,909 我が家に ご足労願えぬか? 181 00:12:56,909 --> 00:13:00,913 んなこと言って 借金取りに引き渡すつもりじゃねえのか? 182 00:13:00,913 --> 00:13:04,751 俺も お前さんと同じことをしたことがあってな 183 00:13:04,751 --> 00:13:08,254 手助けしたいんだ 俺と同じ? 184 00:13:08,254 --> 00:13:13,092 俺も 全てを懸けて 守りたい女がいたってことだよ 185 00:13:13,092 --> 00:13:17,163 あんたは 何で そこまでして守りたいと思った? 186 00:13:17,163 --> 00:13:21,601 惚れた女を守るのに 訳はいるかい? フッ 187 00:13:21,601 --> 00:13:26,372 そりゃそうだ 俺もあんたも バカだねえ 188 00:13:28,608 --> 00:13:30,543 かあ~! 189 00:13:30,543 --> 00:13:35,882 うまかった~! このところ ろくな飯 食ってなかったからな 190 00:13:35,882 --> 00:13:38,384 あとで た~んまり取られますよ 191 00:13:38,384 --> 00:13:40,753 (せきばらい) あ… 192 00:13:42,889 --> 00:13:46,392 実はな 彦弥 相談があるんだが 193 00:13:46,392 --> 00:13:48,394 金なら ないぜ 194 00:13:48,394 --> 00:13:52,065 今のお前に その相談だけはしねえよ 195 00:13:52,065 --> 00:13:55,902 彦弥 俺達の仲間になってくれないか? 196 00:13:55,902 --> 00:13:58,905 俺が火消に? 無理無理 197 00:13:58,905 --> 00:14:03,576 いや お前は 江戸一の火消になってもおかしくねえ 198 00:14:04,744 --> 00:14:07,747 俺には 三十両もの借金がある 199 00:14:07,747 --> 00:14:10,717 山城座のみんなに 迷惑はかけられねえ 200 00:14:12,418 --> 00:14:15,755 俺の給金より 三十両 前借りする 201 00:14:15,755 --> 00:14:18,591 それを使って返済しろ ああ… 202 00:14:18,591 --> 00:14:22,595 会ったばかりのあんたから そんな大金いただけねえよ! 203 00:14:22,595 --> 00:14:26,265 そうじゃねえ やるのではなく貸すのだ 204 00:14:26,265 --> 00:14:28,835 無利子で貸すから 火消になれ 205 00:14:30,269 --> 00:14:35,241 俺は お前を助けるから お前も俺達を助けろ 206 00:14:37,276 --> 00:14:40,713 火事だ! 何も聞こえねえけどな 207 00:14:40,713 --> 00:14:44,217 いや 間違いない 相当遠いが… 208 00:14:44,217 --> 00:14:47,286 (走る足音) 209 00:14:47,286 --> 00:14:49,555 御頭 火事です! 210 00:14:49,555 --> 00:14:53,059 どこだ! 火元は日本橋の北端 211 00:14:53,059 --> 00:14:55,061 マジかよ 212 00:14:55,061 --> 00:14:58,398 日本橋の北端っていうと… 213 00:14:58,398 --> 00:15:00,466 金貸しの丹波屋がある方ですね 214 00:15:00,466 --> 00:15:03,236 そうそう 丹波屋だと言ってました 215 00:15:03,236 --> 00:15:07,306 どうやら火付けらしい 下手人は若い娘だと… 216 00:15:07,306 --> 00:15:09,308 あっ! 217 00:15:09,308 --> 00:15:12,578 (半鐘の音) 218 00:15:12,578 --> 00:15:14,547 ああ… 219 00:15:17,850 --> 00:15:21,120 (半鐘の音) 220 00:15:21,120 --> 00:15:23,623 クソッ 進めねえ! 221 00:15:23,623 --> 00:15:26,692 ここまで来たら大丈夫だ 世話になったな 222 00:15:26,692 --> 00:15:28,661 彦弥! 223 00:15:29,962 --> 00:15:34,734 惚れた女を守るのに 訳はいらねえよな! 224 00:15:34,734 --> 00:15:37,804 待て! 俺達も馬を捨てるぞ! 225 00:15:37,804 --> 00:15:40,406 どいてくれ どけ! 226 00:15:40,406 --> 00:15:45,478 寅 俺を屋根の上に投げられるか? ムチャですよ 御頭! 227 00:15:45,478 --> 00:15:49,749 ケガしても知りませんよ ああ 大丈夫だ 228 00:15:49,749 --> 00:15:51,751 (寅次郎)フン! うわっ! 229 00:15:51,751 --> 00:15:55,087 いきますよ うおおお~! 230 00:15:55,087 --> 00:15:57,757 くっ… イッテエ… 231 00:15:57,757 --> 00:16:00,760 御頭 急いでください! 232 00:16:00,760 --> 00:16:03,329 分かってる 任せとけ! 233 00:16:07,099 --> 00:16:09,268 やるしかねえか 234 00:16:11,103 --> 00:16:15,441 今宵は長月晦日 時は戌の刻 235 00:16:15,441 --> 00:16:19,445 月は有明月 風は西風 236 00:16:19,445 --> 00:16:23,282 風向きは しばし変わらず 火は東へ 237 00:16:23,282 --> 00:16:27,854 火元 丹波屋は炎上 隣家数軒に移り火 238 00:16:30,456 --> 00:16:32,725 東の棟を始末する 239 00:16:33,893 --> 00:16:35,862 うん!? 240 00:16:39,232 --> 00:16:41,234 (甚助)こっちだ 急げ! 241 00:16:41,234 --> 00:16:43,202 あっ! 242 00:16:44,570 --> 00:16:47,907 お夏 何で… 243 00:16:47,907 --> 00:16:50,243 うわあ~! 244 00:16:50,243 --> 00:16:52,245 いけねえ! 245 00:16:52,245 --> 00:16:54,213 くっ! 246 00:16:56,582 --> 00:16:59,585 甚助! お夏は俺が救う 247 00:16:59,585 --> 00:17:03,656 お夏 待ってろ 今行く! 248 00:17:03,656 --> 00:17:05,658 来ないで! 249 00:17:05,658 --> 00:17:07,927 がっ! ああっ! 250 00:17:07,927 --> 00:17:10,997 うっ… 和尚は昨日死んだよ 251 00:17:10,997 --> 00:17:16,769 最後まで面倒見てもらった俺は 和尚をどうしても救いたかったんだ 252 00:17:16,769 --> 00:17:20,840 お前に借金までさせちまって すまねえ 253 00:17:20,840 --> 00:17:23,276 (お夏) 私は火付けなんかしてない! 254 00:17:23,276 --> 00:17:26,612 確かに 彦弥さんの証文は燃やそうとした 255 00:17:26,612 --> 00:17:29,682 もみ合いになって 火が移っただけ 256 00:17:29,682 --> 00:17:34,153 でも 誰も 私の言うことなんて信じてくれない! 257 00:17:35,788 --> 00:17:38,224 うっ! 甚助! 258 00:17:38,224 --> 00:17:41,894 (甚助)ぐわあ~! うっ! 259 00:17:41,894 --> 00:17:45,264 くっ… あっ 彦弥! 260 00:17:46,732 --> 00:17:52,238 すまねえ お夏は てっきり丹波屋だと思って そっちを捜してた 261 00:17:52,238 --> 00:17:54,240 櫓は もう無理だ 262 00:17:54,240 --> 00:17:57,009 彦弥 素人は引っ込んでろ! 263 00:17:58,311 --> 00:18:00,913 なっ! うるせえ! 264 00:18:00,913 --> 00:18:04,750 俺は新庄藩 火消の彦弥だ! 265 00:18:04,750 --> 00:18:08,254 あ… 彦弥 お夏を… 266 00:18:08,254 --> 00:18:10,756 分かってらあ! 267 00:18:10,756 --> 00:18:13,759 もういい 彦弥さん やめて! 268 00:18:13,759 --> 00:18:16,095 やめねえ~! 269 00:18:16,095 --> 00:18:18,164 ぐっ… 270 00:18:18,164 --> 00:18:22,134 東風… 夜は西風じゃねえのか 271 00:18:24,937 --> 00:18:29,275 手拭いか何かで肌を隠せ ないよりマシだ! 272 00:18:29,275 --> 00:18:32,945 ヘッ うまそうなニオイで腹が鳴るってもんよ! 273 00:18:32,945 --> 00:18:35,314 (新之助)崩れるぞ~! 274 00:18:37,950 --> 00:18:40,286 くっ… 275 00:18:40,286 --> 00:18:42,288 もういいの 276 00:18:42,288 --> 00:18:45,624 彦弥さん一人なら ここからでも跳べるでしょう 277 00:18:45,624 --> 00:18:48,628 バカ言うな 勝手に逝ったら 278 00:18:48,628 --> 00:18:52,298 三途の川でも 一跳びして連れ戻してやる 279 00:18:53,299 --> 00:18:55,968 ごめんね ありがとう 280 00:18:55,968 --> 00:18:58,638 さようなら 281 00:18:58,638 --> 00:19:02,408 お夏~! 彦弥 跳べ! 282 00:19:04,710 --> 00:19:06,979 御頭! 死なせるな! 283 00:19:06,979 --> 00:19:09,849 おう! うおおお~! 284 00:19:11,050 --> 00:19:13,486 死なせるな~! 285 00:19:13,486 --> 00:19:18,357 フン うおおおおお~! 286 00:19:19,325 --> 00:19:21,394 フン! きゃっ! 287 00:19:42,782 --> 00:19:46,052 (足音) 288 00:19:47,453 --> 00:19:50,956 御頭… もう大丈夫だ 289 00:19:50,956 --> 00:19:53,959 火は収まったし お夏も甚助も 290 00:19:53,959 --> 00:19:58,297 医者に見せて 命に別状はないと お墨付きをもらってる 291 00:19:58,297 --> 00:20:02,301 お夏は これから どうなっちまうんだい? 292 00:20:02,301 --> 00:20:05,805 火盗改の連中の目は節穴じゃねえ 293 00:20:05,805 --> 00:20:08,307 火付けでないことは明白になる 294 00:20:08,307 --> 00:20:10,376 そりゃよかった 295 00:20:10,376 --> 00:20:15,848 だが お夏も ただでは済まねえ 江戸払いもあり得る 296 00:20:16,982 --> 00:20:21,821 (彦弥)せいぜい 江戸を追い出されるくらいで 死ぬことはねえんだろ?➡ 297 00:20:21,821 --> 00:20:24,890 なら やっぱり よかったじゃねえか 298 00:20:24,890 --> 00:20:29,161 もう証文も焼けたし 借金の心配もねえんだ 299 00:20:29,161 --> 00:20:32,765 江戸払いとなったら ついて行ってやるのか? 300 00:20:32,765 --> 00:20:38,604 いいや 甚助は大嫌いだけどよ ウソはついていなかった 301 00:20:38,604 --> 00:20:43,275 お夏を幸せにするって誓うなら あいつに任せるよ 302 00:20:43,275 --> 00:20:46,345 お前も 銭の心配をしないでよくなった 303 00:20:46,345 --> 00:20:49,115 火消の誘い入れも ご破算かい? 304 00:20:49,115 --> 00:20:52,952 いいや あんたのもとで鳶になってやる 305 00:20:52,952 --> 00:20:56,789 なっ… どういう風の吹き回しだ 306 00:20:56,789 --> 00:21:01,627 俺が火消として気張れば 救える命が増える➡ 307 00:21:01,627 --> 00:21:05,297 そうすりゃ 涙する女が減るってもんだ➡ 308 00:21:05,297 --> 00:21:11,971 甚助でも もてはやされる火消なら 俺がやれば両手両足に華ってもんよ 309 00:21:11,971 --> 00:21:13,973 バカだなあ 310 00:21:13,973 --> 00:21:18,477 まっ どっかに 俺を待ってるいい女が きっといるさ 311 00:21:18,477 --> 00:21:22,148 (源吾と彦弥が笑う) 312 00:21:24,984 --> 00:21:28,053 本当に お世話になりました 313 00:21:28,053 --> 00:21:31,223 じゃあな 達者でやれよ 314 00:21:36,595 --> 00:21:38,597 (はなをすする) 315 00:21:38,597 --> 00:21:42,434 そういや 纏の形だけどよ 何だ? 316 00:21:42,434 --> 00:21:44,503 大銀杏はどうだ? 317 00:21:44,503 --> 00:21:47,439 銀杏か 悪くねえ 318 00:21:47,439 --> 00:21:52,278 銀杏の木はな 火が迫ると 幹や枝から水を出して 319 00:21:52,278 --> 00:21:55,614 枝葉へ火が燃え移るのを止めるんだ 320 00:21:55,614 --> 00:21:58,117 ふ~ん そうなのか 321 00:21:58,117 --> 00:22:01,120 何だ 知っていて言ったわけじゃねえのか 322 00:22:01,120 --> 00:22:03,455 つまり こういうことか 323 00:22:03,455 --> 00:22:09,461 ♬~花が咲いて 夏が去り 324 00:22:09,461 --> 00:22:14,800 ♬~残った銀杏が江戸守る フフッ 325 00:22:14,800 --> 00:22:21,073 ♬~花が咲いて 夏が去り~っと 326 00:22:25,477 --> 00:23:03,449 ♬~