1 00:00:02,503 --> 00:00:07,174 (源吾)すまねえ 過去のものまで遡って集めるのは苦労したろう 2 00:00:07,174 --> 00:00:11,637 (左門)まあな だが 七年前までは集めたぞ 3 00:00:11,637 --> 00:00:14,348 (寅次郎)番付 ですか? 4 00:00:14,348 --> 00:00:18,811 ああ でも 相撲じゃねえ 火消番付だ 5 00:00:18,811 --> 00:00:22,189 仲間を効率よく集めるには 引き抜くしかねえ 6 00:00:22,189 --> 00:00:24,650 (寅次郎)へえ~ (新之助)ほう… 7 00:00:24,650 --> 00:00:29,655 ぽっと出は必要ない 常に評価の高い火消を狙う 8 00:00:29,655 --> 00:00:32,032 よい考えですね 9 00:00:32,032 --> 00:00:35,661 東の大関が大音勘九郎さんで 10 00:00:35,661 --> 00:00:39,206 西が… もっと下だ 11 00:00:39,206 --> 00:00:42,835 三役を取るような奴は 簡単に鞍替えしねえし 12 00:00:42,835 --> 00:00:45,379 こっちが雇える金もない 13 00:00:45,379 --> 00:00:47,548 武士身分はもってのほか 14 00:00:47,548 --> 00:00:51,552 つまり 狙い目は町火消 (寅次郎・新之助)うん? 15 00:00:51,552 --> 00:00:55,222 なるほど では 古いものから… 16 00:00:55,222 --> 00:01:00,060 あれ? 東の大関 松永源吾って 17 00:01:00,060 --> 00:01:04,231 御頭!? そんなことはいいから探せ 18 00:01:04,231 --> 00:01:06,567 へえ~ 19 00:01:10,404 --> 00:01:15,075 (寅次郎)この方 もしかして 新之助さんの御父上ですか? 20 00:01:15,075 --> 00:01:17,244 ああ そのようですね 21 00:01:17,244 --> 00:01:19,580 どの番付にも載っている 22 00:01:19,580 --> 00:01:23,083 それだけ 鳥越殿は優れた火消だったんだ 23 00:01:29,715 --> 00:01:31,884 うん… (左門)源吾 24 00:01:31,884 --> 00:01:35,262 この男はどうだろう? (三人)うん? 25 00:01:35,262 --> 00:01:40,434 (左門)七年前に十両 そこから毎年 着実に番付を上げ 26 00:01:40,434 --> 00:01:43,896 今では西の前頭三枚目だ 27 00:01:44,897 --> 00:01:46,899 に組の甚助 28 00:01:46,899 --> 00:01:51,111 花纏の通り名を持つ纏持ちか 29 00:01:51,111 --> 00:01:53,113 いいかもな 30 00:01:54,114 --> 00:01:58,285 うん? (深雪)皆様 お勤めご苦労さまです 31 00:01:58,285 --> 00:02:00,287 おなかがへったでしょう? 32 00:02:00,287 --> 00:02:05,626 おお~ やった! ちょうどおなかがへっていたところなんですよ 33 00:02:10,464 --> 00:02:13,300 うわ~ うまそう~! ん… 34 00:02:13,300 --> 00:02:15,302 うん? 35 00:02:15,302 --> 00:02:17,471 へえ おお… 36 00:02:17,471 --> 00:02:22,935 お食事と先ほどの番茶三杯で 四十五文いただきます 37 00:02:22,935 --> 00:02:27,314 えっ 銭を取るのですか!? おいおい バカなことを言うな 38 00:02:27,314 --> 00:02:31,777 三百石いただいたとはいえ まだ支給前の身 39 00:02:31,777 --> 00:02:35,781 お代をいただかないと 私達も飢えてしまいます 40 00:02:35,781 --> 00:02:37,783 うっ うん… 41 00:02:39,493 --> 00:02:42,663 確かに ありがたく頂戴いたします 42 00:02:42,663 --> 00:02:45,499 では 俺もいただくとするか 43 00:02:45,499 --> 00:02:48,335 旦那様は四十文いただきます 44 00:02:48,335 --> 00:02:50,963 俺からも取るのか!? 45 00:02:50,963 --> 00:03:41,555 ♪♪~ 46 00:04:24,598 --> 00:04:26,892 というわけだ 47 00:04:26,892 --> 00:04:29,061 うちに来てくれねえか? 48 00:04:29,061 --> 00:04:33,899 (甚助)あの松永源吾が まだ火消をやっていたなんてな 49 00:04:35,442 --> 00:04:39,071 まっ そういう事情なら 移ってやってもいいぜ 50 00:04:39,071 --> 00:04:42,908 まことですか!? ただし 五十両いただく 51 00:04:42,908 --> 00:04:45,285 えっ!? バカ言うな 52 00:04:45,285 --> 00:04:50,290 相場は二十両がいいところだ そんなにもらう火消がどこにいる? 53 00:04:50,290 --> 00:04:54,628 だから 俺が その初めになるんだよ あ? 54 00:04:54,628 --> 00:04:56,630 (犬が吠える) 止めろ! 55 00:04:56,630 --> 00:04:59,091 また来やがったな 56 00:04:59,091 --> 00:05:02,302 (彦弥)おい 甚助 金を返しやがれ! 57 00:05:02,302 --> 00:05:06,640 しつこいぜ 彦弥 お夏の借金は お前が立て替えたんだろう 58 00:05:06,640 --> 00:05:08,934 まだ何か用か! 59 00:05:08,934 --> 00:05:14,106 百歩譲って金は返さなくていい これ以上 お夏に関わるな! 60 00:05:14,106 --> 00:05:18,318 お前の指図を受けるいわれはねえ 俺は好きにするさ 61 00:05:18,318 --> 00:05:20,320 この野郎! 62 00:05:20,320 --> 00:05:23,657 おい! 誰か 金貸しの丹波屋まで行ってくれ 63 00:05:23,657 --> 00:05:28,120 お捜しの彦弥がここにいるってな へい! 64 00:05:28,120 --> 00:05:31,331 すまねえ 取り込み中になっちまった 65 00:05:31,331 --> 00:05:33,959 話は また今度ってことで 66 00:05:37,129 --> 00:05:39,506 (殴る音) ぐはっ! 67 00:05:39,506 --> 00:05:45,512 昔のなじみで商売道具の顔は 勘弁してやってんだ ありがたく思え 68 00:05:45,512 --> 00:05:49,141 腹をなでるな くすぐってえだろ 69 00:05:49,141 --> 00:05:52,978 おい 何事か知らんが 手荒なマネは… 70 00:05:52,978 --> 00:05:55,981 かまわねえでくれ こっちの話だ 71 00:05:55,981 --> 00:05:58,692 もうすぐ 丹波屋の連中が来ますぜ 72 00:05:58,692 --> 00:06:03,155 (甚助)腹くくれよ 丹波屋の取り立てはキツいぜ 73 00:06:03,155 --> 00:06:05,157 ん… くっ… 74 00:06:05,157 --> 00:06:08,160 うん… フン! 75 00:06:10,370 --> 00:06:13,999 ぐわっ! この野郎 待ちやがれ! 76 00:06:13,999 --> 00:06:16,001 待て待て! 77 00:06:16,001 --> 00:06:19,546 (犬が吠える) 78 00:06:21,006 --> 00:06:23,175 うん? 79 00:06:29,014 --> 00:06:31,892 まさか この距離を跳んだ!? 80 00:06:31,892 --> 00:06:33,894 彦弥… 81 00:06:33,894 --> 00:06:37,731 彦弥 もしかして! 知ってるのか? 82 00:06:37,731 --> 00:06:40,025 (新之助)山城座の彦弥 83 00:06:40,025 --> 00:06:43,904 みんなから山彦って呼ばれてる 人気の軽業師です 84 00:06:46,573 --> 00:06:48,575 うん… 85 00:06:52,204 --> 00:06:56,750 御頭~ もう何日歩き回るんですか? 86 00:06:56,750 --> 00:07:00,045 何で そんなに 彦弥さんにこだわるんです? 87 00:07:00,045 --> 00:07:04,049 あいつは うちの組に必要だ どうしても欲しい 88 00:07:04,049 --> 00:07:08,762 えっ そうだったんですか!? 甚助さんじゃなく? 89 00:07:08,762 --> 00:07:11,932 ここだ うわっ 無視 90 00:07:12,933 --> 00:07:16,770 ごめんよ (お夏)いらっしゃい どうぞ 中へ 91 00:07:16,770 --> 00:07:22,234 すまない ここに お夏という娘がいると聞いてきたんだが 92 00:07:22,234 --> 00:07:25,237 (お夏) 私に何か御用でしょうか? 93 00:07:25,237 --> 00:07:27,948 あなたが お夏さん? はい 94 00:07:27,948 --> 00:07:31,618 実は 彦弥のことで ちょっと聞きたいことが 95 00:07:31,618 --> 00:07:35,956 はっ! 彦弥さんがどこにいるか ご存じなのですか!? 96 00:07:35,956 --> 00:07:39,960 無事なのですか!? ああ ちょっと お夏さん 落ち着いて 97 00:07:39,960 --> 00:07:42,254 俺達も捜しているんだ 98 00:07:42,254 --> 00:07:46,633 何やら借金取りに追われているようだから どうにか助けたいと思ってな 99 00:07:46,633 --> 00:07:48,969 (お夏が泣きだす) 100 00:07:48,969 --> 00:07:52,472 えっ あの… 大丈夫ですか? 101 00:07:52,472 --> 00:07:57,102 全て… 全て私のせいなのです 102 00:07:57,102 --> 00:07:59,271 (お夏が泣いている) ああ… 103 00:08:01,315 --> 00:08:03,317 私達は孤児で 104 00:08:03,317 --> 00:08:07,154 里親が見つかるまで お寺で育ったのです 105 00:08:07,154 --> 00:08:09,781 私が最初に この茶屋に引き取られ 106 00:08:09,781 --> 00:08:13,160 次に彦弥さんが山城座に 107 00:08:13,160 --> 00:08:17,789 甚助さんは なかなかもらい手がなくて 火消になったんです 108 00:08:17,789 --> 00:08:20,626 お前達 幼なじみなのか 109 00:08:20,626 --> 00:08:22,628 はい 110 00:08:22,628 --> 00:08:26,340 私達はそれからも 互いに連絡を取り合って 111 00:08:27,799 --> 00:08:33,013 (お夏)特に彦弥さんは うちの茶屋によく来てくれました 112 00:08:33,013 --> 00:08:35,182 《彦弥さん いらっしゃい》 113 00:08:35,182 --> 00:08:37,809 《よう 元気そうだな》 114 00:08:41,021 --> 00:08:45,192 《おう お夏 またキレイになったんじゃねえか?》 115 00:08:45,192 --> 00:08:48,528 《どうだ 俺と夫婦になる気はないか?》 116 00:08:48,528 --> 00:08:50,656 《また そんなこと言って》 117 00:08:50,656 --> 00:08:54,201 《誰にでも言ってるんでしょ? フン!》 118 00:08:54,201 --> 00:08:58,372 (お夏)そんなふうに いつも からかわれていたんですけど 119 00:08:58,372 --> 00:09:02,668 私にとって彦弥さんは 兄のような存在でした 120 00:09:03,835 --> 00:09:09,549 (お夏)昨年 私が甚助さんと一緒になる約束を したことを告げたときも 121 00:09:09,549 --> 00:09:11,677 《(足音)》 122 00:09:11,677 --> 00:09:15,555 《何だい? お夏 大事な話って…》 123 00:09:15,555 --> 00:09:17,849 《あのね 彦弥さん…》 124 00:09:21,061 --> 00:09:26,858 《お前のようなドジな女を好いてくれる男は あいつしかいねえだろうな》 125 00:09:26,858 --> 00:09:29,403 《よかったじゃねえか》 126 00:09:29,403 --> 00:09:31,571 《幸せになれよ》 127 00:09:34,574 --> 00:09:36,576 なるほど 128 00:09:36,576 --> 00:09:38,578 でも そのすぐあとに 129 00:09:38,578 --> 00:09:43,709 私達を育ててくれた和尚さんが 重い病だと分かって 130 00:09:43,709 --> 00:09:46,420 医者にかかろうにも お金がない 131 00:09:46,420 --> 00:09:50,882 甚助さんも 元から借金持ちで貸してもらえないと 132 00:09:50,882 --> 00:09:55,595 それで 私が丹波屋から 五両のお金を借りたのです 133 00:09:55,595 --> 00:09:58,598 お前さんは 病気の和尚に会ったのかい? 134 00:09:58,598 --> 00:10:04,104 あ… 流行病だから うつってはいけないと いつも甚助さん一人で 135 00:10:04,104 --> 00:10:06,106 そのことを 彦弥さんは? 136 00:10:06,106 --> 00:10:10,110 甚助さんが あいつには言うなと… 137 00:10:10,110 --> 00:10:14,114 怪しいな 返せると思ってたのかい? 138 00:10:14,114 --> 00:10:16,742 最初は利子も安かったのです 139 00:10:16,742 --> 00:10:19,911 それが いつの間にか 証文も書き換わっていて 140 00:10:19,911 --> 00:10:22,914 あれよあれよと三十両に… 141 00:10:22,914 --> 00:10:25,751 三十両!? そんな法外な! 142 00:10:25,751 --> 00:10:28,128 それが奴らの手だ 143 00:10:28,128 --> 00:10:32,758 借金のかたに 吉原に売られることになったのですが 144 00:10:32,758 --> 00:10:37,471 《(お夏)あ…》 《(彦弥)受け取ってくれ これで自由だ》 145 00:10:37,471 --> 00:10:40,307 《彦弥さん…》 146 00:10:40,307 --> 00:10:42,768 それが 十日ほど前の話で 147 00:10:42,768 --> 00:10:46,313 それ以来 彦弥さんには会えずじまいで 148 00:10:46,313 --> 00:10:50,484 心当たりも散々捜したのですが… 149 00:10:50,484 --> 00:10:52,778 三人が育った寺はどうだ? 150 00:10:52,778 --> 00:10:55,155 あっ すぐに行ってみたのですが 151 00:10:55,155 --> 00:10:59,951 丹波屋の連中が見張っていて 近づくこともできなくて 152 00:10:59,951 --> 00:11:03,163 彦弥さんも同じかと… 153 00:11:03,163 --> 00:11:06,958 あっ! 何か思い出しましたか? 154 00:11:06,958 --> 00:11:12,506 お寺の境内に 少し前まで一本の銀杏の木がありました 155 00:11:12,506 --> 00:11:16,343 そこで 子供の頃 彦弥さんに… 156 00:11:16,343 --> 00:11:19,346 《(彦弥)アハハハハハハ…》 157 00:11:19,346 --> 00:11:21,681 《アハハハ アハハハ…》 158 00:11:21,681 --> 00:11:24,976 《私ね 銀杏が大好きなの》 159 00:11:24,976 --> 00:11:27,687 《黄金色でキレイでしょ?》 160 00:11:27,687 --> 00:11:31,817 《おめえ 銀杏黄葉っていやあ 秋じゃねえか》 161 00:11:31,817 --> 00:11:35,695 《お夏って名前のくせに 変な奴だなあ》 162 00:11:35,695 --> 00:11:37,823 《ホントだね フフフッ》 163 00:11:37,823 --> 00:11:40,367 《(お夏と彦弥が笑う)》 164 00:11:40,367 --> 00:11:45,705 だが 少し前までってことは 今は その木は残ってねえんだろう? 165 00:11:45,705 --> 00:11:50,377 はい ただ それを私が懐かしがっていたら 166 00:11:50,377 --> 00:11:53,213 待乳山聖天に大銀杏がある 167 00:11:53,213 --> 00:11:57,551 秋になったら 甚助も連れて見に行こうぜって 168 00:11:57,551 --> 00:12:01,388 浅草の待乳山だな 行く価値はありそうだ 169 00:12:01,388 --> 00:12:05,725 新之助 お前は先に戻ってろ 分かりました 170 00:12:05,725 --> 00:12:07,727 松永様 私も… 171 00:12:07,727 --> 00:12:12,732 いや お前さんを巻き込むのは 彦弥も望んでないだろ 172 00:12:12,732 --> 00:12:17,863 大丈夫 悪いようにはしない ここは俺に任せてくれ 173 00:12:17,863 --> 00:12:19,865 はい 174 00:12:19,865 --> 00:12:22,576 (カラスが鳴く) 175 00:12:24,244 --> 00:12:26,246 彦弥だな 176 00:12:27,247 --> 00:12:29,749 甚助に頼まれたのか 177 00:12:29,749 --> 00:12:33,879 違う 拙者は新庄藩 火消方頭取 178 00:12:33,879 --> 00:12:36,756 松永源吾と申す者だ 179 00:12:36,756 --> 00:12:39,593 おぬしに たっての願いがあるのだ 180 00:12:39,593 --> 00:12:42,429 我が家に ご足労願えぬか? 181 00:12:42,429 --> 00:12:46,433 んなこと言って 借金取りに引き渡すつもりじゃねえのか? 182 00:12:46,433 --> 00:12:50,270 俺も お前さんと同じことをしたことがあってな 183 00:12:50,270 --> 00:12:53,773 手助けしたいんだ 俺と同じ? 184 00:12:53,773 --> 00:12:58,612 俺も 全てを懸けて 守りたい女がいたってことだよ 185 00:12:58,612 --> 00:13:02,782 あんたは 何で そこまでして守りたいと思った? 186 00:13:02,782 --> 00:13:07,078 惚れた女を守るのに 訳はいるかい? フッ 187 00:13:07,078 --> 00:13:11,917 そりゃそうだ 俺もあんたも バカだねえ 188 00:13:14,085 --> 00:13:16,087 かあ~! 189 00:13:16,087 --> 00:13:21,468 うまかった~! このところ ろくな飯 食ってなかったからな 190 00:13:21,468 --> 00:13:23,929 あとで た~んまり取られますよ 191 00:13:23,929 --> 00:13:26,306 (せきばらい) あ… 192 00:13:28,475 --> 00:13:31,937 実はな 彦弥 相談があるんだが 193 00:13:31,937 --> 00:13:33,939 金なら ないぜ 194 00:13:33,939 --> 00:13:37,651 今のお前に その相談だけはしねえよ 195 00:13:37,651 --> 00:13:41,488 彦弥 俺達の仲間になってくれないか? 196 00:13:41,488 --> 00:13:44,491 俺が火消に? 無理無理 197 00:13:44,491 --> 00:13:49,120 いや お前は 江戸一の火消になってもおかしくねえ 198 00:13:50,330 --> 00:13:53,333 俺には 三十両もの借金がある 199 00:13:53,333 --> 00:13:56,336 山城座のみんなに 迷惑はかけられねえ 200 00:13:57,963 --> 00:14:01,341 俺の給金より 三十両 前借りする 201 00:14:01,341 --> 00:14:04,135 それを使って返済しろ ああ… 202 00:14:04,135 --> 00:14:08,139 会ったばかりのあんたから そんな大金いただけねえよ! 203 00:14:08,139 --> 00:14:11,851 そうじゃねえ やるのではなく貸すのだ 204 00:14:11,851 --> 00:14:14,521 無利子で貸すから 火消になれ 205 00:14:15,981 --> 00:14:20,986 俺は お前を助けるから お前も俺達を助けろ 206 00:14:22,988 --> 00:14:26,366 火事だ! 何も聞こえねえけどな 207 00:14:26,366 --> 00:14:29,869 いや 間違いない 相当遠いが… 208 00:14:29,869 --> 00:14:32,998 (走る足音) 209 00:14:32,998 --> 00:14:35,166 御頭 火事です! 210 00:14:35,166 --> 00:14:38,712 どこだ! 火元は日本橋の北端 211 00:14:38,712 --> 00:14:40,714 マジかよ 212 00:14:40,714 --> 00:14:44,009 日本橋の北端っていうと… 213 00:14:44,009 --> 00:14:46,177 金貸しの丹波屋がある方ですね 214 00:14:46,177 --> 00:14:48,888 そうそう 丹波屋だと言ってました 215 00:14:48,888 --> 00:14:53,018 どうやら火付けらしい 下手人は若い娘だと… 216 00:14:53,018 --> 00:14:55,020 あっ! 217 00:14:55,020 --> 00:14:58,189 (半鐘の音) 218 00:14:58,189 --> 00:15:00,191 ああ… 219 00:15:01,901 --> 00:15:06,740 (半鐘の音) 220 00:15:06,740 --> 00:15:09,200 クソッ 進めねえ! 221 00:15:09,200 --> 00:15:12,412 ここまで来たら大丈夫だ 世話になったな 222 00:15:12,412 --> 00:15:14,414 彦弥! 223 00:15:15,582 --> 00:15:20,420 惚れた女を守るのに 訳はいらねえよな! 224 00:15:20,420 --> 00:15:23,590 待て! 俺達も馬を捨てるぞ! 225 00:15:23,590 --> 00:15:26,051 どいてくれ どけ! 226 00:15:26,051 --> 00:15:31,222 寅 俺を屋根の上に投げられるか? ムチャですよ 御頭! 227 00:15:31,222 --> 00:15:35,435 ケガしても知りませんよ ああ 大丈夫だ 228 00:15:35,435 --> 00:15:37,437 (寅次郎)フン! うわっ! 229 00:15:37,437 --> 00:15:40,774 いきますよ うおおお~! 230 00:15:40,774 --> 00:15:43,443 くっ… イッテエ… 231 00:15:43,443 --> 00:15:46,446 御頭 急いでください! 232 00:15:46,446 --> 00:15:49,074 分かってる 任せとけ! 233 00:15:52,786 --> 00:15:54,954 やるしかねえか 234 00:15:56,790 --> 00:16:01,086 今宵は長月晦日 時は戌の刻 235 00:16:01,086 --> 00:16:05,090 月は有明月 風は西風 236 00:16:05,090 --> 00:16:08,968 風向きは しばし変わらず 火は東へ 237 00:16:08,968 --> 00:16:13,640 火元 丹波屋は炎上 隣家数軒に移り火 238 00:16:16,267 --> 00:16:18,645 東の棟を始末する 239 00:16:19,646 --> 00:16:21,648 うん!? 240 00:16:24,984 --> 00:16:26,986 (甚助)こっちだ 急げ! 241 00:16:26,986 --> 00:16:28,988 あっ! 242 00:16:30,281 --> 00:16:33,660 お夏 何で… 243 00:16:33,660 --> 00:16:35,995 うわあ~! 244 00:16:35,995 --> 00:16:37,997 いけねえ! 245 00:16:37,997 --> 00:16:39,999 くっ! 246 00:16:42,293 --> 00:16:45,296 甚助! お夏は俺が救う 247 00:16:45,296 --> 00:16:49,509 お夏 待ってろ 今行く! 248 00:16:49,509 --> 00:16:51,511 来ないで! 249 00:16:51,511 --> 00:16:53,680 がっ! ああっ! 250 00:16:53,680 --> 00:16:56,850 うっ… 和尚は昨日死んだよ 251 00:16:56,850 --> 00:17:02,522 最後まで面倒見てもらった俺は 和尚をどうしても救いたかったんだ 252 00:17:02,522 --> 00:17:06,693 お前に借金までさせちまって すまねえ 253 00:17:06,693 --> 00:17:09,028 (お夏) 私は火付けなんかしてない! 254 00:17:09,028 --> 00:17:12,323 確かに 彦弥さんの証文は燃やそうとした 255 00:17:12,323 --> 00:17:15,535 もみ合いになって 火が移っただけ 256 00:17:15,535 --> 00:17:20,039 でも 誰も 私の言うことなんて信じてくれない! 257 00:17:21,708 --> 00:17:24,043 うっ! 甚助! 258 00:17:24,043 --> 00:17:27,714 (甚助)ぐわあ~! うっ! 259 00:17:27,714 --> 00:17:31,050 くっ… あっ 彦弥! 260 00:17:32,552 --> 00:17:38,057 すまねえ お夏は てっきり丹波屋だと思って そっちを捜してた 261 00:17:38,057 --> 00:17:40,059 櫓は もう無理だ 262 00:17:40,059 --> 00:17:42,896 彦弥 素人は引っ込んでろ! 263 00:17:44,189 --> 00:17:46,733 なっ! うるせえ! 264 00:17:46,733 --> 00:17:50,570 俺は新庄藩 火消の彦弥だ! 265 00:17:50,570 --> 00:17:54,073 あ… 彦弥 お夏を… 266 00:17:54,073 --> 00:17:56,576 分かってらあ! 267 00:17:56,576 --> 00:17:59,579 もういい 彦弥さん やめて! 268 00:17:59,579 --> 00:18:01,915 やめねえ~! 269 00:18:01,915 --> 00:18:04,083 ぐっ… 270 00:18:04,083 --> 00:18:08,087 東風… 夜は西風じゃねえのか 271 00:18:10,757 --> 00:18:15,094 手拭いか何かで肌を隠せ ないよりマシだ! 272 00:18:15,094 --> 00:18:18,765 ヘッ うまそうなニオイで腹が鳴るってもんよ! 273 00:18:18,765 --> 00:18:21,100 (新之助)崩れるぞ~! 274 00:18:23,770 --> 00:18:26,105 くっ… 275 00:18:26,105 --> 00:18:28,107 もういいの 276 00:18:28,107 --> 00:18:31,402 彦弥さん一人なら ここからでも跳べるでしょう 277 00:18:31,402 --> 00:18:34,405 バカ言うな 勝手に逝ったら 278 00:18:34,405 --> 00:18:38,117 三途の川でも 一跳びして連れ戻してやる 279 00:18:38,618 --> 00:18:41,287 ごめんね ありがとう 280 00:18:41,287 --> 00:18:43,915 さようなら 281 00:18:43,915 --> 00:18:47,752 お夏~! 彦弥 跳べ! 282 00:18:50,129 --> 00:18:52,298 御頭! 死なせるな! 283 00:18:52,298 --> 00:18:55,134 おう! うおおお~! 284 00:18:56,469 --> 00:18:58,763 死なせるな~! 285 00:18:58,763 --> 00:19:03,643 フン うおおおおお~! 286 00:19:04,644 --> 00:19:06,771 フン! きゃっ! 287 00:19:28,167 --> 00:19:31,504 (足音) 288 00:19:32,797 --> 00:19:36,342 御頭… もう大丈夫だ 289 00:19:36,342 --> 00:19:39,345 火は収まったし お夏も甚助も 290 00:19:39,345 --> 00:19:43,683 医者に見せて 命に別状はないと お墨付きをもらってる 291 00:19:43,683 --> 00:19:47,687 お夏は これから どうなっちまうんだい? 292 00:19:47,687 --> 00:19:51,190 火盗改の連中の目は節穴じゃねえ 293 00:19:51,190 --> 00:19:53,693 火付けでないことは明白になる 294 00:19:53,693 --> 00:19:55,820 そりゃよかった 295 00:19:55,820 --> 00:20:01,367 だが お夏も ただでは済まねえ 江戸払いもあり得る 296 00:20:02,368 --> 00:20:07,206 (彦弥)せいぜい 江戸を追い出されるくらいで 死ぬことはねえんだろ? 297 00:20:07,206 --> 00:20:10,376 なら やっぱり よかったじゃねえか 298 00:20:10,376 --> 00:20:14,547 もう証文も焼けたし 借金の心配もねえんだ 299 00:20:14,547 --> 00:20:18,217 江戸払いとなったら ついて行ってやるのか? 300 00:20:18,217 --> 00:20:24,015 いいや 甚助は大嫌いだけどよ ウソはついていなかった 301 00:20:24,015 --> 00:20:28,728 お夏を幸せにするって誓うなら あいつに任せるよ 302 00:20:28,728 --> 00:20:31,856 お前も 銭の心配をしないでよくなった 303 00:20:31,856 --> 00:20:34,567 火消の誘い入れも ご破算かい? 304 00:20:34,567 --> 00:20:38,404 いいや あんたのもとで鳶になってやる 305 00:20:38,404 --> 00:20:42,241 なっ… どういう風の吹き回しだ 306 00:20:42,241 --> 00:20:47,038 俺が火消として気張れば 救える命が増える 307 00:20:47,038 --> 00:20:50,750 そうすりゃ 涙する女が減るってもんだ 308 00:20:50,750 --> 00:20:57,423 甚助でも もてはやされる火消なら 俺がやれば両手両足に華ってもんよ 309 00:20:57,423 --> 00:20:59,425 バカだなあ 310 00:20:59,425 --> 00:21:03,888 まっ どっかに 俺を待ってるいい女が きっといるさ 311 00:21:03,888 --> 00:21:07,600 (源吾と彦弥が笑う) 312 00:21:10,436 --> 00:21:13,606 本当に お世話になりました 313 00:21:13,606 --> 00:21:16,776 じゃあな 達者でやれよ 314 00:21:22,073 --> 00:21:24,075 (はなをすする) 315 00:21:24,075 --> 00:21:27,912 そういや 纏の形だけどよ 何だ? 316 00:21:27,912 --> 00:21:30,081 大銀杏はどうだ? 317 00:21:30,081 --> 00:21:32,917 銀杏か 悪くねえ 318 00:21:32,917 --> 00:21:37,797 銀杏の木はな 火が迫ると 幹や枝から水を出して 319 00:21:37,797 --> 00:21:41,092 枝葉へ火が燃え移るのを止めるんだ 320 00:21:41,092 --> 00:21:43,636 ふ~ん そうなのか 321 00:21:43,636 --> 00:21:46,639 何だ 知っていて言ったわけじゃねえのか 322 00:21:46,639 --> 00:21:48,933 つまり こういうことか 323 00:21:48,933 --> 00:21:54,939 ♪♪~花が咲いて 夏が去り 324 00:21:54,939 --> 00:22:00,319 ♪♪~残った銀杏が江戸守る フフッ 325 00:22:00,319 --> 00:22:06,659 ♪♪~花が咲いて 夏が去り~っと 326 00:22:10,955 --> 00:22:48,993 ♪♪~